説明

ケーブル付樹脂モールド構造

【課題】外からの衝撃に対する強度を保ちながらも、ケーブル(シース)とモールド樹脂部との界面の高気密化に寄与することが可能なケーブル付樹脂モールド構造の提供を目的とする。
【解決手段】少なくとも、導体18と、導体18の外周を覆うシース17と、を有するケーブル16と、ケーブル16のシース17の外周を部分的に樹脂モールドする第一樹脂部12と、第一樹脂部12と同一の樹脂14からなり、シース17の外周と第一樹脂部12とを部分的に樹脂モールドする第二樹脂部13と、を有するケーブル付樹脂モールド構造において、第一樹脂部12には、繊維状ガラスフィラ15が含まれておらず、第二樹脂部13には、繊維状ガラスフィラ15が含まれていることを特徴とするケーブル付樹脂モールド構造11である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル付樹脂モールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ケーブルとセンサ等の回路部品とを接続したケーブル付回路部品においては、回路部品の保護及び回路部品への水の流入を防止する為に、該ケーブル付回路部品の外周をケーブルの端部ごと樹脂モールドしている(以下、ケーブル付樹脂モールド構造)。
【0003】
このようなケーブル付樹脂モールド構造は、例えばABSセンサ等の車載センサ(以下、ABSセンサ等)に用いられる場合、小石等の外部からの衝撃を受けても壊れないような高強度なものである必要がある。また、ケーブル付樹脂モールド構造は、樹脂モールド成形時の成形収縮による形状の変形が少ないものである必要がある。これらの要求に対して、ケーブル付樹脂モールド構造の樹脂部に繊維状ガラスフィラが含まれたものがある。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されているケーブル付樹脂モールド構造は、ケーブルの端部の外周に形成された熱融着性樹脂からなるプライマー層を設けて、ケーブルの端部、プライマー層及び電気部品本体を繊維状ガラスフィラが含まれた樹脂で一体的に樹脂モールドしたものである。該ケーブル付樹脂モールド構造は、そのモールド樹脂部に繊維状ガラスフィラを含ませることにより高強度化及び成形時の形状変形防止に寄与することを可能とするものである。また、該ケーブル付樹脂モールド構造は、プライマー層を設けることにより、ケーブルとモールド樹脂部との密着性を高めることを可能とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−22937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ケーブル付樹脂モールド構造をABSセンサ等に用いる場合、使用環境が高温となる場合が考えられる。この場合、ケーブルのシースとして高耐熱用材料を用いる必要がある。
【0007】
しかしながら、ケーブルのシースとして高耐熱用材料を用いると、特許文献1のようなケーブルのシースと熱融着性樹脂からなるプライマー層との熱融着は期待できない。
【0008】
また、繊維状ガラスフィラが含まれたモールド樹脂部は、線膨張係数が小さくなり、一般的に{ケーブル(シース)の線膨張係数}>{(モールド樹脂部の線膨張係数)}が成り立つようになる。そのため、繊維状ガラスフィラが含まれたモールド樹脂部のみで樹脂モールドした場合、ABSセンサ等のような広い温度範囲で使用される場合、上記の線膨張係数の相違によって温度変化に起因する熱応力が繰り返しケーブル(シース)とモールド樹脂部との界面で発生する(熱疲労)。この場合、該界面には、熱疲労が生じることによる密着性の劣化が生じ、該界面の気密性が低下するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、外からの衝撃に対する強度を保ちながらも、ケーブル(シース)とモールド樹脂部との界面の高気密化に寄与することが可能なケーブル付樹脂モールド構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも、導体と、該導体の外周を覆うシースと、を有するケーブルと、前記ケーブルの前記シースの外周を部分的に樹脂モールドする第一樹脂部と、前記第一樹脂部と同一の樹脂からなり、前記シースの外周と前記第一樹脂部とを部分的に樹脂モールドする第二樹脂部と、を有するケーブル付樹脂モールド構造において、前記第一樹脂部には、繊維状ガラスフィラが含まれておらず、前記第二樹脂部には、前記繊維状ガラスフィラが含まれていることを特徴とするケーブル付樹脂モールド構造である。
【0011】
