説明

キセノンの回収システムおよび回収装置

【課題】 低濃度のXeが含まれるプラズマエッチング等の半導体製造プロセス排ガス中より、水分、COおよびFC等を機能的に除去して高純度なXeを回収することが可能な、簡便で捕集効率の高い回収方法および回収装置を提供すること。
【解決手段】 キセノンおよびフルオロカーボンを含む試料について、少なくとも、細孔径4Å以下の合成ゼオライトおよび酸化アルミニウムを直列に配して充填された第1吸着手段(A1)、シリコーン製あるいはポリエチレン製の中空糸ガス分離膜モジュール4からなるガス分離手段(A2)、活性炭、細孔径5Å以上の合成ゼオライト、細孔径5Å以上のモレキュラーシービングカーボン、あるいはこれらの組合せのいずれかが充填された第2吸着手段(A3)、反応剤としてカルシウム化合物が充填された反応手段(A4)、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キセノン(以下「Xe」という。)の回収システムおよび回収装置に関し、特に、半導体製造工場で使用されるプラズマエッチング等の製造装置におけるアシストガスとして使用されるキセノンの回収システムおよび回収装置などに有用である。ここで、「回収」とは、吸着や膜分離などの手段を用い、試料中の特定成分を再利用可能な状態で選択的に取り出すことをいう。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチングプロセス等半導体製造プロセスにおいては、Xeがプロセスのアシストガスとして使用されている。Xeはプロセスにおける反応等で消費されず、排ガスとして水分、二酸化炭素(CO)およびCHF、CF、C、C等の炭化水素弗化物(FC)などの反応生成物と一緒に排出される。Xeは非常に高価であり、また希少元素でもあるために、排ガス中のXeの回収リサイクルが望まれている。
【0003】
Xeの回収に際しては、半導体プロセスに影響を与えない部位より排ガスを採取することが望ましい。具体的には、半導体製造装置の下流に位置する反応性ガスの無害化装置(燃焼または触媒反応や吸着等により一酸化炭素(CO)、フッ素(F)およびフッ化水素(HF)等を無害化する)の下流より排ガスを採取すれば、半導体製造プロセスへの影響を無くすことができる。しかし、その反面、この部位から回収する排気ガス中にはXe分は約0.01〜10vol.%(以下「%」と略す。)しか含まれておらず、また他の不純物として水分、COおよびFC等の反応生成物も同等程度含まれていると言う技術的に克服すべき課題があった。すなわち、プロセスに悪影響を与えない部位からXeを回収、濃縮するためには、低濃度のXeを効率よく回収し濃縮するだけでなく、その回収工程・精製過程において水分、COおよびFC等の不純物を効率よく除去することが必要である。
【0004】
こうした半導体製造プロセスからXe等の希ガスを回収リサイクルする技術は、従前よりいくつか報告されている。具体的には、以下のような提案を挙げることができる。
(1)排ガスから高付加価値ガス(希ガス)を圧力変動吸着分離法(PSA)と速度型圧力変動吸着分離法とを組み合わせて、高付加価値ガス(希ガス)を分離精製する方法(例えば特許文献1参照)。
(2)希ガスを使用する設備から排出される排ガス中の希ガスを回収するにあたり、少なくとも2つ以上のガス分離工程によって希ガスを回収して、それを再生した希ガスを、希ガス使用設備の希ガス供給ラインに戻して使用する希ガス回収装置(例えば特許文献2参照)。
(3)希ガスを使用する設備から排出される排ガスより、ハロゲン化炭化水素を低温吸着により分離することを特徴とする精製方法(例えば特許文献3参照)。
(4)クリプトン(Kr)、Xe等の高付加価値ガス(希ガス)を含む排気ガスから、通常分離が困難なヘリウム(He)、水素(H)等の微量ガス成分をPSAで除去する方法を導入することによって、高付加価値ガス(希ガス)を分離精製して循環再利用する装置(例えば特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−126435号公報
【特許文献2】特開2002−097007号公報
【特許文献3】特開2003−062419号公報
【特許文献4】特開2005−246137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記回収方法や回収装置の適用には、以下のような課題が生じることがあった。上記(1)〜(5)の提案については、
(1)の方法は、排ガス中の希ガス濃度が30%程度であることを必要とし、かつ、他の不純物として窒素のみの排ガスを前提としたものである。従って、希ガス濃度が0.01〜10%という低濃度で、かつFCが共存する排ガスから高純度の希ガスを効率的に精製することはできない。また、不純物としてFCが存在する場合にも対応できない。
(2)の方法は、排ガス中に水分、COおよびFC等の不純物が含まれている場合に、これらのガスが2つ以上のガス分離工程およびその下流の吸着分離器においても十分除去できず、これらの不純物が希ガス中に残存することとなる。例えば、再生された希ガスについて「除去できずに微量に残存している希ガス中の酸素、窒素、水分、一酸化炭素、二酸化炭素、フッ化炭素、水素、各種成膜用ガス等の不純物について・・不純物濃度が例えば100ppm以下となっていること、望ましくは10ppm以下となっている」(特許文献2の段落〔0048〕)とあるように、この方法では、純度99.99%以上の高純度希ガスを供給できない。
(3)の方法は、ハロゲン化炭化水素の除去のために冷凍機の設置が必要不可欠であり、断熱性能等を考慮すると必ずしもエネルギー的に有利とはいえない。従って、エネルギー消費のより少ない方法が求められる本技術分野において適用することは難しい。また、吸着剤による低温吸着法を採用する場合の欠点として、ハロゲン化炭素水素と同時にXeも吸着され、吸着剤の再生工程でXeも系外に同時に放出されるために、Xe捕集効率が悪化する。
(4)の方法は、排ガス中に水分、COおよびFC等吸着されやすい不純物が含まれている場合には、1段の吸着筒にこれら不要なガスも希ガスと一緒に吸着されるため、このように吸着されたガスを圧力スイングによって脱離させたときに、これら不要ガスが不純物として希ガス中に残存することとなる。従って、この方法では、純度99.99%の高純度希ガスを供給できない。
【0007】
以上のように、これまでに報告されている方法では、排ガス中に含まれるXeの濃度が高いもの(約30〜50%)のみに対応しており、低濃度(0.01〜10%)のXeが含まれる排ガスからのXeの回収リサイクルを対象とするものではないことや、排ガス中に水分、COおよびFC等が混入する場合は対応できないことが課題として挙げられる。
【0008】
また、FCの除去では、現状、燃焼法やプラズマ分解法が一般的に用いられている。燃焼法では、燃焼用のアシストガスとして大量の空気が使用され、燃焼装置出口排ガス中のXe濃度は燃焼装置入口の約1/100程度まで低下する。すなわち、排ガス量は約100倍になる。この場合、Xeを回収・濃縮するためには大掛かりな機構が必要となり、回収・濃縮・精製の効率は極端に低下する。プラズマ法では、FC等の完全な除去は難しく、また入口のFC濃度によってFCの除去効率が大きく異なるという課題があり、適用は難しい。
【0009】
本発明の目的は、低濃度のXeが含まれるプラズマエッチング等の半導体製造プロセス排ガス中より、水分、COおよびFC等(以下「不純物」という。)を機能的に除去して高純度なXeを回収することが可能な、簡便で捕集効率の高い回収方法および回収装置を提供することである。また、従前の大型空気分離プラントから製造したXeと同等の性能で、ユーザーに提供できるリサイクル技術を提供することである。
