説明

グリーンシート、積層体、誘電体層形成基板およびその製造方法

【課題】
基板にラミネートする工程等で、待機スジや打痕が生じることがないグリーンシート、該グリーンシートの層を有する積層体、前記グリーンシートから形成された誘電体層を有する誘電体層形成基板、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
少なくともガラス成分および熱分解性バインダーを含有する誘電体層用組成物をフィルム化してなるグリーンシートであって、降伏強度が1.5MPa以上、破断強度が0.8MPa以上、かつヤング率が10MPa以上であることを特徴とするグリーンシート、キャリアーフィルム上に本発明のグリーンシートが積層され、さらに該グリーンシート上に保護フィルムが積層されてなる積層体、基板上に、前記グリーンシートを用いて形成された誘電体層を有することを特徴とする誘電体層形成基板及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に好適なグリーンシート、このグリーンシートの層を有する積層体、誘電体層形成基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には、液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマディスプレイパネル等がある。これらの中でも、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう)は、次世代のマルチメディアディスプレイとして注目を集めている。
【0003】
PDPの一例の断面図を図6に示す。図6に示すPDPは、前面板用ガラス基板1及び背面板用ガラス基板2の1対のガラス基板からなる。この前面板用ガラス基板1と背面板用ガラス基板2の内面には、互いに直交する透明電極3及びデータ電極4がそれぞれ形成されている。透明電極3及びデータ電極4は、誘電体層5(前面板誘電体層)及び6(背面板誘電体層)によりそれぞれ覆われている。また、ガラス基板1及び2は、保護膜7を介してリブ(隔壁)8によって放電空間(画素)に分離され、各画素には蛍光体9が形成されている。
【0004】
従来、前面板誘電体層及び背面板誘電体層を形成する方法としては、スクリーン印刷法が一般的であった。この方法は、ガラス粉末成分及び樹脂を含有するペーストを、目的の性能を得るのに必要な厚みまでガラス基板上に繰り返し印刷し、後に焼成して誘電体層を得るものである。しかしながら、この方法によれば、ペーストを塗布した後に溶剤を揮散させ、またペーストを塗布するという操作を繰り返す必要があるため、作業に長時間を要する。また、溶剤が残存して、誘電体層としての性能が劣化する原因となる場合があるため、必要とされる膜厚精度が得られなかったり、平滑な表面が得られないという問題があった。
【0005】
このような問題を解決すべく、近年、グリーンシートを用いることにより誘電体層を形成する方法が提案されている(特許文献1〜3等)。この方法によれば、目的の厚みを有し、表面が平滑な誘電体層を簡便に形成することができる。
【0006】
グリーンシートは、キャリアーフィルム上に、ガラス成分、熱分解性バインダー等を含有する誘電体層用組成物を塗工し、乾燥することでグリーンシートの層を形成し、さらにこのグリーンシート上に保護フィルムを積層して、長尺の積層体として製造される。誘電体層を形成するには、この積層体から保護フィルムを剥離し、剥離面をガラス基板上に貼り合わせ(ラミネート)、さらにキャリアーフィルムを剥離した後、グリーンシートの層を焼成すればよい。
【0007】
しかしながら、このグリーンシートを用いてガラス基板上に誘電体層を形成する方法には次のような問題があった。すなわち、この方法においては、長尺の積層体から保護フィルムを剥離し、剥離面(グリーンシート側の面)をガラス基板上に貼り合わせた後、積層体をガラス基板の大きさに合わせて裁断する工程がある。そして、前記剥離面をガラス基板上に貼り合わせる間及び/又はガラス基板に貼り合わせた積層体をガラス基板の大きさに合わせて裁断する間、長尺の積層体から保護フィルムを剥離する操作を一時的に停止する必要があり、その際に、グリーンシートにスジ(待機スジ)が入る場合がある。また、グリーンシートは粘弾性体であるため、外部から部分的に力が加わることにより、表面に打痕が発生する場合がある。
このような待機スジや打痕は、その後の焼成工程を経て得られる誘電体層に不均一な欠陥としてそのまま残り、誘電体層形成基板をPDPに用いたときに、パネル点灯時に欠陥が生じる場合があり、問題となっていた。
【0008】
【特許文献1】特開平9−102273号公報
【特許文献2】特開平11−106237号公報
【特許文献3】特開平11−180732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、基板にラミネートする工程等で、待機スジや打痕が生じることがないグリーンシート、該グリーンシートの層を有する積層体、前記グリーンシートから形成された誘電体層を有する誘電体層形成基板、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく、グリーンシートの粘弾性特性に注目して鋭意検討した。その結果、降伏強度が1.5MPa以上、破断強度が0.8MPa以上、かつヤング率が10MPa以上であるグリーンシートを使用すると、基板にラミネートする工程等で待機スジや打痕が生じることがなく、結果として均一な膜質を有する誘電体層を得ることができることを見出した。また、この誘電体層が形成された基板を用いることで、パネル点灯時の欠陥がない高品質なプラズマディスプレイパネルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明の第1によれば、少なくともガラス成分及び熱分解性バインダーを含有する誘電体層用組成物をフィルム化してなるグリーンシートであって、降伏強度が1.5MPa以上、破断強度が0.8MPa以上、かつヤング率が10MPa以上であることを特徴とするグリーンシートが提供される。
