説明

キナゾリン誘導体

【課題】 CCケモカインレセプター4(CCR4)が関与する炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防又は治療剤としてに有用な化合物を提供すること。
【解決手段】 アニリノ又はシクロアルキルアミノ基を4位に有し、含窒素へテロ環基又はアミノ基がカルボニルを介して置換したピペラジノ等の環状アミノ基を2位に有するキナゾリン誘導体が、CCR4の機能調節剤として良好な活性を有すること見出し、特に皮膚炎等の炎症性疾患治療剤と有用であることを知見して、本発明を完成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なキナゾリン誘導体、及びそれを有効成分とする医薬、特に炎症性疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞遊走因子であるケモカインは構造的な特徴により大きくCXC/αケモカインとCC/βケモカインの二種に分類される。また、これらケモカインの受容体は7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体ファミリーに属し、CXCケモカインレセプターとCCケモカインレセプターから構成されている(Pharmacological Reviews, 52, 145, 2000)。
CCケモカインレセプター4(CCR4)は、Tリンパ細胞及び胸腺からクローニングされ(Biochemical and Biophysical Research Communications, 218, 337, 1996、European Journal of Immunology, 26, 3021, 1996)、当初、Th2タイプといわれるT細胞に主に発現していると報告されていた(Journal of Experimental Medicine, 187, 875, 1998)。しかし、その後の詳細な解析によりCCR4はTh1及びTh2のエフェクター・メモリーT細胞に広く存在することが示された(Journal of Immunology, 166, 103, 2001、The Journal of Clinical Investigation, 108, 1331, 2001)。更に最近の研究では、CCR4はほとんどすべての皮膚指向性のT細胞(Nature, 400, 776, 1999)及び単球・マクロファージ、樹状細胞、NK細胞に存在することも明らかにされている(Arthritis & Rheumatism, 44, 1022, 2001)。
CCケモカインであるThymus and activation-regulated chemokine(TARC)とMacrophage-derived chemokine(MDC)はCCR4の特異的なリガンドである(Journal of Biological Chemistry, 272, 15036, 1997、Journal of Biological Chemistry, 273, 1764, 1998)。TARCはT細胞遊走因子として(Journal of Biological Chemistry, 271, 21514, 1996)、またMDCは単球・マクロファージ・NK細胞の遊走因子として発見され(Journal of Experimental Medicine, 185, 1595, 1997)、どちらのケモカインも炎症性ケモカインと恒常性ケモカインの特徴を併せ持つことが知られている(Immunology Today, 20, 254, 1999)。
CCR4とそのリガンドであるTARC及びMDCは、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の様々な疾患に関与することが数多くの報告により示唆されている。例えば、喘息(The Journal of Clinical Investigation, 107, 1357, 2001)、アトピー性皮膚炎(Journal of Investigative Dermatology, 115, 640, 2000)、乾癬(Laboratory Investigation, 81, 335, 2001)、関節リウマチ(Arthritis & Rheumatism, 44, 2750, 2001)、炎症性腸疾患(Clinical & Experimental Immunology, 132, 332, 2003)等が挙げられる。従って、CCR4の機能調節剤はこれらの疾患等の予防又は治療剤として期待される。上記炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防又は治療剤としては、ステロイド剤等種々の薬剤が使用されているが、その治療効果と副作用の点から、新たな作用機序に基づく薬剤の開発が切望されている。
【0003】
例えば下記一般式で示される化合物が、TARC又はMDCの機能調節作用を有することが報告されている(特許文献1)。
【化3】

(式中、A、B、D、E、X及びYはN又はCを、J及びKはCを、LはO、NH又はSを、MはCH又はNを、Pは結合又はC=Oを、Zは-C-(F)-G-R2[FはO、H2、アルキル等、GはO、N又は結合を示す]を、nは0〜4を、R1はハロゲン、-CN等を、R2はヘテロ原子を最低一つ含むヘテロシクリルを、R3はハロゲン、-CN等を、R4及びR5はH又は一緒になって形成される環を、R10はH、アルキル等を示す。詳細は当該公報参照。)
【0004】
また、例えば下記一般式で示される化合物が、CCR4の機能調節作用を有することが報告されている(特許文献2)。
【化4】