また、本発明は、少なくとも、導体と、該導体の外周を覆うシースと、を有するケーブルと、前記ケーブルの前記シースの外周を部分的に樹脂モールドする第一樹脂部と、前記第一樹脂部と同一の樹脂からなり、前記シースの外周と前記第一樹脂部とを部分的に樹脂モールドする第二樹脂部と、を有するケーブル付樹脂モールド構造において、前記第一樹脂部及び前記第二樹脂部には、繊維状ガラスフィラが含まれており、前記第一樹脂部に含まれている前記繊維状ガラスフィラの前記第一樹脂部に対する濃度は、前記第二樹脂部に含まれている前記繊維状ガラスフィラの前記第二樹脂部に対する濃度よりも低いことを特徴とするケーブル付樹脂モールド構造である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外からの衝撃に対する強度を保ちながらも、ケーブル(シース)とモールド樹脂部との界面の高気密化に寄与することが可能なケーブル付樹脂モールド構造の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11の側断面図。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11のX−X’断面図。
【図3】本発明の第一の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11の他の形態の側断面図。
【図4】本発明の第二の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造21の横断面図。
【図5】本発明の第二の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造21のY−Y’断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施の形態について、添付図に従って説明する。
【0015】
1.第一の実施の形態
(第一の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11の構成)
図1は、本発明の第一の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11の側断面図である。図2は、本発明の第一の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11のX−X’断面図である。
【0016】
本発明の第一の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11は、図1及び図2に示すように、例えば、車載されるABSセンサ等に使用されるものであって、少なくとも、導体18と、導体18の外周を覆うシース17と、を有するケーブル16と、ケーブル16のシース17の外周を部分的に樹脂モールドする第一樹脂部12と、第一樹脂部12と同一の樹脂14からなり、シース17の外周と第一樹脂部12とを部分的に樹脂モールドする第二樹脂部13と、を有するケーブル付樹脂モールド構造において、第一樹脂部12には、繊維状ガラスフィラ15が含まれておらず、第二樹脂部13には、繊維状ガラスフィラ15が含まれていることを特徴とするケーブル付樹脂モールド構造11である。
【0017】
ケーブル16は、本実施の形態においては、導体18にシース17を被覆したものを用いた。ケーブル16のシース17は、車載されるABSセンサ等のように高温環境下において使用される場合を想定して、高耐熱性を有する材料からなるものが使用可能であり、本実施の形態においては、200℃までの耐熱性を有するフロンレックス(登録商標)からなるものとした。また、導体18は、後述する第二樹脂部13内でシース17から露出しており、センサ等が配置される回路基板19に接続されている。本実施の形態においては、ケーブル16として、導体18にシース17を被覆したものを用いた。ただし、これには限定されず、導体18とシース17との間に絶縁層を介しているものや、補強編組層を介しているもの等を用いることが可能である。なお、本実施の形態においては、シース17は、200℃までの耐熱性を有するものを用いたが、使用環境に応じて200℃以上の耐熱性を有するものを用いることも可能である。
【0018】
第一樹脂部12は、ケーブル16のシース17の(本実施の形態においては、シース17の端部)外周を部分的に樹脂モールドしている。このとき、第一樹脂部12は、ケーブル16の長手方向の一部の外周に密着するように円筒状に形成される。本実施の形態における第一樹脂部12の寸法は、長手方向(図1における横方向)の長さ(モールド長)を4.0mm、径方向(図1における縦方向)の厚さを4.5mmとした。本実施の形態において、第一樹脂部12は、ナイロン612からなるものとした。ただし、第一樹脂部12としては、これに限定されず、種々の樹脂が使用可能である。また、第一樹脂部12は、後述するように、ケーブル16が引き出される側の面Aを露出させるように第二樹脂部13により樹脂モールドされている。
【0019】
第二樹脂部13は、本実施の形態において、シース17の外周と第一樹脂部12とを部分的に樹脂モールドするものであり、第一樹脂部12をシース17の外周ごと樹脂モールドしている。詳しくは、第二樹脂部13は、ケーブル16(シース17)の端部、回路基板19及び第一樹脂部12を一体的に樹脂モールドしている(以下、必要に応じて、第一樹脂部12と第二樹脂部13とからなるものをモールド樹脂部30という)。第二樹脂部13は、第一樹脂部12と同一の樹脂14であるナイロン612からなるものとした。本実施の形態における第二樹脂部13の寸法は、長手方向の長さ(モールド長)を15mm、径方向の厚さを5.5mmとした。また、本実施の形態において、第二樹脂部13は、第一樹脂部12のケーブル16が引き出される側の面A(図1で言えば、右側の側面)を露出させ、且つモールド樹脂部30が円筒状に形成されるように樹脂モールドしている。また、第二樹脂部13には、外からの衝撃を考慮した高強度化や、成形収縮による製品形状変形防止のために繊維状ガラスフィラ15が含まれており、本実施の形態では、第二樹脂部13に含まれる繊維状ガラスフィラ15の第二樹脂部13に対する濃度を33重量%とした。
