説明

ガラス板端面の面取り方法および面取り装置

【課題】ガラス板の無用な破損を回避することができると共に、研削位置でのガラス板の位置決め精度を高めて、面取り精度や面取り品質の向上を図る。
【解決手段】ガラス板1を上面に載せる左右一対の下側ベルト搬送機構10と各下側ベルト搬送機構10の上側に対に設けられた上側ベルト搬送機構20とを備えてガラス板1を水平方向に直線搬送するガラス板搬送装置3と、搬送経路の両側方に配されて、ガラス板1の左右幅方向の端面1aを面取りするダイヤモンドホイール2とを具備する。左右のベルト搬送機構10、20の一方側は固定側Kとして、ガラス板1を左右幅方向に移動不能に固定的に支持し、他方側は移動側Lとしてガラス板1を左右幅方向に移動可能に支持する。上下のベルトに挟まれる頭出し位置の直前でガラス板1とベルトの相対位置を決め、研削位置Tではベルトを位置決めすることで、ガラス板1の端面をダイヤモンドホイールに対して位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板端面の面取り方法および面取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイなどの各種画像表示装置用のガラス基板として使用されるガラス板を製造する場合、その一連の製造工程中に、素板ガラスより切り出したガラス板の鋭利な切断端面に対して研削加工を施し面取りを行う工程がある。この面取り工程は、通常、回転式の研削工具(ダイヤモンドホイール)をガラス板の端縁に接触させた状態で、当該端縁に沿うように直線的にガラス板と研削工具を相対移動させることにより行っている。その際、加工精度を上げるためには、ガラス板と研削工具を正確に位置決めしながら加工することが重要である。
【0003】
この種のガラス板端面の面取り方法として、ガラス板をベルトの走行により直線搬送しながら、搬送経路の側方に配した研削工具により、搬送方向と並行する方向のガラス板の端面を面取り加工する方法が多く採られている。
【0004】
その例として、特許文献1には、図11に示すように、上下に対向する幅広のベルト601、602の間にガラス板600を挟持し、ベルト601、602を走行させることでガラス板600を直線搬送しながら、搬送経路の側方に配した回転式の研削手段610で、搬送方向と並行する方向のガラス板600の端縁を面取りする方法が示されている。この場合、下側のベルト602は定盤615の上に載せて支持し、上側のベルト601に上からローラ618で押圧力をかけることにより、ガラス板600を上下のベルト601、602の間に滑らないように挟持するようにしている。また、研削手段610の反対側の側方に配した押し付けローラ612により、ガラス板600の研削すべき端面を、研削手段610に押し付けて位置決めし、研削量を適切に調節するようにしている。
【0005】
また、別の例として、特許文献2には、図12に示すように、矩形のガラス板700を、平行に走行する複数本のベルト701上に跨るように載せて支持し、ベルト701に設けた吸引孔702を介して負圧によりベルト701上にガラス板700を吸着保持した状態で、ベルト701を走行させることでガラス板700を直線搬送し、搬送しながら搬送経路の側方に配設した研削手段710、712で、搬送方向と並行する方向のガラス板700の両端面を面取りする方法が示されている。なお、搬送経路の途中には、ガラス板700の向きを変える旋回装置720が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−301442号公報
【特許文献2】特開2006−247768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の方法のように、幅広の上側ベルト601と下側ベルト602で上下からガラス板600を挟みながら搬送して面取り加工を行う場合や、特許文献2に記載の方法のように、複数本のベルト701の上にガラス板700を載せ、ベルト701の下側からガラス板700を負圧により吸着することで、ベルト701上にガラス板700を吸着保持しながら、ガラス板700を搬送して面取り加工を行う場合、搬送中のガラス板600、700に対し捩れや引っ張り等の無理な力がかかりやすく、ガラス板600、700が破損するおそれがある。特に、フラットパネルディスプレイのガラス基板として用いられるような、極めて薄いガラス板や幅の広いガラス板の場合、面取り加工のための搬送中にガラス板に捩れや引っ張り等の力が加わりやすくなるため、ガラス板がより破損しやすくなる。また、無理な力が加わるため、研削手段に対する位置決め精度が出しにくくなり、端面の研削量にバラツキが生じて、面取り精度や面取り品質が落ちるという問題もある。例えば、研削量が少な過ぎる場合は、端面の一部が研削されない擦り残しが発生するおそれがあり、一方、研削量が多過ぎる場合は、研削工具に過大な負荷がかかり、ガラス板の端面に不良が発生するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、搬送中のガラス板に無理な力が極力加わらないようにして、ガラス板の無用な破損を回避することができると共に、研削位置でのガラス板の位置決め精度を高めて、面取り精度や面取り品質の向上を図れるようにしたガラス板端面の面取り方法及び面取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。
(1) 上下方向に両板面を向けたガラス板を支持部材の上面に載せ、該支持部材の直線移動により前記ガラス板を水平方向に直線搬送しながら、その搬送経路の側方に配した研削手段により、前記ガラス板の左右幅方向の少なくとも一方の端面を面取りする方法において、
前記支持部材を左右一対配設し、前記ガラス板の左右幅方向の両端部近傍を、前記左右一対の支持部材の上面にそれぞれに載せて支持し、
その際、前記左右一対の支持部材のうちの一方の支持部材側を固定側として、前記ガラス板を左右幅方向に移動不能に固定的に支持すると共に、他方の支持部材側を移動側として、前記ガラス板を左右幅方向に移動可能に支持し、
その状態で、前記ガラス板を前記左右一対の支持部材により搬送しながら、少なくとも前記固定側に配された前記研削手段により面取り加工を行うことを特徴とするガラス板端面の面取り方法。
(2) 上記(1)の構成において、
前記左右一対の支持部材が、略鉛直面内で一定方向に同期して周回駆動される左右一対のエンドレス型のベルトの、外周を上に向けて略水平方向に直線移動する水平移動区間によって構成されており、
その水平移動区間を移動するベルトの上面に前記ガラス板を載せて搬送し、
その搬送の際に、前記固定側では、前記ベルトに対して前記ガラス板を滑りを阻止し得る強い力で面接触させることにより、前記ガラス板を左右幅方向に移動不能に支持し、前記移動側では、前記ベルトに対して前記ガラス板を滑りを許容し得る弱い力で面接触させるか、または、前記ベルト自体をガラス板の左右幅方向に移動可能に支持することにより、前記ガラス板を左右幅方向に移動可能に支持することを特徴とするガラス板端面の面取り方法。
(3) 上記(2)の構成において、
前記左右一対のエンドレス型のベルトを駆動するベルト搬送機構を下側ベルト搬送機構として配設すると共に、それら下側ベルト搬送機構の各上側に、該各下側ベルト搬送機構と同期してエンドレス型のベルトを略鉛直面内で周回させる上側ベルト搬送機構を配設し、
且つ、該上側ベルト搬送機構のベルトの、外周が下を向いて水平移動する水平移動区間と、前記支持部材として機能する前記下側ベルト搬送機構の水平移動区間とを上下に対向するよう配置することで、前記上側ベルト搬送機構及び下側ベルト搬送機構の組み合わせにより、前記水平移動区間の上側ベルトと下側ベルトの間にガラス板を挟み込んで搬送するガラス板搬送装置を構成し、
前記固定側では、前記上側ベルトを前記ガラス板に強い力で押し付けることにより、上下ベルト間に前記ガラス板を滑りを阻止する状態で強く挟み込み、
前記移動側では、前記上側ベルトを前記ガラス板に弱い力で押し付けることにより、上下ベルト間に前記ガラス板を滑りを許容する状態で弱く挟み込み、
その状態で、前記ガラス板を前記ガラス板搬送装置により搬送しながら、前記研削手段により面取りを行うことを特徴とするガラス板端面の面取り方法。
(4) 上記(3)の構成において、
前記上側ベルト搬送機構の前記水平移動区間を、前記下側ベルト搬送機構の前記水平移動区間の途中から搬送方向後段にかけて、該下側ベルト搬送機構の水平移動区間と重なるように配設することで、その重なる領域を、前記ガラス板を挟持しながら搬送する挟持搬送区間として設定すると共に、前記研削手段を前記挟持搬送区間の中間位置に配設し、
また、前記挟持搬送区間の始点を前記ガラス板の頭出し位置として設定すると共に、前記研削手段により研削が行われる位置を研削位置として設定し、
そして、前記頭出し位置の直前の前記固定側において、前記下側ベルトとガラス板の左右幅方向の相対位置を位置決めし、前記研削位置の前記固定側において、前記ガラス板と相対位置が決まった前記下側ベルトを左右幅方向に位置決めすることで、前記ガラス板の左右幅方向の端面を前記研削手段に対して位置決めすることを特徴とするガラス板端面の面取り方法。
(5) 上記(4)の構成において、
前記頭出し位置の直前における前記下側ベルトとガラス板との相対位置の位置決めは、
前記固定側において前記ガラス板の左右幅方向端縁をガラス板位置決め部材に押し付けて位置決めするガラス板位置決め工程と、該工程でガラス板を下側ベルトに対して位置決めした状態で前記固定側において前記下側ベルトの幅方向外側端縁をベルト位置決め部材に押し付けて位置決めするベルト位置決め工程とを、同時にまたは順番に実行することで行い、
前記研削位置における前記下側ベルトの位置決めは、
前記下側ベルトの幅方向外側端縁をベルト位置決め部材に押し付けることで行うことを特徴とするガラス板端面の面取り方法。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかの構成において、
前記移動側において、前記ガラス板を左右幅方向に移動可能に支持しながら上下方向に拘束することを特徴とするガラス板端面の面取り方法。
(7) 上下方向に両板面を向けた姿勢でガラス板を上面に載せる支持部材を備え、該支持部材を直線移動させることによって、該支持部材の上面に載せた前記ガラス板を水平方向に直線搬送するガラス板搬送装置と、
