説明

ゲルマニウム層の直接成長方法

【課題】化学気相堆積により、基板上にGeの連続した層を堆積する方法を提供する。
【解決手段】非反応性キャリアガスと、高次のゲルマニウム前駆体ガス、即ちゲルマン(GeH)より高次のゲルマニウム前駆体ガスとの混合物が適用される。好適には、約275℃と約500℃との間の堆積温度で堆積が行われ、混合物中の前駆体ガスの分圧は、約275℃と約285℃との間の温度で少なくとも20mTorrであり、約285℃と約500℃との間の温度で少なくとも10mTorrである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体プロセスに関し、特に化学気相堆積(CVD)によるゲルマニウム層の堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
最先端技術では、ゲルマン(GeH)をGe前駆体に用いた、SiO層上への多結晶またはアモルファスのGe層のCVD堆積は、SiO層上にシリコンシードを堆積すること無しには不可能である。シード層無しでは、連続したGe成長、即ち、均一で閉ざされた(closed)Ge層の成長は、揮発性でそれゆえに成長温度で脱着する(Geと酸化物との間の反応による)ゲルマニウム亜酸化物(サブオキサイド)の形成により、不可能である。Siの領域およびSiOの領域を含む基板上では、Ge成長はこのように選択的となり、即ち、連続したGeがSi領域上で成長し、SiO領域上では成長しない。
【0003】
Siシード層の存在は、いくつかの応用では望まれないが、SiO上に純粋で連続したGe層を直接成長する方法は、現時点では得られていない。
【0004】
GeHの代わりに、より高次のゲルマニウム前駆体、特にジゲルマン(Ge)やトリゲルマン(Ge)が、SiGe層のCVD製造物中にSi前駆体と組み合わせて適用された。例えば米国特許文献US−A−2003111013は、シード層無しで、GeH、Ge、Geまたはテトラクロロゲルマン(GeH1−xCl、x=1−4)の1つをGe前駆体として用い、シラン(SiH)、ジシラン(Si)、トリシラン(Si)またはテトラクロロシラン(SiHCl)をSi前駆体として用いて、SiO上にSiGeを堆積するプロセスおよび装置について記載する。シード層の提供無しに、純粋のGe層を形成するためのプロセスパラメータに関しては、いかなる記載も見られない。
【0005】
従来技術は、SiO上への純粋なGe層の堆積方法について欠落していると結論づけられる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、添付された請求項に記載された方法およびデバイスに関する。そのように、本発明は、基板表面上に連続したゲルマニウム層を堆積する方法に関し、この方法は、
基板を提供する工程と、
化学気相堆積(CVD)により表面上に層を提供するのに適した反応チャンバ中に、基板を導入する工程と、
チャンバ中に、ゲルマニウム前駆体ガスと非反応性キャリアガスとを含むガス混合物を導入する工程であって、ゲルマニウム前駆体ガスは、GeHと比較して高次のゲルマン前駆体である工程と、
基板表面を覆い、これと接続する連続したゲルマニウム層をCVDにより堆積する工程と、含む。
【0007】
好適な具体例では、ゲルマニウム前駆体は、GeまたはGeである。ガス混合物は、大気圧でも良い。
【0008】
好適な具体例では、堆積工程は、約275℃と約500℃との間の堆積温度で行われ、ガス混合物中のゲルマニウム前駆体の分圧は、堆積温度が約275℃と約285℃との間の場合は少なくとも20mTorrであり、堆積温度が約285℃より高く約500℃までの場合は少なくとも10mTorrである。CVD堆積は、好適には以下の工程、
好適には、すでにキャリアガスをチャンバに供給しながら、反応チャンバの内部を堆積温度まで加熱する工程と、
堆積温度に到達した場合に、前駆体ガスとキャリアガスとをチャンバに供給し、基板上にGe層を堆積する工程と、
を実施して行われる。
【0009】
本発明の具体例では、基板表面は、
high−k誘電体材料、
シリコン酸化物、
Si窒化物またはSi炭化物、
金属または金属窒化物または金属炭化物、
からなるグループの材料からなる表面領域を少なくとも含む。
特別な具体例では、基板表面は、少なくともチタン窒化物を含む表面領域、および/または少なくともSiOを含む表面領域を含む。
【0010】
ガス混合物は、更にドーピング元素を含むガスを含んでも良い。ドーピング元素を含むガスは、BまたはAsHまたはPHでも良い。キャリアガスは、HまたはNでも良い。
【0011】
本発明は、また、基板表面の少なくとも一部の上のTiN層と、TiN層を覆いこれと接続する連続したGe層とを含む基板に関する。
【0012】
本発明は、また、先のパラグラフにかかる基板を含む半導体デバイスに関する。本発明は、また、本発明の方法により作製された基板を含む半導体デバイスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の方法に適したリアクタの概略図を示す。
【図2】様々な堆積温度におけるGeの分圧を関数としたGe成長速度を示す。
【図3a】Siシード層の無い場合に、前駆体としてGeHから始まり、TiN上に、連続したGe層が堆積できないという事実を示すSEM像である。
【図3b】Siシード層の有る場合に、前駆体としてGeHから始まり、TiN上に、連続したGe層が堆積できないという事実を示すSEM像である。
