説明

キュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍方法及び連続焼鈍設備

【課題】キュリー点を有する鋼帯を長手方向に均一な昇温速度で焼鈍することができる、鋼帯の連続焼鈍方法及び連続焼鈍設備を提供する。
【解決手段】加熱帯が第1加熱帯〜第3加熱帯に区分されている連続焼鈍設備を用い、前記第1加熱帯において、前記鋼帯を500℃以上、キュリー点Tc(℃)−50℃未満まで加熱する第1加熱手段と、前記第2加熱帯において、前記第1加熱帯で加熱された鋼帯をキュリー点Tc−30℃ないしキュリー点Tc−5℃の温度領域まで、上流及び下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置により加熱する第2加熱手段と、前記第3加熱帯において、前記第2加熱帯で加熱された鋼帯をキュリー点を超える処理目標温度まで加熱する第3加熱手段とを設け、前記下流のレノイドコイル式高周波誘導加熱装置の実績出力電力値に基いて前記上流のレノイドコイル式高周波誘導加熱装置の出力電力値を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キュリー点(Curie Temperature:Tcとも表記する。)を有する鋼帯の連続焼鈍方法及び連続焼鈍設備に関し、特に、キュリー点近傍で昇温速度を一定に制御するために用いて好適な技術に関するものである。なお、本発明の連続焼鈍方法及び連続焼鈍設備が処理対象とするキュリー点を有する鋼帯としては、Si≦4.5質量%を含有する方向性電磁鋼板等が例示できる。
【背景技術】
【0002】
鋼帯などの金属帯の連続焼鈍では、一般に、加熱温度、加熱時間、加熱速度等が厳密に管理されている。その中でも、例えば、変圧器その他の電気機器の鉄心としての用途に好適な低鉄損方向性電磁鋼板の製造過程における脱炭焼鈍工程のように、厳格な昇温速度管理が求められる場合がある。
【0003】
方向性電磁鋼板の製造では、(a)脱炭焼鈍する際の昇温過程において、鋼板が歪回復・再結晶を迎える鋼板温度が550℃からキュリー点近傍に存在する間、とりわけ、キュリー点近傍に存在する間、に一定の昇温速度で加熱することが重要である。この領域を外れると、脱炭焼鈍後の粒組織は{111}面の比率が大きくなり、結果として、磁性の低下を招くという問題が発生する。また、(b)加熱速度のばらつきによる皮膜の劣化を招くという問題等が発生する。
【0004】
このような焼鈍昇温速度の管理の範囲に関する発明として、特許文献1には、方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍に際し、冷間圧延された鋼帯を230℃/秒以上の加熱速度で705℃以上の温度へ急速加熱することにより鉄損を改善できる発明が開示されており、その実施例2、3では、キュリー点746℃へ1100ないし1200℃/秒の加熱速度で加熱する特別の電磁誘導加熱コイル(基本周波数:450kHz)の使用が開示されている。
【0005】
また、鋼板の連続焼鈍方法に関し、先行材から焼鈍条件の異なる後行材への焼鈍条件の変更を円滑に行えるようにするために、条件変更部の板温を変更するために誘導加熱装置を活用する発明が特許文献2で開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、鋼板の複数の誘導加熱装置を用いた焼戻しに関し、装置の入側の鋼材の先頭部分の温度を実測し、加熱に必要な電力を決定して電力設定する発明、あるいは、誘導加熱装置の間に温度計を設置し、鋼材温度を実測し、実測した鋼材温度に基いて電力設定値を補正することにより鋼板の長手方向の材質均一性を図るようにする発明が開示されている。
【0007】
また、特許文献4には、厚鋼板製造プロセスにおいて加速冷却を採用する場合に、その高冷却性のために発生し易い温度むらが引き起こす鋼板の機械的特性のばらつきや形状不良、さらには残留応力による条切りキャンバー等の問題を、加速冷却後の鋼板の加熱目標温度を鋼材の磁気変態温度(キュリー点)、または700℃〜760℃とする誘導加熱装置を用いた熱処理を施し、鋼板内の温度均一性を高めてから熱間矯正することにより、解決する発明が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特公平06−051887号公報
【特許文献2】特開2003−328039号公報
【特許文献3】特開2005−120409号公報
【特許文献4】特開2006−206927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明では、電磁誘導加熱による急速加熱を電磁鋼板の脱炭焼鈍のキュリー点までの加熱に適用することで、電磁鋼板の鉄損を改善できることが開示されているが、誘導加熱装置による鋼材の温度制御方案、あるいは、鋼材の昇温速度の制御方案については何ら開示されていない。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の発明は、先行材から焼鈍条件の異なる後行材への焼鈍条件の変更を円滑に行うことを目的とするものであって、鋼材の温度制御方案については何ら具体的に記載されていない、あるいは、鋼材の昇温速度の制御方案については何ら開示されていない。
【0011】
また、上記特許文献3に記載の発明では、誘導加熱装置の入口、及び、誘導加熱装置の間に設置された温度計により鋼材の温度を測定し、必要な昇熱温度を得るための電力設定を行うものであって、キュリー点近傍の昇温速度を制御することに関しては、なんら開示されていない。
【0012】
また、上記特許文献4に記載の発明では、誘導加熱装置の加熱目標温度を、鋼材の磁気変態温度(キュリー点)または700℃〜760℃とする熱処理を施せば、鋼板内の温度均一性を高めることができることが開示されているが、鋼材の温度制御方案については何ら開示されていない。
【0013】