【0010】
なお、ここで「低濃度Xe」とは、上記のように10%以下のXeをいい、「高濃度Xe」とは、10%以上のXeをいい、「高純度Xe」とは、99.99%以上のXeをいう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示すXeの回収システムおよび回収装置によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
本発明は、キセノンおよび少なくともフルオロカーボンを含む試料からキセノンを回収するシステムであって、該試料について少なくとも以下の処理工程;
(A1)吸着剤による前記フルオロカーボンの一種であるトリフルオロメタンの吸着除去、
(A2)ガス分離膜による、前記フルオロカーボンの一種である飽和結合からなるフルオロカーボンの除去、およびキセノンの濃縮、
(A3)前記キセノンの吸着剤による吸着回収および該吸着剤からのキセノンの脱離、
(A4)反応剤による前記フルオロカーボンの一種である不飽和結合からなるフルオロカーボンの除去、
を含む処理操作を行うことを特徴とする。
【0013】
低濃度のXe以外に多種の不純物を含む排ガスから高純度のXeを回収するためには、単機能の分離手段のみでは不可能であり、また異なる機能を有する分離手段の組合せによっても限界があることは、上記の通りであった。本発明者は、こうした分離手段に加え他の種々の手段を含めた分離・精製手段について、共存する個別成分に対する分離特性とともに、その分離手段の配列が有する特有の効果を検証した結果、上記(A1)〜(A4)の処理工程を含む処理操作を行うことによって、従前の方法ではできなかった不純物の除去を可能とし、非常に高純度のXeが得られることを見出した。
【0014】
つまり、不純物中の水分やCOなどについては、従前の吸着剤によって除去するとともに、FCについて(A1)吸着剤によるトリフルオロメタン(CHF)の吸着除去、(A2)ガス分離膜によるテトラフルオロメタン(CF)やヘキサフルオロエタン(C)などの飽和結合からなるFC(以下「飽和FC」という。)の分離除去、(A4)反応剤によるテトラフルオロエチレン(C)やヘキサフルオロプロペン(C)などの不飽和結合からなるFC(以下「不飽和FC」という。)の反応除去を組合せることによって、効果的にかつ効率的に不純物の除去を行うことが可能となった。また、処理工程(A2)におけるガス分離膜および処理工程(A3)における吸着剤によるXeの2段階の濃縮処理によって、ロスが少なく、かつ機能的に優れたXeの高純度化を図ることを可能とした。本発明は、このような不純物の除去機能とXeの濃縮機能の相乗効果によって、従前にない高純度のXeを回収することが可能で、かつ簡便で捕集効率の高い回収システムを提供することが可能となった。
【0015】
なお、こうした処理工程(A1)〜(A4)について、工程の順序については、試料条件によって制限はあるが、基本的には任意に設定することが可能である。通常、処理工程(A1)→(A2)→(A4)→(A3)とし、不純物を除去した後にXeの濃縮処理を行うことが好ましい場合が多いが、処理工程(A2)のように同時にXeの濃縮処理が可能となる場合や、処理工程(A4)のように反応過程において新たに不純物として水分およびCOが発生する場合があることから、試料条件によって最適な工程順を設定することが好ましい。本システムは、吸着、反応、膜分離という複数の異なる形態の処理工程、および不純物の除去とXeの濃縮を個々に行う処理工程と同時に行う処理工程、を任意に組合せることが可能であり、こうした適用性の広さによって非常に汎用性の高いシステムを形成することができるという従前にない特徴を有している。さらに、後述する他の処理手段(例えば低温相変化分離処理工程)との組合せも容易であり、さらに広い試料条件にも対応することが可能である。
【0016】
本発明は、上記キセノンの回収システムであって、前記処理工程(A1)〜(A4)に加え、以下の処理工程;
(A5)キセノンの沸点より低温条件下における相変化処理によるキセノンの分離、
を含む処理操作、あるいは該処理工程(A5)および以下の処理工程;
(A6)高温のゲッターによる残留不純物の分離除去、
を含む処理操作を行うことを特徴とする。
【0017】
0.01〜10%程度という低濃度のXeを含む試料からのXeの回収システムにおいては、試料中に略同濃度の不純物を含むことから1段階の処理操作あるいは同種の複数段の処理操作によって、高純度のXeまで濃縮することは困難である。本発明においては、第1段階のガス分離膜による効率的な分離濃縮ステップ、第2段階の吸着剤による吸着および該吸着剤からの脱離による選択的な濃縮に加え、大部分の不純物を除去した後の試料に対して低温相変化分離による第3段階の濃縮操作を施すことによって、初めて99.99%を超える非常に高純度のXeを効率よく安定的に回収することが可能となった。このときの相変化温度は、Xeの標準沸点である−108.1℃、あるいは標準融点である−111.9℃を下回る−110〜−150℃が必要条件となる。ここで、−110℃以下を「低温」という。
【0018】
また、最新の半導体製造プロセスにおいて求められるさらに高純度のXeについては、低温相変化分離による第3段階の濃縮操作に加えて、高温のゲッターによる残留不純物の分離除去操作を施すことによって、99.999%を超える非常に高純度のXeを効率よく安定的に回収することが可能となった。
【0019】
本発明は、上記キセノンの回収システムであって、前記処理工程(A1)において、吸着剤として前段に細孔径4Å以下の合成ゼオライトを、後段に酸化アルミニウムを用いて処理操作を行うことを特徴とする。
【0020】
上記のように、本発明者は、複数の処理手段を駆使することによって、従来非常に困難であった水分、COおよびFC等が共存する試料ガスから、ロスなく所望の高純度Xeを回収することを可能にした。特に、FCの中でもCHFについては、本検証の中で酸化アルミニウムを用いた吸着処理を行うことによって、非常に効率よくかつ選択的に除去することができるとの知見を得たもので、Xeの回収システムにおいて重要な意義を有している。本発明においては、さらに前段に細孔径4Å以下の合成ゼオライトを設けて水分やCOを選択的に除去することによって、後段の酸化アルミニウムでの競合吸着を防止し、さらにCHFの吸着能力を高めることが可能となった。また、酸化アルミニウムによるCHFの吸着によって、該吸着剤からのCHFの脱離によるCHFの選択的濃縮操作も可能となり、CHFの個別回収も可能となった。
【0021】
本発明は、上記キセノンの回収システムであって、前記処理工程(A2)において、ガス分離膜としてシリコーン製あるいはポリエチレン製中空糸ガス分離膜モジュールを用いて処理操作を行うことを特徴とする。
【0022】
FCを含む試料からのXeの回収システムであっては、CFやCなどの飽和FCについても回収可能な条件で分離することが好ましい一方、飽和FCについての吸着剤による除去操作は、除去効率が悪く実用的ではない。本発明者は、本システムの検証過程において、シリコーン製あるいはポリエチレン製中空糸ガス分離膜モジュールを用いることによって、飽和FCの分離処理が可能であり、効率よく除去することができるとの知見を得た。また、同時に、該ガス分離膜はXeの濃縮にも有用であり、同一工程において共用可能な条件で両方の機能を実行することができることから、該ガス分離膜を主要な構成要素とする高純度のXe回収システムを形成することが可能となった。
【0023】