(式中、m及びnは同一又は異なって1〜3の整数[但しm+nは4以下]を、R1は-NR4R5[ここでR4及びR5は H、置換していてもよいアラルキル等を示す]を、rは0〜4の整数を、sは0〜置換可能な数を、Gは窒素原子、CH等を、qは0〜2の整数を、Eは単結合、-C(C=O)-等を、R10は置換されていてもよい脂環式複素環基等を、Aは単結合、-O-等を、R3はH、置換されていてもよいアルキル等を示す。詳細は当該公報参照。)
【0005】
また、下記一般式で表されるキナゾリン誘導体がIgE拮抗活性を有し、アレルギー性疾患や軟骨障害治療剤として有用であることが報告されている(特許文献3)。
【化5】

(式中、GはCH又はNを、R1及びR2はH、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、ハロゲン等を、R3及びR4はH、置換されていてもよいアリール等を、R5は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ環基、アルカノイル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル及びカルバモイルから選択される置換されていてもよい基を示す。詳細は当該公報参照。)
【0006】
また、2位にピペラジン等の環状アミノ基を有し、4位にアニリノ基を有する化合物が報告されている。例えば、α-遮断作用を有する化合物(非特許文献1)、抗腫瘍活性を有する化合物(特許文献4)、Rho-キナーゼ阻害活性を有する化合物(特許文献5)、等が挙げられる。しかしながら、いずれの文献にも、2位に置換した環状アミノ基に、更に、カルボニル基を介して含窒素へテロ環又はアミノ基が置換した化合物は開示がない。また、CCR4阻害作用についても開示も示唆もない。
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0048865号明細書
【特許文献2】国際公開第03/104230号パンフレット
【特許文献3】特開2000−281660号公報
【特許文献4】国際公開第92/14716号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/076976号パンフレット
【非特許文献1】Khimiko-Farmatsevticheskii Zhurnal, ソビエト連邦, 1987年,第21巻, 第7号, p.802-807
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、CCR4の機能調節作用に基づく、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防・治療に有用な医薬組成物を提供すること、さらにはこれらを含有する医薬を提供することを目的として研究を行った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、CCR4の機能調節作用を有する化合物につき鋭意検討した。その結果、アニリノ又はシクロアルキルアミノ基を4位に有し、含窒素へテロ環基又はアミノ基がカルボニルを介して置換したピペラジノ等の環状アミノ基を2位に有するキナゾリン誘導体がCCR4の機能調節剤として有用であることを知見し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、下記一般式(I)で示される新規なキナゾリン誘導体又はその製薬学的に許容される塩と製薬学的に許容される担体とからなる医薬組成物、殊に喘息、アトピー性皮膚炎及び関節リウマチ等の予防・治療薬として有効な医薬組成物に関する。
【0010】
【化6】

(式中の記号は以下の意味を示す。
R1:-R0、-OH、-OR0、ハロゲン、ハロゲノ置換低級アルキル、-CN、-O-(ハロゲノ置換低級アルキル)、-R00-OH、-SR0、-SO2-R0、-NO2、-NR9(R10)、
R0:低級アルキル、
R00:低級アルキレン、
m:0、1又は2、
A:置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよい単環式シクロアルキル、
R2及びR3:同一又は互いに異なって、H又は-R0
n:1又は2、
X:結合又は低級アルキレン、
【化7】

Het:単環もしくは二環式含窒素へテロ環基、
R4:-R0、ハロゲン、ハロゲノ置換低級アルキル、-Y-OH、-Y-O-R0、-Y-NR9(R10)、-Y-CO2H、-Y-CO2-R0、-Y-CN、-Y-O-CO-R0、-Y-NR11-CO-R0、-Y-CO-NR9(R10)、-CO-R0、-O-(ハロゲノ置換低級アルキル)、-Y-S-R0、-Y-SO2-R0、-Y-NR11-CO-NR9(R10)、-Y-O-CO-NR9(R10)、-Y-NR11-CO2-R0、-Y-SO2-NR9(R10)、 -Y-NR11-SO2-R0、-Z-置換されていてもよいフェニル又は-Z-置換されていてもよい単環式ヘテロアリール、
R9、R10及びR11:同一又は互いに異なって、H又は-R0
Y:結合又は-R00-、
Z:結合、-R00-、-O-、-O-R00-、-S-、-S-R00-、-SO2-、-NR11-、-NR11-R00-、-NR11-CO-、-NR11-CO-R00-、-NR11-CO2-R00-、-O-CO-、-NR11-CO-NR9-、-NR11-SO2-又は-SO2-NR11-、
k:0、1、2又は3、
R5及びR6:同一又は互いに異なって、H、-R0、ハロゲノ置換低級アルキル、シクロアルキル、-CO2H、-CO2-R0、-CN、-R00-OH、-R00-O-R0、-R00-CO-NR9(R10)、-R00-CN、-R00-NR9(R10)、置換されていてもよいフェニル、-R00-置換されていてもよいフェニル、-R00-O-R00-置換されていてもよいフェニル、-R00-CO2-置換されていてもよいフェニル、-R00-CO2-R00-置換されていてもよいフェニル、又は置換されていてもよい単環式ヘテロアリール、