【図4】本発明の方法にかかる、TiN上への連続したGe層の直接形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の方法では、より高次のゲルマニウム前駆体、好適にはジゲルマンやトリゲルマン(GeやGe)がガス混合物中でゲルマニウム前駆体ガスとして使用され、
好適には大気圧におけるガス混合物は、Ge前駆体ガス、可能であればドーパント元素を含むガス、および例えばNまたはHのような非反応性キャリアガスを含みまたはからなる。ドーパント元素は、気体状のBとして混合物に加えられたホウ素でも良い。また、例えば、AsHやPHを混合物に加えるように、n型ドーパント元素が混合物に加えられても良い。この混合物から、Siシード層を必要とすることなく、例えばSiO上のような基板表面上に、CVDにより(可能であればドープされた)連続したGe層が堆積される。Ge層は、主に層がその上に堆積される基板の型に依存して、アモルファス、多結晶、または単結晶でも良い。連続した層は、アイランドの形成を示さない層を意味する。そのような堆積方法は、公知のCVD手順により導かれ、公知のCVD装置中で行われる。本発明の方法に適用されるCVD技術は、プラズマ強化VCVD(PECVD)のようなプラズマアシストプロセスを使用しない。
【0015】
本発明の方法は、多くの型の基板表面に適用できる。好適な具体例では、Ge前駆体としてGeHを含む気相からのCVDにより、連続したGe層を直接堆積させることが不可能な材料の上に、Ge層を堆積させる。そのような材料の主な例は、シリコン酸化物、特にSiOである。本発明が好適に適用される他の表面は、以下の材料の層である。
high−k誘電体材料、例えばハフニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、ランタニド酸化物(ランタン酸化物、ジスプロシウム酸化物、ガドリニウム酸化物、イッテルビウム酸化物)、およびそれらの組み合わせ。それらの材料は、前駆体としてGeHを用いたGeの直接堆積の観点からみると、シリコン酸化物として同じ型の問題、即ち、成長温度で脱着する揮発性Ge亜酸化物の形成、を示しそうである。
Si窒化物またはSi炭化物(SiN、SiC)。
金属または金属窒化物/金属炭化物(例えば、Hf、Zr、Al、Ti、TiN、Ta、Zr、Ru、TaN、TaC)。
【0016】
金属窒化物または金属炭化物は、Siシード層を最初に堆積した場合であっても、前駆体としてGeHを用いてGeを堆積させた場合、問題が生じそうである。本発明は、TiN表面の場合にそのような問題を確立させた(後述)。理論に縛られることを望まないが、そのような問題は、Si/Ge界面における金属汚染の存在により引き起こされると信じられている。
【0017】
Si領域とSiO領域を含む表面を有する、直径が200mmのシリコンウエハの上で得られたテスト結果について、以下に述べる。使用された前駆体はGeであり、キャリアガスとしてHを用いた。しかしながら、それらの結果は、他の型の基板、他のキャリアガス(例えばN)と同様に、Geのような他のより高次のGe前駆体にも適用可能である。
【0018】
CVD堆積は、図1に模式的に示すCVDチャンバ中で行われが、これは本発明の範囲を限定するものではない。キャリアガスと前駆体ガスが、その中に基板3が載置される反応チャンバ2の入口1に向けて提供される。リアクタと基板を所望の温度まで加熱するために、加熱システムが提供される。最初に、反応チャンバの内部が、好適にはキャリアガス流を既にチャンバに供給されながら、堆積温度まで加熱される。好適なバルブ手段(図示せず)が、チャンバへのガス流の制御に提供される。堆積温度に到達した場合、前駆体ガスが加えられ、前駆体とキャリアガスがチャンバに供給され、基板3の上でGe層の堆積が起きる。ガスは、出口4を通ってチャンバから排出される。ここで記載された結果が得られたテストでは、流速が20l/分のHキャリアガスが供給された。それぞれの供給部分での、キャリアガスと前駆体ガスの流速は、以下の式により、混合物中の前駆体ガスの分圧を決定する。
【0019】

【0020】
ここで、Ppは前駆体ガスの分圧、FRpは(前駆体の希釈を考慮した)前駆体ガスの流速、ΣFはチャンバ中の全ての流れの合計(全ての前駆体ガス+キャリアガス)、Pmはリアクタ中の全圧力である。全圧力は、大気圧でも良く、大気圧より低くても良い。大気圧における本方法の適用は、同じ流速に対して、より高い分圧が得られるという長所を提供する。
【0021】
図2において、Si上でのGeの成長速度が、異なる堆積温度において、Ge分圧の関数として示される。線10は、選択成長を示すテスト結果、即ち線10の左側ではSiO上で核成長が起きないと、非選択的成長を示すテスト結果、即ち線10の右側ではSiO上で核成長が起きるとの間の分離を示す。
【0022】
275℃より低い温度において、Ge成長は、SiO上と同様にSi上においても、実行できないくらい低くなる。約500℃より高くでは、全ての場合で成長は選択的であり、即ち、Si上では核生成するが、SiO上では核生成しない。約275℃と500℃との間では、非選択的なGe成長がGeの分圧に依存して得られる。約285℃から始める場合には分圧は少なくとも10mTorrでなければならないが、275℃〜500℃の温度範囲の下端では、より高い分圧(少なくとも20mTorr)が必要とされる。最大の分圧は、実際の雰囲気(例えば、十分な量のキャリアガス)により決定され、実際の装置や使用される材料の関数として異なる。それらの結果は、約275℃と約500℃との間に堆積温度に関するウインドウがあり、高次のGe前駆体の分圧が十分に高いという条件で、その中では純粋なGeの連続層がCVDによりSiO上に直接堆積できることを立証する。本発明は、また、本発明の方法により作製された基板を含む半導体デバイスに関する。
