説明

グラブドア付けニーエアバッグ装置

【課題】 グラブドアにグラブドアとは別工程で作製されたニーエアバッグモジュールを組付けることができるグラブドア付けニーエアバッグ装置であって、コスト面と質量面で有利なグラブドア付けニーエアバッグ装置の提供。
【解決手段】 グラブドアアウタ21が軟質樹脂製であり、回動軸部40とロック取付け部50が、硬質樹脂製であり、(a)硬質樹脂製のグラブドアインナ22に一体に形成されるか、または(b)グラブドアアウタ21と別体に形成されてグラブドアアウタ21に固定される。そのため、グラブドアアウタ21が軟質樹脂製であっても、回動軸部40、ロック取付け部50としての性能を満足することができる。よって、グラブドアアウタとエアバッグドアを一体化でき、グラブドアアウタとは別体のエアバッグドアを要する場合に比べて、部品点数を削減でき、コストおよび質量を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブドア付けニーエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ニーエアバッグおよびインフレータを含むニーエアバッグモジュールがグラブドアに内蔵され、車両前突時に、ニーエアバッグが車室側(車両後方)に展開膨張して乗員の膝(ニー)を拘束するグラブドア付けニーエアバッグ装置は知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
しかし、特許文献1,2のグラブドア付けニーエアバッグ装置には、グラブドアの製作途中にニーエアバッグモジュールをグラブドアに組付けなければならず、グラブドアの製作工程とニーエアバッグモジュールの製作工程を互いに独立させることが難しいという問題がある。
【0003】
グラブドアに、該グラブドアとは別工程で製作されたニーエアバッグモジュールを組付けることを可能にするために、複数のグラブドア付けニーエアバッグ装置の構造が検討された。そのうちの1つの構造が、図7、図8に示したグラブドア付けニーエアバッグ装置である。図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置は、公知ではない。
【0004】
図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置は、グラブドア1と、グラブドア1に固定されるエアバッグドア5と、ニーエアバッグモジュール6を有する。
グラブドア1は、グラブドアアウタ2とグラブドアインナ3とを有し、内部にニーエアバッグモジュール収納用空間部4を有する。
エアバッグドア5は、グラブドア1と別体に形成されており、グラブドアアウタ2に固着されニーエアバッグモジュール収納用空間部4内に立ち上がる立ち上がり壁5aを有する。
グラブドアインナ3には開口部3aが設けられており、この開口部3aを通すことにより、ニーエアバッグモジュール収納用空間部4に、グラブドア1、エアバッグドア5と別工程で製作されたニーエアバッグモジュール6が挿入され、組付けられることが可能である。
ニーエアバッグモジュール6は、ニーエアバッグ7と、インフレータ8と、ニーエアバッグ7を車両前方側から(グラブドア1の背面側から)覆うケース9と、を備える。
ケース9は、ケース9の上下両端部に設けたフック部9aをエアバッグドア5の立ち上がり壁5aに形成した穴5bに係合させ、かつ、ケース9の左右両端部に取付けた締結ブラケット9bをグラブドアインナ3に締結することにより、グラブドア1およびエアバッグドア5に支持されている。
【0005】
ところで、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置では、グラブドアアウタ2とグラブドアインナ3は硬質樹脂製であるが、エアバッグドア5は、低温下でもグラブドアアウタ2が割れて車室内に飛散することを抑制しスムーズに開いてニーエアバッグが車室内に展開できるように、軟質樹脂製である。また、硬質樹脂製のグラブドアアウタ2には、下端部にグラブドア1をインストルメントパネルに回動可能に取付けるための回動軸部(ヒンジ部)2aが設けられており、上端部にグラブドア1を閉状態に保持するためのロック取付け部2bが設けられている。
【0006】
しかし、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置には、つぎの解決すべき課題がある。
グラブドアアウタ2が硬質樹脂製でありエアバッグドア5が軟質樹脂製であり、グラブドアアウタ2とエアバッグドア5とが互いに別体に形成されているため、グラブドア付けニーエアバッグ装置のコスト面と質量面で改善の余地がある。