R7及びR8:同一又は互いに異なって、H又は-R0。以下同様。)
【発明の効果】
【0011】
本発明のキナゾリン誘導体は、CCR4或いはTARC及び/又はMDCの機能調節作用を有することから、種々の炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等〔例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、皮膚炎(アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎)、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、臓器移植時の拒絶反応、癌、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、間質性膀胱炎、敗血症、疼痛〕の予防・治療薬として有用である。特に、喘息、アトピー性皮膚炎又は関節リウマチの予防・治療薬として期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中、「アルキル」及び「アルキレン」とは、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」は、好ましくは炭素数1〜6個(以後、C1-6と略す)のアルキルであり、より好ましくはC1-4アルキル、更に好ましくはメチル及びエチルである。「低級アルキレン」は、上記「低級アルキル」の任意の水素原子1個を除去してなる二価基(C1-6アルキレン)を意味し、好ましくはC1-4アルキレンであり、より好ましくはメチレン、エチレン及びプロピレンである。
「ハロゲン」は、F、Cl、Br及びIを示す。「ハロゲノ置換低級アルキル」とは、好ましくは、1個以上のハロゲンで置換されたC1-6アルキルを意味し、より好ましくは1個以上のFで置換されたC1-6アルキルであり、更に好ましくは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロエチルである。
【0013】
「単環式シクロアルキル」は、好ましくはC3-10のシクロアルキルである。より好ましくはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルである。
「単環式含窒素へテロ環基」とは、1つのN原子を含み、更にN、S及びOからなるヘテロ原子を1つ以上含んでいてもよい単環3〜8員、好ましくは5〜7員環基であり、不飽和環である単環式含窒素ヘテロアリール、飽和環である単環式含窒素ヘテロシクロアルキル、及び前記単環式含窒素ヘテロアリールが部分的に水素化された環基を含む。単環式含窒素ヘテロアリールとしては、好ましくはピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピロリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル基が挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル、又はヘテロアリール基が部分的に水素化された環基として好ましくは、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、モルホリニル、チオモルホリニル基が挙げられる。好ましくは単環式含窒素ヘテロシクロアルキルである。
「二環式含窒素へテロ環基」は、前記の単環式含窒素へテロ環同士、又はベンゼン環もしくはシクロアルキル環と単環式含窒素へテロ環が縮環した環基であり、好ましくは、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、インドリニル基、及びオクタヒドロインドリニル基である。
「単環式ヘテロアリール」とは、N、S及びOからなるヘテロ原子を1つ含んでいてもよい5〜7員の不飽和環である。単環式ヘテロアリールとしては、好ましくはピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピロリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チエニル、フリル、チアゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル基である。
前記「単環式含窒素へテロ環基」、「二環式含窒素へテロ環基」及び「単環式ヘテロアリール」において、環原子であるS又はNが酸化されオキシドやジオキシドを形成してもよい。また、単環式含窒素ヘテロアリール、及び単環式含窒素ヘテロアリールが部分的に水素化された環基においては、任意の炭素原子がオキソ基で置換されていてもよい。
【0014】
「置換されていてもよい」とは、「無置換」あるいは「同一又は異なる置換基を1〜5個有していること」を示す。