【0023】
本発明の方法は、特に、チタン窒化物(TiN)上への連続したGe層の堆積に適用できる。発明者らは、TiNの上において、前駆体としてゲルマン(GeH)を使用することにより、Siシード層を適用した場合でさえも、Geの堆積が不可能なことを見出した。約100nmの膜厚のTiN層を有するSi基板上に、CVDでGeを堆積させるテストが行われた。最初のテストでは、TiN層上にGeが直接堆積された。2つの更なるテストでは、約40nmの膜厚のSiシード層の堆積後にGeが直接堆積され、他のテストでは、約85nmの膜厚のSiシード層の堆積後にGeが直接堆積された。それぞれの場合、ピラー(pillar)やアイランドの形成によりGe成長が起き、連続した層ではなかった。これは、図3aと図3bに示される。図3aは、TiN層21、およびTiN上に直接GeHから堆積されたGe層22を備えた、Si基板20を示す。Ge層は非常に不正常であり連続的でないことが分かる。図3bは、86nmのSiシード層23の効果を示す。Ge形成は、まだピラーまたはアイランド24の形状である。理論に縛られることは望まないが、Si/Ge界面における金属汚染によりそのような問題がおきていると信じられる。同様の問題は、他の型の金属、金属窒化物、または金属炭化物の表面上への堆積において予想される。
【0024】
比較のテストでは、98.2nmの膜厚のTiN層を備えたSi基板に対して、300℃のGe、キャリアガスH、全圧力が大気圧、およびGeの分圧が221mTorrを用いて、図1の模式的に示される装置中で本発明の方法が適用された。図4で示されたように、結果は、TiN層21を覆い、これと接続された多結晶Geの連続層25となった。本発明は、また、このように、基板表面の少なくとも一部の上にTiN層を含み、このTiN層を覆いこれと接続されたGe層を有する半導体基板に関する。本発明は、また、そのような基板を含む半導体デバイスに関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面上に連続したゲルマニウム層を堆積する方法であって、
基板を提供する工程と、
化学気相堆積(CVD)により表面上に層を提供するのに適した反応チャンバ中に、基板を導入する工程と、
チャンバ中に、ゲルマニウム前駆体ガスと非反応性キャリアガスとを含むガス混合物を導入する工程であって、ゲルマニウム前駆体ガスは、GeHに比較して高次のゲルマン前駆体である工程と、
基板表面を覆い、これと接続する連続したゲルマニウム層をCVDで堆積する工程と、含む方法。
【請求項2】
ゲルマニウム前駆体は、GeまたはGeである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガス混合物は、大気圧である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
堆積工程は、約275℃と約500℃との間の堆積温度で行われ、ガス混合物中のゲルマニウム前駆体の分圧は、堆積温度が約275℃と約285℃との間の場合は少なくとも20mTorrであり、堆積温度が約285℃より高く約500℃までの場合は少なくとも10mTorrである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
基板表面は、
high−k誘電体材料、
シリコン酸化物、
Si窒化物またはSi炭化物、
金属または金属窒化物または金属炭化物、
からなるグループの材料からなる表面領域を少なくとも含む請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
基板表面は、チタン窒化物からなる表面領域を少なくとも含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
基板表面は、SiOからなる表面領域を少なくとも含む請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ガス混合物は、更にドーピング元素を含むガスを含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ドーピング元素を含むガスは、BまたはAsHまたはPHである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
キャリアガスは、HまたはNである請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
基板表面の少なくとも一部の上のTiN層と、TiN層を覆いTiN層と接続する連続したGe層とを含む基板。
【請求項12】
請求項11にかかる基板を含む半導体デバイス。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかの方法により作製された基板を含む半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−146981(P2012−146981A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−1750(P2012−1750)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】