本発明は前述の問題点に鑑み、キュリー点を有する鋼帯を、キュリー点近傍の昇温速度を長手方向に極めて均一に加熱できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍方法は、加熱帯、均熱帯及び冷却帯、または加熱帯、均熱帯、窒化帯及び冷却帯からなり、前記加熱帯が第1加熱帯、第2加熱帯及び第3加熱帯に区分されている連続焼鈍設備での、キュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍方法であって、
前記第1加熱帯において、前記鋼帯を500℃以上、キュリー点Tc(℃)−50℃未満まで加熱する第1加熱工程と、
前記第2加熱帯において、前記第1加熱帯で加熱された鋼帯をキュリー点Tc−30℃ないしキュリー点Tc−5℃の温度領域まで、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置及び下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置により加熱する第2加熱工程と、
前記第3加熱帯において、前記第2加熱帯で加熱された鋼帯をキュリー点を超える処理目標温度まで加熱する第3加熱工程と、
前記第2加熱工程の加熱動作を制御する昇温速度制御工程とを有し、
前記昇温速度制御工程は、前記上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に電力を出力する電力出力部と、前記下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に電流を出力する電流出力部とを制御し、
前記下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置での実績出力電力値に基いて前記上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置の出力電力値を制御するようにしたことを特徴とする。
【0015】
本発明のキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍設備は、加熱帯、均熱帯及び冷却帯、または加熱帯、均熱帯、窒化帯及び冷却帯からなり、前記加熱帯が第1加熱帯、第2加熱帯及び第3加熱帯に区分されているキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍設備であって、
前記第1加熱帯において、前記鋼帯を500℃以上、キュリー点Tc(℃)−50℃未満まで加熱する第1加熱手段と、
前記第2加熱帯において、前記第1加熱帯で加熱された鋼帯をキュリー点Tc−30℃ないしキュリー点Tc−5℃の温度領域まで、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置及び下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置により加熱する第2加熱手段と、
前記第3加熱帯において、前記第2加熱帯で加熱された鋼帯をキュリー点を超える処理目標温度まで加熱する第3加熱手段と、
前記第2加熱手段の加熱動作を制御する昇温速度制御装置とを有し、
前記昇温速度制御装置は、前記上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に電力を出力する電力出力部と、前記下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に電流を出力する電流出力部とを有し、
前記下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置での実績出力電力値に基いて前記上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置の出力電力値を制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キュリー点を有する鋼帯のキュリー点近傍での鋼帯の昇温速度を長手方向に極めて均一に行うことができるようにすることができる。これにより、特に、鋼板の昇温速度に厳格な制御及び均一性が求められる方向性珪素鋼板の冷間圧延された鋼帯の連続脱炭焼焼鈍では、その昇温速度の厳格な範囲での達成や均一化による品質改善効果が大きく、安定した製品を製造できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、本発明の効果が特に大きい方向性珪素鋼板の製造を例にして説明する。なお、本発明が方向性珪素鋼板に限定されないことは言うまでもない。
【0018】
図1は、方向性珪素鋼の仕上冷延板を脱炭焼鈍(焼鈍分離剤の塗布を含む)するための代表的な連続熱処理設備の概略的な構成例を説明する等角投影図である。
連続熱処理設備ラインの主な要素は、仕上冷間圧延加工された方向性珪素鋼のコイル状の鋼帯60を装荷して、そこから巻出していくためのペイオフリール1を有する。
【0019】
また、鋼帯60の先尾端部を切断して溶接のための準備をするための入側剪断機2、鋼帯60の端部を連続的に結合するための溶接機3、鋼帯60を溶接する準備、及び溶接中に入側洗浄装置11、炉部12を減速・停止することなく通板可能とするために鋼帯60を貯留する入側ストレージルーパー4を有する。
【0020】
さらに、鋼帯60の表面を洗浄し、圧延油や鉄分等の汚れを除去するための入側洗浄装置11、鋼帯60を脱炭焼鈍するために用いられる加熱・均熱・冷却領域からなる炉部12、コイルの再巻きつけが完了して出側剪断機6が作動している時に、鋼帯60が入側洗浄装置11、炉部12を減速停止することなく通板可能とするために、鋼帯60を貯留する出側ストレージルーパー5を有する。
【0021】
また、焼鈍された鋼帯60の表面を洗浄し、炉内汚れを除去するための出側洗浄装置13、焼鈍分離剤塗布装置14、焼鈍分離剤乾燥装置15、出側剪断機6、及び鋼帯60をコイル状に再巻き付けするためのテンションリール7等を有している。また、炉部12の動作を制御する昇温速度制御装置100を有している。
【0022】
このような装置によって構成された連続熱処理設備ラインにおいて、焼鈍分離剤乾燥装置15は、熱慣性の低い炉材と直火バーナーから構成される高応答性の炉構成となっており、出側剪断機6が作動中におけるやむを得ない場合に発生する鋼帯60の停止・減速に迅速に対応できる構造となっている。
【0023】
