説明

グルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤

【課題】本発明の目的は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現の促進効果が充分なグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤の有効成分を提供することにある。
【解決手段】ウコギ科人参抽出物を有効成分として含有するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤、および、前記グルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤を含む皮膚外用剤を提供する。前記ウコギ科人参は好ましくは田七人参であり、前記抽出物はウコギ科人参サポニン精製物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタチオンはヒトをはじめ動物の生体内で解毒などの生体防御の中心として働いている。このグルタチオンを介した生体における生体異物の体外排出に、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)は重要な役割を果たしている。その役割は、ベンツピレン等の発癌性物質や環境ホルモン様物質であるポリ塩化ビフェニル、二日酔いの原因であるアセトアルデヒドといった毒物とグルタチオンとの抱合体形成を促進し、体外に排出させる機能である。また、GSTは酸化防止、皮膚機能増強、腫瘍形成予防に関して非常に重要な酵素であることが知られているだけでなく、グルタチオンによる血中エタノール濃度の低下や中性脂肪の蓄積防止を促進させる作用を持っている。
【0003】
従来、GSTを活性化させる物質としては、トリテルペン誘導体リモノイド(特許文献1:特開2000−316527号公報)、イチョウ葉抽出物(特許文献2:特開平9−110713号公報)、シソ科植物ローズマリー、フトモモ科ユーカリ植物、天然オリゴ糖などが知られているが、効果が十分でなく実用的ではなかった。
【0004】
このため、生体内における有害物質無毒化や酸化防止、皮膚機能増強、腫瘍形成予防のために、効果が十分なGST活性化物質が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−316527号公報
【特許文献2】特開平9−110713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現の促進効果が充分なグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤の有効成分を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の発明を提供するものである。
〔1〕ウコギ科人参抽出物を有効成分として含有するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤。
〔2〕前記ウコギ科人参が田七人参である〔1〕に記載のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤。
〔3〕前記ウコギ科人参抽出物が、ウコギ科人参サポニン精製物である、〔1〕に記載のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤。
〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤を含む皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高いグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進効果を有し、生体内において有害物質無毒化や酸化防止、皮膚機能増強、腫瘍形成予防等の各種効果を発揮するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明においては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤の有効成分としてウコギ科人参水抽出物を用いる。
【0010】
ウコギ科人参は、ウコギ科(Araliaceae)の草本植物として分類される周知の薬用植物である。このウコギ科人参としては、御種人参(朝鮮人参、高麗人参とも別称される)、田七人参などがある。このうち、田七人参が好ましい。
【0011】
ウコギ科人参抽出物とは、ウコギ科人参の用部を抽出して得られる抽出物を意味し、水を用いて抽出される水抽出物が好ましい。ウコギ科人参の用部としては、植物体を構成する一部分又は全体であればよいが、根(根茎を含む)の一部を含むことが好ましい。前記用部は生のまま水抽出に供してもよいが、その前に、乾燥、適当な大きさへの切断、粉砕等の加工を行ってもよい。
【0012】
