説明

ガス警報器

【課題】ガス警報器1の半導体式ガスセンサ10にライター等から採取した点検用ガスを吹きかけて都市ガス警報のガスもれ警報機能を点検する点検モードにおいて、点検用ガスの吹きかけタイミングによって濃度が変化する水素ガスを検出し易くするとともに、誤動を防止する。
【解決手段】マイコン11の制御により半導体式ガスセンサ10のヒータサイクルを制御し、ヒータサイクル中の水素検知ポイントとCO検知ポイントで検出する水素濃度と、CO濃度により都市ガス警報を行う。水素濃度の警報判定をする警報レベルを低濃度のレベルに設定する。CO検知ポイントでCO低濃度警報レベル以上で、かつ、前回の水素検知ポイントまたは今回の水素検知ポイントで水素濃度が警報レベル以上であったら、都市ガス警報とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスもれ警報機能及び不完全燃焼警報機能を併せ持つガス警報器の点検モードを改良したガス警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ガス用ガス警報器の場合、都市ガスの主成分であるメタン(CH4 )の濃度を検出してガスもれ警報を行うのが一般的であり、最近では、燃焼器の不完全燃焼時に発生する一酸化炭素(CO)の濃度を検出する不完全燃焼警報機能を併せ持ったガス警報器が主流となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなガス警報器用のガスセンサとしては、メタン(CH4 )及び一酸化炭素(CO)の各ガスの濃度を同時に検出するものであり、図7に示すような構造の半導体式ガスセンサ10が用いられる。半導体式ガスセンサ10は、酸化錫(SnO2 )等の金属酸化物を主体に形成され、ガスが存在した場合に抵抗変化を示す感知素子10aと、白金(Pt)等の金属抵抗体で形成されたコイル等からなり、感知素子10aを加熱するヒータ10bと、感知素子10aの抵抗変化を検出するためのセンサ電極10cとを有する。
【0004】
半導体式ガスセンサ10では、ガス検出時のヒータ10bによる感知素子10aの加熱温度とセンサ抵抗との関係が、メタン、水素及び一酸化炭素で異なる特性を持っている。このような特性を利用することにより、メタンガスの濃度、水素の濃度及び一酸化炭素ガスの濃度を選択的に検出することが可能である。
【0005】
例えば、図8に示すように、ヒータ電圧を制御するとともにガスを検出するタイミングを異ならせる。すなわち、ヒータ電圧を0.9Vにして4.98〜5.00秒維持する5秒Hi期間(高温加熱期間)と、ヒータ電圧を0.2Vにして14.98〜15.00秒維持する15秒Lo期間(低温加熱期間)とを設け、この5秒Hi期間と15秒Lo期間を繰り返す。また、15秒Lo期間の直前のAのタイミングをメタン検知ポイント、15秒Lo期間に切り替わって14.98〜15.00秒後のBのタイミングを水素検知ポイント、5秒Hi期間の直前のCのタイミングを一酸化炭素検知ポイントとする。そして、各検知ポイントにおける半導体式ガスセンサ10の抵抗値(検出電圧)により対応するガスの濃度を判定する。
【0006】
また、この半導体式ガスセンサ10が正常に作動しているかどうかを点検する際には、点検用ガスを吹きかけて警報動作が起こるかどうかを確認している。この点検用ガスは、ガスもれ検知機能の点検には、コンロ等の炎の根本部分からセラミックノズルがついたスポイト等で、都市ガスである12Aや13Aを採取している。不完全燃焼検知機能の点検に関しては、コンロの炎の内炎部より一酸化炭素を含むガスを採取していた。また、不完全燃焼検知機能の点検に関しては、簡易的にライターの炎の内炎部よりガスを採取していた。さらに、特許文献1に示されているように、最近では不完全燃焼排ガス中の一酸化炭素(CO)と水素(H2 )を用い、水素と都市ガスの主成分であるメタン(CH4 )との検知ポイント及びセンサ抵抗変化特性の相関性に基づき、ガスもれ検知機能の点検を水素の検知で代用する提案が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−176656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記のようにヒータ電圧の制御に合わせてガス毎に検知ポイントが異なっているので、5秒Hi期間と15秒Lo期間のサイクル全てで点検用ガスを吹きかけて点検できることが最も望ましいが、簡易的に実施するライターの炎の内炎部分のCOと水素は、1.5%と0.7%程度の濃度であり、ヒータ電圧のサイクルの条件を前述の5秒Hi期間−15秒Lo期間で動作させ、一酸化炭素と水素ガスで点検を実施すると点検用ガスを吹きつけるタイミングによっては、ガスセンサが反応する水素濃度が500ppmレベルと低く、非常に低濃度に設定レベルを設ける必要があり、誤作動等の心配があった。
