説明

キノア穀物抽出物を含む皮膚科学用途のための組成物

本発明は、キノア穀物抽出物を含む組成物であって、該抽出物がキノア穀物のペプチドおよび糖類抽出物、または脂質抽出物であり、前記キノア脂質抽出物自体が不ケン化物画分に濃縮された油、不ケン化または精製油を含んでなる群から選択されるものに関する。本発明はまた、これらの様々な抽出物の製造方法およびこれらの抽出物の皮膚科学または機能性食品への応用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適当な賦形剤およびキノア穀物抽出物を含んでなる化粧品、皮膚科学または栄養補給組成物に関する。
【発明の背景】
【0002】
キノア穀物は、分類学的考察および禾本類に関連付ける化学組成により擬似穀物に分類される。それがタンパク質および数種類のミネラルに富んでいることは20世紀初頭には認識されたが、その消費は6000年以上の間アンデス山脈に限定されていた。インカに起源を有するケチュア語では、「キノア」という単語はスペイン語で「キシヤ・ママ(chisiya mama)」または「母なる種子」を意味する。18世紀および19世紀に、アンデス地方を横断した旅行植物学者はそれについて強く語っていた。欧州で行ったその栽培の試みは、真に決定的なものとはならなかった。ドイツ人園芸家は1917年に試験に成功したと主張したが、後者は忘れられてしまった。栄養上の利点が立証され、過去30年間に多くの検討が行われ、好奇心の高まりにより、キノア穀物は益々魅力的となっている。キノアの植物学名はChenopodium quinoa Willd.亜種キノアである。その慣用および俗名は、
ケチュア語では、キヌア(quinua)、キウナ(kiuna)であり、(南米には、多数の他の名称がある)
スペイン語では、キノア、キヌア(quinua)、アロス・デル・ペルー(arroz del Peru;ペルーのイネ)であり、
フランス語では、キノア、プティ・リ(petit riz)、リ・ズ・ペルー(riz du Perou)であり、
英語では、キノア、キヌア(quinua)である。
【0003】
Chenopodium quinoaは1年生の草本植物であり、丈は環境条件や遺伝子型(栽培植物は1〜1.5m)によって0.5〜2.1mとなる。主根(pivot root)は密に枝分かれしており、霜に対する耐性を促進する。空中部分は、品種によらず分枝している。互生葉は、極めて多様な形態をしている(槍形、デルタ形または三角形)。葉は、植物が若いときには緑色であり、成熟すると黄色、赤色または紫色を呈する。花序は円錐花序型である。無弁花は、小さくて無柄である。
【0004】
閉果は痩果である。それは直径が2.0〜2.6mmのほぼ球形の小さな穀粒を含み、その外観はキビの外観を想起させる。色は、白色、黄赤色、紫色、褐色または黒色である。果皮は穀粒の約8%、胚芽は60〜69%および外胚乳は約23%を占める。
【0005】
アカザ属(Chenopodium genus)では、2つの野生種であるC.hircinumおよびC.berlandieriChenopodium quinoaに近い(同数の染色体(2n=36)および種間雑種形成)。雑種形成の事例は、キノアとシロアカザ(white chenopod)(Chenopodium album L.)との間にも観察されている。
【0006】
栽培キノアは、穎果の色(植物、花序、種子)、タンパク質およびサポニン含量、および葉のβ−シアニンおよびシュウ酸カルシウム含量が極めて多様である。
【0007】
アンデス地方、更に詳細にはチチカカ湖岸には、発生学的に極めて多様な個体群があることが分かっている。この地方における主な既知品種には、下記のものがある。
ペルーでは、カンコーラ(Kancolla)、チェウェカ(Cheweca)、ウィツラ(Witulla)、タウァコ(Tahuaco)、カマカニ(Camacani)、ヨカレ(Yocare)、ウィラカユニ(Wilacayuni)、ブランカ・デ・フリ(Blanca de Juli)、アマリラ・デ・マランガニ(Amarilla de Marangani)、パクス(Pacus)、ロサーダ(Rosada)、ブランカ・デ・フニン(Blanca de Junin)、ファルファス(Hualhuas)、ファンカヨ(Huancayo)、マンタロ(Mantaro)、ファカリス(Huacariz)、ファカタス(Huacataz)、アコスタンボ(Acostambo)、ブランカ・アヤクチャナ(Blanca Ayacuchana)およびマリノ(Narino);
ボリビアでは、サハマ(Sajama)、リアル・ブランカ(Real Blanca)、チュカパカ(Chucapaca)、カミリ(Kamiri)、ファランガ(Huaranga)、パサンカラ(Pasancalla)、パンデラ(Pandela)、ツピサ(Tupiza)、ファチャプク(Jachapucu)、ウィラ・コイミニ(Wila Coymini)、ケルー(Kellu)、ウチュサヤ(Uthusaya)、チュルピ(Chullpi)、カスラリ(Kaslali)およびチルピ(Chillpi);
エクアドルでは、インバヤ(Inbaya)、チャウチャ(Chaucha)、INIAP−コチャスキー(INIAP−Cochasqui)、タンラファ(Tanlahua)、ピァルタール(Piartal)、ポロトク(Porotoc)、アマルガ・デル・チンボラソ(Amarga del Chimborazo)、アマルガ・デ・インバブラ(Amarga de Imbabura)およびモラダ(Morada);
コロンビアでは、デュルセ・デ・キトパンパ(Dulce de Quitopampa);
アルゼンチンでは、ブランカ・デ・フフイ(Blanca de Jujuy);
チリでは、バェル(Baer)、リト(Lito)、ファト(Faro)およびピッチャマン(Picchaman)。
【0008】
1968年に、ボリビア人植物学者は、形態学的特徴に準じて17品種を報告した。他の植物学者は、地理学上の位置に準じて画定した4つの主要な生体型である高度2,000〜4,000mに典型的な「渓谷」型、4,000mより高い高地に典型的な「高原」型、4,000m附近のアタカマ地方の土壌の強pHに適している「塩(Salted)」型、およびボリビアの内陸渓谷で見られる「海水面(Sea level)」型を提案している。野生キノアは、アンデス山系の高原に起源を有している。これは、ペルー、ボリビア、およびチリの極北部の3,900mを越える高度に見られる。
【0009】
乾燥したキノア種子は、水(約10%、文献での報告値は12.6%)、無機物(文献に報告された値2.46〜3.4%)、炭水化物(生穀粒について文献に報告された値58.5%〜61.2%、および精白穀粒について62.8%)、タンパク質(文献に報告された値12.2〜13.8%、スイートおよびビターキノアについてそれぞれ14.8および15.7%)、脂質(文献に報告された値約4.5〜約10%)、サポニンおよびポリフェノールからなっている。示されている百分率は、乾燥穀粒の総重量に対する重量によって表されている。
【0010】
炭水化物としては、キノアの乾燥穀粒は栄養繊維(文献に報告された値6.6%)、水溶性繊維(文献によれば1.26g/100g)および水不溶性繊維(文献によれば5.38g/100g)を含む生繊維(文献に報告された値2.2%)を含んでなる。グルコース(文献によれば4.5%)、フルクトース(文献によれば2.4%)およびサッカロース(文献によれば2.4%)は、かなりの量である。示されている百分率は、乾燥穀粒の炭水化物の総重量に対する重量によって表されている。
【0011】
脂質としては、キノアの乾燥穀粒は、脂肪酸、ホスファチド(主としてリソホスファチジルエタノールアミン)、トコフェロール(主としてa−トコフェロールおよびγ−トコフェロール)、炭化水素(スクアレン)およびステロールを含んでなる。
【0012】
大部分の脂肪酸はリノール酸およびオレイン酸である。乾燥穀粒は、かなりの量のパルミチン酸およびa−リノレン酸も含んでいる。乾燥穀粒は、ミリスチン酸、5−ヘキサデセン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、エイコセン酸(eicasenoic acid)、ベヘン酸、9−ドコセン酸、テトラコセン酸または他の酸も含んでいる。生穀粒および精白して洗浄した穀粒は、極めて近似した脂肪酸割合を有する。
【0013】
文献には、高水準の遊離脂肪酸が報告されており、全穀粒の18.9%であり、ヨウ素価は129であり、ケン化数は190であり、不ケン化性物質の5.2%含量である。
【0014】
文献によれば、大部分のステロールはΔ7−スチグマステロールである。含まれていることがある他のステロールは、Δ5,24(28)−アベナステロール、β−シトステロール、Δ7−カンペステロール、スチグマステロール、コレステロール、カンペステロール、フコスタノール、24−エチレン−Δ7−コレステン−3β−オールである。
【0015】
キノア穀粒に含まれるサポニンは、様々な大陸からの研究者によって25年間詳細に研究されてきた。これらはトリテルペン性サポニンである。これらの成分は、本質的に穀粒の果皮にある。
【0016】
キノアおよびサポニンを除くその抽出物の出願は、これまでのところ食品産業の領域に限定されていた。一例としては、国際出願公開WO2005/058249号を挙げることができ、これには食品産業に用いられるタンパク質濃縮物が記載されている。
【0017】
国際出願公開WO2006/053415号では、キノアなどの植物の多数の抽出物の皮膚科学での使用が開示されている。キノア抽出物は、ストレスを加えたおよびストレスを加えない植物の水またはエタノール抽出によって得られる。これによって得られる水性抽出物は、若干の水溶性タンパク質、タンニン、遊離糖およびオリゴ糖、ヘテロシド(サポニン+フラボン)を含む。キノアのエタノール抽出物は、サポニン、ポリフェノール、トリテルペン性脂質および少数の脂質を含んでいる。しかしながら、インターロイキンIL−8について行った試験は、試験抽出物がこのインターロイキンIL−8の合成を誘発し、従ってこの抽出物が炎症促進性であるという結論を引き出す必要があることを示している。従って、実際には、これは皮膚科学での使用は勧められない。従って、キノアおよびその抽出物の重篤な状態にならない皮膚科学での使用は、これまでは考えられなかった。
【0018】
本発明者らは、驚くべきことにはある種のキノア抽出物が炎症性ではなく、興味深い化粧品、皮膚科学または栄養補給特性を有することを見出した。
【0019】
従って、本発明の目的は、キノア穀物抽出物と、必要に応じて適当な賦形剤とを含んでなり、前記抽出物がキノア穀物のペプチド抽出物または脂質抽出物であることを特徴とする化粧品、皮膚科学または栄養補給組成物である。栄養補給組成物は賦形剤を含まないことがある。
【0020】
図1は、様々な脂質およびペプチド抽出物を得るための様々な工程を示している。キノア穀物(A)で開始すると、この方法は、超臨界圧下での溶媒による加圧抽出の第一工程(1)を含んでなる。この抽出物から、脂質部分(生油(raw oil)B)またはペプチド部分(ケーキV)が選別される。生油(raw oil)を精製して(2)、精製油(C)を得る。この精製油(C)を分子蒸留(3)して、不ケン化物画分(または濃縮物D)において濃縮油を得る。次いで、この濃縮油(D)をケン化および抽出して(4)、不ケン化物(E)を得る。タンパク質部分については、ケーキ(V)を水および/またはエタノール(11)で洗浄して、サポニン、可溶性糖、ヘテロシドおよびポリフェノールを除去する(Z)。次いで、洗浄したケーキを、アルカリ性pHでタンパク質を可溶化する工程に付す(12)。一代替法としては、この方法はa−アミラーゼ/セルラーゼを用いる追加的酵素処理工程を含んでなることがある(20)。次に、この方法は、遠心分離工程に続いて限外濾過工程を含んでなり(13)、これにより不溶物(Z’)を除去し、濃縮タンパク質(W)を得る。次いで、これらの濃縮タンパク質(W)をプロテアーゼ(14)を用いる酵素処理工程に続いて、熱処理、限外濾過およびナノ濾過(15)を行い、ペプチド(X)(+ 糖Y)を得る。
【0021】
本発明の第一の代替法によれば、キノア抽出物はキノア穀物の脂質抽出物である。油は、いくつかの方法、すなわち
機械的プレスでのホットプレス、二軸スクリュー押出機でのプレスのような物理抽出、
有機溶媒(脂肪族アルカン、アルコール、塩素化溶媒、フッ素化溶媒)による化学抽出、
二酸化炭素単独および/または補助溶媒を用いる超臨界媒質での抽出
によって抽出することができる。
【0022】
油の抽出の前に、穀粒の外壁の大部分に含まれるサポニンは、摩擦による脱ぷ(husking)または水による洗浄によって予め除去するのが好都合である。更に、穀粒は、予め熱水処理を行うことができる。
【0023】
キノア生油を抽出するには、n−ヘキサンのような脂肪族アルカン型の化学溶媒を用いるのが好ましい。特定の抽出様式によれば、脱ぷして洗浄し、あるいは熱水で前処理した穀粒を平らにしてフレークを得た後、連続ベルト抽出機に導入し、脂質をn−ヘキサンにより滲出することによって抽出する。集めたミセラ(miscella)を真空で蒸発させ、溶媒除去した(desolvented)油を回収する。
【0024】
キノア生油の組成を、下記の表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
この油は消化性である。従って、それはヒトによって消費されることがある。従って、これはCODEX規格を遵守している。これは、遊離脂肪酸を全くまたはほとんど含まない。有効な規格によれば、酸価の最大値は常温圧縮によって得られる油およびバージン油については0.4mg KOH/g油である。それは、植物保護残渣およびHAP(多環芳香族炭化水素)型の酸化副生成物または残留生成物を全く含まない。
【0027】
キノア生油は、物理精製(水精製(degumming)、高温での脱臭による脱酸)および化学精製(水による粘液除去または酸処理によるリン脂質除去、塩基性溶液による遊離脂肪酸の中和、脱色、フリゲリゼーション(frigelisation)および脱臭)のような当業者に知られている方法によって精製することができる。化学精製は、抽出中に失われるサポニン、並びに大きな割合のリン脂質および遊離脂肪酸を除去することができるので、好ましい。
【0028】
本発明による精製キノア油の組成を、表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
この油は消化性である。従って、それはヒトによって消費されることがある。従って、これはCODEX規格を遵守している。これは、遊離脂肪酸を全くまたはほとんど含まない。有効な規格によれば、酸価の最大値は精製油については0.6mg KOH/g油である。それは、酸化副生成物または植物保護残渣およびHAP(多環芳香族炭化水素)型の酸化副生成物または残留生成物を全く含まない。それはトリグリセリドも含んでおり、その脂肪酸分布は出発油のものと同一であり、天然植物油の名称から利益を得ることがある。
【0031】
本発明の目的は、キノア生油の化学精製の工程を含んでなる表2に記載の組成を有する精製キノア油の製造方法でもある。有利な代替法によれば、この方法は前記工程を含んでなる。
【0032】
前記で得た精製キノア油を、分子蒸留によって濃縮して不ケン化物画分とすることができる。
【0033】
不ケン化物画分は、アルカリ性塩基を長時間作用させた後にも水に不溶性のままであり、有機溶媒で抽出することができる脂肪の画分である。植物油のほとんどの不ケン化物には、5つの大きな物質群、すなわち飽和または不飽和炭化水素、脂肪族またはテルペン性アルコール、ステロール、トコフェロール、カロチノイドおよびキサントフィル色素が含まれる。
【0034】
この分子蒸留工程は、好ましくは遠心分離機型の分子蒸留装置およびスクレープト・フィルム(scraped film)型の分子装置から選択される装置を用いることによって行われる。
【0035】
遠心分離機型の分子蒸留装置は、当業者に知られている。例えば、欧州特許出願第EP 493 144号明細書にはこの型の分子蒸留装置が記載されている。一般に、蒸留される生成物を、高速で回転している円錐ローターの加熱表面(熱表面)上に薄層として広げる。蒸留装置内を真空にする。これらの条件下では、不ケン化物のような油の成分の熱表面から蒸発は起こるが沸騰はせず、油およびその成分、特に不ケン化物(これらの生成物は周知のように分解しやすい)は蒸発中に分解しないという利点がある。
【0036】
スクレープト・フィルム型の分子蒸留装置も、当業者に知られている。一般に、これらは、蒸留を行う生成物を蒸発表面(熱表面)上で連続的に広げることができる回転スクレーパーを備えた蒸留室を含んでなる。生成物蒸気は、蒸留室の中央に置かれた冷凍フィンガー(refrigerated finger)によって凝縮される。フィーダーおよび真空周辺装置は、遠心分離蒸留装置のものに極めて類似している(フィーダーポンプ、真空滑り羽根型回転ポンプおよび拡散ポンプなど)。ガラスフラスコ中の残渣および留出物の回収は、重力流によって行われる。
【0037】
分画工程が終了したならば、不ケン化物含量が高い蒸留画分は、好都合には出発油の5〜15重量%となり、トリグリセリド含量が高い蒸留画分は好都合には出発油の85〜95重量%となる。この方法は不ケン化化合物の化学修飾または変化を引き起こさず、不飽和度の大きい画分が保存されたことも明らかにされた。従って、濃縮キノア油の脂肪酸分布は、濃縮前のキノア油の脂肪酸分布と同一である。
【0038】
本発明の好都合な代替法によれば、不ケン化物画分における濃縮キノア油は下記の表3に示す組成を有する。
【0039】
【表3】

