説明

ガラス基体へのめっき方法、そのめっき方法を用いる磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法及び垂直磁気記録媒体の製造方法

【課題】 ガラス材料からなる基体上に1μm以上の厚い膜であっても密着性良く均一に無電解めっき法でめっき膜を形成することが可能なガラス基体へのめっき方法を提供する。
【解決手段】 ガラス材料からなる基体の表面に、少なくとも、基体表面のシラノール基を2倍以上に増加させる希酸水溶液によるガラス活性化処理S2、シランカップリング剤処理S3、Pd触媒化処理S4、Pd結合化処理S5を順次施した後、無電解めっきS6によりめっき膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス材料からなる基体へのめっき方法、そのめっき方法を用いる磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法、及びその製造方法を用いる垂直磁気記録媒体の製造方法に関し、特にハードディスク装置に搭載する磁気記録媒体に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやデジタル家電製品などの記憶装置としてハードディスク装置が多く用いられている。このハードディスク装置に搭載する磁気記録媒体としての磁気ディスク(ハードディスク)は、長手磁気記録方式の場合には、一般に、ディスク状非磁性基板の表面に無電解めっき法でNi−P層を形成し、そのNi−P層の表面に所要の平滑化処理、テクスチャリング処理などを施した後、その表面上に非磁性金属下地層、強磁性合金薄膜の磁性層、保護層などをスパッタリング法などで順次形成することにより作製される。
従来、非磁性基板の材料としてはアルミニウム合金が用いられてきた。近年、ハードディスク装置の高容量化、小型化、軽量化が急速に進んでおり、それに対応して磁気ディスクも従来よりも平坦度が高く、小径、薄形のものが要求されてきている。このような市場の要求に対して、従来のアルミニウム合金からなる基板では対応が難しく、基板材料としてガラスが用いられるようになってきている。
【0003】
ガラス基板を用いる場合にも表面にNi−P層を形成してアルミニウム合金基板の場合と同様な表面特性を有するものとすることが、良好な特性の磁気ディスクを得るために望まれているが、ガラス材料からなる基体上に無電解めっき法でめっき膜を密着性良く均一、平滑に形成することは技術的に難しく、その課題を解決するための無電解めっきの前後処理として種々の方法が提案されている。
例えば、塩化パラジウムおよび塩化スズ(II)を含む水溶液で処理し、次いで炭酸アルカリ水溶液、炭酸水素アルカリ水溶液、または両者の混合水溶液で処理した後、無電解めっきを行う方法(特許文献1参照)、クロム酸−硫酸混合溶液および硝酸溶液で二段階エッチング処理し、次いで強アルカリ性溶液でエッチングした後、希薄な塩化スズ(II)で増感処理し、さらに銀塩溶液およびパラジウム塩溶液で活性化処理した後無電解めっきを行う方法(特許文献2参照)、硫酸と重クロム酸塩カリウムの温液で清浄化した後、塩酸で酸性にした塩化スズ(II)で増感、次いで塩化パラジウムの溶液で活性化した後、無電解めっきを行う方法(特許文献3参照)、アルカリ脱脂し、フッ化水素酸でエッチングした後、塩化スズ(II)の溶液で増感、次いで塩化パラジウムの溶液で活性化した後、無電解めっきを行う方法などが提案されている。
【0004】
また、特許文献4には、良好な磁気ディスクを得るに十分な密着性と平滑性を有するNi−P層をガラス基板上に形成するための無電解Ni−Pめっき方法が提案されている。
これは、前処理として、ガラス基板をまず十分に脱脂し、続いてエッチングを行ってアンカー効果を高め、エッチング時に生じ基板表面に付着した異物を除去し、表面調整工程を施して基板表面を化学的に均一化し、続いて感受化処理、活性化処理を行った後、無電解Ni−Pめっきを行うものであり、エッチング液としてはフッ化水素酸とフッ化水素カリウムを含む水溶液を用い、表面異物除去には塩酸を用い、表面調整にはナトリウムメトキシドを含む水溶液を用いると好適とされている。
同様に、特許文献5には、ガラス基板表面に、水酸化カリウム溶液によるアルカリ脱脂処理,フッ酸によるエッチング処理,温純水処理,シランカップリング剤処理,塩化パラジウム水溶液によるアクチベーター処理,次亜リン酸ナトリウム水溶液によるアクサレーター処理を順次施した後、無電解Ni−Pめっきを行い、続いて、加熱処理を施すことによる磁気ディスク用ガラス基板への無電解Ni−Pめっき層の形成方法が提案されている。
【0005】
一方、磁気記録の高密度化を実現する技術として、従来の長手磁気記録方式に代えて、垂直磁気記録方式が注目されつつある。
特に、特許文献6に示されるように、情報を記録する役割を担う磁気記録層の下側に、磁気ヘッドから発生する磁束を通しやすく、かつ飽和磁束密度Bsの高い軟磁性裏打ち層と呼ばれる軟磁性膜を付与した二層垂直磁気記録媒体は、磁気ヘッドの発生磁界強度とその磁界勾配を増加させ、記録分解能を向上させるとともに媒体からの漏洩磁束も増加させうることから、高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体として好適であることが知られている。
この軟磁性裏打ち層としては、スパッタリング法により形成した200nmから500nm程度の膜厚を有するNi−Fe合金膜やFe−Si−Al合金膜、あるいはCoを主体とするアモルファス合金膜等が一般的に用いられている。しかしながら、スパッタリング法によってこれらの比較的厚い膜を形成することは、生産コストや大量生産性の観点から好ましくない。
【0006】
このような問題を解決するために、無電解めっき法により形成された軟磁性膜を、軟磁性裏打ち層として用いることが提案されている。例えば特許文献7では、非磁性NiPめっき膜が付与されたAl合金ディスク基板上にNiFeP膜をめっき法で作製し、軟磁性裏打ち層として使用することが提案されている。
また、非特許文献1ではガラス基板上に形成されたCoNiFePめっき膜が、同じく非特許文献2では非磁性NiPめっき膜が付与されたAl合金ディスク基板上に形成された軟磁性NiPめっき膜が提案されている。
ここで、軟磁性裏打ち層が磁区構造を形成し、磁壁とよばれる磁化遷移領域が生じると、この磁壁から発生するスパイクノイズと呼ばれるノイズが垂直磁気記録媒体としての性能を劣化させることが知られている。したがって軟磁性裏打ち層としては磁壁の形成が抑制されていることが必要である。
【0007】
前述のNiFePめっき膜では、磁壁が形成されやすいため、めっき膜上にMnIr合金薄膜をスパッタリング法により形成することで磁壁形成を抑制する必要のあることが、非特許文献3に記載されている。また、前述のCoNiFePめっき膜では、磁場中でめっきを行うことで磁壁形成が抑制されると記載されており、軟磁性NiPめっき膜では、スパイクノイズは発生しないとされている。
特許文献8では、保磁力Hcが30〜300OeのCo又はCoNi合金からなる裏打ち層を、ディスク基板の円周方向に磁気異方性を有するように形成することで、スパイクノイズの発生が抑制できることも提案されている。この例では、裏打ち層の形成はスパッタリング法や蒸着法等の乾式成膜であるが、特許文献9にはHcを30Oe以上としてスパイクノイズの抑制が可能なCo−B膜をめっき法によって形成する方法が提案され、軟磁性裏打ち層としての使用可能性が示唆されている。
【特許文献1】特開平1−176079号公報
【特許文献2】特開昭53−19932号公報
【特許文献3】特開昭48−85614号公報
【特許文献4】特開平7−334841号公報
【特許文献5】特開2000−163743号公報
【特許文献6】特公昭58−91号公報
【特許文献7】特開平7−66034号公報
【特許文献8】特開平2−18710号公報
【特許文献9】特開平5−1384号公報
【非特許文献1】第9回 ジョイント スリーエム/インターマグ コンファレンスの抄録(Digest of 9th Joint MMM/Intermag Conference), EP-12, P.259 (2004)
【非特許文献2】第9回 ジョイント スリーエム/インターマグ コンファレンスの抄録(Digest of 9th Joint MMM/Intermag Conference), GD-13, P.368 (2004)
【非特許文献3】日本応用磁気学会誌, Vol.28, No.3, P.289-294 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のNiFePめっき膜では、スパイクノイズ抑制のために、めっき膜上にMnIr合金薄膜をスパッタリング法により形成することで磁壁形成を抑制する必要があるが、磁壁形成抑制のためにスパッタリング法により新たな膜の付与が必要であることは、生産コストや大量生産性におけるめっき法の利点を損なうものであり、好ましくない。
また、上述のCoNiFePめっき膜においても、実際の量産工程においては、めっき浴中の基板に均一な磁界を印加することは困難である上、やはり大量生産性を損ねる可能性が高い。さらに、Feを含むめっき膜は、高いBsが得られるため軟磁性裏打ち層としては好適であるが、Feは二価のイオンと三価のイオンが共に安定に存在するため、一般にめっき浴の安定性を確保するのが困難であることが知られており、大量生産性に劣る面がある。
【0009】
さらに、めっき法で作製した軟磁性裏打ち層の保磁力と磁壁の形成については、めっき膜の保磁力を30Oe以上としただけでは、磁壁の形成は抑制される傾向にあるものの完全に抑止することはできないこと、及び保磁力を増大させることで記録再生特性が劣化することが明らかとなった。