【0020】
なお、本実施の形態においては、第二樹脂部13は、第一樹脂部12のケーブル16が引き出される側の面Aを露出させるように樹脂モールドするものとしたが、図3に示す第一の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11の他の形態のように、第一樹脂部12のケーブル16が引き出される側の面Aを露出させないように、つまり、第一樹脂部12の外周全てを覆うように第二樹脂部13を樹脂モールドしてもよい。
【0021】
(第一の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11の作用効果)
(1)本実施の形態によれば、「第一樹脂部12には、繊維状ガラスフィラ15が含まれておらず、第二樹脂部13には、繊維状ガラスフィラ15が含まれている」ことにより、上述のケーブル付樹脂モールド構造11の外からの衝撃に対する強度は保ちつつも、ケーブル16(シース17)とモールド樹脂部30との界面の高気密化に寄与することが可能である。
【0022】
ケーブル付樹脂モールド構造に外からの衝撃に対する強度を持たせるために繊維状ガラスフィラが含まれた樹脂のみでケーブルを樹脂モールドした場合、繊維状ガラスフィラが含まれた樹脂の線膨張係数が小さくなり、ケーブルのシースと繊維状ガラスフィラが含まれた樹脂との間で線膨張係数の差が大きくなってしまう。このようなケーブル付樹脂モールド構造をABSセンサ等のような広い温度範囲で使用する場合、上記の線膨張係数の差によって温度変化に起因する熱応力が繰り返しケーブル(シース)とモールド樹脂部との界面で発生する(熱疲労)。すると、該界面には、熱疲労が生じることによる密着性の劣化が生じ、該界面の気密性が低下する。
【0023】
これに対し、本実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11では、シース17と繊維状ガラスフィラ15が含まれた樹脂との間の線膨張係数の差を小さくするべく、繊維状ガラスフィラ15を含まない第一樹脂部12を介して繊維状ガラスフィラ15を含む第二樹脂部13をケーブル16のシース17に樹脂モールドすることにより、温度変化による熱疲労を小さくすることができ、上述の効果を得ることが可能となる。つまり、本実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11は、その外周を繊維状ガラスフィラ15が含まれた第二樹脂部13で形成することで強度を保ちながらも、線膨張係数が小さい第二樹脂部13と、線膨張係数が大きいシース17と、の間に、線膨張係数α1が(第二樹脂部13の線膨張係数α2)<α1<(シース17の線膨張係数αs)である第一樹脂部12を介することにより、モールド樹脂部30とシース17との線膨張係数の差を小さくすることができ、ケーブル16(シース17)とモールド樹脂部30との界面の高気密化に寄与することが可能となる。
【0024】
以下に、本発明者らが行った本実施の形態におけるケーブル16とモールド樹脂部30との界面における熱応力の解析結果について述べる。
【0025】
まず、ケーブル16とモールド樹脂部30との界面における熱応力を解析した解析条件について説明する。第一樹脂部12は、上述したように、繊維状ガラスフィラ15が含まれておらず、ナイロン612からなる。このときの第一樹脂部12の線膨張係数α1は、90[10-6/K]であった。第二樹脂部13は、上述したように、ナイロン612に繊維状ガラスフィラ15を33重量%含ませたものである。このときの第二樹脂部13の線膨張係数α2は、54.5[10-6/K]であった。なお、この値は、第二樹脂部13に含まれる繊維状ガラスフィラ15が第二樹脂部13内でランダムな配向をしているものと仮定したときの値であり、第二樹脂部13の水平方向の線膨張係数26[10-6/K]と第二樹脂部13の垂直方向の線膨張係数83[10-6/K]とを平均した(足して2で割った)値である。
【0026】
ケーブル16のシース17には、上述したように、ポリウレタンが使用されている。このときのシース17の線膨張係数αSは、150[10-6/K]であった。
【0027】
次に、実際に行ったケーブル16とモールド樹脂部30との界面における熱応力の解析について説明する。
【0028】
