説明

キナーゼ阻害剤である2−ヘテロアリールアミノ−ピリミジン誘導体

本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤として有用な式(1)


の化合物およびその医薬組成物、ならびに異常なまたは脱制御されたキナーゼ活性に関連した状態を処置し、改善しまたは予防するためにかかる化合物を使用する方法に関する。ある態様において、本発明は、c−kit、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Abl、BCR−Abl、CSK、JNK1、JNK2、p38、p70S6K、TGFβ、SRC、EGFR、trkB、FGFR3、Fes、Lck、Syk、RAF、MKK4、MKK6、SAPK2β、BRK、Fms、KDR、c−rafまたはb−rafキナーゼの異常な活性が関与する疾患または障害を処置し、改善しまたは予防するためにかかる化合物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年8月22日に出願した米国仮出願第60/957,240号についての優先権の利益を主張する。この出願の全開示は、その全体において、あらゆる目的のために、参照により本明細書に包含される。
【0002】
技術分野
本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤および当該化合物を使用する方法に関する。特に本発明は、c−kitおよびPDGFR阻害剤、ならびにc−kitおよびPDGFR介在性障害の処置および予防のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
プロテインキナーゼは広範な細胞プロセスの制御および細胞機能の制御の維持に中心的な役割を有する大きなタンパク質群である。これらのキナーゼの部分的な、非限定的な例は:受容体チロシンキナーゼ、例えば血小板由来増殖因子受容体キナーゼ(PDGFR)、幹細胞因子受容体キナーゼ、c−kit、神経増殖因子受容体、trkBおよび線維芽細胞増殖因子受容体、FGFR3;非受容体チロシンキナーゼ、例えばAblおよび融合キナーゼBCR−Abl、Fes、LckおよびSyk;ならびにセリン/スレオニンキナーゼ、例えばb−RAF、MAPキナーゼ(例えばMKK6)およびSAPK2βを含む。異常なキナーゼ活性は、良性および悪性増殖性疾患ならびに免疫系および神経系の不適切な活性化に由来する疾患を含む多様な疾患状態において観察される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤として有用な化合物およびその医薬組成物を提供する。
【0005】
一つの局面において、本発明は式(1)
【化1】

〔式中、
1〜4個のX、X、X、X、XおよびXはNであり、他のものはCRであり、環Eは炭素原子を介してNR、RおよびRと結合しており;
Arは所望により置換された5〜6員アリールまたはヘテロアリールである。ただし、Arはイミダゾリルではない;
およびRは独立して、それぞれ所望により、ハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;ハロ、シアノ、ニトロ、(CROR、(CRO(CR1−4、(CRSR、(CRNR10、(CRC(O)O0−1、OC(O)R、(CRC(S)R、(CRC(O)NR10、(CRC(O)NR(CR0−6C(O)O0−1、(CRNRC(O)O0−1、(CRS(O)1−2NR10、(CRS(O)1−2、(CRNRS(O)1−2または(CR;または何れか2個の隣接するR基はそれらが結合している原子と一体となって、所望により置換された5〜8員炭素環式、ヘテロ環式、アリールまたはヘテロアリール環を形成してもよく;
は−L−NR、−X−NR−C(O)Rまたは−X−NR−C(O)NRであり、ここでLは−X−C(O)、−X−OC(O)、−SO0−2(CR、(CR1−4、−O(CR1−4または
【化2】

であり;Xは(CRまたは[C(R)(CROR)]であり;
、R、RおよびR10は独立してH;それぞれ所望によりハロ、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシルまたはRで置換されていてもよい、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;(CRCN、(CR1−6NR、(CR1−6OR、(CRC(O)O0−1、(CRC(O)NRまたは(CR−Rであり;
は所望により置換されたC3−7シクロアルキル、C6−10アリールまたは5〜10員ヘテロアリールまたは5〜7員ヘテロ環式環であり;
およびRは独立して、(CR−Rまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシルもしくはRで置換されていてもよい、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;またはRはHであり;
あるいは、それぞれのNRにおいてRとRはNと一体となって、それぞれのNRにおいてRとRはNと一体となってまたはそれぞれのNR10においてRとR10はNと一体となって、1〜3個のR11基で置換されていてもよく、所望によりNR12、O、S、=Oまたは二重結合を含んでいてもよい4〜7員ヘテロ環式環を形成してもよく;
11はR、(CR−OR、CO、(CR−C(O)−(CR−R、(CRC(O)NR、(CRC(O)NR(CR0−6C(O)O0−1、(CRNRC(O)O0−1、(CRS(O)1−2NR、(CRS(O)1−2または(CRNRS(O)1−2であり;
12はH、R、−(CR1−4CO、(CR−C(O)−(CR−R、(CRC(O)NR、(CRC(O)NR(CR0−6C(O)O0−1、(CR1−4NRC(O)O0−1、(CRS(O)1−2NR、(CRS(O)1−2または(CRNRS(O)1−2であり;
それぞれのRはHまたはC1−6アルキルであり;
それぞれのkは0〜6であり;
jおよびmは独立して0〜4である;
ただし、Arがフェニルであり、そしてXが(CRであるとき、−X−NR−C(O)RのRはフェニルではない〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0006】
ある例において、上記式(1)の環Eはピリジニルである。他の例において、Arはフェニルである。さらに別の例において、Rは存在するとき、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシまたはCOであり、RはHまたはC1−6アルキルである。他の例において、Rは−L−NR、−X−NR−C(O)Rまたは−X−NR−C(O)NRであり;Lは−X−C(O)であり;Xは(CRであり;jは0である。
【0007】
一つの態様において、本発明は式(2A)、(2B)および(2C):
【化3】

〔式中、RはC1−6アルコキシまたは1〜6個のフッ素原子を有するハロアルキルであり;
は存在するとき、C1−6アルキルであり;
は−L−NR、−X−NR−C(O)Rまたは−X−NR−C(O)NRであり;
Lは−X−C(O)であり;
Xは(CRであり;
およびRは独立して、H;それぞれ所望によりハロ、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシルまたはRで置換されていてもよい、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはRとRはNと一体となって、それぞれ所望により=Oまたは1〜2個のR11基で置換されていてもよい、ピペラジニル、ピロリジニルまたはピペリジニルを形成し;
jは0であり;
kは0〜4であり;
mは0〜1であり;
R、R、RおよびR11は式(1)で定義のとおりである〕
の化合物を提供する。
【0008】
上記式(1)、(2A)、(2B)および(2C)のRはC1−6アルコキシまたは1〜6個のフッ素原子を有するハロアルキルであってよい。例えば、RはOCH、OCHF、OCF、OCHCF、OCFCHまたはOCHCFであってよい。
【0009】
上記式(1)、(2A)、(2B)および(2C)のR
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

から成る群から選択される。
【0010】
別の例において、上記式(1)、(2A)、(2B)および(2C)のR
【化10】

〔Rは−NH、−NEtおよび−NH(CH1−6OHから選択される〕
から成る群から選択される。
【0011】
さらに別の例において、上記式(1)、(2A)、(2B)および(2C)のRは、
【化11】

から成る群から選択される。
【0012】
別の局面において、本発明は、式(1)、(2A)、(2B)または(2C)の化合物と薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
さらに別の局面において、本発明は、キナーゼ活性を調節する方法であって、それを必要とする系または対象に治療上有効量の式(1)、(2A)、(2B)または(2C)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を投与してキナーゼ活性を調節することを含む方法を提供する。
【0014】
一つの態様において、本発明は、c−kit、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Abl、BCR−Abl、CSK、JNK1、JNK2、p38、p70S6K、TGFβ、SRC、EGFR、trkB、FGFR3、Fes、Lck、Syk、RAF、MKK4、MKK6、SAPK2β、BRK、Fms、KDR、c−rafまたはb−rafキナーゼを調節する方法を提供する。具体的な態様において、本発明は、c−kit、PDGFRαまたはPDGFRβを調節する方法を提供し;より具体的には、本発明は式(1)、(2A)、(2B)または(2C)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物がインビトロまたはインビボでc−kit、PDGFRαまたはPDGFRβと直接接触することができる方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、キナーゼ活性の調節が疾患または状態の病理および/または症状を予防、阻害または改善し得る疾患または状態を処置する方法であって、対象に、所望により第2の治療薬物との組合せで、治療上有効量の式(1)、(2A)、(2B)または(2C)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を投与することを含む方法。本発明の化合物と組み合わせて使用することができる治療薬物の例は、抗線維症剤、ピルフェニドン、タクロリムス、抗炎症剤、コルチコステロイド、クロモリン、ロイコトリエンアンタゴニスト、IgEブロッカー、気管支拡張剤、β−アゴニスト、キサンチン、抗コリン剤または化学療法剤を含むが、これらに限定されない。第2の治療薬物と共に投与するとき、式(1)、(2A)、(2B)または(2C)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物は、第2の治療薬物の前に、それと同時にまたはその後に投与することができる。
【0016】
一つの態様において、本発明は、c−kit、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Abl、BCR−Abl、CSK、JNK1、JNK2、p38、p70S6K、TGFβ、SRC、EGFR、trkB、FGFR3、Fes、Lck、Syk、RAF、MKK4、MKK6、SAPK2β、BRK、Fms、KDR、c−rafまたはb−rafキナーゼによって調節される疾患または状態を処置する方法を提供する。具体的な例において、本発明は、PDGFRα、PDGFRβまたはc−kitによって調節される疾患または状態を処置する方法を提供する。ある態様において、本発明は、c−kitによって調節される疾患または状態を処置する方法を提供する。
【0017】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができるキナーゼ介在性疾患または状態の例は、マスト細胞関連疾患、アレルギー性障害、過敏性腸症候群(IBS)、線維症、腫瘍性疾患、炎症性障害、自己免疫障害、移植片対宿主病、代謝症候群、CNS関連障害、神経変性障害、疼痛状態、薬物乱用障害、がん、心臓血管疾患およびプリオン病を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の化合物およびは組成物を用いて処置することができるマスト細胞関連疾患の例は、アレルギー性障害(喘息およびアトピー性皮膚炎を含む)、じんま疹、ざ瘡およびプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)ざ瘡、進行性骨化性線維形成異常症(FOP)、化学兵器または生物兵器(例えば炭疽菌および硫黄マスタード)への曝露によって誘導される炎症および組織破壊、嚢胞性線維症;腎疾患、炎症性筋障害、HIV、II型糖尿病、脳虚血、肥満細胞症、薬物依存および禁断症状、CNS障害、脱毛の予防および低減、細菌感染、間質性膀胱炎、炎症性腸症候群(例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、不確定大腸炎および感染性大腸炎)、腫瘍新血管形成、自己免疫疾患、炎症性疾患、多発性硬化症(MS)および骨量の減少を含むが、これらに限定されない。
【0019】
本発明の化合物およびは組成物を用いて処置することができるアレルギー性障害の例は、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、じんま疹、血管浮腫、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形性紅斑、皮膚壊死性細静脈炎、刺虫性皮膚炎症または吸血寄生虫感染症を含むが、これらに限定されない。
【0020】
過敏性腸症候群(IBS)は腹部疼痛および排便習慣の変化によって特徴付けられる機能的消化器障害である。疼痛は排便によって特徴的に軽減され、排便回数、便の硬さ、いきみもしくは緊急性の変化、残便感、粘液の排出または腹部膨満に関連している場合がある。
【0021】
線維症は、本明細書において使用するとき、特に腎臓、心臓、肺、肝臓、皮膚および関節を含む内臓器官における細胞外マトリックス成分の形成および堆積に関連したまたはそれらを伴うあらゆる状態を含む。本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる線維症の例は、強皮症、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、原発性肺高血圧(例えば、肺の動脈高血圧(PPAH))、肝線維症、腎線維症、心線維症、肝硬変、骨髄線維症、C型肝炎(HCV)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含むが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる新生物性障害の例は、肥満細胞症、消化器間質腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞性肺がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、骨髄異形性症候群、慢性骨髄性白血病、結直腸がん、胃がん、精巣がん、グリア芽腫および星状細胞腫を含むが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる炎症性障害の例は、リウマチ様関節炎、結膜炎、リウマチ様脊椎炎、骨関節炎および痛風性関節炎を含むが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる自己免疫障害の例は、多発性硬化症、乾癬、腸炎症性疾患、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、リウマチ性関節炎、多発性関節炎、局所または全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、皮膚狼瘡、皮膚筋炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、結節性汎動脈炎、自己免疫性腸症および増殖性糸球体腎炎を含むが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる移植片対宿主病の例は、臓器移植片拒絶、例えば腎移植、膵移植、肝移植、心移植、肺移植および骨髄移植を含むが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる代謝症候群の例は、I型糖尿病、II型糖尿病および肥満を含むが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができるCNS関連障害の例は、鬱病、気分変調性障害、気分循環性障害、食欲不振、過食症、月経前症候群、閉経後症候群、精神機能低下、集中力の低下、悲観的不安、興奮、自己非難および性欲減退、不安障害、精神障害および統合失調症を含むが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる鬱状態の例は、双極性鬱病、憂鬱病またはメランコリー型鬱病、非典型的鬱病、難治性鬱病および季節性鬱病を含むが、これらに限定されない。本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる不安障害の例は、過呼吸および心臓不整脈に関連した不安、恐怖症障害、強迫神経症、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害および全般性不安障害を含むが、これらに限定されない。本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる精神障害の例は、精神病を含むパニック発作、妄想性障害、転換性障害、恐怖症、躁病、せん妄、解離性エピソード、例えば解離性健忘、解離性遁走および解離性自殺行動、自己無視、暴力または攻撃的行動、トラウマ、境界性人格および急性精神病、例えば、妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症および鑑別不能型統合失調症を含む統合失調症を含むが、これらに限定されない。
【0029】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる神経変性障害の例は、骨関節炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含むが、これらに限定されない。
【0030】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる疼痛状態の例は、急性疼痛、術後疼痛、慢性疼痛、侵害受容疼痛、がん疼痛、神経因性疼痛および心因性疼痛症候群を含むが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる薬物使用の例は、薬物中毒、薬物乱用、薬物嗜癖、薬物依存、禁断症状および過剰投与を含むが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができるがんの例は、神経膠腫、黒色腫、消化器間質腫瘍(GIST)、小細胞肺がん、結直腸がんおよび他の固形腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の化合物および組成物を用いて処置することができる心臓血管疾患の例は、狭心症、心筋梗塞、鬱血性心不全、心筋障害、高血圧、動脈狭窄および静脈狭窄を含むが、これらに限定されない。
【0034】
より具体的には、本発明の化合物は、喘息、アトピー性皮膚炎、じんま疹、過敏性腸症候群(IBS)または強皮症、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、原発性肺高血圧(PPH)、原発性肺動脈高血圧(PPAH)、特発性動脈高血圧(IPAH)、肝線維症、腎線維症および心線維症を含むがこれらに限定されない線維症の処置および予防のために使用することができる。
【0035】
さらにまた、本発明は、c−kit、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Abl、BCR−Abl、CSK、JNK1、JNK2、p38、p70S6K、TGFβ、SRC、EGFR、trkB、FGFR3、Fes、Lck、Syk、RAF、MKK4、MKK6、SAPK2β、BRK、Fms、KDR、c−rafまたはb−rafキナーゼによって調節される疾患または状態の処置用医薬の製造のための;より具体的には、PDGFRα、PDGFRβまたはc−kitによって調節される疾患または状態の処置用医薬の製造のための、所望により第2の治療薬物との組み合わせにおける、式(1)、(2A)、(2B)または(2C)の化合物の使用を提供する。
【0036】
本発明の化合物を用いる上記方法において、式(1)、(2A)、(2B)または(2C)の化合物は細胞または組織を含む系に投与することができる。他の態様において、式(1)、(2A)、(2B)または(2C)の化合物はヒトまたは動物対象に投与することができる。
【0037】
定義
基またはハロ置換アルキルおよびアルコキシのような他の基の構造要素としての「アルキル」は、直鎖または分枝鎖の何れかであってよい。所望により置換されたアルキル、アルケニルまたはアルキニルは、本明細書において使用するとき、所望によりハロゲン化されていてよく(例えばCF)、あるいはNR、OまたはSのようなヘテロ原子で1個以上の炭素原子が置換または置き換えられていてもよい(例えば−OCHCHO−、アルキルチオール、チオアルコキシ、アルキルアミン等)。
【0038】
「アリール」は、炭素原子を含む単環式または縮合二環式芳香環集合体を意味する。例えばアリールはフェニルまたはナフチルであってよい。「アリーレン」は、アリール基に由来する二価基を意味する。
【0039】
「ヘテロアリール」は、本明細書において使用するとき、1個以上の環員がヘテロ原子であるが、上記アリールについて定義のとおりであり、ここでRは水素、C1−4アルキルまたは窒素保護基である。ヘテロアリールの例は、ピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、イミダゾリル、ベンゾ−イミダゾリル、ピリミジニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、チエニル等を含むがこれらに限定されない。
【0040】
「炭素環式環」は、本明細書において使用するとき、炭素原子を含む飽和または部分不飽和、単環式、縮合二環式または架橋多環式環を意味し、これは所望により、例えば=Oで置換されていてもよい。炭素環式環の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピレン、シクロヘキサノン等を含むが、これらに限定されない。
【0041】
「ヘテロ環式環」は、本明細書において使用するとき、1個以上の環炭素がヘテロ原子であるが、上記炭素環式環について定義のとおりである。例えば、ヘテロ環式環はN、O、S、−N=、−S−、−S(O)、−S(O)−または−NR−(ここで、Rは水素、C1−4アルキルまたは保護基であり得る)を含んでいてもよい。ヘテロ環式環の例は、モルホリノ、ピロリジニル、ピロリジニル−2−オン、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニロン、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デシ−8−イル等を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書において使用するとき、何れかの置換基におけるH原子(例えばCH)は、あらゆる好適な同位体変化、例えばH、HおよびHを含む。
【0043】
特に定めのない限り、置換基が所望により置換されていてもよいと見なされているとき、これは該置換基が例えば所望によりハロゲン化されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアミン、アルキルチオ、アルキニル、アミド、モノおよびジ置換アミノ基を含むアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、カルボニル、炭素環式、シアノ、シクロアルキル、ハロゲン、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロ環式、ヒドロキシ、イソシアネート、イソチオシアネート、メルカプト、ニトロ、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ペルハロアルキル、ペルフルオロアルキル、シリル、スルホニル、チオカルボニル、チオシアネート、トリハロメタンスルホニルおよびそれらの保護化合物からそれぞれ独立して選択される1個以上の基で置換されていもよい基であることを意味する。上記置換基の保護化合物を形成することができる保護基は当業者に既知であり、文献、例えばGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999およびKocienski, Protective Groups, Thieme Verlag, New York, NY, 1994に記載されている(これらは、その全体を参照により本明細書に包含される)。
【0044】
「共投与」または「組合せ投与」などの用語は、本明細書において使用するとき、選択した治療薬物を1人の患者に投与することを意味しており、薬物を必ずしも同じ投与経路または同時に投与することのない処置レジメンを含むことを意図する。
【0045】
用語「医薬組合せ剤」は、本明細書において使用するとき、1種以上の有効成分の混合または組合せによって得られる製品を意味しており、有効成分の固定された組合せ剤および固定されていない組合せ剤のいずれをも含む。用語「固定された組合せ剤」は、有効成分、例えば式(1)の化合物と共薬物が共に、同時に、1個の物または投与形で患者に投与されることを意味する。用語「固定されていない組合せ剤」は、有効成分、例えば式(1)の化合物と共薬物を、いずれも1人の患者に、別々の物として、同時に、同時一体的にまたは逐次的に、特に時間の限定なく、かかる投与によって患者の体内で2種の化合物の治療上有効濃度が得られるように投与することを意味する。後者はまた、カクテルセラピー、例えば3種以上の有効成分の投与に適用する。
【0046】
用語「治療上有効量」は、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって求められる、細胞、組織、臓器、系、動物またはヒトにおいて生物学的または医学的応答を誘発する対象化合物の量を意味する。
【0047】
用語対象化合物の「投与」または「投与する」は、本発明の化合物またはそのプロドラッグを処置を必要としている対象に与えることを意味する。
【0048】
特に定めの無い限り、本発明において、c−kit、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Abl、BCR−Abl、CSK、JNK1、JNK2、p38、p70S6K、TGFβ、SRC、EGFR、trkB、FGFR3、Fes、Lck、Syk、RAF、MKK4、MKK6、SAPK2β、BRK、Fms、KDR、c−rafおよびb−rafから選択されるキナーゼは、野生型および変異型(すなわち野生型配列から1個または複数個のアミノ酸変化を有する)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
発明を実施する形態
本発明はプロテインキナーゼ阻害剤として有用な化合物およびその医薬組成物を提供する。
【0050】
一つの局面において、本発明は式(1)
【化12】

