説明

ガラスフィルム積層体及びその製造方法

【課題】ゴミの付着やハンドリング時の貼り付き不具合を引き起こす粘着層を露出させず、露光マスクに接触したり現像液が溜まったりする段差部分がなく、支持フィルムにしわやカールが発生するのを防ぐことができるガラスフィルム積層体を提供する。
【解決手段】ガラスフィルム3と、粘着層2と、幅がガラスフィルム3よりも大きいフィルムであって、ガラスフィルム3の両側端部3a,3bからはみ出した耳部6(6a,6b)を有するように粘着層2を介してガラスフィルム3に設けられている支持フィルム1と、引張弾性率が5MPa〜800MPaでガラスフィルム3の厚さ以下のフィルムであって、耳部6に粘着層2又は他の粘着層を介して設けられている帯状フィルム4(4a,4b)とを備えるガラスフィルム積層体10によって、上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルム積層体に関し、さらに詳しくは、例えば有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等のディスプレイ、カラーフィルタ、太陽電池等に用いられる薄ガラス(「ガラスフィルム」ともいう。)に支持フィルムを貼付してなるガラスフィルム積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラスの製造技術の進歩により、厚さが100μm程度又はそれ以下の薄ガラス(ガラスフィルム)が製造されている。例えば、特許文献1には厚さが200μm以下のガラスフィルムが提案され、特許文献2には厚さが0.1〜100μmのガラスフィルムが提案されている。こうしたガラスフィルムは可撓性を有することから、そのガラスフィルム上への膜形成等にロールtoロールプロセスが適用できるため、従来のシート(枚葉)プロセスと比較して高い生産性を得ることができる。しかし、薄いガラスフィルムは耐衝撃性に劣り、工程上の取り扱いが困難になる。
【0003】
工程上の取り扱いを向上させるため、特許文献3には、粘着層を間に介してガラスフィルムと支持シートとを積層したガラスフィルム積層体が提案されている。このガラスフィルム積層体では、ガラスフィルムよりも幅広の支持シートを積層すると、ガラスフィルムの端部から支持シートがはみ出すことになる。そのため、そのはみ出した支持シート部がガラスフィルムの端部を保護するように作用するので、耐衝撃性に劣るガラスフィルムの保護効果をさらに高めることができるとされている。
【0004】
しかし、ガラスフィルムの端部からはみ出した支持シートの表面には粘着層が露出しているので、その粘着層にゴミが付着したりハンドリング時の貼り付き不具合が生じたりする。この問題に対しては、特許文献3では、ガラスフィルムの上面を覆うように剥離可能な保護シートを貼り合わせた態様や、ガラスフィルムの上面端部周縁を覆うように剥離可能な帯状の保護シートを貼り合わせた態様のガラスフィルム積層体を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−133174号公報
【特許文献2】特開2001−97733号公報
【特許文献3】特開2010−228166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載のガラスフィルム積層体では、ガラスフィルムの上面に貼り合わされた保護シートは剥離が予定されているので、剥離して粘着層が露出し易く、また、保護シートが剥離された後には再び支持シート上に設けられている粘着層が露出し、露出した粘着層がゴミ付着の問題やハンドリング時の貼り付き不具合の問題を引き起こすおそれがある。
【0007】
また、特許文献3には、ガラスフィルムの上面端部周縁を覆うように剥離可能な保護シートを貼り合わせた態様も提案されている。しかしながら、この保護シートを剥離せずに残したままで例えば露光工程に投入すると、保護シートの端部の段差が露光マスクに接触したり、その段差部分に現像液が溜まったりする等の問題が発生する。
【0008】
本発明者は、こうした問題を解決するために、ガラスフィルムからはみ出した支持シート(以下、本発明では「支持フィルム」という。)の粘着層上にのみ保護シート(以下、本発明では「帯状フィルム」という。)を貼り合わせる検討を行った。しかし、露出した粘着層上に帯状フィルムを単に貼り合わせただけでは、その帯状フィルム物性によって、支持フィルムにしわやカールが発生するという問題が生じた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ゴミ付着の問題やハンドリング時の貼り付き不具合の問題を引き起こす粘着層を露出させず、さらに、露光マスクに接触したり現像液が溜まったりする段差部分がなく、さらに、支持フィルムにしわやカールが発生するのを防ぐことができる、ガラスフィルム積層体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係るガラスフィルム積層体は、ガラスフィルムと、粘着層と、幅が前記ガラスフィルムよりも大きいフィルムであって、前記ガラスフィルムの両側端部からはみ出した耳部を有するように前記粘着層を介して前記ガラスフィルムに設けられている支持フィルムと、引張弾性率が5MPa〜800MPaで前記ガラスフィルムの厚さ以下のフィルムであって、前記耳部に前記粘着層又は他の粘着層を介して設けられている帯状フィルムと、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、ガラスフィルムよりも大きい幅の支持フィルムが、ガラスフィルムの両側端部からはみ出した耳部を有するようにガラスフィルム上に設けられ、且つその耳部には剥離が予定されていない帯状フィルムが設けられているので、その粘着層は露出することがない。その結果、ゴミ付着の問題やハンドリング時の貼り付き不具合の問題を低減できる。また、耳部にはガラスフィルムの厚さ以下の帯状フィルムが設けられているので、帯状フィルムはガラスフィルム上に載っておらず、帯状フィルムの端部は段差になっていない。その結果、ガラスフィルム積層体を例えば露光工程等に投入した場合であっても、帯状フィルムの端部が露光マスクに接触したり、現像液が溜まったりする等の問題が生じない。また、引張弾性率が5MPa〜800MPaの柔軟な帯状フィルムが耳部に設けられているので、耳部に帯状フィルムを単に貼り合わせただけでも、支持フィルムにしわやカールが発生するのを防ぐことができる。