そのガラス板搬送装置によるガラス板の搬送経路の側方に配され、前記ガラス板の左右幅方向の端面を面取りする研削手段と、
を具備したガラス板端面の面取り装置において、
前記ガラス板搬送装置は、前記ガラス板の左右幅方向の両端部近傍をそれぞれの上面に載せる左右一対の前記支持部材を備えており、
前記左右一対の支持部材のうちの一方側は、固定側として、前記ガラス板を左右幅方向に移動不能に固定的に支持し、
他方側は、移動側として、前記ガラス板を左右幅方向に移動可能に支持することを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
(8) 上記(7)の構成において、
前記左右一対の支持部材が、略鉛直面内で一定方向に同期して周回駆動される左右一対のエンドレス型のベルトの、外周を上に向けて水平移動する水平移動区間によって構成されており、
該左右一対のエンドレス型のベルトを駆動するベルト搬送機構が下側ベルト搬送機構として配設されると共に、それら下側ベルト搬送機構の各上側に、該各下側ベルト搬送機構と同期してエンドレス型のベルトを略鉛直面内で周回させる上側ベルト搬送機構が配設され、
そして、該上側ベルト搬送機構のベルトの外周が下を向いて水平移動する水平移動区間と、前記支持部材として機能する前記下側ベルト搬送機構のベルトの水平移動区間とが上下に対向するよう配置されることで、前記上側ベルト搬送機構及び下側ベルト搬送機構の組み合わせによって、前記水平移動区間の上側ベルトと下側ベルトの間にガラス板を挟み込んで搬送する前記ガラス板搬送装置が構成されており、
前記固定側では、前記上側ベルトを前記ガラス板に強い力で押し付けることにより、上下ベルト間に前記ガラス板を滑りを阻止する状態で強く挟み込み、それにより前記ガラス板を左右幅方向に移動不能に支持し、
前記移動側では、前記上側ベルトを前記ガラス板に弱い力で押し付けることにより、上下ベルト間に前記ガラス板を滑りを許容する状態で弱く挟み込み、それにより前記ガラス板を左右幅方向に移動可能に支持することを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
(9) 上記(8)の構成において、
前記左右一対の下側ベルトの前記水平移動区間の間に、前記ガラス板の左右幅方向の中間部分を下側から支持するコロが、前記ガラス板の搬送方向に沿って多数配列されていることを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
(10) 上記(8)または(9)の構成において、
前記下側ベルトの水平移動区間及び前記上側ベルトの水平移動区間における各ベルトが、定盤によって前記ガラス板を挟み込む面と反対側の背面から支持されており、前記定盤に設けたレール上をベルトが滑り移動するように構成されていることを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
(11) 上記(10)の構成において、
前記上側ベルト搬送機構の前記水平移動区間が、前記下側ベルト搬送機構の前記水平移動区間の途中から搬送方向後段にかけて、該下側ベルト搬送機構の水平移動区間と重なるように配設されることで、その重なる領域が、前記ガラス板を挟持する挟持搬送区間として設定されると共に、前記研削手段が前記挟持搬送区間の中間位置に配設され、
また、前記挟持搬送区間の始点が前記ガラス板の頭出し位置として設定されると共に、前記研削手段により研削が行われる位置が研削位置として設定され、
そして、前記頭出し位置の直前の前記固定側に、前記下側ベルトとガラス板の左右幅方向の相対位置を位置決めする第1の位置決め機構が設けられ、前記研削位置の前記固定側に、前記下側ベルトを前記ガラス板の左右幅方向に位置決めすることで、前記ガラス板の左右幅方向の端面を前記研削手段に対して位置決めする第2の位置決め機構が設けられていることを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
(12) 上記(11)の構成において、
前記第1の位置決め機構として、
前記ガラス板の左右幅方向の端面をガラス板位置決め部材に押し付けて位置決めするガラス板位置決め機構と、該ガラス板位置決め機構でガラス板を位置決めした状態で前記下側ベルトの幅方向外側側縁をベルト位置決め部材に押し付けて位置決めする第1のベルト位置決め機構とが設けられ、
前記第2の位置決め機構として、
前記下側ベルトの幅方向外側側縁をベルト位置決め部材に押し付けることで位置決めする第2のベルト位置決め機構が設けられていることを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
(13) 上記(12)の構成において、
少なくとも前記固定側における前記下側ベルト搬送機構の前記ベルトの水平移動区間の幅方向の両側方に、前記ベルトの幅方向の側縁が摺接することで、該ベルトの幅方向の位置を規制しながらベルトの移動を案内する一対のレール状のベルトガイドが配設され、それら一対のベルトガイドのうち外側のベルトガイドの一部の区間が前記ベルト位置決め部材として使用され、
前記第1のベルト位置決め機構と第2のベルト位置決め機構は、前記外側ベルトガイドにより構成された前記ベルト位置決め部材と、その反対側に前記ベルトを挟んで配設され且つ前記ベルトの側縁に押圧接触することで従動回転するベルト押し付けローラとにより構成され、
該ベルト押し付けローラは、前記一対のベルトガイドのうち内側のベルトガイドに形成された切欠に配設され、該切欠を通してベルトの幅方向内側側縁を押圧することにより該ベルトの幅方向外側側縁を前記ベルト位置決め部材として機能する前記外側のベルトガイドに押圧接触させて、それにより前記ベルトの位置を外側のベルトガイドを基準にして左右方向に位置決めするものとして構成されていることを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
(14) 上記(13)の構成において、
前記第2のベルト位置決め機構を構成する押し付けローラは、前記研削手段の正面に対応する位置に1個配設される他、少なくともその上流側の位置に並べて複数個配列されており、前記研削位置に近づくにつれて、前記各押し付けローラの前記ベルトに対する押し付け力が徐々に強くなるように設定されていることを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
(15) 上記(12)〜(14)のいずれかの構成において、
前記ガラス板位置決め機構は、
前記ガラス板の搬送経路の両側方のうちの前記固定側に対応する側に配設され、且つ、搬送されるガラス板の左右幅方向の一方の端面が押し当てられることにより、ガラス板の左右幅方向の位置を決める前記ガラス板位置決め部材と、
前記ガラス板の搬送経路の両側方のうちの前記移動側に対応する側に配設され、且つ、搬送されるガラス板の左右幅方向の他方の端面に押圧接触して、前記ガラス板の一方の端面を前記ガラス板位置決め部材に押し付ける従動回転式の押し付けローラと、から構成されており、
該押し付けローラは、前記ガラス板の搬送方向に複数配列されていることを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
(16) 上記(15)の構成において、
前記ガラス板位置決め部材は、前記ガラス板の搬送経路の側方に配されて、略水平面内で周回可能にエンドレス型のベルトを支持するベルト周回機構の前記ベルトの直線移動区間によって構成されていることを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
(17) 上記(10)〜(16)のいずれかの構成において、
前記研削位置における前記移動側に、前記ガラス板を、左右幅方向に移動可能としながら前記上側ベルトの上から下側ベルトに対して押さえ込むガラス板押さえ込みローラが設けられると共に、前記移動側の下側ベルト搬送機構の研削位置における前記定盤が、前記ベルトの幅方向に移動自在に支持されていることを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)の構成によれば、ガラス板の左右幅方向の片端のみを左右幅方向移動不能に拘束し、もう片端は、拘束せずに左右幅方向に移動可能に支持するようにしているので、左右の支持部材の移動方向の平行度が厳密に保たれていない場合であっても、ガラス板に捩れや引っ張りなどの負担がかかりにくくなり、無理な応力がガラス板に発生するのを回避することができる。その結果、フラットパネルディスプレイのガラス基板として用いられるような薄いガラス板や幅の広いガラス板であっても、破損させることなく、スムーズな面取り加工が可能となる。
上記(2)の構成によれば、周回駆動されるエンドレス型のベルトによって支持部材を構成しているので、ベルトでガラス板を次々に連続的に搬送しながら面取り加工を行うことができる。また、左右のベルトによるガラス板の支持のうち、片方を左右方向への移動を拘束した状態での支持とし、もう片方を左右方向への移動を自由にした状態での支持としているので、ガラス板の全面を拘束する場合の無理な応力の発生を回避することができる。なお、この場合のベルトの上面に対するガラス板の面接触の強度の加減は、上からの力または下からの力の調節によって行うことができる。例えば、上からの力としては、ベルトと共に移動する部材(別のベルト等)による下向きの押圧力を挙げることができる。また、下からの力としては、ベルトに形成した吸引孔を通してガラス板をベルトの上面に吸着する吸着力を挙げることができる。
上記(3)の構成によれば、上下のベルトでガラス板を挟みながら搬送するので、薄いガラス板であっても、上下にバタつかずに搬送することができ、スムーズに且つ正確に面取り加工を行うことができる。また、上下のベルトでガラス板を挟み込むに当たり、固定側では、ガラス板とベルトとの間に滑りが起こらない程度に強く挟み込み、移動側では、ベルトに挟み込まれたガラス板が左右幅方向に移動可能となるように緩く挟み込むので、ベルトで上下からガラス板を挟み込むものの、ガラス板を割合と自由な状態で保持しながら搬送することができ、薄いガラス板であっても、破損させるようなことがない。