〔式中、
1〜4個のX、X、X、X、XおよびXはNであり、他のものはCRであり、環Eは炭素原子を介してNR、RおよびRと結合しており;
Arは所望により置換された5〜6員アリールまたはヘテロアリールである。ただし、Arはイミダゾリルではない;
およびRは独立して、それぞれ所望により、ハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;ハロ、シアノ、ニトロ、(CROR、(CRO(CR1−4、(CRSR、(CRNR10、(CRC(O)O0−1、OC(O)R、(CRC(S)R、(CRC(O)NR10、(CRC(O)NR(CR0−6C(O)O0−1、(CRNRC(O)O0−1、(CRS(O)1−2NR10、(CRS(O)1−2、(CRNRS(O)1−2または(CR;または何れか2個の隣接するR基はそれらが結合している原子と一体となって、所望により置換された5〜8員炭素環式、ヘテロ環式、アリールまたはヘテロアリール環を形成してもよく;
は−L−NR、−X−NR−C(O)Rまたは−X−NR−C(O)NRであり、ここでLは−X−C(O)、−X−OC(O)、−SO0−2(CR、(CR1−4、−O(CR1−4または
【化13】

であり;Xは(CRまたは[C(R)(CROR)]であり;
、R、RおよびR10は独立してH;それぞれ所望によりハロ、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシルまたはRで置換されていてもよい、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;(CRCN、(CR1−6NR、(CR1−6OR、(CRC(O)O0−1、(CRC(O)NRまたは(CR−Rであり;
は所望により置換されたC3−7シクロアルキル、C6−10アリールまたは5〜10員ヘテロアリールまたは5〜7員ヘテロ環式環であり;
およびRは独立して、(CR−Rまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシルもしくはRで置換されていてもよい、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;またはRはHであり;
あるいは、それぞれのNRにおいてRとRはNと一体となって、それぞれのNRにおいてRとRはNと一体となってまたはそれぞれのNR10においてRとR10はNと一体となって、1〜3個のR11基で置換されていてもよく、所望によりNR12、O、S、=Oまたは二重結合を含んでいてもよい4〜7員ヘテロ環式環を形成してもよく;
11はR、(CR−OR、CO、(CR−C(O)−(CR−R、(CRC(O)NR、(CRC(O)NR(CR0−6C(O)O0−1、(CRNRC(O)O0−1、(CRS(O)1−2NR、(CRS(O)1−2または(CRNRS(O)1−2であり;
12はH、R、−(CR1−4CO、(CR−C(O)−(CR−R、(CRC(O)NR、(CRC(O)NR(CR0−6C(O)O0−1、(CR1−4NRC(O)O0−1、(CRS(O)1−2NR、(CRS(O)1−2または(CRNRS(O)1−2であり;
それぞれのRはHまたはC1−6アルキルであり;
それぞれのkは0〜6であり;
jおよびmは独立して0〜4である;
ただし、Arがフェニルであり、そしてXが(CRであるとき、−X−NR−C(O)RのRはフェニルではない〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0051】
一つの態様において、本発明は式(2A)、(2B)または(2C):
【化14】