単純にグラブドアアウタ2とエアバッグドア5の両方を硬質樹脂製とし一体に形成してコストダウンおよび質量低減を図ることも考えられるが、その場合、低温下でニーエアバッグ展開時に一体化したグラブドアアウタ2とエアバッグドア5が割れて車室内に飛散するおそれがある。また、単純にグラブドアアウタ2とエアバッグドア5の両方を軟質樹脂製とし一体に形成してコストダウンおよび質量低減を図ることも考えられるが、その場合、回動軸部2a、ロック取付け部2bも軟質樹脂製となり、回動軸部2a、ロック取付け部2bとしての性能を満足することが困難になる。
【特許文献1】独国特許出願公開第4209604号公報
【特許文献2】米国特許第6276713号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、グラブドアにグラブドアとは別工程で作製されたニーエアバッグモジュールを組付けることができるグラブドア付けニーエアバッグ装置であって、コスト面と質量面で有利なグラブドア付けニーエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) グラブドアアウタとグラブドアインナを備え内部にニーエアバッグモジュール収納用空間部を備えるグラブドアと、
ニーエアバッグとインフレータと前記ニーエアバッグを車両前方側から覆うケースとを備え前記グラブドアに取付けられるニーエアバッグモジュールと、
前記グラブドアインナに設けられ前記グラブドアをインストルメントパネルまたは該インストルメントパネルに対して固定される部材に回動可能に取付けるための回動軸部と、
前記グラブドアインナに設けられ前記グラブドアを閉状態に保持するためのロック取付け部と、
を有し、
前記グラブドアアウタは、軟質樹脂製であり、前記ニーエアバッグが展開したときに破断するティア部と、該ティア部の内側に位置し該ティア部が破断したときに開くティア内側部と、前記ニーエアバッグモジュール収納用空間部内に立ち上がる立ち上がり壁と、を備えており、
前記グラブドアインナは硬質樹脂製であり、前記グラブドアインナに開口部が形成されており、該開口部を通して前記ニーエアバッグモジュールのニーエアバッグおよびインフレータが前記ニーエアバッグモジュール収納用空間部に収納されており、
前記ケースは、前記グラブドアアウタの立ち上がり壁に係合されるフック部を備えており、
前記回動軸部と前記ロック取付け部は、硬質樹脂製であり、前記グラブドアインナに一体に形成されている、グラブドア付けニーエアバッグ装置。
(2) グラブドアアウタとグラブドアインナを備え内部にニーエアバッグモジュール収納用空間部を備えるグラブドアと、
ニーエアバッグとインフレータと前記ニーエアバッグを車両前方側から覆うケースとを備え前記グラブドアに取付けられるニーエアバッグモジュールと、
前記グラブドアアウタに設けられ前記グラブドアをインストルメントパネルまたは該インストルメントパネルに対して固定される部材に回動可能に取付けるための回動軸部と、
前記グラブドアアウタに設けられ前記グラブドアを閉状態に保持するためのロック取付け部と、
を有し、
前記グラブドアアウタは、軟質樹脂製であり、前記ニーエアバッグが展開したときに破断するティア部と、該ティア部の内側に位置し該ティア部が破断したときに開くティア内側部と、前記ニーエアバッグモジュール収納用空間部内に立ち上がる立ち上がり壁と、を備えており、
前記グラブドアインナは硬質樹脂製であり、前記グラブドアインナに開口部が形成されており、該開口部を通して前記ニーエアバッグモジュールのニーエアバッグおよびインフレータが前記ニーエアバッグモジュール収納用空間部に収納されており、
前記ケースは、前記グラブドアアウタの立ち上がり壁に係合されるフック部を備えており、
前記回動軸部と前記ロック取付け部は、硬質樹脂製であり、前記グラブドアアウタと別体に形成されて該グラブドアアウタに固定されている、グラブドア付けニーエアバッグ装置。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)のグラブドア付けニーエアバッグ装置によれば、グラブドアアウタが軟質樹脂製であるため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していた軟質樹脂製のエアバッグドアを無くした場合であっても、低温下でもグラブドアアウタが車室内に飛散することなくスムーズにティア内側部が開いてニーエアバッグを早期に車室内に展開させることができる。
また、グラブドアアウタが立ち上がり壁を備えており、ケースがグラブドアアウタの立ち上がり壁に係合されるフック部を備えているため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していた軟質樹脂製のエアバッグドアを無くした場合であっても、ケースのフック部を立ち上がり壁に係合させることができる。
さらにまた、回動軸部とロック取付け部が、硬質樹脂製であり、グラブドアインナに一体に形成されているため、グラブドアアウタが軟質樹脂製であっても、回動軸部、ロック取付け部としての性能(とくに摺動部の性能)を満足することができる。