【0012】
本発明に係るガラスフィルム積層体において、前記支持フィルムの幅が前記ガラスフィルムの幅よりも5mm〜100mmの範囲で大きいことが好ましい。
【0013】
この発明によれば、支持フィルムの幅が上記範囲であるので、ガラスフィルムの両側端部には、その両側端部からはみ出す耳部を有し、その耳部に上記引張弾性率の帯状フィルムが設けられている。その結果、ガラスフィルムの端部での割れを防ぎ且つ支持フィルムにしわやカールが発生するのを防ぐことができる。
【0014】
本発明に係るガラスフィルム積層体において、前記ガラスフィルム上には、パターニングされた膜が少なくとも設けられていることが好ましい。
【0015】
この発明によれば、ガラスフィルム上に、透明電極膜、金属膜、半導体膜、有機化合物膜、無機化合物膜等から選ばれるいずれか1種又は2種以上の膜がパターニングされた態様で設けられているので、そうしたガラスフィルム積層体は、例えば有機ELディスプレイ用素子基板、液晶ディスプレイ用素子基板、カラーフィルタ用素子基板、太陽電池用素子基板等に応用される。本発明に係るガラスフィルム積層体は、上記のように、ゴミ付着の問題やハンドリング時の貼り付き不具合の問題を低減でき、さらに、支持フィルムにしわやカールが発生するのを防ぐことができるという効果を奏する。それ故、そうした効果を奏するガラスフィルム積層体にパターニングされた膜が設けられることによって、そのガラスフィルム積層体を例えば有機ELディスプレイ用素子基板等として用いて有機ELディスプレイ等を製造した場合に、素子や画素での欠陥等の不具合を少なくすることができ、且つしわやカールの発生を防止した状態で製造工程に供給できるという効果を奏する。
【0016】
上記課題を解決するための本発明に係るガラスフィルム積層体の製造方法は、ガラスフィルムを準備する工程と、粘着層が設けられ、幅が前記ガラスフィルムよりも大きい支持フィルムを準備する工程と、引張弾性率が5MPa〜800MPaで前記ガラスフィルムの厚さ以下のフィルムであって、前記支持フィルムと前記ガラスフィルムとを積層させたときに、前記ガラスフィルムの両側端部から前記支持フィルムがはみ出した耳部に貼り合わせるための帯状フィルムを準備する工程と、前記粘着層を介して前記ガラスフィルムと前記支持フィルムとを貼り合わせる工程と、前記粘着層又は他の粘着層を介して前記帯状フィルムを前記耳部に貼り合わせる工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、製造されたガラスフィルム積層体は粘着層を露出しないので、ゴミ付着の問題やハンドリング時の貼り付き不具合の問題を低減できる。また、帯状フィルムはガラスフィルム上に載っておらず、帯状フィルムの端部は段差になっていないので、ガラスフィルム積層体を例えば露光工程等に投入した場合であっても、帯状フィルムの端部が露光マスクに接触したり、現像液が溜まったりする等の問題が生じない。また、引張弾性率が5MPa〜800MPaの柔軟な帯状フィルムが耳部に設けられているので、耳部に帯状フィルムを単に貼り合わせただけでも、支持フィルムにしわやカールが発生するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るガラスフィルム積層体及びその製造方法によれば、粘着層を露出しないので、ゴミ付着の問題やハンドリング時の貼り付き不具合の問題を低減できる。また、帯状フィルムはガラスフィルム上に載っておらず、帯状フィルムの端部は段差になっていないので、ガラスフィルム積層体を例えば露光工程等に投入した場合であっても、帯状フィルムの端部が露光マスクに接触したり、現像液が溜まったりする等の問題が生じない。また、引張弾性率が5MPa〜800MPaの柔軟な帯状フィルムが耳部に設けられているので、耳部に帯状フィルムを単に貼り合わせただけでも、支持フィルムにしわやカールが発生するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るガラスフィルム積層体の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明に係るガラスフィルム積層体の他の一例を示す模式的な断面図である。
【図3】ガラスフィルム積層体の端部構造を示す模式的な断面図である。
【図4】ガラスフィルム積層体の模式的な平面図である。
【図5】膜が設けられたガラスフィルム積層体の一例を示す模式的な断面図である。
【図6】ガラスフィルム積層体の製造装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るガラスフィルム積層体及びその製造方法について、図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有すれば種々の変形が可能であり、以下に具体的に示す実施形態に限定されるものではない。
【0021】
[ガラスフィルム積層体]