本発明のグリーンシートは、プラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に用いられるものであるのが好ましい。
【0012】
本発明の第2によれば、キャリアーフィルム上に本発明のグリーンシートが積層され、さらに該グリーンシート上に保護フィルムが積層されてなる積層体が提供される。
本発明の第3によれば、基板上に、本発明のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有することを特徴とする誘電体層形成基板が提供される。
本発明の第4によれば、本発明の積層体の保護フィルムを剥離して、積層体のグリーンシート側と基板とを貼り合わせる工程と、前記積層体のキャリアーフィルムを剥離した後、グリーンシートを焼成する工程を有する誘電体層形成基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のグリーンシート及び積層体によれば、前記貼り合わせる工程等でグリーンシートに待機スジや打痕が生じることがなく、結果として均一な膜質を有する誘電体層を得ることができる。
本発明の誘電体層形成基板は、基板上に、本発明のグリーンシートから形成された、均一な膜質を有する誘電体層を有する。本発明の誘電体層形成基板によれば、パネル点灯時の欠陥のない高品質なPDPを得ることができる。
本発明の製造方法によれば、本発明の誘電体層形成基板を簡便かつ効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を、1)グリーンシート、2)積層体、3)誘電体層形成基板及びその製造方法に項分けして詳細に説明する。
【0015】
1)グリーンシート
本発明のグリーンシートは、少なくともガラス成分及び熱分解性バインダーを含有する誘電体層用組成物をフィルム化してなるものである。
【0016】
(1)ガラス成分
誘電体層用組成物の調製に用いるガラス成分としては、例えば、PbO−B(酸化鉛−酸化ホウ素)系ガラス、PbO−B−SiO(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−B−SiO−A1(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、PbO−B−SiO−A1−TiO(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム−酸化チタン)系ガラス、PbO−BaO−SiO−A1(酸化鉛−酸化バリウム−酸化ケイ素−酸化アルミニウム)系ガラス、PbO−B−SiO−Al−TiO−BaO(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム−酸化チタン−酸化バリウム)系ガラス、PbO−B−SiO−A1−BaO−CuO(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム−酸化バリウム−酸化銅)系ガラス、PbO−B−SiO−A1−BaO−CoO(酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム−酸化バリウム−酸化コバルト)系ガラス、B−SiO−Al−BaO−ZnO−Bi(酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム−酸化バリウム−酸化亜鉛−酸化ビスマス)系ガラス、B−SiO−ZnO−BaO−LiO−Bi(酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化亜鉛−酸化バリウム−酸化リチウム−酸化ビスマス)系ガラス、ZnO−B−SiO(酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、PbO−ZnO−B−SiO(酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、NaO−B−SiO(酸化ナトリウム−酸化ホウ素−酸化ケイ素)系ガラス、BaO−CaO−SiO(酸化バリウム−酸化カルシウム−酸化ケイ素)系ガラス等が挙げられる。
【0017】
これらの中でも、PbO−B−SiO−Al−TiO系ガラス、PbO−B−SiO−Al−TiO−BaO系ガラス、B−SiO−Al−BaO−ZnO−Bi系ガラスの使用が好ましい。
【0018】
本発明においては、これらのガラス成分を粉末状にして用いる。粉末状にしたガラス成分(ガラス粉末)の平均粒径は、特に制限されないが、通常、0.1〜5μmである。また、ガラス粉末の最大粒径は特に制限されないが、好ましくは25μm以下である。ガラス粉末の粒径をこのように設定することで、優れた耐電圧特性を有する誘電体層を形成することができる。
【0019】
誘電体層用組成物を背面板誘電体層用組成物として用いる場合には、白色の誘電体層を得るために、ガラス成分はさらにフィラー成分を含むことが好ましい。用いるフィラー成分としては、TiO(酸化チタン)、Al(アルミナ)、SiO(シリカ)、ZrO(ジルコニア)等が挙げられる。これらの中では、TiO、Alの使用が特に好ましい。
【0020】