【0009】
そこで、本発明は、ガスもれ警報機能及び不完全燃焼警報機能を併せ持つガス警報器において、点検時にライター内炎中の水素ガスを確実に検出でき、誤作動を防止することができるガス警報器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のガス警報器は、感知素子をヒータにより高温加熱期間と低温加熱期間が交互するヒートサイクルで高低2段階に交互加熱し、前記感知素子の高温加熱期間にメタンガス濃度に応じた前記感知素子の出力に基づいてガスもれ警報を行うとともに、前記感知素子の低温加熱期間に一酸化炭素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力に基づいて不完全燃焼警報を行うガス警報器であって、点検モード時に、前記メタンガスの代用となる水素ガスと一酸化炭素ガスとを含む点検用ガスを吹きかけ、前記低温加熱期間の一酸化炭素検知ポイントにおける一酸化炭素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力と、前記低温加熱期間の水素検知ポイントにおける水素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力とにより、前記ガスもれ警報の点検を行うガス警報器において、前記水素検知ポイントにおける水素ガスの濃度に対する警報レベルを前記点検用ガス中の水素ガスを検出できる点検モード用の水素警報レベルとし、前記一酸化炭素検知ポイントにおける一酸化炭素ガスの濃度に対する警報レベルを前記点検用ガス中の一酸化炭素ガスを検知できる点検モード用のCO警報レベルとし、前記点検モード時に、一酸化炭素ガスの濃度が前記CO警報レベル以上で、かつ、前回または今回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が前記水素警報レベル以上であった場合にガスもれ警報を行うようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2のガス警報器は、感知素子をヒータにより高温加熱期間と低温加熱期間が交互するヒートサイクルで高低2段階に交互加熱し、前記感知素子の高温加熱期間にメタンガス濃度に応じた前記感知素子の出力に基づいてガスもれ警報を行うとともに、前記感知素子の低温加熱期間に一酸化炭素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力に基づいて不完全燃焼警報を行うガス警報器であって、点検モード時に、前記メタンガスの代用となる水素ガスと一酸化炭素ガスとを含む点検用ガスを吹きかけ、前記低温加熱期間の一酸化炭素検知ポイントにおける一酸化炭素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力と、前記低温加熱期間の水素検知ポイントにおける水素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力とにより、前記ガスもれ警報の点検を行うガス警報器において、前記水素検知ポイントにおける水素ガスの濃度に対する警報レベルを前記点検用ガス中の水素ガスを検出できる点検モード用の水素警報レベルとし、前記一酸化炭素検知ポイントにおける一酸化炭素ガスの濃度に対する警報レベルを前記点検用ガス中の一酸化炭素ガスを検知できる点検モード用のCO警報レベルとし、前記点検モード時に、一酸化炭素検知ポイントにて、一酸化炭素ガスの濃度がCO警報レベル以上でかつ前回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が水素警報レベル以上であった場合、または、水素検知ポイントにて、水素ガス濃度が水素警報レベル以上でかつ前回の一酸化炭素検知ポイントでの一酸化炭素ガスの濃度がCO警報レベル以上であった場合、ガスもれ警報を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のガス警報器によれば、水素検知ポイントにおける水素ガスの濃度に対する警報レベルを点検用ガス中の水素ガスを検出できる点検モード用の水素警報レベルとしているので、前記点検用ガスの水素ガスを容易に検出できるとともに、この水素ガス濃度が水素警報レベル以上となった場合に加えて、前回の一酸化炭素ガスの濃度が点検モード用のCO警報レベル以上となった場合にガスもれ警報を行うので、水素ガスを確実に検出でき、かつ、誤動作を防止することができる。
