説明

ケーブル被覆材用液状硬化性組成物

【課題】硬化物の水に対する溶解性が良好で、特に光ファイバの被覆材として有用な液状硬化性組成物の提供。
【解決手段】組成物の全量100質量%に対して、
(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド 20〜70質量%、
(B)ウレタン(メタ)アクリレート 0〜5質量%、
(C)分子量10000のホモポリマーとしたときに該ホモポリマーが水溶性である、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物 10〜40質量%、
(D)非イオン性の水溶性ポリマー 10〜30質量%、および
(E)重合開始剤 0.1〜10質量%
を含有する、ケーブル被覆材用液状硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ被覆材、特に光ファイバのプライマリ材として好適な特性を有する液状硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の発達により光ファイバが多用されるようになり、光ファイバはますます多様な環境下に敷設され、耐環境特性が重要となってきている。特に、海底ケーブルのように水中に敷設される場合に限らず、光ファイバの内部構造に水が侵入すると通信特性に悪影響を及ぼすため、耐水性は重視される耐環境特性の一つである。光ファイバは、ガラスを熱溶融紡糸して得たガラスファイバ素線に、樹脂を被覆した構造を有している。この樹脂被覆としては、ガラスファイバの表面にまず柔軟な第一次の被覆層を設け、その外側に剛性の高い第二次の被覆層を設けた構造が知られている。これらの樹脂被覆を施された複数の光ファイバ素線を結束材料で固めた光ファイバテープや、複数の光ファイバ素線や光ファイバテープ光ファイバケーブルも束ねた光ファイバケーブルもよく知られている。光ファイバの耐水性対策としては、水の侵入を防止し、又は侵入した水を吸水して光ファイバの内部構造中での水の拡散を防止する構造を設ける場合が多い。このような構造を有する光ファイバの例としては、吸水性を有する防水テープを用いた光ケーブル(特許文献1〜3)が代表的である。これらの技術における防水テープ等は、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂に吸水材を配合した材料により構成されている。
他方、本発明との関係で、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを含有するケーブル被覆材用液状硬化性組成物としては、特許文献4、5等を挙げることができる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−225331号公報
【特許文献2】特開平6−187843号公報
【特許文献3】特開平7−085731号公報
【特許文献4】特開平6−128525号公報
【特許文献5】特開2002−212244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防水テープ等の材質は、樹脂硬化物自体は吸水性に乏しく、吸水材を配合したとしてもその吸水性は不十分であった。また、従来のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを含有するケーブル被覆材用液状硬化性組成物から得られる硬化物は、低吸水性であり、光ファイバの耐水性対策用としては不十分であった。
従って、本発明の目的は、高い吸水性、特に水溶性の硬化物を与えるケーブル被覆材用液状硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記特性を有する組成物を得るべく種々検討した結果、水酸基を有する特定のアクリルアミド化合物と非イオン性の水溶性ポリマーを配合して組成物を構成することにより、水に容易に溶解する硬化物が得られること、本発明の組成物が光ファイバや電線等のケーブルの被覆材料として好適であることを見いだし、本発明を完成した。なお、本願明細書において、被覆材とは、光ファイバにおけるガラス(石英)ファイバや電線におけるメタル線を覆うための材料に限定されるものではなく、例えば光ファイバケーブル構造の一部に用いられる防水テープのように、被覆層の一部を構成する材料をも含むものである。
【0006】
すなわち、本発明は、組成物の全量100質量%に対して、
(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド 20〜70質量%、
(B)ウレタン(メタ)アクリレート 0〜5質量%、
(C)分子量10000のホモポリマーとしたときに該ホモポリマーが水溶性である、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物 10〜40質量%、
(D)非イオン性の水溶性ポリマー 10〜30質量%、および
(E)重合開始剤 0.1〜10質量%
を含有する、ケーブル被覆材用液状硬化性組成物を提供するものである。
また、本発明は、当該液状硬化性組成物を硬化して得られる光ファイバ被覆層、及びこの光ファイバ被覆層を有する光ファイバケーブルを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液状硬化性組成物は、硬化物の水に対する溶解性が良好である。従って、本発明の組成物は、光ファイバ被覆材、特に耐水特性を要求される光ファイバケーブルに用いる光ファイバ被覆材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の液状硬化性組成物に用いられる成分(A)のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、光照射により重合して組成物を硬化することができることに加えて、水酸基を有するために成分(A)の重合体が水溶性であるため、硬化物の水溶性を改善する。
【0009】
成分(A)の具体例としては、炭素数1〜4のアルキル基を有するN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドがさらに好ましい。成分(A)の市販品としては、HEAA(株式会社興人製)等が挙げられる。