上記(4)の構成によれば、予め、頭出し位置の直前の固定側において、ガラス板と下側ベルトの相対位置を決めておき、研削手段が存在するが故にガラス板を直接位置決めすることができない研削位置では、ガラス板の代わりに、ガラス板と予め相対位置が決められている下側ベルトを位置決めすることによって、ガラス板を研削手段に対して位置決めするので、研削位置において精度の高い位置決めが可能となり、正確な面取り加工を行うことができる。そのため、研削手段による削り残しが生じたり、研削手段に過大負荷がかかったりすることを無くすことができる。
上記(5)の構成によれば、固定側の頭出し位置の直前および研削位置において、位置決めの基準であるベルト位置決め部材に下側ベルトの幅方向外側側縁を押し付けることによりベルトの位置決めを行うので、簡単な構成で確実にベルトの幅方向の位置決めを行うことができ、常に一定の取り代でガラス板の端面を研削することができる。
上記(6)の構成によれば、移動側においてガラス板を上下方向に拘束するようにしているので、薄いガラス板であっても、上下方向のバタつきを良好に防止することができ、従って固定側と移動側の両方で端面を同時に研削加工する場合にも、研削加工位置が一定に定まり、所定の端面形状を得ることができて、カケやチッピング等の加工不良を無くすことができる。
上記(7)の構成によれば、ガラス板の搬送のために支持部材を左右一対配設し、一方の支持部材側(固定側)においてガラス板を左右幅方向移動不能に拘束した状態で支持し、もう一方の支持部材側(移動側)においてガラス板を左右幅方向移動可能に支持するようにしているので、左右の支持部材の移動方向の平行度が厳密に保たれていない場合であっても、搬送するガラス板に捩れや引っ張りなどの負担がかかりにくくすることができ、無理な応力がガラス板に発生するのを回避することができる。その結果、フラットパネルディスプレイのガラス基板として用いられるような薄いガラス板や幅の広いガラス板であっても、破損させることなく、スムーズな面取り加工が可能となる。
上記(8)の構成によれば、周回駆動されるエンドレス型のベルトによって支持部材を構成しているので、ベルトでガラス板を次々に連続的に搬送しながら面取り加工を行うことができる。また、上下のベルトでガラス板を挟みながら搬送するので、薄いガラス板であっても、上下にバタつかずに搬送することができ、スムーズに且つ正確に面取り加工を行うことができる。また、上下のベルトでガラス板を挟み込むに当たり、固定側では、ガラス板とベルトとの間に滑りが起こらない程度に強く挟み込み、移動側では、ベルトに挟み込まれたガラス板が左右幅方向に移動可能となるように緩く挟み込むので、ベルトで上下からガラス板を挟み込むものの、ガラス板を割合と自由な状態で保持しながら搬送することができ、薄いガラス板であっても、破損させるようなことがない。
上記(9)の構成によれば、ガラス板の左右幅方向の中間部をコロで支持するので、ガラス板の撓みを防止することができ、フラットパネルディスプレイのガラス基板として用いられるような薄いガラス板や幅の広いガラス板であっても、精度の高い面取り加工を行うことができる。
上記(10)の構成によれば、上下のベルトをそれぞれ背面側から定盤で支持するので、ベルトの無用の撓みを無くすことができ、ガラス板を安定支持することができる。また、定盤に設けたレール上をベルトが滑り移動するので、ベルトのスムーズな移動を確保することができる。なお、定盤とレールは別々に形成してもよいし、一体に形成してもよい。別々に形成する場合は、定盤を剛性の高いステンレス等の金属製とし、レールを高分子ポリエチレン等の滑り性の良い樹脂製とするのがよい。
上記(11)の構成によれば、予め、頭出し位置の直前の固定側において、ガラス板と下側ベルトの相対位置を決めておき、研削手段が存在するが故にガラス板を直接位置決めすることができない研削位置では、ガラス板の代わりに、ガラス板と予め相対位置が決められている下側ベルトを位置決めすることによって、ガラス板を研削手段に対して位置決めするので、研削位置において精度の高い位置決めが可能となり、正確な面取り加工を行うことができる。そのため、研削手段による削り残しが生じたり、研削手段に過大負荷がかかったりすることを無くすことができる。
上記(12)の構成によれば、固定側の頭出し位置の直前および研削位置において、位置決めの基準であるベルト位置決め部材に下側ベルトの幅方向外側側縁を押し付けることによりベルトの位置決めを行うので、簡単な構成で確実にベルトの幅方向の位置決めを行うことができ、常に一定の取り代でガラス板の端面を研削することができる。
上記(13)の構成によれば、下側ベルトの水平移動区間の両側方にレール状のベルトガイドを設けているので、ベルトを精度よく直線移動させることができる。また、ベルトガイドとベルトとの間に存在する遊びを、頭出し位置の直前及び研削位置にて、ベルトガイドにベルトの幅方向外側側縁を押し付けることで無くすようにし、それにより、ベルトの幅方向の位置決めを行うようにしているので、必要箇所でのベルトの幅方向の位置精度を上げることができ、その位置精度を、研削手段に対するガラス板端面の位置決め精度に反映させることができる。
上記(14)の構成によれば、研削位置においてベルトをベルトガイドに押し付ける押し付けローラを複数個配列して設け、研削加工点に近づくにつれて徐々に押し付けローラの押し付け力が強く働くように設定してあるので、研削加工点に到達した時点で、より確実なベルトの位置決めを行うことができ、ガラス板端面の研削手段に対する位置決め精度を上げることができる。
上記(15)の構成によれば、ガラス板位置決め機構を、ガラス板の一方の端面が押し当てられるガラス板位置決め部材と、ガラス板の他方の端面を押圧する複数の押し付けローラとで構成しているので、ベルトの上に載った状態のガラス板の位置決めをスムーズに行うことができる。
上記(16)の構成によれば、ガラス板位置決め部材が、周回可能なベルトの直線移動区間で構成されているので、搬送されるガラス板と一緒にベルトが移動することにより、正確に位置決めしながらガラス板を搬送することができる。
上記(17)の構成によれば、移動側において、押さえ込みローラにより上側ベルトを介してガラス板を下側ベルトに向けて押さえ込むようにしているので、薄いガラス板であっても、上下方向のガラス板のバタつきを良好に防止することができる。従って固定側と移動側の両方で端面を同時に研削加工する場合にも、研削加工位置を一定に定めることが容易にできるようになり、所定の端面形状を得ることができて、カケやチッピング等の加工不良を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態のガラス板端面の面取り装置Mの全体構成を示す平面図である。
【図2】同面取り装置Mにおけるガラス板搬送装置3の概略構成を示す図で、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図3】(a)は同面取り装置Mの研削位置Tにおける概略構成を示す平面図、(b)は(a)のIIIb−IIIb矢視断面図である。
【図4】同面取り装置Mにおける押し付けローラに押し付け力を付与する構成の例を示す側面図である。
【図5】同面取り装置Mの頭出し位置Sにおいて、ベルト及びガラス板の位置決めを行う方法の説明用の平面図である。
【図6】同面取り装置Mの研削位置Tにおいて、ガラス板の研削手段に対する位置決め行う方法の説明用の平面図である。
【図7】同面取り装置Mの頭出し位置Sと研削位置Tにおいて、ガラス板の位置決めを行う方法の説明用の平面図である。
【図8】ガラス板の位置決めが不完全な場合の第1の比較例を示す平面図である。
【図9】ガラス板の位置決めが不完全な場合の第2の比較例を示す平面図である。
【図10】ガラス板の位置決めが不完全な場合の第3の比較例を示す平面図である。
【図11】従来技術の第1例を示す斜視図である。
【図12】従来技術の第2例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態のガラス板端面の面取り方法及び装置を図面を参照しながら説明する。
図1は実施形態のガラス板端面の面取り装置Mの全体構成を示す平面図、図2は同装置におけるガラス板搬送装置の概略構成を示す図で、(a)は斜視図、(b)は側面図、図3(a)は同装置の研削位置Tにおける概略構成を示す平面図、(b)は(a)のIIIb−IIIb矢視断面図、図4は同装置における押し付けローラに押し付け力を付与する構成の例を示す側面図、図5は同装置の頭出し位置Sにおいて、ベルト及びガラス板の位置決めを行う方法の説明用の平面図、図6は同装置の研削位置Tにおいて、ガラス板の研削手段に対する位置決め行う方法の説明用の平面図、図7は同装置Mの頭出し位置Sと研削位置Tにおいて、ガラス板の位置決めを行う方法の説明用の平面図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態のガラス板端面の面取り装置Mは、矩形のガラス板1を、上下に板面を向けた水平な姿勢で、ベルト式のガラス板搬送装置3により矢印X方向に直線搬送し、搬送しながら、搬送経路の左右両側方に配した回転式のダイヤモンドホイール(研削手段)2で、ガラス板1の左右幅方向(搬送方向Xと直交する矢印Y方向)の両端面1aを面取りするものである。ここでは、ガラス板1として、例えば、厚さ0.3〜0.7mm、外形サイズ5G以下のサイズのフラットパネルディスプレイ用のガラス基板として用いられるものを想定している。
【0014】
ガラス板搬送装置3は、上側ベルト21と下側ベルト11とを組み合わせたものをガラス板1の幅に合わせて左右に配置し、これらのベルト21、11でガラス板1の左右幅方向の両端部近傍部分を挟持しながら搬送する方式を採用している。このように左右のベルトでガラス板を搬送する方式の場合、次のような問題がある。
【0015】
(1)左右のベルトの搬送速度が厳密に同期するわけではない。
(2)左右のベルトが厳密に平行に移動するわけではない。
(3)左右のベルトに幅方向の寸法誤差がある。
【0016】