【0013】
請求項2のガス警報器によれば、請求項1と同様に水素ガスの濃度に対する警報レベルを点検用ガス中の水素ガスを検出できる点検モード用の水素警報レベルとしているので、前記点検用ガスの水素ガスを容易に検出できるとともに、今回の一酸化炭素ガスの濃度がCO警報レベル以上で前回の水素ガス濃度が水素警報レベル以上となった場合、または、今回の水素ガス濃度が水素警報レベル以上で前回の一酸化炭素ガスの濃度がCO警報レベル以上となった場合に、それぞれガスもれ警報を行うので、水素ガスを確実に検出でき、かつ、誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態のガス警報器の要部ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態のガス警報器の正面図である。
【図3】実施形態における第1実施例のフローチャートである。
【図4】実施形態における第2実施例のフローチャートである。
【図5】実施形態における第1実施例の処理による動作の一例を示す図である。
【図6】実施形態における第2実施例の処理による動作の一例を示す図である。
【図7】本発明に係る半導体式ガスセンサの一例を示す図である。
【図8】本発明に係るヒートサイクルと検知ポイントの例を説明ずる図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は実施形態のガス警報器の要部ブロック図、図2は実施形態のガス警報器の正面図である。この実施形態のガス警報器1は、ガス及び火災監視を行う複合型のガス警報器であり、その前面1aに、雰囲気取込孔1bを有する検知部1cを有している。また、検知部1cには、スポイト等により点検用ガスを注入する点検ガス注入孔1dが形成されている。そして、この検知部1c内に前記図7に示す半導体式ガスセンサ10が収容されている。
【0016】
また、前面1aには、火災警報インジケータ、電源インジケータ、不完全燃焼ガスインジケータ及びガスもれインジケータからなる表示部1eと、火災センサとして機能するサーミスタ12(図1参照)を内蔵した感熱部1f、音声出力用のスピーカ13を内蔵した報知部1gが配置されている。
【0017】
図1に示すように、ガス警報器1はマイコン11を備えており、このマイコン11はCPU11a、ROM11b及びRAM11c等で構成されている。このマイコン11には半導体式ガスセンサ10、表示部1e、サーミスタ12、スピーカ13から音声を出力するための音声出力回路14等が接続されている。
【0018】
マイコン11のCPU11aは、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行うものであり、ROM11bには、このCPU11aのための後述の制御プログラム等が格納されている。そして、CPU11aは、RAM11cのワーキングエリアを利用して各種の処理を行う。
【0019】
そして、マイコン11のCPU11aは、ガス警報器1の電源コード(図示せず)がコンセントに接続されて電源が供給され始めると、予め定められた点検時間(例えば4分)の間「点検モード」となる。また、点検モードの時間の経過後、通常モードに入り、ROM11bに格納されたガス及び火災の監視に関する制御プログラムに従って、ガス及び火災監視モードの処理を実行する。
【0020】
点検モード及び通常モード時には、マイコン11のCPU11aは、ヒータ10bに対する電圧制御を行い、図8のタイミングチャートのような5秒Hi期間−15秒Lo期間となるように交互通電のサイクルを繰り返す。また、メタン検知ポイント、水素検知ポイント及び一酸化炭素検知ポイント(以下、「CO検知ポイント」という。)も図8と同様である。
【0021】
そして、通常モードでは、メタン検知ポイントとCO検知ポイントでセンサ出力を検出する。そして、メタン検知ポイントで検出されたCH4 濃度がCH4 警報レベルに達すると、ガスもれ警報を行う。また、CO検知ポイントで検出されたCO濃度がCO低濃度警報レベルに達すると、不完全燃焼のCO注意報を発する。また、CO検知ポイントで検出されたCO濃度がCO低濃度警報レベルを超えてCO高濃度警報レベルまでに達するとCO警報を発する。