一方、上述のとおり、ハードディスク装置に搭載される磁気記録媒体用のディスク基板としては、非磁性NiPめっき膜が付与されたAl合金基板の他に、結晶化ガラス又は化学強化ガラスを用いたガラスディスク基板も用いられており、ガラスディスク基板は、強度が高いことから、主として耐衝撃性が高いことが要求される持ち運び可能なハードディスク装置用の磁気記録媒体に使用されているが、ガラスディスク基板を垂直磁気記録媒体用のディスク基板として用いる場合にも、上述の無電解めっき法による軟磁性めっき膜の裏打ち層としての形成は生産性の向上のために有効である。
【0010】
また、非磁性Ni−P合金からなる無電解めっき膜は、既にハードディスク用のAl合金基板に使用されている実績があり、その大量生産のための作製方法やポリッシングによる表面平滑化技術が良く知られている。したがって、ガラス基板においても無電解めっき法により非磁性又は軟磁性のめっき膜を良好な特性の磁気ディスクを得るのに十分な膜厚(1μm以上の膜厚)で、密着性良く且つ十分な平滑性を保持する下地層として形成し、磁気記録媒体のための基板として使用できれば、生産コストの観点から非常に有望である。
しかしながら、上述のような既知の方法でガラス基板上に無電解めっき法でCo−Ni−P膜を始め、Ni−PやNi−Fe−P、Co−Ni−Fe−Pなどの軟磁性めっき膜やNi−Pなどの非磁性めっき膜を形成する場合には、良好な磁気ディスクを得るに十分な膜厚(1μm以上3μm以下の膜厚)及びその膜厚での十分な密着性、均一性、平滑性を満足することはできなかった。
【0011】
一方、スパッタ法にてNi−P等の下地層を形成する方法があるが、ガラスと金属の密着性が悪いため、ガラス基板上に直接下地層を成膜することは困難であり、その対策としてガラスとの密着性が金属の中で比較的良いとされるTiやCrを含む層をガラス基板上に形成し、これを密着層としてその上に下地層を成膜させなければならない。この方法は密着層であるTiやCrもガラスとの密着性が良いわけではないので、下地層または密着層の膜厚を厚くすると、膨張係数の差による応力により、密着性が低下してしまう。また、近年盛んに開発が行われている上述の垂直磁気記録媒体には、膜厚が0.2μm〜3.0μmの軟磁性裏打ち層という比較的厚い層が必要とされており、スパッタ法で成膜しようとすると、密着性の低下が問題となり、また、コストも高くなるという問題がある。
本発明は、上述の点に鑑み、ガラス材料からなる基体上に1μm以上の厚い膜であっても密着性良く均一に無電解めっき法でめっき膜を形成することが可能なガラス基体へのめっき方法を提供し、以ってそのめっき方法を用いてディスク状のガラス基板上にめっき膜を形成することにより、磁気記録媒体としてのハードディスクに要求される膜厚、密着性、均一性、平滑性、ノイズ特性などを満足させることが可能な磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法、及びその製造方法を用いる垂直磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明のガラス基体へのめっき方法は、ガラス材料からなる基体の表面に、少なくとも、基体表面のシラノール基を2倍以上に増加させる希酸水溶液によるガラス活性化処理、シランカップリング剤処理、Pd触媒化処理、Pd結合化処理を順次施した後、無電解めっき法によりめっき膜を形成することを特徴とする。
ここで、ガラス活性化処理が、0.001質量%〜1質量%のフッ酸と、0.1質量%〜10質量%の硫酸、硝酸若しくは塩酸、又は0.0005質量%〜0.5質量%のフッ化アンモニウムとによる処理を含むことが好ましく、0.1質量%〜10質量%の硫酸、硝酸若しくは塩酸による処理の後に0.001質量%〜1質量%のフッ酸による処理を施す処理からなること、又は0.001質量%〜1質量%のフッ酸と0.0005質量%〜0.5質量%のフッ化アンモニウムとの混合水溶液による処理からなることが、密着性を高めるためのシラノール基の増加が顕著であるのでより好ましい。
【0013】
また、シランカップリング剤処理が、次の一般式(I)で示される構造を有するシランカップリング剤による処理からなること、Pd触媒化処理が塩化パラジウムと希水酸化ナトリウム又は希水酸化カリウムの混合溶液による処理からなること、Pd結合化処理が次亜リン酸水溶液による処理からなることが好ましい。
(CH2m+1O)3Si(CH2)nNHR (I)
(式中、Rは、H、C2pNH、CONH及びCから選択され、m,n,pはそれぞれ正の整数を表す。)
そして、本発明の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法は、上述のガラス基体へのめっき方法を用いて、ディスク状のガラス基板を基体としてその表面に、少なくとも、ガラス基板表面のシラノール基を2倍以上に増加させる希酸水溶液によるガラス活性化処理、シランカップリング剤処理、Pd触媒化処理、Pd結合化処理を順次施した後、無電解めっき法により非磁性又は軟磁性のめっき膜を形成することを特徴とする。
【0014】
ここで、ガラス基板の表面粗さRaが0.5nm以下であることが、めっき後のディスク基板表面の平滑性を高めて記録密度を増大させるためには好ましい。また、無電解めっき法によりNi−P合金からなるめっき膜を形成した後、昇温スピードを制御した加熱処理を施すこと、加熱処理が、250℃以上300℃以下の処理温度で1時間以上保持し、かつ室温(25℃)からこの処理温度への昇温時間を2時間以上に制御する処理からなることにより、Ni−P合金めっき膜の密着性がより高められる。
このような本発明の製造方法により、1.0質量%〜13.0質量%のPを含むNi−P合金からなる、膨れ等の欠陥が無く密着性に優れた軟磁性から非磁性のめっき膜を、ハードディスク基板として十分な1.0μm以上の厚さに無電解めっき法で形成することができる。
【0015】
また、シランカップリング剤処理によりガラス基板上にシランカップリング剤層を形成し、Pd触媒化処理によりシランカップリング剤層上にPd触媒層を形成し、無電解めっき法によりPd触媒層上に軟磁性めっき層を形成することにより、垂直磁気記録媒体用のデュスク基板を製造することができる。
そして、その軟磁性めっき層として、3原子%(at%)以上20原子%以下のPと、CoとNiの原子数比率(Co/(Co+Ni))で45原子%以上のCoを含むCo−Ni−P合金からなる、膨れ等の欠陥が無く密着性及びノイズ特性に優れた軟磁性めっき膜を、垂直磁気記録媒体の軟磁性裏打ち層として必要な0.2μm以上3μm以下の厚さに無電解めっき法で形成することができる。
このような本発明の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法を用いて垂直磁気記録媒体用のディスク基板を製造し、そのディスク基板上に、少なくとも非磁性シード層、磁気記録層、保護層を順次形成して、当該ディスク基板の軟磁性めっき層を、当該磁気記録層のための軟磁性裏打ち層の少なくとも一部として利用することにより、ノイズ特性及び量産性に優れた垂直磁気記録媒体を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガラス基体へのめっき方法によれば、一般的なガラス材料からなる基体上に1μm以上の厚いめっき膜であっても密着性良く均一に無電解めっき法で形成することができる。
そして、本発明の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法によれば、膨れ等の欠陥が無く、密着性に優れた非磁性又は軟磁性のめっき膜を必要な膜厚で均一かつ平滑にガラス基板上に形成し、良好な特性の磁気記録媒体を得るためのディスク基板を提供することができる。
従って、本発明の垂直磁気記録媒体の製造方法によれば、ガラス基板上に軟磁性めっき膜を形成して軟磁性裏打ち層として利用することにより、良好なノイズ特性を有する垂直磁気記録媒体を提供することができる。しかも、その軟磁性裏打ち層が量産性の高い無電解めっき法で形成されることから、その厚膜を例えばスパッタリング法で形成するものと比較して非常に安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明のガラス基体へのめっき方法を用いて磁気記録媒体用ディスク基板を製造する場合の実施形態について説明するが、本発明のガラス基体へのめっき方法は、この用途に限定されるものではなく、一般的なガラス材料からなる基体上に無電解めっき法により1μm以上の膜厚で非磁性又は磁性めっき膜を密着性良く均一に形成する際にも同様な効果が得られる。
一般的なガラス材料からなる基体としては、例えば、液晶・PDP・FED・EL等のフラットパネルディスプレイ用ガラスや、複写機等の情報機器デバイス用ガラス、その他にも光通信用デバイス、自動車関連、医療関連、建材用ガラス等が挙げられる。
<磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法の実施形態>
図1は、本発明のガラス基体へのめっき方法を用いる本発明の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法の実施形態を示す工程図であり、図2は、その実施形態の製造方法により製造される磁気記録媒体用ディスク基板を示す模式断面図である。
【0018】
図2に示すように、本発明の実施形態の製造方法により製造される磁気記録媒体用ディスク基板10は、ディスク状のガラス基板1と、ガラス基板1上に形成されたシランカップリング剤層2と、シランカップリング剤層2上に形成されたPd触媒層3と、Pd触媒層3上に形成されためっき層4とを備えてなる。
図示はしてないが、シランカップリング剤層2、Pd触媒層3及びめっき層4は、ガラス基板1の他面側にも同様に設けることができる。