以上より、グラブドアアウタに図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していたエアバッグドアの機能を持たせることができ、回動軸部とロック取付け部の性能を満足させることができるため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置と異なり、エアバッグドアを無くすことができる(グラブドアアウタとエアバッグドアを一体化できる)。そのため、グラブドアアウタとは別体のエアバッグドアを要する場合(図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置)に比べて、部品点数を削減でき、コストおよび質量を低減できる。
【0010】
上記(2)のグラブドア付けニーエアバッグ装置によれば、グラブドアアウタが軟質樹脂製であるため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していた軟質樹脂製のエアバッグドアを無くした場合であっても、低温下でもグラブドアアウタが車室内に飛散することなくスムーズにティア内側部が開いてニーエアバッグを早期に車室内に展開させることができる。
また、グラブドアアウタが立ち上がり壁を備えており、ケースがグラブドアアウタの立ち上がり壁に係合されるフック部を備えているため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していた軟質樹脂製のエアバッグドアを無くした場合であっても、ケースのフック部を立ち上がり壁に係合させることができる。
さらにまた、回動軸部とロック取付け部が、硬質樹脂製であり、グラブドアアウタと別体に形成されてグラブドアアウタに固定されているため、グラブドアアウタが軟質樹脂製であっても、回動軸部、ロック取付け部としての性能(とくに摺動部の性能)を満足することができる。
以上より、グラブドアアウタに図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していたエアバッグドアの機能を持たせることができ、回動軸部とロック取付け部の性能を満足させることができるため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置と異なり、エアバッグドアを無くすことができる(グラブドアアウタとエアバッグドアを一体化できる)。そのため、グラブドアアウタとは別体のエアバッグドアを要する場合(図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置)に比べて、部品点数を削減でき、コストおよび質量を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明実施例のグラブドア付けニーエアバッグ装置を、図1〜図6を参照して、説明する。図1〜図4は、本発明実施例1のグラブドア付けニーエアバッグ装置を示し、図5、図6は、本発明実施例2のグラブドア付けニーエアバッグ装置を示す。ただし、図3、図4は、本発明実施例2のグラブドア付けニーエアバッグ装置にも適用可能である。本発明の何れの実施例にも適用される部分には、本発明の全実施例にわたって同じ符号を付してある。なお、図中、矢印Frは車両前方側(グラブボックス側、車室と反対側)を示し、矢印Upは上方を示す。
【0012】
〔実施例1〕
まず、本発明実施例1のグラブドア付けニーエアバッグ装置を説明する。
本発明実施例のグラブドア付けニーエアバッグ装置(以下、単に装置ともいう)10は、車両のインストルメントパネルの助手席前方部位に設けられたグラブドア(グラブボックスのドア)に組付けられる。
【0013】
装置10は、図1、図2に示すように、内部にニーエアバッグモジュール収納用空間部(以下、単に「収納用空間部」と称する)23を備えるグラブドア20と、ニーエアバッグモジュール30と、回動軸部40と、ロック取付け部50と、を有する。
【0014】
グラブドア20は、図2に示すように、車両のグラブボックス60のドアで、助手席前方のインストルメントパネル61部位に配置される。グラブドア20は、グラブボックス60を開閉可能である。グラブドア20は、閉状態で、上方にいくに従って車両後方側(車室側)に傾いており、インストルメントパネル61の外形にあわせてある。グラブドア20は、グラブドアアウタ21と、グラブドアインナ22と、を備える。
【0015】
グラブドアアウタ21は、図1に示すように、ティア部(破断部)24と、ティア部24の内側に位置しティア部24が破断したときにニーエアバッグ31によって押されて開くティア内側部(エアバッグドア)25と、一般部26と、収納用空間部23内に立ち上がる立ち上がり壁27と、を備える。
【0016】