〔式中、RはC1−6アルコキシまたは1〜6個のフッ素原子を有するハロアルキルであり;
は存在するとき、C1−6アルキルであり;
は−L−NR、−X−NR−C(O)Rまたは−X−NR−C(O)NRであり;
Lは−X−C(O)であり;
Xは(CRであり;
およびRは独立して、H;それぞれ所望によりハロ、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシルまたはRで置換されていてもよい、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはRとRはNと一体となって、それぞれ所望により=Oまたは1〜2個のR11基で置換されていてもよい、ピペラジニル、ピロリジニルまたはピペリジニルを形成し;
jは0であり;
kは0〜4であり;
mは0〜1であり;
R、R、RおよびR11は式(1)で定義のとおりである〕
の化合物を提供する。
【0052】
上記式それぞれにおいて、何れかの不斉炭素原子は(R)−、(S)−または(R,S)−立体配置で存在していてもよい。したがって本化合物は、異性体の混合物または純粋な異性体、例えば純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在していてもよい。さらに本発明は、本発明の化合物の可能な互変異性体を含む。
【0053】
本発明はまた、本発明の化合物の全ての好適な同位体置換体またはその薬学的に許容される塩を含む。本発明の化合物の同位体置換体またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも1個の原子が同一の原子数であるが天然で通常見られる原子質量とは異なる原子質量を有する原子で置換されているものと定義される。本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩に導入され得る同位体の例は、水素、炭素、窒素および酸素の同位体、例えばH、H、11C、13C、14C、15N、17O、18O、35S、18F、36Clおよび123Iを含むがこれらに限定されない。ある本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩の同位体置換体、例えばHまたは14Cのような放射性同位体が導入されているものは、薬物および/または基質組織分布試験において有用である。
【0054】
具体的な例において、Hおよび14C同位体は製造および検出が容易であるために使用され得る。他の例において、Hのような同位体置換によって、より大きな代謝安定性からもたらされるある治療利益、例えば上昇したインビボ半減期または減少した必要用量を得ることができる。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の同位体置換体は、一般に、好適な適切な同位体置換体の反応剤を用いた常套の方法によって製造することができる。本化合物の同位体置換体は、化合物の代謝速度を変化させ、そして/または疎水性等のような物理的特性をわずかに変化させる能力を有する。同位体置換体は効果および安全性を向上させ、生物学的利用能および半減期を上昇させ、タンパク質結合能を変化させ、生体内分布を変化させ、活性代謝産物の割合を増加させ、そして/または反応性もしくは毒性代謝産物の形成を減少させる能力を有する。
【0055】
上記式のそれぞれにおいて、それぞれ所望により置換されていてもよい基は、それぞれ所望によりハロゲン化されていてもよいか、あるいは所望によりN、S、Oで置換または置き換えられていてもよい炭素を有するC1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC3−6アルキニルまたはそれらの組合せ(例えばヒドロキシルC−Cアルキル、C−CアルコキシC−Cアルキル);ハロ、アミノ、アミジノ、C1−6アルコキシ;ヒドロキシル、メチレンジオキシ、カルボキシ;C1−8アルキルカルボニル、C1−8アルコキシカルボニル、カルバモイル、C1−8アルキルカルバモイル、スルファモイル、シアノ、オキソ、ニトロまたは所望により置換された炭素環式環、ヘテロ環式環、上記アリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい。
【0056】
遊離形または薬学的に許容される塩形の式(1)、(2A)、(2B)または(2C)の化合物は、例えば本明細書に記載のインビトロ試験によって示されるとおり、有用な薬理学的特性を示し得る。これらの試験におけるIC50値は、阻害剤なしの対照を用いて得たものよりも50%低い細胞数が得られる試験化合物の濃度として与えられる。一般に、本発明の化合物は1nM〜10μMのIC50値を有する。ある例において、本発明の化合物は0.01μM〜5μMのIC50値を有する。他の例において、本発明の化合物は0.01μM〜1μM、より具体的には1nM〜1μMのIC50値を有する。さらに別の例において、本発明の化合物は1nM未満または10μM以上のIC50値を有する。本発明の化合物は、次のキナーゼ:c−kit、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Abl、BCR−Abl、CSK、JNK1、JNK2、p38、p70S6K、TGFβ、SRC、EGFR、trkB、FGFR3、Fes、Lck、Syk、RAF、MKK4、MKK6、SAPK2β、BRK、Fms、KDR、c−rafまたはb−rafキナーゼに対して、10μMで50%以上、または他の態様において約70%以上の阻害率を示し得る。
【0057】
本発明の化合物はまた、c−kit、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Abl、BCR−Abl、CSK、JNK1、JNK2、p38、p70S6K、TGFβ、SRC、EGFR、trkB、FGFR3、Fes、Lck、Syk、RAF、MKK4、MKK6、SAPK2β、BRK、Fms、KDR、c−rafまたはb−rafキナーゼによって介在される疾患のようなキナーゼ介在性状態または疾患の処置に使用してもよい。
より具体的には、本発明の化合物は喘息、アトピー性皮膚炎、じんま疹、過敏性腸症候群(IBS)または強皮症、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、原発性肺高血圧(PPH)、原発性肺動脈高血圧(PPAH)、特発性動脈高血圧(IPAH)、肝線維症、腎線維症および心線維症を含むがこれらに限定されない線維症の処置および予防のために使用することができる。
【0058】
薬理および有用性
本発明の化合物は、キナーゼパネル(野生型および/またはその変異型)に対してスクリーニングされ、少なくとも1種のパネルキナーゼパネルメンバーの活性を調節することができる。そのため、本発明の化合物は、キナーゼが疾患の病理および/または症状に寄与する疾患または障害の処置に有用であり得る。本明細書に記載の化合物および組成物によって阻害することができるかまたは本明細書に記載の方法が有用であり得るキナーゼの例は、c−kit、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Abl、BCR−Abl、CSK、JNK1、JNK2、p38、p70S6K、TGFβ、SRC、EGFR、trkB、FGFR3、Fes、Lck、Syk、RAF、MKK4、MKK6、SAPK2β、BRK、Fms、KDR、c−rafまたはb−rafキナーゼを含むが、これらに限定されない。
【0059】
c−Kit
マスト細胞はCD34細胞、c−kitおよびCD13抗原を発現する造血幹細胞の特定のサブセットに由来する組織要素である。マスト細胞はそれらの組織部位および構造のみならず、機能的および組織学的レベルでの多様性によって特徴付けられる。幼若マスト細胞前駆体は血流中で循環し、多様な組織に分化する。これらの分化および増殖プロセスは、Kitリガンド、鉄因子またはマスト細胞増殖因子とも称される幹細胞因子(SCF)の重要な一つである、サイトカインの影響下にある。幹細胞因子受容体は、造血前駆細胞、マスト細胞、生殖細胞、カハール介在細胞(ICC)およびいくつかのヒト腫瘍において発現されるがん原遺伝子c−kitによってコードされ、非造血細胞によっても発現される。
【0060】
チロシンキナーゼは受容体タイプまたは非受容体タイプのタンパク質であり、ATPの末端リン酸基をタンパク質のチロシン残基に移動させて、シグナル伝達経路を活性化または不活性化する。幹細胞因子受容体c−kitは、SCF結合に応答して細胞増殖および増殖シグナル伝達を開始するタイプIII膜貫通受容体タンパク質チロシンキナーゼである。SCFによるc−kit受容体のライゲーションはその二量体化、次いでリン酸転移(transphorylation)を誘導して、多様な細胞質内基質の採用および活性化を導く。これらの活性化基質は細胞増殖および活性化に関与する複数の細胞内シグナル伝達経路を誘導する。これらのタンパク質は多様な細胞メカニズムに関与することが知られており、これが崩壊した場合には異常な細胞増殖および移動ならびに炎症のような障害を導く。本発明の化合物は、SCF受容体自己リン酸化およびMAPKキナーゼ(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)のSCF−刺激性活性化の阻害のような、SCFが関与する宇細胞プロセスを阻害することができる。
【0061】
c−kit受容体プロテインチロシンキナーゼの活性は正常細胞では制御されており、c−kit遺伝子産物の正常な機能活性が正常な造血、メラニン形成、配偶子形成ならびにマスト細胞の増殖および分化に重要である。正常な細胞生理学的活性における重要性に加えて、c−kitはある種のヒトがんの生物学的局面に関与しており、脱制御されたc−kitキナーゼ活性はヒトがんおよびある種の腫瘍タイプの病因に関係する。c−kitによって介在される腫瘍細胞の増殖は、リガンド非依存的活性化をもたらすc−kitポリペプチドの特異的変異または該受容体の自己分泌刺激によって生じ得る。前者の場合、SCF結合の非存在下でc−kitキナーゼ活性の構成的活性化を引き起こす変異が生殖細胞腫瘍、マスト細胞腫瘍、消化器間質腫瘍、小細胞肺がん、黒色腫、乳がん、急性骨髄性白血病、神経芽腫および肥満細胞症を含む悪性ヒトがんにおいて関与する。
【0062】
患者の組織に存在するマスト細胞は、自己免疫疾患(多発性硬化症、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患(IBD))、アレルギー性疾患、腫瘍血管形成、炎症性疾患および間質性膀胱炎のような疾患の発症に関与しまたは寄与する。アレルギー性疾患は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アナフィラキシー症候群、じんま疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、結節性紅斑、多形性紅斑、皮膚壊死性細静脈炎、刺虫性皮膚炎症および喘息を含むが、これらに限定されない。喘息は気流閉塞、気管支過反応性および気道炎症によって特徴付けられ、気管支喘息およびアレルギー性喘息を含む。
【0063】
これらの疾患において、マスト細胞は、ヒスタミン、中性プロテアーゼ、脂質由来メディエーター(プロスタグランジン、トロンボキサンおよびロイコトリエン)および多様なサイトカイン(IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、TNF−A、GM−CSF、MIP−LA、MIP−lb、MIP−2およびIFN−y)のような種々のプロテアーゼおよびメディエーターの混合物を放出することによって組織の破壊に関与している。マスト細胞活性化はアレルギー性メディエーター、プロテアーゼ、ケモカイン、例えばMCP−1およびRANTES、ロイコトリエン、プロスタグランジン、ニューロトロフィンの分泌、サイトカイン遺伝子転写(IL−4、IL−5、IL−6、IL−13、TNFAおよびGM−CSF)の誘導のような有害なエフェクター応答を誘導する。これらのメディエーターは内皮細胞、平滑筋細胞および線維芽細胞に対するならびに細胞外マトリックスに対するそれらの効果により、そして他の炎症性細胞を採用することにり、喘息表現型を作製することに寄与する。
【0064】
ヒト化抗IgEモノクローナル抗体処置によって示唆されたとおり、マスト細胞は喘息に関与している可能性がある。抗IgEモノクローナル抗体療法の原理は、IgEを特異的に標的にして遊離抗IgEを不活性化して、さらなるIgEの生産を停止させることである。さらに、IgE濃度がIgE受容体FceRIの発現レベルの主な制御因子であるため、この療法の一つの狙いはマスト細胞および好塩基球でのFceRI発現を低下させて、その結果これらの細胞が活性化される能力を減少させることである。FceRI発現を低下させる抗IgE療法の能力は、好塩基球で示されている。好塩基球でのFceRI発現の低下は、好塩基球の活性化によってメディエーターを分泌する能力の減少に関連している。
【0065】
c−kit阻害剤はまた、インシュリンが細胞によるグルコース取り込みを十分に促進せず、血中グルコース濃度が上昇したときに生じる慢性疾患であり、II型糖尿病としても知られるインスリン非依存性糖尿病(NLDDM)の処置において用いることができる。この疾患は世界中で約一億人が罹患しており、その75%は診断時に肥満である。長年にわたるグルコース取り込み制御の不全がII型糖尿病の発症を導き、血中グルコース濃度を医薬品で制御する必要がある。最終的には、制御されない血中グルコース濃度は血管、腎臓および目の損傷ならびに心臓血管疾患に関与する。この組織損傷は糖尿病患者の死亡率に寄与する。
【0066】
さらに、様々な刺激、例えばストレス、外傷、感染および神経伝達物質によるマスト細胞の活性化は、CNS障害を引き起こす化学的不均衡の増悪に関与し得る。より具体的には、マスト細胞脱顆粒はニューロテンシン、ソマトスタチン、サブスタンスPおよびアセチルコリンのような一般の神経伝達物質、増殖または生存因子、特にNGF、TGFβLによって刺激される。かかる刺激への応答に関与するマスト細胞は、脳マスト細胞であるが、最終的に感覚、運動または脳ニューロンに到達する血流中にそれらの顆粒の内容物を放出する他のマスト細胞であってもよい。脳マスト細胞染色はCTMC染色様であるが、それらはMMCの分泌パターンを示し、これはそれらが特異性提示マスト細胞の特定のサブセットを構成することを示唆している。
【0067】
マスト細胞活性化の後、放出された顆粒は神経伝達および神経生存を調節および変化することができる多様な因子を遊離する。鬱患者において遊離セロトニン濃度の増加が見られるため、これらの因子の中でもセロトニンが重要である。あるいはセロトニンの激発は疼痛および偏頭痛を導くセロトニン不足が続き得る。結果として、マスト細胞は自己分泌または傍分泌的方法で、神経伝達の脱制御を増悪させると考えられている。例えば、セロトニンのような神経伝達物質の不安またはストレス誘導性放出はマスト細胞を活性化し、これは次にそれらの顆粒内容物を放出して、さらにCNS障害を導く脳の化学的不均衡に寄与する。
【0068】
マスト細胞によって放出される他のメディエーターは、血管作用性、侵害性、前炎症性および他の神経伝達物質に分類することができる。総じてこれらの因子は、それらが感覚、運動またはCNSニューロンのいずれであっても、ニューロンの活性の大きなかく乱を誘導することができる。さらに、肥満細胞症を有する患者は正常集団よりもCNS障害を発症する傾向が強い。これは、マスト細胞の分解ならびに化学的不均衡および神経伝達物質変化に寄与する因子の激発を誘導する、c−kit受容体の活性化変異の存在によって説明することができる。
【0069】
いくつかの場合において、活性化マスト細胞はまた、3つのグループ:プレフォームド顆粒関連メディエーター(ヒスタミン、プロテオグリカンおよび中性プロテアーゼ)、脂質由来メディエーター(プロスタグランジン、トロンボキサンおよびロイコトリエン)および多様なサイトカイン(IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、TNF−A、GM−CSF、MIP−LA、MIP−lb、MIP−2およびIFN−y)に分類される多様なプロテアーゼおよびメディエーターの混合物を放出することによって、神経組織の破壊にも関与し得る。活性化マスト細胞によるメディエーター(TNF−A、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン等)およびプロテアーゼの遊離は、i)炎症および血管拡張を誘導することがあり、ii)神経組織破壊プロセスに関与することがある。c−kit活性の阻害は細胞増殖を低下させてマスト細胞関連疾患および/または状態を減少させるが、それによってc−kit依存性疾患および/または状態、例えばCNS障害の処置におけるc−kitの阻害剤の使用の役割が示唆される。
【0070】
マスト細胞はまた、薬物依存および禁断症状に関与しまたは寄与することが同定されている。薬物依存は、その完全な効果を維持するために薬物の用量を増加させる必要がある耐性と呼ばれる現象の結果および薬物への体の習慣化である身体依存の結果である。薬物の摂取を中断すると、個体は不快な禁断症状を経験することがある。
【0071】
サリチル酸誘導体、モルヒネ誘導体、オピオイド、ヘロイン、アンフェタミン、アルコール、ニコチン、鎮痛剤、麻酔薬および抗不安薬を含むがこれらに限定されない種々の薬物によるマスト細胞の活性化はマスト細胞の分解をもたらし、これは薬物嗜癖および禁断症状に関与する化学的不均衡の増悪に関与する。マスト細胞活性化の後、放出された顆粒は神経伝達物質を調節および変化することができる多様な因子を遊離する。かかる因子は、マスト細胞顆粒に結合または貯蔵されるモルヒネである。タバコ煙はまた、イヌマスト細胞由来からのメディエーターの放出を誘導し、喘息を導くプロスタグランジン生産を調節する。さらに、肥満細胞症を有する患者は正常集団よりも薬物使用障害を発症する傾向が強い。これは、マスト細胞の分解ならびに化学的不均衡および神経伝達物質変化に寄与する因子の激発を誘導する、c−kit受容体の活性化変異の存在によって説明することができる。
【0072】
現在、個人の薬物乱用障害からの離脱を軽減し、助けるために利用可能な処置は存在しない。c−kit阻害剤は、かかる薬物乱用障害、特に薬物中毒、薬物乱用、薬物嗜癖、薬物依存、禁断症状および過剰投与を処置(かかる処置を必要とするヒトにマスト細胞を減少させることができる化合物を投与することを含む)するために使用することができる。
【0073】
c−KitはPDGF受容体およびCSF−1受容体(c−Fms)と実質的な相同性を有する。多様な赤血球および骨髄細胞系の研究によって、分化の初期段階におけるc−Kit遺伝子の発現が示される(Andre et al., Oncogene 4 (1989), 1047-1049)。グリオブラストーマのようなある種の腫瘍は、c−Kit遺伝子の明らかな発現を同様に示す。
【0074】
PDGF(血小板由来増殖因子)
PDGF(血小板由来増殖因子)は、正常な増殖と病的細胞増殖の両方に深く関与している。本発明の化合物はPDGF受容体(PDGFR)活性を阻害することができ、強皮症および他の線維症、アテローム性動脈硬化症、血栓症または乾癬のような非悪性増殖性障害の処置用薬物として使用することができる。本発明の化合物はまた、例えば小細胞肺がん、神経膠腫、肉腫、前立腺がん、結腸がん、乳がんおよび卵巣がんにおける腫瘍阻害剤として使用することもできる。
【0075】
一つの態様において、本発明の化合物は線維性障害または疾患、腎臓、心臓、肺、肝臓、皮膚および関節を含む内臓器官における細胞外マトリックス成分の形成および堆積に関連したまたはそれらを伴う状態の処置および予防に使用することができる。多様な研究が組織損傷に対する線維性応答においてPDGFRが中心的な役割を有すると示唆している:例えば
i) PDGFは特発性肺線維症(IPF)を有する患者由来の歯槽マクロファージにおいてアップレギュレーションされている;
ii) PDGFRβは肝臓における線維症発症の中心的な段階である筋線維芽細胞となる肝星細胞の活性化後、アップレギュレーションされる最初の遺伝子の一つである;
iii) PDGFおよびその受容体は強皮症において顕著にアップレギュレーションされ、腎線維成長プロセスにおいてもアップレギュレーションされる;
iv) PDGFは損傷および/または前炎症性サイトカインによって、あるいは筋線維芽細胞の増殖、分化および移動を惹起する筋線維芽細胞での自己分泌的方法で誘導される。これらの筋線維芽細胞は次いで、外傷および進行的臓器損傷を導く細胞外マトリックスタンパク質およびコラーゲンを分泌する。TGFβ分泌はまた、線維成長におけるコラーゲンの生産に顕著に寄与する;
v) PDGF−Cトランス遺伝子はマウスにおいて肝線維症の発症を誘導するが、PDGFRβの可溶性優性阻害体はラットの肝線維症を予防する;
vi) 腎臓へのPDGF−Bの投与はラットにおける腎線維成長の兆候を促進した。
【0076】
本発明の化合物を用いて処置することができる線維性障害または疾患は、線維性肺疾患、例えば肺線維症(または間質性肺疾患または間質性肺線維症)、特発性肺線維症、原発性肺高血圧、特発性肺動脈高血圧、塵肺症の線維性要素(これは喫煙、アスベスト、綿ほこり、石粉、鉱物粉および他の粒子のような環境危機への曝露に関連している)、肺サルコイドーシス、線維化性肺胞炎、嚢胞性線維症の線維性または異常肥大要素、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群および肺気腫を含む。本発明の化合物はまた、腎臓(腎線維症)、肝臓(肝線維症)、心臓(心線維症)、前立腺(例えば良性前立腺肥大(BPH))、胸膜(例えば胸膜炎、胸膜線維症)、膵臓および皮膚および/または筋肉組織の線維性肥大の兆候を有する疾患、例えば強皮症、好酸球性筋膜炎、狼瘡に関連する円板状病変または円板状狼瘡または外科的癒着の処置および予防に使用することができる。
【0077】
本発明の化合物を用いて処置することができる他の線維性障害または疾患は、全身性硬化症、混合性結合組織疾患、線維形成異常症、線維嚢胞性疾患、サルコイドーシス、筋炎(例えば多発性筋炎、原発性特発性多発性筋炎、小児多発性筋炎、皮膚筋炎、小児皮膚筋炎、成人の原発性特発性皮膚筋炎、封入体筋炎、多発性筋炎または悪性腫瘍に関連した皮膚筋炎);線維性血管内膜肥大、例えば脈管炎(冠状動脈脈管炎を含む)、結節性多発動脈炎または側頭動脈炎の兆候を有する疾患;神経組織の線維性肥大、例えば脳硬化症、環形硬化症、広汎性硬化症および大葉性硬化症の兆候を有する疾患;および線維性肥大または腸壁の線維症の兆候を有する疾患、例えばクローン病を含む炎症性腸疾患を含むが、これらに限定されない。
【0078】
さらにまた、本発明の化合物は、例えば5−フルオロウラシルのような化学療法剤の血液毒性効果に対処するための幹細胞の保護に有用であり;また、喘息および過好酸球増加症の処置に有用であり得る。特に本発明の化合物は、PDGF受容体キナーゼの阻害に応答する疾患の処置に使用することができる。
【0079】
本発明の化合物はまた、臓器移植、例えば同種移植の結果として生じる障害、特に組織拒絶、例えば閉塞性細気管支炎(OB)、すなわち同種肺移植の慢性拒絶の処置に有用な効果を示し得る。OBを有さない患者とは逆に、OBを有する患者はしばしば気管支肺胞洗浄液に高いPDGF濃度を示す。
【0080】
本発明の化合物はまた、血管平滑筋細胞移動および増殖(PDGFおよびPDGFRもしばしば関与する)に関連した疾患、例えば再狭窄およびアテローム性動脈硬化症に対して有効であり得る。インビトロおよびインビボでの血管平滑筋細胞移動および増殖についてのこれらの効果およびその結果は、本発明の化合物の投与によって示され、またインビボで機械的傷害後の血管内皮肥厚に対するその効果を試験して示すことができる。
【0081】
CSF1R(FMS)
この遺伝子によってコードされるタンパク質は、マクロファージの形成、分化および機能を制御するコロニー刺激因子1、サイトカインの受容体である。CSFR1はこのサイトカインの生物学的効果の全てではないが多くを仲介する。コード化されたタンパク質はチロシンキナーゼ膜貫通受容体であり、チロシン−プロテインキナーゼのCSF1/PDGF受容体ファミリーのメンバーである。この遺伝子の変異は骨髄悪性腫瘍の素因に関連している(例えばCasas et al., Leuk. Lymphoma 2003 44:1935-41参照)。
【0082】
Abl、Trk、Syk、Ras、Raf、MAPK、TGFβ、FGFR3、c−Src、SAPK、Lck、Fes、Csk
エーベルソンチロシンキナーゼ(すなわちAbl、c−Abl)は、遺伝毒性ストレスへの細胞応答およびインテグリンシグナル伝達を介する細胞環境に関する情報の伝達において、細胞サイクルの制御に関与する。Ablタンパク質は、多様な細胞外および細胞内源のシグナルを統合し、細胞サイクルおよびアポトーシスに関する決定に影響する細胞分子としての複雑な役割を有すると考えられる。エーベルソンチロシンキナーゼは、脱制御されたチロシンキナーゼ活性を有するキメラ融合(がんタンパク)BCR−Ablまたはv−Ablのようなサブタイプを含む。
【0083】
融合タンパク質BCR−Ablは、Ablがん原遺伝子とBcr遺伝子を融合する相互転座の結果である。BCR−Ablはマイトジェン活性の上昇を介してB細胞を形質転換させることができる。この上昇はアポトーシスに対する感受性の低下をもたらし、CML前駆細胞の接着およびホーミングを変化させる。
【0084】
BCR−Ablは95%の慢性骨髄性白血病(CML)および10%の急性リンパ性白血病の原因において重要である。STI571(GLEEVEC(登録商標))はがん遺伝子BCR−Ablチロシンキナーゼの阻害剤であり、慢性骨髄性白血病(CML)の処置に使用されている。しかし、CMLの急性転化期の患者のいくらかは、BCR−Ablキナーゼにおける変異のためにSTI−571に抵抗性である。G250E、E255V、T315I、F317LおよびM351Tのような22種類の変異が現在までに報告されている。
【0085】
本発明の化合物は、ablキナーゼ、例えばv−ablキナーゼを阻害することができる。本発明の化合物はまた、野生型BCR−Ablキナーゼおよび変異型BCR−Ablキナーゼを阻害することもでき、したがってBcr−abl陽性がんおよび腫瘍疾患、例えば白血病(特に慢性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病、特にアポトーシスメカニズムの作用が見られるもの)の処置に好適であり得る。本発明の化合物はまた、白血病性幹細胞に対して有効であり得て、当該細胞を採取(例えば骨髄採取)した後インビトロでこれらの細胞を浄化し、がん細胞をきれいにして、当該細胞を再移植する(例えば浄化骨髄細胞の再移植)ために潜在的に有用であり得る。
【0086】
trkファミリーの神経栄養因子受容体(trkA、trkB、trkC)は神経性および非神経性組織の生存、増殖および分化を促進する。TrkBタンパク質は、省庁および結腸の神経内分泌系タイプの細胞、膵臓のアルファ細胞、リンパ節および脾臓の単球およびマクロファージならびに表皮の顆粒層において発現される(Shibayama and Koizumi, 1996)。TrkBタンパク質の発現はウィルムス腫瘍および神経芽腫の好ましくない進行に関係している。さらに、TrkBはがん性前立腺細胞において発現されるが、正常細胞では発現されない。trk受容体の下流シグナル伝達経路は、Shc、活性化Ras、ERK−1およびERK−2遺伝子を介するMAPK活性化カスケードならびにPLC−ガンマ変換経路に関与する(Sugimoto et al., 2001)。
【0087】
Sykはマスト細胞脱顆粒および好酸球活性化に深く関与するチロシンキナーゼである。したがって、Sykキナーゼは多様なアレルギー障害、特に喘息に関与する。SykがN末端SH2ドメインを介してFcεR1受容体のリン酸化ガンマ鎖と結合し、そして下流シグナル伝達に重要であることが示されている。
【0088】
Ras−Raf−MEK−ERKシグナル伝達経路は成長シグナルに対する細胞性応答を仲介する。Rasはヒトのがんの〜15%において発がん形態に変異している。Rafファミリーはセリン/スレオニンプロテインキナーゼに属し、3種のメンバー、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf(またはRaf−1)を含む。B−Rafは活性化Rasアレルを必要としないある種の腫瘍の形成に深く関与している可能性がある(Nature 417: 949 - 954 (2002))。B−Raf変異は悪性黒色腫の多くで検出されている。
【0089】
現在の黒色腫の医学的処置は、特に後期段階の黒色腫について、その有効性が限定されている。本発明の化合物はまた、b−Rafキナーゼが関与する細胞プロセスを阻害し、がん、特に黒色腫の処置のための新規な治療機会を提供する。
【0090】
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)は多様な細胞外シグナルに応答して転写因子、翻訳因子および他の標的分子を活性化する保存的シグナル伝達経路のメンバーである。MAPKはマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MKK)によって配列Thr−X−Tyrを有するデュアルリン酸化モチーフでのリン酸化によって活性化される。高等真核生物におけるMAPKシグナル伝達の生理的役割は、増殖、発がん、形成および分化のような細胞事象に関連している。したがって、これらの経路(特にMKK4およびMKK6)を介するシグナル伝達の制御能は、MAPKシグナル伝達に関連したヒト疾患、例えば炎症性疾患、自己免疫疾患およびがんの処置および予防的治療の開発を導くことができる。
【0091】
それぞれ別個の遺伝子でコードされるp38 MAPKの複数の形態(α、β、γ、δ)は、浸透圧ストレス、UV光およびサイトカイン介在性事象を含む多様な刺激に対する細胞応答に関与するキナーゼカスケードの一部を形成する。これらp38の4つのアイソフォームは、細胞内シグナル伝達の異なる局面を制御すると考えられている。その活性化は、TNFαのような前炎症性サイトカインの合成および生産を導くシグナル伝達事象のカスケードの一部である。P38は、他のキナーゼおよび転写因子を含むリン酸化下流基質によって機能する。p38キナーゼを阻害する薬物は、TNFα、IL−6、IL−8およびIL−1βを含むがこれらに限定されないサイトカインの生産を阻止することが示されている。
【0092】
末梢血単球(PBMC)は、インビトロでリポポリサッカライド(LPS)で刺激されたとき、前炎症性サイトカインを発現し、分泌することが示されている。P38阻害剤はPBMCがLPSによる刺激の前にかかる化合物で前処理されているとき、この効果を効果的に阻止する。P38阻害剤は炎症性疾患の動物モデルにおいて有効である。多くの疾患状態の破壊効果は前炎症性サイトカインの過剰生産によって引き起こされる。p38阻害剤のこの過剰生産を制御する能力は、それらを疾患調節剤として有用にする。
【0093】
p38機能を阻止する分子は、骨吸収、炎症および他の免疫および炎症に基づく病理の阻害に有効であることが示されている。したがって、安全で有効なp38阻害剤は、p38シグナル伝達の調節によって制御することができる疾患を低減する処置のための手段を提供する。したがって、p38活性を阻害する本発明の化合物は、炎症、骨関節炎、リウマチ様関節炎、がん、自己免疫疾患の処置および他のサイトカイン介在性疾患の処置に有用である。
【0094】
形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)は細胞増殖および分化、胚および骨形成、細胞外マトリックス形成、造血、免疫および炎症性応答の多面的調節剤であるタンパク質のスーパーファミリーであり、例えばTGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3を含む。TGFβファミリーのメンバーは、細胞サイクルを制御し、増殖性応答を調節しまたは細胞外から中へのシグナルシグナル伝達、細胞接着、移動および細胞間連絡を仲介する細胞外マトリックスタンパク質に関連する遺伝子の、発現を最終的に導く細胞内シグナル伝達経路を開始する。
【0095】
結果として、TGFβ細胞内シグナル伝達経路の阻害剤である本発明の化合物は、非制御TGFβ活性に関連した腎臓障害および糸球体腎炎(GN)を含む過剰な線維症、例えばメサンギウム増殖性GN、免疫性GNおよび半月体形成性GNを含む、線維増殖性疾患に有用な治療である。他の腎状態は、糖尿病性腎症、間質性腎線維症、シクロスポリン投与を受けている移植患者のの腎線維症およびHIV関連腎症を含む。コラーゲン血管障害は、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、モルフェアまたはレイナード症候群の発症に関連したものを含む。過剰なTGFβ活性からもたらされる肺線維症は、成人呼吸窮迫症候群、COPD、特発性肺線維症およびしばしば自己免疫疾患に関連する間質性肺線維症、例えば全身性エリテマトーデスおよび強皮症、化学物質接触またはアレルギーを含む。線維増殖性特性に関連した別の自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎である。線維増殖性状態は目の外科処置に関連していることがある。かかる処置は増殖性硝子体網膜症を伴う網膜復位術、眼内レンズ挿入術による白内障摘出および緑内障後のドレナージ術を含む。
【0096】
線維芽増殖因子受容体3は、骨増殖に対する負の制御効果および軟骨細胞増殖の阻害を示すことが示された。致死性異形性は線維芽増殖因子受容体3の様々な変異によって引き起こされる。変異体の一つであるTDII FGFR3は、細胞サイクル阻害剤の発現、増殖停止および異常な骨形成を導く転写因子Stat1を活性化する、構成的チロシンキナーゼ活性を有する(Su et al., Nature, 1997, 386, 288-292)。FGFR3はまた、多発性骨髄腫型のがんにおいてしばしば発現される。
【0097】
キナーゼc−Srcは、多くの受容体のがん原シグナルを伝達する。例えば腫瘍におけるEGFRまたはHER2/neuの過剰発現は、悪性細胞の特徴であるが正常細胞には存在しないc−srcの構成的活性化を導く。他方、c−srcの発現を欠くマウスは骨硬化表現型を示し、これは破骨細胞機能におけるc−srcの参加の重要性および関連疾患における関与の可能性を示している。
【0098】
ヒトリボソームS6プロテインキナーゼのファミリーは、少なくとも8種のメンバー(RSK1、RSK2、RSK3、RSK4、MSK1、MSK2、p70S6Kおよびp70S6Kb)から成る。リボソームタンパク質S6プロテインキナーゼは重要な多面的機能を含み;特にタンパク質生合成におけるmRNA翻訳の制御に深く関与している(Eur. J. Biochem 2000 November; 267(21): 6321-30, Exp Cell Res. Nov. 25, 1999; 253 (1):100-9, Mol Cell Endocrinol. May 25, 1999;151(1-2):65-77)。p70S6によるS6リボソームタンパク質のリン酸化はまた、細胞運動性(Immunol. Cell Biol. 2000 August;78(4):447-51)および細胞増殖(Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol., 2000;65:101-27)の制御に関与しており、したがって腫瘍転移、免疫応答および組織修復ならびに他の疾患状態において重要であり得る。
【0099】
SAPK(「jun N末端キナーゼ」または「JNK」とも称する)は、c−jun転写因子の活性化およびc−junによって制御される遺伝子の発現をもたらすシグナル伝達経路の最後から2番目の段階であるプロテインキナーゼのファミリーである。特にc−junは遺伝毒性傷害によって損傷を受けたDNAの修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の転写に関与する。細胞のSAPK活性を阻害する薬物はDNA修復を防止し、DNA損傷を誘導することによって作用するがん治療様式に細胞を感作する。
【0100】
LckはT細胞シグナル伝達に関与する。Lck遺伝子が欠失したマウスは胸腺細胞をの形成能が低い。T細胞シグナル伝達の正のアクチベーターとしてのLckの機能は、Lck阻害剤がリウマチ様関節炎のような自己免疫疾患の処置に有用であり得ることを示唆している。
【0101】
Fesは骨髄性造血細胞において強く発現されており、骨髄性白血球の分化と生存シグナル伝達の両方に関与している。CSKはがん、特に結直腸がんおよび乳がんに関与している。
【0102】
上記に従って、本発明はさらに、処置を必要とする対象における上記疾患または傷害の何れかを予防または処置する方法であって、当該対象に治療上有効量(後記「投与および医薬組成物」参照)の式(1)、(2A)、(2B)または(C)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。上記使用のいずれかのために必要な投与量は、投与形態、処置する具体的な状態および所望の効果に従って変化する。
【0103】
投与および医薬組成物
医薬組成物は、本明細書において使用するとき、本発明の化合物と他の化学成分、例えば担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤および/または賦形剤の混合物を意味する。医薬組成物は生物への化合物の投与を促進する。本発明の化合物を含む医薬組成物は、治療上有効量で医薬組成物として、静脈内、経口、経腸、エアロゾル、非経腸、眼、肺、経皮、経膣、耳、経鼻および局所投与を含むがこれらに限定されない当該技術分野で既知の何れかの常套の形態および経路で投与することができる。
【0104】
本化合物を全身的方法よりも局所に、例えば化合物を、しばしばデポまたは徐放製剤で直接臓器に注射して投与してもよい。さらにまた、標的薬物送達系、例えば臓器特異的抗体で被覆されたリポソームに本発明の化合物を含む医薬組成物を投与してもよい。当該リポソームは臓器を標的とし、選択的に取り込まれる。さらに、本発明の化合物を含む医薬組成物は、即時放出製剤の形態で、持続放出製剤の形態で、または中間放出製剤の形態で提供し得る。
【0105】
経口投与のために、本発明の化合物は、活性化合物と当該技術分野において周知の薬学的に許容される担体または賦形剤を組み合わせて容易に製剤することができる。かかる担体によって、本明細書に記載の化合物を錠剤、粉末、ピル、糖衣錠、カプセル剤、液体製剤、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、懸濁液等として、処置される患者による経口摂取のために、製剤することができる。
【0106】
経口使用のための医薬製剤は、1種以上の固体賦形剤と1種以上の本明細書に記載の化合物を混合し、所望により得られた混合物を製粉し、そして所望により錠剤または糖衣錠コアを得るために適当な助剤を加えた後、顆粒の混合物を処理して、得ることができる。好適な賦形剤は特に、増量剤、例えばラクトース、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖;セルロース調製物、例えば:トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ポテトスターチ、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム;または他のもの、例えば:ポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)もしくはリン酸カルシウムである。所望により、崩壊剤、例えば架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを加えることができる。
【0107】
糖衣錠コアは、好適なコーティングを施される。この目的で濃糖溶液を用いることができ、これは所望によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含み得る。活性化合物投与量の異なる組合せを同定または特徴付けるため、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0108】
経口的に使用することができる医薬製剤は、ゼラチンの押し込み式カプセル剤、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールで製造した軟密封カプセル剤を含む。押し込み式カプセル剤は、ラクトースのような増量剤、デンプンのような結合剤および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、および所望により安定化剤と共に、有効成分を含み得る。軟カプセル剤において、活性化合物を好適な液体、例えば脂肪脂、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁することができる。さらに、安定化剤を加えることができる。
【0109】
頬側または舌下投与のために、組成物は常套の方法で製剤した錠剤、トローチまたはゲルの形態を取り得る。非経腸注射は、ボーラス注射または連続輸液を含み得る。本発明の化合物の医薬組成物は、油または水性ビークル中の滅菌懸濁液、溶液またはエマルジョンとして、非経腸注射に適した形態であり、そして懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような製剤を含み得る。非経腸投与のための医薬製剤には、水溶形態の活性化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液を、適当な油性注射懸濁液として製造することができる。好適な親油性溶媒またはビークルには脂肪油、例えばゴマ油または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリド、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を上昇させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランが含まれ得る。所望により、懸濁液はまた、適当な安定化剤、または化合物の溶解度を上昇させて高濃度溶液の製造を可能にする薬剤を含んでいてもよい。あるいは、有効成分は好適なビークル、例えば滅菌ピロゲンフリー水で使用前に構成するための粉末であってもよい。
【0110】
本発明の化合物を局所的に投与することができ、そして様々な局所投与組成物、例えば溶液、懸濁液、ローション、ゲル、ペースト、薬用スティック、香油、クリームまたは軟膏に製剤することができる。かかる医薬組成物は、可溶化剤、安定化剤、等張性促進剤、バッファーおよび保存剤を含み得る。
【0111】
本発明の化合物の経皮投与に適した製剤は、経皮送達デバイスまたは経皮送達パッチを用いることができ、親油性エマルジョンまたはポリマーまたは粘着剤に溶解および/または分散させた緩衝化水溶液であり得る。かかるパッチは、薬剤の連続的、脈動的またはオンデマンド送達のために構成することができる。さらに、本発明の化合物の経皮送達を、イオン泳動(電気泳動)パッチ等の手段で達成することができる。さらに、経皮パッチは本発明の化合物の制御された送達を提供し得る。吸収速度は速度調節膜を用いることによって、または化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルにトラップすることによって低下させることができる。逆に、吸収促進剤を用いて吸収を増加させることができる。吸収促進剤または担体には、皮膚通過を補助する吸収可能な薬学的に許容される溶媒が含まれ得る。例えば、経皮デバイスは、裏打ち部材、所望により担体と共に化合物を含むリザーバー、所望により化合物を宿主の皮膚に制御されたおよび予め決定された速度で長期間にわたって送達するための速度制御バリア、およびデバイスを皮膚に接着させる手段を含むバンデージの形態である。
【0112】
吸入投与のために、本発明の化合物はエアロゾル、噴霧製剤または粉末の形態であり得る。本発明の化合物を含む医薬組成物は、簡便には、加圧パックまたは噴霧器から、好適なプロペラント、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスと共にエアロゾルスプレー形態で送達することができる。加圧エアロゾルの場合、計量された量を送達するバルブを提供することによって、投与単位が決定され得る。例示のみを目的として、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物および好適な粉末基剤、例えばラクトースまたはデンプンの粉末混合物を含む吸入器または吸入装置に用いるために、製剤することができる。
【0113】
本発明の化合物はまた、常套の座薬基剤、例えばココアバターまたは他のグリセリドならびに合成ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、PEG等を含む、かん腸、直腸ゲル、直腸泡、直腸エアロゾル、座薬、ジェル座薬、または停留かん腸のような直腸組成物に製剤することができる。組成物の座薬形態において、低融点ワックス、例えばこれらに限定されないが、所望によりココアバターとの組合せにおける、脂肪酸グリセリドの混合物が最初に融解する。
【0114】
医薬組成物を常套の方法で、賦形剤および活性化合物の製剤への処理を容易にする薬学的に使用することができる助剤を含む、1種以上の生理的に許容される担体を用いて製剤することができる。適切な製剤は、選択した投与経路に依存する。あらゆる周知の技術、担体および賦形剤を好適に、そして当業者に理解されるとおり、使用することができる。本発明の化合物の少なくとも1種を含む医薬組成物を、常套の方法、例えば例示のみを目的として、常套の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、製粉、乳化、カプセル封入、トラップまたは圧縮プロセスによって製造することができる。
【0115】
医薬組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤および有効成分として少なくとも1種の本明細書に記載の遊離酸もしくは遊離塩基形、または薬学的に許容される塩形の式(1)、(2A)または(2B)の化合物を含む。さらに、本明細書に記載の方法および医薬組成物は、同じタイプの活性を有するこれらの化合物のN−オキシド、結晶形(多形とも知られている)ならびに活性な代謝産物の使用を含む。いくつかの状況において、化合物は互変異性体として存在していてもよい。全ての互変異性体は本発明の化合物の範囲に含まれる。さらに、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和物形または水、エタノール等のような薬学的に許容される溶媒との溶媒和物形で存在していてもよい。本発明の化合物の溶媒和物形も本明細書に記載されていると理解される。さらに、医薬組成物は他の医薬または薬物、担体、アジュバント、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解プロモーター、浸透圧を調節するための塩、および/またはバッファーを含み得る。さらに、医薬組成物はまた、他の治療上有用な物質を含み得る。
【0116】
本明細書に記載の化合物を含む組成物の製造方法は、化合物を1種以上の不活性な、薬学的に許容される賦形剤または担体と製剤して、固体、半固体または液体とすることを含む。固体組成物には、これらに限定されないが、粉末、錠剤、崩壊性顆粒、カプセル剤、カプセルおよび座薬が含まれる。液体組成物には、化合物が溶解している溶液、化合物を含むエマルジョン、または本明細書に記載の化合物を含むリポソーム、ミセルまたはナノ粒子を含む溶液が含まれる。半固体組成物には、これらに限定れないが、ゲル、懸濁液およびクリームが含まれる。組成物は液体溶液もしくは懸濁液、使用前に液体の溶液または懸濁液とするのに適した固体、またはエマルジョンであり得る。これらの組成物はまた、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤等を含んでいてもよい。
【0117】
本明細書に記載の医薬組成物の概要は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980; and Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins1999) に見出すことができ、それらを全体において参照により本明細書に包含する。
【0118】
投与方法および処置方法
本明細書に記載の化合物(複数であってもよい)を含む医薬組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与することができる。治療適用において、本組成物は、疾患または状態を既に有する患者に、疾患または状態の症状を治療するまたは少なくとも停止させるのに十分な量で投与する。かかる治療上有効量を常套の実験(用量漸増試験を含むが、これに限定されない)によって決定することは、当業者に周知である。
【0119】
本発明の化合物は、第2の治療薬物との組合せで使用してもよい。例えば、本発明の化合物の1種の投与によって患者が経験している副作用の一つが炎症であるとき、本発明の化合物は、抗炎症剤と組み合わせて投与してもよい。本明細書に記載の化合物の治療有効性はまた、アジュバントの投与によって向上させることができる。本発明の化合物が他の治療と組み合わせて投与されるとき、共投与される化合物の用量は、使用する共薬剤、使用する具体的な薬物、処置する疾患または状態等に従って変化する。さらに、1種以上の生物学的活性剤と共投与するとき、本発明の化合物は生物学的活性剤と同時または逐次的に投与することができる。第2の治療薬物との組合せにおける本発明の化合物の投与は、相加乃至相乗効果を有することがある。
【0120】
ある例において、本発明の化合物は、抗線維症剤;例えば線維症、例えば強皮症、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、原発性肺高血圧(PPH)、原発性肺動脈高血圧(PPAH)、特発性動脈高血圧(IPAH)、肝線維症、腎線維症および心線維症の進行に干渉しまたは調節する薬物と組み合わせて使用してもよい。本発明の化合物と組み合わせて使用することができる抗線維症剤の例は、ピルフェニドン(Nakazoto et al., Eur. J. Pharmacol. 446:177-185 (2002))、タクロリムス(Nagano et al., Eur. Respir. J. 27: 460-469 (2006))または5−クロロ−2−{(1E)−3−[2−(4−メトキシベンゾイル)−4−メチル−1H−ピロール−1−イル]プロプ−1−エン−1−イル}−N−(メチルスルホニル)ベンズアミド(SMP−534)(Sugaru et al., Am. J. Nephrology 26:50-58 (2006))を含むがこれらに限定されない。本発明の化合物はまた、コルチコステロイドおよびクロモリン、ロイコトリエンアンタゴニストならびにIgEブロッカー、例えばオマリズマブを含むがこれらに限定されない抗炎症剤と組み合わせて使用してもよい。他の例において、本発明の化合物は喘息を処置する薬物;例えば気管支拡張剤、例えばβ−アゴニスト、キサンチン(例えばメチルキサンチン)および抗コリン剤;ならびに上記抗炎症剤と組み合わせて使用してもよい。
【0121】
本発明の化合物はまた、リンパ腫、骨肉腫、黒色腫または乳がん、腎臓がん、前立腺がん、結直腸がん、甲状腺がん、卵巣がん、膵臓がん、神経がん、肺がん、子宮がんまたは消化器がんを含むがこれらに限定されない細胞増殖性疾患の処置のための化学療法剤と組み合わせて使用してもよい。本発明の組成物および方法において使用することができる化学療法剤は、アントラサイクリン、アルキル化剤(例えばミトマイシンC)、アルキルスルホネート、アジリジン、エチレンイミン、メチルメラミン、窒素マスタード、ニトロソウレア、抗生物質、代謝拮抗剤、葉酸アナログ(例えば、ジヒドロ葉酸)、レダクターゼ阻害剤(例えばメトトレキセート)、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、酵素、ポドフィロトキシン、プラチナ薬物、インターフェロンおよびインターロイキンを含むが、これらに限定されない。本発明の組成物および方法において使用することができる既知の化学療法剤の具体例は、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾデパ、カルボクオン、メツレデパ、ウレデパ、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリメチルオロメラミン、クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミン塩酸オキシド、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、デカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、アクラシノマイシン、アクチノマイシンF(1)、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、デクチノマイシン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、6−ジアゾ−5−オキソ−1−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ミトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、プロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメキシ、ジノスタチン、ゾルビシン、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルウリジン、エノシタビン、フロキシウリジン、フルオロウラシル、テガフール、L−アスパラギナーゼ、プルモザイム、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、カルボプラチン、シスプラチン、デフォファミド、デメコルシン、ジアゼクオン、エルフオルニチン、エリプチニウムアセテート、エトグルシド、エトポシド、フルタミド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン−2、レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモル、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、パクリタキセル、タモキシフェン、テニポシド、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビンデシンを含むがこれらに限定されない。
【0122】
一般に、本発明の化合物は治療上有効量で、当該技術分野において既知の何れかの通常の許容される形態で、単独でまたは1種以上の治療薬物と組み合わせて投与する。治療上有効量は疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康、使用する化合物の能力および他の要因に従って広範に変化し得る。一般に、全身的な1日用量約0.03〜2.5mg/kg体重で満足のいく結果が得られる。大型哺乳類、例えばヒトにおける指示1日用量は約0.5mg〜約100mgの範囲であり、簡便には、例えば1日4回までの分割用量または徐放形態で投与する。経口投与に好適な単位投与形態は、約1〜50mgの有効成分を含む。
【0123】
かかる治療レジメンの毒性および治療効果は、LD50(集団の50%が死ぬ用量)およびED50(集団の50%に治療上有効である用量)の決定を含むがこれに限らず、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定することができる。毒性と治療効果の用量比は治療係数であり、そしてこれをLD50とED50の比として表現することができる。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトに使用する用量範囲の製剤に使用することができる。かかる化合物の用量は、好ましくは最小の毒性を有するED50を含む濃度を中心とした範囲内である。用量は、使用する投与形態および利用する投与経路に依存して、この範囲内で変化し得る。
【0124】
本発明の化合物の製造方法
本発明の化合物を製造する一般的な方法は、後記実施例に記載されている。記載の反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基は、これらが最終生成物において反応への望ましくない参加を避けることが望まれるとき、保護する必要があり得る。標準的な技術に従って、常套の保護基を用いることができる。例えば、T.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991を参照されたい。
【0125】
本発明の化合物は、遊離塩基形の化合物と薬学的に許容される無機または有機酸を反応させて、薬学的に許容される酸付加塩として製造することができる。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩は、遊離酸形の化合物と薬学的に許容される無機または有機塩基を反応させて製造することができる。あるいは、塩形の本発明の化合物は、塩形の出発物質または中間体を用いて製造することができる。
【0126】
遊離酸形または遊離塩基形の本発明の化合物は、対応する塩基付加塩または酸付加塩形からそれぞれ製造することができる。例えば、酸付加塩形の本発明の化合物は、好適な塩基(例えば水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム等)で処理して対応する遊離塩基に変換してもよい。塩基付加塩形の本発明の化合物は、好適な酸(例えば塩酸等)で処理して対応する遊離酸に変換してもよい。
【0127】
非酸化形の本発明の化合物は、還元剤(例えば硫黄、硫黄ジオキシド、トリフェニルホスフィン、ホウ化水素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭素化リン等)で、好適な不活性有機溶媒(例えばアセトニトリル、エタノール、水性ジオキサン等)中、0〜80℃で処理して、本発明の化合物のN−オキシドから製造することができる。
【0128】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に既知の方法によって製造することができる(さらに詳しくは、例えばSaulnier et al., (1994)、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985を参照されたい)。例えば、適切なプロドラッグは、本発明の化合物を好適なカルバミル化剤(例えば1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニルカルボネート等)と反応させて製造することができる。
【0129】
本発明の化合物の保護誘導体は、当業者に既知の方法によって製造することができる。保護基の形成とその除去に適用される技術の詳細な説明は、T. W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999に見ることができる。
【0130】
本発明の化合物は、溶媒和物(例えば水和物)として、本発明の方法によって簡便に製造または形成することができる。本発明の化合物の水和物は、ジオキサン、テトラヒドロフランまたはメタノールのような有機溶媒を用いて、水性/有機溶媒混合物から再結晶して簡便に製造することができる。
【0131】
本化合物のラセミ混合物を光学活性分割剤と反応させ、ジアステレオ異性化合物のペアを形成し、ジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、その個々の立体異性体として本発明の化合物を製造できる。エナンチオマーの分割は、本発明の化合物の共有結合性ジアステレオマー誘導体を使用して行ってもよいが、解離可能な複合体が好ましい(例えば、結晶性ジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは異なる物理的性質(例えば、融点、沸点、溶解性、反応性等)を有し、これらの差を利用して容易に分割し得る。ジアステレオマーは、クロマトグラフィーにより、または溶解度の差に基づく分離/分割技術により分離できる。次いで、ラセミ化をもたらさないであろう任意の実際的手段により、光学的に純粋なエナンチオマーを分割剤と共に回収する。化合物の立体異性体のそのラセミ混合物からの分割に適用可能な技術のより詳細な記載は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981に見ることができる。
【0132】
要約すると、式(1)、(2A)、(2B)または(2C)の化合物は、次のものを含む方法により製造できる:
(a)後記実施例に記載の一般的な方法、そして
(b)所望により本発明の化合物を薬学的に許容される塩に変換すること;
(c)所望により塩形の本発明の化合物を非塩形態に変換すること;
(d)所望により酸化されていない形態の本発明の化合物を薬学的に許容されるN−オキシドに変換すること;
(e)所望によりN−オキシド形態の本発明の化合物をその酸化されていない形態に変換すること;
(f)所望により本発明の化合物の個々の異性体を異性体混合物から分離すること;
(g)所望により誘導体化されていない本発明の化合物を薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体に変換すること;および
(h)所望により本発明の化合物のプロドラッグ誘導体を非誘導体化形態に変換すること。
【0133】
出発物質の製造が特に記載されていない場合、その化合物は既知であるか、または、当分野で既知の方法に準じて、または以下の実施例に開示のとおり、製造し得る。当業者は、上記の変換は本発明の化合物の製造の単なる代表例であって、他の既知の方法を同様に使用してよいことを認識しよう。
【0134】
下記実施例は本発明を説明するが、それを限定しない。
【実施例】
【0135】
中間体の製造
5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−カルボン酸 5の合成
【化15】