例えば、「置換されていてもよいフェニル」及び「置換されていてもよい単環式ヘテロアリール」における置換基としては、好ましくは、低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ置換低級アルキル、-OH、-O-低級アルキル、-CN、-NR7(R8)、-R00-OH、-R00-O-低級アルキル、-S-低級アルキル、NO2、-O-(ハロゲノ置換低級アルキル)、-SO2-低級アルキル、-CO2H、-R00-CO2H、-CO2-R0、-R00-CO2-R0、-O-CO-R0、-CO-NR7(R8)、-R00-CO-NR7(R8)、-CO-R0であり、より好ましくは、低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ置換低級アルキル、-OH、-O-低級アルキル、-CNである。また、「置換されていてもよい単環式シクロアルキル」における置換基としては、好ましくは、低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ置換低級アルキル、-OH、-O-低級アルキル、オキソ、-NR7(R8)、-R00-OH、-R00-O-低級アルキル、-O-(ハロゲノ置換低級アルキル)、-CO2H、-CO2-R0、-CO-NR7(R8)であり、より好ましくは、低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ置換低級アルキル、-OH、-O-低級アルキル、オキソである。
m又はkが各々2以上のとき、基R1又はR4は各々複数存在するが、それらは同一もしくは異なっていてもよい。
【0015】
一般式(I)に示される本発明化合物の好ましい態様を以下に示す:
Aが置換されていてもよいフェニルであり、ここに置換基がハロゲン、-CN又は低級アルキルである化合物;
R1が-R0、ハロゲン、-CN、-OR0又はハロゲノ置換低級アルキルである化合物;
mが1又は2である化合物;
R2及び R3がHである化合物;
Xが結合又はメチレンである化合物;
Hetが単環式含窒素ヘテロシクロアルキルである化合物。より好ましくは、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、ジアゼパニル又はモルホリニル基である化合物;
R4が-R0、ハロゲン、ハロゲノ置換低級アルキル、-OH、-低級アルキレン-OH、-OR0、又は-低級アルキレン-OR0である化合物;
R5及び R6がHである化合物;
R7及び R8がH、メチル又はエチル基である化合物。
【0016】
本発明の化合物(I)は置換基の種類によっては幾何異性体や互変異性体が存在する場合があるが、本発明にはこれらの異性体の分離したもの、あるいは混合物が包含される。
また、化合物(I)は不斉炭素原子を有する場合があり、これに基づく(R)体、(S)体の光学異性体が存在しうる。本発明はこれらの光学異性体の混合物や単離されたものを全て包含する。
更に、化合物(I)には、薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で本発明のNH2、OH、CO2H等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、Prog. Med., 5, 2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0017】
化合物(I)は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もある。かかる塩としては、製薬学的に許容される塩であり、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
さらに、本発明は、化合物(I)及びその塩の各種の水和物や溶媒和物及び結晶多形の物質をも包含する。
【0018】
(製造法)
本発明の化合物(I)及びその製薬学的に許容される塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基で保護、又は当該官能基に容易に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(T. W. Greene)及びウッツ(P. G. M. Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去、あるいは所望の基に転化することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、化合物(I)のプロドラッグは上記保護基と同様、原料乃至中間体の段階で特定の基を導入、あるいは得られた化合物(I)を用い反応を行うことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者により公知の方法を適用することにより行うことができる。
【0019】
第1製法
【化8】

【0020】
本製法はアミノ基を有するキナゾリン誘導体(II)とカルボン酸化合物(III)よりアミド化反応により本発明化合物(I)を製造する方法である。
反応は、キナゾリン誘導体(II)とカルボン酸化合物(III)とを等量又は一方を過剰に用いて、後記の溶媒中、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)、1,1-カルボニルビス-1H-イミダゾール(CDI)等)、場合によっては、更に添加剤(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等)の存在下、冷却下〜加熱下、好ましくは常温下、通常1時間〜1日間攪拌させることにより行なうことができる。また、これらの試薬のかわりに、同等の作用を示す官能基を担持した固相試薬(例えばPS-カルボジイミド(Argonaut Tecnologies社、米国)等)を使用することも可能である。また、化合物(III)と上記添加剤との活性エステル体を一旦単離後、化合物(II)と反応させてもよい。溶媒としては反応に不活性であれば特に限定はされないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上混合して用いられる。トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピリジン等の塩基の存在下に反応させるのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
