説明

ケルビン検査用治具

【課題】被検査電子部品50に設けたハンダボール端子52に弾接させて用いて好適なケルビン検査用治具を提供する。
【解決手段】2本のプローブ20を、絶縁材からなるソケット10に平行に配設し、被検査電子部品50に設けた1つのハンダボール端子52に2本のプローブ20のプランジャー24をともに弾接させるケルビン検査用治具である。2本のプローブ20のプランジャー24の外方に突出した先端部を、軸方向に対して同じ斜めの角度であるとともに軸回りに向きが少し異なる2つの斜面24aで切断してその切断面の中央部に稜線24bを設けた形状とする。2本のプランジャー24の先端部の斜めの切断面の稜線24bが互いに向き合うように、2本のプローブ20をソケット10に配設する。ハンダボール端子52の両側面に、プランジャー24の先端部の切断面の稜線24bを当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査電子部品に配設されたハンダボール端子に弾接して、被検査電子部品の電子回路等を検査するケルビン法に用いるケルビン検査用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子回路等の検査を行う1つの方法として、ケルビン法が知られている。この検査には、被検査電子部品に配設された1つの端子に、2本のプローブのプランジャーがともに弾接される。そして、一方が電流供給用プローブとして当該端子に電流を供給するために用いられ、その他端が電流供給用端子に当接される。また、他方が電圧監視用プローブとして当該端子の電圧を監視するために用いられ、その他端が電圧監視用端子に当接される。なお、ケルビン法にあっては、当該端子に所望の値の電流が供給されるとともに、当該端子が所望の電圧に維持されている必要がある。
【0003】
プローブのプランジャーの先端部は、一般的には先端側を頂部とする円錐状である。そこで、プランジャーの先端部が円錐状である2本のプローブを用いたケルビン検査用治具の構造につき、図7を参照して簡単に説明する。図7は、プランジャーの先端部が円錐状である2本のプローブを用いたケルビン検査用治具の構造の一例でソケットを縦に切り欠いた図である。図7において、絶縁材からなるソケット10に、一対となる2本のプローブ20、20が平行に配設される。プローブ20、20は、導電性金属からなるチューブ22、22の一端側に、導電性金属からなるプランジャー24、24が外方に先端部を突出させるとともに抜け出ないようにして突出収納自在に配設される。チューブ22、22内には、プランジャー24、24を外方に弾性付勢するスプリングコイル(図示せず)が縮設されている。チューブ22、22の他端には、2つの端子60、60にそれぞれに当接する導電性金属からなる当接部26、26がチューブ22、22に電気的接続された状態で配設される。そして、プランジャー24、24の先端部は、先端側を頂部とする円錐状である。そして、ソケット10は、リテーナ12とピンブロック14が積層配設されて形成されている。この内側に配設されたピンブロック14には、プローブ20、20のチューブ22、22をそれぞれに挿通する貫通孔が穿設されている。また、積層の先端側に配設されたリテーナ12には、プランジャー24、24は挿通させるがチューブ22、22は挿通させない大きさの貫通孔が穿設されている。
【0004】
また、ケルビン法において、平板状の端子に当接させて用いるのに好適なプローブの技術が、実開平03−122370号公報(特許文献1)に示されている。2本のプローブのプランジャーの先端部が、プランジャーが突出収納自在な軸方向に対して、斜めに形成され、これらの斜めの切断面が互いに背中合わせとなるように配設されている。
【特許文献1】実開平03−122370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年において、電子回路等が構成される回路基板に配設される端子として、その形状が半球状のハンダボール端子が用いられたものがある。図7に示す構図のケルビン検査用治具にあっては、被検査電子部品50に設けられたハンダボール端子52に、先端部が円錐状のプランジャー24、24を当接させた場合に、ハンダボール端子52の曲面状の両側面に、プランジャー24、24の先端の円錐状の側方の曲面が当接することとなる。ここで、ハンダボール端子52の表面に酸化皮膜等の絶縁物が生成または付着していると、互いに曲面が当接するために、絶縁物等を破壊または除去できずに電気的導通が得られない場合が生ずる。また、ハンダボール端子52の曲面状の両側面に、プランジャー24、24の先端の頂部が当接して突き刺さったとすると、ハンダボール端子52を大きく傷付ける虞がある。よって、先端部が円錐状のプランジャー24、24は、半球状のハンダボール端子52に当接させて電気的導通を得る検査治具として満足できるものでなかった。