水抽出処理は、冷浸、温浸、加熱還流、パーコレーション法等常法に従って行うことができる。抽出温度やpH、時間などに特に制限はない。一例を挙げると、人参の乾燥物1重量に対して、10倍から30倍量の水を用い、加熱装置及び還流用の冷却装置を用いて60℃から沸騰直前、好ましくは80℃から沸騰直前の温度に保ちながら2時間以上、必要に応じて撹拌を行いながら加熱還流抽出を行うことができる。
【0013】
水抽出により得られる粗抽出液は、そのまま本発明における水抽出物として用いることができるが、さらに洗浄処理を施しその残渣を用いることが好ましい。洗浄処理は、有機溶媒を用いて行うことができ、有機溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、酢酸エチル、アセトン、モノテルペン類などの一般に用いられる有機溶媒の中から適宜選択して用いることができるが、中でも好ましいものとしてエタノールが挙げられる。有機溶媒の分量は、例えばエタノールを用いる場合、上述の粗抽出液1重量に対して、1から3倍量の無水エタノールを用いることができる。上記洗浄処理は繰り返して行うことができる。これにより有効成分を純化することができるので好ましいが、繰り返しの回数は、効率の面から、5回以下とすることが好ましい。
【0014】
本発明においてはウコギ科人参抽出物として、上記粗抽出液や水抽出物をさらに精製処理などをしてもよい。精製処理は、アルコール等(例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、酢酸エチル、アセトン、モノテルペン類など)の有機溶媒による抽出、遠心分離、活性炭処理、液液分配、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等の処理を1または複数処理組み合わせて行うことができる。有機溶媒による抽出の条件は例えば、田七人参水抽出物に対し3〜10倍量の有機溶媒(好ましくは95.0〜99.5質量%アルコール)に1〜12時間懸濁し、必要に応じて撹拌して行うことが好ましい。抽出後は懸濁液から有機溶媒を除去するが、これは例えば、必要に応じて懸濁液を濾過して残渣を除去後、エバポレーター等を用いて行う。
【0015】
また、上記粗抽出液、水抽出物、精製処理後の結果物をさらにろ過、濃縮、凍結乾燥処理などを行い、濃縮エキス、乾燥粉末、ペーストとしたものなどを本発明の有効成分として用いることもできる。特に、粗抽出液について残渣抽出処理を経て得られる処理物を好ましく用いることができ、中でも該処理物に乾燥、濃縮処理を経て得られる乾燥エキス末(例えば田七人参水抽出エキス末)が好ましい。
【0016】
これらのうち、ウコギ科人参の水抽出物(好ましくは水抽出物の乾燥粉末)をアルコール等の有機溶媒で抽出して得られるウコギ科人参サポニン精製物を用いることが好ましい。ウコギ科人参サポニン精製物は、サポニンを通常25.0〜95.0質量%含む。該精製物は、サポニン以外の成分、例えば糖類や繊維成分などを含むものであってもよい。
【0017】
本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤において、グルタチオン−S−トランスフェラーゼの発現を促進するとは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼの発現を、本発明品使用前の状態よりも促進することを意味する。グルタチオン−S−トランスフェラーゼの発現を促進する作用は、本発明品の使用前後でグルタチオン−S−トランスフェラーゼの発現量を比較することでするが、例えば本発明品を筋芽細胞に添加して培養し、添加前後のグルタチオン−S−トランスフェラーゼの発現量を測定比較して確認することができる。筋芽細胞とは、筋繊維の由来となる単核の細胞であり、この細胞が多数融合して合包体を形成した多核の細胞が筋管細胞であり、筋管細胞が成熟すると筋繊維となる。代表的な筋芽細胞としては、マウスの筋再生部より樹立された筋芽細胞株であるC2C12細胞を挙げることができる。発現量の定量は、例えば、細胞からメッセンジャーRNAを調製し、逆転写酵素処理により合成される相補的DNA(complementary DNA)を必要に応じてPCRなどにより増幅した後に行うことができる。
【0018】
本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼの発現の促進が期待される各種の場合において有用である。グルタチオン−S−トランスフェラーゼは生体内においてグルタチオンの作用を促進する作用を発揮する。よって、本発明の発現促進剤によれば、癌などの疾患、環境ホルモンによる健康被害の予防や治療、二日酔いの予防や治療;酸化防止、皮膚機能増強、腫瘍形成予防;グルタチオンによる血中エタノール濃度の低下、中性脂肪の蓄積防止の促進が可能である。
【0019】
本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼの発現を促進させるので、特に哺乳類(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、イヌ、ネコ、サル、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ等)に用いることができる。
【0020】