ガラス成分中のガラス粉末とフィラー成分の混合比(重量比)は、通常、50:50〜100:0であるが、背面板誘電体層用組成物として用いる場合は、50:50〜95:5であり、前面板誘電体層用組成物として用いる場合は、100:0であるのがそれぞれ好ましい。
【0021】
本発明においては、ガラス成分をガラスフリットとして用いることもできる。ガラスフリットは、ガラス粉末及び所望によりフィラー成分を所定割合で混合し、得られた混合物を溶融し、次いで、冷却することで得ることができる。得られたガラスフリットは粉砕して粉末状にして用いる。
ガラス成分の使用量は、誘電体層用組成物に対して、通常40〜80重量%、好ましくは50〜70重量%である。
【0022】
(2)熱分解性バインダー
誘電体層用組成物の調製に用いる熱分解性バインダーとしては、結合剤としての機能を有し、焼成することにより分解して、容易に除去できる有機高分子であれば、特に制限されない。なかでも、優れたバインダーとしての役割を果たすとともに、ガラス基板との感圧接着剤としての役割も果たすことから、アクリル樹脂の使用が好ましい。
【0023】
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、(メタ)アクリレート化合物の2種以上の共重合体、(メタ)アクリレート化合物と他の共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかを表す(以下にて同じ)。
【0024】
(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
【0025】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
【0026】
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
他の共重合性単量体としては、上記(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物であれば特に制約はないが、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、ビニルフタル酸等の不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン等のビニル基含有ラジカル重合性化合物;等が使用できる。
【0028】
これらの中でも、前記熱分解性バインダーとしては、アルキル(メタ)アクリレートの少なくとも一種と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも一種からなる共重合体が特に好ましい。
【0029】
アクリル樹脂は、これらの(メタ)アクリレート化合物及び所望により他の共重合性単量体とを(共)重合させることにより得ることができる。重合方法は特に制限されず、公知の重合方法を採用できる。例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合法が挙げられる。
【0030】
熱分解性バインダーの重量平均分子量は、特に制約はないが、通常50,000〜250,000である。分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0031】
熱分解性バインダーのガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、通常、−20℃〜+100℃である。
ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
【0032】
熱分解性バインダーの使用量は、所定の粘弾性特性を有するグリーンシートが得られる量であればよいが、誘電体層用組成物に対し、通常5〜45重量%、好ましくは10〜40重量%である。
【0033】
(3)分散剤
本発明に用いる誘電体層用組成物においては、上記成分のほか、ガラス成分を均一に分散させる役目を有する分散剤を含有することが好ましい。用いる分散剤としては、例えば、界面活性剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0034】
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、アルキルスルホコハク酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ホルマリン縮合物ナトリウム塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、等の陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ソルビタンモノオレエート、ラウリン酸ジエタノールアミド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド等の非イオン性界面活性剤;α−オレフィン−無水マレイン酸共重合体、脂肪族ポリカルボン酸塩、脂肪族ポリカルボン酸特殊シリコーン等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤;ポリエーテルポリエステル酸、ポリエーテルポリオールポリエステル酸等のポリエーテルエステル酸類と、高分子ポリアミン等の有機アミン類とから得られる高分子分散剤(具体的には、ディスパロンDA−234(商品名、楠本化成社製)等)のポリエーテルエステル酸アミン塩;等が挙げられる。
【0035】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライド、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