【0022】
一方、点検モードでは、水素検知ポイントとCO検知ポイントでセンサ出力を検出する。そして、以下の各実施例のように、水素検知ポイントにおける水素ガス濃度を判定し、CO検知ポイントにおける一酸化炭素ガス濃度を判定し、ガスもれ警報(以下、「都市ガス警報」という。)の点検動作行う。なお、この実施形態では、点検モードにおける水素ガス濃度の判定用に500ppm程度の低濃度の水素警報レベルを設定している。また、点検モードにおける一酸化炭素ガス濃度の判定用のCO警報レベルとして、前記CO低濃度警報レベルを用いている。これにより、水素検知ポイントにおいて前記点検用ガス中の水素ガスを検出することができ、CO検知ポイントにおいて同点検用ガス中の一酸化炭素ガスを検出することができる。
【0023】
第1実施例では、水素検知ポイントにおける水素ガス濃度を判定する。そして、前回のCO検知ポイントにおいて一酸化炭素ガスの濃度がCO低濃度警報レベル以上であり、かつ、前回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が水素警報レベル以上であるか、または今回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が水素警報レベル以上であった場合に、都市ガス警報を行う。
【0024】
第2実施例では、CO検知ポイントにて、一酸化炭素ガスの濃度がCO低濃度警報レベル以上で、かつ、前回の水素検知ポイントで水素ガス濃度が水素警報レベル以上であった場合、都市ガス警報を行う。また、水素検知ポイントにて、水素ガス濃度が水素警報レベル以上で、かつ、前回のCO検知ポイントで一酸化炭素ガスの濃度がCO低濃度警報レベル以上であった場合、都市ガス警報を行う。さらに、CO検知ポイントで都市ガス警報を行った場合には、都市ガス警報の条件を満足しなくなったとき、その後のCO検知ポイントで都市ガス警報を解除する。また、水素検知ポイントで都市ガス警報を行った場合には、都市ガス警報の条件を満足しなくなったとき、その後の水素検知ポイントで都市ガス警報を解除する。
【0025】
次に、ROM11bに格納された制御プログラムに従いCPU11aが行う点検モード時の処理を、図3及び図4のフローチャートを参照して説明する。なお、図3は前記第1実施例のフローチャート、図4は前記第2実施例のフローチャートである。なお、何れの実施例でも、ガス警報器1への電源投入により、マイコン11が起動して点検モードとなり、ヒートサイクルを例えば前掲の図8に示すように制御する。
【0026】
図3の第1実施例では、ステップS1で現在が水素検知ポイントであるかを判定し、ステップS8で現在がCO検知ポイントであるかを判定する。水素検知ポイントであればステップS2〜S7の処理を行い、CO検知ポイントであればS9〜S11の処理を行う。
【0027】
現在が水素検知ポイントであれば、ステップS2で、半導体式ガスセンサ10のセンサ出力を取得し、ステップS3で現在までにCO警報となっているか(記憶されているか)を判定する。CO警報でなければステップS7で都市ガス警報を解除し、ステップS8に進む。ステップS3でCO警報であれば、ステップS4で、前回の水素検知ポイントで水素ガス濃度が水素警報レベル以上であったか否かを判定する。判定がYESであればステップS6で都市ガス警報を行い、ステップS8に進む。判定がNOであれば、ステップS5で今回(現在)の水素検知ポイントで水素ガス濃度が水素警報レベル以上であるかを判定する。判定がYESであればステップS6で都市ガス警報を行い、判定がNOであればステップS7で都市ガス警報を解除し、ステップS8に進む。
【0028】
現在がCO検知ポイントであれば、ステップS9で、半導体式ガスセンサ10のセンサ出力を取得し、ステップS10で今回(現在)の一酸化炭素ガス濃度がCO警報レベル(CO低濃度警報)以上であるかを判定する。CO警報レベル以上でなければステップS1に戻り、CO警報レベル以上であれば、ステップS11でCO警報を記憶してステップS1に戻る。
【0029】
図4の第2実施例では、ステップS21で現在が水素検知ポイントであるかを判定し、ステップS28で現在がCO検知ポイントであるかを判定する。水素検知ポイントであればステップS22〜S27の処理を行い、CO検知ポイントであればS29〜S34の処理を行う。
【0030】