また、本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤の製剤形態は、その使用目的に応じて決定することができ特に限定されないが、例えば経口投与の場合、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセルなどの固剤や液剤が好ましく、経皮投与の場合、クリーム、軟膏、湿布、乳液、ローション、パウダー、スプレー、スティック、ボディーソープ、シャンプー、リンス、トニックなどのゲル状又は液状の形態が好ましい。本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤の投与形態は、特に限定されないが経口投与、経皮投与によることが好ましい。
【0021】
本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤の摂取量は、動物種、年齢、性別、体格、健康状態にもよるが、一般に、ウコギ科人参粉末として1日当たり0.5〜4.5g(ウコギ科人参抽出物の具体例である田七人参水抽出エキス末として0.1〜0.9g)が良く、好ましくは田七人参粉末として1日当たり1g〜1.5g(ウコギ科人参抽出物の具体例である田七人参水抽出エキス末として0.2g〜0.3g)の範囲で、最適な摂取量、摂取方法、摂取回数、摂取期間を適宜決めることができる。
【0022】
以上説明したように、本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤は、優れたグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進効果を発揮するので、医薬品、化粧品、飲食品、飼料として有用である。
【0023】
本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤におけるウコギ科人参抽出物の配合量は、用法、剤形、投与対象者の年齢、性別その他の条件、症状、疾患の程度等に応じて適宜選定される。通常、ウコギ科人参抽出物の量で、0.001質量%以上、好ましくは0.1質量%以上配合するのがよい。配合量が0.001質量%未満であると、本発明の効果を発揮できない。また上限については、効果向上が見られなくなる点では30.0質量%以下、好ましくは20.0質量%以下であることが好ましい。投与量は、投与対象者の年齢、性別その他の条件、症状、疾患の程度等に応じて適宜選定されるが、通常、1日当たり0.002mg/kgから0.6mg/kg投与される。1日当たりの投与量の範囲としては0.02mg/kgから0.4mg/kgが好ましい。便宜的には、所望ならば、1日あたりの合計投与量を分割し、1日の間に何回かに分けて投与してよい。
【0024】
本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤は、皮膚外用剤、注射剤、内服薬としての医薬品、医薬部外品は無論、化粧品、食品、飲料等の形態にして使用することができる。このうち皮膚外用剤として用いることが好ましい。
【0025】
本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤の担体としては、その使用形態に応じて、適当な充填剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、表面活性剤、防湿剤、賦形剤、希釈剤などを使用することができる。
【0026】
本発明のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤を皮膚外用剤として用いる場合には、全身皮膚などに適用される。例えば、クリーム、ハンドクリーム、乳液、化粧水、ローション、石鹸、ハンドソープ、ボディソープ、入浴剤、水虫薬、にきび治療剤、鎮痒剤、点眼剤、眼軟膏剤などの外用組成物及び皮膚化粧料、シャンプー、リンス、トニック、育毛剤等の毛髪化粧料などとして調製することができる。この場合、有効成分であるウコギ科人参抽出物以外の他の成分として、上記皮膚外用剤の種類、剤型などに応じた公知の配合成分、例えば、油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコ−ル、増粘剤、キレ−ト剤、色素、防腐剤、香料等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)筋管細胞を用いたGST遺伝子発現促進活性のin vitro試験
1)材料と方法
田七人参粉末、田七人参水抽出エキス末は市販品(共に松浦薬業(株)製)を購入した。なお、田七人参水抽出エキス末は、上記田七人参根の粉末から熱水抽出されたものである。
【0028】
田七人参精製サポニンは、上記田七人参エキス末を有機溶媒(エタノール)による抽出操作により、精製した。すなわち、田七人参水抽出エキス末を、その10倍量である99.5質量%エタノールに懸濁し2時間攪拌することにより、サポニン成分をエタノール中に抽出し、懸濁液をろ過して残渣を除去した。サポニンの含まれるろ液から、溶媒をエバポレーターで除去することで田七人参精製サポニンを得た。この処理により、10gの田七人参水抽出エキス末から、約1gの田七人参精製サポニンが得られた。
【0029】
2)筋管細胞の培養
