説明

ガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットおよびその成形品

【課題】ペレットの含浸性、衝撃性、高温下における耐不凍液性に優れたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットおよびその成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリアミド66樹脂と高級脂肪族ポリアミド樹脂の組み合わせからなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂に、ガラス繊維(繊維長さが5mm未満)、ワラストナイト、カオリン、マイカ、及びタルクから選ばれる1種以上の無機フィラーを含むことを特徴とするガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットおよびその成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレットの含浸性、衝撃性、高温下における耐不凍液性に優れたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットおよびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は機械的特性および耐熱性に優れるという特徴を活かして様々な産業分野で利用されている。特に自動車エンジン周辺では機構部品として材料に高い信頼性が必要であるため、ガラス繊維を複合強化することで更に機械的特性を向上させたいわゆる強化ポリアミド樹脂が好適に用いられている。これらの部品でもラジエーター周りの不凍液や道路凍結防止材に接触する可能性の高い部品には長期の耐熱特性や耐薬品性に優れたポリアミド樹脂材料が望まれている。
例えば、ポリアミド66樹脂、高級脂肪族ポリアミド樹脂、ガラス繊維からなる組成物の両ポリアミド層に銅系安定剤を存在させることにより、引張強度、曲げ弾性率等の機械的特性に優れ、更に、耐熱エージング性、耐環境応力クラック性、耐不凍液性に優れた組成物および成形体を得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、上記方法においては、ガラス繊維としてチョップドストランドを用いて押出機でポリアミド66樹脂、高級脂肪族ポリアミド樹脂を混練するため、押出機での混練中に繊維が折損し、高度な機械的特性の要求を満足していない。
これに対し、配合される繊維状強化材の本来有する性能を充分に引き出すための方法として、強化繊維を長くすることが検討されている(例えば特許文献2、3参照。)。このようなガラス長繊維強化ポリアミド樹脂としては、例えば、ガラス繊維のロービングから樹脂ストランドを引抜きながら樹脂を含浸させるプルトルージョン法により得られ、上記短繊維強化ポリアミド樹脂と比較して、機械的強度に優れている。
【0004】
しかしながら、単純にポリアミド66樹脂を用いたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂では、耐不凍液性が不充分であり、また、高級脂肪族ポリアミド樹脂を用いたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂では、長期の耐熱特性が劣るため、高温環境下での強度低下が著しい。
両樹脂の欠点を補うためにポリアミド66樹脂と高級脂肪族ポリアミド樹脂を組み合わせて、単純にガラス長繊維強化ポリアミド樹脂の製造を試みても、ポリアミド66樹脂と高級脂肪族ポリアミド樹脂の相溶性の悪いため、含浸性の悪いペレットしか得られず、充分な機械的強度が得られないという問題があった。
【0005】
また、ポリアミド66樹脂(もしくは高級脂肪族ポリアミド樹脂)からなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットを製造して、高級脂肪族ポリアミド樹脂(もしくはポリアミド66樹脂)ペレットとブレンドし成形体を得る方法、ポリアミド66樹脂からなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットと高級脂肪族ポリアミド樹脂からなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットをブレンドし成形体を得る方法も考えられるが、いずれの方法においても、ポリアミド66樹脂と高級脂肪族ポリアミド樹脂の相溶性が不充分であるため、成形体の高温下における耐不凍液性に劣るという問題があった。
従って、従来技術では、ペレットの含浸性、衝撃性、高温下における耐不凍液性の要求を満足するガラス長繊維強化ポリアミド樹脂が得られていないのが現状であった。
【特許文献1】特開2003−277604号公報
【特許文献2】特開昭46−4545号公報
【特許文献3】特開2006−16463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ペレットの含浸性、衝撃性、高温下における耐不凍液性に優れたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットおよびその成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド66樹脂と高級脂肪族ポリアミド樹脂の組み合わせからなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂が、ガラス繊維(繊維長さが5mm未満)、ワラストナイト、カオリン、マイカ、及びタルクから選ばれる1種以上の無機フィラーを含むことで、ペレットの含浸性、衝撃性、高温下における耐不凍液性に優れたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットおよびその成形品を得ることが可能であることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)(A)ポリアミド66樹脂、
(B)ポリマー主鎖中のメチレン基数とアミド基数の比(CH2/NHCO)が6〜11である高級脂肪族ポリアミド樹脂、
(C)ガラス繊維(繊維長さが5mm未満)、ワラストナイト、カオリン、マイカ、及びタルクから選ばれる1種以上の無機フィラー、
(D)繊維長さがペレット長以上のガラス繊維、