【0021】
第2製法
【化9】

【0022】
(式中L1は脱離基を示す。以下同様。)
本製法は2位に脱離基を有するキナゾリン誘導体(IV)に環状アミン化合物(V)をイプソ置換させ、本発明化合物(I)を製造する方法である。
L1が示す脱離基としては、ハロゲン、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基等が挙げられる。反応は化合物(IV)を反応に不活性な溶媒中、塩基又は酸(好ましくは塩化水素)の存在又は非存在下、当量あるいは過剰量の(V)を用いて冷却下〜加熱還流下に通常1時間〜1日間行なわれる。溶媒としては反応に不活性であれば特に限定はされないが、例えば芳香族炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール類、DMF、NMP、DMSO等が挙げられる。塩基としては、トリエチルアミン、DIPEA、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、2,6-ルチジン等の有機塩基、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、tert-ブトキシカリウム等の塩基が好ましい。
【0023】
原料合成
【化10】

(式中PはH又はアミノ基の保護基を示す。以下同様。)
原料化合物(II)及び(IV)は、上記の反応経路により製造することができる。上記反応経路中、イプソ置換反応は前記第2製法と同様の条件が適用できる。Pがアミノ基の保護基の場合は、Pとして用いる基及びその除去法については前述の「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載されている。
【0024】
【化11】

環状アミン化合物(V)は、上記式に示す方法により製造できる。アミド化反応は前記第1製法と同様の条件、又はアミド化の常法を用いることができ、例えば日本化学会編「実験化学講座(第4版)」22巻(1992年)(丸善)等に記載の方法を参考に製造できる。
【0025】
上記各製法により得られた反応生成物は、遊離化合物、その塩あるいは水和物など各種の溶媒和物として単離され、精製される。塩は通常の造塩処理に付すことにより製造できる。
単離、精製は、抽出、濃縮、留去、結晶化、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行われる。
各種異性体は異性体間の物理化学的な性質の差を利用して常法により単離できる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法、例えば分別結晶化又はクロマトグラフィー等により分離できる。また、光学異性体は、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。
【0026】
本発明化合物の薬理活性は以下の試験により確認した。
1.CCR4を介した[35S]GTPγS結合試験に対する作用
(1) Human CCR4発現細胞株の取得
EF-1αプロモーター下流にヒトCCR4遺伝子を挿入したベクター(ネオマイシン耐性遺伝子含む)を作製し、マウスpre B細胞株B300-19細胞にエレクトロポレーション法によりトランスフェクションした。これらの細胞をG418添加培地で培養し、限界希釈法によりヒトCCR4を恒常的かつ安定に発現する単一の細胞株を取得した。
(2) Human CCR4発現細胞株膜画分の調整
ヒトCCR4発現細胞を回収しPBSで洗浄した後、Lysis Buffer(10mM Hepes pH 7.5, 2mM EDTA, protainase inhibitor)で懸濁した。懸濁液を氷上に15分間置いた後、ホモジェナイザーにより細胞を破砕し遠心した(20000 rpm, 10 min, 4℃)。さらに上清を超遠心(22K, 30 min, 4℃)した後、ペレットをPBSに懸濁したものを膜画分として以後の実験に用いた。
(3) GTPγS結合試験
試験化合物は、各濃度を20 mM Hepes pH 7.05、100 mM NaCl、5 mM MgCl2、GDP 2μM、Human MDC、[35S]GTPγS 150 pM、Wheatgerm agglutinin SPA beads 1 mg及びHuman CCR4発現細胞株膜画分1μgを含有する反応混合液中で1時間30分、室温で反応させ放射活性を測定した。
実施例2、3、4、7及び108の化合物は、100 nM濃度で50%以上の阻害活性を示した。
【0027】
2.マウスオキサゾロン誘発接触性皮膚炎に対する作用
マウスオキサゾロン誘発接触性皮膚炎に対する作用は下記の方法により確認できる。
Balb/cマウス(6〜10週齢、雌性、日本チャールス・リバー社)の腹部に3%オキサゾロン/エタノール溶液150μl(シグマアルドリッチジャパン)を塗布により感作する。感作後6日目に1%オキサゾロン/エタノール溶液10μlを右耳の両面に塗布する。試験薬物投与はオキサゾロン溶液の塗布12時間後に実施し(試験薬物投与群)、コントロール群には試験薬物を溶解するのに用いた溶媒のみを投与する。右耳介の厚みは塗布前と20時間後にシックネスゲージ(ミツトヨ)を用いて測定し、腫れ(厚み増加分=20時間後測定値−塗布前測定値)を算出する。抑制率は感作せずにオキサゾロン溶液を塗布した群をノーマル群として下式により計算する。
抑制率=(コントロール群の腫れ−試験薬物投与群の腫れ)x100/(コントロール群の腫れ−ノーマル群の腫れ)
3.マウスコラーゲン誘発関節炎に対する作用
マウスコラーゲン誘発関節炎に対する作用はThe Japanese Journal of Pharmacology, 88, 332 (2002)に記載の方法を用いて評価できる。