分散剤の使用量は、誘電体層用組成物に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。分散剤の添加量が0.01重量%未満であると、分散状態が不均一で、ガラス成分が沈降を生じやすい誘電体層用組成物が得られるおそれがあり、10重量%より多いと、焼成工程を経ても分散剤が誘電体層内に残存し、耐電圧及び透明性又は反射性の低下の原因となる。
【0037】
(4)その他の成分
本発明に用いる誘電体層用組成物には、その他の成分として、可塑剤、溶剤等が含まれていてもよい。
可塑剤としては、アジピン酸2−エチルヘキシル等のアジピン酸エステル系可塑剤、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤等が挙げられる。可塑剤の使用量は、誘電体層用組成物に対して、通常0〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%である。
【0038】
溶剤は、誘電体層用組成物に適当な流動性又は可塑性、良好な膜形成性を付与するものである。用いる溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸ホスホロアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;γ−ラクトン、δ−ラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキキシド等のスルホキシド類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、又はこれらの2種以上からなる混合溶媒の使用が好ましく、ケトン類とエステル類との混合溶媒の使用がより好ましい。
【0039】
溶剤の使用量は、誘電体層用組成物に対して、通常0〜80重量%、好ましくは10〜60重量%である。
【0040】
本発明に用いる誘電体層用組成物には、さらに必要に応じて、粘着付与剤、分子量が5,000以下の(メタ)アクリレートオリゴマー、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0041】
本発明に用いる誘電体層用組成物は、上述したガラス成分、熱分解性バインダー、分散剤及び溶剤等の原料をプレミキシングした後、分散機にかけて機械的に分散させることにより調製することができる。
分散に用いる分散機としては特に制約はなく、例えば、ボールミル、ビーズミル、3本ロール、ニーダー等の公知の分散機が挙げられる。
得られる誘電体層用組成物をフィルム化し乾燥することにより、グリーンシートを得ることができる。
【0042】
本発明のグリーンシートは、得られるグリーンシートのうち、降伏強度が1.5MPa以上、好ましくは、1.5〜7.0MPa、破断強度が0.8MPa以上、好ましくは、0.8〜6.5MPa、かつヤング率が10MPa以上、好ましくは、10〜120MPaであるものである。
このような粘弾性特性を有するグリーンシートを用いることにより、基板に貼り合わせる工程等で待機スジや打痕が発生することがなくなり、結果として均一な膜質を有する誘電体層を形成することができる。
【0043】
降伏強度、破断強度、ヤング率の値は、粘弾性体の強度、硬さの指標となる値である。
粘弾性体であるグリーンシートに変形を起こさせる力が加わると、グリーンシート内に応力が生じる。降伏強度とは、シートの塑性変形が始まるとき(降伏点)の応力の強さをいい、破断強度とは、シートの破断が起こるとき(破損点)の応力の強さをいう。
【0044】
グリーンシートの降伏強度、破断強度、ヤング率は、例えば、図1に示す引っ張り試験機を用いて測定し、求めることができる。図1に示すように、断面積S[mm]のグリーンシート17bの上下を、つかみ距離X[mm]でチャック31a及び31bにより固定し、下方向に力(図1中、白抜矢印)を加えるとき、グリーンシート17bにかかる力とひずみの関係は、図2に示すグラフのようになる。図2中、縦軸は力(N)、横軸はひずみ(mm)を表す。ひずみとは、かかる力によって生じる微小変形をいう。また、図2に示すグラフ上に降伏点と破損点を示す。
【0045】
降伏強度F(k)[MPa]と破断強度F(h)[MPa]は、次式により求めることができる。
【0046】
【数1】

【0047】
ヤング率は伸びの弾性率ともいわれ、弾性体の硬さの値の一種である。図1において、グリーンシート17bに下方向へ力を加える(下方向に引っ張る)と、図2のグラフのように、初期の段階では力とひずみは比例する。このように伸び変形で力とひずみとの間に比例関係が成り立つときの比例定数Eがヤング率であり、力−ひずみ曲線の初期の傾斜(接線の傾斜)で表される。ヤング率(E)は、具体的には次式により求めることができる。
【0048】
【数2】

【0049】
降伏強度が1.5MPa以上、破断強度が0.8MPa以上、かつヤング率が10MPa以上であるグリーンシートを得るための定められた方法は特にない。目的とする粘弾性特性を有するグリーンシートは、例えば、グリーンシートの製造に用いる誘電体層用組成物に含まれる各成分の種類に応じて、各成分の含有量等を適宜調整したり、該誘電体層用組成物をキャリアーフィルム上に塗布した後、得られる塗膜の乾燥温度や乾燥時間等を適宜設定して残存溶剤量を制御するなどの方法により製造することができる。
【0050】
2)積層体
本発明の積層体は、キャリアーフィルム上に本発明のグリーンシートが積層され、さらに、該グリーンシート上に保護フィルムが積層されてなるものである。
【0051】