ガラス基板1としては、その表面粗さRa(JIS B0601)が0.5nm以下である基板を用いることができる。より好ましくは、微小表面うねりWa(JIS B0601)が0.5nm以下である基板を用いることが望ましい。
ガラス基板1の表面粗さRaは、めっき層4に対する物理的アンカー効果として作用し、より大きなRaを有する基板を用いることにより、めっき層4の密着性のある程度の向上が期待できる。しかしながら、本発明の方法を用いることにより、表面粗さRa>0.5nmを有するガラス基板はもちろんのこと、物理的アンカー効果をほとんど期待できない表面粗さRa≦0.5nmの超平滑なガラス基板においても、十分なめっき層4の密着性を維持することができる。
【0019】
これは、後述するガラス基板1の表面のシラノール基(Si−OH)とシランカップリング剤層2を形成するシランカップリング剤のシラノール基との脱水縮合反応によって形成されるガラス基板1とシランカップリング剤層2の界面間の強固な化学結合に起因する効果である。
めっき層4の用途としては、ガラス基板上に非磁性の高P濃度Ni−Pめっき膜を形成することにより、高剛性のガラス基板では困難である高密度化のための精密平滑化、LZT(レーザーゾーンテクスチュア)基板の作製あるいはテープテクスチュア加工による異方性配向媒体の作製、および磁性膜のスパッタ時に基板にバイアス電圧を印加することによる磁性膜の高保磁力化が可能となる。また、ガラス基板上に軟磁性の低P濃度のNi−Pめっき膜を形成することにより、このNi−Pめっき膜を飽和磁束密度の高い軟磁性裏打ち層として用いる高密度記録が可能な二層垂直磁気記録媒体を形成することが可能となる。
【0020】
さらに、ガラス基板上に非磁性から軟磁性の中P濃度Ni−Pめっき膜を形成することで、上記の高P濃度Ni−Pめっき膜および低P濃度Ni−Pめっき膜の両者の用途に加えて、その上に低P濃度Ni−Pめっき膜を形成するための密着層としての下地めっき膜(ストライクメッキ)としての用途がある。
垂直磁気記録媒体の軟磁性裏打ち層としては、上述のNi−P軟磁性めっき膜の他に、Co−Ni−P、Ni−Fe−P、Co−Ni−Fe−Pなどの軟磁性めっき膜を採用することができる。
特に、3原子%以上20原子%以下のPと、CoとNiの原子数比率(Co/(Co+Ni))で45原子%以上のCoを含むCo−Ni−P合金からなる軟磁性めっき膜を軟磁性裏打ち層として利用する場合には、軟磁性裏打ち層からのスパイクノイズ発生をなくすことができるので好ましい。
【0021】
このような実施形態の磁気記録媒体用ディスク基板10の製造方法は、図1に示すように、ガラス材料からなる基体としてのガラス基板1の表面に、脱脂処理S1、ガラス活性化処理S2、シランカップリング剤処理S3、Pd触媒化処理S4、Pd結合化処理S5を順次施した後、無電解めっきS6を施し、続いて加熱処理S7を施す各工程からなる。
ここで、ガラス活性化処理S2が、0.001質量%〜1質量%のフッ酸と、0.1質量%〜10質量%の硫酸、硝酸若しくは塩酸、又は0.0005質量%〜0.5質量%のフッ化アンモニウムとによる処理を含むことが、ガラス基板1の表面のシラノール基を2倍以上に増加させて密着性を高めるのに好適である。特に、0.1質量%〜10質量%の硫酸若しくは塩酸による処理の後に0.001質量%〜1質量%のフッ酸による処理を施すことにより、ガラス基板1の表面のシラノール量を3〜4倍以上に増加させ、0.001質量%〜1質量%のフッ酸と0.0005質量%〜0.5質量%のフッ化アンモニウムとの混合水溶液による処理により、ガラス基板1の表面のシラノール量を3倍以上に増加させることができるので、この場合、密着性を高める効果が顕著である。
【0022】
なお、無電解めっきS7により形成するめっき膜の材料を変更することにより上述したような種々の用途に本発明のガラス基体へのめっき方法を適用すること可能であり、加熱処理S6は、そのめっき膜の材料ないし用途によっては省略することができるが、めっき膜の密着性を高めるのに有効である。
〔実施形態1〕
以下に、無電解めっきS6により非磁性から軟磁性のNi−P合金めっき膜をめっき層4として形成する場合の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法に関する実施形態1について説明する。
(脱脂処理S1)
この実施形態の第1の工程は、ガラス基板1の表面の脱脂処理S1である。脱脂処理S1は、塩基性無機化合物水溶液による1段階の処理で行ってもよいが、アルカリ性洗剤溶液による処理と、塩基性無機化合物水溶液による処理との2段階で行うことが好ましい。
【0023】
本工程において用いることができるアルカリ性洗剤は、その溶液が9.0〜11.0のpHを呈するものであり、具体的にはアニオン系界面活性剤などを含む。アルカリ性洗剤の溶液は、1〜10質量%のアルカリ性洗剤を含むことが好ましい。アルカリ性洗剤溶液による処理は、ガラス基板1をアルカリ性洗剤溶液に浸漬することにより行うことが好ましく、必要に応じて洗剤溶液の攪拌、洗剤溶液に対する超音波照射などの手段を併用してもよい。通常の場合、この処理は、20〜70℃の温度において、1〜10分間にわたって実施される。
本工程において用いることができる塩基性無機化合物は、NaOH、KOH、LiOH、Ba(OH)等を含む。塩基性無機化合物水溶液は、1〜15質量%、より好ましくは5〜10質量%の塩基性無機化合物を含むことが好ましく、そのpHは13.0〜14.0である。塩基性無機化合物水溶液による処理は、ガラス基板1を塩基性無機化合物水溶液に浸漬することにより行うことが好ましく、必要に応じて該水溶液の攪拌、該水溶液に対する超音波照射などの手段を併用してもよい。通常の場合、この処理は、20〜70℃の温度において、1〜10分間にわたって実施される。
【0024】
脱脂処理S1を実施することによって、ガラス基板1上に付着していた有機物皮膜やパーティクル類を除去して、ガラス基板1の表面が清浄化される。
(ガラス活性化処理S2)
次に、ガラス活性化処理S2を実施する。このガラス活性化処理S2は、ガラス基板1の表面に存在する不活性な酸化膜を剥離除去すると同時に、ガラス基板1の表面の官能基を反応性に富むシラノール基(Si−OH)に変性させ、後述するシランカップリング剤との反応に対してガラス基板1の表面を活性化するための処理である。
ガラス基板表面のシラノール基(Si−OH)の生成は、特許文献5に示されているような温水処理によっても少量の生成は可能ではあるが、しかし本来H+OHへと解離しづらい水(HO)分子のみの作用では、シラノール基の生成量増加には限界がある。一方、Hイオンが多量に存在する特定の希酸溶液中にガラス基板を浸漬処理することで、温水処理による効果と比較し、さらに4倍以上のシラノール基(Si−OH)を生成させることが可能となる。
【0025】
ガラス活性化処理S2は、ガラス基板1を希酸水溶液中に浸漬することによって実施される。希酸水溶液に用いることができる酸は、フッ化水素酸(フッ酸:HF)、ホウフッ化水素酸(HBF)、ヘキサフルオロケイ酸(HSiF)、ヘキサフルオロ燐酸(HPF)などのようなフッ素原子を含み、ガラス表面の酸化膜を除去できるものを含み、好ましくはフッ酸である。希酸水溶液中に無機化合物塩を加えてもよい。添加できる無機化合物塩は、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウムなどのフッ化物塩化合物が好ましい。
本工程において用いる希酸水溶液は、0.001質量%〜1質量%のフッ酸、又は0.001質量%〜1質量%のフッ酸と0.001質量%〜1質量%の硫酸、塩酸、若しくは硝酸との混合溶液であることが好ましく、同様に0.001質量%〜1質量%フッ酸と0.0005質量%〜0.5質量%のフッ化アンモニウムとの混合溶液であることが好ましい。また、このようなフッ素原子を含む希酸水溶液による処理の前後に、0.1質量%〜10質量%の希硫酸(HSO)処理、希塩酸(HCl)処理、希硝酸(HNO)処理、および/または希過酸化水素(H)処理からなるフッ素原子を含まない無機酸の希酸水溶液による処理を追加して実施することがより好ましい。通常の場合、これらの処理は、20〜50℃の温度において、1〜10分間にわたって実施される。
(シランカップリング剤処理S3)
次に、ガラス活性化処理S2が施されたガラス基板1に対してシランカップリング剤処理S3を施して、ガラス基板1上にシランカップリング剤層2を形成する。本工程において用いることができるシランカップリング剤は、アルキル基上にN置換基(アミノ基)を有するアルキルトリアルコキシシラン類(いわゆる、アミノ系シランカップリング剤)であり、好ましくは以下の一般式で示される構造を有するものを含む。
【0026】
(CH2m+1O)3Si(CH2)nNHR (I)
式中、Rは、H、C2pNH、CONHおよびCからなる群から選択され、m,n,pはそれぞれ正の整数を表す。好ましくは、mは1または2であり、nは2〜4の整数であり、およびpは2〜4の整数である。より好ましくは、以下の式(II)〜(IX)の化合物、またはそれら化合物の混合物が用いられる。
(CH3O)3SiC3H6NH2 (II)
[3−アミノプロピルトリメトキシシラン]
(C2H5O)3SiC3H6NH2 (III)
[3−アミノプロピルトリエトキシシラン]
(CH3O)3SiC3H6NHC2H4NH2 (IV)
[N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン]
(C2H5O)3SiC3H6NHC2H4NH2 (V)
[N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン]
(CH3O)3SiC3H6NHC6H5 (VI)
[N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン]
(C2H5O)3SiC3H6NHCONH2 (VII)
