説明

ケーブル接続部の遮水構造

【課題】 接続部の遮水構造の組み立て作業性が向上し、また、傷が生じることなく遮水性能が低下することを防止できるケーブル接続部用の遮水構造を提供する。
【解決手段】 電力ケーブル4,4の接続部(ケーブル接続部6)の外周を遮水体10,20A,20Bによって覆い、そのケーブル接続部6に外部から水が浸入することを阻止するケーブル接続部6の遮水構造において、遮水体10,20A,20Bは、金属材を含まずに樹脂からなるケーブル接続部6の遮水構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電力ケーブル同士を接続する若しくは電力ケーブル端末に施工するケーブル接続部に、遮水性を有する遮水管または遮水チューブ等の筒状遮水体を設けたケーブル接続部の遮水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力ケーブルは、電気的性能を安定的にし、電力供給の安定するため、電力ケーブル本体と共に、電力ケーブルのケーブル接続部に高い遮水性能が要求される。
【0003】
この種のケーブル接続部における遮水性を高めるため、各種遮水構造が採用されている。
【0004】
その一つは、組み立て式の金属管からなる遮水構造体によって、ケーブル接続部を覆う遮水構造である。
【0005】
また、他の一つは、ゴム等のエラストマーもしくはプラスチックからなる防水保護層と、その保護層内に金属層を周方向に筒状に巻いた遮水層からなる熱収縮性遮水チューブを、ケーブル接続部に被せた遮水構造である。
【0006】
また、さらに他の一つは、コアを内挿して拡径した常温収縮性遮水チューブをケーブル接続部に被せた遮水構造である(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、または、特許文献4参照)。
【0007】
この種の常温収縮性遮水チューブは、特許文献1〜特許文献4に開示されるように、解体除去が可能な中空支持体の筒状コア上に弾性的に伸長・拡径された状態で巻き回した常温収縮性ゴム弾性体層が設けられ、この常温収縮性ゴム弾性体層の上層に金属箔または金属ラミネートを周方向へ筒状に巻いた遮水層が設けられ、この遮水層の外周面を被覆し弾性的に伸長・拡径された状態で巻き回した常温収縮性ゴム弾性体層が設けられているものである。
【特許文献1】特開2000−263690号公報
【特許文献2】特開2001−231123号公報
【特許文献3】特開2001−231150号公報
【特許文献4】特開2002−15790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の金属管を用いた遮水構造体は、それが金属からなるもののためにどうしても重くなり、作業時の取り扱い性が悪いものになりがちである。
特に地中ケーブル管路に布設した電力ケーブルをマンホール内で接続する場合や、電力ケーブルのY分岐接続部全体の外周部を覆う遮水構造体等が大きく重いものであるものの場合等、その取り扱い性の悪さが原因して、作業時間がかかり作業コスト低減の障害になっていた。
【0009】
また、前述のように電力ケーブルの接続端部同士を接続する際、常温収縮性遮水チューブをケーブル接続部上に位置させてそのコアを抜き取ることにより、ケーブル接続部上に緊密に密着させた状態に収縮させる。この際、遮水層は、弾性体層の収縮力によって折り畳まれた状態やしわのよった状態になる。遮水層が金属箔または金属ラミネートからなりかつその機械的屈曲性能が低いと、屈曲疲労によりピンホールが生じ、本来の遮水性能を発揮することができない可能性があった。
【0010】
また、前記遮水層は、凹凸すなわち山部と谷部が生じて、その山部が突起になって、弾性体層を押して常温収縮性チューブに外傷を与える可能性がある。
【0011】
上記のような問題点は、熱収縮性遮水チューブでも同様に存在するものである。
【0012】