5−アミノ−ピリジン−2−カルボン酸 1(5.4mmol)をベンゼン:MeOH=3:1(40mL)に溶解させ、氷浴中で0℃に冷却する。この溶液に2MのTMSCHのEtO溶液(6.5mmol)をゆっくりと加える。添加が完了した後、反応混合物をrtに温め、6時間撹拌する。真空下で溶媒を除去した後、メチル5−アミノピコリネート 2を得て、これをさらに精製することなく次の工程に用いる。MS (m/z) (M+1)+: 153.1.
【0136】
バイアルにメチル5−アミノピコリネート 2(0.83mmol)、2−クロロ−5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン 3(0.83mmol)、Pd(OAc)(0.124mmol)、キサントホス(0.124mmol)、CsCO(0.83mmol)および無水1,4−ジオキサン(5mL)を加える。該バイアルを2回脱気し、Nで再充填して、混合物をマイクロウェーブオーブンで20分間130℃で加熱する。該バイアルをrtに冷却し、反応混合物をDCMで希釈し、10%のNHCl溶液、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させる。溶媒を真空下で除去し、粗生成物をEtOAcで摩砕して、5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−カルボン酸メチルエステル 4を明褐色固体として得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.62 (s, 1H), 8.93 (s, 2H), 8.83 (bs, 1H), 8.46 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.27 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.72-7.70 (m, 2H), 7.08-7.06 (m, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.81 (s, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 337.1.
【0137】
5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−カルボン酸メチルエステル 4(0.3mmol)のTHF:MeOH:HO=3:2:1(5mL)溶液に6MのLiOH(1.8mmol)を加える。反応混合物をrtで12時間撹拌する。この後、溶媒を真空下で除去し、残渣をHO(6mL)で希釈し、6MのHClでpHを中和する。沈殿した固体を回収し、水で洗浄し、真空オーブンで12時間乾燥させて、5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−カルボン酸 5を黄色固体として得て、これをさらに精製することなく次の工程に用いる。MS (m/z) (M+1)+: 323.2.
【0138】
5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ニコチン酸 10
【化16】