[3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン]
(C2H5O)3SiC3H6N=C(C4H9)CH3 (VIII)
[3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)−
プロピルアミン]
(CH3O)2(CH3)SiC3H6NHC2H4NH2 (IX)
[N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン]
シランカップリング剤は、通常0.1〜4.0質量%の水溶液として用いられる。ただし、水溶性が低いシランカップリング剤(例えば、式(VII)の化合物)の場合には、0.1〜2.0質量%の酢酸を含む酢酸水または水−アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)混合溶媒(さらに酢酸を含んでもよい)に溶解させて用いてもよい。
【0027】
シランカップリング剤処理S3は、ガラス基板1をシランカップリング剤溶液に浸漬することによって行うことが好ましく、必要に応じて該溶液の攪拌、該溶液に対する超音波照射などの手段を併用してもよい。通常の場合、この処理は、20〜30℃の温度において、1〜10分間にわたって実施される。形成されるシランカップリング剤層2は、10〜50nmの膜厚を有する。
シランカップリング剤は、以下のスキーム1に示すように、水溶液または水性溶液中の水分によりアルコキシ基が加水分解されてシラノール基を生成し、さらに部分的に縮合してオリゴマー状態となる。この状態において、ガラス活性化処理S2によってガラス基板1の表面上に生成されたシラノール基と水素結合的な強い吸着状態を形成する。
【0028】
【化1】

(Pd触媒化処理S4)
次に、シランカップリング剤層2が形成されたガラス基板1に対して、Pd触媒化処理S4を実施する。Pd触媒化処理S4は、ガラス基板1を、Pdの二価イオンを含む水溶液に浸漬することにより実施される。Pdの二価イオンを含む化合物としては、塩化パラジウム(PdCl)などを用いることができる。本工程で用いるPd水溶液に、NaOH、KOHなどのアルカリ性化合物を添加して、Pdイオンとシランカップリング剤のN−官能基(アミノ基、イミノ基、ウレイド基など)との反応を促進してもよい。好ましくは、PdイオンをPdCl換算で0.01〜1.0質量%、アルカリ性化合物をKOH換算で0.01〜1.0質量%含む水溶液を用いて、本工程が実施される。通常の場合、この処理は、20〜30℃の温度において、1〜10分間にわたって実施される。
【0029】
本工程により、シランカップリング剤のN−官能基に対して、Pdイオンが配位結合などを介して結合され、無電解めっきの触媒となるPd触媒層3が形成される。形成されたPd触媒層3は、1〜10nmの膜厚を有する。
(Pd結合化処理S5)
引き続いて、Pd結合化処理S5を実施する。本工程は、好ましくは、次亜リン酸(HPO)の水溶液に対して、Pd触媒層3が形成されたガラス基板1を浸漬することによって行われる。次亜リン酸水溶液で処理することで、Clと錯化合物を形成しているPdからClが解離し、シランカップリング剤のアミノ基と触媒成分としてのPd間で強固な結合状態が成立する。その際、過剰の遊離Pdが除去される。次亜リン酸の水溶液は、好ましくは0.1〜1.0質量%の次亜リン酸を含む。通常の場合、本工程は、20〜30℃の温度において、1〜5分間にわたって実施される。
(無電解めっきS6)
次に、Pd結合化処理S5が施されたガラス基板1に対して、Ni−P無電解めっきS6を施すことによりNi−P合金めっき膜からなるめっき層4を形成する。本工程は、ガラス基板1を無電解めっき液に浸漬することによって行うことが好ましい。得られるNi−Pめっき層4は、そのP濃度に依存して軟磁性(低P濃度)から非磁性(高P濃度)の種々の磁性を有することができる。
【0030】
本工程においては、種々のP濃度を有する無電解めっき液を用いることができ、例えば、非磁性の高P濃度Ni−Pめっき液(P濃度10〜13質量%:例えば上村工業(株)製ニムデンHDX)、非磁性から軟磁性の中P濃度Ni−Pめっき液(P濃度6〜10質量%:例えばメルテックス(株)製メルプレートNI−867、およびP濃度3〜6質量%:例えばメルテックス(株)製メルプレートNI−802)、または、軟磁性の低P濃度Ni−Pめっき液(P濃度1〜2質量%:例えば上村工業(株)製ニムデンLPYや奥野製薬(株)製トップニコロンLPH)を用いることができる。さらに、めっき析出反応がより容易になる、P濃度が14質量%を越える市販の高P濃度Ni−P無電解めっき液を、本工程において用いてもよい。
本工程は、所望されるNi−Pめっき層4の膜厚に依存して、適切な時間および温度において行うことが可能である。通常は、本工程を70〜90℃の温度において、10〜45分間にわたって実施することにより、1.0μm以上、好ましくは1μm〜5μmの膜厚を有するNi−Pめっき層4を形成することができる。
(加熱処理S7)
最後に、Ni−Pめっき層4が形成されたガラス基板1に対して加熱処理S7を施して、Ni−Pめっき層4の膜厚の均一性および表面の平滑性を維持しつつ、ガラス基板1に対する密着性を向上させる。本工程においては、スキーム1に示したように、水素結合的な吸着状態にあるガラス基板1の表面のシラノール基と、シランカップリング剤のシラノール基とを脱水縮合させ、それらの間に強固な化学結合(共有結合)を形成させ、ガラス基板1とシランカップリング剤層2との間、ひいてはガラス基板1とNi−Pめっき層4との間の密着性を向上させる。
【0031】
本工程は、250℃以上300℃以下の処理温度において、1時間以上、好ましくは2〜12時間、より好ましくは3〜6時間にわたって行うことが好ましい。ここで、急激な昇温を行うと、ガラス基板1の線膨張率とNi−Pめっき層4の線膨張率の差によってガラス基板10とNi−Pめっき層4の間に応力が発生し、Ni−Pめっき層4の膨れあるいは亀裂などの欠陥が発生する恐れがある。この応力の発生を緩和するために、本工程においては、室温(25℃)から処理温度への昇温過程を、2時間以上、好ましくは6時間以上、より好ましくは12時間以上かけて行うことが好ましい。すなわち、本工程の昇温過程における昇温速度を、135℃/時間以下、好ましくは40℃/時間以下、より好ましくは20℃/時間以下に維持することが好ましい。
同様に、本工程における処理温度から室温への降温過程においても、2時間以上、好ましくは6時間以上、より好ましくは12時間以上かけて行うことが好ましい。すなわち、本工程の降温過程における降温速度を、135℃/時間以下、好ましくは、40℃/時間以下、より好ましくは20℃/時間以下に維持することが好ましい。
【0032】
さらに、加熱処理によるNi−Pめっき層4の熱酸化などを防止する目的で、本工程を不活性ガス(例えば、N、He、Arなど)雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明の方法により形成されるNi−Pめっき層4は、優れた特性を有する磁気ディスク基板を得るのに充分である。すなわち、本発明によれば、1.0μm以上の厚い膜厚を有し、その膜厚が均一であり、その膜表面の平滑性が高く、かつ膨れ、亀裂などの欠陥のないNi−Pめっき層4を形成することができる。
より具体的にいえば、本発明のNi−Pめっき層4は、そのP濃度により以下のような用途を有するものである。
非磁性ガラス基板に非磁性の高P濃度Ni−Pめっき膜を形成することで、(a)高剛性のガラス基板では困難な、高密度化のための精密平滑化、(b)LZT基板やテープテクスチュアによる異方性配向媒体の作製、(c)スパッタ時に基板にバイアス電圧を印加することによる磁性膜の高保磁力化が可能となる。
【0033】
また、非磁性ガラス基板に軟磁性の低P濃度Ni−Pめっき膜を形成することで、垂直磁気記録媒体用の軟磁性裏打ち層としての用途がある。軟磁性裏打ち層を設けた垂直磁気記録媒体は二層垂直磁気記録媒体とも呼ばれ、情報を記録する役割を担う磁気記録層の下側に高透磁率かつ飽和磁束密度の高い軟磁性裏打ち層を設けることによって、磁気ヘッドから発生する磁束の帰還を容易にして、高密度記録を可能にする。
さらに、非磁性ガラス基板に非磁性から軟磁性の中P濃度Ni−Pめっき膜を形成することで、上記高P濃度Ni−Pめっき膜および低P濃度Ni−Pめっき膜の両者の用途の他に、低P濃度Ni−Pめっき膜のガラス基板への密着層としての下地めっき膜(ストライクめっき)としての用途がある。
〔実施形態2〕
次に、無電解めっきS6によりCo−Ni−P合金からなる軟磁性めっき膜をめっき層4として形成する場合の垂直磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法に関する実施形態2について説明する。
【0034】
この実施形態2においては、図1の工程S1からS5までは上述の実施形態1と同じであるので、無電解めっきS6及び加熱処理S7について以下に説明する。
すなわち、Pd結合化処理S5が施されたガラス基板1に対して、無電解めっき処理S6を施すことによりめっき層4を形成する。
このめっき層4は、垂直磁気記録のための軟磁性裏打ち層として利用するためには、特願2004−309723「垂直磁気記録媒体用ディスク基板及びそれを用いた垂直磁気記録媒体」にて提案したとおり、3at%以上20at%以下のPと、CoとNiの原子数比率(Co/(Co+Ni))で45at%以上のCoを含むCo−Ni−P合金からなる軟磁性めっき膜とし、かつその膜厚が0.2μm以上3μm以下であることが望ましい。そして、このCo−Ni−P合金軟磁性めっき膜に2at%以下のWまたはMnを添加させることは、めっき層4の軟磁性裏打ち層としての機能を損なうことはなく、耐食性の向上が認められるためさらに望ましい。また、めっき液の安定化の目的で数%以下のGeやPb化合物を添加することは、本発明の効果をなんら損なうものではない。