以上のように、ケーブル接続部の遮水構造に金属材を用いていることによる問題点を解消する技術は従来提案されていなかった。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであって、ケーブル接続部の遮水構造の組み立て作業性が向上し、また、傷が生じることなく遮水性能が低下することを防止できるケーブル接続部の遮水構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は電力ケーブル接続部の遮水構造にかかるものである。
【0015】
本発明は、電力ケーブルの接続部の外周を遮水体によって覆い、そのケーブル接続部に外部から水が浸入することを阻止するケーブル接続部の遮水構造において、遮水体は、金属材を含まずに樹脂からなることを特徴とするケーブル接続部の遮水構造である。
【0016】
本発明において、遮水体は、ケーブル接続部の外周面側に遮水性樹脂層を周方向へ筒状に巻いた遮水層と、この遮水層の外周面を被覆した状態に巻き回した収縮性ゴム弾性体層とからなる収縮性チューブであることが好適である。
【0017】
本発明において、遮水体は、接続部外周を覆う剛性のある遮水性樹脂管製のものであることが好適である。
【0018】
本発明において、遮水性樹脂は、高密度、中密度または低密度のポリエチレンからなることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のケーブル接続部の遮水構造によれば、接続部の遮水構造の組み立て作業性が向上し、また、傷が生じることなく遮水性能が低下することを防止できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1〜図4は本発明を実施する形態(以下「実施形態」という)の一例の第1の実施形態であって、各図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。
【0022】
図1は、第1の実施形態に係るケーブル接続部の遮水構造を概略説明する電力ケーブルおよび接続部の軸方向に沿う断面図、図2は図1に示す遮水体の軸方向に沿う断面図、図3は図1の具体的な電力ケーブルおよび接続部の軸方向に沿う詳細な断面図、図4はケーブル接続部の遮水構造の施工説明図である。
【0023】
図1に示すように、この実施形態は、電力ケーブルの接続部(ケーブル接続部6)の外周を遮水体によって覆い、そのケーブル接続部6に外部から水が浸入することを阻止するケーブル接続部6の遮水構造において、遮水体は、金属材を含まずに樹脂からなるケーブル接続部6の遮水構造である。
【0024】
遮水体は、ケーブル接続部6の外周面側に遮水性樹脂層を周方向へ筒状に巻いた遮水層22と、この遮水層の外周面を被覆した状態に巻き回した収縮性ゴム弾性体層23とからなる収縮性チューブである.
【0025】
なお、遮水体は、接続部外周を覆う剛性のある遮水性樹脂管製のものである。また、遮水性樹脂は、高密度、中密度または低密度のポリエチレンからなるものである。
【0026】
より詳細に説明する。
【0027】
遮水体は、第1の実施形態において、図2に示すように、常温収縮性遮水チューブである第1、第2の遮水チューブ10,20A,20Aである。それら第1、第2の遮水チューブ10,20A,20Aの遮水層22は、具体的には、解体除去の可能な中空支持体の筒状のコア11上に弾性的に伸長・拡径された状態で巻き回されていて、かつ、ケーブル接続部6の外周面に接するための遮水性樹脂層を周方向へ筒状に巻いたものである。また、収縮性ゴム弾性体層23は、前記の遮水層22の外周面を被覆した状態に巻き回した常温収縮性ゴムからなるものである。
【0028】
また、遮水体は、その他、ケーブル接続部6の外周面に接するための遮水性樹脂層体または膜体を周方向へ筒状に巻いた遮水管20B,20Bを設けている。
【0029】