筋管細胞は、マウス由来筋芽細胞(C2C12細胞、以下C2C12と表記)から作成した。作成方法は以下の手順に従った。尚、マウス由来筋芽細胞(C2C12細胞)はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。
【0030】
−80℃で凍結保存したC2C12 1mLを融解し(濃度:1×106cell/mL)、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium with high Glucose(4500mg/L)(Invitrogen製;以下DMEM)にウシ胎児血清(濃度10%)を加えた培地10mLに懸濁した後、1,500rpmで3分間遠心した。上清を除去した後、再度、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地15mLでC2C12を懸濁し、75cm2培養用フラスコに移し、37℃、CO2濃度5.0%に調整したインキュベーターにて48時間培養した。
【0031】
48時間後培地を除去し、トリプシン処理によって細胞をフラスコから剥がし、これらを回収する。回収した後、1,500rpmで3分間遠心した。上清を除去後、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地で、細胞濃度が1×105cell/mLになるように希釈した。C2C12希釈液を12穴プレート(住友ベークライト製)に1mLずつ添加した後、37℃、CO2濃度5.0%に調整したインキュベーターにて48時間培養した。
【0032】
48時間後、培地を除去し、新たに2%馬血清を含むDMEM培地を1mLずつ添加し、37℃、CO2濃度5.0%に調整したインキュベーターにて48時間培養した。48時間後、筋管が形成された。
【0033】
3)サンプルの添加
上記筋管細胞の培地中に、コントロールとして培地のみ、サンプルとして1質量%田七人参粉末、1質量%田七人参水抽出エキス末、1質量%田七人参精製サポニンを、終濃度100ppmとなるように添加し、72時間培養した。培地を除去し培養を終了した後、筋管細胞は−80℃にて保存した。
【0034】
4)GST遺伝子の定量
GST遺伝子発現量の定量解析にあたって、必要となるRNA及びcDNAは以下の手順に従い調製した。
【0035】
必要となるRNAの調製は、キアゲン製のQIA shredderおよびRneasy Mini Kitを使用して行った。
【0036】
作成した筋管細胞は、12穴プレートのウェル底面に付着しているので、1ウェル当り350μLのBuffer RLT(キット付属)を加えて筋管細胞を融解した。このとき、RLT:メルカプトエタノール=100:1となるようにメルカプトエタノールを添加した。細胞溶解液をQIAシュレッダー(キット付属)へ加え、15,000rpmで2分遠心した。上清を回収し、350μLの70質量%エタノールを加えて攪拌した。
【0037】
上記溶液をRNeasyスピンカラム(キット付属)に充填し12,000rpmで15秒遠心した。液を除去後Buffer RW1(キット付属)を350μL加え12,000rpmで15秒遠心した。カラムを2mLチューブに移し、500μLのBuffer RPE(キット付属)を加え、12,000rpmで15秒遠心した。液を除去後500μLのBuffer RPE(キット付属)を加え、15,000rpmで2分遠心した。カラムを新しい2mLチューブに移し、15,000rpmで1分遠心した。
【0038】
1.5mLチューブにカラムを移し、30μLのRNase−free water(キット付属)を加え、12,000rpmで1分遠心した。さらに30μLのRNase−free water(キット付属)を加え、12,000rpmで1分遠心した(上清中に筋管細胞由来のRNAが含まれる)。調製されたRNA溶液は−80℃で保存した。
【0039】
必要となるcDNAは上記で作成したRNAを逆転写酵素で処理することで調製した。ただし、逆転写酵素処理の前に、RNA溶液中の余分なDNAを除去した。
【0040】
DNA除去は、Anbion社製のDNA除去キットであるTURBO DNA−freeを使用し、以下の手順で行った。上記RNA溶液60μLに対して、10×Buffer 7μL,DNase 1μL,RNase−free water 2μL(いずれもキットに付属)を加え、37℃で30分間静置した。このとき、溶液中の余分なDNAがDNaseによって分解された。30分後、DNase Inactivation Reagentを10μL加え攪拌した(この操作により溶液中のDNaseは失活した)。2分程度静置し、再度攪拌後、12,000rpmで1分遠心し、上清(RNA溶液)を回収した。
【0041】
上記RNAの逆転写酵素処理によるcDNA合成は、東洋紡製の逆転写酵素処理キットであるReverTra Aceを使用し、以下の手順で行った。上記RNA溶液を、3μg/26μLになるようにRNase−free water(キット付属)で希釈した。このRNA溶液26μLにOligo dT primer 1μL、dNTP Mixture 4μL、×5 Buffer 8μL(いずれもキットに付属)を添加し攪拌した。その後、RTase(キット付属)を2μL加えて攪拌した。上記反応溶液を調製後、サーマルサイクラーを用いてポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)によってcDNAを合成した。このとき、PCR法の条件は、30℃ 10分 →42℃ 60分 → 99℃ 5分 → 25℃ ∞とした。