【0035】
ここで、軟磁性めっき層4を高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体用の軟磁性裏打ち層として機能させるためには、軟磁性めっき層4の膜厚が0.2μm以上であることが必要であり、また生産性を考慮した場合、膜厚が3μm以下であることが望ましい。
さらに、軟磁性めっき層4の組成については、P濃度が3at%未満では安定な無電解めっき膜を形成することが困難であり、またP濃度が20at%を超える場合、飽和磁束密度Bs値が低下しすぎて軟磁性裏打ち層としての機能を果たさない。
Co濃度に関しては、CoとNiの原子数比率(Co/(Co+Ni))で45at%未満では飽和磁束密度Bs値が十分に高く維持できないことと、飽和磁歪定数が負で絶対値の大きな値になることから望ましくない。
一方、Co濃度の上限は特に規定されないが、CoとNiの原子数比率(Co/(Co+Ni))で90at%を超えると、CoNi合金は結晶磁気異方性定数の大きなhcp構造を形成し易くなり、保磁力が増大する可能性があることから望ましくない。すなわち、CoとNiの原子数比率(Ni/(Co+Ni))で10at%以上のNiを含有させ、fcc構造を安定に形成しやすい組成にすることが望ましい。
【0036】
また、軟磁性めっき層4の形成後に加熱処理S7を行っても良い。本実施形態のめっき膜においては加熱処理を行わなくとも所望の特性を得ることができるが、加熱処理を行った場合でも、ガラス基板1とめっき層4の熱膨張係数の関係及び軟磁性めっき層4の飽和磁歪定数が上述の通りであれば、両者の熱膨張の差により誘導される磁気異方性が軟磁性めっき層4の磁気特性やノイズ特性を悪化させることはほとんど無い。
なお、ガラス基板1上のPd触媒層3と軟磁性めっき層4の間に、更に密着性を向上させるための、例えば非磁性のNiP膜などからなる密着層を形成した場合でも、本発明の効果は維持される。
無電解めっき法による軟磁性めっき層4の形成後、あるいは上述の加熱処理後に、軟磁性めっき層4の表面を平滑化するためにポリッシング処理を行っても良い。この場合、軟磁性めっき層4の表面を、遊離砥粒を用いたポリッシングにより平滑化することが有効である。ポリッシング処理は、例えば、発泡ウレタン性のポリッシングパッドを貼った両面研磨盤を用いて、酸化アルミニウムあるいはコロイダルシリカの縣濁液を研磨剤として供給しながら、研摩することによって行うことができる。ポリッシング処理後に加熱処理を行うことも可能である。
【0037】
再度強調するが、本方法により形成される図2に示すガラス基板1/シランカップリング剤層2/Pd触媒層3/Co−Ni−P軟磁性めっき層4において、軟磁性めっき層4を密着性良く形成するには、
1)めっきが析出するPd触媒層3が高密度に形成されている。
2)上記1)のためには、Pd触媒層3の下層であるシランカップリング剤層2が高密度に形成されている。
3)上記2)のためには、シランカップリング剤と結合し得るシラノール基(Si−OH)が、ガラス基板1の表面に多く存在している。
ことが重要である。
すなわち、めっき膜密着性向上=Pd触媒層高密度化=シランカップリング剤層高密度化=ガラス基板表面のシラノール基の高密度生成が極めて重要となる。このガラス基板表面のシラノール基を増加させる処理が、ガラス活性化処理S2である。
【0038】
各種活性化処理後のガラス基板表面のシラノール基(Si−OH)生成量の昇温脱離質量分析装置による分析結果のグラフを図4に、それによる定量値を表1に示す。
【0039】
【表1】

未処理のガラス基板表面のシラノール基量に対し、ガラス活性化処理としての温水処理の効果はわずかであるのに対し、HF+NHF混合液による処理ではシラノール基が約3倍生成し、さらにはHSO→HF連続処理では4倍以上のシラノール基が生成され、めっき膜密着性向上に大きな効果が期待できる。
<垂直磁気記録媒体の製造方法の実施形態>
次に、上述の実施形態2により製造した垂直磁気記録媒体用ディスク基板を用いる本発明の垂直磁気記録媒体の製造方法の実施形態について説明する。
図3に示すように、この実施形態の製造方法により製造される垂直磁気記録媒体は、図2に示す垂直磁気記録媒体用ディスク基板10上に、少なくとも非磁性シード層20、磁気記録層30及び保護層40が順次形成された構造を有している。
【0040】
図示はしていないが、非磁性シード層20、磁気記録層30及び保護層40は、ディスク基板10の他面側にも同様に設けることができる。
非磁性シード層20には、磁気記録層30の結晶配向や結晶粒径等を好ましく制御するための材料を、特に制限なく用いることができる。例えば、磁気記録層30がCoCrPt系合金からなる垂直磁化膜であれば、非磁性シード層20としてはCoCr系合金やTi、あるいはTi系合金、Ruやその合金等を使用することができ、磁気記録層30がCo系合金等とPtあるいはPd等を積層した、いわゆる積層垂直磁化膜である場合には、非磁性シード層20としてPtやPd等を用いることができる。また、非磁性シード層20の上や下に更にプレシード層や中間層等を設けることも、本発明の効果を妨げるものではない。
【0041】
磁気記録層30としては、垂直磁気記録媒体としての記録再生を担うことができるいかなる材料をも用いることができる。すなわち、上述のCoCrPt系合金や酸化物を添加したCoCrPt系合金、Co系合金等とPtあるいはPd等を積層した膜等のいわゆる垂直磁化膜を用いることができる。
保護層40としては、例えばカーボンを主体とする薄膜が用いられる。また、そのカーボンを主体とする薄膜と、その上に例えばパーフルオロポリエーテル等の液体潤滑剤を塗布してなる液体潤滑剤層とからなるものとすることもできる。
なお、これらの非磁性シード層20、磁気記録層30、保護層40はスパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、めっき法などのいずれの薄膜形成方式でも形成することが可能である。
【0042】
このように形成された垂直磁気記録媒体は、ディスク基板10の軟磁性めっき層4が軟磁性裏打ち層として機能することから、二層垂直磁気記録媒体としての良好な記録再生特性を有しており、かつ、軟磁性裏打ち層が量産性の高い無電解めっき法により形成されていることから、この層を例えばスパッタリング法で形成する必要がないために非常に安価に製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下に、上述の実施形態1及び2を具体的にした本発明の実施例について説明する。
〔Ni−Pめっき基板の実施例〕
表2に、上述の実施形態1に対応する実施例1〜8のNi−Pめっき工程及び主要条件をまとめて示す。なお、めっき層4等の各層はガラス基板1の両面に形成した。
【0044】
【表2】

(実施例1)
ガラス基板1としてアルミノシリケートボロン系非晶質化学強化ガラス板(Ra=0.25nm)を用い、以下の(1)〜(8)の工程を順次行って、Ni−Pめっき層4を形成した。
(1)洗剤脱脂:濃度1.5質量%、温度50℃のアルカリ洗剤の水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(2)アルカリ脱脂:濃度7.5質量%、温度50℃のKOH水溶液に浸漬した、3分間にわたって処理した。
(3)ガラス活性化:温度20℃のHF(濃度1.0質量%)とNHF(濃度0.5質量%)の混合水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(4)シランカップリング剤処理:濃度1.0質量%、温度20℃の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(式(III)の化合物)水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理
した。
(5)Pd触媒化処理:温度20℃のPdCl(濃度1.0質量%)とNaOH(濃度0.2質量%)の混合水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(6)Pd結合化処理:濃度1.0質量%、温度20℃のHPO水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(7)Ni−P無電解めっき:温度80℃のめっき液「ニムデンHDX(P濃度10〜13質量%)」(上村工業(株)製)に浸漬して、20分間にわたって処理し、膜厚3.0μmのNi−Pめっき層を形成した。
(8)加熱処理:Nガス雰囲気下、30℃から250℃まで12時間かけて昇温し、4時間にわたって250℃に保持し、12時間かけて30℃まで冷却した(昇温速度および降温速度ともに18.3℃/時間)。
(実施例2)
実施例1の工程(7)を以下の(7B)に変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(7B)温度70℃のめっき液「メルプレートNI−867(P濃度6〜8質量%)」(メルテックス(株)製)に浸漬して、35分間にわたって処理し、膜厚3.0μmのNi−Pめっき層を形成した。
(実施例3)
実施例1の工程(7)を以下の(7C)に変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(7C)温度80℃のめっき液「ニムデンLPY(P濃度1〜2質量%)」(上村工業(株)製)に浸漬して、25分間にわたって処理し、膜厚3.0μmのNi−Pめっき層を形成した。
(実施例4)
実施例1の工程(4)を以下の(4B)に変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(4B)濃度1.0質量%、温度20℃のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(式(V)の化合物)水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(実施例5)