(A)〜(D)成分からなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットで、(A)、(B)、(C)、及び、(D)成分の量をそれぞれA質量%,B質量%、C質量%、及び、D質量%とした時、A+B+C+D=100、10≦A≦50,10≦B≦50、0.5≦C≦3、20≦D≦75を満足することを特徴とするガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット。
【0009】
(2) (A)、(B)成分の質量比が、0.5≦B/A≦2であることを特徴とする(1)記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット。
(3) (A)、(B)、(C)成分の質量比が、0.015≦C/(A+B)≦0.05であることを特徴とする(1)または(2)に記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット。
(4)(C)成分が、ガラス繊維(繊維長さが5mm未満)であることを特徴とする(1)〜(3)いずれか1項に記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット。
(5) ガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの長さが、5〜20mmであることを特徴とする(1)〜(4)いずれか1項に記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット。
(6)(1)〜(5)記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットを用いてなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
(7)(1)〜(5)記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットを用いてなる自動車アンダーフード部品。
【0010】
(8)(A)、(B)及び(C)成分を溶融混練する工程と、
その溶融した樹脂をガラス繊維ロービングに含浸させ、ストランドを得る工程と、
該ストランドをペレタイズして、ペレットを得る工程により得られることを特徴とする(1)記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
(9) (A)、(B)及び(C)成分を溶融混練する工程と、
その溶融した樹脂をガラス繊維ロービングに含浸させる工程と、
該樹脂が含浸したガラス繊維を撚りを掛けながら引き取ってストランドを得る工程と、
該ストランドをペレタイズして、ペレットを得る工程
により得られることを特徴とする(1)記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリアミド66樹脂と高級脂肪族ポリアミド樹脂の組み合わせからなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂が、ガラス繊維(繊維長さが5mm未満)、ワラストナイト、カオリン、マイカ、及びタルクから選ばれる1種以上の無機フィラーを含有することで、ペレットの含浸性、衝撃性、高温下における耐不凍液性に優れたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットおよびその成形品が得られる。従って、厳しい信頼性の要求される自動車アンダーフード部品に好適に用いることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を具体的に説明する。
本発明で用いる(A)成分のポリアミド66樹脂としては、ポリアミド66以外のポリアミドが15質量%未満の範囲で他の形成モノマーとの共重合体もしくは他のポリアミドとのブレンド物として用いてもよい。このような共重合体およびブレンド物としては、例えば、ポリアミド66と、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6I、ポリアミド6Tおよび/またはポリアミドMDX6等との共重合、あるいはブレンド物をあげることができ、その中でもポリアミド66が好ましい。
【0013】
ポリアミド66樹脂の硫酸相対粘度(ηr)は、特に限定されるものではないが、靭性・機械的強度および成形性の観点から、1.50〜4.50が好ましく、より好ましくは1.75〜4.25、更に好ましくは2.00〜4.00である。ここでいうポリアミド樹脂の硫酸相対粘度(ηr)とは、オストワルド粘度計を用いて、25℃で測定し、次式で求められる。
(ηr)=(ポリアミド樹脂溶液の滴下秒数)/(硫酸溶液滴下秒数)
ここで用いるポリアミド樹脂溶液は、96%硫酸溶液中に0.01g/mlの濃度となるようにポリアミド樹脂を溶解させて得られる。
【0014】
本発明で用いる(B)成分の高級脂肪族ポリアミド樹脂としては、アミド結合を有する線状高分子である。このようなポリアミドとしては、例えば、ポリアミド7、ポリアミド9、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1212等またはこれらの混合物をあげることができ、その中でもポリアミド612が好ましい。
(B)成分である高級脂肪族ポリアミド樹脂の硫酸相対粘度(ηr)は、特に限定されるものではないが、靭性・機械的強度および成形性の観点から、1.50〜4.50が好ましく、より好ましくは1.75〜4.25、更に好ましくは2.00〜4.00である。
【0015】
本発明で用いる(C)成分の無機フィラーとしては、ガラス繊維(繊維長さが5mm未満)、ワラストナイト、カオリン、マイカ、及びタルクから1種以上が選ばれる。その中でも、特に成形加工時における長繊維の破損を防ぐという観点から、ガラス繊維(繊維長さが5mm未満)であることが好ましい。
(C)成分である無機フィラーは、無機フィラーとポリアミド樹脂界面との接着性を向上させるために、カップリング剤等で表面処理が施されたものが好適に用いられる。
【0016】
ガラス繊維(繊維長さが5mm未満)の具体例としては、通常ポリアミド樹脂に使用されるチョップドストランド、ミルドファイバー、及び断面の形状がまゆ形や長円形である異形断面形状を持つチョップドストランドを用いることができるが、その中でもチョップドストランドを用いることが好ましい。用いるチョップドとしては、平均ガラス繊維径が7〜17μm、より好ましくは10〜13μmである。ガラス繊維長さに関しては、ペレット中の繊維長さが5mm未満であれば、用いるチョップドストランドの繊維長さに制限はないが、特に繊維長さが1〜5mm未満のチョップドストランドを用いることが好ましく、1.5〜4.5mmがより好ましい。