また、炉部12の前後での鋼帯60の張力は、テンションメータ41、42で測定される。また、焼鈍分離剤乾燥装置15での鋼帯60の張力は、テンションメータ43で測定される。各テンションメータ41、42及び43の測定結果は、通過するブライドルロール23〜26にフィードバックされ、ブライドルロール前後の鋼帯60の張力が確保されている。なお、出側洗浄装置13は、炉部12における鋼帯60の汚れが僅少であるときは、必ずしも設置する必要はない。方向性珪素鋼の仕上冷延板は、上記のラインで脱炭焼鈍(焼鈍分離剤の塗布を含む)された後、高温焼鈍され、さらに、平滑化焼鈍が施され、最終製品となる。
【0024】
図2は、炉部12の基本的な構成例を模式的に示す図である。
基本的な構成の炉部12Aは、一般的に、ラジアントチューブ加熱方式による加熱領域31、電気ヒータ加熱による均熱領域32、電気ヒータ加熱による窒化領域33及び冷却領域34から構成されている。加熱領域31には、加熱途中の板温を監視するための板温計36、37、38が設置されている。
【0025】
入側洗浄装置11で表面洗浄された鋼帯60は、ラジアントチューブ方式による加熱領域31で加熱され、脱炭温度約820℃まで加熱され、電気ヒータ加熱による均熱帯32で脱炭焼鈍される。
【0026】
ラジアントチューブ方式による加熱領域31では、鋼帯60は脱炭障害とならないように加熱されており、加熱領域途中に設置された板温計36、37、及び加熱領域の出側の板温計38を監視しながら炉の温度を制御している。また、最近、この板温計36、37、38の測定値を自動監視しながら、加熱領域の炉を自動制御する方式もとられている。
【0027】
図3(a)及び(b)に、前述した基本的な構成の炉部12Aを図1に示した連続熱処理設備ラインに設けて、方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍における、板温計36、37の位置での鋼帯コイル1本分の長手方向の温度分布の一例を示す。
【0028】
前述した基本的な構成の炉部12Aでは、板温計36、37の測定値を自動監視しながら、加熱領域の炉を自動制御する方式が採られているにもかかわらず、図3(a)に示すように加熱領域入側の板温計36の長手方向の板温は変動している。また、図3(b)に示すように、途中部の板温計37での鋼帯60の長手方向の板温は変動している、特に、コイルの両端は大きく長期にわたり変動している。それに伴い、鋼帯60の昇温速度も大きく変動している。
【0029】
コイルの両端の変動は、基本的な構成の炉部12Aの熱慣性が大きく、この変動を抑制することは困難であったと考えられる。このような変動は、結果として、この後の一次再結晶組織に影響し、結果として2次再結晶組織での組織の配向性が低下するとともに、鋼帯60の脱炭反応を含む表面の反応に大きく影響し、鋼帯60長手方向の品質変動、例えば、磁性不良や皮膜欠陥等の品質障害を招いていた。
【0030】
本願発明の発明者らは、この鋼帯60の長手方向の昇温過程での板温を詳細に調査解析し、1本の鋼板コイル内の鋼帯60長手方向の中央部でも昇温速度が少なからず変動することを見出した。この変動の原因をさらに解析した。鋼帯60の連続加熱設備に用いられているラジアントチューブ炉においては、ラジアントチューブと鋼帯60の間の輻射伝熱により鋼板が加熱されている。
【0031】
鋼板の昇温量を決める伝熱量はラジアントチューブ、鋼板の放射率と幾何学的位置関係によって決まるが、ラジアントチューブの放射率及び幾何学的位置関係は短期的には不変であることから、鋼帯60の温度は、鋼帯60の放射率の変動で変化することを解明した。鋼板の放射率が長手方向に変化する要因としては、不明な点も多いが、冷延鋼板の製造の前工程である熱間圧延が連続でなく、スラブ単位(鋼帯60コイルに相当)に行われ、熱間圧延中の板温度の長手方向変動及び冷却過程の不均一により表面性状が変化すること等によると推察した。
【0032】
また、鋼板の温度測定には鋼板の放射率が利用されていることから、放射率が変われば、板温の測定値の精度が悪くなることになる。複数の波長を用いた板温計も精度は若干改善されるもののこの問題から逃れることはできない。
【0033】
本願発明の発明者らは、鋭意、研究を重ねた結果、ソレノイドコイル式高周波誘導加熱では、キュリー点近傍で、鋼帯60の透磁率が急速に低下し、それに伴い、浸透深さも大きくなるとともに、鋼帯60の加熱能力が急速に減少することに着目した。
【0034】
このことから、キュリー点近傍を含む鋼帯60の加熱領域では、一定のコイル電流を通電中のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置の実績出力電力値は、鋼帯60のコイル部入口の温度で変動することを見出すとともに、ソレノイドコイル式高周波誘導熱装置の制御応答性は極めて速いことにも着目した。
【0035】
図6に、高周波誘導装置を用いた基本的な構成例を示す。
図6は、冷間圧延された方向性珪素鋼を焼鈍するための連続熱処理設備ライン(図1)の炉部12の構成を模式的に示す図である。図2で説明した基本的な構成の熱処理ラインに比べ、本実施形態の炉部12Bにおいては加熱帯31の中央に2個のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35A、35Bが配設されている。また、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aの前部に板温計36が配置され、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの後に板温計37が設置されている。これにより、加熱帯31は、前段の加熱領域31Aと後段の加熱領域31Bとに区分されている。
【0036】
図4に、高周波誘導装置を用いた基本的な構成例の制御方案を示す。
上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aの入側の板温計36の温度TAを監視する。
【0037】
そして、ラジアントチューブ方式による前段の加熱領域31Aの状態監視を行うとともに、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの入側の鋼板の板温が目標値となるように加熱するのに必要な加熱熱量を演算する。