上記の条件の下、まず、従来のケーブル付樹脂モールド構造(樹脂部の全てが、ナイロン612に繊維状ガラスフィラを33重量%含ませたもの)及び第一の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11の、常温(20℃)から高温(150℃)に温度変化させたときのせん断応力及び界面応力を解析により求め、次いで、常温(20℃)から低温(−40℃)に温度変化させたときのせん断応力及び界面応力を解析により求めた。なお、高温を150℃、低温を−40℃と設定したのは、ABSセンサ等が使用される環境を想定したためである。また、本実施の形態において、せん断応力とは、ケーブル16(シース17)の長手方向と同じ方向(図1における横方向)に働く応力のことをいい、界面応力とは、ケーブル16(シース17)の外周に垂直方向(図1における縦方向)に働く応力のことをいう。
【0029】
次に、実際に行ったケーブル16とモールド樹脂部30との界面における熱応力(せん断応力、界面応力)の解析結果について表1を用いて説明する。なお、表1の応力のマイナス値は、圧縮応力を、プラス値は、引張応力を表す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示すように、本実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11は、従来のケーブル付樹脂モールド構造と比較して、せん断応力及び界面応力共に低減したのが確認できた。つまり、本実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造11によれば、上述の効果が得られることが確認できた。
【0032】
(2)また、本実施の形態によれば、第一樹脂部12及び第二樹脂部13を同一の樹脂14(ナイロン612)からなるものとすることによって、第一樹脂部12と第二樹脂部13との間に、含まれる繊維状ガラスフィラ15の濃度の違いによる線膨張係数の差があっても、第一樹脂部12及び第二樹脂部13は、同一の樹脂であるため、界面での整合性は高く、高い密着性を保つことが可能となる。よって、第一樹脂部12と第二樹脂部13との間の界面における気密性の向上が可能となる。また、例えば、特許文献1のようにプライマー層のような別部材を用いなくてもよいので、低コスト化に寄与することが可能である。
【0033】
(3)第二樹脂部13を第一樹脂部12のケーブル16が引き出される側の面Aを露出させるように樹脂モールドしたので、ケーブル16が引き出されている引き出し口Bに集中するせん断応力を低減することができるため、シース17からモールド樹脂部30が剥離すること自体を低減することができる。
【0034】
2.第二の実施の形態
(第二の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造21の構成)
図4は、本発明の第二の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造21の側断面図である。図5は、本発明の第二の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造21のY−Y’断面図である。なお、第一の実施の形態と同じ構成のものには、同じ符号を付した。
【0035】
本発明の第二の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造21は、図4及び図5に示すように、例えば、ABSセンサ等に使用されるケーブル付樹脂モールド構造21であって、少なくとも、導体18と、導体18の外周を覆うシース17と、を有するケーブル16と、ケーブル16のシース17の外周を部分的に樹脂モールドする第一樹脂部22と、第一樹脂部22と同一の樹脂14からなり、シース17の外周と第一樹脂部22とを部分的に樹脂モールドする第二樹脂部13と、を有するケーブル付樹脂モールド構造21において、第一樹脂部22及び第二樹脂部13には、繊維状ガラスフィラ15が含まれており、第一樹脂部22に含まれている繊維状ガラスフィラ15の第一樹脂部22に対する濃度は、第二樹脂部13に含まれている該繊維状ガラスフィラ15の第二樹脂部13に対する濃度よりも低いことを特徴とするケーブル付樹脂モールド構造である。
【0036】
本実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造21は、第一の実施の形態と比較して、第一樹脂部22に繊維状ガラスフィラ15が含まれている点で異なる。これは、ケーブル16が引き出される側の露出した面Aへの外からの衝撃を考慮したものである。しかし、第二の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造21は、これには限定されず、ケーブル16が引き出される側の面Aを露出させずに第一樹脂部22の外周全体を被うように樹脂モールドすることも可能である。
【0037】
第一樹脂部22及び第二樹脂部13には、上述のように、繊維状ガラスフィラ15が含まれており、このとき、第一樹脂部22に含まれる繊維状ガラスフィラ15の第一樹脂部22に対する濃度は、第二樹脂部13に含まれる繊維状ガラスフィラ15の第二樹脂部13に対する濃度よりも低くしている。本実施の形態においては、第一樹脂部22に含まれる繊維状ガラスフィラ15の第一樹脂部22に対する濃度を10重量%とし、第二樹脂部13に含まれる繊維状ガラスフィラ15の第二樹脂部13に対する濃度を33重量%とした。