本発明の積層体は、前記誘電体層用組成物をキャリアーフィルム上に塗工し、乾燥することでグリーンシートの層を形成し、さらにその上に保護フィルムを積層することによって製造することができる。
【0052】
本発明の積層体を製造する方法の一例を図3に示す。図3において、13はキャリアーフィルム、14は誘電体層用組成物を塗工する塗工装置、18は誘電体層用組成物の塗膜を乾燥する(溶媒を除去する)乾燥装置、20a及び20bは、グリーンシート上に保護フィルムを積層する積層ロールである。
【0053】
先ず、ロール状に巻き取られたキャリアーフィルム13が塗工装置14へ送られる。
キャリアーフィルム13としては、誘電体層用組成物の塗膜との剥離性に優れるものであれば特に制限されない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることができる。
【0054】
また、前記プラスチックフィルムの片面に、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル樹脂等の剥離剤を塗布したものを用いるのが好ましい。
さらに、上記プラスチックフィルム上に剥離性を有する樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にポリオレフィン樹脂を押し出したものでもよい。
【0055】
次に、塗工装置14により、キャリアーフィルム13上に誘電体層用組成物が塗布される。塗工装置14は貯蔵部15と塗工部16からなる。貯蔵部15は、スラリー状の誘電体層用組成物を貯蔵し、一定量ずつ塗工部16に送液する。
塗工部16としては特に制限されない。例えば、ナイフコーター、ダイコーター等の公知のコーターを用いることができる。
誘電体層用組成物の塗工量は、形成する誘電体層用組成物の塗膜17aの厚みに応じて適宜設定することができる。
【0056】
次に、表面に誘電体層用組成物の塗膜17aが形成されたキャリアーフィルム13は、乾燥装置18に送り込まれる。この乾燥装置18内で誘電体層用組成物の塗膜17aを乾燥する(即ち、溶剤等の揮発成分を除去する)ことにより、誘電体層用組成物の乾燥塗膜、すなわち、グリーンシート17がキャリアーフィルム13上に積層された積層体を得ることができる。
【0057】
誘電体層用組成物の塗膜17aを乾燥する方法としては特に制限されないが、例えば、(a)塗膜が形成されたキャリアーフィルムを所定温度に加熱する方法、(b)前記塗膜表面に乾燥空気又は熱風を送り込む方法、(c)前記(a)及び(b)を組み合わせる方法等が挙げられる。
【0058】
塗膜17aの乾燥温度は、キャリアーフィルムが熱変形を生じることのない温度以下であれば特に制限されず、通常、室温から150℃、好ましくは60〜130℃である。
乾燥時間は、通常1〜10分である。
【0059】
だたし、前述したように、乾燥後の残留溶剤の量はグリーンシートの粘弾性特性に影響を与える場合がある。本発明のグリーンシートを製造するために残留溶剤の量を制御する必要がある場合には、乾燥温度、乾燥時間を適宜調整すればよい。
【0060】
以上のようにして得られるグリーンシート17の厚みは、通常10〜200μm、好ましくは20〜120μmである。
【0061】
次いで、グリーンシート17上に保護フィルム19を積層する。
図3中、保護フィルム19はロール状に巻き取られた長尺のフィルムである。
用いる保護フィルムとしては、キャリアーフィルムと同様、誘電体層用組成物の塗膜との剥離力に優れるものであれば、特に制限されない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルム等を使用することができる。また、上記プラスチックフィルムの片面にシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布したものを使用することもできる。
【0062】
グリーンシート17上に保護フィルム19を積層するには、図3中、2つの積層ロール20a及び20bの間をグリーンシート17と保護フィルム19とを通過させて、貼り合わせる(ラミネートする)。この場合、積層ロール20a及び20bの両方又は一方、例えば、保護フィルム面側のロール20bを加熱してもよい。
【0063】
以上のようにして、キャリアーフィルム13−グリーンシート17−保護フィルム19の3層からなる積層体21を得ることができる。
得られた積層体21は、ロール状に巻き取り、回収して保存、運搬することができる。
【0064】
3)誘電体層形成基板及びその製造方法
本発明の誘電体層形成基板は、基板上に、本発明のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有する。
【0065】
用いる基板としては、ガラス基板、セラミック基板等が挙げられ、ガラス基板が好ましい。また、基板としては、表面に電極が形成されたものであれば特に制限されず、公知のものを使用することができる。例えば、表面に透明電極が形成された前面板用ガラス基板、表面にデータ電極が形成された背面板用ガラス基板が挙げられる。また、基板の厚みは特に制限されないが、通常1〜10mm程度である。
【0066】
本発明の誘電体層形成基板は、本発明の積層体の保護フィルムを剥離して、積層体のグリーンシート側と基板とを貼り合わせ、次いで前記積層体のキャリアーフィルムを剥離した後、グリーンシートを焼成することにより製造することができる。
【0067】
本発明の誘電体層形成基板を製造する一例を図4に示す。図4に示すものは、図6中、前面板用ガラス基板1上に透明誘電体層5を形成する例である。
【0068】