本発明は、上記キセノンの回収システムであって、前記処理工程(A3)において、吸着剤として活性炭、細孔径5Å以上の合成ゼオライト、細孔径5Å以上のモレキュラーシービングカーボン、あるいはこれらの組合せを用いて処理操作を行うことを特徴とする。
【0024】
Xeの回収システムにおいては、非常に低濃度のXeからの濃縮率の高さと同時に、Xeの回収効率の高さも重要な要請事項である。本発明においては、こうした要請に応じるべく、第1段階のガス分離膜に加え、活性炭、細孔径5Å以上の合成ゼオライト、細孔径5Å以上のモレキュラーシービングカーボン、あるいはこれらの組合せという比較的大きな分子に対して優れた吸着および脱離特性を有する吸着剤を用いることによって、選択性が高く回収ロスの少ないXeの回収システムを構成することが可能となった。
【0025】
本発明は、上記キセノンの回収システムであって、前記処理工程(A4)において、反応剤としてカルシウム化合物を用いて処理操作を行うことを特徴とする。
【0026】
やCなどの不飽和FCについては、飽和FCと異なり吸着剤やガス分離膜などを用いて回収可能な条件で分離することが難しい。本発明者は、FCを含む試料からのXeの回収システムの検証過程において、アルカリ土類金属の中でも特にカルシウムを含む種々の化合物が、飽和FCなどの共存したにおいても不飽和FCと選択的に反応することを見出した。つまり、不飽和FCについては、回収は困難であるが、化学反応によって効率よく除去することができるとの知見を得た。また、アルカリ性を示すカルシウム化合物は、同時にCOの除去にも有用であり、同一工程において共用可能な条件で両方の機能を実行することができることから、カルシウム化合物を主要な構成要素とする高純度のXe回収システムを形成することが可能となった。
【0027】
本発明は、キセノンおよびフルオロカーボンを含む試料からキセノンを回収する装置であって、該試料について、少なくとも以下の処理手段;
(A1)細孔径4Å以下の合成ゼオライトおよび酸化アルミニウムを直列に配して充填された第1吸着手段、
(A2)シリコーン製あるいはポリエチレン製の中空糸ガス分離膜モジュールからなるガス分離手段、
(A3)活性炭、細孔径5Å以上の合成ゼオライト、細孔径5Å以上のモレキュラーシービングカーボン、あるいはこれらの組合せのいずれかが充填された第2吸着手段、
(A4)反応剤としてカルシウム化合物が充填された反応手段、
を有することを特徴とする。
【0028】
低濃度のXeとともにFC等の不純物を含む試料から、Xeの効率的な回収および高純度化を図るには、個々に不純物の除去機能を有する処理手段とXeの濃縮機能を有する処理手段を有するだけではなく、各処理手段の能力あるいは機能のレベルを上げていく必要があるとともに、両方の機能を有する処理手段を組合せて相乗効果を得ることが不可欠である。本発明に係るXe回収装置においては、複数の吸着手段、反応手段、膜分離手段という複数種の処理手段を組合せて各種別の処理手段固有の機能を活かす点に特徴の1つがあるとともに、同種処理手段においても異なる機能を有するように利用する点に特徴の1つがある。例えば、吸着手段についてみれば、第1吸着手段においては不純物のみの吸着処理に機能させ、第2吸着手段においてはXeのみの吸着処理に機能させることによって、不純物の除去機能とXeの濃縮機能の使い分けを図っている。また、Xeの濃縮機能についてみれば、第1濃縮手段であるガス分離膜においては、Xeの濃縮機能と同時に不純物のうち吸着剤による除去が困難な飽和FCの分離処理として機能させ、第2濃縮手段においてはXeの吸着処理として機能させる。こうした処理手段の機能的な活用によって、高純度なXeを回収することが可能な、簡便で捕集効率の高い回収装置を提供することができる。
【0029】
本発明は、上記キセノンの回収装置であって、前記処理手段(A1)〜(A4)に加え、以下の処理手段;
(A5)キセノンの沸点より低温に保持された空間部を有する低温分離手段、
を有すること、あるいは該処理手段(A5)および以下の処理手段;
(A6)高温のゲッターからなる除去手段、
を有することを特徴とする。
【0030】
上記のように、0.01〜10%程度という低濃度のXeを含む試料に対して処理手段(A1)〜(A4)を用いて処理することによって、試料中の大部分の不純物を除去し、99%を超える高純度のXeを回収することが可能となった。本発明は、さらにこの試料を、低温の空間部を有する低温分離手段に導入し、相変化を伴う処理操作を施すことによって、99.99%を超える非常に高純度のXeが効率よく安定的に回収できるようにした。また、こうした低温分離手段の後段に、さらに高温のゲッターからなる除去手段を配し、残留不純物の分離除去操作を施すことによって、99.999%を超える非常に高純度のXe安定的な回収を可能とした。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば、低濃度のXeが含まれる試料から、不純物を機能的に除去して高純度なXeを回収することが可能な、簡便で捕集効率の高い回収方法および回収装置を提供することができる。また、低温相変化分離手段やゲッターなどを付加するが可能であり、こうした付加機能を利用することによって、さらに高純度のXeを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、XeおよびFCを含む試料について、少なくとも以下の処理工程;
(A1)吸着剤によるCHFの吸着除去、
(A2)ガス分離膜による飽和FC(例えばCFやCなど)の分離除去およびXeの濃縮、
(A3)吸着剤によるXeの吸着回収および該吸着剤からのXeの脱離によるXeの濃縮、(A4)反応剤による不飽和FC(例えばCやCなど)の反応除去、
を含む処理操作を行い、Xeを回収するシステムである。
【0033】
具体的には、例えば、プラズマエッチング等の半導体製造プロセス排ガスのように、0.01〜10%程度の低濃度XeおよびFCなどが含まれる試料から水分、CO、CHF、CF、C、C等のFCを簡便で効率的な方法で除去し、Xeを回収し濃縮・精製するシステムである。ただし、半導体製造プロセスなどにおいては、プロセス直後のガスを試料とする場合と、排ガス処理(除害処理)前あるいは処理後のガスを試料とする場合によって、Xeの濃度あるいは不純物の成分や濃度が大きく変化するが、高濃度の場合には、本システム導入前に不活性ガス(本システムで除去処理可能なガスが好ましい)による希釈処理を行うことによって、本システムの機能に適切に利用することができる。
以下、各工程別にその処理手段および処理内容について詳述する。
【0034】
(A1)吸着剤によるCHFの吸着除去処理工程
試料中に共存するFCの一種であるCHFの吸着除去を担う処理工程であり、吸着剤として酸化アルミニウムを用いことが好ましい。従前CHFの処理用吸着剤としては、合成ゼオライトや活性炭が知られていたが、本発明者の検証過程においては、特に低濃度CHFに対する吸着能力の点において不十分であった。例えば合成ゼオライトについては、いずれの細孔径を用いても十分な吸着除去を行うことができなかった。また、活性炭は、Xeや他の成分の吸着能力も高く、選択的にCHFを除去する目的には適していないことが判った。検証の結果、後述するように酸化アルミニウムを用いることによって、99%以上の除去効率を得ることができた。
【0035】
ここで用いる酸化アルミニウムは、粉状や粒状等形状は問わないが、処理ガスの圧力損失や下流での処理の負荷を考慮すると粒状が好ましい。また、表面積の大きな活性アルミナや焼結体などの性状とすることも好ましい。
【0036】