【0040】
不ケン化物画分含量が高いこの精製油は、本質的に新規食品であり、同じく本発明の目的である。従って、これはヒトが消費することができる。従って、それはCODEX規格を遵守している。それは、遊離脂肪酸を全くまたはほとんど含まない。所轄官庁での新規な食品生成物の認可手続きの範囲内において、最大酸価値が定義される。
【0041】
更に、それは、植物保護残渣およびHAP(多環芳香族炭化水素)型の酸化副生成物または残留生成物を全く含まない。それはトリグリセリドも含み、脂肪酸分布は出発油の脂肪酸分布と同一であり、天然植物油の名称から利益を得ることがある。
【0042】
この精製油は不ケン化物画分含量が高いので、精製油と同じトリグリセリド供給のために、更にカロリー摂取を行うことなくフィトステロールおよびビタミンのような一層多量の栄養素を生体に供給することができる。
【0043】
本発明の目的は、また精製キノア油の分子蒸留の工程を含んでなる不ケン化物画分で濃縮したキノア油を製造する方法である。詳細には、分子蒸留工程は、遠心分離機型の分子蒸留装置およびスクレープト・フィルム型の分子装置から選択される装置を用いて行われる。この方法は、好都合には前記の工程を含んでなる。
【0044】
キノア油の不ケン化物は、当業者に知られている方法によって得ることができる。例えば、それらは、不ケン化物画分で濃縮したキノア油についてケン化を行った後、適当な溶媒でこの不ケン化物を抽出することによって得ることができる。次いで、この抽出物を洗浄して石鹸を完全に除去した後、溶媒を蒸発させる。最後に、不ケン化物を好都合には蒸気で脱臭した後、窒素でストリッピングして微量の溶媒を除去する。
【0045】
キノア油不ケン化物は、好都合には下記の表4に示す組成を有する。
【0046】
【表4】

【0047】
本発明は、不ケン化物画分で濃縮したキノア油をケン化した後、この不ケン化物を適当な溶媒で抽出する工程を含んでなるキノア不ケン化物を製造する方法にも関する。この方法は、好都合には前記工程を含んでなる。
【0048】
本発明の範囲内では、キノア穀物の脂質抽出物は、それ自体不ケン化物画分において濃縮された油、不ケン化物または前記組成(表2)を有する精製油からなる群より選択される。
【0049】
本発明の第二の代替法によれば、キノア抽出物は、キノア穀物のペプチドおよび糖類抽出物である。
【0050】
ペプチドおよび糖類抽出物は、好都合には
a)キノア穀物から出発し、生油およびケーキを抽出し、前記ケーキを回収し、
b)前記ケーキを水または水/アルコール混合物で洗浄してタンパク質部分のみを保持し、次いで
c)タンパク質を可溶化し、
d)タンパク質を濃縮した後、前記タンパク質を加水分解してペプチドとし、
e)ペプチド抽出物を精製して回収する
連続的な工程を含んでなる方法によって得られる。
【0051】
本発明によるペプチドおよび糖類抽出物は、好都合には下記の組成を有する。
【0052】
【表5】