本発明に係るガラスフィルム積層体10は、図1及び図2に示すように、支持フィルム1と、粘着層2と、ガラスフィルム3と、帯状フィルム4とを備えている。そして、支持フィルム1は、幅がガラスフィルム3よりも大きく、ガラスフィルム3の両側端部3a,3bからはみ出した耳部6(6a,6b)を有するように粘着層2を介してガラスフィルム3に積層されており、帯状フィルム4(4a,4b)は、引張弾性率が5MPa〜800MPaで、ガラスフィルム3の厚さ以下であり、耳部6(6a,6b)に粘着層2又は他の粘着層2a,2bを介して設けられていることに特徴がある。
【0022】
以下、各構成について詳しく説明する。
【0023】
(支持フィルム)
支持フィルム1は、図1及び図2に示すように、ガラスフィルム3を支持するためのフィルムであり、粘着層2を介してガラスフィルム3に貼り合わされている。支持フィルム1としては、可撓性のある樹脂フィルムが用いられる。支持フィルム1を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ナイロン、セロファン、シリコーン樹脂等を挙げることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン等を好ましく挙げることができる。
【0024】
支持フィルム1の引張弾性率は特に限定されず、上記した各種の樹脂材料で構成されたフィルムが持つ引張弾性率であればよい。そうした引張弾性率は、通常、2000MPa〜5000MPaの範囲である。この範囲の引張弾性率の支持フィルム1は、ガラスフィルム3を安定して支持することができる強度を有している。引張弾性率が2000MPa未満では、強度が小さくなってガラスフィルム3を安定して支持することができないことがある。一方、引張弾性率が5000MPaを超えると、強度が大きすぎて得られたガラスフィルム積層体10に柔軟性がなく、ロール巻きし難いことがある。
【0025】
なお、支持フィルム1の引張弾性率は、JIS K6734:2000に基づき、平行部幅10mm、長さ40mmの支持フィルム1を引張試験ダンベルに成形し、JIS K7161:1994に準拠して引張試験を行って求めたものである。また、ASTM D−882−90に基づき、テンシロン引張り試験機に幅10mm、長さ100mmとなるようにセットし、引張り速度200mm/分、温度25℃、湿度65%RHの条件で測定した結果で評価することもできる。なお、本願では、ASTM D−882−90によって測定した値で評価している。
【0026】
支持フィルム1は、上記した樹脂材料で形成された単層フィルムであってもよいし、多層化されたフィルムであってもよい。また、発泡性の樹脂材料で作製された支持フィルム1であってもよいし、安定剤、可塑剤、衝撃改良剤、着色剤、強化剤等を加えた樹脂材料で作製された支持フィルム1であってもよい。支持フィルム1の着色の有無や透光性(透明、半透明、不透明等)も特に限定されない。
【0027】
支持フィルム1の厚さは、1μm〜200μmであることが好ましく、10μm〜50μmであることがより好ましい。この厚さ範囲の支持フィルム1は、ガラスフィルム3を支持できるとともに、得られたガラスフィルム積層体10をロール巻きした際の不具合を低減できる。支持フィルム1の厚さが1μm未満の場合には、薄すぎてガラスフィルム3を支持する効果を実質的に奏さない。一方、支持フィルム1の厚さが200μmを超えると、得られたガラスフィルム積層体10をロール巻きする際に、支持フィルム内の残留応力が大きくなり、支持フィルム1とガラスフィルム3との間で剥離が起こったり、ガラスフィルム3が破壊したりすることがある。
【0028】
支持フィルム1は、枚葉態様の支持フィルムであってもよいが、ロール巻き可能な長尺態様の支持フィルムが好ましく用いられる。本発明では、支持フィルム1の幅Aがガラスフィルム3の幅Bよりも大きいので、枚葉態様の支持フィルム1とガラスフィルム3を用いた場合には、その支持フィルム1の各辺、例えば四辺形の場合には4辺の端部がガラスフィルム3の端部よりも外方にはみ出し、耳部6(6a,6b)を有するものとなる。一方、ロール巻きされた長尺態様の支持フィルム1とガラスフィルム3を用いた場合には、図4に示すように、その支持フィルム1の幅方向Xの両辺の端部1a,1bが、ガラスフィルム3の両辺の端部3a,3bよりも外方にはみ出し、耳部6(6a,6b)を有するものとなる。耳部6(6a,6b)には、後述する粘着層2を介して帯状フィルム4が設けられる。
【0029】
支持フィルム1の幅Aは、ガラスフィルム3の幅Bよりも5mm〜100mm大きいことが好ましい。支持フィルム1の幅Aが上記範囲であれは、ガラスフィルムの両側の耳部6に、後述する帯状フィルム4が設けられる。その結果、ガラスフィルム3の端部での割れを防ぎ且つ支持フィルム1にしわやカールが発生するのを防ぐことができる。
【0030】
支持フィルム1にガラスフィルム3を積層した後の耳部6の幅(支持フィルム1の端部1a,1bとガラスフィルム3の端部3a,3bとの距離)は、2.5mm〜50mmであることが好ましい。この範囲の幅で耳部6が設けられていることにより、その幅に対応した帯状フィルム4を安定して貼り合わせることができる。耳部6の幅が2.5mm未満では、ガラスフィルム3と支持フィルム1とを貼り合わせてその幅の耳部6とすること自体が難しく、そのため、ガラスフィルム3が支持フィルム1からはみ出してしまうことがある。一方、耳部6の幅が50mmを超えると、幅が広すぎて、後述する引張弾性率の帯状フィルム4を設けても、支持フィルム1にしわやカールが発生するのを防ぐことができないことがある。
【0031】
こうした支持フィルム1は、一般的に知られている製造方法によりフィルム化することができ、押出法、カレンダー法、溶液・エマルジョンキャスト法等での製造が可能である。
【0032】
(粘着層)