また、前記遮水体のケーブル接続部6への設置は、実施形態では、図1に示すように、ケーブル接続部6の外周面上に複数箇所で覆うように施工されているものである。具体的には、遮水体は、ケーブル接続部6の略中央部からその両端部さらには電力ケーブル4,4の両接続端部5,5に渡って密着して覆う1対の遮水管20B,20B(遮水体)と、ケーブル接続部6の中央部付近の外周部上に位置して1対の遮水管20B,20B上を密着して覆う第1の遮水チューブ(遮水体)10と,前記一対の遮水管20B,20Bから電力ケーブル4,4の両接続端部5,5に渡って密着して覆う1対の第2の遮水チューブ20A,20A(遮水体)と、からなっている。
【0030】
前記第1の遮水チューブ10と第2の遮水チューブ20A,20Aの遮水層22は、実施形態では、プラスチックなどの遮水性樹脂からなる薄膜状又はシート状のものである。また、遮水管20Bは全体的にプラスチックなどの遮水性樹脂からなる比較的剛性のある構造になっている。
【0031】
前記の遮水性樹脂(遮水層22および遮水管20Bに用いるもの)の材質は、その防湿性、または、水蒸気遮断性能等からポリエチレン樹脂を用いることが好適である。このポリエチレン(:エチレンを重合した熱可塑性樹脂であって、密度、特性は分岐度、分岐の種類、分布によって変わる。)のうちで高密度ポリエチレン(HDPE:一般に密度を基準に密度が0.941〜0.965のポリエチレンをいう)が最も好ましいが、中密度ポリエチレンン(MDPE:密度が0.926〜0.940のポリエチレンをいう)、低密度ポリエチレン(LDPE:密度が0.910〜0.925のポリエチレンをいう)、超低密度ポリエチレン(ULDPE:密度が0.885〜0.909のポリエチレンをいう)を用いるのが好ましい。
【0032】
前記弾性体層23は、実施形態では、エチレンとプロピレンの共重合対であるエチレンプロピレンゴム(EPR若しくはEPMと略記される)からなる弾性を有する弾性ゴム素材からなるものである。本発明では、その他、弾性体層にシリコーンゴムを用いることが好適である。弾性体層23による弾性力によって、ケーブル接続部6に前記第1遮水チューブ10と第2の遮水チューブ20A,20Aを設けて覆う際に、それら遮水チューブ10,20A,20A体が緊密にケーブル接続部6上に密着することができる。
【0033】
また、実施形態では、前記遮水層22と弾性体層23との間にそれら同士が剥がれないように接着若しくは粘着によって固着する固着層25を設けている。固着層25が接着剤を用いて接着するものの場合は、合成ゴム系、エポキシ樹脂系、シリコーン系、アクリル系等の材質の樹脂からなる接着剤を用いることが好ましい。また、固着層25が粘着剤を用いて粘着するものの場合は、粘着剤には未加硫ゴムを用いることが好ましい。
【0034】
また、前記第1、第2の遮水チューブ10,20A,20Aにおいて、前記遮水層22の内側に内挿された解体可能なコア11は、プラスチックなどの樹脂または紙からなり螺旋状に溝11bが形成されたものであって、コア11の軸方向端部の口出し11aを引くとコア11はその螺旋状の溝11bから切れて分離されて解体していく。
【0035】
図3は、図1の第1の実施形態に係るケーブル接続部6を遮水体(遮水チューブ10,20A,20Aおよび遮水管20B)によって覆った状態を詳細に説明する断面図である。図3は、図1と共通部分に同一符号を付している。
【0036】
このケーブル接続部6は、電力ケーブル4,4の接続端部5,5の外部保護層27、遮蔽銅テープ(遮蔽層)28、外部半導電層8a,8a、絶縁層8,8、内部半導電層8b,8bを段階的に剥ぎ取り、かつ導体9,9を露出させた状態で接続するものである。電力ケーブル4,4には、外部保護層27を取り去って遮蔽銅テープ28が露出している。
【0037】
ケーブル接続部6は、実施形態では、後述する図4に示すように、遮水体と同様にコア61を内挿し、設置の最にはコア61を除去する常温収縮性のものである。その他、本発明のケーブル接続部は、電力ケーブルの軸方向に沿う分割面で複数に分割された所謂プレハブ構造のケーブル接続部を用いることが好ましい。また、実施形態では、ケーブル接続部6は電力ケーブル4,4の接続端部5,5同士を直線的に接続する直線接続部であるが、本発明の遮水体は、その他、曲がった接続部や複数に分岐した接続部、若しくはケーブル終端部にも実施することが好適である。