【0038】
(第二の実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造21の作用効果)
本実施の形態によれば、上述の第一の実施の形態と同様の効果を奏することが可能である。つまり、
(1)本実施の形態によれば、「第一樹脂部22及び第二樹脂部13には、ガラスフィラ15が含まれており、第一樹脂部22に含まれる繊維状ガラスフィラ15の第一樹脂部22に対する濃度は、第二樹脂部13に含まれる繊維状ガラスフィラ15の第二樹脂部13に対する濃度よりも低い」ことにより、上述のケーブル付樹脂モールド構造21の外からの衝撃に対する強度は保ちつつも、ケーブル18(シース17)とモールド樹脂部30との界面の高気密化に寄与することが可能である。シース17と繊維状ガラスフィラ15を含ませた樹脂との間の線膨張係数の差を小さくするべく、含まれる繊維状ガラスフィラ15の濃度が第二樹脂部13よりも低い第一樹脂部22を介して第二樹脂部13をケーブル16のシース17に樹脂モールドすることにより、温度変化による熱疲労を小さくすることができ、上述の効果を得ることが可能となる。つまり、本実施の形態に係るケーブル付樹脂モールド構造21は、その外周を繊維状ガラスフィラ15を含ませた第二樹脂部13で形成することで強度を保ちながらも、線膨張係数が小さい第二樹脂部13と、線膨張係数が大きいシース17と、の間に、線膨張係数がα2<α1<αsである第一樹脂部22を介することにより、モールド樹脂部30とシース17との線膨張係数の差を小さくすることができ、ケーブル16(シース17)とモールド樹脂部30との界面の高気密化に寄与することが可能となる。
【0039】
(2)また、本実施の形態によれば、第一樹脂部22及び第二樹脂部13を同一の樹脂14(ナイロン612)からなるものとすることによって、第一樹脂部22と第二樹脂部13との間に、含まれる繊維状ガラスフィラ15の濃度の違いによる線膨張係数の差があっても、第一樹脂部22及び第二樹脂部13は、同一の樹脂であるため、界面での整合性は高く、高い密着性を保つことが可能となる。よって、第一樹脂部22と第二樹脂部13との間の界面における気密性の向上が可能となる。
【0040】
(3)第二樹脂部13を第一樹脂部22のケーブル16が引き出される側の面Aを露出させるように樹脂モールドしたので、ケーブル16が引き出されている引き出し口Bに集中するせん断応力を低減されることができるため、シース17からモールド樹脂部30が剥離すること自体を低減することができる。
【符号の説明】
【0041】
11、21 ケーブル付樹脂モールド構造
12、22 第一樹脂部
13 第二樹脂部
14 樹脂
15 繊維状ガラスフィラ
16 ケーブル
17 シース
18 導体
19 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、導体と、該導体の外周を覆うシースと、を有するケーブルと、
前記ケーブルの前記シースの外周を部分的に樹脂モールドする第一樹脂部と、
前記第一樹脂部と同一の樹脂からなり、前記シースの外周と前記第一樹脂部とを部分的に樹脂モールドする第二樹脂部と、
を有するケーブル付樹脂モールド構造において、
前記第一樹脂部には、繊維状ガラスフィラが含まれておらず、
前記第二樹脂部には、前記繊維状ガラスフィラが含まれていることを特徴とするケーブル付樹脂モールド構造。
【請求項2】
少なくとも、導体と、該導体の外周を覆うシースと、を有するケーブルと、
前記ケーブルの前記シースの外周を部分的に樹脂モールドする第一樹脂部と、
前記第一樹脂部と同一の樹脂からなり、前記シースの外周と前記第一樹脂部とを部分的に樹脂モールドする第二樹脂部と、
を有するケーブル付樹脂モールド構造において、
前記第一樹脂部及び前記第二樹脂部には、繊維状ガラスフィラが含まれており、
前記第一樹脂部に含まれている前記繊維状ガラスフィラの前記第一樹脂部に対する濃度は、前記第二樹脂部に含まれている前記繊維状ガラスフィラの前記第二樹脂部に対する濃度よりも低いことを特徴とするケーブル付樹脂モールド構造。
【請求項3】
前記第二樹脂部は、前記第一樹脂部の前記ケーブルが引き出される側の面が露出するように前記シースの外周と前記第一樹脂部とを樹脂モールドしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブル付樹脂モールド構造。
【請求項4】
前記シースは、少なくとも200℃の耐熱性を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のケーブル付樹脂モールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−79534(P2012−79534A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223333(P2010−223333)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】