粘着層2は、支持フィルム1とガラスフィルム3とを積層させるために、支持フィルム1とガラスフィルム3との間に設けられている。粘着層2は、最終的にガラスフィルム3から剥離できる層に限られず、ガラスフィルム3から剥離せずにガラスフィルム3に永久的又は半永久的に接着する層、すなわち接着層も包含する。
【0033】
粘着層2を構成する材料としては、天然ゴムや合成ゴムに粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤等を混合したゴム系粘着剤、アクリル酸エステルと他種官能性単量体とを共重合したアクリル系粘着剤、シリコーンゴムと樹脂からなるシリコーン系粘着剤、ポリエーテルやポリウレタン系粘着剤等を挙げることができる。また、形態としては、溶剤型粘着剤、非水エマルジョン型粘着剤、水系エマルジョン型粘着剤、水溶性型粘着剤、無溶剤型粘着剤、液状硬化型粘着剤等を挙げることができる。なお、粘着層2がガラスフィルム3に永久的又は半永久的に接着する接着層として設けられる場合には、各種の熱可塑性樹脂接着剤や熱硬化性樹脂接着剤を適用してもよい。
【0034】
粘着層2は、上記した材料で形成された単層構造であってもよいし、多層化された層であってもよい。また、粘着層2には、必要に応じて各種の添加剤を加えた粘着剤で形成された粘着層2であってもよい。粘着層2の着色の有無や透光性(透明、半透明、不透明等)も特に限定されない。
【0035】
粘着層2の厚さは、0.5μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましい。この厚さ範囲の粘着層2は、その粘着層2を構成する粘着剤の種類にもよるが、支持フィルム1とガラスフィルム3とをその後のハンドリングやロール巻きの際の問題を低減できるように、好ましく貼り合わせることができる。粘着層2の厚さが0.5μm未満の場合には、支持フィルム1とガラスフィルム3との間の貼り合わせが不十分となることがある。一方、粘着層2の厚さが100μmを超えると、粘着層2が層間剥離したり、貼り合わせの際に粘着層2がガラスフィルム3からはみ出し、ロールに接触したりすることがある。
【0036】
粘着層2の形成には、上記の材料を溶剤に溶解して粘着層用塗工液とし、この塗工液を支持フィルム1上に直接塗工する方法、又は、この塗工液を剥離性シートに一旦塗工した後に支持フィルム1上に転写する方法(転写方式)を用いることができる。後者の転写方式は、支持フィルム1に耐溶剤性がない場合や、支持フィルム1に溶剤乾燥時の熱に対する耐熱性が場合等に好ましく用いられる。
【0037】
塗工方法としては、例えば、ダイコート法、コンマコート法、ナイフコート法、グラビアコート法、ロールコート法等を用いることができる。
【0038】
粘着層2は、支持フィルム1の外寸を超えない大きさで設けられているか、又は、ガラスフィルム3の外寸を超えない大きさで設けられている。すなわち、粘着層2は、支持フィルム1の平面視形状と同じ形状で設けられているか、又は、ガラスフィルム3の平面視形状と同じ形状で設けられている。前者は、粘着層2が支持フィルム1を超えない大きさで支持フィルム1の一方の面に設けられており、通常は同じ大きさで全面に設けられており、そこにガラスフィルム3が貼り合わされている(図1参照)。後者は、粘着層2がガラスフィルム3を超えない大きさでガラスフィルム3の一方の面に設けられており、通常は同じ大きさで全面に設けられており、そこに支持フィルム1が貼り合わされている(図2参照)。
【0039】
前者の場合、粘着層2は支持フィルム1の幅方向Xの両側の耳部6(6a,6b)に設けられているので、その耳部6に粘着層を有さない帯状フィルム4(4a,4b)を貼り合わせて図1に示すガラスフィルム積層体10が製造される。後者の場合、粘着層2は支持フィルム1の幅方向Xの両側の耳部6(6a,6b)に設けられていないので、その耳部6に粘着層2a,2bを有する帯状フィルム4(4a,4b)を貼り合わせて図2に示すガラスフィルム積層体10が製造される。
【0040】
(ガラスフィルム)
ガラスフィルム3は、粘着層2を介して支持フィルム1に積層される薄ガラスである。ガラスフィルム3を構成するガラス材質としては、ソーダライムガラス、シリカガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリホウ珪酸ガラス等、ほぼいかなるガラス組成のものも適用できる。ガラスフィルム3にアルカリ成分が含有されていると、表面で陽イオンの置換が発生し、いわゆるソーダ吹き現象が生じ、構造的に粗となることがある。なお、無アルカリホウ珪酸ガラスとは、アルカリ成分が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分が1000ppm以下のガラスのことである。また、強化ガラス、表面処理ガラス等の二次加工を施したガラスフィルム3も、得られるガラスフィルム積層体10の用途に応じて可能である。
【0041】
ガラスフィルム3は、原理的にはガラス溶融体の固化する温度より上の温度にてガラス溶融体を引き延ばして作ることができる。ガラス組成、ガラス溶融体の厚さ、温度、引き取り速度によりガラスフィルム3の厚さを制御することができる。
【0042】
ガラスフィルム3の厚さは、10μm〜200μmであることが好ましく、30μm〜150μmであることがより好ましい。この厚さ範囲のガラスフィルム3は、ハンドリング、ロール巻き等に効果的である。ガラスフィルム3の厚さが10μm未満の場合には、そのガラスフィルム3自体のハンドリングが極めて難しくなると共に、僅かな衝撃で破損しやすくなり、長尺のガラスフィルム3の幅方向Xに断線が走ることがある。一方、ガラスフィルム3の厚さが200μmを超えると、得られたガラスフィルム積層体10をロール巻きする際に、ガラスフィルム3内の残留応力が大きくなり、ガラスフィルム3と支持フィルム1との間で剥離が起こったり、ガラスフィルム3が破壊したりすることがある。