2−メチル−5−ニトロ−ニコチン酸エチルエステル 7(1.43mmol)のMeOH(15mL)溶液にPd(炭素上5%、50%湿潤;10重量%)を加える。パージ後、反応混合物を水素雰囲気下で3時間撹拌する。セライトで溶媒を濾過し、セライトケーキをMeOHで洗浄する。溶媒を真空下で除去して5−アミノ−2−メチル−ニコチン酸エチルエステル 8を黄色固体として得て、これをさらに精製することなく使用する。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 7.19 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 4.10 (s, 2H), 3.56 (q, J = 8.0 Hz, 2H), 1.80 (s, 3H), 0.59 (t, J = 8.0 Hz, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 182.0.
【0139】
バイアルに5−アミノ−2−メチル−ニコチン酸エチルエステル 8(1.25mmol)、2−クロロ−5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン 3(1.25mmol)、Pd(OAc)(0.187mmol)、キサントホス(0.187mmol)、CsCO(1.25mmol)および無水1,4−ジオキサン(8mL)を加える。該バイアルを2回脱気し、Nで再充填し、該混合物を油浴中、100℃で2時間加熱する。バイアルをrtに冷却し、反応混合物をDCMで希釈し、10%のNHCl溶液、塩水で洗浄して、NaSOで乾燥させる。溶媒を真空下で除去し、DCM:MeCN:MeOH=8:2.5:0.5を用いる短シリカゲルクロマトグラフィーで粗生成物を精製して、5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ニコチン酸 エチルエステル 9を淡黄色固体として得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ10.13 (s, 1H), 9.10 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 8.94 (s, 2H), 8.78 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 7.79-7.77 (m, 2H), 7.16-7.14 (m, 2H), 4.45 (q, J = 8.0 Hz, 2H), 3.90 (s, 3H), 2.75 (s, 3H), 1.45 (t, J = 8.0 Hz, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 365.1.
【0140】
5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ニコチン酸エチルエステル 9(0.9mmol)のTHF:MeOH:HO=3:2:1(7mL)懸濁液に、6MのLiOH(2.7mmol)を加える。該反応混合物をrtで12時間撹拌する。この後、溶媒を真空下で除去し、残渣をHO(6mL)で希釈し、6MのHClでpHを中和する。生じた固体を濾過し、水で洗浄し、真空オーブンで12時間乾燥させて5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ニコチン酸 10をオフホワイト固体として得て、これをさらに精製することなく次の工程に用いる。MS (m/z) (M+1)+: 337.2.
【0141】
N−5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イル]−2−メチル−ピリジン−3,5−ジアミン 12
【化17】