ティア部24は、車室内の乗員が見ることができることを防止するために、グラブドアアウタ21の車両前方側面に設けられる。ティア部24は、グラブドアアウタ21の成形型で形成されていてもよく、グラブドアアウタ21の成形後に加工を施すことにより形成されていてもよい。ティア部24は、ニーエアバッグ31が展開したときにニーエアバッグ31の展開圧力によって破断する部分である。ティア部24は、たとえば連続するノッチ(板厚を薄くした加工部)からなる。ティア部24は、グラブドア20が閉状態にあるとき、車両前後方向から見たときに、グラブドアアウタ21の上下方向中間部で車両左右方向に直線状に延びる第1のライン24aと、第1のライン24aの車両左右方向両端から車両左右方向外側かつ上下方向に二股に分かれて直線状又は湾曲線状に延びる第2のライン24bと、第2のライン24bの延び方向先端から上下方向に第2のライン24bから離れる方向に延びる第3のライン24cと、車両左右方向に延び左右の第3のライン24cの延び方向先端同士を結ぶ第4のライン24dと、を備えている。ただし、第4のライン24dは、必須ではない。
【0017】
一般部26は、立ち上がり壁27を除いた部分である。一般部26の上下、左右方向中間部に、ティア部24およびティア内側部25が設けられている。
立ち上がり壁27は、収納用空間部23内に一般部26から一般部26に対して略垂直に車両前方側に向かって立ち上がる壁である。立ち上がり壁27は、車両前後方向からみたときに、ティア部24の外側にある。
【0018】
グラブドアアウタ21は、軟質樹脂製である。軟質樹脂は、たとえばオレフィン系エラストマー(TPO、一般的にPPの中にあるエチレンプロピレンゴムを微分散させた熱可塑性エラストマー)からなる。これは、常温でもエラストマー(弾性体)であり、極低音(−30℃)下でも、ティア部24が破断したときに容易にティア内側部25を開くことができるようにするためである。
グラブドアアウタ21の車両後方側面には、図2に示すように、高級感を得るために表皮21aが設けられていてもよい。
【0019】
グラブドアインナ22は、グラブドアアウタ21より車両前方側にある。グラブドアアウタ21とグラブドアインナ22とは、グラブドアアウタ21とグラブドアインナ22の何れか少なくとも一方の部材に形成したリブの先端部で、溶着または締結にて、互いに固定される。なお、図示例は溶着(振動溶着)された場合を示す。
【0020】
グラブドアインナ22の、車両前後方向から見たときの上下・左右方向中間部には、ニーエアバッグモジュール30を収納するための収納用空間部23が設けられている。収納用空間部23は、平均体型の成人男子(AM50)の乗員が助手席に着座したときの乗員の膝の車両前方に位置する。グラブドアインナ22には、収納用空間部23の車両前方側部位に、収納用空間部23を車両前方側に向かって開放する開口部22aが設けられている。グラブドアインナ22に収納用空間部23が設けられているため、通常時(ニーエアバッグ31の非展開時)、グラブドア20を開けたときに収納用空間部23が見えることを抑制して見栄えを向上するとともに、グラブボックス60に収納された収納物が収納用空間部23に入り込むことを防止するために、カバー28が設けられていることが望ましい。
【0021】
グラブドアインナ22は、グラブドアアウタ21の材料の軟質樹脂より硬質の硬質樹脂製、たとえばポリプロピレン(PP)製である。PPもTPOもオレフィン系であるため、TPOのグラブドアアウタ21とPPのグラブドアインナ22は、互いに溶着可能である。
【0022】
ニーエアバッグモジュール30は、ニーエアバッグ31と、インフレータ32と、インフレータ32を取り付けるケース(リテーナ)33と、を備える。
【0023】
ニーエアバッグ31は、車両前突時に、グラブドア20のティア部24を破断させてティア内側部25を車両後方側に押し開き、車室側に(車両後方側に、乗員の膝頭の前方に)展開膨張し、乗員の膝(ニー)を拘束する。
インフレータ32は、ニーエアバッグ31内に配置される。インフレータ32は、ケース33にボルト締結、かしめ等で固定される。
【0024】
ニーエアバッグモジュール30の少なくともニーエアバッグ31とインフレータ32は、グラブドアインナ22に設けられた開口部22aを通してグラブドア20の収納用空間部23に挿入し収納される。
【0025】
ケース33は、たとえば金属製(鉄製)である。ケース33は、ニーエアバッグ31とインフレータ32を車両前方側から覆っている。ケース33は、グラブドアインナ22に図1に示すボルト孔33a部位でボルト締結、かしめ等で組付けられる(固定される、取付けられる)。ケース33は、図2に示すように、フック部33bを備えている。フック部33bは、複数設けられている。ケース33は、フック部33bがグラブドアアウタ21の立ち上がり壁27に設けられるフック係合用孔27aに係合することで、グラブドアアウタ21にも組付けられ(固定され、取付けられ)ている。