【0038】
そして、導体9,9と導体接続管12と絶縁層8,8を覆う全体の外周には、概略筒状のエチレンプロピレンゴムまたはシリコーンゴムからなる絶縁筒(補強絶縁体)32が配設される。
【0039】
この絶縁筒32の内周面部には、導体9,9同士を導体接続管12によって接続した周囲には、エチレンプロピレンゴムまたはシリコーンゴムからなる半導電層(内部半導電層)33が形成される。
【0040】
また、この絶縁筒32は、その軸方向の両端部から外周面に亙って半導電層(外部半導電層)34,34が形成される。なお、この半導電層34,34と前記遮蔽銅テープ28,28の外周はカーボンテーブなどからなる半導電性のテープ材34a,34aで巻かれている。
【0041】
また、電力ケーブル4,4の一方側の接続端部5から露出した遮蔽銅テープ28に接地線35の一端を電気的に接続する。この遮蔽銅テープ28に接続した接地線35を絶縁筒32の外部半導電層34の外周面に適宜間隔のらせん状に巻き付ける(この巻き付けた接地線は符号36で示す「遮蔽層」である)。この外部半導電層34の外周面に巻きつけた遮蔽層36の他端は、前記の電力ケーブル4,4の他方側の接続端部5の遮蔽銅テープ28に電気的に接続する。なお、外部半導電層34の外周面に巻き付ける遮蔽層36はその他、メッシュ状を呈することが好適である。
【0042】
なお、電力ケーブル4,4の他方側の接続端部5には、遮蔽銅テープ28に電気的に接続され大地に接続する(アースする)接地金具37が設けられる。
【0043】
遮水管20Bに対して、第1の遮水チューブ10および第2の遮水チューブ20A,20Aは、上記のケーブル接続部6の半導電層(外部半導電層)34および遮蔽層36外周に密着するものである。実施形態における遮水管20Bと第1の遮水チューブ10および遮水チューブ20A,20Aの固定構造は、その遮水管20Bをその周囲から第1の遮水チューブ10および第2の遮水チューブ20A,20Aが自らの弾性力によって緊密に締め付けて、遮水管20Bをケーブル接続部6に十分に固定するものである。
【0044】
次に、上記した第1の実施形態の作用を説明する。
【0045】
この電力ケーブル4,4の接続端部5,5同士をケーブル接続部6によって接続施工する際には、図4に示すように、まず、電力ケーブル4,4の接続端部5,5の外装7,7、遮蔽銅テープ(遮蔽層)28,28、外部半導電層8a,8a、絶縁層8,8、内部半導電層8b,8bを段階的に剥ぎ取って、導体9,9を露出させる。
【0046】
次いで、解体除去できる筒状のコア101が内挿されることによって拡径された第1の(常温収縮性)遮水チューブ10を一方側(図4で右側)の電力ケーブル4に被せ、接続端部5,5から離した位置の一方側の電力ケーブル4上に送り込んでおく。
【0047】
そして、一方側と他方側(図4では左側)の両電力ケーブル4,4に,第2の(常温収縮性)遮水チューブ20A,20Aと、やや柔軟でかつ剛性のある遮水管20B,20Bを被せ、これらも、接続端部5,5から離した位置の電力ケーブル4,4上に送り込んでおく。
【0048】
次いで、解体除去できるコア61によって拡径されたケーブル接続部6を他方側の電力ケーブル4に被せる。ケーブル接続部6は、内部半導電層33、絶縁筒(補強絶縁体層)32、外部半導電層34、遮蔽層36等が適宜に積層構造となって弾性変形可能に構成されている常温収縮性のものである。
【0049】
そして、接続端部5,5同士を近寄らせて前記導体9,9の先端部同士を導体接続管(スリーブ)12によって圧縮接続する。その後に、その接続端部5,5同士上にケーブル接続部6を位置させて、それを拡径していたコア61を除去することによって、ケーブル接続部6は縮径して導体接続管12で圧縮接続された導体9,9周囲の接続端部5,5同士上に密着し、電気的な性能を発揮可能にする。
【0050】