5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ニコチン酸 10(0.59mmol)の無水BuOH(15mL)懸濁液にTEA(8.3mmol)を加える。反応混合物をrtで30分間撹拌し、次いでDPPA(8.3mmol)を滴下する。添加完了後、フラスコを4時間還流させる。この後溶媒を減圧下で除去し、粘稠油状残留物を分取HPLC(MeCNグラジエント20〜90%)で精製して、{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ピリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル 11を得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.22 (bs, 1H) 9.17 (bs, 1H), 8.87 (s, 2H), 8.50 (bs, 1H), 7.70-7.68 (m, 2H), 7.07-7.05 (m, 2H), 3.81 (s, 3H), 2.46 (s, 3H), 1.58 (s, 9H). MS (m/z) (M+1)+: 408.1.
【0142】
{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ピリジン−3−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル 11(0.33mmol)をDCM(2mL)に溶解させ、TFA(3mL)で処理する。反応混合物をrtで2時間撹拌する。溶媒を除去してオフホワイト固体残渣を得る。残渣を水に取り、5%のNaCOでpHを中和し、DCM:IPA=3:1(3×40mL)で抽出する。有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、有機溶媒を減圧下で蒸発させて、N5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イル]−2−メチル−ピリジン−3,5−ジアミン 12を得て、これをさらに精製することなく使用する。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.37 (s, 1H), 8.90 (s, 2H), 8.47(bs, 1H), 7.79 (bs, 1H), 7.71-7.69 (m, 2H), 7.08-7.06 (m, 2H), 6.36 (bs, 2H), 3.81 (s, 3H), 2.43(s, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 308.2.
【0143】
2−クロロ−5−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)ピリミジン 17
【化18】

ブロモ−4−(ジフルオロメトキシ)ベンゼン 13(10mmol)、酢酸カリウム(30.0mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン 14(11.0mmol)およびPd(PPh(0.5mmol)を、撹拌棒を備えた40mL容積シュレンクフラスコに加える。該フラスコを数回脱気し、窒素で戻し充填する。シリンジで1,4−ジオキサン(10mL)を加える。該シュレンクフラスコを密封し、マイクロウェーブオーブンで150℃で20分間加熱する。反応が完了した後、溶媒を真空下で除去する。残渣をDCM(200mL)に溶解させて水で洗浄する。有機相を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc、ヘキサン、グラジエント0〜20%)で精製して2−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン 15を得る。1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.74 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.02 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.48 (t, J = 73.6 Hz, 1H), 1.27 (s, 12H). MS (m/z) (M+1)+: 271.1.
【0144】
5−ブロモ−2−クロロピリミジン 16(7.7mmol)の1,4−ジオキサン(1.5mL)溶液に2−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン 15(8.9mmol)、1.8MのKCO(16.2mmol)およびPd(PPh(0.38mmol)を加える。反応を2回脱気し、窒素で戻し充填して、次いでマイクロウェーブで150℃で10分間加熱する。この後、反応混合物をNHCl飽和溶液で希釈し、DCM(3×50mL)で抽出する。有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮する。ヘキサン:EtOAc=3:1を溶離剤として用いる短シリカゲルクロマトグラフィーで精製して、2−クロロ−5−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)ピリミジン 17を得る。1HNMR (400MHz, CDCl3) δ 8.73 (s, 2H), 7.47-7.52 (m, 2H), 7.20-7.24 (m, 2H), 6.52 (t, J = 72 Hz, 1H). MS (m/z) (M+1)+ : 257.0.
【0145】
最終化合物の製造
タイプAの化合物
【化19】

{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−イル}−ピペラジン−1−イル−メタノン A1
【化20】

5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−カルボン酸 5(0.12mmol)のDMF(0.5mL)溶液にHATU(0.13mmol)およびDIEA(0.36mmol)をrtで加える。得られた混合物を2時間撹拌し、次いでピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.12mmol)のDMF(1mL)溶液を加える。反応混合物をrtで4時間撹拌し、分取LCMSで直接精製して、4−{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−カルボニル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル 6を白色固体として得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.32 (s, 1H), 8.89 (s, 2H), 8.39-8.37(m.,2H), 7.86 (dd, J = 4.0 and 8.0 Hz, 1H), 7.71-7.69 (m, 2H), 7.08-7.06 (m, 2H), 3.81 (s, 3H), 3.55-3.51 (bm, 4H), 3.96-3.94 (bs, 4H), 1.42 (s, 9H). MS (m/z) (M+1)+: 491.1.
【0146】
4−{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−カルボニル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル 6(0.03mmol)をDCM(2mL)に溶解させ、TFA(2mL)で処理する。反応混合物をrtで2時間撹拌する。溶媒を除去してオフホワイト固体残渣を得て、これをEtOAcで数回洗浄して、所望の5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−イル}−ピペラジン−1−イル−メタノン A1を白色固体として得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 10.30 (s, 1H), 9.13 (bs, 2H), 8.98 (d, J = 4.0 Hz, 2H), 8.88(s, 1H), 8.43 (dd, J = 4.0 and 8.0 Hz, 1H), 7.73 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.71-7.69 (m, 2H), 7.08-7.06 (m, 2H), 3.81 (s, 3H), 3.73(bs, 4H), 3.20 (bs, 4H). MS (m/z) (M+1)+: 391.1.
【0147】
4−{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−カルボニル}−ピペラジン−2−オン A2
【化21】

5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−カルボン酸 5(0.05mmol)のDMF(1mL)溶液にHATU(0.06mmol)およびDIEA(0.14mmol)をrtで加える。得られた混合物を2分間撹拌し、次いでピペラジン−2−オン(0.05mmol)を加える。反応混合物をrtで12時間撹拌し、次いで分取LCMSで直接精製して、4−{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−カルボニル}−ピペラジン−2−オン A2を白色固体として得る。1H NMR (400MHz, d4-CH3OH) δ 8.98 (d, J = 4.0Hz, 1H), 8.77 (s, 1H), 8.53-8.52 (m, ,2H), 7. 74-7.73 (m, 2H), 7.58-7.56 (m, 2H), 7.07-7.05 (m, 2H), 3.94 (bs, 2H), 3.81 (s, 3H), 3.46 (bs,2H), 3.45 (bs, 2H). MS (m/z) (M+1)+: 405.2.
【0148】
(4−メタンスルホニル−ピペラジン−1−イル)−{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ピリジン−2−イル}−メタノン A4
【化22】

A2に記載の方法に従って製造する。1H NMR (400MHz, d4-CH3OH) δ 9.00 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 8.77 (s, 2H), 8.52 (dd, J = 4.0 and 8.0 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.59-7.57 (m, 2H), 7.08-7.06 (m, 2H), 3.90 (bs, 4H), 3.83 (s, 3H), 7.79(bs, 4H), 2.89 (s, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 469.2.
【0149】
タイプBの化合物
【化23】

(4−メタンスルホニル−ピペラジン−1−イル)−{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ピリジン−3−イル}−メタノン B1
【化24】

5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ニコチン酸 10(0.05mmol)のDMF(1mL)溶液に、HATU(0.06mmol)およびDIEA(0.14mmol)をrtで加える。得られた混合物を2時間撹拌し、次いで1−メタンスルホニル−ピペラジン(0.05mmol)を加える。反応混合物をrtで4時間撹拌し、次いで分取LCMSで直接精製して、(4−メタンスルホニル−ピペラジン−1−イル)−{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ピリジン−3−イル}−メタノン B1を得る。1H NMR (400MHz, d4-CH3OH) δ 9.30 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 8.81 (s, 2H), 8.50 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 7.60-7.758 (m, 2H), 7.07-7.05 (m, 2H), 3.96-3.94 (m, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.54-352 (m, 2H), 3.42-3.39 (m, 2H), 3.27 (bs, 2H), 2.91 (s, 3H), 2.62 (s, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 483.1.
【0150】
(5−(5−(4−メトキシフェニル)ピリミジン−2−イルアミノ)−2−メチルピリジン−3−イル)(ピロリジン−1−イル)メタノン B2
【化25】

B1に記載のとおりに製造する。1H NMR (400MHz, d4-CH3OH) δ 9.44 (bs, 1H), 8.84 (s, 2H), 8.58 (bs, 1H), 7.60-7.58 (m, 2H), 7.08-7.05 (m, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.86 (t, J = 4.0 Hz, 2H), 3.38 (t, J = 4.0 Hz, 2H), 2.66 (s, 3H), 2.06-2.00 (m, 4H). MS (m/z) (M+1)+: 490.1.
【0151】
(5−(5−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)ピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)(ピペラジン−1−イル)メタノン B3
【化26】