【0006】
また、特許文献1記載の技術にあっても、2本のプローブのプランジャーの先端部が軸方向に対して斜めに形成されており、これらの斜めの切断面の先端が、ハンダボール端子52の曲面状の両側面に突き刺さり、ハンダボール端子52を大きく傷付ける虞がある。よって、図7に示す構造のものと同様に、半球状のハンダボール端子52に当接させて電気的導通を得る検査治具として満足できるものでなかった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、被検査電子部品に配設されたハンダボール端子に弾接させて用いて好適なケルビン検査用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明のケルビン検査用治具は、導電性金属からなるチュ−ブの少なくとも一端側に、導電性金属からなるプランジャーをその先端部を外方に突出させるとともに抜け出さないようにして軸方向に突出収納自在に配設し、前記チュ−ブ内に前記プランジャーを外方に弾性付勢するスプリングコイルを縮設したプローブを、絶縁材からなるソケットに平行に2本配設し、被検査電子部品に設けられた1つの端子に2本の前記プローブの前記プランジャーをともに弾接させ、2本の前記プローブの一方を電流供給用プローブとし他方を電圧監視用プローブとするケルビン検査用治具において、2本の前記プローブの前記プランジャーの外方に突出した先端部を、前記軸方向に対して同じ斜めの角度であるとともに前記軸回りに向きが少し異なる2つの斜面で切断してその切断面の中央部に稜線を設けた形状とし、2本の前記プランジャーの先端部の前記軸方向に対して斜めに切断した切断面が互いに向き合うように、2本の前記プローブを前記ソケットに配設して構成されている。
【0009】
また、前記プランジャーの外方に突出した先端部を、前記軸方向に対して同じ斜めの角度であるとともに前記軸回りに向きが少し異なる凹状の2つの斜めの曲面で切断してその切断面の中央部に稜線を設けた形状として構成しても良い。
【0010】
そして、前記プランジャーの外方に突出した位置に膨大部を設けるとともにこの膨大部の前記軸方向と直交する断面形状を小判型または角形または一部が切り欠かれた円形とし、前記ソケットに前記膨大部の前記断面形状が嵌合して軸回りの回転を阻止する回り止め部を形成して構成することもできる。
【0011】
さらに、2本の前記プランジャーの互いに向き合う2つの前記切断面が、前記被検査電子部品に設けられた1つのハンダボール端子にその頂部を挟んで両側面に当接するように構成しても良い。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のケルビン検査用治具にあっては、2本のプローブのプランジャーの外方に突出した先端部を、軸方向に対して同じ斜めの角度であるとともに軸回りに向きが少し異なる2つの斜面で切断してその切断面の中央部に稜線を設けた形状とし、2本のプランジャーの先端部の軸方向に対して斜めに切断した切断面が互いに向き合うように、2本のプローブをソケットに配設したので、被検査電子部品に配設された半球状のハンダボール端子に当接させると、ハンダボール端子の両側面の曲面に、プランジャーの斜めの切断面の稜線が当接し、この稜線がハンダボール端子に食い込みながら相対的位置がずれ、ハンダボール端子の表面の酸化物等を破壊するとともにワイピング効果により、ハンダボール端子にプランジャーが確実に電気的接続される。しかも、ハンダボール端子には、その両側面にプランジャーの斜めの稜線が当接するのみであり、大きな傷を生ずることがない。
【0013】
請求項2記載のケルビン検査用治具にあっては、プランジャーの外方に突出した先端部を、軸方向に対して同じ斜めの角度であるとともに軸回りに向きが少し異なる凹状の2つの斜めの曲面で切断してその切断面の中央部に稜線を設けた形状として構成したので、稜線の断面形状がより鋭くなり、ハンダボール端子の両側面の曲面に対する食い込みがより良好となって、より確実な電気的接続が得られる。
【0014】