【0017】
ワラストナイトは、化学名がメタケイ酸カルシウムであり、白色針状結晶の鉱物である。通常、SiOを40〜60質量%、CaOを40〜55質量%含有し、その他にFe、Al、MgO、NaO、KO等の成分を含有するものである。
ワラストナイトは、吸油量20〜50cc/100g、嵩比重が0.1〜1.0、繊維長が0.1〜1000μm、平均粒子径が0.1〜50μmのものを用いることができる。
【0018】
ここでいう、平均粒子径は、攪拌し、場合によっては更に超音波照射した純水中に透過率が85%になるように分散させたワラストナイトをレーザ回折/散乱式粒度分布装置などを用いて導出する方法において粒度分布累積の50%に相当する粒子径を示す。
尚、これらのワラストナイトは、天然に存在するものを粉砕、場合によっては分級したものでも、合成品でも使用できる。また、ハンター白色度が60以上で、ポリアミドへの耐候性を悪化させない意味で高純水へ10%スラリーとした際のスラリーのpH値が6〜8のものを好ましく用いることができる。
【0019】
タルクは、4SiO・3MgO・HOの化学式で表され、含水ケイ酸マグネシウムと呼ばれる。通常はタルク鉱石をさまざまな手法で粉砕し、0.1〜20μm程度の粒子径のものがプラスチック用充填材として使用される。好ましいタルクの粒子径は0.5〜5μmである。
カオリンは、化学組成がAlSi(OH)で、2八面体型1:1層状の積み重なり方が異なるカオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイトがあるがいずれも使用することができる。通常、ポリアミドに配合するカオリンは脱水した構造の焼成カオリンが成形体の揮発成分を減少させることや、成形体加工時の安定性向上の観点から好ましい。粒子径は、通常0.1〜3μm程度のものが好適に用いられる。また、白色度の高いものほど成形体の色調への影響が少なく好ましい。
【0020】
マイカは、産地や合成法により結晶構造や化学組成が異なるが特に限定されない。本発明に使用されるマイカの主成分はSiOであり、結晶構造は、SiO四面体が六角網目の板状に連なり、この板が2枚で一組となっているものである。また、その板間に八面体位をとるイオン(例えばAl3+、Mg2+)がイオン結合している。これをタブレットといい、これが層をなして積み重なっており、タブレット間にアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオン(例えばK、Li、Na)がイオン結合している。
マイカには白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母などがあり、いずれを使用してもかまわないが、より白色に近い白雲母、人造雲母が好適に用いられる。マイカはタブレット間のイオン結合が弱いことからこれを利用して薄片状に粉砕される。この厚みの幅に対する比率が高いほど成形体の剛性を向上できるため、好ましく使用できる。通常粒子径としては、1〜30μm程度のマイカが外観と剛性のバランスに優れるため好ましく用いることができる。
【0021】
本発明に用いる(D)繊維長さがペレット長以上のガラス繊維としては、ガラス繊維ロービングを用いることが好ましい。
ガラス繊維ロービングとしては、単繊維を集束したロービングであれば特に限定されるものではない。ガラス繊維とポリアミド樹脂界面との接着性を向上させるために、カップリング剤等で表面処理が施されていることが好ましい。
本発明で好適に用いられるガラス繊維ロービングは、ポリアミド樹脂用の集束剤で表面処理されているものである。ここでの集束剤は、サイジングを目的とした集束成分とポリアミド樹脂との接着性を目的とした表面処理成分を含んでいるものが好ましい。
【0022】
本発明で好適に用いられるガラス繊維の集束剤の構成成分は特に限定されるものではない。最も好ましい集束剤は、機械的特性向上の観点から無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体とアミノ基含有シランカップリング剤を主たる構成成分とするものである。
集束剤を構成する無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体として具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン等の不飽和単量体と無水マレイン酸との共重合体が挙げられる。その中でも、ブタジエン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。更にこれら単量体は2種以上併用してもよい。上記無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体は、平均分子量が2,000以上であることが好ましい。また、無水マレイン酸と不飽和単量体との割合は特に制限されない。更に無水マレイン酸共重合体に加えてアクリル酸系共重合体やウレタン系ポリマーを併用して用いてもよい。
【0023】
集束剤を構成するもう一つの成分であるシラン系カップリング剤としては、通常、ガラス繊維の表面処理に用いられるシラン系カップリング剤が使用できる。
具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;
γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシシラン系カップリング剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン系カップリング剤;
などが挙げられる。
【0024】
これらカップリング剤は2種以上併用して用いることもできる。これらの中で特にポリアミド樹脂との親和性からアミノシラン系カップリング剤が最も好ましく、その中でもγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシランが最も好ましい。上記無水マレイン酸共重合体とシラン系カップリング剤との使用割合は、前者100質量部に対して後者0.01〜20質量部の割合が好ましく、より好ましくは5〜20質量部、更に好ましくは10〜20質量部の割合である。