また、本システムにおいては、前段に細孔径4Å以下の合成ゼオライトを設け、後段に酸化アルミニウムを設けた処理ユニットとすることが好適である。酸化アルミニウム自体は、水分やCOに対する吸着能力も高い反面、これらの吸着によって、本システムが目的とする選択的にCHFを除去する能力が低下する。従って、試料中に共存することが多いこれらの成分を前段で吸着除去処理することによって、高いCHF除去機能を確保することが可能となる。
【0037】
(A2)ガス分離膜による飽和FCの分離除去およびXeの濃縮処理工程
試料中に共存するFCの一種であるCFやCなどの飽和FCの分離除去を担う処理工程であると同時に、Xeの第1段階の濃縮処理工程に相当し、Xeに対する高い透過性と飽和FCに対する難透過性を有するガス分離膜を用いことが好ましい。こうした機能を有するガス分離膜であれば、材質や構造を問うものではないが、本発明者の検証過程において、膜の素材については、後述するように、例えば、素材をポリエチレンあるいはシリコーンゴムとする非多孔質膜が好適であった。前者は、通常40℃以下の使用条件が好ましく常温での使用に適し、後者は、通常200℃を耐熱温度とし比較的高温(例えば常温を超え50〜100℃程度)での使用に適している。また、その他、無機材質膜としてセラミックス膜やゼオライト膜などの多孔質膜も使用可能であることが判った。
【0038】
膜モジュールの構造については、非多孔質膜においてスパイラル型膜モジュール、プリーツ型モジュールあるいは中空糸膜モジュールなどを使用すること、非多孔質膜において中空糸状膜モジュールなどを使用することが可能であるが、本発明者の検証過程においては、処理能力の面において中空糸膜モジュールが好適であった。
【0039】
ここで、ガス分離膜の膜面積は、処理能力に影響することから所定量以上の膜面積を必要とする一方、処理量以上の膜面積は、むしろ膜の処理効率の低下や分離能力の低下(易透過ガスの透過能力の低下および難透過ガスの透過量の増加)を招来することから、最適な条件で使用することが好適である。具体的には、本システムにおいては、処理試料流量を20〜30slmとした場合に約20〜100mとすることが好ましい。
【0040】
以上の膜モジュールを用いることによって、100〜1000ppmの飽和FCに対し90%以上の除去効率を得ることができるとともに、未処理時Xe濃度0.2〜0.5%の試料を、Xe濃度5〜10%とすることができた。さらに、後述するように、単数の膜モジュールを使用する場合だけではなく、複数の膜モジュールを並列、直列あるいはその組み合わせた配列状態で用いることによって、試料の特性や仕様に応じた対応も可能である。
【0041】
(A3)吸着剤によるXeの吸着回収および吸着剤からのXeの脱離によるXeの濃縮処理工程
試料中のXeの第2段階の濃縮処理工程に相当する。Xeが共存する他の分子と比較して分子径が大きいことから、吸着剤として活性炭、細孔径5Å以上の合成ゼオライト、細孔径5Å以上のモレキュラーシービングカーボン(MSC)、あるいはこれらの組合せを用いて吸着処理を行うことによって、選択性を高めて分離処理を行うことができる。本工程は、吸着処理工程と脱離処理工程に分かれ、前者において吸着処理を所定時間行った後に、後者において吸着剤を加熱し脱離させることによって、高濃度に濃縮されたXeを含むガスを取り出すことができる。このとき、さらに微量の不活性ガスを用いて吸着剤をパージすることによって、効率よく離脱処理することができる。具体的には、Xe濃度5〜10%の未処理試料は、吸着処理・離脱処理後においてXe濃度50〜90%の混合ガスとして取り出すことができる。
【0042】
このとき、吸着処理工程と脱離処理工程によって吸着剤における試料の流れを逆にすることが好ましく、このとき複数の吸着剤ユニットを設けることが好ましい。任意の吸着剤ユニットについて吸着処理を行うと同時に他方の吸着剤ユニットで脱離処理行い、所定時間後にこれらを切換えることによって、連続的に両方の処理を行うことができる。
【0043】
また、吸着剤ユニットは、Xe回収装置に固定した状態での吸着・脱離処理を行う場合が一般的であるが、取り外し可能なユニットとすることによって、吸着剤ユニットの上流側と下流側にシステムを2分することが可能である。従って、上流側のシステムにおいて吸着処理が完了した時点で、本ユニットを移動し下流側のシステムにおいて脱離処理を行い、その後さらに高純度化処理を行うことも可能である。こうした機能は、本システムの汎用性を高めることができ、特に既存の設備にXe回収装置を付加・増設する場合などに、設置条件の制約を緩和できる点においても有用である。なお、以下試料処理流路において、試料の流れの上流側を「上流」あるいは「上流側」、下流側を「下流」あるいは「下流側」という。
【0044】
なお、吸着処理工程においては主たる機能をXeの濃縮とするが、同時に水分やCOに対する吸着量も多くなる。しかし脱離工程時の加熱温度を調整することによって、Xeの吸着状態を維持しながらこれらをパージし、さらに選択性を高めることができる。例えば、低温加熱パージによって吸着温度の低い成分を除去した後に、高温加熱パージを行う等の処理によって、吸着処理では未分離あるいは分離能の低い成分をさらに再分離することが可能となる。
【0045】
(A4)反応剤による不飽和FCの反応除去処理工程
試料中に共存するFCの一種であるCやCなどの不飽和FCの反応除去を担う処理工程であり、カルシウム化合物がXeに対して影響を及ぼさずに不飽和FCと特異的に反応することを利用したものである。水酸化カルシウム(Ca(OH))、あるいはこれを主成分とする化合物については、試料中のCOの除去効果も得ることができることから、本システムに対して有用である。数100ppm〜数1000ppmの不飽和FCに対し99%以上の除去効率を得ることができる。
【0046】
ここで、カルシウム化合物とは、水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、リン酸三カルシウム(Ca(PO)などの化合物あるいはこれらを主成分とする化合物(例えばソーダ石灰等)をいう。具体的には、下式1〜3の反応によってCを除去することができる。他のカルシウム化合物についても、同様の反応が成立する。また、これらの化合物を混合して使用することも好適である。
2Ca(OH)+C→2CaF+2HO+2CO・・(式1)
2CaCO+C→2CaF+2CO+2CO・・(式2)
2Ca(PO+3C+6HO→6CaF+6CO+4HPO・・(式3)
【0047】
ここで用いるカルシウム化合物は、粉状や粒状等形状は問わないが、処理ガスの圧力損失や下流での処理の負荷を考慮すると、粒状体あるいは粉状体をバインドした粒状体等が好ましく、また表面積を大きくして活性を確保することが好ましい。
【0048】
なお、さらに高純度Xeとして回収する場合には、上記処理工程(A1)〜(A4)に加え、(A5)低温相変化分離処理工程や(A6)高温のゲッターによる処理工程などを付加するが好ましい。こうした付加機能を利用することによって、99.999%以上の高純度なXeを回収することが可能となる。
【0049】
(A5)低温相変化分離処理工程
Xeの標準沸点−108.1℃を利用し、大部分の不純物が除去された試料について低温相変化分離によってXeを高純度に精製分離する処理工程である。低濃度ながら不活性ガス等の残留成分を含む試料を、−110〜−150℃に冷却された空間部に導入し、Xeを液化あるいは固化させることによって、Xeよりも沸点の低い窒素(N)、酸素(O)、アルゴン(Ar)等について分離除去することができる。具体的には、99.99%以上の高純度のXeを取り出し、上記不純物を1ppm未満のレベルまで除去することができる。また、処理前の試料中にCFが残存している場合には、その標準沸点−128.9℃を超える−110〜−120℃で冷却することによって、分離除去が可能である。