【0010】
N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(A)は、本発明の液状硬化性組成物中に、20〜70質量%、さらに30〜55質量%、特に40〜50質量%配合することが好ましい。20質量%未満では硬化物の水溶性が低下し、70質量%を超えると(D)成分の添加量が制限されるため、組成物の粘度が過小となり塗布性が低下する傾向がある。
【0011】
本発明の液状硬化性組成物に用いられる成分(B)の重合性オリゴマーであるウレタン(メタ)アクリレートは、その具体的構造は特に限定されないが、典型的にはジオール化合物とジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応することにより得られる。あるいは、ジオール化合物を用いず、ジイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とを反応することにより得ることもできる。
【0012】
この反応を実施する具体的方法としては、ジオール化合物及びジイソシアネート化合物を反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させる方法が好ましい。
【0013】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)の合成で用いられるジイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中では、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネートが好ましい。脂環族ジイソシアネートとして、例えば、イソフォロンジイソシアネートが好ましい。
【0014】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)の製造に用いられるジオール化合物としては、特に限定されないが、例えば脂肪族ポリエーテルジオール、脂環式ポリエーテルジオールあるいは芳香族ポリエーテルジオールなどのポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオールなどが挙げられる。これらのジオールは、単独で又は二種以上を併用して用いることもできる。これらのジオールにおける各構造単位の重合様式は特に制限されず、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。
【0015】
脂肪族ポリエーテルジオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールなどが挙げられる。
【0016】
二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールの具体例としては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシドなどの組み合わせより得られる二元共重合体;テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド及びエチレンオキシドの組み合わせより得られる三元重合体などを挙げることができる。
【0017】
上記脂肪族ポリエーテルジオールは、例えばPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学社製)、PPG400、PPG1000、EXCENOL720、1020、2020(以上、旭オーリン社製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂社製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土谷化学工業社製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B、EO/BO4000、EO/BO2000(以上、第一工業製薬社製)、Acclaim 2200、2220、3201、3205、4200、4220、8200、12000(以上、住友バイエルウレタン社製)等などの市販品としても入手することができる。
【0018】
脂環式ポリエーテルジオールとしては、例えば水添ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加ジオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加ジオール、1,4−シクロヘキサンジオールのアルキレンオキシド付加ジオールなどが挙げられる。
【0019】
さらに、芳香族ポリエーテルジオールとしては、例えばビスフェノールAのアルキレンオキシド付加ジオール、ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加ジオール、ハイドロキノンのアルキレンオキシド付加ジオール、ナフトハイドロキノンのアルキレンオキシド付加ジオール、アントラハイドロキノンのアルキレンオキシド付加ジオールなどが挙げられる。上記芳香族ポリエーテルジオールは、例えばユニオールDA400、DA700、DA1000、DA4000(以上、日本油脂社製)などの市販品としても入手することができる。
【0020】
ジオールの分子量としては、通常、平均分子量1000〜4000のものが挙げられる。特に平均分子量1000〜2000の脂肪族ポリエーテルジオールが好ましい。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)の合成で用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)の合成において、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等から選ばれるウレタン化触媒を、反応物の総量に対して0.01〜1質量%を用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常5〜90℃、特に10〜80℃で行うのが好ましい。
【0023】