通常、無水マレイン酸共重合体とシラン系カップリング剤は水溶媒中で混和し、集束剤として用いられる。更に必要に応じて界面活性剤、滑剤、柔軟剤、帯電防止剤などを加えても良い。
【0025】
また、ガラス繊維の平均繊維直径は特に限定されるものではない。集束性、樹脂の含浸性の観点から5μm以上で、機械的強度向上の観点から20μm以下が好ましく、平均直径8〜17μmがより好ましい。ガラス繊維の集束本数も特に限定されるものではないが、生産性の観点からモノフィラメントを1,000〜10,000本、より好ましくは1,500〜8,000本、更に好ましくは2,000〜6,000本集束したガラス繊維ロービングが好ましい。
(D)成分の繊維長さは、ペレット長以上となる。製造時、ストランドに撚りを付与した際はペレット長より長くなり、ストランドに撚りを付与せず引き取った際は、ペレット長と実質上等しくなる。
【0026】
本発明のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットには本発明の目的を損なわない範囲で、種々の添加剤を配合することが可能である。
添加剤の具体例としては、銅化合物及びリン化合物等のポリアミド用熱安定剤、ヒンダードフェノール及びヒンダードアミン等の酸化劣化防止剤、マンガン化合物等の光安定剤、ステアリン酸金属塩に代表される高級脂肪酸金属塩等の滑剤、カーボンブラック、酸化チタン、アジン系染料及びフタロシアニン系染料等の着色剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、等が挙げられる。
これらの添加剤を加える方法に特に制限はないが、例えば、ポリアミド樹脂の重合時に添加する方法や、二軸押出機で溶融混練する際に溶融状態のポリアミド樹脂中に添加する方法が例示できる。
【0027】
本発明におけるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの長さは、機械的性質の観点から5mm以上、成形時の可塑化性の観点から20mm以下であることが好ましい。成形時におけるガラス繊維の分散性の観点から20mm以下であることが好ましい。より好ましくは6〜18mm、更に好ましくは7〜15mmの範囲である。
本発明におけるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法としては、単軸もしくは二軸押出機を用いて、(A)ポリアミド66樹脂、(B)高級脂肪族ポリアミド樹脂、(C)無機フィラーを溶融混練し、その後、その溶融した樹脂をガラス繊維ロービングに含浸させ、ストランドを得て、そのストランドをペレタイズすることが例示できる。
(A)ポリアミド66樹脂と(B)高級脂肪族ポリアミド樹脂に(C)無機フィラーを配合することで、(A)ポリアミド66樹脂と(B)高級脂肪族ポリアミド樹脂の相溶性が改善されるため、その溶融樹脂をガラス繊維ロービングに含浸させる際に、その溶融樹脂のガラス繊維ロービングへの含浸性が格段に改善され、高品位なペレットが得られる。
【0028】
具体的には、(A)ポリアミド66樹脂、(B)高級脂肪族ポリアミド樹脂は二軸押出機の最も上流側に位置するフィード口(トップフィード口)より供給する。(C)無機フィラーの供給位置には制限はなく、樹脂と同じく最も上流側に位置するフィード口より供給してもいいし、樹脂が溶融状態に到達した後、サイドフィードしてもいい。
二軸押出機の最も下流側には、その溶融した樹脂をガラス繊維ロービングに含浸させるための含浸ダイを設ける。含浸ダイにガラス繊維ロービングを通過させ、含浸ダイの出口より引き抜かれることで、樹脂を含浸したガラス繊維ロービングのストランドは、水浴へ浸漬させた後、ペレタイザーによって引き取られ、ペレット化される。含浸ダイの中にはガラス繊維を開繊し、含浸の促進を目的とする数個のローラーが設置されることが好ましい。
【0029】
ガラス繊維ロービングに樹脂をさらに含浸させる方法としては、ガラス繊維ロービングのストランドに撚りを付与することがより好ましく例示される。ストランドに撚りを付与することで、樹脂の含浸性が高まるだけでなく、ガラス繊維がストランド断面の中心部に集まり、ガラス繊維ロービングの繊維間に存在する気泡をストランド断面の外部に追い出す効果もある。
撚りを付与する方法としては、含浸ダイの出口をモーターでストランドの軸周りに回転させる方法、ストランドを引き取る際、ストランドの引き取り方向を軸にストランドを回転させる“撚り機”を用いる方法が例示できる。
ここで記載する“撚り機”とは、具体的には、互いのローラー軸の角度をずらして対向させて配置した回転しているローラーを持つもので、この“撚り機”のローラーに樹脂が含浸したガラス繊維ロービングを通過させることで、撚りを付与することができる。
また、この“撚り機”は、水浴とペレタイザーの間に配置することが好ましい。
【0030】
本発明に用いる各成分の配合量はA+B+C+D=100とした時に、以下となる。
(A)ポリアミド66樹脂の配合量は10〜50質量%であり、好ましくは、15〜45質量%、更に好ましくは20〜40質量%である。
(B)高級脂肪族ポリアミド樹脂の配合量は10〜50質量%であり、好ましくは、15〜45質量%、更に好ましくは20〜40質量%である。
更に、(A)ポリアミド66樹脂と(B)高級脂肪族ポリアミド樹脂の質量比は、高温下における耐不凍液性の観点から、B/Aの範囲が0.5〜2であることが好ましく、より好ましくは0.6〜1.8、更に好ましくは0.7〜1.5である。
【0031】
(C)無機フィラーの配合量は、製造時の(A)ポリアミド66樹脂と(B)高級脂肪族ポリアミド樹脂の相溶性が改善し、その樹脂のガラス繊維ロービングへの含浸性の観点から、0.5質量%以上、成形加工時における長繊維の破損を防ぐという観点から、3質量%以下であり、より好ましくは0.7〜2.8質量%である。更に好ましくは1〜2.5質量%である。
更に、(A)ポリアミド66樹脂、(B)高級脂肪族ポリアミド樹脂、(C)無機フィラーの質量比は、0.015≦C/(A+B)≦0.05が好ましく、より好ましくは0.017≦C/(A+B)≦0.045、更に好ましくは、0.02≦C/(A+B)≦0.04である。
(D)繊維長さがペレット長以上のガラス繊維の配合量は、機械的物性の観点から、20〜75質量%であり、好ましくは25〜70質量%、更に好ましくは30〜65質量%の範囲である。
【0032】