【0038】
そして、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aに設定出力電力値WAを与え、実績出力電力値が設定電力値になるよう制御するとともに、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bには、目標値の電流値IBになるようにコイルに通電する電流値を制御して鋼帯を通板する。尚、出側の板温計37の温度TBを監視し、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの出側の板温が一定であることを確認し、鋼帯60を通板する。
【0039】
図5(a)〜(d)に、このときの炉部12における、加熱領域31A、35Bの各領域出側の板温計36、37の位置で測定された鋼帯コイル1本分の長手方向の温度分布、及びソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35A、35Bの実績出力電力値の一例を示す。
【0040】
この方法では、ラジアントチューブ方式による前段の加熱領域31Aの出側(上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aの入側)では、図5(a)に示すように、板温計36の測定データのように鋼帯の温度むらが存在するにもかかわらず、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bでの出側では、図5(b)に示すように、板温計37の測定データのように温度はほぼ均一なる。
【0041】
しかしながら、図5(c)及び(d)に示すように、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35A及び下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの実績出力電力値は大きく変動しており、より昇温速度の管理が必要な領域において、鋼帯の昇温度速度は大きく変動している。
【0042】
これは、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aの入側の板温計36が板温500〜600℃領域では、鋼板の放射率の変動が大きく、例え、測定精度の比較的良い2波長計測方式の板温計を使用しても、測定精度があまりよくないことに起因すると推察される。
【0043】
図7に、高周波誘導装置を用いた本発明の制御方案を示す。
鋼帯60は、前段の加熱領域31Aで加熱され、板温が500℃以上で、キュリー点Tc(℃)から50℃を超えて低い所定の温度(Tc−50℃未満の温度)に到達する。その後、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35A、及び下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bにおいて、Tc−30℃ないしTc−5℃の温度領域まで加熱される。次いで、ラジアントチューブ方式による加熱領域(後半)31Bでおよそ825℃まで加熱され、電気ヒータ加熱による均熱帯32で脱炭焼鈍される。
【0044】
鋼帯60の通板方向の上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aの入側の鋼帯60の板温は、500℃未満では、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aによる所要昇温代が大きくなり、そのためのソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35の設備能力を過大にしなければならない。したがって、現実的でないばかりでなく、熱処理炉雰囲気に水素を含有する場合には、水素爆発の危険を回避できる雰囲気温度750℃以上を確保できなくなるため、板温500℃以上とする必要がある。一方、当該板温がTc−50℃以上では、ラジアント方式の加熱での加熱ばらつきを誘導加熱装置での到達板温で吸収できないから、Tc−50℃未満とする必要がある。
【0045】
また、鋼帯60の通板方向の下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの出側の鋼帯60の板温は、Tc−5℃超では、出側での鋼帯60の透磁率が小さ過ぎる。そのために、高周波誘導加熱装置に必要な磁界が大きくなって所要設備が巨大となり現実的でない。また、Tc−30℃未満では、出側での鋼帯60の透磁率が小さくなく、ラジアント方式の加熱での加熱ばらつきを高周波誘導加熱で抑制できない。したがって、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの出側の鋼帯60の板温は、Tc−30℃ないしTc−5℃の温度領域とする必要がある。
【0046】
また、厳格な昇温速度管理を必要とする鋼帯60の温度領域が、鋼帯60の通板方向の下流にあるソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの制御領域になるように制御することが重要である。
【0047】
前述のように、ソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に一定値(目標値)の電流を通電し、鋼帯60の昇温速度を一定にすること、及びソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置の入側の鋼帯60の温度が一定になるように制御するためには、少なくとも1個以上の別(上流)のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置を設けるのが好ましい。
【0048】
図7に、本実施形態による高周波誘導装置の制御方案を示す。
本実施形態の制御方式では、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bには、目標値の電流値になるようにコイルに通電する電流IBを設定して鋼帯60を通板し、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの実績出力電力値を検出する。