【0053】
本発明の目的は、
a)キノア穀物から出発し、生油およびケーキを抽出し、前記ケーキを回収し、
b)前記ケーキを水または水/アルコール混合物で洗浄してタンパク質部分のみを保持し、次いで
c)タンパク質を可溶化し、
d)タンパク質を濃縮した後、前記タンパク質を加水分解してペプチドとし、
e)ペプチド抽出物を精製して回収する
連続的な工程を含んでなる、キノアのペプチドおよび糖類抽出物の製造方法でもある。
【0054】
更に、タンパク質を濃縮する前に(工程d)、繊維を除去するのが好都合である。
【0055】
ペプチドおよび糖類抽出物を得るための好ましい態様を、以下に説明する。
【0056】
脂質の抽出中に、溶媒を除去した後に得られるキノア穀粒のケーキを水または水/エタノール混合物に分散させ、サポニン、ヘテロシドおよびポリフェノールを抽出し、除去する。この混合物を遠心乾燥(spin-dried)または遠心分離してペレットを回収し、液体を廃棄する。ペレットを8〜13のアルカリ性pHで水に分散混合し、タンパク質を可溶化させる。繊維は、フレッシュ遠心分離(fresh centrifugation)によってまたは澱粉および繊維(セルロース、ヘミセルロースなど)をa−アミラーゼとセルラーゼの混合物により加水分解することによって除去することができる。
【0057】
次に、可溶性タンパク質を、等電点における酸媒質での沈澱によってまたは限外濾過によって濃縮する。次いで、濃縮したタンパク質を、酵素、好都合にはアルカリプロテアーゼによって加水分解する。熱処理によって、反応の終了時に酵素を変性させることが可能である。
【0058】
反応媒質を、カットオフ閾値が10kDaの膜で限外濾過を行い、残留タンパク質(残留物(retentate))を除去する。次に、透過物を所望な乾燥材料レベルまで濃縮し、カットオフ閾値が200kDaの膜によるナノ濾過によって脱塩する。最後に、無菌濾過した後に(0.2μm)、生成物をコンディショニングする。
【0059】
組成物は、更に
皮膚軟化薬、加湿活性剤、ケラチン合成の活性剤、角質調節剤、角質溶解剤、皮膚バリヤー再構成薬(皮膚脂質合成活性剤)、PPAR(ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体)作動薬、RXRまたはLXR作動薬、SERM、ビタミンDまたはコルチコイド受容体の作動薬、ケラチノサイト分化活性剤(レチノイド、カルシドン(calcidone)(商標)、カルシウム)、皮脂調節剤(5−aレダクターゼの阻害剤、特にLaboratoires Expanscienceから発売されている5−a活性Avocuta(商標))、防腐剤、刺激防止薬、鎮静剤、日光フィルターおよび遮断薬、酸化防止薬のような皮膚科学で従来から用いられている活性剤、
抗生物質、プレおよびプロ−バイオティクス(pre- and pro-biotics)、抗菌薬、抗真菌性化合物、抗ウイルス薬、免疫調節薬(タクロリムスまたはピメクロリムス)、オキサゾリン、成長因子、治癒薬または富栄養分子、薬剤、抗炎症薬、色素または低色素薬、脂肪分解薬または脂質形成阻害薬、色素または超微細無機または有機日光フィルターおよび遮断薬、通常または機能性食品: 高または低血糖、抗脂肪または抗蜂巣炎栄養素、閉経の二次徴候に影響する抗コレステロール、酸化防止剤、賦活薬、強壮栄養素のような補助治療作用を有する活性成分、
天然植物抽出物(水性または油性相で抽出可能な植物部分:ポリフェノール、フラボノイド、他のペプチドおよび糖など)、植物油の不ケン化物を含む化合物、ステロール不ケン化物、またはそれらを含むことがある生成物(植物油の不ケン化物、特に大豆油の不ケン化物、植物性バターの不ケン化物、またはバター様材料およびそれらの混合物、天然ワックスの不ケン化物、油抽出物の不ケン化物、産業上の油性副生成物の不ケン化物、動物性脂肪抽出物の不ケン化物、魚油の不ケン化物、乳脂肪の不ケン化物、単細胞生物から抽出した脂質の不ケン化物、藻類および海洋生物から抽出した脂質の不ケン化物など)、ステロール、スタノール、フィトステロール、フィトスタノール、トコフェロール、ヒマワリ濃縮物、ナタネおよび/またはヤシ油、オリゴ要素、ビタミン、ω3、6または9脂肪酸、低血糖または高血糖性または甘味植物
からなる群より選択される少なくとも1種類の化合物を含んでなる。
【0060】
共同して用いることができるケラチン合成の活性剤は、好都合にはレチノイド、Silabから発売されているルピナスペプチド、角質層または顆粒層(ケラチン)および角質デスモソーム由来のキータンパク質である。
【0061】
共同して用いることができる鎮静薬は、好都合にはa−ビスアボロール、甘草誘導体、イブプロフェン、エノキソロンである。共同して用いることができる角質調節薬は、好都合にはa−ヒドロキシル酸およびその誘導体である。共同して用いることができる角質溶解薬は、特にサリチル酸およびその誘導体である。
【0062】
共同して用いることができる成長因子は、好都合にはベカプレルミンおよびTGF−β(トランスフォーミング増殖因子β)、EGF、NGF、VEGFである。
【0063】
共同して用いることができる酸化防止剤は、好都合にはオリゴ元素(銅、亜鉛、セレン)、単独またはビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、フラボノイド(緑茶など)、β−カロチン、リコピン、またはルテインと組み合わせたリポ酸、カルノシン、n−アセチル−システイン、大豆イソフラボン、大豆タンパク質のような抗グリケーション物質、並びに酸化防止剤またはラジカル酵素、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、チオレドキシンレダクターゼおよびそれらの作動薬からなる群より選択される。
【0064】
皮膚バリヤー再構成薬は表皮の基本的脂質の合成を刺激することができ、共同して用いることができる、好都合にはヒマワリ濃縮物、更に好都合にはリノール酸性ヒマワリ濃縮物、例えばLaboratoires Expanscienceから発売されている活性生成物、Soline(商標)(国際出願公開WO01/21150号を参照されたい)、植物油の不ケン化物、例えばAvocadofurane(商標)(国際出願公開WO01/21150号を参照されたい)、PPAR作動薬(ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)、RXR、LXRである。
【0065】
共同して用いることができる抗真菌薬は、好都合にはエコナゾールおよびケトコナゾールである。
【0066】
共同して用いることができる殺菌防腐剤は、例えばトリコサン、クロルヘキシジン、第四アンモニウムである。
【0067】
共同して用いることができる抗生物質は、好都合にはフシジン酸、ペニシリン、テトラサイクリン、プリスチナマイシン、エリトロマイシン、クリンダマイシン、ムピロシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンである。共同して用いることができる抗ウイルス薬は、好都合にはアシクロビールおよびバラシクロビールである。共同して用いることができる抗刺激薬は、好都合にはグリシン、糖および/またはルピンペプチド、Cycloceramide(商標)(オキサゾリン誘導体)である。
【0068】
共同して用いることができる治癒薬は、好都合にはビタミンA、パンテノール、Avocadofurane(商標)、酸化亜鉛、マグネシウム、ケイ素、マデカシン酸またはアシアチン酸、デキストラン硫酸、グルコサミン、コンドロイチン硫酸および包括的にはGAG、醗酵したまたは醗酵していない大豆のペプチド、オリゴ元素である。
【0069】
共同して用いることができる薬剤は、好都合にはアトピー(コルチコイド、局所用免疫調節薬、カルシニューリン阻害薬、皮膚軟化薬)、ニキビ(抗生物質、過酸化ベンゾイル、レチノイド、アゼライン酸、ビタミンPP、ビタミンB3、亜鉛、サイクリン)、湿疹(免疫調節薬、皮膚軟化薬、サケ油、ルリヂサ油、プレ−バイオティクス(pre-biotics))または乾癬(コルチコイド、カルシポトリオール、カルシトリオール、タザロテン、ネズノミタール(cade oil)、アシトレチン、PUVA療法)の予防および/または治療を目的とする局所または経口投与に適する薬剤、または高脂肪血症薬(または食品)および/または低脂肪血症薬(または食品)である。後者の種類の薬剤の両方では、スルホニル尿素およびグリニドを基剤とする薬剤、a−グルコシダーゼの阻害薬を基剤とする薬剤、ビグアニド(メトホルミン)を基剤とする薬剤、インスリン感受性活性剤またはチアゾリジンジオン(TZD、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン)を基剤とし、PPAR作動薬である薬剤、スタチンファミリーまたはフィブレートファミリー(PPARa作動薬)の低脂肪血症薬、オルリスタット(ゼニカル)およびシブトラミン(レダクチルまたはシブトラール)を挙げることができる。
【0070】
共同して用いることができる抗脂肪栄養素は、好都合にはキトサンのような脂肪の吸収を遮断する栄養素、エフェドリン(Ma Huangチャイニーズ・ハーブ)、カフェイン、テインおよびアマダイダイのような熱発生を増加させることができる栄養素(「脂肪燃焼装置」)、L−フェニルアラニンおよびL−チロシンのような食欲を制御することができる栄養素(「食欲抑制薬」)、ミネラル、例えばクロムまたはバナジウムまたはマグネシウムまたはアーユルベーダ・ハーブGymnema Sylvesterのような血糖を調節することができる栄養素、Garcinia cambodgiaから抽出されるヒドロキシクエン酸のような脂質形成阻害薬、およびL−カルニチンのような脂肪を輸送することができる栄養素からなる群より選択される。
【0071】
血糖を再均衡させる食品および高血糖療法の例は、レトロウイルス薬、糖質コルチコイド、免疫抑制薬、IFN−a、性ステロイド、SHT、ピル、成長ホルモン、交感神経興奮薬、循環器薬、利尿薬、β−遮断薬、カルシウム阻害薬、向精神薬である。
【0072】
共同して用いることができる抗炎症薬は、好都合にはコルチコイドのようなステロイド抗炎症薬(AIS)または非ステロイド薬(AINS)である。
【0073】
共同して用いることができる免疫調節薬は、好都合にはタクロリムス、ピメクロリムスおよびオキサゾリンである。共同して用いることができるオキサゾリンは、好都合には2−ウンデシル−4−ヒドロキシメチル−4−メチル−1,3−オキサゾリン、2−ウンデシル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン、(E)−4,4−ジメチル−2−ヘプタデス−8−エニル−1,3−オキサゾリン、4−ヒドロキシメチル−4−メチル−2−ヘプタデシル−1,3−オキサゾリン、(E)−4−ヒドロキシメチル−4−メチル−2−ヘプタデス−8−エニル−1,3−オキサゾリン、2−ウンデシル−4−エチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−オキサゾリンである。更に好都合には、前記オキサゾリンは、OX−100またはCycloceramide(商標)と呼ばれる2−ウンデシル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリンである。
【0074】
共同して用いることができる低色素薬は、ヒドロキノンおよびその誘導体、アルブチン、レチノイン酸、レチノール、レチンアルデヒド、コウジ酸、アゼライン酸、ビタミンB3またはPP、レゾルシノール誘導体、レスベラトロール、甘草またはシロクワ抽出物、a−リポ酸、リノール酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)のようなカチオンキレート化剤、大豆抽出物である。Seppicから発売され、色素脱失化粧薬でもあるSepiwhite(商標)(N−ウンデシレノイル−L−フェニルアラニン)も挙げることができる。
【0075】
色素薬の一例としては、
皮膚を着色する薬剤:ジヒドロキシアセトン、メラニン、
天然の着色過程を刺激する薬剤:ソラレン(8−メトキシソラレン、5−メトキシソラレン、4,5’,8−トリメチルソラレンまたはPsorelea corylifoliaおよびAmmi majusの植物抽出物)、カロチノイド(リコペン、カンタキサンチン)、サイクリックAMP経路を刺激する薬剤(1.8−ブロモ−cAMPまたはジブチリル−cAMPのようなcAMP類似体、2.ホルスコリン、3.イソブチル−メチル−キサンチンまたはテオフィリン)、キナーゼCタンパク質の活性剤(ジアセチルグリセロール、特にオレイル−アセチル−グリセロール)、脂肪族または環状ジオール(1,2−プロパンジオール、5−ノルボルナン−2,2−ジメタノール、ノルボルナン−2,2−ジメタノール)、モノテルペン二環性ジオール、チロシン誘導体(L−チロシン、L−DOPA)、ジメチルスルホキシド、リソモトローピック薬(lysomotropic agents)、チミジンジヌクレオチド、DNA断片、メラニン細胞刺激ホルモン類似体、3−イソブチル−l−メチルキサンチン、硝酸ドナー(Brown, Journal of Photochemistry and Photobiology B: biology 63 (2001) 148-161)、
植物抽出物、特にメラニン形成促進作用を示す藻類:Laminaria digitata(Thalitan de Codif)
を挙げることができる。
【0076】
共同して用いることができる天然植物抽出物は、好都合にはアボカド、ルピナス、大豆またはヒマワリ、トウモロコシおよびナタネあるいはマカの抽出物である。特に、アボカド糖質(国際出願公開WO2005/115421号を参照されたい)またはアボカドペプチド(国際出願公開WO2005/105123号を参照されたい)を挙げることができる。
【0077】