現在が水素検知ポイントであれば、ステップS22で、半導体式ガスセンサ10のセンサ出力を取得し、ステップS23で現在までにCO警報となっているか(記憶されているか)を判定する。CO警報でなければステップS28に進む。ステップS23でCO警報であれば、ステップS24で、今回(現在)の水素検知ポイントで水素ガス濃度が水素警報レベル以上であるか否かを判定する。判定がYESであればステップS26で都市ガス警報を行い、ステップS28に進む。判定がNOであれば、ステップS25で、それまでの水素検知ポイントで都市ガス警報を開始した状態かを判定し、判定がNOならステップS28に進み、判定がYESであればステップS27で都市ガス警報を解除してステップS28に進む。
【0031】
現在がCO検知ポイントであれば、ステップS29で、半導体式ガスセンサ10のセンサ出力を取得し、ステップS30で現在までにCO警報となっているか(記憶されているか)を判定する。CO警報でなければステップS21に戻る。ステップS30でCO警報であれば、ステップS31で前回までの水素検知ポイントで水素ガス濃度が水素警報レベル以上であったか否かを判定する。判定がYESであればステップS33で都市ガス警報を行い、ステップS21に戻る。判定がNOであれば、ステップS32で、それまでのCO検知ポイントで都市ガス警報を開始した状態かを判定し、判定がNOならステップS21に戻り、判定がYESであればステップS34で都市ガス警報を解除してステップS21に戻る。
【0032】
図5は第1実施例の処理による動作の一例を示す図であり、同図は点検用ガスを注入したときに半導体式ガスセンサ10に対する水素ガスと一酸化炭素ガスの注入タイミングが違う場合を示している。図5(A) は水素ガスの注入タイミングが一酸化炭素ガスの注入タイミングより先になった場合であり、図5(B) は一酸化炭素ガスの注入タイミングが水素ガスの注入タイミングより先になった場合である。
【0033】
図5(A) に示すように、水素検知ポイントp11で水素ガス濃度が水素警報レベル以上となっているが、次の水素検知ポイントp13で水素ガス濃度が水素警報レベルを下回っている。しかし、その前のCO検知ポイントp12で一酸化炭素ガス濃度がCO低濃度警報レベル以上となっているので、この水素検知ポイントp13で都市ガス警報開始となる。すなわち、「前回または今回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が警報レベル以上」という条件のうちの「前回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が警報レベル以上」を満足して都市ガス警報(ガスもれ警報)となっている。そして、次の水素検知ポイントp15で都市ガス警報解除となる。このように、水素ガスの注入タイミングが早くなった場合でも、都市ガス警報の点検を行うことができる。
【0034】
なお、期間(1)は監視状態、期間(2)はCO検知ポイントp12で一酸化炭素ガス濃度がCO低濃度警報レベル以上となっているのでCO注意報、期間(3)はCO注意報で都市ガス警報の状態となっている。また、期間(4)はCO検知ポイントp14で一酸化炭素ガス濃度がCO高濃度警報レベル以上となっているのでCO警報で都市ガス警報の状態となっている。さらに、期間(5)はCO警報のみ、期間(6)はCO注意報、期間(7)は監視状態となる。
【0035】
図5(B) に示すように、CO検知ポイントp22で一酸化炭素ガス濃度がCO低濃度警報レベル以上となっているので、水素検知ポイント21で水素ガス濃度が水素警報レベル未満でも、次の水素検知ポイントp23で水素ガス濃度が水素警報レベル以上となると、直ぐに都市ガス警報開始となる。すなわち、「前回または今回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が警報レベル以上」という条件のうちの「今回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が警報レベル以上」を満足して都市ガス警報(ガスもれ警報)となっている。そして、その後、水素検知ポイントp25で水素ガス濃度が水素警報レベルを初めて下回り、その次の水素検知ポイントp26で水素ガス濃度が水素警報レベルを下回り、この時点で都市ガス警報解除となる。これは、「前回かつ今回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が警報レベル未満」という条件により警報解除となった例である。