本発明のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットは、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形等公知の成形加工に用いることができる。射出成形や押出成形に通常用いられるスクリュー式成形機では、強化繊維の破損を押さえるため、ノズルやゲート形状を大きくし、繊維分散性を考慮した成形機スクリューを使用することが高い機械的強度を得ることができ好ましい。
本発明のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットは、衝撃性、高温下における耐不凍液性に優れているため、厳しい信頼性の要求される自動車アンダーフード部品、例えば、フロントエンドモジュール、エンジンカバー、ラジエータータンク、カーヒータータンク、ウォーターバルブ、ウォーターポンプ、ラジエーターパイプ、インテークマニホールド、タイミングチェーンカバー、オイルパン等に好適に用いられる。
【実施例】
【0033】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
[原材料]
(A)ポリアミド66樹脂
硫酸相対粘度 2.60
水分率 0.09質量%
融点 260℃
(B)ポリアミド612樹脂
硫酸相対粘度 2.20
水分率 0.09質量%
融点 211℃
(C−1)ガラス繊維 チョップドストランド
日本電気硝子(株)製 T275H
平均ガラス繊維径 10μm
繊維長さ 3mm
(C−2)ワラストナイト
ナイコ社製 Nyglos8
平均粒子径 8μm
繊維長さ 136μm
(D)ガラス繊維ロービング
日本電気硝子(株)製 ER2400T―448N
平均ガラス繊維径 17μm、2400TEX
【0034】
[硫酸相対粘度の測定]
96%硫酸100mlにポリアミド樹脂1gを溶解させたポリアミド溶液をオスワルド粘度計で、25℃の環境下で測定し、次式より硫酸相対粘度を求めた。
ポリアミド樹脂の硫酸相対粘度(ηr)
=(ポリアミド溶液の滴下秒数)/(硫酸溶液滴下秒数)
【0035】
[ポリアミド樹脂水分率の測定]
溶融前のポリアミド樹脂ペレットの水分率を水分計(CA−06型) (カールフィッシャー法、三菱化学(株)製)を用いてJIS K 7251に準じて測定した。
【0036】
[含浸性の測定]
得られたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm)の一端(ストランドの切断面)を呈色指示薬であるメチルレッドのプロパノール溶液(メチルレッドのプロパノール飽和溶液50mlに塩酸1mlでpHを調整してメチルレッドの発色性を向上させたもの)に30分浸漬した後、ペレットの長さ方向における呈色指示薬の浸透状況を観察した。任意に選んだ10個のペレットについて観察した。ペレットの長さ方向に2mm以上の呈色指示薬の浸透が見られるペレットの個数を数え、下記の基準で含浸性の優劣を判定した。ガラス繊維ロービングに樹脂が十分含浸していれば、メチルレッドのプロパノール溶液はペレットに浸透しない。すなわち2mm以上の浸透が見られるペレットの個数が少ないほど、ガラス繊維ロービングへの樹脂の含浸が良好である。
ペレットの個数 判定
0個 ○
1〜5個 △
6〜10個 ×
【0037】
[溶融粘度の測定]
JIS K 7199に準じて、溶融粘度測定装置(商品名:ツインキャピラリーレオメーターRH7−2型、ROSAND社製)を用いて、含浸時のポリアミド樹脂の溶融温度、煎断速度1000sec-1における溶融煎断粘度を測定した。
なお、ここでいう、含浸時のポリアミド樹脂とは、二軸押出機で溶融混練し、長繊維強化樹脂製造装置の含浸ダイに供給した溶融樹脂のことを指す。また、含浸時のポリアミド樹脂の溶融温度とは、押出機のシリンダーの設定温度と定義する。
溶融粘度を測定する際は、キャピラリーレオメーターのバレル温度を溶融温度とし、含浸ダイに供給した溶融樹脂と同組成のポリアミド樹脂ペレット、無機フィラーを含む場合は無機フィラーを配合したポリアミド樹脂ペレットを用いて測定した。
その際、オリフィスは、ダイ径1.0mm、ダイ流入角180度のもので、オリフィス長とオリフィス径の比L/Dが16及び0.25の2つのオリフィスを使用し、管長補正を行ったものを溶融粘度とした。
【0038】
[シャルピー衝撃強度の測定]
射出成形機(商品名:FN−3000、スクリュー径40mm、日精樹脂工業(株)製)を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃、射出圧力65MPa、射出時間5sec、冷却時間25sec、スクリュー回転数200rpmの成形条件にて、平板プレート(15cm×15cm、厚さ4mm)を得た。得られた平板から長辺が成形時の樹脂の流動方向で、且つ、平板の中央部が試験片の中央部と一致するように試験片(80mm×10mm、厚さ4mm)1枚を切り出した。得られた試験片にノッチを付けて、シャルピー衝撃強度をISO 180に準じて測定した。
【0039】
[耐不凍液性の評価]
前記シャルピー衝撃強度の測定に用いた平板プレートを用いた。得られた平板から長辺が成形時の樹脂の流動方向に対して直角方向で、且つ、平板の中央部が試験片の中央部と一致するように試験片(80mm×10mm、厚さ4mm)1枚を切り出した。得られた試験片を不凍液(商品名:キャッスルロングライフクーラント赤V9230−0104、株式会社タクティー製)と水を50:50(重量比)に配合し、130℃に昇温させたオートクレーブ中にて400時間試験片を浸漬させた後、ISO 178に準じ、曲げ強さを測定した。
【0040】
[ガラス繊維濃度、無機フィラー濃度の測定]
・ペレット中の充填材が、ガラス繊維のみである場合
ISO 1172、方法Aに準じて、得られたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットのガラス繊維濃度を測定した。具体的には、ペレット2gを磁器るつぼに入れ、電気マッフル炉(FP−31型、ヤマト科学製、設定温度600℃)を用いて、ポリアミド樹脂を燃焼させ、燃焼前後の質量変化からガラス繊維濃度を計算した。また、燃焼後のガラス繊維をスライドガラス上に移し、ピンセットでペレット長以上の繊維を全て取り分け、その質量を測定することで、繊維長さがペレット長以上と繊維長さが5mm未満のガラス繊維濃度をそれぞれ計算した。
・ペレット中の充填材が、ガラス繊維とそれ以外の無機フィラーである場合