共同して用いることができる植物油の不ケン化物を含む化合物は、好都合にはアボカドフラン脂質、アボカドおよび大豆不ケン化物、ルピナス油濃縮物、ヒマワリ、トウモロコシおよびナタネ油の濃縮物、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0078】
共同して用いることができるアボカドフラン脂質は、好都合には天然の2−アルキルフラン、特にLaboratoires Expanscienceから発売されている活性生成物Avocadofurane(商標)であり、これは国際出願公開WO01/21605号に記載の方法によって得ることができる。
【0079】
共同して用いることができるアボカドおよび大豆不ケン化物は、好都合にはフラン性アボカド不ケン化物と大豆不ケン化物のそれぞれの比が約1/3−2/3の混合物である。アボカドおよび大豆不ケン化物は、更に好都合にはLaboratoires Expanscienceによって発売されている製品Piascledine(商標)である。
【0080】
共同して用いることができるルピナス油濃縮物は、好都合にはルピナス油、好都合にはスイート・ホワイト・ルピナス油(sweet white lupine oil)の分子蒸留によって得られる濃縮物であり、例えば国際出願公開WO98/47479号に記載の濃縮物である。それらは、好都合には約60重量%の不ケン化物を含む。
【0081】
共同して用いることができるヒマワリ油濃縮物は、好都合にはリノール酸性ヒマワリ濃縮物であり、例えばLaboratoires Expanscienceから発売されている活性生成物Soline(商標)である(国際出願公開WO01/21150号を参照されたい)。
【0082】
「ステロール」不ケン化物は、ステロール、メチルステロールおよびトリテルペンアルコール含量が不ケン化物の総重量に対して20〜95重量%、好ましくは45〜65重量%である不ケン化物である。
【0083】
共同して用いることができる低血糖植物は、好都合にはコロハ(Trigonella graenum)、コロソール酸(樹木Lagestroemia speciosaの葉の活性化合物)、Gymnema syllvestre、ニガウリ(Momormodica charantia)の果汁、ユーカリノキ(Eucalyptus globulus)、オタネニンジン(Panax ginseng)、ブルーベリーの葉(Vaccinum myrtillus)からなる群より選択される。
【0084】
共同して用いることができるオリゴ元素は、好都合にはマグネシウム、クロム、セレンおよびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0085】
本発明による組成物は、局所投与、経口、直腸、経膣、経鼻、経耳または気管支投与、非経口投与に適する様々な製剤として処方することができる。
【0086】
第一の代替法によれば、様々な製剤が局所投与に適しており、クリーム、エマルション、ミルク、軟膏、ローション、油、水または水/アルコールまたは水/グリコール溶液、散剤、絆創膏、スプレーまたは外部適用のための任意の他の生成物が挙げられる。
【0087】
第二の代替法によれば、様々な製剤は経口投与に適しており、キノア抽出物は食品組成物または栄養補助食品に加えることができる。栄養補助食品は、キノア抽出物それ自体(例えば、不ケン化物画分で濃縮されることがある精製油)としてまたは本発明の範囲内のゼラチンカプセルまたは軟質ゼラチンカプセルまたは植物カプセルとして現れることがある。次に、前記栄養補助食品は、10〜100重量%のキノア抽出物を含むことがある。
【0088】
本発明のこの第二の代替法によれば、本発明のキノア抽出物は、何らの制限なしに食品、飲料および栄養補給に配合することができ、下記の
1) 酪農製品: 例えば、チーズ、バター、ミルクおよび他の乳飲料、乳製品を基剤とした混合物およびスプレッド、アイスクリームおよびヨーグルト、
2) 脂肪を基剤とした製品: マーガリン、スプレッド、マヨネーズ、クーリング・ファッツ(cooling fats)、フライ用油、およびフレンチ・ドレッシング、
3) 穀物からなるシリアルを基剤とする製品: 食材を加熱調理、オーブンで加熱調理または変容させたパンおよびパスタ、
4) 菓子: チョコレート、砂糖菓子、チューインガム、デザート、トッピング、シャーベット、糖衣、および他の付け合わせ、
5) アルコールまたは清涼飲料: 例えばソーダ水および他の清涼飲料、フルーツジュース、補助栄養食品、Boost(商品名)およびEnsure(商品名)の名称で販売されている飲料形態の代替食品、および
6) 様々な製品: 例えばスープ、パスタ用の既製スープ、調理食品および同じ種類の他の製品
に含まれる。
【0089】
本発明の組成物は、混合、注入、混合、吸収、捏和および噴霧のような手法によって直接何らの変更なしに食品、栄養補給、ダイエット製品、特に高タンパク質製品(hyperprotein products)または飲料、およびこれに配合することができる。
【0090】
本発明による化合物および組成物の投与様式、投薬量および最適生薬形態は、医薬治療、特に患者または動物に適している皮膚科学または獣医治療の確率に一般に考慮される基準、例えば患者または動物の年齢または体重、一般的症状、治療に対する耐性、報告されている副作用、皮膚の種類によって決定することができる。所望な投与の型によっては、本発明による組成物および/または活性化合物は、更に少なくとも1種類の薬学上許容可能な賦形剤、特に皮膚科学的に許容可能な賦形剤を含んでなることがある。第一の代替法によれば、外部の局所経路を介する投与に適する賦形剤が用いられる。本発明による組成物は、更に増粘剤、防腐剤、香料、色素、化学またはミネラルフィルター、加湿剤、温泉などから選択される当業者に知られている少なくとも1種類の薬学アジュバントを含んでなる。
【0091】
前記組成を有する精製キノア油を含んでなる組成物は、特に化粧品、皮膚科学または食品使用を目的とする。化粧品または皮膚科学使用の範囲内では、組成物は、好都合には局所投与に適した製剤として処方される。栄養または化粧目的での食品(「化粧−食品(cosmeto-food)」)での使用の範囲内では、組成物は、好都合には経口投与に適した製剤として処方される。それは、賦形剤を全く含まないことがあり、精製キノア油だけからなることがある。
【0092】
不ケン化物画分が高い精製キノア油を含んでなる組成物は、特に化粧品、皮膚科学または食品使用を目的としている。化粧品または皮膚科学での使用の範囲内では、組成物は、好都合には局所投与に適した製剤として処方される。栄養または化粧目的での食品(「化粧−食品(cosmeto-food)」)での食品使用の範囲内では、組成物は、好都合には経口投与に適した製剤として処方される。それは、賦形剤を全く含まないことがあり、不ケン化物画分において濃縮された精製キノア油だけからなることがある。
【0093】
不ケン化物を含んでなる組成物は、特に化粧品または皮膚科学での使用を目的としている。組成物は、好都合には局所投与に適した製剤として処方される。
【0094】
ペプチド抽出物を含んでなる組成物は、特に化粧品または皮膚科学での使用を目的としている。組成物は、好都合には局所投与に適した製剤として処方される。
【0095】
本発明の目的は、キノアのペプチドおよび糖類抽出物またはキノアの脂質抽出物であって、前記キノアの脂質抽出物それ自体は不ケン化物画分で濃縮した油、不ケン化物または皮膚科学組成物または機能性食品を製造する目的で表2に示した組成を有する精製油からなる群より選択されるものから選択されるキノア抽出物の使用でもある。
【0096】
機能性食品は、通常の食品であるか、または通常の食品に属しかつ通常の栄養機能を上回る有益な生理作用を提供するまたは慢性疾患の危険性を減少させる特性を有する食品の側面を有するものである。
【0097】
本発明は、化粧治療、衛生管理、美容の方法、および/または粘膜および/または色素沈着疾患を有し、過剰量の脂肪塊に関する見苦しい側面を有するアレルギー傾向の本質的、非本質的またはホルモン性老化に関係したまたは外来攻撃(汚染物質、UV、ストレスなど)に関係した不均衡を有する正常、乾燥、脂肪、雑多な、脱水した、老化した、感受性の、炎症を起こした、心地よくない、耐性のない皮膚に付香する方法であって、本発明による組成物または機能性食品を投与することからなることを特徴とする方法に関する。
【0098】
本発明は、本発明による組成物または機能性食品を投与することからなることを特徴とする、珠皮(毛髪、体毛、爪)の治療方法にも関する。
【0099】
詳細には、組成物または機能性食品は、
ニキビ、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、赤鼻、乾癬、脈管傷害、シート皮膚炎(seat dermitis)、糜爛、亀裂、刺傷、特に胸部の亀裂、日射病、任意の種類の光線による炎症、刺激またはアレルギー(化学、物理薬剤(引張応力:妊婦)による)、細菌、真菌またはウイルス、寄生生物(蚤、疥癬、白癬、ダニ、皮膚糸状菌)、放射線または放射物(UV、IR)刺激またはアレルギー、または先天性免疫不全(抗微生物ペプチド)または後天性免疫不全(細胞性、体液性サイトカイン)、皮膚萎縮線条のような、皮膚、および/または
粘膜(歯肉炎(タバコへの耽溺に関する衛生上の新生児の感受性歯肉炎))、パロドントパシー(parodontopathy)、外部または内部雄または雌の性器球(genital spheres)の刺激、および/または
未成熟、正常または成熟した珠皮(脱毛、フケ、多毛症、脂漏性皮膚炎)
のアレルギー性、炎症性、刺激性病理または反応、またはバリヤーまたはホメオスタシスの反応または異常を予防および治療を目的とする。
【0100】
組成物または機能性食品は、組織再生および治癒促進を目的とすることもあり、または皮膚バリヤーの保護および強化、色素沈着疾患の調節、および脂質分解および脂質生成機構への作用を目的とすることもある。
【0101】
場合によっては不ケン化物画分において濃縮された精製キノア油は、更に下記の利点を有し、すなわちアテローム発生の危険性を減少させることができ、低コレステロール血症の特性を有し、ある種の癌および循環器疾患の予防、高齢者の免疫応答の刺激、白内障の危険性の減少および自律神経疾患の進行速度の低下に作用する。
【0102】
場合によっては不ケン化物画分において濃縮された精製キノア油のもう一つの利点は、これを化粧品(「食品−化粧品」)に、更に詳細には皮膚の外観を向上させ、皮膚を加湿し、皮膚バリヤーおよび角質間細胞セメントの条件を本質的脂肪酸およびステロールを提供することによって保存して、フリーラジカルを除去することによって皮膚老化を防止する目的で、また太陽光線からの保護または抗炎症薬として用いることができることである。
【0103】
本発明の好ましい代替法によれば、不ケン化物画分において濃縮された精製キノア油は、皮膚組織に関連した疾患の治療に用いられる。皮膚の結合組織は、皮膚レベルでの支持体および維持体、衝撃吸収剤として重要な役割を果たしており、真皮は特に堅さおよび柔軟性に関与している。従って、コラーゲンネットワーク(コラーゲン、特にI、III、IIおよびV型)または弾性ネットワーク(エラスチン−コラーゲン繊維の合成の阻害、不完全合成、崩壊、繊維芽細胞の数およびそれらの代謝の減少など)の変化に伴うこの組織の変性は、
特に繊維芽細胞の数および活性の減少並びに細胞外マトリックスの過剰崩壊を特徴とする皮膚老化(年代順の外因性老化または光老化および更年期老化)、
皮膚萎縮線条、炎症、フィブロネクチン、IおよびIII型のコラーゲンおよびエラスチンをコードする遺伝子の発現の阻害、機械的膨張の影響下での繊維芽細胞の筋繊維芽細胞への形質転換を特徴とする繊維芽細胞の疾患。このコラーゲン組織の変性により、萎縮性の皮膚瘢痕が形成される。主要な誘発因子は、炎症および機械的ストレスおよびホルモン環境(妊娠中)である。皮膚萎縮線条は、若い本質的に女性集団の約50%を冒している。それらは、一般に妊娠中(妊婦の60〜70%)、思春期中(少年の10%に対して少女の25%)、またはある種の(代謝性、内分泌および感染性)疾患に見られる。これらは、皮膚割線の方法に向けられた直線状の若干くぼんだ狭い外傷であり、折り畳まれた表皮で覆われている。それらの色は進展段階によって変化し、最初は赤色または暗紫色であるが、その後第二期には虹色に輝く白っぽい外観を呈する、
深い創傷は真皮に達し、繊維芽細胞の数の減少およびマトリックスの崩壊を伴う皮膚組織変化を引き起こす。治癒機構を設定して、変化した組織を修復し、繊維芽細胞は増殖し、細胞外マトリックスを改造し、様々な成分の合成
に重要な結果を生じることがある。
【0104】
従って、本発明のもう一つの目的は、皮膚老化、皮膚萎縮線条および深い創傷の予防および/または治療を目的とする不ケン化物において濃縮した前記油の使用である。不ケン化物において濃縮した前記油は、治癒の促進に用いられることもある。
【0105】
本発明のもう一つの好都合な代替法によれば、不ケン化物において濃縮した前記油は、真皮の皮下萎縮の予防および/または治療に用いることができる。皮下萎縮は、皮膚科学でしばしば見られる問題である。それらは、様々な病因に対して二次的であることがある。それらの局在性によっては、これらの外傷は小さな美的問題であり、または反対にヒトを大きく不利にする。
【0106】