先ず、図4(a)に示すように、グリーンシート17から保護フィルム19を剥離し、次いで、図4(b)に示すように、グリーンシート17を透明電極3が形成された前面板用ガラス基板1上(透明電極3が形成されている側)に熱圧着する。誘電体層用組成物中の熱分解性バインダーは、バインダーであるとともに感圧性接着剤でもあるため、簡便な作業により、グリーンシート17をガラス基板1に均一に貼り合わせることができる。
【0069】
次に、ガラス基板1に貼り合わせた状態で、積層体をガラス基板1の大きさに合わせて裁断する。本発明の積層体は、上述した特定の粘弾性特性を有するグリーンシートの層を有するものである。従って、長尺の積層体から保護フィルムを剥離する操作が一時的に停止しても、本発明の積層体のグリーンシートの層には待機スジが発生することがない。また、誘電体層を形成する各工程において、外部からグリーンシートに部分的に力が加わっても、打痕が発生することがない。
【0070】
次に、図4(c)に示すように、グリーンシート17からキャリアーフィルム13を剥離し、グリーンシート17が熱圧着されたガラス基板1を焼成する。この過程で、誘電体層用組成物中の熱分解性バインダーが熱分解し、有機成分が完全に分解除去される。
【0071】
グリーンシート17が熱圧着されたガラス基板を焼成する方法としては、例えば、グリーンシート17が熱圧着されたガラス基板を加熱炉の中に入れて全体を加熱する方法が挙げられる。加熱温度及び加熱時間は、ガラス基板が熱により変形せず、熱分解性バインダーが熱分解し、有機成分が完全に除去され、かつ、無機成分(ガラス成分等)が均一な溶融状態となり、ガラス成分が溶融し、均一化する温度及び時間であれば特に制限されない。加熱温度は通常500〜700℃であり、加熱時間は通常数分から数時間である。
【0072】
この焼成は、300〜450℃の温度で10〜60分間加熱する仮焼成工程と、その後、さらに500〜700℃の温度で20〜120分間にわたって加熱を行う本焼成工程とに分けて行うこともできる。この焼成方法によれば、より均一な膜質及び厚みで、透明性及び表面平滑性に優れる誘電体層を得ることができる。
【0073】
焼成後は、冷却することにより、図4(d)に示すように、透明誘電体層5が積層されたガラス基板1を得ることができる。
【0074】
本実施形態の誘電体層形成ガラス基板を用いることによって、パネル点灯時の欠陥のない高品質なPDPを製造することができる。
【実施例】
【0075】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
ガラスフリット、熱分解性バインダー、分散剤、可塑剤及び溶剤は以下のものを用いた。
(ガラスフリット)
ガラスフリットA:ガラス成分100重量%〔PbO(40重量%)−B(7重量%)−SiO(14重量%)−Al(25重量%)−TiO(14重量%)〕(平均粒径1.0μm、最大粒径20μm)のガラスフリット
ガラスフリットB:ガラス成分100重量%〔PbO(40重量%)−B(25重量%)−SiO(8重量%)−Al(8重量%)−TiO(5重量%)−BaO(14重量%)〕(平均粒径1.9μm、最大粒径18μm)のガラスフリット
ガラスフリットC:ガラス成分100重量%〔PbO(40重量%)−B(25重量%)−SiO(10重量%)−Al(5重量%)−TiO(5重量%)−BaO(15重量%)〕(平均粒径2.2μm、最大粒径20μm)のガラスフリット
ガラスフリットD:ガラス成分100重量%〔B(25重量%)−SiO(15重量%)−Al(5重量%)−BaO(25重量%)−ZnO(15重量%)−Bi(15重量%)〕(平均粒径2.5μm、最大粒径20μm)のガラスフリット
ガラスフリットE:ガラス成分100重量%〔PbO(65重量%)−B(5重量%)−SiO(30重量%)〕(平均粒径1.0μm、最大粒径20μm)のガラスフリット
【0077】
(熱分解性バインダー)
熱分解性バインダーA:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を重合開始剤として用い、メチルイソブチルケトンと酢酸エチルの混合溶媒(メチルイソブチルケトン:酢酸エチル(重量比)=1:1)中で、2−エチルヘキシルメタクリレートとアクリル酸をモル比99:1で共重合して得られた、重量平均分子量が160,000の固形分55重量%の樹脂
熱分解性バインダーB:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を重合開始剤として用い、メチルイソブチルケトンと酢酸エチルの混合溶媒(メチルイソブチルケトン:酢酸エチル(重量比)=1:1)中で、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートをモル比80:10:10で共重合して得られた、重量平均分子量が170,000の固形分46.7重量%の樹脂
熱分解性バインダーC:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を重合開始剤として用い、メチルイソブチルケトンと酢酸エチルの混合溶媒(メチルイソブチルケトン:酢酸エチル(重量比)=1:1)中で、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートをモル比90:10で共重合して得られた、重量平均分子量が210,000、固形分47.1重量%の樹脂
熱分解性バインダーD:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を重合開始剤として用い、メチルイソブチルケトンと酢酸エチルの混合溶媒(メチルイソブチルケトン:酢酸エチル(重量比)=1:1)中で、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートをモル比97:3で共重合して得られた、重量平均分子量が180,000、固形分54.5%の樹脂