実施例2の工程(4)を実施例4に記載の(4B)に変更したことを除いて、実施例2の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(実施例6)
実施例3の工程(4)を実施例4に記載の(4B)に変更したことを除いて、実施例3の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(実施例7)
実施例3の工程(8)を以下の(8B)に変更したことを除いて、実施例3の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(8B)Nガス雰囲気下、30℃から250℃まで2時間かけて昇温し、4時間にわたって250℃に保持し、2時間かけて30℃まで冷却した(昇温速度および降温速度ともに110℃/時間)。
(実施例8)
実施例6の工程(8)を実施例7に記載の(8B)に変更したことを除いて、実施例6の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(比較例1)
ガラス基板としてアルミノシリケートボロン系非晶質化学強化ガラス板(Ra=0.25nm)を用い、以下の工程(9)〜(15)を順次行って、Ni−Pめっき層を形成した。
(9)洗剤脱脂:濃度1.5質量%、温度50℃のアルカリ洗剤の水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(10)アルカリ脱脂:濃度7.5質量%、温度50℃のKOH水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(11)ガラス表面粗化:温度60℃のクロム酸(濃度40質量%)と硫酸(濃度40質量%)の混合水溶液に浸漬して、10分間にわたって処理した。
(12)触媒付与キャタリスト処理:温度20℃のPdCl(濃度0.3g/L)とSnCl・2HO(濃度15g/L)と36%HCl(濃度200ml/L)の混合水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(13)触媒付与アクセレーター処理:濃度100g/L、温度50℃のHSOの水溶液に浸漬して、5分間にわたって処理した。
(14)Ni−P無電解めっき:温度80℃のめっき液「ニムデンHDX(P濃度10〜13質量%)」(上村工業(株)製)に浸漬して、3.0分間にわたって処理し、膜厚0.4μmのNi−Pめっき層を形成した(膜厚0.4μm超はめっき中に膜剥離が発生し、成膜不可であった)。
(15)加熱処理:Nガス雰囲気下、4時間にわたって250℃に加熱して処理した。
(比較例2)
比較例1の工程(14)を以下の(14B)に変更したことを除いて、比較例1の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(14B)温度80℃のめっき液「メルプレートNI−867(P濃度6〜8質量%)」(メルテックス(株)製)に浸漬して、9.0分間にわたって処理し、膜厚0.7μmのNi−Pめっき層を形成した(膜厚0.7μm超はめっき中に膜剥離が発生し、成膜不可であった)。
(比較例3)
比較例1の工程(14)を以下の(14C)に変更したことを除いて、比較例1の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(14C)温度80℃のめっき液「ニムデンLPY(P濃度1〜2質量%)」(上村工業(株)製)に浸漬して、3.0分間にわたって処理し、膜厚0.5μmのNi−Pめっき層を形成した(膜厚0.5μm超はめっき中に膜剥離が発生し、成膜不可であった)。
(比較例4)
実施例1の工程(8)を以下の(8C)に変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(8C)加熱処理:Nガス雰囲気下、30℃から250℃まで1時間かけて昇温し、4時間にわたって250℃に保持し、1時間かけて30℃まで冷却した(昇温速度および降温速度ともに220℃/時間)。
(比較例5)
実施例2の工程(8)を比較例4に記載の(8C)に変更したことを除いて、実施例2の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(比較例6)
実施例3の工程(8)を比較例4に記載の(8C)に変更したことを除いて、実施例3の手順を繰り返して、Ni−Pめっき層を形成した。
(評価)
上述の実施例1〜8および比較例1〜6で得られたNi−Pめっき層を無電解めっきされた各ガラス基板について、Ni−Pめっき層の膨れ評価を光学顕微鏡(倍率:×50)観察で、密着性をクロスカット剥離試験(JIS K5600−3−4)により評価した。また、原子間力顕微鏡(AFM)による表面粗さ測定で、めっき後の平均粗さRaを評価した。評価結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

表3の実施例1〜8の結果から分かるように、本発明の方法を用いることによって、低P濃度から高P濃度にいたるNi−Pめっき膜に関して3.0μmレベルの厚膜化を達成できることが分かる。また、本発明の方法によって得られた無電解Ni−Pめっき層は、膨れなどの欠陥もなく、かつ密着性に優れた層として得られた。さらに、Ni−Pめっき層の表面は、用いた基板の表面粗さ(Ra=0.25nm)とほぼ同等の表面粗さを有しており、その値はハードディスク基板として要求される表面粗さレベルに十分保持されている。
一方、既知の塩化スズ(II)およびパラジウムを触媒とする方法(特許文献3参照)を用いた比較例1〜3では、膜厚0.4〜0.7μmのNi−Pめっき層が得られるのみであり、1.0μm以上の膜厚を有するNi−Pめっき層を得ることはできなかった。また、得られたNi−Pめっき層についても、膨れなどの欠陥を有し、ガラス基板に対する密着性が著しく低下し、さらに表面粗さも大きくなっていることが分かる。
【0046】
さらに、昇温速度および降温速度を増大させた比較例4〜6においては、加熱時のガラス基板とNi−Pめっき膜の線膨張係数差によって発生する応力により、Ni−Pめっき層の膜膨れが発生した。また、ガラス基板に対するNi−Pめっき層の密着性も著しく低下していることが分かる。
〔Co−Ni−Pめっき基板の実施例〕
表4に、上述の実施形態2に対応する実施例9〜18のCo−Ni−Pめっき工程及び主要条件をまとめて示す。なお、めっき層4等の各層はガラス基板1の両面に形成した。
【0047】
【表4】

(実施例9)
ガラス基板1としてアルミノシリケートボロン系非晶質化学強化ガラス板(Ra=0.25nm)を用い、以下の(1)〜(8)の工程を順次行って、Co−Ni−Pめっき層4を形成した。
(1)洗剤脱脂:濃度1.5質量%、温度50℃のアルカリ洗剤の水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(2)アルカリ脱脂:濃度7.5質量%、温度50℃のKOH水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(3)ガラス活性化:温度20℃で、濃度1.0質量%のHSO水溶液に、3分間浸漬し処理し、引き続き温度20℃で、濃度1.0質量%のHF水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(4)シランカップリング剤処理:濃度1.0質量%、温度20℃の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(式(III)の化合物)水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(5)Pd触媒化処理:温度20℃のPdCl(濃度1.0質量%)とNaOH(濃度0.2質量%)の混合水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(6)Pd結合化処理:濃度1.0質量%、温度20℃のHPO水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(7)Co−Ni−P無電解めっき:めっき浴組成として、
1)金属成分:硫酸ニッケル:10g/L
2)金属成分:硫酸コバルト:10g/L
3)還元剤:次亜リン酸ナトリウム:20g/L
4)錯化剤:クエン酸ナトリウム:60g/L
5)緩衝剤:ホウ酸:30g/L
からなる、めっき液に温度90℃で75分間にわたって浸漬処理し、膜厚3.0μmのCo−Ni−Pめっき層を形成した。
(8)加熱処理:N2ガス雰囲気下、100℃で6時間にわたって加熱処理した。
(実施例10)
実施例9の工程(3)を以下の(3B)に変更したことを除いて、実施例9の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(3B)温度20℃で、濃度1.0質量%のHCl水溶液に、3分間浸漬し処理し、引き続き温度20℃で、濃度1.0質量%のHF水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(実施例11)
実施例9の工程(3)を以下の(3C)に変更したことを除いて、実施例9の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(3C)温度20℃で、濃度1.0質量%のHSO水溶液に、3分間浸漬し処理し、引き続き温度20℃で、濃度0.05質量%のHF水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(実施例12)