そして、上記(1)〜(3)の理由により、ガラス板の左右両端部近傍を先述した上側ベルト21と下側ベルト11のように、上下のベルトでそれぞれ完全に挟持すると、ガラス板に無理な力が働くことがあることが分かった。即ち、ガラス板の左右両端部近傍をそれぞれ上下のベルトで完全に固定すると、搬送中のガラス板に左右のベルトから、捩れや引っ張りなどの外力が加えられることになり、ガラス板に無理な力がかかるおそれがある。そのため最悪の場合、ガラス板が破損することがあることが分かった。また、ベルト自体の幅方向の寸法誤差に伴いガラス板も追従して幅方向にずれることになるため、研削位置でのガラス板の位置が一定にならないことがあり、更にベルトの寸法誤差に加えて機械の寸法精度や動作誤差により、研削量にバラツキが生じることがある。そのため、それらの理由により面取り精度が落ちるおそれがあることも分かった。
【0017】
例えば、研削位置でのガラス板の位置精度が良くない場合、端面研削量にバラツキが生じ、研削量が少な過ぎる場合は、端面の一部が研削されない擦り残しが発生し、一方、研削量が多過ぎる場合は、研削工具に過大な負荷がかかったり、ガラス板端面にヤケ不良が発生したりすることがある。また、削り残しを防ぐため、本来の狙いとする取り代(研削量)に対して、予め余分な取り代の設定をしておくこともあり、その場合は、研削時における加工負荷が増大し、工具磨耗速度が増大したりガラス加工品質が損なわれることがあった。
【0018】
そこで、それらの問題点を解消するために、本発明の実施形態のガラス板端面の面取り装置Mでは、ガラス板1を搬送する際に、左右に対をなして配置した上側ベルト21と下側ベルト11の組のうち、一方の組のベルトを固定側K(図1では左側)とし、他方の組のベルトを移動側L(図1では右側)とし、固定側Kではガラス板1を左右幅方向(矢印Y方向)に移動不能に固定的に支持し、移動側Lでは、ガラス板1を左右幅方向(矢印Y方向)に移動可能に支持するようにしている。また、最小限の取り代(削り代)で、精度よく端面の面取りを行うことができるようにしている。
【0019】
以下に具体的に説明する。
図1に示すように、このガラス板端面の面取り装置Mは、上下方向に両板面を向けた姿勢でガラス板1を水平方向に直線搬送するベルト式のガラス板搬送装置3と、ガラス板搬送装置3によるガラス板1の搬送経路の左右両側方に配されて、ガラス板1の左右幅方向の端面1aを面取りするダイヤモンドホイール(研削手段)2とを有している。図1において、H1、H2はガラス板1の研削ラインを示している。
【0020】
ガラス板搬送装置3は、上下方向に両板面を向けた姿勢でガラス板1の左右幅方向の両端部近傍をそれぞれの上面に載せる左右一対の支持部材としての下側ベルト11を備えている。左右一対の下側ベルト11のうちの一方側(下流側正面から見て左側、つまり図1の左側)は、固定側Kとして、ガラス板1を左右幅方向に移動不能に固定的に支持する。また、他方側(下流側正面から見て右側、つまり図1の右側)は、移動側Lとして、ガラス板1を左右幅方向に移動可能に支持する。
【0021】
左右一対の下側ベルト11は、略鉛直面内で一定方向に同期して周回駆動される左右一対のエンドレス型のベルトであり、下側ベルト搬送機構10の主要素として構成され、図2に示すように、両端のプーリ12、13間に張設されており、矢印R3方向に周回移動する。そして、下側ベルト11の、外周を上に向けて水平移動する水平移動区間11Aが、ガラス板1を支持する支持部材に相当している。
【0022】
それら左右一対の各下側ベルト搬送機構10の各上側には、それぞれ各下側ベルト搬送機構10と組になるように、各下側ベルト搬送機構10と同期してエンドレス型の上側ベルト21を略鉛直面内で周回させる上側ベルト搬送機構20が配設されている。これらの上側ベルト搬送機構20の上側ベルト21も、両端のプーリ22、23間に張設されており、矢印R4方向に周回移動する。そして、上側ベルト搬送機構20の上側ベルト21の、外周が下を向いて水平移動する水平移動区間21Aと、支持部材として機能する下側ベルト搬送機構10の下側ベルト11の水平移動区間11Aとが上下に対向するよう配置されることで、上側ベルト搬送機構20及び下側ベルト搬送機構10の組み合わせによって、水平移動区間21A、11Aの上側ベルト21と下側ベルト11の間にガラス板1を挟み込んで搬送するガラス板搬送装置3が構成されている。
【0023】
この場合、固定側Kでは、上側ベルト21をガラス板1に強い力で押し付けることにより、上下のベルト21、11間にガラス板1を滑りを阻止する状態で強く挟み込み、それによりガラス板1を左右幅方向に移動不能に支持するようになっている。また、移動側Lでは、下側ベルト11自体をガラス板1の左右幅方向(矢印Y方向)に移動可能に支持することにより、ガラス板1を左右幅方向に移動可能に支持するようになっている。なお、上側ベルト21をガラス板1に弱い力で押し付けることにより、上下のベルト21、11間にガラス板1の滑りを許容する状態で弱く挟み込み、それによりガラス板1を左右幅方向に移動可能に支持してもよい。
【0024】
下側ベルト搬送機構10の下側ベルト11の前記水平移動区間11A及び上側ベルト搬送機構20の上側ベルト21の前記水平移動区間21Aにおける各ベルト21、11は、図2(b)及び図3(b)に示すように、定盤25、15(15L、15R)によってガラス板1を挟み込む面と反対側の背面から支持されており、定盤25、15に設けたレール26、16上を上下のベルト21、11が滑り移動するように構成されている。レール26、16は、上下のベルト21、11を滑り移動させることの可能な樹脂材料や金属材料により構成されている。
【0025】
また、図1及び図3(b)に示すように、下側ベルト搬送機構10の下側ベルト11の前記水平移動区間11Aの幅方向の両側方には、下側ベルト11の幅方向の側縁が摺接することで、下側ベルト11の幅方向の位置を規制しながら下側ベルト11の移動を案内する一対のレール状のベルトガイド17(17A、17B)が配設されている。
【0026】
また、図1に示すように、左右一対の下側ベルト搬送機構10の下側ベルト11の水平移動区間11Aの間には、ガラス板1の左右幅方向の中間部分を下側から支持する自由回転式のコロ8が、ガラス板1の搬送方向(矢印X方向)に沿って多数配列されている。
【0027】
また、図2に示すように、上側ベルト搬送機構20の上側ベルト21の水平移動区間21Aが、下側ベルト搬送機構10の下側ベルト11の水平移動区間11Aの途中から搬送方向後段にかけて、下側ベルト搬送機構10の水平移動区間11Aと重なるように配設されることで、その重なる領域が、ガラス板1を挟持する挟持搬送区間4として設定されている。研削手段であるダイヤモンドホイール2は挟持搬送区間4の中間位置に配設されている。また、挟持搬送区間4の始点が、ガラス板1の頭出し位置Sとして設定されると共に、ダイヤモンドホイール2により研削が行われる位置が研削位置Tとして設定されている。
【0028】
更に、図1に示すように、頭出し位置Sの直前の固定側Kには、下側ベルト11とガラス板1の左右幅方向の相対位置を位置決めする第1の位置決め機構100が設けられると共に、研削位置Tの固定側Kには、下側ベルト11をガラス板1の左右幅方向に位置決めすることで、ガラス板1の左右幅方向の端面をダイヤモンドホイール2に対して位置決めする第2の位置決め機構200が設けられている。
【0029】
第1の位置決め機構100は、ガラス板1の左右幅方向の端面1aをガラス板位置決め部材111Aに押し付けて位置決めするガラス板位置決め機構110と、ガラス板位置決め機構110でガラス板1を位置決めした状態で下側ベルト11の幅方向外側側縁をベルト位置決め部材17Aに押し付けて位置決めする第1のベルト位置決め機構120とを含んでいる。
【0030】
また、第2の位置決め機構200は、下側ベルト11の幅方向外側側縁をベルト位置決め部材に押し付けることで位置決めする第2のベルト位置決め機構201を含んでいる。
【0031】
この実施形態の場合のガラス板位置決め機構110は、ガラス板1の搬送経路の両側方のうちの固定側Kに対応する側に配設され、且つ、搬送されるガラス板1の左右幅方向の一方(図1の左側)の端面1aが押し当てられることにより、ガラス板1の左右幅方向の位置を決めるガラス板位置決め部材111Aと、ガラス板1の搬送経路の両側方のうちの移動側Lに対応する側に配設され、且つ、搬送されるガラス板1の左右幅方向の他方(図1の右側)の端面1aに押圧接触して、ガラス板1の一方の端面1aをガラス板位置決め部材111Aに押し付ける従動回転式の押し付けローラ118と、から構成されており、押し付けローラ118は、ガラス板1の搬送方向に複数配列され、所定の圧力でガラス板1の他方(図1の右側)の端面1aをガラス板位置決め部材111Aに向けて押圧することができるように設けられている。
【0032】
なお、ガラス板位置決め部材111Aは、ガラス板1の搬送経路の側方に配されて、略水平面内で周回可能にエンドレス型のサイドベルト111を支持するベルト周回機構(位置決めサイドベルト機構とも言う)112のサイドベルト111の直線移動区間によって構成されている。ここで、ベルト周回機構112は、主要素であり水平面内で周回移動自在とされたエンドレスのサイドベルト111と、サイドベルト111の直線移動区間(111A)を形成するべくサイドベルト111を張設する両端のプーリ113、115と、サイドベルト111の張りを張設するプーリ114と、サイドベルト111の直線移動区間(ガラス位置決め部材として機能する部分:111A)を背面から支持するバックサポート(定盤)116などから構成されている。
【0033】
また、外側と内側の一対のベルトガイド17A、17B(17)のうち外側のベルトガイド17Aの一部の区間が、ベルト位置決め部材として使用されている。第1のベルト位置決め機構120と第2のベルト位置決め機構201は、図1及び図3に示すように、外側ベルトガイド17Aにより構成されたベルト位置決め部材と、その反対側に下側ベルト11を挟んで配設され且つ該ベルト11の側縁に押圧接触することで従動回転する押し付けローラ122、202とにより構成されている。押し付けローラ122、202は、一対のベルトガイド17A、17B(17)のうち内側のベルトガイド17Bに形成された切欠18に配設され、切欠18を通して下側ベルト11の幅方向内側側縁を押圧することにより下側ベルト11の幅方向外側側縁をベルト位置決め部材として機能する外側のベルトガイド17Aに押圧接触させて、それにより下側ベルト11の位置を外側のベルトガイド17Aを基準にして左右方向に位置決めするものとして構成されている。