【0043】
ガラスフィルム3は、枚葉態様のガラスフィルム3であってもよいが、ロール巻き可能な長尺態様のガラスフィルム3が好ましく用いられる。本発明では、支持フィルム1の幅Aがガラスフィルム3の幅Bよりも大きいので、枚葉態様のガラスフィルム3と支持フィルム1を用いた場合には、図1〜図3に示すように、支持フィルム1の各辺、例えば四辺形の場合には4辺の端部1a,1bが、ガラスフィルム3の端部3a,3bからはみ出すように配置されることになる。一方、ロール巻きされた長尺態様のガラスフィルム3と支持フィルム1を用いた場合には、図1〜図4に示すように、支持フィルム1の幅方向Xの両辺の端部1a,1bが、ガラスフィルム3の両辺の端部3a,3bよりもはみ出すように配置されることになる。
【0044】
なお、支持フィルム1の幅A、ガラスフィルム3の幅B、支持フィルム1の幅方向Xの各端部1a,1bとガラスフィルム3の各端部3a,3bとの距離a,bは、種々の方法で測定できる。本発明及び後述する各実施例では、測定対象である支持フィルム1、ガラスフィルム3及びガラスフィルム積層体10を平面視した際の拡大画像と、基準スケールの拡大画像とを比較して測定した。
【0045】
(帯状フィルム)
帯状フィルム4は、図1〜図4に示すように、引張弾性率が5MPa〜800MPaで、ガラスフィルム3の厚さT以下の厚さTのフィルムである。そして、耳部6に上記した粘着層2(図1参照)又は他の粘着層2a,2b(図2参照)を介して設けられている。こうした帯状フィルム4は支持フィルム1の耳部6に設けられているが、その帯状フィルム4は剥離が予定されていないので、その耳部6に設けられている粘着層2は露出することがない。その結果、ガラスフィルム積層体10は、ゴミ付着の問題やハンドリング時の貼り付き不具合の問題を引き起こすことがない。
【0046】
引張弾性率が5MPa〜800MPaの帯状フィルム4としては、例えば、低密度ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、シリコーン樹脂(ゴム)フィルム、ブタジエン樹脂(ゴム)フィルム、ウレタン樹脂(ゴム)フィルム、)等を挙げることができる。引張弾性率が5MPa〜800MPaのこれら帯状フィルム4は、耳部6に設けられている。その結果、帯状フィルム4を耳部6に設けない場合に比べ、支持フィルム1にしわやカールが発生するのを防ぐことができる。引張弾性率が5MPa未満では、軟らかすぎ、耳部6に設けても支持フィルム1にしわやカールが発生したり、切断したりするためうまく貼れないことがある。一方、引張弾性率が800MPaを超えると、軟らかくなくなり、耳部に設けても支持フィルム1のしわやカールが発生してしまうことがある。
【0047】
なお、引張弾性率はヤング率と同義であり、本願では、JIS K6734:2000に基づき、平行部幅10mm、長さ40mmの帯状フィルム3を引張試験ダンベルに成形し、JIS K7161:1994に準拠して引張試験を行って求めたものである。また、ASTM D−882−90に基づき、テンシロン引張り試験機に幅10mm、長さ100mmとなるようにセットし、引張り速度200mm/分、温度25℃、湿度65%RHの条件で測定した結果で評価することもできる。なお、本願では、ASTM D−882−90によって測定した値で評価している。
【0048】
上記範囲の引張弾性率の帯状フィルム4を耳部6に設けた場合に、支持フィルム1にしわやカールが発生するのを防ぐことができる理由は以下のとおりである。すなわち、帯状フィルム4と支持フィルム1のひずみ量に差があるためと考えられる。帯状フィルム4が支持フィルム1の引張弾性率を超える高い値である場合には、帯状フィルム4が支持フィルム1のひずみに追従しないため、カールやしわの要因となると考えられる。一方、帯状フィルム4の引張弾性率が上記範囲のように柔軟であれば、支持フィルム1のひずみに追従するため、しわやカールが発生するのを防ぐことができると考えられる。
【0049】
帯状フィルム4は、全体として5MPa〜800MPaの引張弾性率であれば、上記した樹脂材料で形成された単層フィルムであってもよいし、多層化されたフィルムであってもよい。また、発泡性の樹脂材料で作製された帯状フィルム4であってもよいし、安定剤、可塑剤、衝撃改良剤、着色剤、強化剤等を加えた樹脂材料で作製された帯状フィルム4であってもよい。帯状フィルム4の着色の有無や透光性(透明、半透明、不透明等)も特に限定されない。
【0050】
帯状フィルム4は耳部6のみに設けられており、しかもその厚さTは、ガラスフィルム3の厚T以下である。厚さTの上限はガラスフィルム3の厚さTと同じであり、厚さTの下限は1μmである。したがって、帯状フィルム4はガラスフィルム3上に載っておらず、帯状フィルム4の端部は段差になっていない。その結果、ガラスフィルム積層体10を例えば露光工程等に投入した場合であっても、帯状フィルム4の端部が露光マスクに接触したり、現像液が溜まったりする等の問題が生じない。なお、帯状フィルム4の厚さTが1μm未満では、その厚さTが薄すぎ、帯状フィルム4を上手く貼り合わせることができないことがあり、また、耳部6に設けてもしわやカールを防ぐ効果が生じないことがある。
【0051】
帯状フィルム4の幅Cは、支持フィルム1の端部1a,1bとガラスフィルム3の端部3a,3bとの間の距離a,b、すなわち耳部6の幅よりも小さい。帯状フィルム4の幅Cが耳部6の幅(距離a,b)と同じ又はそれを超える場合は、耳部6に貼り合わせた後の帯状フィルム4が支持フィルム1の端部1a,1bからはみ出すので、ガラスフィルム積層体10を搬送し、その後の工程での位置決めを行う場合に、支持フィルム1の端部1a,1bでの位置検出結果に誤差が生じやすく、例えば膜のパターニングを行う際の露光パターンの形成時に不具合が生じることがある。