ISO 1172、方法Aに準じて、得られたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットのガラス繊維濃度及び無機フィラー濃度を測定した。具体的には、ペレット2gを磁器るつぼに入れ、電気マッフル炉(FP−31型、ヤマト科学製、設定温度600℃)を用いて、ポリアミド樹脂を燃焼させ、燃焼前後の質量変化から無機充填材濃度を計算した。
【0041】
ガラス繊維とそれ以外の無機フィラーの分離方法は、燃焼後の全ての灰分をスライドガラス上に移し、ピンセットでペレット長以上のガラス繊維を全て取り分け、その質量を測定することで、繊維長さがペレット長以上のガラス繊維濃度と無機フィラー濃度をそれぞれ計算した。
【0042】
[重量平均ガラス繊維長さの測定]
ペレット2gを磁器るつぼに入れ、電気マッフル炉(FP−31型、ヤマト科学製、設定温度600℃)を用いて、ポリアミド樹脂を燃焼させた後、燃焼後のガラス繊維をスライドガラス上に移し、光学顕微鏡下で観察し、画像解析装置を用いて、任意に選んだガラス繊維400本の長さを測定した値から下記式により求められる。
重量平均ガラス繊維長=ΣWi/ΣLi
(ガラス繊維一本一本の長さをそれぞれL1、L2・・・L400、ガラス繊維一本一本の重量をそれぞれW1、W2、・・・W400とする。)
【0043】
[実施例1]
二軸押出機(商品名:ZSK25、Coperion社製)を用い、トップフィード口より(A)ポリアミド66樹脂(供給量5.75kg/h)、(B)ポリアミド612樹脂(供給量5.75kg/h)、下流のサイドフィード口より(C−1)ガラス繊維 チョップドストランド(供給量0.46kg/h)を供給し、シリンダー設定温度310℃、スクリュー回転数300rpmで、溶融混練し、長繊維強化樹脂製造装置(KOSLFP−212、(株)神戸製鋼所製)の樹脂含浸用ローラーを供えた含浸ダイに供給した。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、21(Pa・s)であった。
一方、(D)ガラス繊維ロービングは、ロービング台より2本のガラス繊維束を、溶融ポリアミド樹脂が充満する含浸ダイクロスヘッドに導入した。含浸ダイ内で樹脂を含浸したガラス繊維ロービング束をノズル(ノズル径2.9mm)より連続的に引き抜き1本のストランド状にし、水冷バス中で冷却固化した後、ペレタイザーでペレットとした。
【0044】
得られたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.9mm)はガラス繊維濃度が50質量%(5mm未満のガラス繊維が2質量%、ペレット長(10mm)以上のガラス繊維(繊維長さ10.5mm)が48質量%)であった。
また、このストランドを引き取る際、撚りのピッチが28mmとなるようにストランドの引き取り方向を軸にストランドを回転させ撚りを付与した。
なお、この時のストランドの引き取り速度は20m/min、ガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの生産量は、23kg/hであった。
結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
(C−1)ガラス繊維 チョップドストランドの供給量を0.115kg/hとした以外は、実施例1と同様の方法でガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.9mm)を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、19(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は50質量%(5mm未満のガラス繊維が0.5質量%、ペレット長(10mm)以上のガラス繊維が49.5質量%)であった。
結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
(C−1)ガラス繊維 チョップドストランドの供給量を0.69kg/hとした以外は、実施例1と同様の方法でガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.9mm)を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、24(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は50質量%(5mm未満のガラス繊維が3質量%、ペレット長(10mm)以上のガラス繊維が47質量%)であった。
結果を表1に示す。
【0047】
[実施例4]
ストランドを引き取る際に、撚りを与えなかった以外は、実施例1と同様の方法でガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.9mm)を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、21(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は50質量%(5mm未満のガラス繊維が2質量%、ペレット長(10mm)以上のガラス繊維(繊維長さ10mm)が48質量%)であった。
結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
(C−1)ガラス繊維 チョップドストランドを用いなかった以外は、実施例1と同様の方法でガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.9mm)を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、18(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は50質量%(全てペレット長(10mm)以上のガラス繊維)であった。
結果を表1に示す。実施例と比較して、ペレットの含浸性、衝撃強度、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0049】
[比較例2]
(C−1)ガラス繊維 チョップドストランドの供給量を0.046kg/hとした以外は、実施例1と同様の方法でガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.9mm)を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、19(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は50質量%(5mm未満のガラス繊維が0.2質量%、ペレット長(10mm)以上のガラス繊維が49.8質量%)であった。