次いで、ケーブル接続部6の両端部上に遮水管20B,20Bを差し込んで覆う。そして、さらにその遮水管20B,20B上を第2の遮水チューブ20A,20Aによって覆い、それらを拡径していたコア111,111を除去することによって、第2の遮水チューブ20A,20Aは、縮径してケーブル接続部6の両端部上の遮水管20B,20Bおよび電力ケーブル4,4上に重なりそれに緊密に密着する。
【0051】
そして、前記のケーブル接続部6の両端部の周面上に密着した遮水管20B,20Bを一体に大径の第1の遮水チューブ10によって覆い、そのコア101を除去することによって、図3に示すように、第1の遮水チューブ10は、縮径してケーブル接続部6の外周であって第2の遮水管20B,20B上に緊密に密着する。
【0052】
前述のように電力ケーブルの接続端部同士を接続するに際し、常温収縮性遮水チューブをコアによって拡径していたものをケーブル接続部上に位置させてそのコアを抜き取り、その常温収縮性遮水チューブをその弾性力によって収縮させてケーブル接続部上に緊密に密着させた状態に被せる。この遮水層が樹脂製のため機械的屈曲性能が高く、屈曲疲労によりピンホールが生じる等するとことが効果的に防止できるので本来の遮水性能を十分に発揮することができる。
【0053】
また、前記遮水層は、弾性体層の収縮力によって折り畳まれた状態やしわのよった状態になっても、その遮水層に凹凸すなわち山部と谷部が生じて、その山部が突起になることが無く、弾性体層を押して常温収縮性チューブに外傷を与えることが全くない。
【0054】
尚、本発明の電力ケーブル用接続部の遮水構造は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0055】
図5〜図7に第1の実施形態の変形例1〜変形例3を示す。
【0056】
図5に示す変形例1は、本発明の遮水体を、第1の実施形態に係る第1の遮水チューブ10、第2の遮水チューブ20A,20Aおよび遮水管20Bに代えて、全体が一体の第3の遮水チューブ40としたものである。この第3の遮水チューブ40は、電力ケーブル4,4の接続端部5,5とケーブル接続部6とを一括して覆う筒状の常温収縮性遮水チューブであって、その構造は図2に示した第1の遮水チューブ10および第2の遮水チューブ20A,20Aと同様のものである。
そして、この変形例1では、ケーブル接続部6が電力ケーブル4,4と同径または略同径等、外径差の少ないものであることから、全体が一体の第3の遮水チューブ40で覆うようにした、いわゆる1ピースタイプの遮水チューブとしている。
【0057】
この第3の遮水チューブ40によって、図4に示すような、遮水管や複数の遮水チューブを用いること無く、ケーブル接続部6の遮水施工が簡単かつ短時間に行うことができる。なお、ケーブル接続部6と第3の遮水チューブ40との間には詳細は図示しないが半導電性の外部半導電層、半導電性のテープ材34aおよび遮蔽層36を形成することが好ましい。
【0058】
図6に示す変形例2の遮水体は、第1の実施形態に係る第1の遮水チューブ10、第2の遮水チューブ20A,20Aおよび遮水管20Bに代えて、電力ケーブル4,4の接続端部5,5とケーブル接続部6の両端部との間を第4の遮水チューブ41で覆うと共に、ケーブル接続部6の両端部と第4の遮水チューブ41上にかけて2つの第5の遮水チューブ42で覆うものである。この第4,第5の遮水チューブ41、42は、電力ケーブル4,4の接続端部5,5とケーブル接続部6との適所を覆う筒状の常温収縮性遮水チューブであって、その構造は図2に示した第1の遮水チューブ10および第2の遮水チューブ20A,20Aと同様のものである。
【0059】
この変形例2の遮水体では、電力ケーブル4,4の接続端部5,5とケーブル接続部6の外径差が変形例1のものよりも大きいので、第4の遮水チューブ41と第5の遮水チューブの3つの遮水チューブを用いて覆うようにした、所謂3ピースタイプのものとしている。
したがって、この変形例2の遮水体では、ケーブル接続部6の両端部と第4の遮水チューブ41上にかけて2つの第5の遮水チューブ42で覆うことにより、外径差のあるケーブル接続部6と電力ケーブル4,4の接続端部5,5との間の段差を、確実に遮水することができる。