この構造によって、車両前突時のニーエアバッグ31の展開膨張反力と膝侵入荷重のうちグラブドアアウタ21のティア部24の外側で受け止めることができない荷重(ティア部24の内側にかかる荷重)をケース33で受け止め、ケース33で受け止めた荷重は、グラブドアインナ22及びグラブドアアウタ21で受け止めることができる。
【0026】
回動軸部40は、グラブドア20をインストルメントパネル61(インストルメントパネル61に対して固定とされる部材も含む)に回動可能に取付けるために設けられる。グラブドア20がインストルメントパネル61に対して回動することで、グラブボックス60内空間を開閉できる。回動軸部40は、図1に示すように、グラブドア20の下端部又はその近傍に設けられる。回動軸部40は、たとえば車両左右方向に間隔を隔てて2個設けられている。ただし、回動軸部40の数は、2個に限定されるものではなく、3個以上であってもよい。
【0027】
回動軸部40には、車両左右方向に延びる貫通穴41が設けられている。貫通穴41に車両左右方向に延びる図示略のシャフトを挿通し、該シャフトの左右両端部をインストルメントパネル61側に設けられる図示略の穴に挿入することで、グラブドア20は、インストルメントパネル61に回動可能に取付けられる(支持される)。ただし、回動軸部40の構成は、グラブドア20をインストルメントパネル61に回動可能に取付けられるのであれば、上記の構成に限定されるものではない。
グラブドア20の回動中心は、グラブドア20の断面内にあってもよいし、グラブドア20の断面外にあってもよい。
【0028】
ロック取付け部50は、グラブドア20を閉状態に保持するために設けられる。ロック取付け部50は、グラブドア20の上端部又はその近傍に設けられる。ロック取付け部50は、ロッド支持部51と、ギア支持部52と、を備える。
【0029】
ロッド支持部51は、図4に示すように、車両左右方向の外側端部がインストルメントパネル61(インストルメントパネル61に対して固定とされる部材も含む)に設けられるロック受け部61aに出入り可能なロッド62を車両左右方向に摺動可能に支持する。ロッド支持部51は、左右に間隔を隔てて計2個設けられる。各ロッド支持部51は、ロッド62をそれぞれ1本ずつ支持している。各ロッド支持部51は、ロッド62の長手方向中間部(車両左右方向中間部)を支持している。
ギア支持部52は、左右のロッド62を互いに反対方向に同期させるギア63を回動可能に支持する。
以上の構成は、本発明の何れの実施例にも適用される。
【0030】
本発明実施例1では、図1に示すように、回動軸部40とロック取付け部50がグラブドアインナ22に設けられている。回動軸部40とロック取付け部50は、グラブドアインナ22と同じ硬質樹脂製(PP製)であり、グラブドアインナ22に一体に形成されている。ただし、回動軸部40とロック取付け部50は、グラブドアインナ22と別体に形成されてグラブドアインナ22に溶着(振動溶着)等で固定して取付けられていてもよい。
【0031】
ここで、本発明実施例1の作用、効果を説明する。
グラブドアインナ22の、収納用空間部23の車両前方側部位に、開口部22aを設けているため、開口部22aを通してニーエアバッグモジュール30の少なくともニーエアバッグ31とインフレータ32を収納用空間部23に挿入し収納することができる。そのため、グラブドアアウタ21とグラブドアインナ22を互いに溶着してグラブドア20を製作した後でも、ニーエアバッグモジュール30をグラブドア20に組付けることができる。これによって、グラブドア20の製作工程とニーエアバッグモジュール30の製作工程を互いに独立の工程とすることができ、グラブドア20とニーエアバッグモジュール30とを別々の部品メーカで作製でき、製作工程の自由度が向上する。
【0032】
ティア部24が第2のライン24bを備えているため、第2のライン24bを備えていない場合(第1のライン24aと第3のライン24cとの角部が直角とされている場合)に比べて、ニーエアバッグ31が展開するときに第1のライン24aからティア部24が破断し始めたときに、第1のライン24aから始まった破断をスムーズに第3のライン24cに伝わらせることができる(走らせることができる)。そのため、ティア部24が第2のライン24bを備えていない場合に比べて、早期にグラブドアアウタ21のティア内側部25を開くことができる。
【0033】
また、ティア部24が第2のライン24bを備えているため、第2のライン24bを備えていない場合に比べて、グラブドアアウタ21のティア内側部25が開いてニーエアバッグ31が展開するときに、ティア内側部25の、第1のライン24aと第3のライン24bとの角部の内側に位置する部分(ティア内側部25の開き側でかつ車両左右方向両端の角部)が乗員に当たったときの乗員への加害性(乗員の膝部への負荷)を低減させることができる。
以上の作用、効果は、本発明の何れの実施例にも適用される。
【0034】
本発明実施例1では、さらに、つぎの作用、効果が得られる。