【0042】
上記cDNAにおけるGST遺伝子の発現量は、GST発現用プライマー(SIGMA Aldrich社製、製品名Oligo@SIGMA GENOSYS−PCR、Forward primer、Reverse primerの配列はそれぞれ配列番号1、2参照)を用いて、リアルタイムPCR装置(アプライバイオ社製)にて定量解析した。上記GST発現用プライマーは、マウスGST遺伝子の塩基番号120〜788の部分(配列番号3)を基に設計した。GST遺伝子の発現量は、内部標準遺伝子であるグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子発現量に対するGST遺伝子発現量の比率で算出されるため、GAPDH発現用プライマー(SIGMA Aldrich社製、製品名Oligo@SIGMA GENOSYS−PCR、Forward primer、Reverse primerの配列はそれぞれ配列番号4、5参照)を、マウスGAPDH遺伝子の塩基番号51〜1052の部分(配列番号6)を基に設計した。なお、GST遺伝子およびGAPDH遺伝子の配列は、NCBIのEntrez Gene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=gene)より以下の遺伝子名、gene IDを用いて配列情報を入手した。
GST遺伝子:glutathione S−transferase,alpha 4 [Mus musculus]、GeneID:14860
GAPDH遺伝子:glyceraldehyde−3−phosphate Dehydrogenase [Mus musculus]、GeneID:14433
【0043】
リアルタイムPCRは、東洋紡製のSyber Green Real time PCR Master Mixを使用して行った。PCR Master Mix 25μL(キット付属)、1pM GAPDH或いはGST発現用プライマー 5μL、H2O 18μLを混合し、PCR溶液を調製した。PCR溶液を96ウェルチューブに24μLずつ分注し、リアルタイムPCR装置(アプライバイオ社製)で、発現量を定量した。このときのPCR条件は、95℃→40サイクル(95℃ 15秒→60℃ 15秒→72℃ 15秒)とした。
【0044】
GST遺伝子の発現量は、内部標準遺伝子であるグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子発現量に対するGST遺伝子発現量の比率で算出した。
【0045】
5)結果
筋管細胞における田七人参粉末、田七人参水抽出エキス末及び田七人参精製サポニンのグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現量を比較した結果を図1及び表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
表1及び図1に示したように、コントロール、田七人参粉末に対して、田七人参水抽出エキス末及び田七人参精製サポニンは、GST発現量の促進効果が認められた。特に、田七人参精製サポニンは、田七人参粉末に対しても、また田七人参水抽出エキス末に対しても顕著に高いGST発現量を示した。
【0048】
以上のことから、田七人参抽出物はGST発現量の増強に有用であることが示された。
【0049】
(処方例1〜3)
田七人参サポニンを含む皮膚外用剤の処方例を表2に示す。
【0050】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1の各サンプルのGST遺伝子発現量のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウコギ科人参抽出物を有効成分として含有するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤。
【請求項2】
前記ウコギ科人参が田七人参である請求項1に記載のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤。
【請求項3】
前記ウコギ科人参抽出物が、ウコギ科人参サポニン精製物である、請求項1に記載のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ発現促進剤を含む皮膚外用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−1223(P2010−1223A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159090(P2008−159090)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】