【0036】
なお、この場合は、期間(1)は監視状態、期間(2)はCO検知ポイントp22で一酸化炭素ガス濃度がCO低濃度警報レベル以上となっているのでCO注意報、期間(3)はCO注意報で都市ガス警報の状態となっている。また、期間(4)はCO検知ポイントp24で一酸化炭素ガス濃度がCO高濃度警報レベル以上となっているのでCO警報で都市ガス警報の状態となっている。さらに、期間(5)はCO注意報で都市ガス警報、期間(6)は都市ガス警報、期間(7)は監視状態となる。
【0037】
図6は第2実施例の処理による動作の一例を示す図であり、図6(A) は水素ガスの注入タイミングが一酸化炭素ガスの注入タイミングより先になった場合、図6(B) は一酸化炭素ガスの注入タイミングが水素ガスの注入タイミングより先になった場合である。
【0038】
図6(A) に示すように、水素検知ポイントp31で水素ガス濃度が水素警報レベル以上となり、次のCO検知ポイントp32で一酸化炭素ガス濃度がCO低濃度警報レベル以上となっているので、このCO検知ポイントp32で都市ガス警報開始となる。すなわち、「一酸化炭素検知ポイントにて、一酸化炭素ガスの濃度がCO低濃度警報レベル以上でかつ前回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が警報レベル以上であった場合」という条件を満足して都市ガス警報(ガスもれ警報)となっている。そして、次の水素検知ポイントp33で水素ガス濃度が水素警報レベルを下回り、その次のCO検知ポイントp34で都市ガス警報解除となる。すなわち、CO検知ポイントで都市ガス警報となった場合、その警報の解除はCO検知ポイントで行っている。この場合も、水素ガスの注入タイミングが早くなった場合でも、都市ガス警報の点検を行うことができる。
【0039】
なお、期間(1)は監視状態、期間(2)はCO注意報で都市ガス警報の状態、期間(3)はCO検知ポイントp34で一酸化炭素ガス濃度がCO高濃度警報レベル以上となっているのでCO警報の状態、期間(4)はCO注意報、期間(5)は監視状態となる。
【0040】
図6(B) に示すように、CO検知ポイントp42で一酸化炭素ガス濃度がCO低濃度警報レベル以上となっているので、水素検知ポイントp41で水素ガス濃度が水素警報レベル未満でも、次の水素検知ポイントp43で水素ガス濃度が水素警報レベル以上となると、直ぐに都市ガス警報開始となる。すなわち「水素検知ポイントにて、水素ガス濃度が警報レベル以上でかつ前回の一酸化炭素検知ポイントでの一酸化炭素ガスの濃度がCO低濃度警報レベル以上であった場合」という条件を満足して都市ガス警報(ガスもれ警報)となっている。そして、その後、水素検知ポイントp45で水素ガス濃度が水素警報レベルを初めて下回り、都市ガス警報解除となる。すなわち、水素検知ポイントで都市ガス警報となった場合、その警報の解除は水素検知ポイントで行っている。
【0041】
なお、この場合は、期間(1)は監視状態、期間(2)はCO注意報、期間(3)はCO注意報で都市ガス警報の状態、期間(4)はCO検知ポイントp44で一酸化炭素ガス濃度がCO高濃度警報レベル以上となっているのでCO警報で都市ガス警報の状態となっている。さらに、期間(5)はCO注意報で都市ガス警報、期間(6)はCO注意報、期間(7)は監視状態となる。
【0042】
以上のように、第1実施例では、水素検知ポイントでの判定を「前回または今回が警報レベル以上」とすることにより、「CO低濃度警報レベル以上、かつ、前回または今回の水素検知ポイントで警報レベル以上」の条件を満たした警報となる。したがって、点検用ガスの水素ガスと一酸化炭素ガスの注入タイミングがずれ、水素ガスの後に一酸化炭素ガスが吹きかけられるという場合の検出しにくさを解決することができる。また、第1実施例と同様に、第2実施例でも、水素検知ポイント後のCO検知ポイントで、「CO低濃度警報レベル以上、かつ、水素警報レベル以上」の条件を満たした警報となる。したがって、点検ガスの吹きかけタイミングによる検出しにくさを解決できる。
【0043】
また、第2実施例では、CO検知ポイントで都市ガス警報(ガスもれ警報)を行った場合の警報の解除はその後のCO検知ポイントで行い、水素検知ポイントで都市ガス警報を行った場合の警報の解除はその後の水素検知ポイントで行うので、少なくとも都市ガス警報は1ヒートサイクル分だけ続くので警報を確認し易くなる。
【0044】