バイアルにメチル5−アミノニコチン酸 18(1.45mmol)、2−クロロ−5−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)ピリミジン 17(1.45mmol)、Pd(OAc)(0.22mmol)、キサントホス(0.22mmol)、CsCO(1.45mmol)および無水1,4−ジオキサン(5mL)を加える。該バイアルを2回脱気し、Nで再充填して、混合物を油浴中、100℃で3時間加熱する。バイアルをrtに冷却し、反応混合物を水(20mL)で希釈し、10%のNaCOでpHを中和する。得られた懸濁液をDCM:IPA=3:1(3×50mL)で抽出する。有機層を塩水で1回洗浄し、NaSOで乾燥させる。溶媒を真空下で除去し、橙色粗生成物を分取HPLC(MeCNグラジエント20〜70%)で精製して、5−(5−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)ピリミジン−2−イルアミノ)ニコチン酸 19を得る。MS (m/z) (M+1)+: 359.1.
【0152】
5−(5−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)ピリミジン−2−イルアミノ)ニコチン酸 19(0.028mmol)のDMF(1mL)溶液にHATU(0.033mmol)およびDIEA(0.084mmol)をrtで加える。得られた混合物を2分間撹拌し、次いでN−boc−ピペラジン(0.03mmol)を加える。反応混合物をrtで12時間撹拌し、分取LCMSで直接精製して、tert−ブチル4−(5−(5−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル)ピリミジン−2−イルアミノ)ニコチノイル)ピペラジン−1−カルボキシレートを得る。残渣をrtで1時間、TFA(1mL)で処理し、真空下で濃縮し、分取LCMSで直接精製して(5−(5−(4−(ジフルオロメトキシ)フェニル) ピリミジン−2−イルアミノ)ピリジン−3−イル)(ピペラジン−1−イル)メタノン B3を得る。1H NMR (400MHz, d3-CH3CN) δ 9.32 (bs, 1H), 8.86 (s, 2H), 8.67 (bs, 1H), 8.41 (bs, 1H), 7.75 (d, J = 12.0 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 12.0 Hz, 2H), 6.87 (t, J = 73 Hz, 1H), 4.20 (bs, 4H), 3.30 (bs, 4H). MS (m/z) (M+1)+: 427.1.
【0153】
タイプCの化合物
【化27】

ピペリジン−2−カルボン酸{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ピリジン−3−イル}−アミド C1
【化28】

ピペリジン−1,2−ジカルボン酸1−tert−ブチルエステル(0.04mmol)のDMF(1mL)溶液にHATU(0.05mmol)およびDIEA(20.12mmol)を加える。得られた混合物をrtで2時間撹拌し、次いでN5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イル]−2−メチル−ピリジン−3,5−ジアミン 12(0.032mmol)を加える。反応混合物を45℃で12時間撹拌する。混合物を冷却し、分取LCMSで直接精製して2−{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ピリジン−3−イルカルバモイル}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル 20を得る。MS (m/z) (M+1)+: 519.1.
【0154】
2−{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ピリジン−3−イルカルバモイル}−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル 20をDCM(1mL)に溶解させ、TFA(2mL)を加える。該黄色溶液をrtで2時間撹拌する。溶媒および過剰のTFAを真空下で除去し、分取LCMSで残渣を精製して、ピペリジン−2−カルボン酸{5−[5−(4−メトキシ−フェニル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−2−メチル−ピリジン−3−イル}−アミド C1を得る。1H NMR (400MHz, d6-DMSO) δ 1H NMR (400MHz, d4-CH3OH) δ 9.27 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 8.85 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 8.80 (s, 2H), 7.59-7.57 (m, 2H), 7.06-7.06 (m, 2H), 4.14 (dd, J = 4.0 and 12.0 Hz, 1H), 3.86 (s, 3H), 3.52-3.48 (m, 1H), 3.15-3.12 (m, 1H), 2.62 (s, 3H), 2.45-2.44 (m, 1H), 2.07-2.06 (m, 1H), 1.98-1.95 (m, 1H), 1.89-1.85 (m, 1H), 1.79-1.75 (m, 2H). MS (m/z) (M+1)+: 419.2.
【0155】
1−(5−(5−(4−メトキシフェニル)ピリミジン−2−イルアミノ)−2−メチルピリジン−3−イル)−3−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)ウレア C2
【化29】

N−(5−(4−メトキシフェニル)ピリミジン−2−イル)−6−メチルピリジン−3,5−ジアミン 12(0.06mmol)のTHF(2mL)溶液にトリホスゲン(0.02mmol)およびDIEA(0.01mmol)を加える。反応物をrtで15分間撹拌し、次いで1−メチル−1H−ピラゾール−5−アミン(0.1mmol)を加え、2時間撹拌を続ける。反応物を蒸発乾固し、DCM:MeOH=95:5を溶離剤として用いるシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、1−(5−(5−(4−メトキシフェニル)ピリミジン−2−イルアミノ)−2−メチルピリジン−3−イル)−3−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)ウレア C2を白色固体として得る。1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 8.72 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.70 (s, 2H), 8.60 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.54 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.03 (d, J = 6.5 Hz, 2H), 6.28 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.79 (s, 3H), 2.49 (s, 3H). MS (m/z) (M+1)+: 431.2.
【0156】
表1は上記方法に従って製造した代表的な本発明の化合物を記載する。表1の化合物はc−kit Mo7eアッセイおよび/またはPDGFR TG−HA−VSMCアッセイにおいて<2.5μMの活性を有する。
表1
【表1】

【表2】

【0157】
表2は実施例に記載の一般的な方法に従って製造することができる、別の本発明の代表例を示す。
【表3】

【表4】

【表5】

【0158】
アッセイ
アッセイ
本発明の化合物の野生型Ba/F3細胞ならびにTel c−kitキナーゼおよびTel PDGFR融合チロシンキナーゼで形質転換したBa/F3細胞の増殖の選択的阻害能を測定するためにアッセイする。さらに、本発明の化合物はMo7e細胞のSCF依存性増殖を選択的に阻害する。さらに、本化合物のAbl、ARG、BCR−Abl、BRK、EphB、Fms、Fyn、KDR、c−Kit、LCK、PDGF−R、b−Raf、c−Raf、SAPK2、Src、Tie2およびTrkBキナーゼ阻害能を測定するためにアッセイする。
【0159】
増殖アッセイ:BaF3ライブラリー−Bright glo 読み取りプロトコル
野生型Ba/F3細胞およびTel融合チロシンキナーゼで形質転換したBa/F3細胞の増殖の阻害能について、化合物を試験する。非形質転換Ba/F3細胞は、組換えIL3を含む培地中で維持する。384ウェルTCプレートに細胞を50μlの培地中5,000細胞/ウェルで播種し、0.06nM〜10μMの試験化合物を加える。次いで細胞を37℃、5%のCOで48時間インキュベートする。細胞をインキュベートした後、製造業者の指示書に従って25μLのBRIGHT GLO(登録商標)(Promega)を各ウェルに加え、Analyst GT - ルミネッセンスモード−50000積分時間を用いてRLUでプレートを読み取る。IC50値を用量応答曲線から決定する。
【0160】
Mo7e アッセイ
c−kitを内因的に発現するMo7e細胞を用いて、96ウェルフォーマットで本明細書に記載の化合物をSCF依存性増殖の阻害について試験する。ヒト組換えSCFで刺激したMo7e細胞の抗増殖活性について、2倍連続希釈した試験化合物(Cmax=10μM)を評価する。37℃で48時間インキュベーションした後、PromegaのMTT比色分析アッセイを用いて細胞生存率を測定する。
【0161】
c−kit HTRFプロトコル
2倍濃度のc−kit酵素混合物(enzyme mix)、25ngのc−kit(5ng/μL)および2μMのビオチン−EEEPQYEEIPIYLELLP−NHペプチドのキナーゼバッファー(20mMのTris pH7.5、10mMのMgCl、0.01%のBSA、0.1%のBrij35、1mMのDTT、5%のグリセロール、0.05mMのNaVO)アリコート(5μL)を384プロキシプレート(Packard)の各ウェルに加える。バックグラウンドレベルを確認するため、プロキシプレートの最下列のウェルは、それぞれ5μLのc−kit酵素混合物を含み、c−kitを含まない。本発明の化合物を各ウェルに加え、プレートを室温で30分間インキュベートする。キナーゼバッファー(5μL)中2倍のATP(40μM)を各ウェルに加え、プレートを室温で3時間インキュベートする。検出混合物(50%のKF、40%のキナーゼバッファー、10%のEDTA、1:100希釈したMab PT66−K(カタログ番号61T66KLB)および1:100希釈したストレプトアビジン−XL(カタログ番号611SAXLB)0(10μL)を各ウェルに加え、さらにプレートを室温で1〜2時間インキュベートする。HTRFシグナルを検出器で読み取る。
【0162】
ヒトTG−HA−VSMC増殖アッセイ
10%のFBSを補ったDMEM中で、ヒトTG−HA−VSMC細胞(ATCC)を80〜90%コンフルエンスまで増殖した後、1%のFBSと30ng/mLの組換えヒトPDGF−BBを補ったDMAM中に6e4細胞/mLで再懸濁する。次いで384ウェルプレートに50μL/ウェルで細胞を等分し、37℃で20時間インキュベートし、次いで37℃で48時間、100倍の化合物0.5μLで処理する。処理後、25μLのCellTiter-Gloを各ウェルに15分間加え、次いでプレートをCLIPR(Molecular Devices)で読み取る。
【0163】
PDGFRα&β Lanceアッセイプロトコル
2倍濃度のPDGFRβペプチドとATP混合物(4μMのビオチン−βA−βA−βA−AEEEEYVFIEAKKKペプチド、アッセイバッファー(20mMのHepes、54mMのMgCl、0.01%のBSA、0.05%のTween−20、1mMのDTT、10%のグリセロール、50μMのNaVO)中20μMのATP)のアリコート(2.5μL)を384プロキシプレート(Packard)の各ウェルに加える。該プレートを遠心分離し、本発明の化合物(50nL)をピンツールディスペンサーを介して各ウェルに加える。2倍濃度の酵素混合物(アッセイバッファー中、4.5ng/μLのPDGFRα(カタログ番号PV4117)または1.5ng/μLのPDGFRβ(カタログ番号PV3591))またはPDGFRα/β酵素を含まないアッセイバッファーのみを、各ウェルに加える(2.5μL)。プレートを室温で1.5時間インキュベートする。検出混合物(5μL;50% 1MのKF、40%のキナーゼバッファー、10%のEDTA、1:100希釈したMab PT66−K(カタログ番号61T66KLB)および1:100希釈したストレプトアビジン−XL(カタログ番号611SAXLB))を各ウェルに加え、プロキシプレートを室温で1時間インキュベートした後、検出器でHTRFシグナルを読み取る。
【0164】
Ba/F3 FL FLT3増殖アッセイ
使用するマウス細胞系は、全長FLT3構造を過剰発現しているBa/F3マウスプロB細胞系である。ペニシリン 50μg/mL、ストレプトマイシン 50μg/mLおよびL−グルタミン 200mMを補い、マウス組換えIL3を加えたRPMI1640/10%胎児ウシ血清(RPMI/FBS)中でこれらの細胞を維持する。Ba/F3全長FLT3細胞はIL3飢餓を16時間受け、次いでこれを384ウェルTCプレートに25μLの培地中5,000細胞/ウェルで播種し、試験化合物0.06nM〜10μMを加える。化合物添加後、FLT3リガンドまたは細胞傷害性コントロールとしてIL3を25μl/ウェルの培地に適切な濃度で加える。次いで、細胞を37℃、5%COで48時間インキュベートする。細胞をインキュベートした後、製造業者の指示書に従って25μLのBRIGHT GLO(登録商標)(Promega)を各ウェルに加え、Analyst GT - ルミネッセンスモード−50000積分時間を用いてRLUでプレートを読み取る。
【0165】
細胞性BCR−Abl依存性増殖の阻害(ハイスループット法)
使用するマウス細胞系はBCR−Abl cDNA(32D−p210)で形質転換した32D造血前駆細胞系である。ペニシリン 50μg/mL、ストレプトマイシン 50μg/mLおよびL−グルタミン 200mMを補ったRPMI/10%胎児ウシ血清(RPMI/FCS)中でこれらの細胞を維持する。IL3源として15%WEHI調節培地を加えて、同様に非形質転換32D細胞を維持する。
【0166】
50μLの32Dまたは32D−p210細胞懸濁液をGreiner384ウェルマイクロプレート(黒色)に密度5000細胞/ウェルで播種する。試験化合物50nL(DMSO原液中1mM)を各ウェルに加える(STI571はポジティブコントロールとして含まれる)。該細胞を37℃、5%COで72時間インキュベートする。各ウェルに10μLの60%Alamar Blue溶液(Tek diagnostics)を加え、細胞をさらに24時間インキュベートする。Acquest(商標)システム(Molecular Devices)を用いて蛍光強度(励起波長530nm、放出波長580nm)を定量する。
【0167】
細胞性BCR−Abl依存性増殖の阻害
96ウェルTCプレートに密度15,000細胞/ウェルで32D−p210細胞を播種する。試験化合物の2倍連続希釈(Cmaxは40μMである)50μLを各ウェルに加える(STI571はポジティブコントロールとして含まれる)。37℃、5%COで細胞を48時間インキュベートした後、15μLのMTT(Promega)を各ウェルに加え、細胞をさらに5時間インキュベートする。570nmの吸光度を分光光度計で測定し、IC50値を用量応答曲線から決定する。
【0168】
細胞サイクル分布に対する効果
6ウェルTCプレートに32D細胞および32D−p210細胞を5mLの培地中2.5×10細胞/ウェルで播種し、試験化合物を1または10μMで加える(STI571はコントロールとして含まれる)。次いで37℃、5%COで該細胞を24時間または48時間インキュベートする。細胞懸濁液2mLをPBSで洗浄し、70%のEtOHで1時間固定し、PBS/EDTA/RNase Aで30分間処理する。ヨウ化プロピジウム(Cf=10μg/ml)を加え、FACScalibur(商標)システム(BD Biosciences)によるフローサイトメトリーによって蛍光強度を定量する。本発明の試験化合物は、32D−p210細胞に対するアポトーシス効果を示すが、32D親細胞のアポトーシスは誘導しない。
【0169】
細胞性BCR−Abl自己リン酸化に対する効果
c−abl特異的捕捉抗体と抗ホスホチロシン抗体を用いた捕捉ElisaによってBCR−Abl自己リン酸化を定量する。96ウェルTCプレートに32D−p210細胞を50μLの培地中2×10細胞/ウェルで播種する。試験化合物の2倍連続希釈(Cmaxは10μMである)50μLを各ウェルに加える(STI571はポジティブコントロールとして含まれる)。37℃、5%COで細胞を90分間インキュベートする。次いで、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含む溶解バッファー(50mMのTris HCl、pH7.4、150mMのNaCl、5mMのEDTA、1mMのEGTAおよび1%のNP40)150μLで氷上で細胞を1時間処理する。抗abl特異的抗体で予めコーティングし、ブロックした96ウェル光学プレートに50μLの細胞溶解物を加える。該プレートを4℃で4時間インキュベートする。TBS−Tween20バッファーで洗浄した後、50μLのアルカリホスファターゼ複合抗ホスホチロシン抗体を加え、該プレートを4℃でさらに一夜インキュベートする。TBS−Tween20バッファーで洗浄した後、90μLの蛍光基質を加え、Acquest(商標)(Molecular Devices)を用いて蛍光を定量する。BCR−Abl発現細胞の増殖を阻害する本発明の試験化合物は、用量依存的に細胞性BCR−Abl自己リン酸化を阻害する。
【0170】
変異形態のBcr−ablを発現する細胞の増殖に対する効果
野生型またはSTI571に対する耐性を与えるか、もしくは感受性を低下させる変異形態のBCR−Abl(G250E、E255V、T315I、F317L、M351T)を発現するBa/F3細胞に対する本発明の化合物の抗増殖性効果を試験する。変異BCR−Abl発現細胞および非形質転換細胞に対するこれらの化合物の抗増殖性効果を、(IL3を含まない培地中)10、3.3、1.1および0.37μMで上記の通り試験する。非形質転換細胞に対して毒性を示さない化合物のIC50値を、上記の通りに得た用量応答曲線から決定した。
【0171】
FGFR3(酵素アッセイ)
キナーゼバッファー(30mMのTris−HCl pH7.5、15mMのMgCl、4.5mMのMnCl、15μMのNaVOおよび50μg/mLのBSA)および基質(5μg/mLのビオチン−ポリ−EY(Glu、Tyr)(CIS-US, Inc.)および3μMのATP)中の酵素0.25μg/mLを含む最終体積10μLで、精製FGFR3(Upstate)によるキナーゼ活性アッセイを実施する。2種の溶液を調製する:第1にキナーゼバッファー中のFGFR3酵素を含む第1溶液5μLを384フォーマットProxiPlate(登録商標)(Perkin-Elmer)に分注し、次いでDMSOに溶解させた化合物50nLを加え、キナーゼバッファー中に基質(ポリ−EY)およびATPを含む第2溶液5μLを各ウェルに加える。室温で1時間反応をインキュベートし、10μLのHTRF検出混合物(30mMのTris−HCl pH7.5、0.5MのKF、50mMのETDA、0.2mg/mLのBSA、15μg/mLのストレプトアビジン−XL665(CIS-US, Inc.)および150ng/mLのクリプテート複合抗ホスホチロシン抗体(CIS-US, Inc.)を含む)を加えて停止させる。室温で1時間インキュベートしてストレプトアビジンとビオチンを相互作用させた後、Analyst GT(Molecular Devices Corp.)で時間分解蛍光シグナルを読み取る。12種の濃度(50μMから0.28nMの1:3希釈)での各化合物の阻害率の直線回帰分析によってIC50値を計算する。このアッセイにおいて、本発明の化合物は10nM〜2μMのIC50を有する。
【0172】
FGFR3(細胞アッセイ)
FGFR3細胞性キナーゼ活性に依存する形質転換されたBa/F3−TEL−FGFR3細胞増殖に対する本発明の化合物の阻害能を試験する。Ba/F3−TEL−FGFR3は、培養培地として10%の胎児ウシ血清を補ったRPMI1640の懸濁液中で800,000細胞/mLまで培養する。384ウェルフォーマットプレートに細胞を、培養培地50μL中5000細胞/ウェルで分注する。本発明の化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、希釈する。12点の1:3連続希釈物をDMSOで調製し、典型的には10mM〜0.05μMの濃度勾配を作製する。50nLの希釈した化合物を細胞に加え、細胞培養インキュベーター中で48時間インキュベートする。増殖細胞によって創出される還元環境をモニターするために使用し得るAlamarBlue(登録商標)(TREK Diagnostic Systems)を細胞に、最終濃度10%で加える。細胞培養インキュベーター中、37℃でさらに4時間インキュベートした後、還元されたAlamarBlue(登録商標)由来の蛍光シグナル(励起波長530nm、放出波長580nm)をAnalyst GT(Molecular Devices Corp.)で定量する。12種の濃度での各化合物の阻害率の直線回帰分析によってIC50値を計算する。
【0173】
b−Raf酵素アッセイ
本発明の化合物のb−Raf活性阻害能について試験する。黒色壁透明底の384ウェルMaxiSorpプレート(NUNC)でアッセイを実施する。基質IκBαをDPBS(1:750)で希釈し、各ウェルに15μLを加える。該プレートを4℃で一夜インキュベートし、EMBLAプレート洗浄機を用いてTBST(25mMのTris、pH8.0、150mMのNaClおよび0.05%のTween20)で3回洗浄する。室温で3時間、Superblock(15μL/ウェル)でプレートをブロックし、TBSTで3回洗浄し、パット乾燥させる。20μMのATP(10μL)を含むアッセイバッファー、次いで100nLまたは500nLの化合物を各ウェルに加える。b−Rafをアッセイバッファーで希釈し(1μLを25μLに)、10μLの希釈したb−Rafを各ウェルに加える(0.4μg/ウェル)。該プレートを室温で2.5時間インキュベートする。TBSTでプレートを6回洗浄してキナーゼ反応を停止させる。ホスホ−IκBα(Ser32/36)抗体をSuperblock(1:10,000)で希釈し、各ウェルに15μLを加える。該プレートを4℃で一夜インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。AP複合ヤギ抗マウスIgGをSuperblock(1:1,500)で希釈し、各ウェルに15μLを加える。該プレートを室温で1時間インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。15μLの蛍光Attophos AP基質(Promega)を各ウェルに加え、該プレートを室温で15分間インキュベートする。AcquestまたはAnalyst GTで蛍光強度プログラム(励起波長455nm、放出波長580nm)を用いてプレートを読み取る。
【0174】
b−Raf細胞アッセイ
本発明の化合物のMEKリン酸化阻害能について、A375細胞において試験する。A375細胞系(ATCC)はヒト黒色腫患者に由来し、B−Raf遺伝子にV599E変異を有する。B−Rafの変異によってリン酸化MEKの濃度が上昇する。亜コンフルエント乃至コンフルエントなA375細胞を、無血清培地中、37℃で2時間化合物と共にインキュベートする。次いで細胞を冷PBSで1回洗浄し、1%のTriton X100を含む溶解バッファーで溶解させる。遠心分離後、上清をSDS−PAGEに供し、次いでニトロセルロース膜に移す。該膜を抗ホスホMEK抗体(ser217/221)(Cell Signaling)によるウェスタンブロッティングに供する。ニトロセルロース膜のホスホMEKバンドの密度によってリン酸化MEKの量をモニターする。
【0175】
Upstate Kinase Profiler(商標)−放射性酵素フィルター結合アッセイ
本発明の化合物のキナーゼパネルの個々のメンバーの阻害能について評価する。この一般プロトコルに従って、最終濃度10μM、2連で化合物を試験する。キナーゼバッファー(2.5μL、所望により10倍のMnClを含む)、活性キナーゼ(0.001〜0.01単位;2.5μL)、キナーゼバッファー中の特異的またはポリ(Glu4−Tyr)ペプチド(5〜500μMまたは.01mg/ml)およびキナーゼバッファー(50μM;5μL)を氷上でエッペンドルフ内で混合する。Mg/ATP混合物(10μL;67.5(または33.75)mMのMgCl、450(または225)μMのATPおよび1μCi/μlの[γ−32P]−ATP(3000Ci/mmol))を加え、反応を約30℃で約10分間インキュベートする。2cm×2cmのP81(リンセルロース、正に荷電したペプチド基質について)または四角のWhatman No. 1(ポリ(Glu4−Tyr)ペプチド基質について)紙に反応混合物をスポットする(20μL)。アッセイ四角片を0.75%のリン酸で4回、それぞれ5分間洗浄し、アセトンで1回、5分間洗浄する。アッセイ四角片をシンチレーションバイアルに移し、5mlのシンチレーションカクテルを加え、Beckmanシンチレーションカウンターでペプチド基質への32P取り込み(cpm)を定量する。阻害率を各反応について計算する。
【0176】
本明細書に記載の実施例および態様は説明のみを目的としており、その範囲内の多様な修飾または変形が当業者に示唆されており、本明細書および特許請求の範囲の精神および範囲に含まれることが理解される。本明細書において言及した全ての公報、特許および特許出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