請求項3記載のケルビン検査用治具にあっては、プランジャーの外方に突出した位置に膨大部を設けるとともにこの膨大部の軸方向と直交する断面形状を小判型または角形または一部が切り欠かれた円形とし、ソケットに膨大部の断面形状が嵌合して軸回りの回転を阻止する回り止め部を形成して構成したので、簡単な構造で、2本のプランジャーの先端部の軸方向に対して斜めに切断した切断面を互いに向き合うように配設することができ、半球状のハンダボール端子の両側面に、2本のプランジャーの斜めの切断面の稜線を確実に当接させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図4を参照して説明する。図1は、本発明のケルビン検査用治具の第1実施例でソケットを縦に切り欠いた図である。図2は、プランジャーの先端部の外観図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。図3は、プランジャーの先端部の外観斜視図である。図4は、図1のA−A断面矢視図である。図1ないし図4において、図7と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0016】
図1ないし図4において、図7に示す従来例と相違するところは、以下の点にある。まず、プランジャー24、24の先端部が、軸方向に対して斜めでさらにこの斜めとは異なる方向で互いに逆向きに傾いた2つの斜面24a、24aで切断されて切断面の中央部に稜線24bが設けられた形状とされる。また、プランジャー24、24のチュ−ブ22、22から外方に突出した位置に、膨大部24c、24cが設けられ、この膨大部24c、24cの軸方向と直交する断面形状が小判型とされる。そして、ソケット10のリテーナ12には、プランジャー24、24の先端部の斜めの切断面の稜線24b、24bが互いに向き合うような姿勢で軸回りの回転を阻止するように、膨大部24c、24cが嵌合挿通される回り止め部12a、12aが設けられる。なお、膨大部24c、24cの軸方向と直交する断面形状は、回り止め部12a、12aに嵌合することで、プランジャー24、24の軸回りの姿勢が規制できれば良く、上記断面形状が小判型のものに限られず、角形や一部が切り欠かれた円形などであっても良い。
【0017】
かかる構成において、被検査電子部品50に配設された半球状のハンダボール端子52に、本発明のケルビン検査用治具のプランジャー24、24を当接させると、ハンダボール端子52の両側面の曲面に、プランジャー24、24の斜めの切断面の稜線24b、24bがまず当接し、さらなる押圧により、この稜線24b、24bがハンダボール端子52に食い込みながら相対的位置がずれ、ハンダボール端子52の表面の酸化物等を破壊するとともにワイピング効果により、ハンダボール端子52にプランジャー24、24が確実に電気的接続される。しかも、ハンダボール端子52には、その両側面にプランジャー24、24の斜めの切断面の稜線24b、24bが当接するのみであり、大きな傷を生ずることがない。また、プランジャー24、24の外方に突出した位置に設けた膨大部24c、24cと、ソケット10のリテーナ12に穿設した回り止め部12a、12aにより、2本のプランジャー24、24の先端部の軸方向に対して斜めに切断した切断面の稜線24b、24bを互いに向き合うように配設することができ、半球状のハンダボール端子52の両側面に、2本のプランジャー24、24の斜めの稜線24b。24bを確実に当接させることができる。しかもその回り止めの構造は、極めて簡単なものである。
【0018】
次に、本発明の第2実施例を図5および図6を参照して説明する。図5は、本発明のケルビン検査用治具の第2実施例のプランジャーの先端部の外観図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のB−B断面矢視図である。図6は、プランジャーの先端部の外観斜視図である。図5および図6において、図1ないし図4および図7と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0019】
本発明の第2実施例にあっては、プランジャー24、24の先端部が、軸方向に対して同じ斜めの角度であるとともに軸回りに向きが少し異なる凹状の2つの斜めの曲面24d、24dで切断してその切断面の中央部に稜線24eを設けた形状に構成されている。かかる構成にあっては、稜線24eの断面形状がより鋭くなり、ハンダボール端子52に対する食い込みがより良好となって、より確実な電気的接続が得られる。
【0020】