上記の各試験例以外にも、例えばImmunology, 98, 345 (1999)に記載のマウス喘息モデル、Journal of Investigative Dermatorogy, 111, 86 (1998)に記載のオキサゾロン誘発慢性接触性皮膚炎モデル(アトピー性皮膚炎モデル)等、抗炎症作用を評価するために一般的に用いられる各種評価モデルにより、本発明化合物の薬理作用を確認することができる。
【0028】
化合物(I)又はその塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮剤、経鼻剤あるいは吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、経口投与の場合、成人1日当たり0.001 mg/kg乃至100 mg/kg程度であり、これを1回で、あるいは2〜4回に分けて投与する。また、症状によって静脈投与される場合は、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至10 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。また、吸入の場合は、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至1 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、一つ又はそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性もしくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
【0029】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体、半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば、ラクトースや澱粉のような賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
また、本発明のキナゾリン誘導体又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物は、治療上有効な他の有効成分、例えば、β2アゴニスト、ステロイド剤、ロイコトリエン拮抗剤、抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤、疾患修飾性抗リウマチ剤(DMARDs)、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、サイトカイン産生阻害剤、サイトカイン拮抗剤等と適宜組み合わせて併用しても良い。これらと併用する場合は、同時に投与するための配合剤として、あるいは独立して投与するために組み合わされた別個の製剤として使用してもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づき本発明化合物(I)の製法を更に詳細に説明する。本発明下記実施例に記載の化合物の発明のみに限定されるものではない。また原料化合物の製法を参考例に示す。
【0031】
参考例1
2,4-ジクロロ-6,7-ジメトキシキナゾリンと4-クロロ-2-フルオロアニリンのエタノール溶液に1M塩酸水溶液を加え、3時間加熱還流した。生じた沈殿物をろ過し、減圧下乾燥して、2-クロロ-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン塩酸塩を得た。ESI-MS(M+H)+:368
参考例2
2,4-ジクロロ-6-フルオロキナゾリンと4-クロロアニリンをアセトニトリル中DIPEA存在下、70℃で16時間反応させ、4M塩化水素/酢酸エチル溶液で処理して、2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-6-フルオロキナゾリン-4-アミン塩酸塩を得た。FAB-MS(M+H)+:308
参考例3
2-クロロ-N-6,7-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン塩酸塩と無水ピペラジンをジオキサン中、一晩加熱還流下反応して、N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-6,7-ジメトキシ-2-ピペラジン-1-イルキナゾリン-4-アミンを得た。ESI-MS(M+H)+:418
参考例4
2-クロロ-N-6,7-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン塩酸塩と1,4-ジアゼパン-1-カルボン酸 t-ブチルをジオキサン中、DBU存在下、一晩加熱還流下反応して、4-{4-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4-ジアゼパン-1-カルボン酸 t-ブチルを得た。この化合物をトリフルオロ酢酸中、室温で1時間反応した後、4M塩化水素/酢酸エチル溶液により塩酸塩として、N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-(1,4-ジアゼパン-1-イル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン2塩酸塩を得た。FAB-MS(M+H)+:432
【0032】
参考例5
4-(クロロアセチル)ピペラジン-1-カルボン酸 t-ブチルとピロリジンをアセトニトリル中、炭酸セシウム存在下室温で反応して、4-(ピロリジン-1-イルアセチル)ピペラジン-1-カルボン酸 t-ブチルを得た。ESI-MS(M+H)+:298