【0078】
(分散剤)
分散剤A:α−オレフィン−マレイン酸共重合体(商品名:フローレンG−700、共栄社化学社製、固形分100重量%)
分散剤B:α−オレフィン−マレイン酸共重合体(商品名:フローレンG−700DMEA、共栄社化学社製、固形分70重量%)、及びソルビタンモノオレート(商品名:レオドールSP−010V、花王社製、固形分100重量%)(重量比9:5で用いる)
【0079】
(可塑剤)
可塑剤A:アジピン酸2−エチルヘキシル(商品名:オリバインBXX5429、東洋インキ製造社製、固形分80重量%)
可塑剤B:ジブチルフタレート(関東化学社製、固形分100重量%)
【0080】
(溶剤)
溶剤A:トルエン
溶剤B:メチルイソブチルケトンと酢酸エチルの混合溶媒(メチルイソブチルケトン:酢酸エチル(重量比)=5:14)
溶剤C:メチルイソブチルケトン
【0081】
なお、用いる熱分解性バインダーのガラス転移温度(Tg)、得られるグリーンシート中の残留溶媒の量及びグリーンシートの厚みは、以下に示す方法により測定した。
ガラス転移温度(Tg):JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
残留溶媒の量:0.2gの試料を120℃で30分間加熱し、気化した溶剤量をガスクロマトグラフィー(GC/FID、ヒューレットパッカード社製、6890型)によって測定した。
グリーンシートの厚み:定圧厚さ測定器(TECLOCK CORPORATION社製)によって測定した。
【0082】
(実施例1)
ガラスフリットA 100重量部、熱分解性バインダーA 70重量部、分散剤A 0.3重量部、可塑剤A 1.0重量部、及び溶剤A 20重量部を、ビーズミル系分散機を用いて分散することにより、誘電体層用組成物のスラリーを調製した。
キャリアーフィルムとして、片面をシリコーン樹脂により厚さ0.1μmで剥離処理された厚さ75μmの長尺のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このフィルムの剥離処理された面上に、上記で得たスラリーをナイフコーターを用いて塗布した。次いで、100℃で2分間乾燥して、PETフィルム上に厚さ50μmのグリーンシート1を得た。
【0083】
次に、上記で得たグリーンシート1上に、前記PETフィルムと同じ長尺の、片面をシリコーン樹脂により厚さ0.1μmで剥離処理された保護用のPETフィルム(厚さ38μm)の剥離処理面をロール間圧着させることにより、PETフィルム−グリーンシート−PETフィルムの3層が積層されてなる積層体1を得た。
【0084】
(実施例2)
ガラスフリットB 100重量部、熱分解性バインダーB 45重量部、分散剤B 1.4重量部、可塑剤A 6.0重量部、及び溶剤B 19重量部を用い、実施例1と同様に、誘電体層用組成物のスラリーを調製した。
さらに、キャリアーフィルムの厚さを50μmとする他は、実施例1と同様にしてグリーンシート2(厚さ80μm)を得た。
グリーンシート2を用いて、実施例1と同様にして積層体2を製造した。
【0085】
(実施例3)
ガラスフリットとして、ガラスフリットC 100重量部を用いる他は、実施例2と同様にしてグリーンシート3(厚さ50μm)を得た。
グリーンシート3を用いて、実施例1と同様にして積層体3を製造した。
【0086】
(実施例4)
ガラスフリットとして、ガラスフリットD 100重量部を用い、可塑剤として可塑剤B 5.0重量部用いる他は、実施例2と同様にしてグリーンシート4(厚さ60μm)を得た。
グリーンシート4を用いて、実施例1と同様にして積層体4を製造した。
【0087】
(比較例1)
ガラスフリットとして、ガラスフリットB 100重量部を用い、熱分解性バインダーとして熱分解性バインダーC 51重量部を用い、溶剤として溶剤C 19重量部を用いる他は、実施例2と同様にしてグリーンシート5(厚さ88μm)を得た。
グリーンシート5を用いて、実施例1と同様にして積層体5を製造した。
【0088】
(比較例2)
ガラスフリットE 100重量部、熱分解性バインダーD 44重量部、分散剤A 1.2重量部、可塑剤B 5.0重量部、及び溶剤C 25重量部を用い、実施例2と同様にしてグリーンシート6(厚さ74μm)を得た。
グリーンシート6を用いて、実施例1と同様にして積層体6を製造した。
【0089】
実施例1〜4、比較例1、2のグリーンシート1〜6中の残留溶剤の量を測定した。その結果を、用いた誘電体層用組成物のデータと共に下記第1表にまとめて示す。
【0090】
【表1】

【0091】
(降伏強度、破断強度、ヤング率の測定)
実施例1〜4、比較例1、2で得られた積層体1〜6から、15mm×70mmの短冊状のサンプルをそれぞれ作製した。このサンプルの両端を、引っ張り試験機(TENSILON/UTM−4−100、オリエンテック社製)のチャックに、つかみ距離50mmとなるように固定した。保護フィルム及びキャリアーフィルムをグリーンシートから剥離し、引張速度200mm/minで引っ張り試験を行い、それぞれ、降伏点の力F’(k)[N]、破損点の力F’(h)[N]、ひずみΔX[mm]を測定した。
【0092】
測定結果から、前記式により、降伏強度F(k)[MPa]、破断強度F(h)[MPa]、ヤング率[MPa]を算出して求めた。求めた結果を下記第2表に示す。なお、実施例3のグリーンシート3は、降伏点以前に破断した。従って、グリーンシート3の降伏強度は、破断強度以上(2.3以上)であるといえる。
【0093】