実施例9の工程(3)を以下の(3D)に変更したことを除いて、実施例9の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(3D)温度20℃で、濃度1.0質量%のHCl水溶液に、3分間浸漬し処理し、引き続き温度20℃で、濃度0.05質量%のHF水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(実施例13)
実施例9の工程(3)を以下の(3E)に変更したことを除いて、実施例9の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(3E)温度20℃のHF(濃度1.0質量%)とNHF(濃度0.5質量%)の混合水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(実施例14)
実施例9の工程(4)を以下の(4B)に変更したことを除いて、実施例9の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(4B)濃度1.0質量%、温度20℃のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(式(V)の化合物)水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(実施例15)
実施例10の工程(4)を実施例14に記載の(4B)に変更したことを除いて、実施例10の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(実施例16)
実施例11の工程(4)を実施例14に記載の(4B)に変更したことを除いて、実施例11の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(実施例17)
実施例12の工程(4)を実施例14に記載の(4B)に変更したことを除いて、実施例12の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(実施例18)
実施例13の工程(4)を実施例14に記載の(4B)に変更したことを除いて、実施例13の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(比較例7)
ガラス基板としてアルミノシリケートボロン系非晶質化学強化ガラス板(Ra=0.25nm)を用い、以下の工程(9)〜(15)を順次行って、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(9)洗剤脱脂:濃度1.5質量%、温度50℃のアルカリ洗剤の水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(10)アルカリ脱脂:濃度7.5質量%、温度50℃のKOH水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(11)ガラス表面粗化:温度60℃のクロム酸(濃度40質量%)と硫酸(濃度40質量%)の混合水溶液に浸漬して、10分間にわたって処理した。
(12)触媒付与キャタリスト処理:温度20℃のPdCl(濃度0.3g/L)とSnCl・2HO(濃度15g/L)と36%HCl(濃度200ml/L)の混合水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(13)触媒付与アクセレーター処理:濃度100g/L、温度50℃のHSO水溶液に浸漬して5分間にわたって処理した。
(14)Co−Ni−P無電解めっき:温度90℃で、実施例9の(7)に記載のめっき液組成浴に浸漬して、12.5分にわたって処理し、膜厚0.5μmのCo−Ni−Pめっき層を形成した。(膜厚0.5μm超はめっき中で膜剥離が発生し、成膜不可であった。)
(15)Co−Ni−Pめっき層加熱:N2ガス雰囲気下、6時間にわたって100℃に加熱して処理した。
(比較例8)
実施例9の工程(3)を以下の(3F)に変更したことを除いて、実施例9の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(3F)温度20℃で、濃度1.0質量%のHF水溶液に、3分間浸漬し処理し、引き続き温度90℃の温水に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(比較例9)
実施例9の工程(3)を以下の(3G)に変更したことを除いて、実施例9の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(3G)温度20℃で、濃度1.0質量%のHSO水溶液に、3分間浸漬し処理し、引き続き温度20℃で、濃度2.0質量%のHF水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(比較例10)
実施例9の工程(3)を以下の(3H)に変更したことを除いて、実施例9の手順を繰り返して、Co−Ni−Pめっき層を形成した。
(3H)温度20℃で、濃度1.0質量%のHCl水溶液に、3分間浸漬し処理し、引き続き温度20℃で、濃度2.0質量%のHF水溶液に浸漬して、3分間にわたって処理した。
(評価)
上述の実施例9〜18及び比較例7〜10で得られたCo−Ni−Pめっき層を無電解めっきされた各ガラス基板について、Co−Ni−Pめっき層の膨れ評価を光学顕微鏡(倍率:×50)観察で、密着性をクロスカット剥離試験(JIS K 5600−3−4)により評価した。また、原子間力顕微鏡(AFM)による表面粗さ測定で、めっき後の平均粗さRaを評価した。またそれと併せ、ガラス活性化処理後のガラス基板表面のシラノール基(Si−OH)量を昇温脱離質量分析装置で求めた。これら結果をまとめて表5に示す。
【0048】
【表5】

表5の実施例9〜18の結果から分かるように、本発明の方法を用いることによって、ガラス基板上のCo−Ni−P無電解めっき膜に関して、3.0μmレベルの厚膜化を達成できることが分かる。また、本発明の方法によって得られたCo−Ni−Pめっき層は、膨れなどの欠陥もなく、かつ十分な密着性に優れた層として得ることができる。さらに、Co−Ni−Pめっき層の表面は、用いたガラス基板の表面粗さ(Ra=0.25nm)とほぼ同等レベルの表面粗さを有しており、その値はハードディスク基板として要求される表面粗さレベルに十分保持されている。
また、本発明の方法は、Co−Ni−Pめっき層の形成のみに限定されるものではなく、同様にガラス基板上に無電解めっき法で形成できるNi−PやNi−Fe−P、Co−Ni−Fe−Pなどの軟磁性層においても、良好な特性のハードディスク媒体を得るに必要かつ十分な膜厚(1μm以上3μm以下膜厚)およびその膜厚での十分な密着性、均一性、平滑性を満足することができる。
【0049】
一方、既知の塩化スズ(II)およびパラジウムを触媒とする方法(特許文献8参照)を用いた比較例1は、膜厚0.5μm程度のCo−Ni−Pめっき層が得られるのみであり、1.0μm以上の膜厚を有するCo−Ni−Pめっき層を得ることはできなかった。また、得られたCo−Ni−Pめっき層についても、膨れなどの欠陥を有し、ガラス基板に対する密着性が著しく低下し、さらに表面粗さも大きくなっていることが分かる。
さらに比較例8,9,10に示すように、ガラス活性化処理工程以外の全ての工程が同一であっても、ガラス活性化処理によって、ガラス基板表面に生成されるシラノール基(Si−OH)生成量が不適正な場合も、シランカップリング剤層との密着力が低下し、その結果、ガラス基板とCo−Ni−Pめっき層との密着性も低下することが分かる。
〔垂直磁気記録媒体の製造方法の実施例〕
次に、上述の実施例9〜18で得られた垂直磁気記録媒体用ディスク基板10の両面に、図3に示す磁気記録層30等の各層を備える場合の本発明の垂直磁気記録媒体の製造方法の実施例19〜28について以下に記す。
(実施例19)
上述の実施例9で得られた垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を発砲ウレタン製のポリッシュパッドを貼った両面研磨盤を用いて、コロイダルシリカを研磨材としてポリッシュを行い、その後精密洗浄にて表面を清浄後、スパッタリング装置内に導入し、ランプヒータを用いて基板表面温度が200℃になるように10秒間加熱を行った後、Tiターゲットを用いてTiからなる非磁性シード層20を10nm、引き続きCo70Cr20Pt10ターゲットを用いてCoCrPt合金からなる磁気記録層30を30nmを成膜し、最後にカーボンターゲットを用いてカーボンからなる保護層40を8nm成膜後、真空装置から取り出した。これらのスパッタリング成膜はすべてArガス圧5mTorr下でDCマグネトロンスパッタリング法により行った。その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑材層2nmをディップ法により形成し、図3に示す垂直磁気記録媒体とした。
(実施例20)
上述の実施例10で得られた垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を用いること以外は、実施例19の手順を繰り返して、図3に示す垂直磁気記録媒体とした。
(実施例21)
上述の実施例11で得られた垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を用いること以外は、実施例19の手順を繰り返して、図3に示す垂直磁気記録媒体とした。
(実施例22)
上述の実施例12で得られた垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を用いること以外は、実施例19の手順を繰り返して、図3に示す垂直磁気記録媒体とした。
(実施例23)