【0034】
また、図1及び図6に示すように、第2のベルト位置決め機構201を構成する押し付けローラ202は、ダイヤモンドホイール2の正面に対応する位置に1個配設される他、少なくともその上流側の位置に並べて複数個配列されており、研削位置Tに近づくにつれて、各押し付けローラ202の下側ベルト11に対する押し付け力が徐々に強くなるように設定されている。例えば、図1に示す例では、研削位置Tに対向する位置に1個とその上流側と下流側に2個ずつの合計5個の押し付けローラ202が1列に配列されており、その押し付け圧力を上流側から順にP1〜P5とすると、大小関係がP1<P2<P3>P4>P5となるように設定されている。つまり、研削位置Tで最も強く下側ベルト11を押し付けるようになっている。こうすることで、より確実な位置決めをすることが可能となり、位置決め精度の安定化を図ることができる。
【0035】
押し付けローラ122、202及び押し付けローラ118は、下側ベルト11やガラス板1の側縁に接触することで、下側ベルト11やガラス板1の走行に追従回転するものであり、下側ベルト11やガラス板1に対する押し付け力を調節できるようになっている。押し付けローラ122、202、118の材質としては、押し付けローラ122、202、118の周面が下側ベルト11の端縁やガラス板1の端面1aに押付力をもって接触することから、剛性・硬度・磨耗・耐食性等を考慮して選択するのが良く、金属、樹脂、セラミックス等から選ぶことができる。
【0036】
その選択の根拠としては、
(a)研削加工における切削水の使用から防錆効果があること
(b)耐摩耗性に優れ、変形し難く、寸法が安定していること
(c)機械的強度が強く、押圧荷重に耐えられること
(d)摺動特性に優れ、軸受部品として利用できること
等が挙げられ、例として、次の樹脂材料が候補として挙げられる。
【0037】
例えば、フェノール、PTFT(ポリテトラフルオロエチレン)、UHMW(超高分子量ポリエチレン)、P.P(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、カーボン、POM(ポリアセタール)等があり、ここでは、一般的に広く用いられているポリアセタールが選択されている。市販されているポリアセタールの例としては、例えば、デュポン社のデルリン(商品名)とプラスチック社のジュラコン(商品名)が挙げられる。
【0038】
また、押し付けローラ122、202、118としては、図4に示すように、外輪をPOM(ポリアセタール樹脂)とし、精密ベアリングを内蔵した樹脂ベアリング(樹脂軸受)250を使用することにより、高荷重を受けられる構造とすることができる。また、押し付けローラ122、202、118への押圧力の付与機構(押圧機構)としては、押し付けローラ122、202、118としてのベアリング250の支持軸252を押圧するタイプのものを使用することができ、その押圧機構260としては、コイルばね、板ばね、エアシリンダ、油圧シリンダ等を採用することができる。また、それらを単独で用いても良いが、複数の機構部品を用いて押圧するようにしても良い。また、押し付けローラ122、202、118の支持軸252を押圧するのではなく、直接押し付けローラ122、202、118を押圧する機構を採用することも可能である。
【0039】
また、研削位置Tには、固定側Kと移動側Lにダイヤモンドホイール2が配されている。研削手段であるダイヤモンドホイール2は、脆弱な薄板であるガラス板1の端面を精密に面取り加工するためのものであって、図1及び図3(a)、(b)に示すように、左右それぞれに矢印R1、R2方向(ガラス板1の搬送方向Xに研削部分が逆走する方向)に回転することによって、搬送されてくるガラス板1の端面1aを面取りする。面取り形状の種類としては、端面1aの厚さ方向の全体を1つの曲率でR状に面取りするもの、端面1aの上下エッジ部だけをR状に小さく面取りし、上下エッジ部の間の中間部分を平面状に面取りするもの等があり、ここでは種類を問わない。また、ダイヤモンドホイール2は、例えば、図3(b)に示すように、回転駆動機構やガラス板1に対する研削深さを調節する研削調整機構などを含む駆動調整機構部6を介して、フレーム7により支持されている。
【0040】
また、図3(b)に示すように、研削位置Tにおける移動側Lには、ガラス板1を、左右幅方向に移動可能としながら上側ベルト21の上から下側ベルト11に対して押さえ込むガラス板押さえ込みローラ301が設けられると共に、移動側Lの下側ベルト搬送機構10の研削位置Tにおける定盤15Lが、下側ベルト11の幅方向(矢印Y方向)に移動自在に支持されている。つまり、下側ベルト11は、コロ軸受やリニアガイド等350によるフローティング構造で支持されている。これにより、上側ベルト21でガラス板1を図中矢印のように下側ベルト11に向けて押し付けても、移動側Lでは、ガラス板1を幅方向に移動可能に支持できることになる。なお、固定側Kの下側ベルト11を支持する定盤15Kは、移動しないように固定されている。また、ガラス板押さえ込みローラ301が配置された部分には、その配置を可能にするため定盤25などに切欠が設けられている。
【0041】
次に上記構成のガラス板端面の面取り装置Mを用いたガラス板1の面取り方法を説明する。
前工程から流れて来たガラス板1は、下側ベルト搬送機構10の下側ベルト11の上に載せられ、下流側へと搬送される。下流側へ搬送されるガラス板1は、図1及び図5に示すように、下側ベルト11上で、次のように幅方向に位置決めされる。
【0042】
まず、連続して配列された多数の押し付けローラ118によって一端(図1中の右側の端面1a)が押されたガラス板1は、他端(図1中左側の端面1a)がガラス板位置決め部材として設けられたサイドベルト機構(ベルト周回機構)112のサイドベルト111の直線移動区間(111A)に押し付けられることで、左右幅方向(矢印Y方向)に位置決めされる。このときのサイドベルト111の回転方向は矢印R5方向、押し付けローラ118の回転方向は矢印R6方向である。次に、上側ベルト21と下側ベルト11に挟まれる頭出し位置Sの直前において、固定側Kの下側ベルト11が押し付けローラ112(図5中矢印R7方向に追従回転)によって押されることで、下側ベルト11の外側側縁が外側ベルトガイド17Aに押し付けられ、それにより、下側ベルト11が幅方向に位置決めされ、その結果、下側ベルト11とガラス板1の幅方向の相対位置関係が決定される。
【0043】
この点を図5を用いて更に細かく述べると、下側ベルト11が外側ベルトガイド17Aに押し当てられることで、頭出し位置Sでのベルト基準点Qが設定される。また、このとき、連続した押し付けローラ118で固定側Kの位置決め用のサイドベルト機構(ベルト周回機構)112のサイドベルト111にガラス板1の端面1aが押し当てられることで、頭出し位置Sでのガラス端部Pが設定される。頭出し位置Sでのベルト基準点Qと頭出し位置Sでのガラス端部Pとの間の距離をAとすると、頭出し位置Sで、ベルト基準点Qとガラス端部Pとの距離Aを保ちながら左右幅方向に位置決めされたガラス板1は、上下のベルト21、11によって挟み込み搬送される。この挟み込み搬送されている間、下側ベルト11とガラス板1の位置関係は不変な状態に保たれる。
【0044】
次に研削位置Tに向けてガラス板1が搬送されていくと、研削位置Tの近くに到達するに従い下側ベルト11の幅方向位置決めが行われる。即ち、図6に示すように、直列に配列された押し付けローラ202が下側ベルト11の水平移動区間11Aを押圧することにより、下側ベルト11の外側側縁が外側ベルトガイド17A(ベルト位置決め部材)に押し付けられ、それにより、下側ベルト11が幅方向に位置決めされる。このとき、予め頭出し位置Sでガラス板1と下側ベルト11は幅方向に相対位置決めされた関係にあるので、下側ベルト11が位置決めされることによって、自動的にガラス板1の一方の端面1aが固定側Kのダイヤモンドホイール2に対して幅方向に位置決めされる。ガラス板1の一方の端面1aが固定側Kで位置決めされると、従動的な関係にある移動側Lにおいても、ガラス板1の他方の端面1aがダイヤモンドホイール2に対して位置決めされる。このように、ガラス板1や下側ベルト11が幅方向に位置決めされる際、上下のベルト21、11での挟持搬送区間4の固定側Kでは、下側ベルト11とガラス板1が幅方向に相対移動不能な関係で保持され、移動側Lでは、定盤15Lのフローティング支持により、追従した動きができるように保持される。従って、無理な応力がガラス板1に作用するのを回避することができる。
【0045】
具体的に述べると、図7に示すように、研削位置Tにおけるベルト基準点Q’は、下側ベルト11が外側のベルトガイド17Aに押し付けられることにより、頭出し位置Tでのベルト基準点Qと幅方向に同じ位置となる。ベルト基準点Q’とガラス端部P’との距離A’は、頭出し位置における距離Aと同じであるから、ガラス板1の端面1aは、ベルトガイド17Aから一定距離A’(=A)を保ちながら研削加工される。従って、固定側Kでも移動側Lでも、ダイヤモンドホイール2により、目標値tに良く一致した研削量t’で、ガラス板1の端面1aが連続加工されることになる。つまり、目標の加工点P1にガラス端部P’が精度よく一致することになる。
【0046】
次に比較例として、頭出し位置Sで位置決めを行うものの、研削位置Tで位置決めを行わない場合を考えてみる。
その場合は、図8に示すように、ベルト基準点Q’がベルトガイド17Aより例えばbだけ内側にずれているとすると、ベルト基準点Q’とガラス端部P’との距離A’は、頭出し位置におけるAと等しいが、ガラス端部P’は、所定の加工点P1よりbだけ内側に移動しているので、固定側Kのガラス板1の端面1aは、所定の取り代より前記のずれ分bだけ少ない取り代で加工される。一方、移動側Lのガラス板1の端面1aは、所定の取り代よりbだけ多い取り代で研削加工される。従って、正確な面取りが実現できない。
【0047】
次に別の比較例として、頭出し位置Sでベルトの位置決めを行わず、研削位置Tでベルトの位置決めを行なう場合を考えてみる。