【0049】
そして、前記実績出力電力値と目標出力電力値との差ΔWBを演算し、実績出力電力値が一定値になるように、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aの設定出力電力値WAOを補正し、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aの加熱動作を、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの実績出力電力値WBで制御する。尚、入側の板温計36により板温TAを監視し、ラジアントチューブ方式による前段の加熱領域31Aの状態監視を行うとともに、出側の板温計37を監視し、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの出側の板温TBが一定であることを確認し、鋼帯60を通板する。
【0050】
図8(a)〜(d)に、そのときの炉部12における、前段の加熱領域31A、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの各領域出側の板温計36、37の位置で測定された鋼帯60コイル1本分の長手方向の温度分布、及び下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35B、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aの実績出力電力値の一例を示す。
【0051】
この時のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35A、35Bの境界での鋼帯60の目標板温は680℃であった。尚、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの出側の鋼帯60の板温は、Tc−30℃未満では、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bでの実績出力電力値の変動からその内部の鋼帯60の温度バラツキを推定し、図8(c)に示すように、ソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aの出力電力値を一定にする制御を有効に行うことができない。
【0052】
本実施形態によれば、図8(a)に示すように、ラジアントチューブ方式による加熱領域31Aの出側では、板温計36の測定データのように鋼帯60の温度むらが存在するにもかかわらず、図8(b)に示すように、下流の下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bでの出側では、温度をほぼ均一にすることができる。
【0053】
さらに、図8(d)に示すように、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの実績出力電力値は殆ど変動することがなく非常に安定している。したがって、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bにおける鋼帯60の昇温速度は、一定で殆ど変動なく非常に安定させることができる。
【0054】
本実施形態による鋼帯60の連続焼鈍設備により、方向性珪素鋼板の鋼帯60を長手方向に、昇温速度を含めて、極めて均一に焼鈍処理できるようになったことから、得られた方向性珪素鋼板の品質も、再結晶組織や脱炭が均一となり、磁性が極めて高位に安定し、皮膜欠陥もほとんど解消した。
【0055】
また、誘導加熱装置は2個に限定されるものでなく、複数であればよい。さらに、極めて厳格な鋼帯60の昇温速度を要求される温度領域に応じて、出力電力値が一定となるようにされた誘導加熱装置が配置される。
【0056】
なお、図6では、窒化領域33を有する例を示したが、本実施形態は、窒化領域を有する冷間圧延された方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍設備に限定されるものではなく、窒化領域を有しない脱炭焼鈍設備にも有効である。
【0057】
なお、本発明が処理対象とするキュリー点を有する鋼帯としては、ここで例示した方向性電磁鋼板の冷間圧延鋼帯に限定されることなく、無方向性電磁鋼板やフェライト系ステンレス鋼板の冷間圧延鋼帯等、キュリー点を有する鋼帯について全て有効である。
【0058】
また、本発明が処理対象とするSi≦4.5質量%を含有する方向性電磁鋼板としては、例えば、特開2002−060842号公報や特開2002−173715号公報等で開示されている方向性電磁鋼板のような成分系のものであればよく、本発明でその成分系を特に限定するものではない。
【0059】
なお、鋼帯60をTc−50℃未満に加熱する装置としては、ラジアントチューブ方式の装置に限定されることなく、全ての間接ガス加熱もしくは直接ガス加熱による輻射加熱装置及び/または電気ヒータによる輻射加熱装置、及び/または誘導加熱方式による加熱装置において有効である。
【0060】
また、キュリー点近傍のTc−30℃ないしTc−5℃の温度領域から処理目標温度まで加熱する方式も、電気ヒータ加熱方式に限定されることなく、全ての間接ガス加熱もしくは直接ガス加熱による輻射加熱装置及び/または電気ヒータによる輻射加熱装置で有効である。
【0061】
また、一般的に、Tc−30℃は、700℃を超えており、この領域では鋼板の放射率は、絶対値が大きくなるとともに、比較的板表面の状況に左右されにくくなることから、鋼板の温度は制御しやすくなるので、Tc−30℃以上では加熱方式をあまり問わない。
【実施例1】
【0062】
次に、本願発明の実施例を説明する。
質量%で、C:0.05%、Si:3.2%、Mn:0.1%、P:0.03%、S:0.006%、酸可溶性Al:0.027%、N:0.008%、Cr:0.1%を含有する鋼スラブを1150℃の温度で加熱した後、板厚2.8mmに熱間圧延して鋼帯60(コイル)とし、その後、焼鈍温度1120℃及び920℃の二段焼鈍を施した。