参考例6
4-(ピロリジン-1-イルアセチル)ピペラジン-1-カルボン酸 t-ブチルをメタノール中、4M塩酸/酢酸エチル溶液で処理して、1-(ピロリジン-1-イルアセチル)ピペラジン2塩酸塩を得た。ESI-MS(M+H)+:198
参考例7
4-(クロロアセチル)ピペラジン-1-カルボン酸 t-ブチルと3-(ヒドロキシメチル)ピペリジンを用いて参考例5と同様の操作を行い、4-{[3-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル]アセチル}ピペラジン-1-カルボン酸 t-ブチルを得た。この化合物を用いて参考例6と同様の操作を行い、[1-(2-オキソ-2-ピペラジン-1-イルエチル)ピペリジン-3-イル]メタノール2塩酸塩を得た。ESI-MS(M+H)+:242
【0033】
実施例1
2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-6-フルオロキナゾリン-4-アミン塩酸塩 400 mg の1,2-ジエトキシエタン 10 ml 溶液に1-(ピロリジン-1-イルアセチル)ピペラジン2塩酸塩 350 mg 及びDBU 0.74 ml を加え110℃で 16 時間攪拌した。反応液の溶媒を留去して得られた残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-28%アンモニア水)で精製し、N-(4-クロロフェニル)-6-フルオロ-2-[4-(ピロリジン-1-イルアセチル)ピペラジン-1-イル]キナゾリン-4-アミン 220 mg を橙色無定形固体として得た。この化合物をメタノール 5 ml に溶解し、4M 塩化水素/酢酸エチル溶液 0.5 ml を加えて塩酸塩とした後、溶媒を留去した。得られた結晶をエタノール-アセトニトリルから再結晶してN-(4-クロロフェニル)-6-フルオロ-2-[4-(ピロリジン-1-イルアセチル)ピペラジン-1-イル]キナゾリン-4-アミン2塩酸塩 188 mg を淡橙色結晶として得た。
実施例2
N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-6,7-ジメトキシ-2-ピペラジン-1-イルキナゾリン-4-アミン 6.6 mg及びHOBt 2.6 mgのDMF 0.5 mL溶液に、3-ジメチルアミノプロピオン酸塩酸塩 3.1mgのNMP 0.04 mL溶液を加え、さらにPS-カルボジイミド (Arbonaut Technologies社製、1.35 mmol/g) 42 mgを加えた後、室温下1日攪拌した。反応液にPS-トリスアミン (Argonaut Technologies社製、4.36mmol/g) 55 mgとPS-イソシアネート (Argonaut Technologies社製、1.47mmol/g) 22 mg を加えた後、室温下2時間攪拌した。反応液を濾過して得られた溶液を、HPLC(カラム:シンメトリー[Symmetry、登録商標]、C18、5μM 19 x 100mm; 溶媒:MeOH / 0.1% HCOOH-H2O = 10/90 (0 min)- 10/90 (1 min)- 100/0 (9 min)-100/0 (12 min); 流速30 mL/min)にて分取精製を行い、N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-{4-[3-(ジメチルアミノ)プロパノイル]ピペラジン-1-イル}-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン 0.7 mgを得た。
【0034】
実施例3
N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-6,7-ジメトキシ-2-ピペラジン-1-イルキナゾリン-4-アミン 6.3 mg 及びBoc-L-β-ホモプロリン 3.4 mgを用いて前述の実施例1と同様の操作を行なって、(2S)-2-[2-(4-{4-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}ピペラジン-1-イル)-2-オキソエチル]ピロリジン-1-カルボン酸 t-ブチルを得た。この化合物の1,4-ジオキサン 0.2 mLに溶解し、4M HCl / 1,4-ジオキサン溶液 0.2 mLを加え、室温下時間攪拌した。反応液の溶媒を留去して得られた残渣を、HPLC(カラム:シンメトリー[Symmetry、登録商標]、C18、5μM 19 x 100mm; 溶媒:MeOH / 0.1% HCOOH-H2O = 10/90 (0 min)- 10/90 (1 min)- 100/0 (9 min)-100/0 (12 min); 流速30 mL/min)にて分取精製を行い、N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-6,7-ジメトキシ-2-{4-[(2S)-ピロリジン-2-イルアセチル]ピペラジン-1-イル}キナゾリン-4-アミン 2.7 mgを得た。
実施例4