結果を表1に示す。実施例と比較して、ペレットの含浸性、衝撃強度、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0050】
[比較例3]
(C−1)ガラス繊維 チョップドストランドの供給量を1.15kg/h、ノズル径を3.0mmとした以外は、実施例1と同様の方法でガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm、直径3.0mm)を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、29(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は50質量%(5mm未満のガラス繊維が5質量%、ペレット長(10mm)以上のガラス繊維が45質量%)であった。
結果を表1に示す。実施例と比較して、衝撃強度、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0051】
[実施例5]
(C−1)ガラス繊維 チョップドストランドの替わりに(C−2)ワラストナイトを用いた以外は、実施例1と同様の方法でガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.9mm)を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、20(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は48質量%(全てペレット長(10mm)以上のガラス繊維)、ワラストナイトの濃度は2質量%であった。
結果を表2に示す。
【0052】
[比較例4]
(C−2)ワラストナイトの供給量を0.046kg/hとした以外は、実施例5と同様の方法でガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.9mm)を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、18(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は49.8質量%(全てペレット長(10mm)以上のガラス繊維)、ワラストナイトの濃度は0.2質量%であった。
結果を表2に示す。実施例と比較して、ペレットの含浸性、衝撃強度、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0053】
[比較例5]
(C−2)ワラストナイトの供給量を1.15kg/h、ノズル径を3.0mmとした以外は、実施例5と同様の方法でガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ10mm、直径3.0mm)を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、24(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は45質量%(全てペレット長(10mm)以上のガラス繊維)、ワラストナイトの濃度は5質量%であった。
結果を表2に示す。実施例と比較して、衝撃強度、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0054】
[比較例6]
二軸押出機(商品名:ZSK25、Coperion社製)を用い、トップフィード口より(A)ポリアミド66樹脂(供給量5.75kg/h)、(B)ポリアミド612樹脂(供給量5.75kg/h)、下流のサイドフィード口より(C−1)ガラス繊維 チョップドストランド(供給量11.5kg/h)を供給し、シリンダー設定温度310℃、スクリュー回転数300rpmで、溶融混練し、紡口より押し出されたストランドを水冷バス中で冷却固化した後、ペレタイザーでペレットとした。
得られたガラス短繊維強化ポリアミド樹脂ペレット(長さ3mm、直径2.9mm)はガラス繊維濃度が50質量%で、ペレット長以上の繊維長さをもつガラス繊維は存在しなかった。(最も長いガラス繊維長さが0.72mm、重量平均ガラス繊維長さが0.25mm。)
結果を表3に示す。実施例と比較して、衝撃強度、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0055】
[比較例7]
二軸押出機には、トップフィード口に(A)ポリアミド66樹脂(供給量11.5kg/h)のみを供給した以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス長繊維強化ポリアミド66樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.9mm)を得た。この時の含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、27(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は50質量%(全てペレット長(10mm)以上のガラス繊維)であった。
結果を表3に示す。実施例と比較して、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0056】
[比較例8]
二軸押出機のトップフィード口に(B)ポリアミド612樹脂(供給量11.5kg/h)のみを供給し、シリンダー設定温度280℃とした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス長繊維強化ポリアミド612樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.9mm)を得た。
この時の含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、38(Pa・s)であった。この際のガラス繊維濃度は50質量%(全てペレット長(10mm)以上のガラス繊維)であった。
結果を表3に示す。実施例と比較して、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0057】