【0063】
さらに、板厚0.285mmまでリバース圧延機で冷間圧延した後、従来技術の脱炭焼鈍設備(図1、図2)、及び本実施形態の脱炭焼鈍設備(図1、図6)にて脱炭焼鈍した。また、本実施形態の脱炭焼鈍設備では、本実施形態の誘導加熱装置制御方案(図7で説明したα案)、及び基本的な制御方案(図4で説明したβ案)の両方で運転した。
【0064】
この後、高温焼鈍を行ったあと、最後に平滑化焼鈍を行った。その際、脱炭焼鈍設備での加熱途中の鋼板温度を板温計37で板温を測定した。また、高周波誘導加熱装置35Bの実績電力出力値のバラツキを測定するとともに、平滑化焼鈍後の方向性電磁鋼板の磁性ならびに皮膜欠陥率を測定した。
【0065】
図9に、試験条件と試験結果を示す。なお、誘導加熱の開始温度をTc−A(℃)、終了温度をTc−B(℃)、高周波誘導加熱装置35A、35Bの境界での鋼帯60の目標板温をTc−B−20(℃)とし、図9では、AとBの値で示した。また、コイル長手方向の品質の安定性の評価項目としては、連続測定が可能なものとして、磁性(鉄損値)と皮膜欠陥率(欠陥部の面積比率)を測定した(注:脱炭性は連続測定が困難)。
【0066】
本実施形態の例1、例2では、下流の誘導加熱装置出側の鋼帯60の板温のバラツキは殆どない。且つ、下流の高周波誘導加熱装置の出力電力値のバラツキも殆どなく、高周波誘導加熱装置内の鋼板の昇温速度のバラツキがほとんどないことがわかる。また、結果として鋼板の磁気特性の絶対値が良好であるとともに、バラツキも小さく、皮膜欠陥率も非常に小さいことが分かる。
【0067】
一方、誘導加熱終了温度の高すぎる比較例11では、鋼板は目標温度に達せず、試験条件を満たすことができなかった。
【0068】
また、誘導加熱終了温度の低すぎる比較例12、誘導加熱開始温度の高い比較例13、14では、依然として、下流の誘導加熱装置出側の鋼帯60の板温のバラツキは比較的小さいが、下流の高周波誘導加熱装置の出力電力値のバラツキは小さくなく、高周波誘導加熱装置内の鋼板の昇温速度のバラツキも小さくないことがわかる。結果として鋼板の磁気特性の絶対値が低位であるとともに、バラツキも大きく、皮膜欠陥率も高かった。
【0069】
また、制御方案の比較例21、22の場合の何れも、下流の誘導加熱装置出側の鋼帯60の板温のバラツキは小さくなく、且つ、下流の高周波誘導加熱装置の出力電力値のバラツキは大きく、高周波誘導加熱装置内の鋼板の昇温速度のバラツキが大きいことが分かる。結果として鋼板の磁気特性の絶対値がやや低位であるとともに、バラツキも大きく、皮膜欠陥率も高かった。
【0070】
なお、誘導加熱を使用していない比較例31は、加熱帯途中の鋼帯60の板温のバラツキは非常に大きく、鋼板の昇温速度のバラツキは非常に大きいことがわかる。当然の結果として、鋼板の磁気特性の絶対値が更に低位であるとともに、バラツキも大きく、鋼板の皮膜欠陥率は非常に大きかった。
【0071】
次に、図10を参照しながら、炉部12の動作を制御する昇温速度制御装置100の構成例を説明する。
図10に示すように、本実施形態の昇温速度制御装置100は、電力出力部101、電流出力部102、電力検出部103、演算部104、補正部105、第1の制御部106a、第2の制御部106b、出力電力値設定部107、出力電流値設定部108等を有している。
【0072】
昇温速度制御装置100は、前段の加熱領域31A、第2加熱帯35、後段の加熱領域31Bに区分されている炉部12の加熱動作を制御するものであり、第2加熱帯35の第1加熱部に設けられている上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35A、及び第2加熱部に設けられている下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの加熱動作を制御するための装置である。
【0073】
次に、前述のように構成された昇温速度制御装置100の動作を、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、ステップS1101において、第1加熱帯(前段の加熱領域31A)で鋼帯60を500℃以上、キュリー点Tc(℃)−50℃未満の温度領域まで加熱する、第1加熱工程を行う。次に、ステップS1102において、鋼帯60を目標温度まで加熱したか否かを判断する。この判断の結果、目標温度まで加熱していない場合にはステップS1101に戻って第1加熱工程における加熱を続行する。また、ステップS1102の判断の結果、目標温度まで加熱した場合にはステップS1103に進む。
【0074】
ステップS1103においては、第1加熱工程で加熱された鋼帯60をキュリー点Tc−30℃ないしキュリー点Tc−5℃の温度領域まで、複数の制御領域で構成されたソレノイドコイル式高周波誘導により加熱する第2加熱工程を行う。その後、ステップS1104に進み、鋼帯60を目標温度まで加熱したか否かを判断する。この判断の結果、目標温度まで加熱していない場合にはステップS1103に戻って第2加熱工程における加熱を続行する。また、ステップS1104の判断の結果、目標温度まで加熱した場合にはステップS1105に進む。
【0075】
ステップS1105においては、第2加熱工程で加熱された鋼帯60を、第3加熱帯(後段の加熱領域31B)において前記キュリー点Tcを超える処理目標温度領域まで加熱する第3加熱工程を行う。次に、ステップS1106において、鋼帯60を目標温度まで加熱したか否かを判断する。この判断の結果、目標温度まで加熱していない場合にはステップS1105に戻って第3加熱工程における加熱を続行する。また、ステップS1106の判断の結果、目標温度まで加熱した場合には処理を終了する。
【0076】
次に、図12のフローチャートを参照しながら、ステップS1103で行う第2加熱工程の詳細を説明する。
まず、ステップS1201において、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bに出力する電流値を目標出力電流値として設定する出力電流値設定処理を出力電流値設定部108で行う。そして、出力電流値設定部108で設定された目標出力電流値が下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bに供給されるように、第2の制御部106bで制御する。