グラブドアアウタ21が軟質樹脂製であるため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していた軟質樹脂製のエアバッグドアを無くした場合であっても、低温下でもグラブドアアウタが車室内に飛散することなくスムーズにティア内側部25が開いてニーエアバッグ31を早期に車室内に展開させることができる。
また、グラブドアアウタ21が立ち上がり壁27を備えており、ケース33がグラブドアアウタ21の立ち上がり壁27に係合されるフック部33bを備えているため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していた軟質樹脂製のエアバッグドアを無くした場合であっても、ケース33のフック部33bを立ち上がり壁27に係合させることができる。
さらにまた、回動軸部40とロック取付け部50が、硬質樹脂製であり、グラブドアインナ22に一体に形成されているため、グラブドアアウタが軟質樹脂製であっても、回動軸部40、ロック取付け部50としての性能(とくに摺動部の性能)を満足することができる。
以上より、グラブドアアウタ21に図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していたエアバッグドアの機能を持たせることができ、回動軸部40とロック取付け部50の性能を満足させることができるため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置と異なり、エアバッグドアを無くすことができる(グラブドアアウタとエアバッグドアを一体化できる)。そのため、グラブドアアウタとは別体のエアバッグドアを要する場合(図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置)に比べて、部品点数を削減でき、コストおよび質量を低減できる。
【0035】
〔実施例2〕
つぎに、本発明実施例2のグラブドア付けニーエアバッグ装置を、図5、図6を参照して、説明する。
本発明実施例2の装置10は、つぎの構成を有する。
本発明実施例2では、図5、図6に示すように、回動軸部40とロック取付け部50がグラブドアアウタ21に設けられている。回動軸部40とロック取付け部50は、グラブドアインナ22と同じ硬質樹脂製(PP製)であり、グラブドアアウタ21と別体に形成されてグラブドアアウタ21に溶着(振動溶着)等で固定して取付けられている。
【0036】
本発明実施例2では、つぎの作用、効果が得られる。
グラブドアアウタ21が軟質樹脂製であるため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していた軟質樹脂製のエアバッグドアを無くした場合であっても、低温下でもグラブドアアウタが車室内に飛散することなくスムーズにティア内側部25が開いてニーエアバッグ31を早期に車室内に展開させることができる。
また、グラブドアアウタ21が立ち上がり壁27を備えており、ケース33がグラブドアアウタ21の立ち上がり壁27に係合されるフック部33bを備えているため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していた軟質樹脂製のエアバッグドアを無くした場合であっても、ケース33のフック部33bを立ち上がり壁27に係合させることができる。
さらにまた、回動軸部40とロック取付け部50が、硬質樹脂製であり、グラブドアアウタ21と別体に形成されてグラブドアアウタ21に固定されているため、グラブドアアウタ21が軟質樹脂製であっても、回動軸部40、ロック取付け部50としての性能(とくに摺動部の性能)を満足することができる。
以上より、グラブドアアウタ21に図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置が有していたエアバッグドアの機能を持たせることができ、回動軸部40とロック取付け部50の性能を満足させることができるため、図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置と異なり、エアバッグドアを無くすことができる(グラブドアアウタとエアバッグドアを一体化できる)。そのため、グラブドアアウタとは別体のエアバッグドアを要する場合(図7、図8のグラブドア付けニーエアバッグ装置)に比べて、部品点数を削減でき、コストおよび質量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明実施例1のグラブドア付けニーエアバッグ装置の、グラブドアと回動軸部とロック取付け部のみの分解斜視図である。
【図2】本発明実施例1のグラブドア付けニーエアバッグ装置の、断面図である。
【図3】本発明実施例1のグラブドア付けニーエアバッグ装置の、ニーエアバッグ以外のニーエアバッグモジュールの斜視図である。