その場合は、図9に示すように、押し付けローラ118でガラス板1の固定側の端面1aをサイドベルト111に押し当てるものの、下側ベルト11の位置決めを行わないことから、ベルト基準点Qがベルトガイド17Aよりaだけ内側にずれているとすると、頭出し位置Sにおけるベルト基準点Qとガラス端部Pとの距離はA+aとなる。また、ガラス板1は、ベルト基準点Qとガラス端部Pとの距離A+aを保ちながら上下のベルト21、11によって挟み込み搬送されるので、研削位置Tにおいて、下側ベルト11を外側ベルトガイド17Aに押し付けて位置決めしたとしても、ベルト基準点Q’から「A’+a(=A+a)」の距離にガラス端部P’が位置決めされることになり、固定側Kのガラス板端面1aは、予定の取り代tよりもaだけ多い取り代t’=t+aで加工される。反対に、移動側Lでは、ガラス板1の端面1aは、予定の取り代よりaだけ少ない取り代で加工されることになる。
【0048】
更に別の比較例として、頭出し位置Sでベルトの位置決めを行わず、研削位置Tでもベルトの位置決めを行なわない場合を考えてみる。
その場合は、図10に示すように、押し付けローラ118でガラス板1の固定側の端面1aをサイドベルト111に押し当てるものの、下側ベルト11の位置決めを行わないことから、ベルト基準点Qがベルトガイド17Aよりaだけ内側にずれているとすると、頭出し位置Sにおけるベルト基準点Qとガラス端部Pとの距離はA+aとなる。また、研削位置Tでのベルト基準点Q’は、所定の位置よりbだけ内側にずれている。研削位置Tにおいて、ベルト基準点Q’とガラス端部P’との距離をA’+aとすると、研削位置Tでのガラス端部P’と目標の加工点P1との差は|a−b|となる。従って、固定側Kのガラス板端面1aは、予定の取り代tよりも|a−b|だけ多い取り代t’=t+|a−b|で加工される。反対に、移動側Lでは、ガラス板1の端面1aは、予定の取り代より|a−b|だけ少ない取り代で加工されることになる。
【0049】
以上の説明のように、本実施形態では、ガラス板1の左右幅方向の片端のみを左右幅方向移動不能に拘束し、もう片端は、拘束せずに左右幅方向に移動可能に支持するようにしているので、左右に配置したベルト21、11の移動方向の平行度が厳密に保たれていない場合であっても、ガラス板1に捩れや引っ張りなどの負担がかかりにくくなり、無理な応力がガラス板1に発生するのを回避することができる。その結果、フラットパネルディスプレイのガラス基板として用いられるような薄いガラス板1や幅の広いガラス板1であっても、破損させることなく、スムーズな面取り加工が可能となる。
【0050】
また、上下のベルト21、11をそれぞれエンドレス型のベルトにしてガラス板1を支持・搬送するようにしているので、上下のベルト21、11でガラス板1を次々に連続的に搬送しながら面取り加工を行うことができる。また、左右に配置したベルト21、11によるガラス板1の支持のうち、片方を左右方向への移動を拘束した状態での支持とし、もう片方を左右方向への移動を自由にした状態での支持としているので、ガラス板1の全面を拘束する場合のような無理な応力の発生を回避することができる。なお、この場合の下側ベルト11の上面に対するガラス板1の面接触の強度の加減は、上からの力または下からの力の調節によって行うことができる。例えば、上からの力としては、下側ベルト11と共に移動する上側ベルト21による下向きの押圧力を挙げることができる。
【0051】
また、上下のベルト21、11でガラス板1を挟みながら搬送するので、薄いガラス板であっても、上下にバタつかずに搬送することができ、スムーズに且つ正確に面取り加工を行うことができる。また、上下のベルト21、11でガラス板1を挟み込むに当たり、固定側Kでは、ガラス板1と上下のベルト21、11との間に滑りが起こらない程度に強く挟み込み、移動側Lでは、上下のベルト21、11に挟み込まれたガラス板1が左右幅方向に移動可能となるように緩く挟み込むので、各々のベルト21、11で上下からガラス板1を挟み込むものの、ガラス板1を割合と自由な状態で保持しながら搬送することができ、薄いガラス板であっても、破損させるようなことがない。
【0052】
また、予め、頭出し位置Sの直前の固定側Kにおいて、ガラス板1と下側ベルト11の相対位置を決めておき、ダイヤモンドホイール2が存在するが故にガラス板1を直接位置決めすることができない研削位置Tでは、ガラス板1の代わりに、ガラス板1と予め相対位置が決められている下側ベルト11を位置決めすることによって、ガラス板1をダイヤモンドホイール2に対して位置決めするので、研削位置Tにおいて精度の高い位置決めが可能となり、正確な面取り加工を行うことができる。そのため、ダイヤモンドホイール2による削り残しが生じたり、ダイヤモンドホイール2に過大負荷がかかったりすることを無くすことができる。
【0053】
また、固定側Kの頭出し位置Sの直前および研削位置Tにおいて、位置決めの基準であるベルト位置決め部材(外側ベルトガイド17A)に下側ベルト11の幅方向外側側縁を押し付けることにより下側ベルト11の位置決めを行うので、簡単な構成で確実に下側ベルト11の幅方向の位置決めを行うことができ、常に一定の取り代でガラス板1の端面を研削することができる。
【0054】
また、移動側Lにおいてガラス板1をガラス板押え込みローラ301によって上下方向に拘束するようにしているので、薄いガラス板1であっても、上下方向のバタつきを良好に防止することができ、従って固定側Kと移動側Lの両方でガラス板1の端面1aを同時に研削加工する場合にも、研削加工位置が一定に定まり、所定の端面形状を得ることができて、カケやチッピング等の加工不良を無くすことができる。
【0055】
また、ガラス板1の搬送のためにベルト搬送機構10、20を左右一対配設し、一方のベルト搬送機構10、20側(固定側K)においてガラス板1を左右幅方向移動不能に拘束した状態で支持し、もう一方のベルト搬送機構10、20側(移動側L)においてガラス板1を左右幅方向移動可能に支持するようにしているので、左右のベルト搬送機構10、20のベルト11、21の移動方向の平行度が厳密に保たれていない場合であっても、搬送するガラス板1に捩れや引っ張りなどの負担がかかりにくくすることができ、無理な応力がガラス板1に発生するのを回避することができる。その結果、フラットパネルディスプレイのガラス基板として用いられるような薄いガラス板や幅の広いガラス板であっても、破損させることなく、スムーズな面取り加工が可能となる。
【0056】
また、ガラス板1の左右幅方向の中間部をコロ8で支持するので、ガラス板1の撓みを防止することができ、フラットパネルディスプレイのガラス基板として用いられるような薄いガラス板や幅の広いガラス板であっても、精度の高い面取り加工を行うことができる。
【0057】
また、上下のベルト21、11をそれぞれ背面側から定盤25、15で支持するので、上下のベルト21、11の無用の撓みを無くすことができ、ガラス板1を安定支持することができる。また、定盤25、15に設けたレール26、16上を上下のベルト21、11が滑り移動するので、上下のベルト21、11のスムーズな移動を確保することができる。なお、定盤25、15とレール26、16は別々に形成してもよいし、一体に形成してもよい。別々に形成する場合は、定盤25、15を剛性の高いステンレス等の金属製とし、レール26、16を高分子ポリエチレン等の滑り性の良い樹脂製とするのがよい。
【0058】
また、固定側Kの頭出し位置Sの直前および研削位置Tにおいて、外側ベルトガイド17Aに下側ベルト11の幅方向外側側縁を押し付けることにより下側ベルト11の位置決めを行うので、簡単な構成で確実に下側ベルト11の幅方向の位置決めを行うことができ、常に一定の取り代でガラス板1の端面1aを研削することができる。
【0059】
また、下側ベルト11の水平移動区間11Aの両側方にレール状のベルトガイド17A、17Bを設けているので、下側ベルト11を精度よく直線移動させることができる。また、ベルトガイド17と下側ベルト11との間に存在する遊びを、頭出し位置Sの直前及び研削位置Tにて、ベルトガイド17Aにベルトの幅方向外側側縁を押し付けることで無くすようにし、それにより、下側ベルト11の幅方向の位置決めを行うようにしているので、必要箇所での下側ベルト11の幅方向の位置精度を上げることができ、その位置精度を、ダイヤモンドホイール2に対するガラス板1の端面1aの位置決め精度に反映させることができる。
【0060】
また、研削位置Tにおいて下側ベルト11をベルトガイド17Aに押し付ける押し付けローラ202を複数個配列して設け、研削加工点に近づくにつれて徐々に押し付けローラ202の押し付け力が強く働くように設定してあるので、研削加工点に到達した時点で、より確実な下側ベルト11の位置決めを行うことができ、ガラス板1の端面1aのダイヤモンドホイール2に対する位置決め精度を上げることができる。
【0061】
また、ガラス板位置決め機構110を、ガラス板1の一方の端面1aが押し当てられるガラス板位置決め部材(サイドベルト111)と、ガラス板1の他方の端面1aを押圧する複数の押し付けローラ118とで構成しているので、下側ベルト11の上に載った状態のガラス板1の位置決めをスムーズに行うことができる。
【0062】
また、ガラス板位置決め部材111Aが、周回可能なサイドベルト111の直線移動区間で構成されているので、搬送されるガラス板1と一緒にサイドベルト111が移動することにより、正確に位置決めしながらガラス板1を搬送することができる。
【0063】
また、移動側Lにおいて、押さえ込みローラ301により上側ベルト21を介してガラス板1を下側ベルト11に向けて押さえ込むようにしているので、薄いガラス板であっても、上下方向のガラス板1のバタつきを良好に防止することができる。従って固定側Kと移動側Lの両方でガラス板1の端面1aを同時に研削加工する場合にも、研削加工位置を一定に定めることが容易にできるようになり、所定の端面形状を得ることができて、カケやチッピング等の加工不良を無くすことができる。
【実施例】
【0064】
《実施例1》
素板ガラスより切り出されたガラス板として、研削での取り代分(片側200μm)を乗せた上で、所定の寸法の620.4mm×750.4mm×0.5mm(t)に切断加工されたガラス板を用意する。固定側Kのガラス板1の挟み込み圧を予め以下の容量で調整しておく。
【0065】
(1)上下のベルト21、11の隙間に、圧力確認用のステンレス製プレート0.5mmtを挟み込む。
(2)ステンレス製プレートの切欠穴に、テンションゲージのアタッチメントを取り付ける。