皮下萎縮は、様々な病因を有することがある。最初に、外傷後(ちょうど真皮までの外傷)または炎症後(例えば、ざ瘡後)の瘢痕萎縮が挙げられる。 外傷後萎縮瘢痕としては、乳頭状パターンを喪失した真皮−上皮接合の再配列を示している線状基底膜を有する上皮萎縮が挙げられる。組織学的には、真皮の厚みは減少し、コラーゲン繊維は細く、繊維細胞は通常の皮膚より多数であることが多い。皮膚萎縮としては、毛包脂腺およびときには発汗副器官の発育不全も挙げられる。炎症過程からの瘢痕は、深い真皮および皮下組織で形成されることが極めて多い。硬化症を伴う真皮の肥厚化がある。細胞外マトリックスの成分は、肥厚化した緻密なコラーゲン繊維で徐々に置換される。この硬化症過程は、皮膚の血管新生および副器官の減少を伴う。この段階で、局在化した(変形した)硬皮症で見られることがある病状である硬化−萎縮が示されている。この過程は、免疫(深部の狼瘡、Perry−Romberg症候群)、薬剤に関連した(トリテラフィー(triteraphy)、コルチコイドの注射)、酵素性(膵臓細胞脂肪壊死(cytosteatonecroses))、または外傷性(大腿部までのストッキングを着用している女性の皮下組織の萎縮)炎症に関連して皮下組織にも影響することがある。
【0107】
真皮−コルチコイドによる局所治療に由来する、更年期に由来しかつSHT(代替ホルモン治療)に関連したまたは関連しない、遺伝子または遺伝子以外のある種の疾患、発育不全、コラーゲンの皮膚の結合組織の疾患、Goltz症候群、Pasini−Pierini皮膚萎縮症、萎縮性毛髪角化症、最後に皮膚移植、火傷、任意の起源の皮膚物質の喪失、褥瘡の際の他の萎縮が挙げられる。
【0108】
従って、タンパク質活性を再開するキノア濃縮物(=不ケン化物において濃縮した油)を基剤とする治療による提案を、真皮の萎縮に対して行う。
【0109】
本発明の好ましい代替法によれば、キノアのペプチドおよび糖類抽出物が上皮の治療に用いられる。
【0110】
皮膚の保全の心配が、いくつかの状況で起こることがある。皮膚は、手術、火傷、放射線、切り傷、かすり傷、摩擦および圧力の際に損傷を受けることがある。傷の重篤度は、範囲、深さおよび性質のようなある種の因子によって変化する。皮膚の本質的機能を保持するには、このような出来事が起きたときにそれを修復することが極めて重要である。皮膚の傷の治癒は、傷口が閉じて皮膚組織の機能が回復する過程の全体を表す。表皮は再生または再上皮化によって治癒し、すなわち表皮はその構造およびその元の機能を回復する。再生により外傷に反応することはできないので、真皮は修復によって治癒し、すなわち、元の組織は非特異的結合組織によって置換され、その結果、機能性の低い瘢痕(例えば、機械的強度の一層低いもの)が形成される。これらの過程は、様々な細胞個体群、明瞭な細胞区画性(表皮および真皮)、これら総ての要素の間には各種のメディエーターおよび多数の相互作用を含み、全体は長時間変化する。
【0111】
再上皮化は、傷を被覆して再度外部環境に対する保護バリヤーを形成し、傷の結果としての死亡率を減少させる組織化され、扁平な層状の角質化した上皮のケラチノサイトによる再生にある。再上皮化機構は、時間をずらした方法以外は平衡して起こる3段階、すなわち(1)ケラチノサイトの移動(細胞移動は、接触阻害の喪失、成長因子または細胞によって分泌されるタンパク質のような炎症メディエーターの存在だけでなく、フィブロネクチンおよびラミニン5のようなマトリックスの基質との様々な接触によっても影響を受けることがある)、(2)細胞増殖(有糸分裂ウエーブ(mitotic wave)は、移動する細胞によって残された空間を満たし、外傷を被覆する目的で起こる。48〜72時間後に起こるケラチノサイトの増殖は、移動には影響しないと思われる。それは、繊維芽細胞のような隣接細胞によってまたはケラチノサイト自体によって分泌されることがある多くの因子: KGF(ケラチノサイト増殖因子)、IL−1、IL−6、IL−8、コロニー刺激因子(CSF)、PDGF、TNF−a、IGF−1(インスリナーゼ増殖因子)の影響下で行われる)、(3)表皮の成熟(表皮の成熟および分化は、傷の閉鎖と同時に起こり、ケラチノサイトの機能および正常な形態の回復に対応する)。ケラチノサイトを活性化し、それらの形態を移動に適合させ、傷を再上皮形成する目的で様々な増殖因子の影響下で増殖する。傷の被覆の進行と共に、新たな表皮が成熟し始め、角質保護層を形成する。
【0112】
ケラチノサイトの移動を制御するある種の増殖因子は、移動に影響を与えることもできる。これは、ケラチノサイトの表面でインテグリンa2β1だけでなく移動に関与する主要因子の1つでありかつマトリックス合成を活性化することによって作用するTGFβの発現も増加させながらそれを刺激するEGFおよびTGF−βの場合である。
【0113】
細胞−マトリックス相互作用は、傷の治癒の際に重要である。実際に、細胞外マトリックスは、移動する細胞を導く接着物質および繊維を含んでいる。同様に、血液に含まれる分子は、細胞移動に寄与することがある。例えば、フィブリンおよびフィブロネクチンは一時マトリックスに接着し、ケラチノサイトが移動し得る構造を形成する。移動するケラチノサイトは、このマトリックスの要素を合成する。ケラチノサイトは、ラミニン5、コラーゲンVおよび水疱性類天疱瘡の抗原を合成する。ケラチノサイトの移動に対する様々な基質の効果は、インテグリン、および連続的にこれらの基質に接着させかつ解放することができる細胞外マトリックスのプロテアーゼ(MMP−1、MMP−2およびMMP−9)の分泌によって伝達される。
【0114】
ラミニン5は、粘膜または皮膚のような上皮の基底膜の特異タンパク質であり、分泌または保護機能を有する。ラミニン5は、表皮を固定する複合体の重要な要素として、および基底膜の安定性に最も寄与するタンパク質として考えられている。ラミニン5は、a3、β3およびγ2のヘテロ三量体性の集合体から生じ、専ら前駆体としての上皮細胞によって合成される。ラミニン5の主要な役割は、その構成的サブユニットの1つの合成および/または発現の異常から生じる遺伝性または後天性疾患の存在によって強調される。接合部表皮水疱症と呼ばれるこれらの疾患は、表皮水疱の自発的形成を特徴とする皮膚の真皮−上皮接合の脆さを生じる。従って、ラミニン5は、隣接する上皮細胞を粘着することができるので、決定的な生物学的役割を有する。安定な粘着におけるその役割に加えて、ラミニン5は、上皮治癒の初期に移動するケラチノサイトによって強力に発現されるので、細胞移動の際に重要な役割を果たす。正常な皮膚では、基底膜ケラチノサイトの細胞質にはラミニン5のマーキングはごく僅かであるかまたは全くないが、治癒している傷では、ラミニン5は基底細胞で検出される。ラミニン5の長い形状は、細胞移動に有用な局所性粘着プレートにも見出される2種類の受容体のa3β1およびa2β1と相互作用する。インテグリンa2β1は、主にケラチノサイトの移動に関与していると思われる。移動の際に、ラミニン5の発現の調節は、TGF−βおよびINF−γによって伝達される。
【0115】
皮膚の治癒は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の作用に依存しているマトリックスの移動および改造に関連している。従って、ケラチノサイトは、必要ならば移動を容易にする目的で分解しかつ徐々に組成物を改質する一時マトリックスを介して移動する。MMPは非常に保存された構造を有しかつ細胞外マトリックスの成分を分解する能力を有する亜鉛依存性酵素のファミリーである。それらは、皮膚における様々な細胞型(繊維芽細胞、ケラチノサイト、マクロファージ、内皮細胞、好酸球、ランゲルハンス細胞など)によって合成することができる。細胞外マトリックスのタンパク質分解性改造におけるMMPの主要な役割は、皮膚治癒において明確に確立されている。ケラチノサイトの移動に対する様々な基質の効果は、連続的にこれらの基質に接着させかつ解放することができる細胞外マトリックスのプロテアーゼMMP−1、MMP−2およびMMP−9の分泌によって伝達される。MMP−9は主として皮膚治癒の際に発現され、移動およびマトリックスの改造期に関与している。このプロテアーゼは、瘢痕のない治癒の主要な要素ともなる。
【0116】
本発明による治癒を促進する抽出物は、再上皮化(細胞移動および増殖)に関与する最初の2段階に直接作用することが示された。
−ケラチノサイトの移動の刺激:
・ラミニン5(a3β3γ2)を構成する3本の鎖をコードする遺伝子の発現に対する作用;
・遺伝子発現の増加によるMMP−9の合成の作用;
・ケラチノサイトの移動に対する作用、
−ケラチノサイトの増殖の刺激:
・細胞増殖に対する直接作用;
・繊維芽細胞の間接作用:更なるKGFの分泌:ケラチノサイトの細胞分裂を活性化する増殖因子。
【0117】
従って、本発明の目的は、治癒の促進について前記したキノアのペプチドおよび糖類抽出物の使用である。詳細には、前記ペプチドおよび糖類抽出物は、ざ瘡後の瘢痕、剥離後の瘢痕、レーザー後の瘢痕、火傷後の瘢痕および引っ掻き傷のような表面瘢痕の予防および/または治療に用いることができる。前記ペプチドおよび糖類抽出物は、脆弱唇および口唇炎のケア製品(化粧品)として用いることもできる。前記ペプチドおよび糖類抽出物は、年齢と共に治癒が不十分になるため、皮膚老化の予防に用いることもできる。このペプチドおよび糖類抽出物は、皮膚萎縮線条の治療および/または予防に用いることもできる。
【0118】
このペプチドおよび糖類抽出物は、刺創(蚊)後の皮膚の修復に用いることもできる。物理的機構(引掻、掻痒、機械的摩擦、レーザー輻射)、化学的および生化学的機構(例えば、剥離、臀部の紅斑)によって皮膚の擦過傷を修復することもできる。詳細には、この抽出物を斑点および/または痂皮の化粧治療に用い、ざ瘡または水痘のような病理学による斑点および/または病理学(アトピー、乳痂)による痂皮後の皮膚を修復することができる。
【0119】
このペプチドおよび糖類抽出物は、脆弱で感受性の高い皮膚の化粧治療にも応用された。
【0120】
下記の実施例によって本発明を例示するが、非制限的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【実施例】
【0122】
実施例1: 精製キノア油(脱臭物):製造方法および組成
精製キノア油を、キノア穀物(1000kg、5.5%収率)を溶媒(n−ヘキサン)で抽出することによっておよびキノア生油(55kg)を得ることによって得る。次に、この油を精製して(70%収率)、精製キノア油(38.5kg)を得る。沈殿物を用いて、黄色の不透明な油が得られ、ヘキサンは全く見られない。
【0123】
精製キノア油脱臭物は、下記の組成を有する。
【0124】
過酸化物価:7.3meq/kg;酸価:0.30mgKOH/g。
脂肪酸組成:C14 0.1%;C16 8.2%;C16’ 0.2%;C18 0.8%,C18’ 30.4%,C18” 47.2%;C18''' 8.3%;C20 0.6%;C20’ 1.7%;C22 0.7%;C22’ 1.6%;C24 0.2%。
【0125】
総トコフェロール含量:4.8mg/100g
a−トコフェロールの相対%:22.3%;β−トコフェロールの相対%:0.0%;γ−トコフェロールの相対%:61.5%;d−トコフェロールの相対%:16.2%
【0126】
総ステロール含量:1.63g/100g
カンペステロールの相対%:1.53%;スチグマステロールの相対%:3.19%;β−シトステロールの相対%:20.00%;d−5−アベナステロールの相対%:1.7%;d−7−スチグマステロールの相対%:46.35%;d−7−アベナステロールの相対%:8.55%。
スクアレン含量:2.5g/100g
【0127】
実施例2: 不ケン化物画分で濃縮した精製キノア油(=濃縮キノア油):製造方法および組成
精製キノア油(脱臭物、38.5kg)に分子蒸留工程を施し、濃縮キノア油とも呼ばれる不ケン化物画分で濃縮した精製キノア油を得る(3.85kg、10%収率)。
【0128】
不ケン化物画分で濃縮した精製キノア油脱臭物は、下記の組成を有する:
沈殿物を有する黄色不透明な油;ヘキサンは全く見られない。
【0129】
過酸化物価:1.43meq/kg;酸価:3.04mg KOH/g
【0130】
脂肪酸組成:C14 0.3%;C16 12.4%;C16’ 0.3%;C18 0.7%;C18’ 29.4%;C18” 47.1%;C18''' 7.7%;C20 0.3%;C20’ 0.9%;C22 0.3%;C22’ 0.6%;C24 0.l%。
【0131】
総トコフェロール含量:58.7mg/100g
a−トコフェロールの相対%:72.3%;β−トコフェロールの相対%:0.7%;γ−トコフェロールの相対%:23.1%;d−トコフェロールの相対%:4.0%。
【0132】
遊離ステロール含量:0.4g/100g
【0133】
総ステロール含量:7.73g/100g
カンペステロールの相対%:5.57%;スチグマステロールの相対%:3.4%;β−シトステロールの相対%:26.84%;d−5−アベナステロールの相対%:2.3%;d−7−スチグマステロールの相対%:39.48%;d−7−アベナステロールの相対%:5.97%
スクアレン含量:16.8g/100g
【0134】
実施例3: キノアのペプチドおよび糖類の油:製造方法および組成
キノアのペプチドおよび糖類抽出物を、下記の手順に従って調製した:
出発原料:乾燥材料重量(DM=乾燥材料)に対して10〜12重量%のタンパク質を含むキノアケーキ。このケーキキノアにアルカリ抽出を施す(pHをpH10に調整)。次いで、上清に8kDaのミネラル膜によって限外濾過を施す(タンパク質濃縮)。次いで、保持物に濃縮工程を施した後、酵素加水分解工程を行う。タンパク質の酵素加水分解は、Prolyve 1000を用いて55℃の温度でpH8にて行う。酵素加水分解工程の終了時に、酵素を熱処理によって脱活する。次に、加水分解物に8kDaミネラル膜を用いて限外濾過を行う(濾液のペプチドの回収)。限外濾過物を濃縮した後、場合によっては0.2μm濾過による滅菌および/または凍結乾燥を行う。
【0135】
キノアのペプチドおよび糖類抽出物は、下記の組成を有する:
防腐剤を含まない橙黄色粉末
粉末の組成(%,w/w)
a−アミノ化窒素(OPA、ロイシン当量):13%±20%
タンパク質(ビューレット、BSA当量):27%±20%
総糖類(アントロン、グルコース当量):24%±20%
【0136】
【表5A】