【図4】本発明実施例1のグラブドア付けニーエアバッグ装置の、グラブドアが閉状態にあるときのロック取付け部とその近傍のみを示す部分断面図である。
【図5】本発明実施例2のグラブドア付けニーエアバッグ装置の、グラブドアと回動軸部とロック取付け部のみの分解斜視図である。
【図6】本発明実施例2のグラブドア付けニーエアバッグ装置の、断面図である。
【図7】ニーエアバッグモジュールを後付けで組付けることが可能なグラブドア付けニーエアバッグ装置の開発で検討された、一例のグラブドア付けニーエアバッグ装置(公知ではない)の分解斜視図である。
【図8】ニーエアバッグモジュールを後付けで組付けることが可能なグラブドア付けニーエアバッグ装置の開発で検討された、一例のグラブドア付けニーエアバッグ装置(公知ではない)の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 グラブドア付けニーエアバッグ装置
20 グラブドア
21 グラブドアアウタ
22 グラブドアインナ
23 ニーエアバッグモジュール収納用空間部
24 ティア部
24a 第1のライン
24b 第2のライン
24c 第3のライン
24d 第4のライン
25 ティア内側部
26 一般部
27 立ち上がり壁
27a フック係合用孔
30 ニーエアバッグモジュール
31 ニーエアバッグ
32 インフレータ
33 ケース
33b フック部
40 回動軸部
41 貫通穴
50 ロック取付け部
51 ロッド支持部
52 ギア支持部
60 グラブボックス
61 インストルメントパネル
62 ロッド
63 ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラブドアアウタとグラブドアインナを備え内部にニーエアバッグモジュール収納用空間部を備えるグラブドアと、
ニーエアバッグとインフレータと前記ニーエアバッグを車両前方側から覆うケースとを備え前記グラブドアに取付けられるニーエアバッグモジュールと、
前記グラブドアインナに設けられ前記グラブドアをインストルメントパネルまたは該インストルメントパネルに対して固定される部材に回動可能に取付けるための回動軸部と、
前記グラブドアインナに設けられ前記グラブドアを閉状態に保持するためのロック取付け部と、
を有し、
前記グラブドアアウタは、軟質樹脂製であり、前記ニーエアバッグが展開したときに破断するティア部と、該ティア部の内側に位置し該ティア部が破断したときに開くティア内側部と、前記ニーエアバッグモジュール収納用空間部内に立ち上がる立ち上がり壁と、を備えており、
前記グラブドアインナは硬質樹脂製であり、前記グラブドアインナに開口部が形成されており、該開口部を通して前記ニーエアバッグモジュールのニーエアバッグおよびインフレータが前記ニーエアバッグモジュール収納用空間部に収納されており、
前記ケースは、前記グラブドアアウタの立ち上がり壁に係合されるフック部を備えており、
前記回動軸部と前記ロック取付け部は、硬質樹脂製であり、前記グラブドアインナに一体に形成されている、グラブドア付けニーエアバッグ装置。
【請求項2】
グラブドアアウタとグラブドアインナを備え内部にニーエアバッグモジュール収納用空間部を備えるグラブドアと、
ニーエアバッグとインフレータと前記ニーエアバッグを車両前方側から覆うケースとを備え前記グラブドアに取付けられるニーエアバッグモジュールと、
前記グラブドアアウタに設けられ前記グラブドアをインストルメントパネルまたは該インストルメントパネルに対して固定される部材に回動可能に取付けるための回動軸部と、
前記グラブドアアウタに設けられ前記グラブドアを閉状態に保持するためのロック取付け部と、
を有し、
前記グラブドアアウタは、軟質樹脂製であり、前記ニーエアバッグが展開したときに破断するティア部と、該ティア部の内側に位置し該ティア部が破断したときに開くティア内側部と、前記ニーエアバッグモジュール収納用空間部内に立ち上がる立ち上がり壁と、を備えており、
前記グラブドアインナは硬質樹脂製であり、前記グラブドアインナに開口部が形成されており、該開口部を通して前記ニーエアバッグモジュールのニーエアバッグおよびインフレータが前記ニーエアバッグモジュール収納用空間部に収納されており、
前記ケースは、前記グラブドアアウタの立ち上がり壁に係合されるフック部を備えており、
前記回動軸部と前記ロック取付け部は、硬質樹脂製であり、前記グラブドアアウタと別体に形成されて該グラブドアアウタに固定されている、グラブドア付けニーエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−137439(P2009−137439A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315942(P2007−315942)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】