なお、上記実施例において、プローブ20、20は、その一端側に可動端子としてのプランジャー24、24が設けられているが、両端側に可動端子を設けても良いことは勿論である。また、上記実施例において、プランジャー24、24のチューブ22、22から外方に突出した部分を断面円形としてさらに膨大部24c、24cを設けているが、これに限られず、プランジャー24、24のチューブ22、22から外方に突出した部分全体の断面形状を、膨大部24c、24cの断面形状と同様に形成しても良い。そして、上記実施例の説明にあっては、ハンダボール端子52に当接させる場合につき述べたが、これに限られず、被検査電子部品50に設けた平板状の1つの端子に2本のプランジャー24、24の先端を当接させて使用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のケルビン検査用治具の第1実施例でソケットを縦に切り欠いた図である。
【図2】プランジャーの先端部の外観図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図3】プランジャーの先端部の外観斜視図である。
【図4】図1のA−A断面矢視図である。
【図5】本発明のケルビン検査用治具の第2実施例のプランジャーの先端部の外観図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のB−B断面矢視図である。
【図6】プランジャーの先端部の外観斜視図である。
【図7】プランジャーの先端部が円錐状である2本のプローブを用いたケルビン検査用治具の構造の一例でソケットを縦に切り欠いた図である。
【符号の説明】
【0022】
10 ソケット
12 リテーナ
12a 回り止め部
20 プローブ
22 チューブ
24 プランジャー
24a 斜面
24b、24e 稜線
24c 膨大部
24d 斜めの曲面
50 被検査電子部品
52 ハンダボール端子
60 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属からなるチュ−ブの少なくとも一端側に、導電性金属からなるプランジャーをその先端部を外方に突出させるとともに抜け出さないようにして軸方向に突出収納自在に配設し、前記チュ−ブ内に前記プランジャーを外方に弾性付勢するスプリングコイルを縮設したプローブを、絶縁材からなるソケットに平行に2本配設し、被検査電子部品に設けられた1つの端子に2本の前記プローブの前記プランジャーをともに弾接させ、2本の前記プローブの一方を電流供給用プローブとし他方を電圧監視用プローブとするケルビン検査用治具において、2本の前記プローブの前記プランジャーの外方に突出した先端部を、前記軸方向に対して同じ斜めの角度であるとともに前記軸回りに向きが少し異なる2つの斜面で切断してその切断面の中央部に稜線を設けた形状とし、2本の前記プランジャーの先端部の前記軸方向に対して斜めに切断した切断面が互いに向き合うように、2本の前記プローブを前記ソケットに配設して構成したことを特徴とするケルビン検査用治具。
【請求項2】
請求項1記載のケルビン検査用治具において、前記プランジャーの外方に突出した先端部を、前記軸方向に対して同じ斜めの角度であるとともに前記軸回りに向きが少し異なる凹状の2つの斜めの曲面で切断してその切断面の中央部に稜線を設けた形状として構成したことを特徴とするケルビン検査用治具。
【請求項3】
請求項1または2記載のケルビン検査用治具において、前記プランジャーの外方に突出した位置に膨大部を設けるとともにこの膨大部の前記軸方向と直交する断面形状を小判型または角形または一部が切り欠かれた円形とし、前記ソケットに前記膨大部の前記断面形状が嵌合して軸回りの回転を阻止する回り止め部を形成して構成したことを特徴とするケルビン検査用治具。
【請求項4】
請求項1ないし3記載のいずれかのケルビン検査用治具において、2本の前記プランジャーの互いに向き合う2つの前記切断面が、前記被検査電子部品に設けられた1つのハンダボール端子にその頂部を挟んで両側面に当接するように構成したことを特徴とするケルビン検査用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−96368(P2008−96368A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280943(P2006−280943)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】