〔式中、
1〜4個のX、X、X、X、XおよびXはNであり、他のものはCRであり、環Eは炭素原子を介してNR、RおよびRと結合しており;
Arは所望により置換された5〜6員アリールまたはヘテロアリールである。ただし、Arはイミダゾリルではない;
およびRは独立して、それぞれ所望により、ハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;ハロ、シアノ、ニトロ、(CROR、(CRO(CR1−4、(CRSR、(CRNR10、(CRC(O)O0−1、OC(O)R、(CRC(S)R、(CRC(O)NR10、(CRC(O)NR(CR0−6C(O)O0−1、(CRNRC(O)O0−1、(CRS(O)1−2NR10、(CRS(O)1−2、(CRNRS(O)1−2または(CR;または何れか2個の隣接するR基はそれらが結合している原子と一体となって、所望により置換された5〜8員炭素環式、ヘテロ環式、アリールまたはヘテロアリール環を形成してもよく;
は−L−NR、−X−NR−C(O)Rまたは−X−NR−C(O)NRであり、ここでLは−X−C(O)、−X−OC(O)、−SO0−2(CR、(CR1−4、−O(CR1−4または
【化2】

であり;Xは(CRまたは[C(R)(CROR)]であり;
、R、RおよびR10は独立してH;それぞれ所望によりハロ、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシルまたはRで置換されていてもよい、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;(CRCN、(CR1−6NR、(CR1−6OR、(CRC(O)O0−1、(CRC(O)NRまたは(CR−Rであり;
は所望により置換されたC3−7シクロアルキル、C6−10アリールまたは5〜10員ヘテロアリールまたは5〜7員ヘテロ環式環であり;
およびRは独立して、(CR−Rまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシルもしくはRで置換されていてもよい、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;またはRはHであり;
あるいは、それぞれのNRにおいてRとRはNと一体となって、それぞれのNRにおいてRとRはNと一体となってまたはそれぞれのNR10においてRとR10はNと一体となって、1〜3個のR11基で置換されていてもよく、所望によりNR12、O、S、=Oまたは二重結合を含んでいてもよい4〜7員ヘテロ環式環を形成してもよく;
11はR、(CR−OR、CO、(CR−C(O)−(CR−R、(CRC(O)NR、(CRC(O)NR(CR0−6C(O)O0−1、(CRNRC(O)O0−1、(CRS(O)1−2NR、(CRS(O)1−2または(CRNRS(O)1−2であり;
12はH、R、−(CR1−4CO、(CR−C(O)−(CR−R、(CRC(O)NR、(CRC(O)NR(CR0−6C(O)O0−1、(CR1−4NRC(O)O0−1、(CRS(O)1−2NR、(CRS(O)1−2または(CRNRS(O)1−2であり;
それぞれのRはHまたはC1−6アルキルであり;
それぞれのkは0〜6であり;
jおよびmは独立して0〜4である;
ただし、Arがフェニルであり、そしてXが(CRであるとき、−X−NR−C(O)RのRはフェニルではない〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
環Eがピリジニルである、請求項1の化合物。
【請求項3】
Arがフェニルである、請求項1または2の化合物。
【請求項4】
がC1−6アルコキシまたは1〜6個のフッ素原子を有するハロアルキルである、請求項1〜3の何れかの化合物。
【請求項5】
がOCH、OCHF、OCF、OCHCF、OCFCHまたはOCHCFである、請求項4の化合物。
【請求項6】
が存在するとき、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシまたはCOであり、RがHまたはC1−6アルキルである、請求項1〜5の何れかの化合物。
【請求項7】
が−L−NR、−X−NR−C(O)Rまたは−X−NR−C(O)NRであり;
Lが−X−C(O)であり;
Xが(CRであり;
jが0である、請求項1〜6の何れかの化合物。
【請求項8】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

から成る群から選択される、請求項1〜6の何れかの化合物。
【請求項9】

【化9】

〔Rは−NH、−NEtまたは−NH(CH1−6OHである〕
から成る群から選択される、請求項1〜6の何れかの化合物。
【請求項10】
式(2A)、(2B)および(2C):
【化10】

〔式中、RはC1−6アルコキシまたは1〜6個のフッ素原子を有するハロアルキルであり;
は存在するとき、C1−6アルキルであり;
は−L−NR、−X−NR−C(O)Rまたは−X−NR−C(O)NRであり;
Lは−X−C(O)であり;
Xは(CRであり;
およびRは独立して、H;それぞれ所望によりハロ、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシルまたはRで置換されていてもよい、C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはRとRはNと一体となって、それぞれ所望により=Oまたは1〜2個のR11基で置換されていてもよい、ピペラジニル、ピロリジニルまたはピペリジニルを形成し;
11はR、(CROR、CO、(CR−C(O)−(CR−R、(CRC(O)NR、(CRC(O)NR(CR0−6C(O)O0−1、(CRNRC(O)O0−1、(CRS(O)1−2NR、(CRS(O)1−2または(CRNRS(O)1−2であり;
およびRは独立して、(CR−Rまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノ、アミド、ヒドロキシル、アルコキシ、シアノ、カルボキシルもしくはRで置換されていてもよい、C1−6アルキル、C2−6アルケニルもしくはC2−6アルキニルであるか;あるいはRはHであり;
は所望により置換された5〜6員ヘテロアリールまたは5〜7員ヘテロ環式環であり;
RはHまたはC1−6アルキルであり;
jは0であり;
kは0〜4であり;
mは0〜1である〕
から成る群から選択される、請求項1の化合物。
【請求項11】
【化11】

【化12】

から成る群から選択される、請求項1の化合物。
【請求項12】
治療上有効量の請求項1〜11の何れかの化合物と薬学的に許容されれる担体を含む医薬組成物。
【請求項13】
PDGFRα、PDGFRβおよび/またはc−kitによって介在される状態の処置用医薬の製造のための、所望により第2の治療薬物と組み合わせた、請求項1〜11の何れかの化合物またはその医薬組成物の使用であって、前記状態が喘息、アトピー性皮膚炎、じんま疹、過敏性腸症候群(IBS)または線維症である使用。
【請求項14】
線維症が強皮症、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、原発性肺高血圧(PPH)、原発性肺動脈高血圧(PPAH)、特発性動脈高血圧(IPAH)、肝線維症、腎線維症または心線維症である、請求項13の使用。
【請求項15】
第2の治療薬物が抗線維症剤、ピルフェニドン、タクロリムス、5−クロロ−2−{(1E)−3−[2−(4−メトキシベンゾイル)−4−メチル−1H−ピロール−1−イル]プロプ−1−エン−1−イル}−N−(メチルスルホニル)ベンズアミド、抗炎症剤、コルチコステロイド、クロモリン、ロイコトリエンアンタゴニスト、IgEブロッカー、気管支拡張剤、β−アゴニスト、キサンチン、抗コリン剤または化学療法剤である、請求項13の使用。
【請求項16】
請求項1〜11の何れかの化合物が、第2の治療薬物の前、それと同時またはその後に投与される、請求項13の使用。
【請求項17】
キナーゼ活性を調節する方法であって、細胞もしくは組織系または哺乳類対象に治療上有効量の請求項1〜11の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することによってキナーゼ活性を調節することを含む方法:ここで、前記キナーゼはc−kit、PDGFRα、PDGFRβ、CSF1R、Abl、BCR−Abl、CSK、JNK1、JNK2、p38、p70S6K、TGFβ、SRC、EGFR、trkB、FGFR3、Fes、Lck、Syk、RAF、MKK4、MKK6、SAPK2β、BRK、Fms、KDR、c−rafまたはb−rafキナーゼである。
【請求項18】
キナーゼがc−kit、PDGFRαまたはPDGFRβである、請求項17の方法。
【請求項19】
請求項1〜11の何れかの化合物がc−kit、PDGFRαまたはPDGFRβとインビトロまたはインビボで直接接触する、請求項17の方法。

【公表番号】特表2010−536865(P2010−536865A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521961(P2010−521961)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/073438
【国際公開番号】WO2009/026204
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】