(待機スジ)
実施例1〜4、比較例1、2で得られた積層体1〜6から、50mm×40mmのサンプルをそれぞれ作製した。このサンプルを用いて、下記に示す待機スジの発生の有無を評価する試験を行った。
図5に示すように、このサンプルを、キャリアーフィルム13側を下にしてガラス板100上にのせ、その上に別のガラス板10(75mm×50mm×2.8mm、29g)を載せた。ガラス板10の載っていない部分の保護フィルム19を剥離し、剥離した保護フィルム19をガラス板10をはさみこむように被せた。被せた保護フィルム19の上に1kgのおもり11を載せ、6分後におもり11をはずし、保護フィルム19をすべて剥離し、保護フィルム19を剥離した面をガラス基板(75mm×50mm×2.8mm)に貼付した。この状態で、グリーンシート17のガラス基板側に待機スジが発生しているかを目視観察した。待機スジが観察された場合を「あり」、されなかった場合を「なし」とした。評価結果を第2表に示す。
【0094】
(打痕)
実施例1〜4、比較例1、2で得られた積層体1〜6の一部から、それぞれ保護フィルムを剥離した。保護フィルムを剥離したグリーンシートの表面をマイクロスキャン(ナノフォーカス社製)で観察し、打痕のへこみ度合いをμm単位まで確認した。打痕がある場合を「あり」、ない場合を「なし」とした。評価結果を第2表に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
第2表より、実施例1〜4の、降伏強度が1.5MPa以上、破断強度が0.8MPa以上、かつヤング率が10MPa以上であるグリーンシート1〜4は、待機スジや打痕のないものであった。一方、降伏強度、破断強度、ヤング率が上記範囲にない比較例1、2のグリーンシートは、待機スジ及び/又は打痕のあるものであった。
【0097】
(実施例5〜8、比較例3,4)
上記で得た積層体1〜6上の保護フィルム(PETフィルム)を剥離除去し、グリーンシート面側を、表面に透明電極が形成された厚さ3mmのガラス基板(50mm×50mm)に重ね合わせ、加熱ローラーを用いて熱圧着(100℃、2kg/cm)した。
【0098】
その後、キャリアーフィルム(PETフィルム)を剥離除去し、加熱炉内に入れ、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、400℃で30分間加熱して、グリーンシート内の樹脂を熱分解除去した。さらに580℃に昇温し、同温度で30分間焼成して、誘電体層が形成された誘電体層形成基板1〜6を得た。得られた誘電体層形成基板1〜6についてスジ状、スリ鉢状の欠点の有無を目視観察した。欠点がある場合を「あり」、ない場合を「なし」と評価した。評価結果を第3表に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
第3表から、実施例5〜8の、所定の粘弾性特性を有する本発明のグリーンシートを用いて製造された誘電体層形成基板は、欠点のないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】引っ張り試験の方法を示す概略図である。
【図2】力−ひずみ曲線のグラフを示す図である。
【図3】本発明のグリーンシートを製造する工程概略図である。
【図4】本発明の誘電体層形成基板の形成方法を示す工程断面図である。
【図5】待機スジの発生の有無を評価する方法を示す概略図である。
【図6】プラズマディスプレイパネルの一例の構造断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1…前面板用ガラス基板、2…背面板用ガラス基板、3…透明電極、4…データ電極、5…誘電体層(前面板誘電体層)、6…誘電体層(背面板誘電体層)、7…保護膜、8…リブ(隔壁)、9…蛍光体、10,100…ガラス板、11…おもり、13…キャリアーフィルム、14…塗工装置、15…貯蔵部、16…塗工部、17a…誘電体層用組成物の塗膜、17,17b…グリーンシート、18…乾燥装置、19…保護フィルム、20a、20b…積層ロール、21…積層体、31a,31b…チャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともガラス成分および熱分解性バインダーを含有する誘電体層用組成物をフィルム化してなるグリーンシートであって、降伏強度が1.5MPa以上、破断強度が0.8MPa以上、かつヤング率が10MPa以上であることを特徴とするグリーンシート。
【請求項2】
プラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に用いられるものである請求項1に記載のグリーンシート。
【請求項3】
キャリアーフィルム上に請求項1に記載のグリーンシートが積層され、さらに該グリーンシート上に保護フィルムが積層されてなる積層体。
【請求項4】
基板上に、請求項1に記載のグリーンシートを用いて形成された誘電体層を有することを特徴とする誘電体層形成基板。
【請求項5】
請求項3に記載の積層体の保護フィルムを剥離して、積層体のグリーンシート側を基板と貼り合わせる工程と、前記積層体のキャリアーフィルムを剥離した後、グリーンシートを焼成する工程を有する誘電体層形成基板の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−310086(P2006−310086A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131199(P2005−131199)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】