【0137】
実施例4: 不ケン化物画分で濃縮した精製キノア油(=濃縮キノア油):生物活性
実施例2で得た濃縮キノア油の効果を、様々な皮膚マトリックスパラメーターに対して評価した:(a)繊維芽細胞の増殖に対する効果、(b)真皮の細胞外マトリックスに対する効果:コラーゲンI、コラーゲンIIIおよびエラスチンの遺伝子発現、(c)真皮の機械的膨張に対する効果:赤色皮膚萎縮線条に由来する繊維芽細胞によって展開される等尺性力に対する効果。
【0138】
材料および方法:
a.皮膚繊維芽細胞の増殖の検討
MTT[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]試験は、細胞の生育力を測定する比色試験である。MTTは、黄色の水溶性テトラゾリウム塩であり、代謝活性細胞はこれを還元して青色のホルマザン結晶とすることができる。
【0139】
D0に、繊維芽細胞を、96穴プレートにおける1% SVFを含むRPMI培地に播種する。D1に、細胞を、1% SVFを含む、乾燥材料(DM)0.005%および0.01%を含むRPMI培地において濃縮キノア油または10% SVFを含むRPMI培地(ポジティブコントロール)で24および48時間処理する。
【0140】
処理終了時に、細胞生育力をMTT試験によって定量し、MTTと3時間接触した後、生成したホルマザンをDMSOによって可溶化し、代謝活性な、従って生きている細胞の量に比例する光学濃度をブランク(細胞を入れてないウェル)に対して570nmで読み取る。
【0141】
b.RT−PCRによるコラーゲンIおよびコラーゲンIIIおよびエラスチンをコードする遺伝子の発現に対するキノアペプチドの効果の検討
b.1.同時定量PCRの原理
同時定量PCRまたはQRT−PCR(同時定量ポリメラーゼ連鎖反応)は、増幅により目的の遺伝子発現を特異的かつ定量的に測定できる分子生物学の方法である。定量は、レポーター系としてSYBR Green法、すなわち二本鎖DNA内部に挿入されている蛍光特性を有する分子を用いることによってリアルタイムで遺伝子の増幅を追跡することに基づいている。PCRは、3段階の連続した温度サイクル、すなわち
−変性:2本のDNA鎖の分離、
−ハイブリダイゼーション:特異的プライマーによるターゲット遺伝子に対応するDNA配列の認識、
−伸張:ポリメラーゼの作用による目的配列の伸張
で起こる。
【0142】
反応の終了時に、「閾値サイクル」(Ct=初期の蛍光シグナルがバックグラウンドノイズより統計学的かつ有意に高くなる点)を分析することによって定量を行う。DNA量を、DNA量の増加が初期マトリックス量に比例する時間に指数部で比較する。
【0143】
b.2.プロトコル
D0に、繊維芽細胞を、10% SVFを添加したRPMI培地で6穴プレートに播種する。D1に、繊維芽細胞を、5ng/mlのTGFβ1または1% SVFを含む0.005%および0.01%DMの濃縮キノア油で1% SVFを含むRPMI培地中で48時間処理した。細胞の処理終了時に、総DNAを抽出した後(抽出キットRNeasyキットMiniKit;Qiagen)、Experionシステム(Experion RNA StdSensキット;Biorad)によってミニチップで定量分析した。次いで、総RNAをcDNA(iScript cDNA Synthesisキット;Biorad)に逆転写する。最後に、目的遺伝子(コラーゲンI、コラーゲンIII、エラスチン)または対照遺伝子(HPRT、GAPDH、YWHAZ、βアクチン=ノーマライザー)に関する新たに合成されたcDNAを、ターゲット配列の特異的プライマーを用いることによってリアルタイムPCR(iQ5,Biorad)で選択的に増幅した。
【0144】
対照遺伝子の発現を、目的遺伝子の発現の評価するのと同じ試料で分析し、結果を規格化して、それらが実際に濃縮キノア油による処理の効果の結果であることを確かめる。
【0145】
b.3.結果の分析
結果を、最も安定な対照遺伝子に対して規格化する(geNormアルゴリズムによる):DCt=目的遺伝子Ct−最も安定な対照遺伝子Ct。
【0146】
次に、処理の際の目的遺伝子のコピー数の変動を、下式に準じて計算する:DDCt=コントロールDCt−処理DCt。
【0147】
最後に、未処理および処理試料の対照遺伝子の発現レベルによって規格化した目的遺伝子の相対量または発現レベルを、式QR=2DDCtによって得る。
【0148】
c.赤色皮膚萎縮線条由来の繊維芽細胞によって展開される等尺性力の効果についての評価
c.1.GlaSbox(商標)の提示
繊維芽細胞が含まれているコラーゲンゲルの機械的阻害は、「収縮力」または「等尺性力」と呼ばれる力の発生によって表される。
【0149】
格子は、8個の長方形の容器からなる培養皿に生じる。それらのそれぞれに、2個の柔軟なケイ素ブレードを浸漬し、その下部は格子が重合中に接着するグリッドからなっている。格子は両ブレードの間に生じ、中央が若干収縮した長方形となる。古典力学におけるこの形状は、ボビン形と呼ばれている。これらのブレードはその上部に表面に蒸着した金線で被覆された歪ゲージ装置を備えている。繊維芽細胞によって生じた収縮力の影響下では、ケイ素ブレードは変形する。これは、ホィットストーン橋によって測定される歪ゲージの電気抵抗値の変化によって表される。この変化は、格子内に発生した力を示しており、PC取得カードと適当なソフトウェアパッケージによってリアルタイムで測定される。
【0150】
c.2.同等な緊張した真皮の調製および等尺性力の測定
6容の培地を3容のラット尾コラーゲンI(2mg/ml)および1容の細胞懸濁液(8x10個の細胞/ml)と混合することによって、格子を作成するための培地を調製する。混合物を、GlaSboxの長方形容器に空ける。37℃で数分以内に、ゲルが形成される。活性成分を含むまたは含まない様々な培地を加える。等尺性力を、48時間測定する。処理の終了時に、コラーゲン格子を脱着し、コラゲナーゼ溶液で消化する。37℃で2時間インキュベーションした後、それぞれのコラーゲン格子内の細胞を計数する。力は、処理48時間後の細胞数として表される。
【0151】
c.3.統計分析: 値は、平均値±平均値の分布の標準誤差(sem)によって表される。2因子分散分析を行った。
【0152】
結果
a.繊維芽細胞の増殖: 0.005および0.01% DMの濃縮キノア油による繊維芽細胞の処理は、用量依存的に増殖を有意に刺激する(48時間の処理後には、処理を行わなかったコントロールに対して、それぞれ、+17および+23%の増加)。
【0153】
【表6】