【0050】
第1段階のガス分離膜による効率的な分離濃縮ステップ、第2段階の吸着剤による吸着および該吸着剤からの脱離による選択的な濃縮に加え、大部分の不純物を除去した後の低温相変化分離による第3段階の凝縮操作を施すことによって、Xeを効率よく安定的に回収することが可能となった。
【0051】
(A6)高温のゲッターによる処理工程
以上の3段階の凝縮操作に加え、分子レベルの不純物除去手段である高温のゲッターによる処理を施すもので、液化された高純度Xeを再度気化した後、高温のゲッターによって低濃度の残留成分を除去し、さらに高純度のXeに精製分離する処理工程である。具体的には、低温相変化分離工程においてXeと同時に凝縮される高沸点成分の水分、COおよびなお残留する微量なFC、O、Nなどを分離除去するものであり、試料を、数100℃に加熱された金属のゲッター例えばチタンスポンジなどを通過させることによって、99.999%を超える高純度なXeを確保することが可能となる。
【0052】
このとき、ゲッターとしては、チタンスポンジ以外に、ジルコニウム−バナジウム−鉄合金やジルコニウムなどの非蒸発性のゲッター材(サエスゲッターズ社製、Nupure社製、Pureron社製など)を使用することが可能である。なお、高温のゲッターによる処理は、事前に99%を超える純度を確保することが好ましく、不純物の多い試料を処理した場合には、ゲッターとしての機能が不十分であるばかりでなく、その後の機能回復ができない場合がある。かかる点において、本システムにおける多段階の精製工程に適するものであり、半導体プロセス等99.999%を超える高純度のXe回収システムの要請に好適な処理工程である。
【0053】
<本発明に係るXe回収装置の基本的な構成(第1構成例)について>
図1は、本発明に係るXe回収装置(以下「本装置」という。)の基本的な構成(第1構成例)を例示する概略図である。具体的には、2つの吸着剤を直列に配した第1吸着手段A1、ガス分離膜モジュールからなるガス分離手段A2、吸着剤が充填された第2吸着手段A3、反応剤が充填された反応手段A4、2つの吸着剤を直列に配した第3吸着手段A1’、低温分離手段A5、高温のゲッターからなる除去手段A6、およびこれに付随する移送手段(昇圧機や真空ポンプ)、貯留タンクTから構成される。
【0054】
例えば、プラズマエッチング等の半導体製造プロセス排ガスで除害装置等によってHF、F等の酸性ガスを取り除いたガスなどを対象とする場合に適用することが好適である。具体的には、本装置の環境温度飽和の水分、0.1〜1%のCO,0.01〜0.1%のCHF、CF、C、Cおよび0.01〜10%の低濃度Xeが含まれる試料を挙げることができ、以下該試料の処理を想定した場合を主として説明する。むろんこれに限定されるものではない。
【0055】
以下、図1の試料の流れに沿って、本装置における処理操作の一例を、各構成の機能とともに詳述する。各処理操作後のXeを含む試料の状態については、後述する〔実施例1〕と略同等である。
【0056】
(1)本装置に導入された試料は、昇圧機1によって所定の圧力(例えば0.1MPaG)まで昇圧された後に、吸着筒2(第1吸着手段A1に相当)に導入される。吸着筒2は、上述のように、前段2aに細孔径4Å以下の合成ゼオライト、後段2bに酸化アルミニウムが充填され、室温で運転される。前段2aにおいて、主として水分やCOが吸着除去され、後段2bにおいて、CHFが吸着除去される。なお、酸化アルミニウムの吸着能力によって、CHFと同時に水分やCOをさらに除去することができる。
【0057】
(2)その後、再度昇圧機3で所定の圧力(例えば0.2MPaG)まで昇圧され、ガス分離膜モジュール4(ガス分離手段A2に相当し、シリコーン製またはポリエチレン製中空糸膜モジュールを用いることが好適である。)に導入される。このとき、ガス分離膜モジュール4の透過側を真空ポンプ5にて所定の圧力(例えば−0.1MPaG)に減圧調整する。これによって、Xeはガス分離膜の透過側、飽和FCであるCF、Cは非透過側にそれぞれ分離され、Xe濃縮およびCFとCの除去を効率よく行うことができる。具体的には、Xe濃度は2〜5倍、Xeの補足率は75%以上を達成でき、CF、Cは5ppm以下まで低減することができる。
【0058】
(3)ガス分離膜モジュール4で濃縮された試料は、昇圧機6によって所定の圧力(例えば0.4MPaG)まで昇圧され、吸着筒10(第2吸着手段A3に相当)に導入される。吸着筒10には、活性炭、細孔径5Å以上の合成ゼオライトもしくは細孔径5Å以上のモレキュラーシービングカーボンが充填されXeが選択的に吸着される。吸着筒10を通過した試料は排気処理あるいは再利用される。吸着処理を所定時間行った後に、Xeが吸着された吸着筒10を電気ヒータ11によって250℃まで加熱することにより、容器内に吸着されたXeを脱離させる。このとき、微量の不活性ガス(例えばN等)を用いて吸着筒10内部をパージすることによって、効率よく離脱処理することができる。このときのXe濃度は70〜90%となる。吸着処理の時間は、吸着筒10に導入される試料流量、試料中のXe濃度および吸着剤の容量によって概算できることから予め設定することが可能である。また、吸着筒10は、取り外し可能なユニット化をするとともに、本装置を、吸着筒10の上流側U1と下流側U2に2分することが可能である。半導体プロセスなどのXe回収設備直近に、本装置全体を設置できない場合は、吸着筒10を本装置から離脱し、他の場所に設置した下流側の以下の手段や機能を有する装置に移送して、その操作処理を行うことによって、本装置全体の処理が可能となる。輸送する工程が増えるのみで、技術的、製品の性能に影響を与えることはない。また、吸着筒10に回収され濃縮されたXeを含む試料を一定期間保持することも可能である。
【0059】
(4)吸着筒10を脱離したXeを含むガスは、一旦タンクTに充填された後に、昇圧機21にて所定の圧力(例えば0.3MPaG)まで昇圧された後に、反応筒23(反応手段A4に相当)に導入される。反応筒23は、電気ヒータ22によって所定の温度(例えば250℃以上)に加温され、その内部に充填されたCa(OH)およびCa(OH)とNaOHの混合物(例えばソーダ石灰)と不飽和FC(具体的にはC)を反応させ除去する。試料中にCOが残存している場合には、同時に除去することができる。
【0060】
(5)反応筒23から供出された試料は、さらに吸着筒24(第3吸着手段A1’に相当)に導入される。この吸着筒24は室温で運転されており、前段24aに細孔径4Å以下の合成ゼオライト、後段24bに酸化アルミニウムが充填され、上記(1)同様、水分およびCOを除去することができる。上記(4)反応筒23の下流に配することによって、カルシウム化合物と不飽和FCとの反応によって発生した水分およびCOを除去することができ、Xeの高純度化をサポートしている。また、水分やCOが含まれていると、次の低温相変化分離処理の際に凝縮し、配管閉塞の原因になるために事前に除去する必要があり、こうした要請にも対応することができる。
【0061】
(6)吸着筒24を通過した試料は、予備冷却部25aを介して冷却分離器25bに導入され、液化あるいは固化による相変化を発生させる(合せて低温分離手段A5に相当)。冷却分離器25bは、内部に断熱された空間部25cが設けられ、低温時の相変化を利用し精製するために適当な冷媒(例えば液化窒素等)を使用して、Xeの沸点以下の−110〜−150℃に冷却される。試料中のXeは液化あるいは固化されるが、Xeよりも沸点が低く、相変化されないN、O、Ar、CF等の不純物を含む試料については、排気処理あるいは再利用される。液化された液状物あるいは固化された固化物中の不純物の各成分は、1ppm未満のレベルまで低減することができる。