【0052】
帯状フィルム4の原反は、一般的に知られている製造方法によりフィルム化することができ、押出法、カレンダー法、溶液・エマルジョンキャスト法等での製造が可能である。そして、その原反を、耳部6に対応した所定の幅に切断して帯状フィルム4とすることができる。
【0053】
以上説明したように、本発明に係るガラスフィルム積層体10によれば、粘着層2を露出しないので、ゴミ付着の問題やハンドリング時の貼り付き不具合の問題を引き起こすことがない。また、帯状フィルム4はガラスフィルム3上に載っておらず、帯状フィルム4の端部は段差になっていないので、ガラスフィルム積層体10を例えば露光工程等に投入した場合であっても、帯状フィルム4の端部が露光マスクに接触したり、現像液が溜まったりする等の問題が生じない。また、引張弾性率が5MPa〜800MPaの柔軟な帯状フィルム4が耳部6に設けられているので、耳部6に帯状フィルム4を単に貼り合わせただけでも、支持フィルム1にしわやカールが発生するのを防ぐことができる。
【0054】
(その他の構成)
ガラスフィルム3上には、図5に示すように、膜5を設けてもよい。膜5は特に限定されないが、例えば、透明電極膜、金属膜、半導体膜、レジスト膜、有機化合物膜、無機化合物膜等から選ばれるいずれか1種又は2種以上の膜を挙げることができる。特にこうした膜5が、その用途に応じてパターニングされていることが好ましい。
【0055】
パターニング方法は、従来公知の各種の方法を適用でき、特に限定されない。例えば、レジストを用いたフォトリソグラフィを適用してパターニングしてもよいし、ドライエッチングやウエットエッチングでパターニングしてもよい。
【0056】
ガラスフィルム3上にパターニングされた膜5を設けてなるガラスフィルム積層体10の例としては、例えば、有機ELディスプレイ用素子基板、液晶ディスプレイ用素子基板、カラーフィルタ用素子基板、太陽電池用素子基板等を挙げることができる。有機ELディスプレイ用素子基板では、ガラスフィルム積層体10のガラスフィルム3上に、パターニングされたITO等の透明電極膜等を設けることができる。液晶ディスプレイ用素子基板では、同様のパターニングされたITO等の透明電極膜や、パターニングされた配向膜を設けることができる。カラーフィルタ用素子基板では、同様のパターニングされたITO等の透明電極膜や、着色層区画用隔壁、及び着色層等を設けることができる。また、太陽電池用素子基板では、同様のパターニングされたITO等の透明電極膜等を設けることができる。また、これらの各素子基板に各種の機能膜パターンを形成するために、ガラスフィルム3上にレジスト膜を成膜し、そのレジスト膜を例えばフォトリソグラフィでパターニングしてなる膜5であってもよい。
【0057】
本発明に係るガラスフィルム積層体10は、上記のように、ゴミ付着の問題やハンドリング時の貼り付き不具合の問題を低減でき、さらに、支持フィルム1にしわやカールが発生するのを防ぐことができるという効果を奏する。それ故、そうした効果を奏するガラスフィルム積層体10にパターニングされた膜4が設けられることによって、そのガラスフィルム積層体10を例えば有機ELディスプレイ用素子基板、液晶ディスプレイ用素子基板、カラーフィルタ用素子基板、太陽電池用素子基板等として用いて有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、カラーフィルタ、太陽電池等を製造した場合に、素子や画素での欠陥等の不具合を少なくすることができ、且つしわやカールの発生を防止した状態で製造工程に供給できるという効果を奏する。
【0058】
[ガラスフィルム積層体の製造方法]
本発明に係るガラスフィルム積層体10の製造方法は、ガラスフィルム3を準備する工程と、粘着層2が設けられ、幅Aがガラスフィルム3よりも大きい支持フィルム1を準備する工程と、引張弾性率が5MPa〜800MPaで厚さTがガラスフィルム3の厚さT以下のフィルムであって、支持フィルム1とガラスフィルム3とを積層させたときに、ガラスフィルム3の両側端部3a,3bから支持フィルム1がはみ出した耳部6(6a,6b)に貼り合わせるための帯状フィルム4を準備する工程と、粘着層2を介してガラスフィルム3と支持フィルム1とを貼り合わせる工程と、前記粘着層(2)又は他の粘着層(2a,2b)を介して帯状フィルム4を耳部6に貼り合わせる工程と、を有する。この製造方法は、上記した本発明に係るガラスフィルム積層体10を製造するための一態様である。なお、上記した本発明に係るガラスフィルム積層体10は他の方法で製造したものであってもよい。
【0059】
図6は、この製造方法を実施することができるガラスフィルム積層体10の製造装置20の一例を示す模式図である。図6に示すように、先ず、ロール巻き状の支持フィルムロール31は支持フィルム供給部21に装着され、ロール巻き状の帯状フィルム32は帯状フィルム供給部22に装着され、ロール巻き状のガラスフィルムロール33はガラスフィルム供給部23に装着されている。
【0060】
支持フィルムロール31は、粘着層2が片面に設けられた支持フィルム1がカバーシートを介してロール巻きされており、そのカバーシートを剥離しながら支持フィルムロール31から繰り出された支持フィルム1と、ガラスフィルムロール33から繰り出されたガラスフィルム3とが貼り合わせ部24で貼り合わされる。なお、支持フィルム1とガラスフィルム3とは、必要に応じて配置されたガイドローラ41で貼り合わせ部24まで案内される。貼り合わせ部24では、ニップローラ43によって、支持フィルム1とガラスフィルム3とを粘着層2を介して貼り合わせる。貼り合わせた後のガラスフィルム積層体は、搬送路26を通って帯状フィルム4の貼り合わせ部25に送られる。