【0154】
b.コラーゲンIの発現: コラーゲンIのmRNAの発現動態の定量分析を、5ng/mlのTGF−β1と共に48時間インキュベーションした後に定量的PCR(Q−PCR)によって行った。得られた結果は、コラーゲンIについての遺伝子発現が有意に誘発されることを示している(表7)。濃縮キノア油も、コラーゲンIの発現を用量依存的に刺激する(+58および+67%)。
【0155】
【表7】

【0156】
c.コラーゲンIIIの発現: 一方、コラーゲンIIIの遺伝子発現に対する濃縮キノア油の効果を分析した。表8に示される結果は、コラーゲンIIIの遺伝子発現が有意に増加することを示している(+92および+62%)。
【0157】
【表8】

【0158】
d.エラスチンの発現: 濃縮キノア油のエラスチンについての遺伝子発現に対する効果も示され(表9)、処理を行っていないコントロールに対して誘導率は+96および+67%である。
【0159】
【表9】

【0160】
e.GlaSbox(商標)システムにおける同等な緊張した真皮内の赤色皮膚萎縮線条の繊維芽細胞によって生じた収縮力に対する濃縮キノア油の効果の検討
図2に示されるように、0.01%濃縮キノア油を培地に添加すると、培養の1時間30分後には繊維芽細胞または赤色皮膚萎縮線条によって生じる収縮力が有意に減少し、これは36時間までに元に戻る。この検討中に得られた曲線は、3つの別個な期からなっている。
第I期:培養の最初の2時間は、等尺性力が弱いままである。この期は、コラーゲンゲルの重合に相当する。
第II期:培養の最初の6〜8時間は、等尺性力は平均値で擬似直線的に最大まで増加する。この期は、繊維芽細胞が伸張してコラーゲン繊維に接着するのに要する時間に相当する。
第III期:等尺性力は、この培養時間中は保持される。この期は、繊維芽細胞によるコラーゲンマトリックスの再配列およびインテグリンa2β1の発現増加に相当する。
【0161】
濃縮キノア油は、曲線の第II期および第III期のいずれでも赤色皮膚萎縮線条由来の繊維芽細胞によって生じる等尺性力を減少させるので、長時間保持される弛緩効果を有する。
【0162】
図2:濃縮キノア油(QI102)の存在下または非存在下における培養48時間中のGlaSbox(商標)システムで同等に緊張した真皮内に生じた収縮力(B)(A:最初の6時間の詳細)(平均値±sem)。(*p<0.05;**p<0.01;および***p<0.001対FS[健康な繊維芽細胞];#p<0.05および##p<0.01対FVR[赤色皮膚萎縮線条])。
【0163】
結論
ここに示される検討結果により、皮膚組織の調節に対する濃縮キノア油の役割を示すことができた。実際に、濃縮キノア油は、(a)繊維芽細胞の増殖刺激、(b)繊維芽細胞によるコラーゲンI、コラーゲンIIIおよびエラスチン発現の誘導、(c)赤色皮膚萎縮線条の繊維芽細胞の機械特性の変更、すなわち一過性および長期弛緩効果を引き起こすことが示された。
【0164】
細胞外マトリックスの様々な成分の合成を刺激することによって、濃縮キノア油は、変化(老化した攻撃された皮膚、皮膚萎縮線条、瘢痕など)の場合に皮膚のホメオスタシスの回復および調節に重要な役割を果たすことがある。
【0165】
実施例5: キノアのペプチドおよび糖類抽出物(=キノアペプチド):生物活性
実施例3で得たキノアペプチドの活性を、皮膚の再上皮化に関与する最初の2つの機構について評価した(0.05% DMおよび0.1% DMの2濃度で評価):
ケラチノサイトの移動:(i)ラミニン5を構成する遺伝子の発現に対する効果の評価、(ii)MMP−9の発現および合成に対する効果の評価、および(iii)ケラチノサイトの移動に対する機能上の効果の評価。
ケラチノサイトの増殖:(i)ケラチノサイトの増殖に対する効果の評価、(ii)繊維芽細胞によるKGFの合成に対する効果の評価。
【0166】
材料および方法
a.ラミニン5およびMMP−9をコードする遺伝子の発現に対するキノアペプチドの効果のRT−PCRによる検討
−リアルタイム定量PCRの原理:実施例4を参照されたい。
−プロトコル:
0日目に、ケラチノサイトを、KGM−2培地で24穴プレートに播種した。D1に、細胞を5ng/mlのTGFβ1または0.05および0.1% DMのキノアペプチドで48時間処理した。細胞の処理を終了したときに、総RNAを抽出した後(RNeasy MiniKit;Qiagen)、Experionシステム(Experion RNA StdSensキット;Biorad)によってミニチップで定量分析した。次いで、総RNAをcDNA(iScript cDNA Synthesisキット;Biorad)に逆転写する。最後に、目的遺伝子(ラミニン5を構成する3本鎖をコードする遺伝子:a3β3d2およびMMP−9)または対照遺伝子(HPRT、GAPDH、YWHAZ、βアクチン=ノーマライザー)に関する新たに合成されたcDNAを、ターゲット配列の特異的プライマーを用いることによってリアルタイムPCR(iQ5,Biorad)で選択的に増幅した。
【0167】
対照遺伝子の発現を、目的遺伝子の発現の評価するのと同じ試料で分析し、結果を規格化して、それらが実際にキノアペプチドによる処理の効果の結果であることを確かめる。
【0168】
−結果の分析:結果を最も安定な遺伝子に対して規格化する。実施例4を参照されたい。
【0169】
b.ケラチノサイトの移動の検討
プラスチック製培養支持体をコラーゲンIでコーティングし、コントロール支持体をゼラチンでコーティングする(ゼラチン上の移動は、天然コラーゲン上より明らかに少ない)。ケラチノサイトをコーティングした皿に播種し、非接着性細胞を37℃および5% COで6時間インキュベーションした後に除去した。培地を、次に0.1%キノアペプチドを含むまたは含まない培地に置き換えた。一晩インキュベーションした後、マイトマイシンCの溶液で2時間インキュベーションすることによって細胞分裂を遮断した。人工的な再生瘢痕が細胞マット上に生じ、洗浄後に、処理を再開した。48時間後に、細胞を固定して、核をHoechst製蛍光染料で標識した。
【0170】
デジタル化画像を毎日作成した。ケラチノサイトの移動の分析は、時間D0で記録した画像(人工的瘢痕の選択が可能)とD2に記録した「Hoechst」画像との間で行い、移動する細胞の数を計数することができる。
【0171】
c.ケラチノサイトの増殖のMTT法による検討
D0に、ケラチノサイトをKGM2培地に播種する。1日目に、細胞を1μMトランス−レチノイン酸(ATRA)または0.05%および0.1% DMのキノアペプチドで24および48時間処理する。処理の終了時に、細胞生育力をMTT試験によって測定する。すなわち、MTTと3時間接触した後、形成したホルマザン結晶をDMSOによって可溶化し、代謝活性細胞、従って生きている細胞の量に比例する光学濃度を、570nmでブランク(細胞の入っていないウェル)に対して読み取る。
【0172】
d.ケラチノサイトによって分泌されるMMP−9の投薬量
ケラチノサイトを24穴プレートに播種し、37℃、5% COで24時間インキュベーションした後、細胞を0.05%および0.1% DMのキノアペプチドで処理した。5ng/mlで試験したTGFβをポジティブコントロールとして用いた。処理の48および72時間後、細胞によって分泌されたMMP−9の量を培養物上清でELISAキット(R&D Systems)によって供給業者の推奨する手順に従って測定した。平行して、ウェル当たりの生きている細胞の量を、比色ニュートラルレッド試験によって測定し、生きている細胞の量に比例する光学濃度ODを570nmで読み取った。
【0173】
MMP−9の量は、生きている細胞によって表される:(ng/ml)/OD570 MTT。
【0174】
e.繊維芽細胞によって分泌されるKGFの投薬量
繊維芽細胞を、1% SVFのRPMI中24穴プレートに播種し、37℃、5% COで24時間インキュベーションした後、細胞を0.05%および0.1% DMのキノアペプチドで処理した。100ng/mlのIL1a(Sigma)をポジティブコントロールとして用いた。処理の24および48時間後に、繊維芽細胞によって塩析されたKGFの量をELISAキット(R&D Systems)で供給業者の推奨する手順に従って測定した。平行して、ウェル当たりの生きている細胞の量を、比色ニュートラルレッド試験によって測定し、生きている細胞の量に比例する光学濃度ODを570nmで読み取った。平行して、ウェル当たりの生きている細胞の量を、MTT比色試験によって測定し、生きている細胞の量に比例する光学濃度ODを570nmで読み取った。
【0175】
KGFの量は、生きている細胞によって表される:pg/ml/OD570 MTT。
【0176】
f.統計学: 結果の有意性をステューデントt検定によって評価した。
【0177】
結果
a.ラミニン5のヘテロ三量体a3β3d2の発現
再上皮化過程の遺伝子制御は、いくつかの転写または増殖因子、特に損傷の直後に放出されるTGF−β1を伴う。再上皮化の生理学的条件下では、TGF−β1がラミニン−5の発現を刺激することが明らかにされた。この増殖因子をポジティブコントロールとして用いて、このタンパク質の遺伝子発現を検討し、生理学的条件にアプローチした。
【0178】
5 ng/ml TGF−β1で48時間インキュベーションした後、ラミニン5を構成している異なる鎖のmRNAの発現動態の定量分析を定量的PCR(Q−PCR)によって行った。得られた結果は、3個の検討した遺伝子の発現が極めて有意に誘導され(p<0.01)、誘導因子はa3については12に達し、γ2については17にまで達することを示している(表10:A/B/C)。mRNA β3も低めのレベルで5倍のオーダーで誘導された。
【0179】
ラミニン5を構成する3個の遺伝子の発現調節におけるキノアペプチドの潜在的関係を検討した。得られた結果は、キノアペプチドが遺伝子の発現を用量依存的に有意に刺激し、誘導因子はa3については3、β3については2、γ2については2.6に達することを示している。
【0180】
【表10A】