【0077】
次に、ステップS1202において、前述した下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bの実績出力電力値を、電力検出部103により検出する検出処理を行う。
次に、ステップS1203において、前述した検出処理により検出した実績出力電力値を基に、前述した目標出力電力値と実績出力電力値の差を演算部104で演算する演算処理を行う。
【0078】
次に、ステップS1204において、前述した演算処理により求めた出力電力値の差を基にして、出力電力値設定部107に設定されている目標出力電力値を補正する補正処理を行う。出力電力値設定部107に設定されている目標出力電力値の補正処理は補正部105により行う。
【0079】
次に、ステップS1205において、電力出力部101から上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Aに出力する電力を、出力電力値設定部107に設定された目標出力電力値とする制御を第1の制御部106aで行う。また、電流出力部102から下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置35Bに出力する電流値を、出力電流値設定部108に設定された目標出力電流値とする制御を第2の制御部106bで行う。前述したステップS1201〜ステップS1205の処理を実行することにより、第2加熱工程における昇温速度制御が実行される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】方向性珪素鋼の冷延板を脱炭焼鈍(焼鈍分離剤の塗布を含む)するための代表的な連続熱処理設備の一例を示すブロック図である。
【図2】図1における炉部の基本的な構成例を模式的に示す図である。
【図3】基本的な構成の炉部の加熱領域内の代表的な2箇所で測定された鋼帯の板温の長手方向推移の例を示す特性図である。
【図4】本発明の基本的な制御方案を模式的に示す図である。
【図5】本発明の基本的な制御方案による運転時に各領域出側で測定された鋼帯の板温、及び誘導加熱装置の実績出力電力値の長手方向推移の例を示す特性図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、冷間圧延された方向性珪素鋼を焼鈍するための連続熱処理設備ラインの炉部の構成を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態による高周波誘導装置の制御方案を模式的に示す図である。
【図8】本実施形態の制御方案による運転時に各領域出側で測定された鋼帯の板温、及び誘導加熱装置の実績出力電力値の長手方向推移の例を示す特性図である。
【図9】本発明の実施形態を示し、試験条件と試験結果を示す図である。
【図10】本発明の実施形態を示し、炉部の動作を制御する制御装置の構成例を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態を示し、昇温速度制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態を示し、第2加熱工程の詳細を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 ペイオフリール
2 入側剪断機
3 溶接機
4 入側ストレージルーパー
5 出側ストレージルーパー
6 出側剪断機
7 テンションリール
11 入側洗浄装置
12 炉部
13 出側洗浄装置
14 焼鈍分離剤塗布装置
15 焼鈍分離剤乾燥装置
21〜26 ブライドルロール
31 ラジアントチューブ方式による加熱領域
31A ラジアントチューブ方式による加熱領域(前段)
31B ラジアントチューブ方式による加熱領域(後段)
32 均熱領域
33 窒化領域
34 冷却領域
35A 上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置
35B 下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置
36、37、38 板温計
41、42、43 テンションメータ
60 鋼帯
100 昇温速度制御装置
101 電力出力部
102 電流出力部
103 電力検出部
104 演算部
105 補正部
106a 第1の制御部
106b 第2の制御部
107 出力電力値設定部
108 出力電流値設定部
A 上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置入側の鋼帯の板温
B 下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置出側の鋼帯の板温

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱帯、均熱帯及び冷却帯、または加熱帯、均熱帯、窒化帯及び冷却帯からなり、前記加熱帯が第1加熱帯、第2加熱帯及び第3加熱帯に区分されている連続焼鈍設備での、キュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍方法であって、
前記第1加熱帯において、前記鋼帯を500℃以上、キュリー点Tc(℃)−50℃未満まで加熱する第1加熱工程と、
前記第2加熱帯において、前記第1加熱帯で加熱された鋼帯をキュリー点Tc−30℃ないしキュリー点Tc−5℃の温度領域まで、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置及び下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置により加熱する第2加熱工程と、
前記第3加熱帯において、前記第2加熱帯で加熱された鋼帯をキュリー点を超える処理目標温度まで加熱する第3加熱工程と、
前記第2加熱工程の加熱動作を制御する昇温速度制御工程とを有し、