【0062】
(7)さらに、液化もしくは固化した試料は、最終処理のために、ガス化ユニット26aを介して再度気化され、チタンスポンジ26b(合せてゲッターからなる除去手段A6に相当)を通過させる。チタンスポンジ26bは、約650℃に加熱され、試料中の水分、COおよび極微量残存しているFC、O、Nなどについて、0.1ppmのオーダーまで除去することが可能である。このチタンスポンジを効率的に運用するために、上記(1)〜(6)の処理手段による各種FCの除去は必要である。これによって、最終製品27として純度99.999%以上のXeを得ることができる。
【0063】
なお、本装置について以上の処理操作によって得られたXeの純度が、要求されるものよりも劣っている場合は、再度、上記(4)〜(6)の処理操作を実施することによってXeの純度を高めることができる。また、上記(3)の処理操作において吸着筒10に回収し濃縮された試料を、再度上記(4)〜(6)の処理操作を実施することによってXeの純度を高めることができる。
【0064】
<本装置の第2構成例について>
図2は、本装置の他の構成(第2構成例)を例示する概略図である。第1構成例における処理手段A1〜A4(A1’を含む)を複数設け、ガス分離手段A2は直列に配し、それ以外処理手段は並列に配した場合を例示している。基本的な機能は、第1構成例と同様であり、ここでは、その相違する構成および機能について詳述する。
【0065】
1つには、ガス分離手段A2において2つを直列にした点において、その処理操作と機能に相違がある。Xe濃縮およびCFとCを除去する目的、およびガス分離膜モジュールとしてシリコーン製またはポリエチレン製中空糸膜モジュールを用いる点に差異はなく(Xeはガス分離膜の透過側、CF、Cは非透過側にそれぞれ分離される。)、分離効率や濃縮率の向上、特に帰還流路との組合せによって、Xeの回収効率の向上を図るものである。
【0066】
具体的には、昇圧機3で所定の圧力(例えば0.2MPaG)まで昇圧され、1段目のガス分離膜モジュール4に導入される。このとき、ガス分離膜モジュール4の透過側を真空ポンプ5にて所定の圧力(例えば−0.1MPaG)に減圧調整する。さらに、該透過側の試料を、再度昇圧機6にて所定の圧力(例えば0.2MPaG程度)まで昇圧し、2段目のガス分離膜モジュール7に導入する。1段目と同様に、透過側を真空ポンプ8にて所定の圧力(例えば−0.1MPaG)に調整する。このとき、2段目のガス分離膜モジュール7の残留側と1段目のガス分離膜モジュール4の導入側を接続する帰還流路が設けられ、2段目のガス分離膜モジュール7の残留ガス(非透過ガス)を1段目のガス分離膜の導入部に合流させる。また、2段目のガス分離膜モジュール7の透過側とその導入側を接続する帰還流路が設けられ、2段目のガス分離膜モジュール7の透過ガスの一部を次工程に、一部を再度2段目のガス分離膜モジュール7の導入側にそれぞれ合流させる。このことによって、Xeの回収率の増加と濃縮率の増加の双方を達成することができる。具体的には、Xe濃度は10〜20倍、Xeの補足率は90%以上を達成できる。また、CF、Cは5ppm以下まで低減することができる。さらに、3段目のガス分離膜モジュールを用いることによって、一層高濃度Xeを確保し、CFおよびCの低減を図ることができることはいうまでもない。
【0067】
2つには、処理手段A1(A1’を含む)、A3およびA4において、2つを並列にした点において、その処理操作に相違がある。試料処理に実動する処理手段と再生あるいは保守に供される処理手段を並列に配することによって、連続的長期使用を図るものである。具体的には、図3(A)に例示するように、実線が、試料が導入され実動する流路を表し、破線が、パージガスが導入されて再生あるいは保守に供される流路を表す。所定の時間あるいは時期を経過して、図3(B)に例示するように、各流路を切換えることができる。処理手段A1(A1’を含む)については、実動状態からの切換時に、吸着剤を加熱し、そこに吸着された物質を脱着させることによって、再度吸着能力を再生することができる。処理手段3については、実動状態からの切換時に、吸着剤を加熱し、そこに吸着された物質を脱着させることによって、濃縮されたXeを含む試料を次の処理手段に導入することができる。処理手段4については、実動状態からの切換時に、処理能力が低下した内部の反応剤の交換や点検等の保守を行うことができる。こうした切換操作は、各処理手段ごとに個別の周期あるいは任意の時期に行うことができるようにすることが好ましい。
【0068】
〔実施例1〕
本装置の第2構成例について、テストガスとして、Xe濃度0.3%,本装置の環境温度飽和の水分(例えば25℃飽和で3.1%),CO濃度0.3%、およびFCとしてCF濃度1000ppm,CHF濃度100ppm,C濃度200ppm,C濃度500ppmのNバランスガスを25slmの流量で、本装置に導入して性能を確認した。
【0069】
本装置に導入されたテストガスは、図2に示すように、昇圧機1で0.1MPaGまで加圧された後に、吸着剤として前段2aに細孔径4Åの合成ゼオライトと後段2bに酸化アルミニウムを使用した吸着筒2に導入され、前段2aで水分とCOが、後段2bでCHFが除去される。その後、再度昇圧機3により0.2MPaGまで昇圧された後に、1段目のポリエチレン製中空糸膜モジュール4に導入し、透過側を真空ポンプ5にて−0.1MPaGに調整する。透過側のガスを、再度昇圧機6にて0.2MPaG程度まで昇圧し、2段目のポリエチレン製中空糸膜モジュール7に導入する。1段目と同様に、透過側を真空ポンプ8にて−0.1MPaGに調整する。残留ガスを1段目の膜モジュール4の導入部に、透過ガスの一部を次工程に、透過ガスの残部を再度2段目の膜モジュール7の導入部に、それぞれ合流させる。濃縮されたガスを、昇圧機9により0.4MPaGまで昇圧した後に、吸着筒10に通し室温にて吸着収納させた。その後、吸着筒10を、電気ヒータ11により250℃まで加熱し、吸着させたXeを含むガスを取り出した。
【0070】
吸着筒10では、Xeだけでなく水分、CO、Cが濃縮される。吸着筒10から脱着されたガスを、昇圧機21により0.3MPaGにした後、Cを除去する工程として、ソーダ石灰(Ca(OH)とNaOHの混合物)が充填され、電気ヒータ22で350℃に加熱された反応筒23に導入し、Cを反応分解除去した。次に、水分とCO分の除去のため、再度前段24aに細孔径4Åの合成ゼオライトと後段24bに酸化アルミニウムを充填した吸着筒24を使用し、前段24aで水分とCOを、後段24bで微量のCHFを室温にて除去した。その後、予備冷却部25aを介して液化窒素を冷媒とし−130℃に冷却された冷却分離器25bにガスを導入して、ガス中に含まれるN、O分を除去した。次に、液化された液状物あるいは固化された固化物を、ガス化ユニット26aを介してガス化し、最終工程として、電気ヒータで650℃に加熱したチタンスポンジ26bに導入し、微量な水分、CO、N、Oを除去した。
【0071】
各処理操作での分析結果を下表1に記載する。下表1より明らかなように、各処理操作で目的とする不純物の除去が成されていることがわかる。また最終的に得られたXeガスと通常の製造方法で製造されたXeを比較しても同等であることがわかる。また、このときのXeのリサイクル率は85%以上であり十分に実用に耐えるものである。
【0072】
【表1】

【0073】