なお、ケーブル接続部6と遮水チューブ40との間には詳細は図示しないが半導電性の外部半導電層、半導電性のテープ材34aおよび遮蔽層36を形成することが好ましい。
【0060】
図7に示す変形例3は、本発明の遮水体を、第1の実施形態に係る第1の遮水チューブ10、第2の遮水チューブ20A,20Aおよび遮水管20Bに代えて、全体が一体の遮水性樹脂からなる円筒状の第6の遮水チューブ43およびその第6の遮水チューブ43上を覆うものである。この第6の遮水チューブ43上は、防水テープまたは防水チューブ44によって覆い、第6の遮水チューブ43をケーブル接続部6上に固定するようにしている。
【0061】
第6の遮水チューブ43は、図2に遮水チューブとは異なり、全体が前記の高密度、中密度または低密度のポリエチレンを用いた遮水性樹脂によってなっている。また、この第6の遮水チューブまたは防水チューブ44は、前記図2に筒状の常温収縮性チューブとすることが好適である。なお、防水テープ44は第6の遮水チューブ43上に巻き付けて施工する。
【0062】
この第6の遮水チューブ43によって、図4に示すような、遮水管や複数の遮水チューブを用いること無く、ケーブル接続部6の遮水施工が簡単かつ短時間に行うことができる。なお、ケーブル接続部6と第6の遮水チューブ43との間には詳細は図示しないが半導電性の外部半導電層、半導電性のテープ材34aおよび遮蔽層36を形成することが好ましい。
【0063】
次に本発明の第2の実施形態を説明する。
【0064】
図8は第2の実施形態に係るケーブル接続部45およびその防水を行う遮水管の断面説明図である。
【0065】
本発明は、電力ケーブルの接続部の外周を遮水体によって覆い、そのケーブル接続部に外部から水が浸入することを阻止するケーブル接続部の遮水構造において、遮水体は、金属材を含まずに樹脂からなるものであり、この第2の実施形態では、遮水体は、接続部外周を覆う剛性のある遮水性樹脂製の管構造のものである。
【0066】
具体的には、遮水体は、前述の高密度、中密度または低密度のポリエチレンからなる剛性のあるものである。
【0067】
図8に示すケーブル接続部45は、Y分岐型の接続部であって。3つの電力ケーブル4の接続端部5を接続可能とするものである。図8では2つの電力ケーブル4,4の接続端部5,5同士を繋いでいるものを示している。
【0068】
このケーブル接続部45は、電力ケーブル4,4の接続端部5,5の導体9,9をそれぞれ受け部46aに差し込んで電気的な接合をする該略Y字形状の導体接続体46と、導体接続体46周囲を覆って電気的な絶縁機能を果たすエポキシ樹脂からなるエポキシ絶縁体47と、導体接続体46のややすり鉢状を呈する受け部46aに差し込んだ導体9,9を締め付けて固定する、テーパ状に先細る金属製のくさび48およびくさび締め付け金具49と、電力ケーブル4,4の接続端部5,5の絶縁層8,8上に密着して固定する概略そろばん球形状のプレモールド絶縁体50と、このプレモールド絶縁体50を絶縁層8,8上に押し付ける絶縁体圧縮金具51と、前記導体接続体46の受け部46aのうちで電力ケーブル4の導体9を接続しないもの(図8に符号「46a’」で示す)に差し込む絶縁栓52とを有している。
【0069】
遮水体は、第2の実施形態では、前記ケーブル接続部45から電力ケーブル4,4の接続端部5,5の周囲は、異形のエポキシ絶縁体47外周面に沿って包む遮水管53の部分(それぞれ「部分遮水管53a,53b,53c,53d、53e」という)が複数組み合わされて結合したものによって覆われている。
【0070】
遮水管53は、全体的にプラスチックなどの遮水性樹脂からなる比較的剛性のあるものである。この遮水性樹脂は、前記第1の実施形態の遮水層22および遮水管20Bに用いるものと同様の材質であって、その説明は省略する。もちろん他の遮水性材質のものを用いることも好適である。
【0071】