(3)テンションゲージを引っ張り、プレートが動き始める荷重を測定する。
(4)この荷重が適正な範囲になるように上側ベルト搬送機構20の定盤25を上げ下げする。
【0066】
下側ベルト搬送機構10の下側ベルト11の上に載せ、上述の方法で位置決めしながら、下流側の頭出し位置Sへと搬送する。頭出し位置Sにおいて、ガラス板1を上下のベルト21、11で挟み込む前に、ガラス板1の位置決めと下側ベルト11の位置決めを行う。こうして、ガラス板1は、予め位置決めされた状態で下側ベルト11および上側ベルト21により挟み込み保持されながら、その下流側の研削位置Tへと搬送される。
【0067】
研削位置Tの固定側Kでは、上述のように、ベルトガイド17Aを利用した下側ベルト11の位置決めを行うことで、間接的にガラス板1の端面1aをダイヤモンドホイール2に対して位置決めし、移動側Lおいては、ガラス板押さえ込みローラ301により、上側ベルト21の上を幅方向に対して押さえ込み、それにより、ガラス板1の高さ方向に対しての位置決めを行う。下側ベルト搬送機構10の定盤15Lの下のフローティング構造(コロ式等)350は、幅方向に移動可能な機構であるから、ガラス板1を幅方向に固定することがなく、自由な移動を許容する。この状態で、固定側Kおよび移動側Lの一対の短辺を所定取り代(片側200μm)でダイヤモンドホイール2により研削加工する。
【0068】
こうして、短辺を研削加工したガラス板1を、次に90°回転させて、長辺に対して、前記短辺に対して行ったのと同様の加工を施す。次に短辺および長辺を研削加工したガラス板1を取り上げて、洗浄カセットに入れ、洗浄機へ投入する。洗浄したら、そのガラス板1をクリーンルーム内で取り上げ、プロジェクタランプ(1万ルックス)で4つの辺を目視検査する。
【0069】
4辺に対して目視検査した結果、1000枚中、擦り残し0枚、ヤケ0枚、チッピングまたはカケ0枚、面取幅不良0枚、と良好な結果が得られた。
【0070】
《実施例2》
同様のガラス板1を、研削での取り代分(片側150μm)を乗せた上で、620.3mm×750.3mm×0.5mm(t)に切断加工した。研削工具を所定の位置へ移動させ、実施例1と同様の工程を経て1000枚の製品を得た。4辺に対して目視検査した結果、1000枚中、擦り残し0枚、ヤケ0枚、チッピングまたはカケ0枚、面取幅不良0枚、と良好な結果が得られた。
【0071】
《実施例3》
同様のガラス板1を、研削での取り代分(片側125μm)を乗せた上で、620.25mm×750.25mm×0.5mm(t)に切断加工した。研削工具を所定の位置へ移動させ、実施例1と同様の工程を経て1000枚の製品を得た。4辺に対して目視検査した結果、1000枚中、擦り残し0枚、ヤケ0枚、チッピングまたはカケ0枚、面取幅不良0枚、と良好な結果が得られた。
【0072】
《実施例4》
同様のガラス板1を、研削での取り代分(片側100μm)を乗せた上で、620.2mm×750.2mm×0.5mm(t)に切断加工した。研削工具を所定の位置へ移動させ、実施例1と同様の工程を経て1000枚の製品を得た。4辺に対して目視検査した結果、1000枚中、擦り残し1枚、ヤケ0枚、チッピングまたはカケ0枚、面取幅不良0枚、と良好な結果が得られた。擦り残し不良の内訳は、極一部に擦り残しあっただけであった。この場合、ベルトの精度100μmの影響は本発明の実施形態によって解決されたと見なせるが、機械精度および動作誤差によって擦り残しが現れたと推定する。
【0073】
次に比較例について述べる。
《比較例1》
素板ガラスより切り出されたガラス板を、研削での取り代分(片側100μm)を乗せた上で、620.2mm×750.2mm×0.5mm(t)に切断加工した。下側ベルト搬送機構10上で、図8に示した場合のように、頭出し位置Sではガラス板1と下側ベルト11の位置決めを行うものの、研削位置Tでのベルトの位置決めを行わずに、短辺を所定取り代(片側100μm)で研削加工し、その後、短辺を研削加工したガラス板を90°回転させ、同様の工程を長辺に対して施した。短辺および長辺を研削加工したガラス板を取り上げて、洗浄カセットに入れ、洗浄機へ投入する。洗浄されたガラス板を、クリーンルーム内で取り上げ、プロジェクタランプ(1万ルックス)で目視検査した。
【0074】
4辺に対して目視検査した結果、1000枚中、擦り残し32枚、ヤケ0枚、チッピングまたはカケ1枚、面取幅不良1枚、という結果が得られた。これから分かるように、本発明を実施しない場合、下側ベルト11の寸法誤差が大きい部分の影響が、取り代が小さいために起こる擦り残しという形で、繰り返し発生したと推定される。
【0075】
《比較例2》
同様のガラス板を、研削での取り代分(片側150μm)を乗せた上で、620.3mm×750.3mm×0.5mm(t)に切断加工して、比較例1と同様の工程を経て1000枚の製品を得た。4辺に対して目視検査した結果、1000枚中、擦り残し0枚、ヤケ0枚、チッピングまたはカケ1枚、面取幅不良1枚、という結果が得られた。本発明を実施しない場合、片側150μmの取り代では、擦り残しおよびヤケは発生しなかった。しかし、移動側Lのガラス板1のバタツキから、所定の端面形状(面取り幅)が得られず、カケまたはチッピングが発生したと推定される。
【0076】
《比較例3》
同様のガラス板を、研削での取り代分(片側200μm)を乗せた上で、620.4mm×750.4mm×0.5mm(t)に切断加工して、比較例1と同様の工程を経て1000枚の製品を得た。4辺に対して目視検査した結果、1000枚中、擦り残し0枚、ヤケ1枚、チッピングまたはカケ1枚、面取幅不良1枚、という結果が得られた。本発明を実施しない場合、取り代設定を大きくしたので、ベルトの寸法誤差が大きい部分で挟まれるガラス板にヤケが発生した。また、移動側Lのガラス板のバタツキから、所定の端面形状(面取り幅)が得られず、カケまたはチッピングが発生したと推定される。
【0077】
以上の結果をまとめると、以下の表1、表2のようになる。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
なお、本発明の実施形態に係るガラス板端面の面取り装置Mは、非常にシンプルな構造ながら有効な手段であり、かつ安価で、短期間に改造可能なことから、特に既存装置での実施に有効である。
【0081】
また、上記実施形態では、ベルト搬送方式でガラスを搬送する場合を示したが、本発明は、他の搬送方式、例えば、定盤にガラス基板を吸着させて搬送する面取り方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
M ガラス板端面の面取り装置
K 固定側
L 移動側
Y 左右幅方向
X 搬送方向
S 頭出し位置(挟持搬送区間の始点)
T 研削位置
1 ガラス板
1a 端面
2 ダイヤモンドホイール(研削手段)
3 ガラス板搬送装置
4 挟持搬送区間
8 コロ
10 下側ベルト搬送機構
11 下側ベルト
11A 水平移動区間(支持部材)
20 上側ベルト搬送機構
21 上側ベルト
21A 水平移動区間(支持部材)
15(15L、15R)、25 定盤
16、26 レール
17 ベルトガイド
17A 外側のベルトガイド(ベルト位置決め部材)
17B 内側のベルトガイド
100 第1の位置決め機構
110 ガラス板位置決め機構
111 サイドベルト
111A ガラス板位置決め部材(直線移動区間)
112 ベルト周回機構(サイドベルト機構)
118 押し付けローラ
120 第1のベルト位置決め機構
122 押し付けローラ
200 第2の位置決め機構
201 第2のベルト位置決め機構
202 押し付けローラ
301 ガラス板押さえ込みローラ
350 コロ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に両板面を向けたガラス板を支持部材の上面に載せ、該支持部材の直線移動により前記ガラス板を水平方向に直線搬送しながら、その搬送経路の側方に配した研削手段により、前記ガラス板の左右幅方向の少なくとも一方の端面を面取りする方法において、
前記支持部材を左右一対配設し、前記ガラス板の左右幅方向の両端部近傍を、前記左右一対の支持部材の上面にそれぞれに載せて支持し、
その際、前記左右一対の支持部材のうちの一方の支持部材側を固定側として、前記ガラス板を左右幅方向に移動不能に固定的に支持すると共に、他方の支持部材側を移動側として、前記ガラス板を左右幅方向に移動可能に支持し、
その状態で、前記ガラス板を前記左右一対の支持部材により搬送しながら、少なくとも前記固定側に配された前記研削手段により面取り加工を行うことを特徴とするガラス板端面の面取り方法。
【請求項2】
前記左右一対の支持部材が、略鉛直面内で一定方向に同期して周回駆動される左右一対のエンドレス型のベルトの、外周を上に向けて略水平方向に直線移動する水平移動区間によって構成されており、
その水平移動区間を移動するベルトの上面に前記ガラス板を載せて搬送し、
その搬送の際に、前記固定側では、前記ベルトに対して前記ガラス板を滑りを阻止し得る強い力で面接触させることにより、前記ガラス板を左右幅方向に移動不能に支持し、前記移動側では、前記ベルトに対して前記ガラス板を滑りを許容し得る弱い力で面接触させるか、または、前記ベルト自体をガラス板の左右幅方向に移動可能に支持することにより、前記ガラス板を左右幅方向に移動可能に支持することを特徴とする請求項1に記載のガラス板端面の面取り方法。
【請求項3】
前記左右一対のエンドレス型のベルトを駆動するベルト搬送機構を下側ベルト搬送機構として配設すると共に、それら下側ベルト搬送機構の各上側に、該各下側ベルト搬送機構と同期してエンドレス型のベルトを略鉛直面内で周回させる上側ベルト搬送機構を配設し、
且つ、該上側ベルト搬送機構のベルトの、外周が下を向いて水平移動する水平移動区間と、前記支持部材として機能する前記下側ベルト搬送機構の水平移動区間とを上下に対向するよう配置することで、前記上側ベルト搬送機構及び下側ベルト搬送機構の組み合わせにより、前記水平移動区間の上側ベルトと下側ベルトの間にガラス板を挟み込んで搬送するガラス板搬送装置を構成し、
前記固定側では、前記上側ベルトを前記ガラス板に強い力で押し付けることにより、上下ベルト間に前記ガラス板を滑りを阻止する状態で強く挟み込み、