[比較例9]
比較例7で得られたガラス長繊維強化ポリアミド66樹脂ペレットと比較例8で得られたガラス長繊維強化ポリアミド612樹脂ペレットを1:1の質量比で、コーン型ブレンダー((株)プラテック製、SKD25S型)を用いて、10分間ペレットブレンドを実施した。
そのブレンドしたペレットを評価した結果を表3に示す。実施例と比較して、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0058】
[比較例10]
二軸押出機には、トップフィード口に(A)ポリアミド66樹脂(供給量5.75kg/h)のみを供給し、ノズル径を2.3mmとした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス長繊維強化ポリアミド66樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.3mm、ガラス繊維濃度が66質量%(全てペレット長(10mm)以上のガラス繊維))を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、27(Pa・s)であった。
得られたガラス長繊維強化ポリアミド66樹脂ペレットと(B)ポリアミド612樹脂ペレットをブレンド後のガラス繊維濃度が50質量%になるように、3:1の質量比でコーン型ブレンダーを用いて、10分間ペレットブレンドを実施した。
そのブレンドしたペレットを評価した結果を表3に示す。実施例と比較して、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0059】
[比較例11]
二軸押出機には、トップフィード口に(A)ポリアミド612樹脂(供給量5.75kg/h)のみを供給し、シリンダー設定温度280℃、ノズル径を2.3mmとした以外は、実施例1と同様の方法で、ガラス長繊維強化ポリアミド612樹脂ペレット(長さ10mm、直径2.3mm、ガラス繊維濃度が66質量%(全てペレット長(10mm)以上のガラス繊維))を得た。含浸時のポリアミド樹脂の溶融粘度は、38(Pa・s)であった。
得られたガラス長繊維強化ポリアミド612樹脂ペレットと(A)ポリアミド66樹脂ペレットをブレンド後のガラス繊維濃度が50質量%になるように、3:1の質量比でコーン型ブレンダーを用いて、10分間ペレットブレンドを実施した。
そのブレンドしたペレットを評価した結果を表3に示す。実施例と比較して、高温下における耐不凍液性に劣る。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により、衝撃性、高温下における耐不凍液性に優れたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットおよびその成形品を提供できるので、厳しい信頼性の要求される自動車アンダーフード部品等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド66樹脂、
(B)ポリマー主鎖中のメチレン基数とアミド基数の比(CH2/NHCO)が6〜11である高級脂肪族ポリアミド樹脂、
(C)ガラス繊維(繊維長さが5mm未満)、ワラストナイト、カオリン、マイカ、及びタルクから選ばれる1種以上の無機フィラー、
(D)繊維長さがペレット長以上のガラス繊維、
(A)〜(D)成分からなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットで、(A)、(B)、(C)、及び、(D)成分の量をそれぞれA質量%,B質量%、C質量%、及び、D質量%とした時、A+B+C+D=100、10≦A≦50,10≦B≦50、0.5≦C≦3、20≦D≦75を満足することを特徴とするガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット。
【請求項2】
(A)、(B)成分の質量比が、0.5≦B/A≦2であることを特徴とする請求項1記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット。
【請求項3】
(A)、(B)、(C)成分の質量比が、0.015≦C/(A+B)≦0.05であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット。
【請求項4】
(C)成分が、ガラス繊維(繊維長さが5mm未満)であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット。
【請求項5】
ガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの長さが、5〜20mmであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレット。
【請求項6】
請求項1〜5記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットを用いてなるガラス長繊維強化ポリアミド樹脂成形品。
【請求項7】
請求項1〜5記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットを用いてなる自動車アンダーフード部品。
【請求項8】
(A)、(B)及び(C)成分を溶融混練する工程と、
その溶融した樹脂をガラス繊維ロービングに含浸させ、ストランドを得る工程と、
該ストランドをペレタイズして、ペレットを得る工程により得られることを特徴とする請求項1記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項9】
(A)、(B)及び(C)成分を溶融混練する工程と、
その溶融した樹脂をガラス繊維ロービングに含浸させる工程と、
該樹脂が含浸したガラス繊維を撚りを掛けながら引き取ってストランドを得る工程と、
該ストランドをペレタイズして、ペレットを得る工程
により得られることを特徴とする請求項1記載のガラス長繊維強化ポリアミド樹脂ペレットの製造方法。

【公開番号】特開2008−260229(P2008−260229A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105333(P2007−105333)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】