なお、図8において、部分遮水管53aは、概略Y字形状のエポキシ絶縁体47の外周を覆う。また、エポキシ絶縁体47には、電力ケーブル4,4の接続端部5,5およびプレモールド絶縁体50が差し込まれており、部分遮水管53b、および、部分遮水管53cはこの接続端部5,5の外部保護層27,27が剥がされている部分から剥がされていない部分に渡って覆い、先細の管状構造を呈している。
【0072】
されに、他の部分遮水管53d,53eは、部分遮水管53b、および、部分遮水管53cの先方に位置して接続端部5,5を覆い、先細の管状構造を呈している。
【0073】
前記部分遮水管53aと部分遮水管53bおよび部分遮水管53cは、それらの間の合わせ面にOリングなどのシール部材54を介装して、互いにボルト55によって締着するものである。
【0074】
また、部分遮水管53bおよび部分遮水管53cと他の部分遮水管53d,53eは、絶縁テープ56、防水テープ57、および絶縁混和物58を巻き付ける等して施工し、これによって絶縁性および水密性を確保している。
【0075】
なお、電力ケーブル4,4の接続端部5,5において、プレモールド絶縁体50に設けられている部分から遮蔽銅テープ28の露出している箇所にかけては、半導電性層例えばACPテープ(架橋ポリエチレン半導電性テープ)59が設けられている。
【0076】
また、絶縁体圧縮金具51のプレモールド絶縁体50の押圧構造は、絶縁体圧縮金具51がプレモールド絶縁体50の導体接続体46反対側に当接する前端開きの概略漏斗形状を呈し、それと共に、部分遮水管53b,53cの内周部(の段差部等)に掛かり止まる座金60と、絶縁体圧縮金具51の基端部のフランジ状部分と前記座金を電力ケーブル4,4軸方向に進退動可能に連結するシャフト62と、そのシャフト62に外装されて座金60および絶縁体圧縮金具51同士の間隔を開く方向に付勢する締結用のスプリング63とを有している。これにより、スプリング63の付勢力によって絶縁体圧縮金具51を介してプレモードル絶縁体50を導体接続体46側に常時押し付けて位置ずれを無くしている。なお、シャフト62は遮蔽銅テープ28に電気的に接続されている。
【0077】
また、前記絶縁栓52は、導体接続体46の受け部46a開口を塞く略椀状の絶縁栓蓋64と、該絶縁栓蓋64の内周部に掛かり止まる座金65と、導体接続体46の電力ケーブルを接続しない受け部46a’内に嵌入させるプレモールド絶縁栓本体66と、このプレモールド絶縁栓本体66の基端部と前記座金65を電力ケーブル4,4軸方向に進退動可能に連結するシャフト67と、そのシャフト67に外装されて座金65およびプレモールド絶縁栓本体66同士の間隔を開く方向に付勢する締結用のスプリング68とを有している。これにより、スプリング68の付勢力によってプレモールド絶縁栓本体66を導体接続体46側に常時押し付けて位置ずれを無くしている。なお、絶縁栓蓋64は、前述の遮水管53(部分遮水管53a〜53e)と同様の材質から形成されて下り、これもボルト55によって部分遮水管53aに締着されている。
【0078】
前記第2の実施形態の遮水構造は、上述のように構成したので、前述のプラスチックからなる遮水性樹脂製の遮水管53を用いているので、金属管を用いた遮水管に比較して軽く、作業時の取り扱い性が良好なものになる。特に地中ケーブル管路に布設した電力ケーブルをマンホール内で接続する場合や、電力ケーブルのY分岐接続部全体の外周部を覆う遮水構造体等が大きく重いものであるものの場合等であっても、その取り扱い性が良いので作業負荷になることがなく、作業時間がかからず作業コスト低減を図ることができる。
【0079】
本発明のケーブル接続部の遮水構造は、低電圧(交流電圧750ボルト未満)用の電力ケーブルや高電圧(交流電圧750ボルト〜6000ボルト)用の電力ケーブルであって、架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル(CVケーブル)用のケーブル接続部に使用又は施工するのが好適であるが、その他の電圧もしくはその他の種類の電力ケーブルにも用いてその接続部の遮水性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るケーブル接続部の遮水構造を概略説明する電力ケーブルおよびケーブル接続部の軸方向に沿う断面図である。