上述の実施例13で得られた垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を用いること以外は、実施例19の手順を繰り返して、図3に示す垂直磁気記録媒体とした。
(実施例24)
上述の実施例14で得られた垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を用いること以外は、実施例19の手順を繰り返して、図3に示す垂直磁気記録媒体とした。
(実施例25)
上述の実施例15で得られた、垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を用いること以外は、実施例19の手順を繰り返して、図3に示す垂直磁気記録媒体とした。
(実施例26)
上述の実施例16で得られた垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を用いること以外は、実施例19の手順を繰り返して、図3に示す垂直磁気記録媒体とした。
(実施例27)
上述の実施例17で得られた垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を用いること以外は、実施例19の手順を繰り返して、図3に示す垂直磁気記録媒体とした。
(実施例28)
上述の実施例18で得られた垂直磁気記録媒体用ディスク基板10を用いること以外は、実施例19の手順を繰り返して、図3に示す垂直磁気記録媒体とした。
(評価)
このようにして作製した実施例19〜28の垂直磁気記録媒体に対し、スピンスタンドテスターを用いて、垂直磁気記録媒体用の単磁極型磁気ヘッドによる300kFCI(Flux Change per Inch)の記録密度における信号再生出力値を求めた。さらに、媒体を書きこみ電流50mAで直流消磁したのち、検出される再生出力より、軟磁性裏打ち層としての軟磁性めっき層4から発生するノイズの測定を行った。この測定で検出される再生出力は、磁気記録層30の磁化を直流消磁すなわち一方向に向けた状態で検出されているため、ほぼ軟磁性めっき層4から発生するノイズを検出していることになる。また、次の評価として、スピンスタンドテスターを用いて垂直磁気記録媒体用の単磁極型磁気ヘッドによるスパイクノイズの測定を行った。測定は、まず磁気ヘッドの書きこみ素子に50mAの直流電流を印加して垂直磁気記録媒体を直流消磁したのち、書きこみ素子の電流を0にして、書きこみを行わずに垂直磁気記録媒体から発生する信号を読み出すことで行った。その結果を表6に示す。
【0050】
【表6】

実施例19〜28のいずれの垂直磁気記録媒体においても、低い書きこみ電流値においても十分な再生出力が得られ、かつ20〜60mAで再生出力が飽和されており、実用的に優れた媒体であることが分かる。また、軟磁性めっき層から発生するノイズも低くスパイクノイズの発生もない、優れた垂直磁気記録媒体であることが確認された。
以上のとおり、良好な記録再生特性を有する垂直磁気記録媒体を得るに必要な軟磁性裏打ち層としての、膜厚、密着性、均一性を有し、且つ十分な平滑性を有するCo−Ni−Pめっき層をガラス基板上に無電解めっき法により形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法の実施形態を示す工程図である。
【図2】本発明の実施形態の製造方法により製造される磁気記録媒体用ディスク基板を示す模式断面図である。
【図3】本発明の実施形態の製造方法により製造される垂直磁気記録媒体を示す模式断面図である。
【図4】各種活性化処理後のガラス基板表面のシラノール基(Si−OH)生成量の昇温脱離質量分析装置による分析結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0052】
1 ガラス基板
2 シランカップリング剤層
3 Pd触媒層
4 めっき層
10 ディスク基板
20 非磁性シード層
30 磁気記録層
40 保護層
S1 脱脂処理
S2 ガラス活性化処理
S3 シランカップリング剤処理
S4 Pd触媒化処理
S5 Pd結合化処理
S6 無電解めっき
S7 加熱処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス材料からなる基体の表面に、少なくとも、基体表面のシラノール基を2倍以上に増加させる希酸水溶液によるガラス活性化処理、シランカップリング剤処理、Pd触媒化処理、Pd結合化処理を順次施した後、無電解めっき法によりめっき膜を形成することを特徴とするガラス基体へのめっき方法。
【請求項2】
前記ガラス活性化処理が、0.001質量%〜1質量%のフッ酸と、0.1質量%〜10質量%の硫酸、硝酸若しくは塩酸、又は0.0005質量%〜0.5質量%のフッ化アンモニウムとによる処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のガラス基体へのめっき方法。
【請求項3】
前記ガラス活性化処理が、0.1質量%〜10質量%の硫酸、硝酸若しくは塩酸による処理の後に0.001質量%〜1質量%のフッ酸による処理を施す処理からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス基体へのめっき方法。
【請求項4】
前記ガラス活性化処理が、0.001質量%〜1質量%のフッ酸と0.0005質量%〜0.5質量%のフッ化アンモニウムとの混合水溶液による処理からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス基体へのめっき方法。
【請求項5】
前記シランカップリング剤処理が、下記一般式(I)で示される構造を有するシランカップリング剤による処理からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のガラス基体へのめっき方法。
(CH2m+1O)3Si(CH2)nNHR (I)
(式中、Rは、H、C2pNH、CONH及びCから選択され、m,n,pはそれぞれ正の整数を表す。)
【請求項6】
前記Pd触媒化処理が、塩化パラジウムと希水酸化ナトリウム又は希水酸化カリウムとの混合溶液による処理からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のガラス基体へのめっき方法。
【請求項7】
前記Pd結合化処理が、次亜リン酸水溶液による処理からなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のガラス基体へのめっき方法。
【請求項8】
ディスク状のガラス基板を基体としてその表面に、請求項1から7のいずれかに記載のめっき方法を用いて、少なくとも、ガラス基板表面のシラノール基を2倍以上に増加させる希酸水溶液によるガラス活性化処理、シランカップリング剤処理、Pd触媒化処理、Pd結合化処理を順次施した後、無電解めっき法により非磁性又は軟磁性のめっき膜を形成することを特徴とする磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法。
【請求項9】
前記ガラス基板の表面粗さRaが0.5nm以下であることを特徴とする請求項8に記載の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法。
【請求項10】
前記無電解めっき法によりNi−P合金からなるめっき膜を形成した後、昇温スピードを制御した加熱処理を施すことを特徴とする請求項8又は9に記載の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法。
【請求項11】
前記加熱処理が、250℃以上300℃以下の処理温度で1時間以上保持し、かつ室温から前記処理温度への昇温時間を2時間以上に制御する処理からなることを特徴とする請求項10に記載の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法。
【請求項12】
前記無電解めっき法により、1.0質量%〜13.0質量%のPを含むNi−P合金からなるめっき膜を1.0μm以上の厚さに形成することを特徴とする請求項11に記載の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法。
【請求項13】
前記シランカップリング剤処理により前記ガラス基板上にシランカップリング剤層を形成し、前記Pd触媒化処理により前記シランカップリング剤層上にPd触媒層を形成し、前記無電解めっき法により前記Pd触媒層上に軟磁性めっき層を形成することを特徴とする請求項8又は9に記載の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法。
【請求項14】
前記無電解めっき法により、3原子%以上20原子%以下のPと、CoとNiの原子数比率(Co/(Co+Ni))で45原子%以上のCoを含むCo−Ni−P合金からなる軟磁性めっき膜を0.2μm以上3μm以下の厚さに形成して前記軟磁性めっき層とすることを特徴とする請求項13に記載の磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の製造方法を用いて磁気記録媒体用ディスク基板を製造し、その磁気記録媒体用ディスク基板上に、少なくとも非磁性シード層、磁気記録層、保護層を順次形成し、当該ディスク基板の前記軟磁性めっき層を、当該磁気記録層のための軟磁性裏打ち層の少なくとも一部として利用することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−63438(P2006−63438A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38617(P2005−38617)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】