本発明に用いるウレタン(メタ)アクリレート(B)の好ましい分子量は、ゲルパーミュレーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算の分子量で通常1500〜20000であり、より好ましくは2500〜12000である。分子量が1500未満ではその硬化物の破断伸びが低いことがあり、20000を超えると粘度が高くなることがあり好ましくない。
【0024】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、本発明の液状硬化性組成物中に、0〜5質量%、さらに0〜1質量%が好ましく、特に配合量を0質量%とすることが好ましい。5質量%を超えると、硬化物の水溶性が低下する。
【0025】
本発明の液状硬化性組成物の成分(C)(メタ)アクリレート化合物は、分子量10000のホモポリマーとしたときに該ホモポリマーが水溶性である、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物である。成分(C)としては、高い極性を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、好ましい具体例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0026】
これに対して、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレート化合物を配合すると、硬化反応により架橋構造を有する硬化物を生じるため、硬化物の水溶性が低下するため、添加しない方がよい。添加する場合であっても、0〜5質量%、さらに0〜1質量%が好ましく、特に配合量を0質量%とすることが好ましい。
【0027】
これらの(C)成分の中では、N−ビニルピロリドンが硬化物の水溶性を向上させる観点から好ましい。
【0028】
成分(C)の(メタ)アクリレート化合物は、本発明の液状硬化性組成物中に、10〜40質量%、特に20〜30質量%配合することが好ましい。10質量%未満では硬化性が低下し、40質量%を超えると硬化物の水溶性が低下する。
【0029】
本発明の液状硬化性組成物の(D)非イオン性の水溶性ポリマーは、硬化物の吸水性を向上させるために配合される。成分(D)は、非イオン性であることにより、硬化物中での分散性に優れている。成分(D)の具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。これらの中では、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0030】
成分(D)の分子量は、特に限定されないが、通常、3万〜30万であり、5万〜10万が好ましい。3万未満では吸水性が不十分であり、30万を超えると組成物の粘度が過大となる。
【0031】
成分(D)の非イオン性の水溶性ポリマーは、本発明の液状硬化性組成物中に、10〜30質量%、特に20〜30質量%配合することが好ましい。10質量%未満では硬化物の吸水性が低下し、40質量%を超えると硬化性が低下する。
【0032】
本発明の液状硬化性組成物の重合開始剤(E)としては、熱重合開始剤又は光重合開始剤を用いることができる。
【0033】
本発明の組成物を熱硬化させる場合には、通常、過酸化物、アゾ化合物等の熱重合開始剤が用いることができる。具体的には、例えばベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0034】
また、本発明の組成物を光硬化させる場合には、光重合開始剤を用い、必要に応じて、さらに光増感剤を添加することができる。ここで、光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、DAROCUR1116、1173(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製);LUCIRIN TPO(BASF社製);ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0035】
重合開始剤(E)は、本発明の液状硬化性組成物中に、0.1〜10質量%、特に1〜7質量%配合するのが好ましい。
【0036】
本発明の液状硬化性組成物には、その機能を阻害しない範囲で、連鎖移動剤(F)を配合することができる。成分(F)を配合することにより、成分(A)や成分(B)の重合体の分子量が過大となることを防止し、硬化物の水溶性を改善することができる。成分(F)の好ましい具体例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエタンチオール、2−メルカプト酢酸チオール、2−プロパンチオール、t−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0037】
連鎖移動剤(F)は、本発明の液状硬化性組成物中に、被覆とガラスとの密着力の維持の点から0.1〜5質量%、さらに0.5〜3質量%配合するのが好ましい。
【0038】
また、上記成分以外に各種添加剤、例えば酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を必要に応じて配合することができる。
ここで、酸化防止剤としては、例えばIRGANOX1010、1035、1076、1222(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、ANTIGENE P、3C、Sumilizer GA−80、GP(住友化学工業社製)等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えばTINUVIN P、234、320、326、327、328、329、213(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、Seesorb102、103、501、202、712、704(以上、シプロ化成社製)等が挙げられる。光安定剤としては、例えばTINUVIN 292、144、622LD(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、サノールLS770(三共社製)、TM−061(住友化学工業社製)等が挙げられる。
【0039】