<本装置の第3構成例について>
図4は、本装置の第3の構成例を示す概略図である。第1構成例における処理手段A1と処理手段A2の配置を入れ替えた構成の場合を例示している。基本的な機能は、第1構成例と同様であり、ここでは、その相違する構成および機能について述べる。
【0074】
上記第1構成例と同様な組成で、水分が含まれない試料などを対象とする場合に適用することが好適である。つまり、試料中に水分が0.01%未満である場合には、水分の除去機能を有する第1吸着手段A1を上流に設ける必要がないことから、ガス分離手段A2を、上流に設けることができる点において特徴があり、第1構成例と相違する。これによって、1つには、Xeの濃縮を早期に行うことによって、試料中のXe濃度が高い条件を維持しながら下流における処理操作を行うことが可能となり、高純度化に優位な条件を確保することができる。また、第1吸着手段A1を下流に移動しても、負荷が少ない条件に変更はないことから、吸着筒2(第1吸着手段A1に相当)を小型化することができる。さらに、後述するように、複数の試料採取点に対して複数のガス分離手段A2を接続して、大量のXeを同時に回収することも可能となる。
【0075】
<本装置の第4構成例について>
図5は、本装置の第4の構成例を示す概略図である。第3構成例における処理手段A1〜A4(A1’を含む)を複数設け、並列に配した場合を例示している。上記第3構成例と同様な組成で、水分が含まれない試料などを対象とする場合に適用することが好適である。基本的な機能は、第3構成例と同様であり、ここでは、構成および機能について述べる。
【0076】
1つには、ガス分離手段A2において2つを直列にした配列A2a,A2bをさらに並列に配した点において、その処理操作と機能に相違がある。上記第3構成例と同様、試料中に水分が0.01%未満である場合には、水分の除去機能を有する第1吸着手段A1を上流に設ける必要がなく、下流に移動しても、負荷が少ない条件に変更はない。従って、複数の試料採取点に、複数のガス分離手段A2a(昇圧機3a〜ガス分離膜モジュール4a〜真空ポンプ5a〜昇圧機6a〜ガス分離膜モジュール7a〜真空ポンプ8a)、ガス分離手段B2b(昇圧機3b〜ガス分離膜モジュール4b〜真空ポンプ5b〜昇圧機6b〜ガス分離膜モジュール7b〜真空ポンプ8b)・・を設置して大量のキセノンを同時に回収することも可能となる。
【0077】
また、上記第2構成例と同様、第3構成例における処理手段A1(A1’を含む)、A3およびA4において、2つを並列にした点において、その処理操作に相違がある。試料処理に実動する処理手段と再生あるいは保守に供される処理手段を並列に配することによって、連続的長期使用を図るものである。基本的な機能は、第2構成例と同様であり、ここでは、その機能の詳細説明は省略する。
【0078】
〔実施例2〕
本装置の第4構成例について、テストガスとして、Xe、COが0.3%、0.3%、およびFCとしてCF濃度100ppm、CHF濃度100ppm、C濃度200ppm、C濃度500ppmのNバランスガスを25slmで、本装置に導入して性能を確認した。
【0079】
本装置に導入されたガスは、昇圧機3により0.2MPaGまで昇圧された後に1段目のシリコーン製中空糸膜モジュール4に導入され、透過側を真空ポンプ5にて−0.1MPaGに調整する。透過側のガスを、再度昇圧機6にて0.2MPaG程度まで昇圧し2段目のシリコーン製中空糸膜モジュール7に導入する。1段目と同様に、透過側を真空ポンプ8にて−0.1MPaGに調整する。残留ガスを1段目のガス分離膜モジュール4の導入部に、透過ガスの一部を次工程に、一部を再度2段目のガス分離膜モジュール7の導入部にそれぞれ合流させる。濃縮されたガスを、昇圧機1で0.1MPaGまで加圧された後に、吸着剤として前段2aに細孔径4Åの合成ゼオライトと後段2bに酸化アルミニウムを使用した吸着筒2に導入し前段2aで水分、COが後段2bでCHFが除去される。濃縮されたガスを、昇圧機9により0.4MPaGまで昇圧した後に、合成ゼオライト5A(細孔径5Å)が充填された吸着筒10に導入し、室温にて吸着収納させた。その後、吸着筒10を電気ヒータ11により250℃まで加熱し、吸着させたXeを含むガスを取り出した。
【0080】
吸着筒10では、Xeだけでなく水分、CO、Cが濃縮される。導入されたガスを昇圧機21により0.3MPaGにした後、Cを除去する工程としてソーダ石灰(Ca(OH)とNaOHの混合物)を充填した反応筒23を電気ヒータ22にて350℃に加熱したものに導入し、Cを反応分解除去した。次に、水分とCO分の除去のため、再度、前段24aに細孔径4Åの合成ゼオライトと後段24bに酸化アルミニウムを充填した吸着筒24を使用し、前段24aで水分、COを、後段24bで微量のCHFを室温にて除去した。その後、予備冷却部25aを介して、液化窒素を冷媒とし−130℃に冷却された冷却分離器25bにガスを導入して、ガス中に含まれるN、O分を除去した。次に、液化もしくは固化した試料をガス化し、最終工程として、電気ヒータで650℃に加熱したチタンスポンジ26bに導入し、微量な水分、CO、O、Nを除去した。
【0081】
本装置で得られた製品Xeの純度は99.999%以上であり、従来法で製造されたXeと同等の性能であることを確認した。また、この場合のXeの回収率は90%以上であり十分に実用に耐えることがわかった。
【表2】

【0082】
<本装置の第5構成例について>
図6は、本装置の第5の構成例を示す概略図である。第2構成例における処理手段A4を処理手段A1の上流側つまり最上流に配置した場合を例示している。基本的な機能は、第2構成例と同様であり、ここでは、その相違する構成および機能について述べる。
【0083】
上記第3および第4構成例と同様な組成で、水分が含まれない試料などを対象とする場合に適用することが好適である。つまり、試料中に水分が0.01%未満である場合には、水分の除去機能を有する第1吸着手段A1を上流に設ける必要がなく、吸着や膜分離では対応できないCやCなどの不飽和FCについて、できる限り上流で除去するようにガス分離手段A4を、最上流の設けた点において特徴がある。これによって、下流での他の不純物の処理操作の自由度を上げることが可能となる。
【0084】
〔実施例3〕
本装置の第5構成例について、テストガスとして、Xe、COが0.2%、0.3%、およびFCとしてCF濃度1000ppm、CHF濃度100ppm、C濃度500ppmのNバランスガスを、本装置に導入して性能を確認した。Cを除去する工程を上流に挿入しても効果的であることを確認した。
【0085】
本装置に導入されたテストガスは、昇圧機1により0.3MPaGまで昇圧されソーダ石灰(Ca(OH)とNaOHの混合物)を充填した反応筒23を電気ヒータ22にて350℃に加熱したものに導入しCを反応分解除去した。その後、吸着剤として前段2aに細孔径4Åの合成ゼオライトと後段2bに酸化アルミニウムを使用した吸着筒2に室温にて導入され、前段2aで水分とCOが、後段2bでCHFが除去される。その後、昇圧機3により0.2MPaGまで昇圧された後に、1段目のポリエチレン製中空糸膜モジュール4に導入し、透過側を真空ポンプ5にて−0.1MPaGに調整する。透過側のガスを再度昇圧機6にて0.2MPaG程度まで昇圧し、2段目のポリエチレン製中空糸膜モジュール7に導入する。1段目と同様に、透過側を真空ポンプ8にて−0.1MPaGに調整する。非透過ガスを1段目のガス分離膜の導入部に、透過ガスの一部を次工程に、一部を再度2段目のガス分離膜の導入部にそれぞれ合流させる。濃縮されたガスを、昇圧機9により0.4MPaGまで昇圧した後に、活性炭が充填された吸着筒10に導入し室温にて吸着収納させた。その後、吸着筒10を電気ヒータ11により200℃まで加熱し、吸着させたXeを含むガスを取り出した。