【図2】図1に示す遮水体の軸方向に沿う断面図である。
【図3】図1の具体的な電力ケーブルおよび接続部の軸方向に沿う詳細な断面図である。
【図4】ケーブル接続部の遮水構造の施工説明図である。
【図5】第1の実施形態の変形例1に係るケーブル接続部の遮水構造を概略説明する電力ケーブルおよびケーブル接続部の軸方向に沿う断面図である。
【図6】第1の実施形態の変形例2に係るケーブル接続部の遮水構造を概略説明する電力ケーブルおよびケーブル接続部の軸方向に沿う断面図である。
【図7】第1の実施形態の変形例3に係るケーブル接続部の遮水構造を概略説明する電力ケーブルおよびケーブル接続部の軸方向に沿う断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るケーブル接続部の遮水構造を概略説明する電力ケーブルおよびケーブル接続部の軸方向に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0081】
4,4 電力ケーブル
5,5 接続端部
6 ケーブル接続部
7,7 外装
8,8 絶縁層
8a,8a 外部半導電層
8b,8b 内部半導電層
9,9 導体
10 遮水チューブ(遮水体)
11 コア
11a 口出し
11b 溝
12 導体接続管
20A,20A 遮水チューブ(遮水体)
20B,20B 遮水管(遮水体)
22 遮水層
23 収縮性ゴム弾性体層
23 弾性体層
25 固着層
27 外部保護層
27,27 外部保護層
28,28 遮蔽銅テープ
32 絶縁筒
33 内部半導電層
34 外部半導電層
34a,34a テープ材
35 接地線
36 遮蔽層
37 接地金具
40 遮水チューブ
41 遮水チューブ
42 遮水チューブ
43 遮水チューブ
44 防水テープまたは防水チューブ
45 ケーブル接続部
46 導体接続体
46a 受け部
47 エポキシ絶縁体
49 締め付け金具
50 プレモードル絶縁体
51 絶縁体圧縮金具
52 絶縁栓
53 遮水管
53a,53b,53c,53d 部分遮水管
54 シール部材
55 ボルト
56 絶縁テープ
57 防水テープ
58 絶縁混和物
60 座金
61 コア
62 シャフト
63 スプリング
64 絶縁栓蓋
65 座金
66 プレモールド絶縁栓本体
67 シャフト
68 スプリング
101 コア
111 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの接続部の外周を遮水体によって覆い、そのケーブル接続部に外部から水が浸入することを阻止するケーブル接続部の遮水構造において、
遮水体は、金属材を含まずに樹脂からなることを特徴とするケーブル接続部の遮水構造。
【請求項2】
遮水体は、ケーブル接続部の外周面側に遮水性樹脂層を周方向へ筒状に巻いた遮水層と、この遮水層の外周面を被覆した状態に巻き回した収縮性ゴム弾性体層とからなる収縮性チューブであることを特徴とする請求項1に記載のケーブル接続部の遮水構造。
【請求項3】
遮水体は、接続部外周を覆う剛性のある遮水性樹脂管製のものであることを特徴とする請求項1に記載のケーブル接続部の遮水構造。
【請求項4】
遮水性樹脂は、高密度、中密度または低密度のポリエチレンからなることを特徴とする請求項2または3に記載のケーブル接続部の遮水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−50849(P2006−50849A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230968(P2004−230968)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】