【0061】
帯状フィルムロール32は、粘着層が設けられておらず、そのままロール巻きされている。この帯状フィルムロール32は、所定幅の帯状フィルム4が供給されたガラスフィルム積層体の幅方向Xの両側の耳部6に対応するように、それぞれ1つずつ(計2つ)配置されている。帯状フィルムロール32から繰り出された帯状フィルム4は、ガラスフィルム積層体の両側の耳部6,6に貼り合わされる。なお、帯状フィルム4は、必要に応じて配置されたガイドローラ42で貼り合わせ部25まで案内される。貼り合わせ部25では、ニップローラ44によって、帯状フィルム4を耳部6の粘着層2を介して帯状フィルム4と支持フィルム1とを貼り合わせる。貼り合わせた後のガラスフィルム積層体10は、搬送路26を通って巻取部27に送られ、ロール巻き状のガラスフィルム積層体ロール34となる。
【0062】
なお、上記の場合は、支持フィルム1に粘着層2が設けられている場合の例であるが、支持フィルム1の耳部6に粘着層2が設けられていない場合には、帯状フィルム4に粘着層2a,2bが設けられている。この形態は、ガラスフィルム3に粘着層2が設けられ、そのガラスフィルム3が支持フィルム1に貼り合わされている場合に好ましく適用される。
【0063】
この製造方法で製造されたガラスフィルム積層体10は、上記した本発明に係るガラスフィルム積層体10と同様の作用効果を奏するものとなる。すなわち、製造されたガラスフィルム積層体10は粘着層2を露出しないので、巻取部27でロール巻きされた場合でも、ゴミ付着の問題やハンドリング時の貼り付き不具合の問題を引き起こすことがない。また、帯状フィルム4はガラスフィルム3上に載っておらず、帯状フィルム4の端部は段差になっていないので、ガラスフィルム積層体10を例えば露光工程等に投入した場合であっても、帯状フィルム4の端部が露光マスクに接触したり、現像液が溜まったりする等の問題が生じない。また、引張弾性率が5MPa〜800MPaの柔軟な帯状フィルム4が耳部6に設けられているので、耳部6に帯状フィルム4を単に貼り合わせただけであっても、支持フィルム1にしわやカールが発生するのを防ぐことができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例で得られた内容のみには限定されない。以下の実施例と比較例では、ガラスフィルム積層体10を製造し、さらにフォトリソグラフィ工程に供してガラスフィルム積層体10上に設けた膜4をパターニングした場合に、その一連の工程で、搬送不具合、支持フィルムのしわやカールについて評価した。
【0065】
[実施例1]
支持フィルム1として、厚さ59μm、幅330mm、長さ10mの粘着層付きPETフィルム(日東電工株式会社製、RP207、引張弾性率:4000MPa)が3インチのコアに巻かれた支持フィルムロール31を準備した。この支持フィルム1に設けられた粘着層2上には、カバーシートが剥離自在に貼り付けられている。帯状フィルム4として、厚さ50μm、幅10mm、長さ10mのポリエチレンフィルム(出光ユニテック株式会社製、ユニラックス RS−570C、引張弾性率:800MPa)が3インチのコアに巻かれた帯状フィルムロール32を2本準備した。ガラスフィルム3として、厚さ70μm、幅300mm、長さ10mの薄板ガラス(日本電気硝子株式会社製、OA−10G)が6インチのコアに巻かれたガラスフィルムロール33を準備した。
【0066】
続いて、図6に示したラミネート装置を用い、支持フィルム供給部21に支持フィルムロール31を設置し、帯状フィルム供給部22に2本の帯状フィルムロール32を設置し、ガラスフィルム供給部23にガラスフィルムロール33を設置した。続いて、ガラスフィルムロール33から繰り出したガラスフィルム3と、支持フィルムロール23から繰り出した支持フィルム1とを、各々のフィルムの中心合わせを行って貼り合わせ部24のニップローラ43でラミネートした。その後、搬送路26を搬送させて、ラミネートした後の積層体の幅方向Xの端部に存在する耳部6a,6bに、2本の帯状フィルムロール32からそれぞれ繰り出された帯状フィルム4をそれぞれ位置合わせし、貼り合わせ部25のニップローラ44でラミネートした。その後、搬送路26を搬送させて、巻取部27で直径が6インチのコアに巻き取り、ガラスフィルム積層体ロール34を得た。
【0067】
次に、ガラスフィルム積層体ロール34を塗工装置(図示しない)の巻出部にセットし、ガラスフィルム積層体10を繰り出した。続いて、繰り出されたガラスフィルム積層体10のガラスフィルム3上に、マイクログラビア印刷によってフォトレジストを塗布し、その後に巻き取った。続いて、フォトレジストを形成した後のガラスフィルム積層体ロールを露光装置の巻出部にセットし、ガラスフィルム積層体ロールを繰り出した。そして、ガラスフィルム積層体10を露光ステージに搬送し、5回の露光動作を実施した後、現像装置を用いて現像を行い、5箇所にパターンが形成されたパターン付ガラスフィルム積層体を得た。
【0068】
[実施例2]
実施例1において、帯状フィルム4をポリエチレンフィルム(旭化成株式会社製、サランラップ、ポリ塩化ビニリデン製ラップ、引張弾性率:400MPa)とした以外は実施例1と同様にして、パターン付ガラスフィルム積層体を得た。
【0069】
[実施例3]
実施例1において、帯状フィルム4をポリエチレフィルム(旭化成株式会社製、サランラップ−ポリエチレン製ラッップ、引張弾性率:200MPa)とした以外は実施例1と同様にして、パターン付ガラスフィルム積層体を得た。
【0070】
[比較例1]
実施例1において、帯状フィルム4をPETフィルム(東洋紡績株式会社製E5101、引張弾性率:4000MPa)とした以外は実施例1と同様にして、パターン付ガラスフィルム積層体を得た。