なお、本発明の液状硬化性組成物は、熱及び/又は放射線によって硬化されるが、ここで放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等であるが、特に紫外線が好ましい。
【0040】
本発明の液状硬化性組成物の粘度は、ハンドリング性、塗布性の点から25℃において0.1〜10Pa・s、さらに1〜8Pa・s、特に1〜5Pa・sが好ましい。
【0041】
本発明の液状硬化性組成物の硬化物のヤング率は、100〜700MPa、さらに200〜600であることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
[合成例1:ウレタンアクリレートの合成]
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート28.59g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.021g、ジブチル錫ジラウレート0.072gおよびフェノチアジン0.007gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。数平均分子量2000のプロピレンオキサイドの開環重合体26450gを加え、液温が35℃以下になるように制御しながら2時間攪拌して反応させた。次に、2−ヒドロキシプロピルアクリレート9.70gを滴下し、さらに、ヒドロキシエチルアクリレート24.74gを滴下して、液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタンアクリレートを「ウレタンアクリレート1」とする。
【0044】
実施例1〜2、比較例1〜2
表1に示す組成の液状硬化性組成物を製造し、下記の方法に従い、粘度、ヤング率、硬化物の水に対する溶解性を測定した。
【0045】
(1)粘度測定方法:
実施例及び比較例で得られた組成物の25℃における粘度を、粘度計B8H−BII(トキメック(株)製)を用いて測定した。さらにこの組成物を耐久試験として60℃のオーブンに60日間放置した後、再度粘度を測定した(以下、「耐久後粘度」という。)。初期粘度と加熱後粘度の変化率を式(1)より算出して、液状硬化性組成物の熱的安定性を評価した。
【0046】
(式)
粘度変化率(%)=100−(初期粘度値/耐久後粘度)×100 (1)
【0047】
(2)ヤング率:
実施例及び比較例で得られた組成物の硬化後のヤング率を測定した。354ミクロン厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性組成物を塗布し、これを空気中で1J/cm2のエネルギーの紫外線を照射し硬化させ試験用フィルムを得た。この硬化フィルムから延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるように短冊状サンプルを作成した。温度23℃、湿度50%下で、引張り試験機AGS−1KND(島津製作所(株)製)を用い、JIS K7127に準拠して引張試験を行った。引張速度は1mm/minで2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
【0048】
(3)硬化物の水に対する溶解性:
ヤング率測定の項に記載した試験用フィルムを2g切り出して、50mLの水中に静置し、フィルムの溶解を目視判定した。水中に静置して10分以内にフィルムを視認できなくなった場合を「○」、10分経過してもフィルムを視認できた場合を「×」と評価した。
【0049】
【表1】

【0050】
表中、
HEAA:N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(株式会社興人)。
ウレタンアクリレート1:合成例1で得られたウレタンアクリレート。
Irgacure184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)。
【0051】
表1から明らかなように、本発明の組成物は、硬化物が水に容易に溶解する特性を有しており、光ファイバケーブル等の耐水性を向上させるための光ファイバ被覆剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の全量100質量%に対して、
(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド 20〜70質量%、
(B)ウレタン(メタ)アクリレート 0〜5質量%、
(C)分子量10000のホモポリマーとしたときに該ホモポリマーが水溶性である、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物 10〜40質量%、
(D)非イオン性の水溶性ポリマー 10〜30質量%、および
(E)重合開始剤 0.1〜10質量%
を含有する、ケーブル被覆材用液状硬化性組成物。
【請求項2】
(A)成分が、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド又はN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドである、請求項1に記載のケーブル被覆材用液状硬化性組成物。
【請求項3】
(D)成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポリエチレンオキシドから選択される1種以上である、請求項1又は2に記載のケーブル被覆材用液状硬化性組成物。
【請求項4】
組成物の全量100質量%に対して、
(F)連鎖移動剤 0.1〜5質量%
を含有する、請求項1〜3のいずれか一に記載のケーブル被覆材用液状硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一に記載の液状硬化性組成物を硬化して得られる光ファイバ被覆層。
【請求項6】
請求項5に記載の光ファイバ被覆層を有する光ファイバケーブル。

【公開番号】特開2009−203360(P2009−203360A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47454(P2008−47454)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】