なお、以上の実施形態では、点検モードに使う水素警報レベルとして通常モードの不完全燃焼のCO注意報を判定するためのCO低濃度警報レベルより低い警報レベル(例えば500ppm)としているが、水素警報レベルはこれに限らず、点検用ガス中の水素ガスを検出できる警報レベルであればよい。また、点検モードに使うCO警報レベルとして、通常モードの不完全燃焼のCO注意報を判定するためのCO低濃度警報レベルを用いているが、これに限らず、点検用ガス中の一酸化炭素ガスを検出できる警報レベルであればよい。
【符号の説明】
【0045】
10 半導体式ガスセンサ
10a 感知素子
10b ヒータ
11 マイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知素子をヒータにより高温加熱期間と低温加熱期間が交互するヒートサイクルで高低2段階に交互加熱し、前記感知素子の高温加熱期間にメタンガス濃度に応じた前記感知素子の出力に基づいてガスもれ警報を行うとともに、前記感知素子の低温加熱期間に一酸化炭素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力に基づいて不完全燃焼警報を行うガス警報器であって、点検モード時に、前記メタンガスの代用となる水素ガスと一酸化炭素ガスとを含む点検用ガスを吹きかけ、前記低温加熱期間の一酸化炭素検知ポイントにおける一酸化炭素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力と、前記低温加熱期間の水素検知ポイントにおける水素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力とにより、前記ガスもれ警報の点検を行うガス警報器において、
前記水素検知ポイントにおける水素ガスの濃度に対する警報レベルを前記点検用ガス中の水素ガスを検出できる点検モード用の水素警報レベルとし、
前記一酸化炭素検知ポイントにおける一酸化炭素ガスの濃度に対する警報レベルを前記点検用ガス中の一酸化炭素ガスを検知できる点検モード用のCO警報レベルとし、
前記点検モード時に、一酸化炭素ガスの濃度が前記CO警報レベル以上で、かつ、前回または今回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が前記水素警報レベル以上であった場合にガスもれ警報を行うようにしたことを特徴とするガス警報器。
【請求項2】
感知素子をヒータにより高温加熱期間と低温加熱期間が交互するヒートサイクルで高低2段階に交互加熱し、前記感知素子の高温加熱期間にメタンガス濃度に応じた前記感知素子の出力に基づいてガスもれ警報を行うとともに、前記感知素子の低温加熱期間に一酸化炭素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力に基づいて不完全燃焼警報を行うガス警報器であって、点検モード時に、前記メタンガスの代用となる水素ガスと一酸化炭素ガスとを含む点検用ガスを吹きかけ、前記低温加熱期間の一酸化炭素検知ポイントにおける一酸化炭素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力と、前記低温加熱期間の水素検知ポイントにおける水素ガスの濃度に応じた前記感知素子の出力とにより、前記ガスもれ警報の点検を行うガス警報器において、
前記水素検知ポイントにおける水素ガスの濃度に対する警報レベルを前記点検用ガス中の水素ガスを検出できる点検モード用の水素警報レベルとし、
前記一酸化炭素検知ポイントにおける一酸化炭素ガスの濃度に対する警報レベルを前記点検用ガス中の一酸化炭素ガスを検知できる点検モード用のCO警報レベルとし、
前記点検モード時に、一酸化炭素検知ポイントにて、一酸化炭素ガスの濃度がCO警報レベル以上でかつ前回の水素検知ポイントでの水素ガス濃度が水素警報レベル以上であった場合、または、水素検知ポイントにて、水素ガス濃度が水素警報レベル以上でかつ前回の一酸化炭素検知ポイントでの一酸化炭素ガスの濃度がCO警報レベル以上であった場合、ガスもれ警報を行うことを特徴とするガス警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−186290(P2010−186290A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29467(P2009−29467)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】