【0071】
[比較例2]
実施例1において、帯状フィルム4をポリスチレンフィルム(電気化学工業株式会社製、クリアレンC、引張弾性率:1500MPa)とした以外は実施例1と同様にして、パターン付ガラスフィルム積層体を得た。
【0072】
[比較例3]
実施例1において、帯状フィルム4をポリエチレンフィルム(プライムポリマー株式会社製、ハイゼックス、引張弾性率:1000MPa)とした以外は実施例1と同様にして、パターン付ガラスフィルム積層体を得た。
【0073】
[測定と結果]
実施例1〜3及び比較例1〜3により得られたパターン付ガラスフィルム積層体について、搬送不具合と支持フィルム1の耳部6でのしわやカールの発生の有無とを評価し、その結果を表1に示した。搬送不具合は、作製したガラスフィルム積層体10を用いてフォトリソグラフィ工程を経た後に、5段階の相対評価で評価したものである。「1」は何も問題がなく特に良好なものであり、「2」はカールが僅かに見られたものの良好なものであり、「3」はカールが見られる上にしわも一部見られあまり良いものではなく、「4」は端部全体にわたってしわが見られて使用できないものであり、「5」は端部全体にわたってしわが見られる上、大きなカールが見られて使用できないものである。「2」以下の数字(1,2)であればガラスフィルム積層体10を用いてフォトリソグラフィ工程に供する上で大きな歩留まりの低下が生じないと判断できるレベルとした。
【0074】
また、しわやカールの評価についても5段階の相対評価で評価した。「1」は何も問題がなく特に良好なものであり、「2」はしわやカールが僅かに見られたものの良好なものであり、「3」はしわやカールが一部見られあまり良いものではなく、「4」はしわやカールが見られて使用できないものであり、「5」はしわやカールが多く見られて使用できないものである。「2」以下の数字(1,2)であればガラスフィルム積層体10を用いてフォトリソグラフィ工程に供する上で大きな歩留まりの低下が生じないと判断できるレベルとした。なお、しわは、耳部6にロールの進行方向に沿って波をうっているような形態で現れ、カールは、ロールの幅方向に弧を描くような形態で現れる。
【0075】
【表1】

【0076】
表1の評価結果より、帯状フィルム4の引張弾性率が800MPa以下、より好ましくは400MPa以下であれば、支持フィルム1の耳部6にカールやしわが発生せず、搬送不具合も生じないガラスフィルム積層体10が得られることを確認した。なお、この実施例では、引張弾性率4000MPaのPETフィルムを用いているが、本発明者は、上記した引張弾性率の範囲(2000MPa〜5000MPa)の各種の支持フィルム1を用いても、同様の結果になることも確認した。
【符号の説明】
【0077】
1 支持フィルム
1a,1b 支持フィルムの端部
2 粘着層
2a,2b 帯状フィルムに設けられている粘着層
3 ガラスフィルム
3a,3b ガラスフィルムの端部
4,4a,4b 帯状フィルム
5 膜
6,6a,6b 耳部
10,10A,10B,10C ガラスフィルム積層体
20 ガラスフィルム積層体の製造装置
21 支持フィルム供給部
22 帯状フィルム供給部
23 ガラスフィルム供給部
24 支持フィルムの貼り合わせ部
25 帯状フィルムの貼り合わせ部
26 搬送路
27 巻取部
31 支持フィルムロール
32 帯状フィルムロール
33 ガラスフィルムロール
34 ガラスフィルム積層体ロール
41,42 ガイドローラ
43,44 ニップローラ
【0078】
A 支持フィルムの幅
B ガラスフィルムの幅
C 帯状フィルムの幅
a 支持フィルムの一方の端部からガラスフィルムの端部までの距離
b 支持フィルムの他方の端部からガラスフィルムの端部までの距離
ガラスフィルムの厚さ
帯状フィルムの厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムと、粘着層と、幅が前記ガラスフィルムよりも大きいフィルムであって、前記ガラスフィルムの両側端部からはみ出した耳部を有するように前記粘着層を介して前記ガラスフィルムに設けられている支持フィルムと、引張弾性率が5MPa〜800MPaで前記ガラスフィルムの厚さ以下のフィルムであって、前記耳部に前記粘着層又は他の粘着層を介して設けられている帯状フィルムと、を備えることを特徴とするガラスフィルム積層体。
【請求項2】
前記支持フィルムの幅が前記ガラスフィルムの幅よりも5mm〜100mm大きい、請求項1に記載のガラスフィルム積層体。
【請求項3】
前記ガラスフィルム上には、パターニングされた膜が少なくとも設けられている、請求項1又は2に記載のガラスフィルム積層体。
【請求項4】
ガラスフィルムを準備する工程と、
粘着層が設けられ、幅が前記ガラスフィルムよりも大きい支持フィルムを準備する工程と、
引張弾性率が5MPa〜800MPaで前記ガラスフィルムの厚さ以下のフィルムであって、前記支持フィルムと前記ガラスフィルムとを積層させたときに、前記ガラスフィルムの両側端部から前記支持フィルムがはみ出した耳部に貼り合わせるための帯状フィルムを準備する工程と、
前記粘着層を介して前記ガラスフィルムと前記支持フィルムとを貼り合わせる工程と、
前記粘着層又は他の粘着層を介して前記帯状フィルムを前記耳部に貼り合わせる工程と、を有することを特徴とするガラスフィルム積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−22901(P2013−22901A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161785(P2011−161785)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】