【0181】
【表10B】

【0182】
【表10C】

【0183】
b.MMP−9の発現の検討
再上皮化に関与するマトリックスプロテアーゼの中でも、MMP−9は特に重要な役割を果たす。これはTGF−β1および炎症促進性サイトカインによって正の調節を受けるが、移動するケラチノサイトにより創傷部位でも発現する。
【0184】
表11に示されるように、Q−PCRの結果の分析は、MMP−9の遺伝子発現が早期に誘導され、TGFβによる刺激の48時間後には8倍となる。このモデルを用いることによって、ケラチノサイトの移動に対するキノアペプチドの効果もMMP−9の発現に対するそれらの作用を介して示された。従って、キノアペプチドは、処理を全く行わないコントロールと比較してMMP−9の発現を2.6倍まで有意に刺激する。
【0185】
【表11】

【0186】
c.MMP−9タンパク質の産生の検討
キノアペプチドの存在下におけるMMP−9の遺伝子発現のプロフィールを検討した後、遺伝子発現の誘導は、タンパク質の分泌も増加することが明らかにされた。従って、48および72時間の処理後のケラチノサイトによるMMP−9の合成および分泌に対するキノアペプチドの影響を評価した。結果を表12に示す。このように、キノアペプチドは、ケラチノサイトによって分泌されるMMP−9の量を有意に増加させる(増加範囲55%以下)。
【0187】
【表12】

【0188】
d.ケラチノサイトの移動に対するキノアペプチドの機能上の効果の検討
ケラチノサイトの移動に対するキノアペプチドの機能上の効果を、細胞増殖をブロックした後の人工瘢痕で評価した。
【0189】
キノアペプチドで処理した細胞を示す写真を未処理細胞の写真と四角によって比較することにより、キノアペプチドが細胞移動を促進すること、すなわちキノアペプチドで処理した細胞の人工瘢痕にはより多くのケラチノサイトがあるという結論が得られる。ケラチノサイトの移動におけるこの増加は、人工創傷における移動する細胞の数を計数することによって定量した。このように、キノアペプチドは、ケラチノサイトの移動を+67%だけ増加する。
【0190】
e.ケラチノサイトの増殖に対するキノアペプチドの効果
キノアペプチドがケラチノサイトの増殖過程(=再上皮化機構の第二段階)と関連しているかどうかを立証するために、細胞生育力MTT試験を行い、細胞増殖に対するキノアペプチドの直接作用を評価した。表13に示されるように、トランスレチノイン酸(ATRA)=ポジティブコントロールは+36%の増殖率を誘導する。同様に、0.05および0.1% DMで試験したキノアペプチドはケラチノサイトの増殖を極めて有意に刺激し、+20%のオーダーの増加を示す。
【0191】
【表13】

【0192】
f.繊維芽細胞によるKGFの合成の検討
再上皮化中に、ケラチノサイト増殖過程を、ケラチノサイトまたは皮膚の繊維芽細胞によって分泌されることがある多数の因子の影響下で行う:KGF(ケラチノサイト増殖因子)の産生。繊維芽細胞によって過剰発現したKGFに応答して、ケラチノサイトが増加することによって外傷を一層速やかに被覆する。皮膚繊維芽細胞によるこの因子の分泌に対するキノアペプチドの効果を、24および48時間の処理後に評価した。表14では、KGFの合成がIL1aの存在下で増加したことが確かめられる。一方、0.05および0.1% MSで試験したキノアペプチドは繊維芽細胞によるKGFの分泌を極めて有意に刺激する。この刺激は用量依存的であり、処理の24時間後には極めて実質的である(未処理コントロールと比較して5および7倍に増加)。
【0193】
【表14】

【0194】
結論: 本明細書に示した検討はいずれも、上皮治癒におけるキノアペプチドの役割を示していた。両過程を刺激することによって、キノアペプチドは皮膚の一体性を効果的かつ速やかに回復することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノア穀物抽出物と、必要ならば適当な賦形剤とを含んでなる、化粧品、皮膚科学または栄養補給組成物であって、
前記抽出物が、キノア穀物のペプチドおよび糖類抽出物、または脂質抽出物であり、
前記キノア脂質抽出物自体が、不ケン化物画分において濃縮された油、および不ケン化物もしくは精製油からなる群より選択され、
前記精製油が、下記の組成を有する、組成物:
【表1】

【請求項2】
キノア穀粒抽出物が、ペプチドおよび糖類抽出物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ペプチドおよび糖類抽出物が25〜90重量%のペプチドおよび10〜50重量%の糖からなり、ここで百分率は前記ペプチド抽出物の総重量に対して相対的に表されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ペプチドおよび糖類抽出物が、
a)キノア穀物から出発し、生油およびケーキを抽出し、前記ケーキを回収し、
b)前記ケーキを水または水/アルコール混合物で洗浄してタンパク質部分のみを保持し、次いで
c)タンパク質を可溶化し、
d)タンパク質を濃縮した後、前記タンパク質を加水分解してペプチドとし、
e)ペプチド抽出物を精製して回収する
連続的な工程を含んでなる方法によって得られる、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
脂質抽出物が、下記の組成を有する不ケン化物画分で濃縮した油である、請求項1に記載の組成物:
【表2】

【請求項6】
脂質抽出物が、下記の組成を有する不ケン化物である、請求項1に記載の組成物:
【表3】

【請求項7】
キノアのペプチドおよび糖類抽出物の製造方法であって、
a)キノア穀物から出発し、生油およびケーキを抽出し、前記ケーキを回収し、
b)前記ケーキを水または水/アルコール混合物で洗浄してタンパク質部分のみを保持し、次いで
c)タンパク質を可溶化し、
d)タンパク質を濃縮した後、前記タンパク質を加水分解してペプチドとし、
e)ペプチド抽出物を精製して回収する
連続的な工程を含んでなる、方法。
【請求項8】
タンパク質の濃縮(工程d)前に、繊維を除去する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
キノア生油を化学的に精製する工程を含んでなる、請求項1に記載の組成を有する精製キノア油の製造方法。
【請求項10】
精製キノア油の分子蒸留の工程を含んでなる、不ケン化物画分において濃縮したキノア油の製造方法。
【請求項11】
分子蒸留工程を、遠心分離機型の分子蒸留装置およびスクレープト・フィルム(scraped film)型の分子装置から選択された装置を用いて行う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
不ケン化物画分で濃縮したキノア油をケン化した後、この不ケン化物を適当な溶媒で抽出する工程を含んでなる、不ケン化キノアの製造方法。
【請求項13】
皮膚科学組成物または機能性食品を製造するための、キノアペプチド抽出物またはキノア脂質抽出物から選択される、キノア抽出物の使用であって、

前記キノア脂質抽出物自体が、不ケン化物画分において濃縮された油、不ケン化物もしくは下記の組成を有する精製油からなる群より選択される、使用:
【表4】

【請求項14】
皮膚科学組成物または機能性食品が、アレルギー性、炎症性、刺激性病理または反応、または、皮膚および/または粘膜および/または未成熟、正常または成熟珠皮のバリヤーまたはホメオスタシスの異常の予防および治療を目的とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
不ケン化物画分において濃縮した精製キノア油を含んでなる、食品。
【請求項16】
皮膚組織に関する疾患の予防および/または治療に使用するための、請求項5に記載の組成物。
【請求項17】
前記疾患が皮膚老化、皮膚萎縮線条および深い創傷からなる群より選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
治癒を促進するための、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
真皮の皮下萎縮を予防しおよび/または治療するための、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
治癒を促進するための、請求項2〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
表面瘢痕、脆弱唇および口唇炎、皮膚老化、皮膚萎縮線条、刺創後の皮膚、皮膚擦過傷、皮膚斑および/または痂皮、および脆弱かつ感受性皮膚からなる群より選択される病理または病状を予防しおよび/または治療するための、請求項20に記載の組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2010−514740(P2010−514740A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543481(P2009−543481)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064623
【国際公開番号】WO2008/080974
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(503028525)ラボラトワール エクスパンシアンス (12)
【Fターム(参考)】