N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-(1,4-ジアゼパン-1-イル)-6,7-ジメトキシキナゾリン-4-アミン2塩酸塩505 mgのDMF 10 ml 溶液に(S)-[1-(tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン-2-イル]酢酸 343mg、WSC塩酸塩 290 mg、HOBt 135mgおよびトリエチルアミン 0.28ml を加え室温で 16 時間攪拌した。反応液の溶媒を留去して得られた残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-28%アンモニア水)で精製し、(S)-2-[2-(4-{4-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-6,7-ジメトキシキナゾリン-2-イル}-1,4-ジアゼパン-1-イル)-2-オキソエチル]ピロリジン-1-カルボン酸 t-ブチル 220 mg を淡黄色結晶として得た。この化合物をエタノール 5 ml に溶解し、氷冷下4M 塩化水素/酢酸エチル溶液 1 ml を加え、室温で1時間攪拌した。溶媒を留去し得られた結晶をエタノール-ジエチルエーテルから再結晶して(S)-N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-6,7-ジメトキシ-2-[4-(ピロリジン-2-イルアセチル)-1,4-ジアゼパン-1-イル]キナゾリン-4-アミン2塩酸塩 126 mg を淡黄色結晶として得た。
【0035】
実施例1〜4の方法と同様にして後記表表1〜5に示す実施例5〜119の化合物を、それぞれ対応する原料を使用して製造した。
実施例1〜119の化合物の構造及び物理化学的データを表1〜5に示す。また、表6〜7に本発明の別の化合物の構造を示す。これらは、上記の製造法や実施例に記載の方法及び当業者にとって自明である方法、又はこれらの変法を用いることにより、容易に合成することができる。
また、後記表中以下の略号を用いる。Ex:実施例番号、No:化合物番号、Dat:物理化学的データ(F:FAB-MS(M+H)+、ES:ESI-MS(M+H)+、NMR:DMSO-d6中の1H NMRにおける特徴的なピークのδ(ppm)、H:HPLCでの保持時間(分)[HPLC条件:Wakosil-II 5C18 AR 5μM 2.0 x 30mm、MeOH / 5mM CF3CO2H-H2O = 10/90 (0min) -100/0 (4.0min) - 100/0 (4.5min)、 流速1.2 mL/min、254 nm、35.0℃])、Sal:塩及び含有溶媒(HCl:塩酸塩、無記載:フリー体、成分の前の数字は例えば2HClは2塩酸塩を示す)、Str:構造式、syn:製造法(数字は同様に製造した実施例番号を示す)、Me:メチル、Et:エチル、Pr:プロピル、iPr:2-プロピル、Bu:ブチル、tBu:tert-ブチル、Ph:フェニル、Ac:アセチル、2Py:2-ピリジル、3Py:3-ピリジル、4Py:4-ピリジル、Ms:メタンスルホニル、Boc:t-ブトキシカルボニル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、Ac:アセチル、cbz:ベンジルオキシカルボニル。
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示されるキナゾリン誘導体又はその塩。
【化1】

(式中の記号は以下の意味を示す。
R1:-R0、-OH、-OR0、ハロゲン、ハロゲノ置換低級アルキル、-CN、-O-(ハロゲノ置換低級アルキル)、-R00-OH、-SR0、-SO2-R0、-NO2、-NR9(R10)、
R0:低級アルキル、
R00:低級アルキレン、
m:0、1又は2、
A:置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよい単環式シクロアルキル、
R2及びR3:同一又は互いに異なって、H又は-R0
n:1又は2、
X:結合又は低級アルキレン、
【化2】

Het:単環もしくは二環式含窒素へテロ環基、
R4:-R0、ハロゲン、ハロゲノ置換低級アルキル、-Y-OH、-Y-O-R0、-Y-NR9(R10)、-Y-CO2H、-Y-CO2-R0、-Y-CN、-Y-O-CO-R0、-Y-NR11-CO-R0、-Y-CO-NR9(R10)、-CO-R0、-O-(ハロゲノ置換低級アルキル)、-Y-S-R0、-Y-SO2-R0、-Y-NR11-CO-NR9(R10)、-Y-O-CO-NR9(R10)、-Y-NR11-CO2-R0、-Y-SO2-NR9(R10)、 -Y-NR11-SO2-R0、-Z-置換されていてもよいフェニル又は-Z-置換されていてもよい単環式ヘテロアリール、
R9、R10及びR11:同一又は互いに異なって、H又は-R0
Y:結合又は-R00-、
Z:結合、-R00-、-O-、-O-R00-、-S-、-S-R00-、-SO2-、-NR11-、-NR11-R00-、-NR11-CO-、-NR11-CO-R00-、-NR11-CO2-R00-、-O-CO-、-NR11-CO-NR9-、-NR11-SO2-又は-SO2-NR11-、
k:0、1、2又は3、
R5及びR6:同一又は互いに異なって、H、-R0、ハロゲノ置換低級アルキル、シクロアルキル、-CO2H、-CO2-R0、-CN、-R00-OH、-R00-O-R0、-R00-CO-NR9(R10)、-R00-CN、-R00-NR9(R10)、置換されていてもよいフェニル、-R00-置換されていてもよいフェニル、-R00-O-R00-置換されていてもよいフェニル、-R00-CO2-置換されていてもよいフェニル、-R00-CO2-R00-置換されていてもよいフェニル、又は置換されていてもよい単環式ヘテロアリール、
R7及びR8:同一又は互いに異なって、H又は-R0。)

【公開番号】特開2007−269629(P2007−269629A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183086(P2004−183086)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】