【0086】
吸着筒10ではXeだけでなく水分、COが濃縮される。吸着筒10から脱着されたガスを、昇圧機21により0.3MPaGにした後、水分、CO分の除去工程として再度、前段24aに細孔径4Åの合成ゼオライトと後段24bに酸化アルミニウムを充填した吸着筒24を使用し、前段24aで水分、COを、後段24bで微量のCHFを室温にて除去した。その後、予備冷却部25aを介して液化窒素を冷媒とし−130℃に冷却された冷却分離器25bにガスを導入して、ガス中に含まれるN、O分を除去した。次に、液化された液状物あるいは固化された固化物を、ガス化ユニット26aを介してガス化し、最終工程として、電気ヒータで650℃に加熱したチタンスポンジ26bに導入し、微量な水分、CO、O、Nを除去した。
【0087】
本装置で得られた製品Xe純度は99.999%以上であり、従来法にて製造されたXeと同等の性能であった。また、回収率についても上記の実施例と同様に80%以上の回収率であった。
【0088】
【表3】

【0089】
以上のように、本装置は、例えば半導体製造プロセス排ガス中の低濃度のXeが含まれる試料から、不純物を機能的に除去して高純度なXeを回収することが可能な、簡便で捕集効率の高い回収方法および回収装置を提供することが可能となる。
【0090】
つまり、半導体製造プロセスから排出されるガス中のXeを容易に回収し再利用することができ、かつ大型空気分離プラントから製造したXeと同等の性能のものを得ることができる。実施例より約80%以上のXeが回収・リサイクルされることになり原料の購入量は約20%に低減できる。大部分のXeの供給が海外に依存している現状を考えると、半導体産業においてXeの消費が拡大しても、国内でXe原料を得ることが可能となり、Xeの安定的な供給が可能となる。
【0091】
上記Xeの回収方法および回収装置は、低濃度のXeを含む試料について述べたが、むろん高濃度のXeを含む試料についても不活性ガスによる希釈処理との組合せによって、上記と同じ条件下での処理が可能であり、不純物の濃度も低くなることからさらに高純度のXeの回収が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
液化ガスを試料とする場合においては、試料を気化した状態において本システムに導入することによって適用することが可能である。
【0093】
また、半導体以外の分野においても同様の混合ガスとして排出されるXeを含んだ排ガス中よりXeを容易に回収し再利用することができる。さらに、このように、資源の有効活用として環境保全に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係るXe回収装置の基本的な構成を例示する概略図。
【図2】本装置の他の構成(第2構成例)を例示する概略図。
【図3】本発明に係る処理手段を並列に配した構成を例示する概略図。
【図4】本装置の第3構成例を示す概略図。
【図5】本装置の第4構成例を示す概略図。
【図6】本装置の第5構成例を示す概略図。
【符号の説明】
【0095】
1,3,6,9,21 昇圧機
2,24 吸着筒
2a,24a 前段
2b,24b 後段
4,7 ガス分離膜モジュール
5,8 真空ポンプ
10 吸着筒
11,22 電気ヒータ
23 反応筒
25a 予備冷却部
25b 冷却分離器
26a ガス化ユニット
26b チタンスポンジ
27 最終製品
A1 第1吸着手段
A1’ 第3吸着手段
A2 ガス分離手段
A3 第2吸着手段
A4 反応手段
A5 低温分離手段
A6 ゲッターからなる除去手段
T タンク
U1 本装置吸着筒の上流側
U2 本装置吸着筒の下流側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キセノンおよび少なくともフルオロカーボンを含む試料からキセノンを回収するシステムであって、該試料について少なくとも以下の処理工程;
(A1)吸着剤による前記フルオロカーボンの一種であるトリフルオロメタンの吸着除去、
(A2)ガス分離膜による、前記フルオロカーボンの一種である飽和結合からなるフルオロカーボンの除去、およびキセノンの濃縮、
(A3)前記キセノンの吸着剤による吸着回収および該吸着剤からのキセノンの脱離、
(A4)反応剤による前記フルオロカーボンの一種である不飽和結合からなるフルオロカーボンの除去、
を含む処理操作を行うことを特徴とするキセノンの回収システム。
【請求項2】
前記処理工程(A1)〜(A4)に加え、以下の処理工程;
(A5)キセノンの沸点より低温条件下における相変化処理によるキセノンの分離、
を含む処理操作、あるいは該処理工程(A5)および以下の処理工程;
(A6)高温のゲッターによる残留不純物の分離除去、
を含む処理操作を行うことを特徴とする請求項1記載のキセノンの回収システム。
【請求項3】
前記処理工程(A1)において、吸着剤として前段に細孔径4Å以下の合成ゼオライトを、後段に酸化アルミニウムを用いて処理操作を行うことを特徴とする請求項1または2記載のキセノンの回収システム。
【請求項4】
前記処理工程(A2)において、ガス分離膜としてシリコーン製あるいはポリエチレン製中空糸ガス分離膜モジュールを用いて処理操作を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキセノンの回収システム。
【請求項5】
前記処理工程(A3)において、吸着剤として活性炭、細孔径5Å以上の合成ゼオライト、細孔径5Å以上のモレキュラーシービングカーボン、あるいはこれらの組合せを用いて処理操作を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のキセノンの回収システム。
【請求項6】
前記処理工程(A4)において、反応剤としてカルシウム化合物を用いて処理操作を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のキセノンの回収システム。
【請求項7】
キセノンおよび少なくともフルオロカーボンを含む試料からキセノンを回収する装置であって、該試料について、少なくとも以下の処理手段;
(A1)細孔径4Å以下の合成ゼオライトおよび酸化アルミニウムを直列に配して充填された第1吸着手段、
(A2)シリコーン製あるいはポリエチレン製の中空糸ガス分離膜モジュールからなるガス分離手段、
(A3)活性炭、細孔径5Å以上の合成ゼオライト、細孔径5Å以上のモレキュラーシービングカーボン、あるいはこれらの組合せのいずれかが充填された第2吸着手段、
(A4)反応剤としてカルシウム化合物が充填された反応手段、
を有することを特徴とするキセノンの回収装置。
【請求項8】
前記処理手段(A1)〜(A4)に加え、以下の処理手段;
(A5)キセノンの沸点より低温に保持された空間部を有する低温分離手段、
を有すること、あるいは該処理手段(A5)および以下の処理手段;
(A6)高温のゲッターからなる除去手段、
を有することを特徴とする請求項7記載のキセノンの回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−137847(P2008−137847A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325373(P2006−325373)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)
【Fターム(参考)】