前記移動側では、前記上側ベルトを前記ガラス板に弱い力で押し付けることにより、上下ベルト間に前記ガラス板を滑りを許容する状態で弱く挟み込み、
その状態で、前記ガラス板を前記ガラス板搬送装置により搬送しながら、前記研削手段により面取りを行うことを特徴とする請求項2に記載のガラス板端面の面取り方法。
【請求項4】
前記上側ベルト搬送機構の前記水平移動区間を、前記下側ベルト搬送機構の前記水平移動区間の途中から搬送方向後段にかけて、該下側ベルト搬送機構の水平移動区間と重なるように配設することで、その重なる領域を、前記ガラス板を挟持しながら搬送する挟持搬送区間として設定すると共に、前記研削手段を前記挟持搬送区間の中間位置に配設し、
また、前記挟持搬送区間の始点を前記ガラス板の頭出し位置として設定すると共に、前記研削手段により研削が行われる位置を研削位置として設定し、
そして、前記頭出し位置の直前の前記固定側において、前記下側ベルトとガラス板の左右幅方向の相対位置を位置決めし、前記研削位置の前記固定側において、前記ガラス板と相対位置が決まった前記下側ベルトを左右幅方向に位置決めすることで、前記ガラス板の左右幅方向の端面を前記研削手段に対して位置決めすることを特徴とする請求項3に記載のガラス板端面の面取り方法。
【請求項5】
前記頭出し位置の直前における前記下側ベルトとガラス板との相対位置の位置決めは、
前記固定側において前記ガラス板の左右幅方向端縁をガラス板位置決め部材に押し付けて位置決めするガラス板位置決め工程と、該工程でガラス板を下側ベルトに対して位置決めした状態で前記固定側において前記下側ベルトの幅方向外側端縁をベルト位置決め部材に押し付けて位置決めするベルト位置決め工程とを、同時にまたは順番に実行することで行い、
前記研削位置における前記下側ベルトの位置決めは、
前記下側ベルトの幅方向外側端縁をベルト位置決め部材に押し付けることで行うことを特徴とする請求項4に記載のガラス板端面の面取り方法。
【請求項6】
前記移動側において、前記ガラス板を左右幅方向に移動可能に支持しながら上下方向に拘束することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス板端面の面取り方法。
【請求項7】
上下方向に両板面を向けた姿勢でガラス板を上面に載せる支持部材を備え、該支持部材を直線移動させることによって、該支持部材の上面に載せた前記ガラス板を水平方向に直線搬送するガラス板搬送装置と、
そのガラス板搬送装置によるガラス板の搬送経路の側方に配され、前記ガラス板の左右幅方向の端面を面取りする研削手段と、
を具備したガラス板端面の面取り装置において、
前記ガラス板搬送装置は、前記ガラス板の左右幅方向の両端部近傍をそれぞれの上面に載せる左右一対の前記支持部材を備えており、
前記左右一対の支持部材のうちの一方側は、固定側として、前記ガラス板を左右幅方向に移動不能に固定的に支持し、
他方側は、移動側として、前記ガラス板を左右幅方向に移動可能に支持するように構成され、
少なくとも前記固定側に前記研削手段が配されていることを特徴とするガラス板端面の面取り装置。
【請求項8】
前記左右一対の支持部材が、略鉛直面内で一定方向に同期して周回駆動される左右一対のエンドレス型のベルトの、外周を上に向けて水平移動する水平移動区間によって構成されており、
該左右一対のエンドレス型のベルトを駆動するベルト搬送機構が下側ベルト搬送機構として配設されると共に、それら下側ベルト搬送機構の各上側に、該各下側ベルト搬送機構と同期してエンドレス型のベルトを略鉛直面内で周回させる上側ベルト搬送機構が配設され、
そして、該上側ベルト搬送機構のベルトの外周が下を向いて水平移動する水平移動区間と、前記支持部材として機能する前記下側ベルト搬送機構のベルトの水平移動区間とが上下に対向するよう配置されることで、前記上側ベルト搬送機構及び下側ベルト搬送機構の組み合わせによって、前記水平移動区間の上側ベルトと下側ベルトの間にガラス板を挟み込んで搬送する前記ガラス板搬送装置が構成されており、
前記固定側では、前記上側ベルトを前記ガラス板に強い力で押し付けることにより、上下ベルト間に前記ガラス板を滑りを阻止する状態で強く挟み込み、それにより前記ガラス板を左右幅方向に移動不能に支持し、
前記移動側では、前記上側ベルトを前記ガラス板に弱い力で押し付けることにより、上下ベルト間に前記ガラス板を滑りを許容する状態で弱く挟み込み、それにより前記ガラス板を左右幅方向に移動可能に支持することを特徴とする請求項7に記載のガラス板端面の面取り装置。
【請求項9】
前記左右一対の下側ベルトの前記水平移動区間の間に、前記ガラス板の左右幅方向の中間部分を下側から支持するコロが、前記ガラス板の搬送方向に沿って多数配列されていることを特徴とする請求項8に記載のガラス板端面の面取り装置。
【請求項10】
前記下側ベルトの水平移動区間及び前記上側ベルトの水平移動区間における各ベルトが、定盤によって前記ガラス板を挟み込む面と反対側の背面から支持されており、前記定盤に設けたレール上をベルトが滑り移動するように構成されていることを特徴とする請求項8または9に記載のガラス板端面の面取り装置。
【請求項11】
前記上側ベルト搬送機構の前記水平移動区間が、前記下側ベルト搬送機構の前記水平移動区間の途中から搬送方向後段にかけて、該下側ベルト搬送機構の水平移動区間と重なるように配設されることで、その重なる領域が、前記ガラス板を挟持する挟持搬送区間として設定されると共に、前記研削手段が前記挟持搬送区間の中間位置に配設され、
また、前記挟持搬送区間の始点が前記ガラス板の頭出し位置として設定されると共に、前記研削手段により研削が行われる位置が研削位置として設定され、
そして、前記頭出し位置の直前の前記固定側に、前記下側ベルトとガラス板の左右幅方向の相対位置を位置決めする第1の位置決め機構が設けられ、前記研削位置の前記固定側に、前記下側ベルトを前記ガラス板の左右幅方向に位置決めすることで、前記ガラス板の左右幅方向の端面を前記研削手段に対して位置決めする第2の位置決め機構が設けられていることを特徴とする請求項10に記載のガラス板端面の面取り装置。
【請求項12】
前記第1の位置決め機構として、
前記ガラス板の左右幅方向の端面をガラス板位置決め部材に押し付けて位置決めするガラス板位置決め機構と、該ガラス板位置決め機構でガラス板を位置決めした状態で前記下側ベルトの幅方向外側側縁をベルト位置決め部材に押し付けて位置決めする第1のベルト位置決め機構とが設けられ、
前記第2の位置決め機構として、
前記下側ベルトの幅方向外側側縁をベルト位置決め部材に押し付けることで位置決めする第2のベルト位置決め機構が設けられていることを特徴とする請求項11に記載のガラス板端面の面取り装置。
【請求項13】
少なくとも前記固定側における前記下側ベルト搬送機構の前記ベルトの水平移動区間の幅方向の両側方に、前記ベルトの幅方向の側縁が摺接することで、該ベルトの幅方向の位置を規制しながらベルトの移動を案内する一対のレール状のベルトガイドが配設され、それら一対のベルトガイドのうち外側のベルトガイドの一部の区間が前記ベルト位置決め部材として使用され、
前記第1のベルト位置決め機構と第2のベルト位置決め機構は、前記外側ベルトガイドにより構成された前記ベルト位置決め部材と、その反対側に前記ベルトを挟んで配設され且つ前記ベルトの側縁に押圧接触することで従動回転するベルト押し付けローラとにより構成され、
該ベルト押し付けローラは、前記一対のベルトガイドのうち内側のベルトガイドに形成された切欠に配設され、該切欠を通してベルトの幅方向内側側縁を押圧することにより該ベルトの幅方向外側側縁を前記ベルト位置決め部材として機能する前記外側のベルトガイドに押圧接触させて、それにより前記ベルトの位置を外側のベルトガイドを基準にして左右方向に位置決めするものとして構成されていることを特徴とする請求項12に記載のガラス板端面の面取り装置。
【請求項14】
前記第2のベルト位置決め機構を構成する押し付けローラは、前記研削手段の正面に対応する位置に1個配設される他、少なくともその上流側の位置に並べて複数個配列されており、前記研削位置に近づくにつれて、前記各押し付けローラの前記ベルトに対する押し付け力が徐々に強くなるように設定されていることを特徴とする請求項13に記載のガラス板端面の面取り装置。
【請求項15】
前記ガラス板位置決め機構は、
前記ガラス板の搬送経路の両側方のうちの前記固定側に対応する側に配設され、且つ、搬送されるガラス板の左右幅方向の一方の端面が押し当てられることにより、ガラス板の左右幅方向の位置を決める前記ガラス板位置決め部材と、
前記ガラス板の搬送経路の両側方のうちの前記移動側に対応する側に配設され、且つ、搬送されるガラス板の左右幅方向の他方の端面に押圧接触して、前記ガラス板の一方の端面を前記ガラス板位置決め部材に押し付ける従動回転式の押し付けローラと、から構成されており、
該押し付けローラは、前記ガラス板の搬送方向に複数配列されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載のガラス板端面の面取り装置。
【請求項16】
前記ガラス板位置決め部材は、前記ガラス板の搬送経路の側方に配されて、略水平面内で周回可能にエンドレス型のベルトを支持するベルト周回機構の前記ベルトの直線移動区間によって構成されていることを特徴とする請求項15に記載のガラス板端面の面取り装置。
【請求項17】
前記研削位置における前記移動側に、前記ガラス板を、左右幅方向に移動可能としながら前記上側ベルトの上から下側ベルトに対して押さえ込むガラス板押さえ込みローラが設けられると共に、前記移動側の下側ベルト搬送機構の研削位置における前記定盤が、前記ベルトの幅方向に移動自在に支持されていることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載のガラス板端面の面取り装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−106295(P2012−106295A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255201(P2010−255201)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(598055910)AvanStrate株式会社 (81)
【Fターム(参考)】