前記昇温速度制御工程は、前記上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に電力を出力する電力出力部と、前記下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に電流を出力する電流出力部とを制御し、
前記下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置での実績出力電力値に基いて前記上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置の出力電力値を制御するようにしたことを特徴とするキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍方法。
【請求項2】
前記昇温速度制御工程は、前記電流出力部から前記下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に出力する目標出力電流値を出力電流値設定部に設定する出力電流値設定処理と、前記電力出力部から前記上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に出力する目標出力電力値を出力電力値設定部に設定する出力電力値設定処理と、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置での実績出力電力値を検出する電力検出処理と、前記出力電力値設定部に設定されている目標出力電力値を補正する出力電力値補正工程とを有し、
前記キュリー点近傍の鋼帯の昇温速度を一定にすることを特徴とする請求項1に記載のキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍方法。
【請求項3】
前記第1加熱工程及び第3加熱工程においては、間接ガス加熱もしくは直接ガス加熱による輻射加熱及び/または電気ヒータによる輻射加熱により前記鋼帯を加熱することを特徴とする請求項1または2に記載のキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍方法。
【請求項4】
前記キュリー点を有する鋼帯が、Si≦4.5質量%を含有する冷間圧延された方向性電磁鋼板であることを特徴とする請求項1または2に記載のキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍方法。
【請求項5】
加熱帯、均熱帯及び冷却帯、または加熱帯、均熱帯、窒化帯及び冷却帯からなり、前記加熱帯が第1加熱帯、第2加熱帯及び第3加熱帯に区分されているキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍設備であって、
前記第1加熱帯において、前記鋼帯を500℃以上、キュリー点Tc(℃)−50℃未満まで加熱する第1加熱手段と、
前記第2加熱帯において、前記第1加熱帯で加熱された鋼帯をキュリー点Tc−30℃ないしキュリー点Tc−5℃の温度領域まで、上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置及び下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置により加熱する第2加熱手段と、
前記第3加熱帯において、前記第2加熱帯で加熱された鋼帯をキュリー点を超える処理目標温度まで加熱する第3加熱手段と、
前記第2加熱手段の加熱動作を制御する昇温速度制御装置とを有し、
前記昇温速度制御装置は、前記上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に電力を出力する電力出力部と、前記下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に電流を出力する電流出力部とを有し、
前記下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置での実績出力電力値に基いて前記上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置の出力電力値を制御するようにしたことを特徴とするキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍設備。
【請求項6】
前記昇温速度制御装置は、前記電流出力部から前記下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に出力する目標出力電流値を設定する出力電流値設定部と、前記電力出力部から前記上流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置に出力する目標出力電力値を設定する出力電力値設定部と、下流のソレノイドコイル式高周波誘導加熱装置での実績出力電力値を検出する電力検出部と、前記出力電力値設定部に設定されている目標出力電力値を補正する出力電力値補正手段とを有し、
前記キュリー点近傍の鋼帯の昇温速度を一定にすることを特徴とする請求項5に記載のキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍設備。
【請求項7】
前記第1加熱手段及び第3加熱手段においては、間接ガス加熱もしくは直接ガス加熱による輻射加熱及び/または電気ヒータによる輻射加熱により前記鋼帯を加熱することを特徴とする請求項5または6に記載のキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍設備。
【請求項8】
前記キュリー点を有する鋼帯が、Si≦4.5質量%を含有する冷間圧延された方向性電磁鋼板であることを特徴とする請求項5または6に記載のキュリー点を有する鋼帯の連続焼鈍設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−221577(P2009−221577A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70241(P2008−70241)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】