説明

コイル検査システムおよびコイル検査方法

【課題】大電流による検査が可能であり,製造効率が良いコイル検査システムおよびコイル検査方法を提供すること。
【解決手段】コイル検査システム100は,かしめ治具21,22と,抵抗測定器31と,データ処理計算機5とを有している。かしめ治具21,22は,機械かしめ装置2に組み付けられた部品であり,コイル端部をかしめる機能に加え,電極としての機能を有している。そして,コイル検査システム100では,かしめ治具21,22がコイル端をかしめた後,かしめた状態のままかしめ治具21,22間の電気抵抗を測定する。この電気抵抗を基にかしめ状態の判断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,コイルの端部をかしめ,そのコイルの通電状態を検査するコイル検査システムおよびコイル検査方法に関する。さらに詳細には,コイルの通電状態を精細に検査するとともに検査工程の簡略化が図られたコイル検査システムおよびコイル検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,低公害等の観点からハイブリッド自動車,電気自動車等が注目されている。ハイブリッド自動車等に搭載される車両駆動用モータでは,カセットコイルを利用した集中巻モータが提案されている。カセットコイルを利用した集中巻モータは,分布巻モータと比較して,作業者の熟練度に左右されない,品質のばらつきが少ない等の利点がある。
【0003】
また,ハイブリッド自動車等に搭載される車両駆動用モータにおいては,大電流かつ高電圧で高精度の性能特性が要求されることから,そのモータの構成部品について種々の性能検査が行われている(例えば,特許文献1)。
【0004】
カセットコイルを利用した集中巻モータでは,例えば図10に示す手順によってステータの作製および検査が行われる。まず,巻線装置によって導線をコイルボビンに巻き付け,カセットコイルを形成する(S01)。次に,カセットコイル単体の検査を行う(S02)。次に,良品のカセットコイルをステータコアに組み付ける(S03)。次に,コイル端をバスバーの端子とともにかしめて繋ぎ合わせる(S04)。ここでいう「バスバー」は,カセットコイル間を電気的につなぎ合わせるための導電材であり,ステータコアに備えられている。その後,隣り合うカセットコイル間を絶縁するためのインシュレータを組み付け,インシュレータが組み付けられた状態でモータの性能検査を行う(S05)。このとき,コイル端とバスバーの端子との接合状態(以下,「かしめ状態」とする)も抵抗測定器によって検査される。
【特許文献1】特開2005−121442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来のコイル検査には,次のような問題があった。すなわち,コイル単体の検査(S02)やかしめ状態の検査(S05)では,通常,ワニ口クリップを利用して被検体と検査装置とを電気的に接続している。そのため,接触面積が小さく,検査電流も小さい。具体的に,市販されている抵抗測定器では,1〜2A程度の小電流しか流すことができない。一方で,ハイブリッド自動車等に搭載される車両駆動用モータにおいては,100A以上の大電流が流れる。そのため,実機に近い状態を再現できていない。
【0006】
さらには,検査電流が小さいと,精細な不良判断が困難になる。特に,かしめ状態の検査では,電気抵抗の微小なばらつきを基に良否を判断する。そのため,検査電流が小さいと,電気抵抗の変動を認識できない。
【0007】
また,従来の作製方法では,検査−かしめ−検査と検査工程が多く,検査の度にワークを移動させる必要がある。そのため,製造サイクルが長くなってしまう。従って,生産性が悪く,結果としてコストアップを招いている。
【0008】
本発明は,前記した従来のコイル検査方法が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,大電流による検査が可能であり,製造効率が良いコイル検査システムおよびコイル検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされたコイル検査システムは,コイルの端部をコイルの圧着端子と併せてかしめ,両者を繋ぎ合わせるかしめ装置を備え,そのコイルの通電状態を検査するコイル検査システムであって,かしめ装置に付設され,コイルの端部をかしめるかしめ型を有し,そのかしめ型が通電可能な電極である第1かしめ治具と,かしめ装置に付設され,コイルの端部をかしめるかしめ型を有し,そのかしめ型が通電可能な電極である第2かしめ治具と,第1かしめ治具および第2かしめ治具と電気的に接続され,第1かしめ治具がコイルの一方の端部をかしめ,第2かしめ治具がコイルの他方の端部をかしめた状態でそのコイルの通電状態を検査する通電検査装置とを備えることを特徴としている。
【0010】
また,本発明のコイル検査方法は,コイルの端部をコイルの圧着端子と併せてかしめ,両者を繋ぎ合わせるかしめ装置を備え,そのコイルの通電状態を検査するコイル検査方法であって,コイルの端部をかしめるかしめ型が通電可能な電極である第1かしめ治具および第2かしめ治具により,第1かしめ治具が一方のコイルの端部をかしめ,第2かしめ治具が他方のコイルの端部をかしめるかしめステップと,第1かしめ治具および第2かしめ治具を通電検査装置と電気的に接続し,第1かしめ治具および第2かしめ治具がそれぞれコイルの端部をかしめた状態でそのコイルの通電状態を検査する通電検査ステップとを含むことを特徴としている。
【0011】
本発明のコイル検査システムでは,コイルの端部(コイル端)をコイルの圧着端子と併せてかしめるかしめ機能と電極としての電極機能とを兼ねる第1かしめ治具および第2かしめ治具が付設されたかしめ装置を備える。そして,第1かしめ治具によりコイルの一方の端部をかしめ,第2かしめ治具によりコイルの他方の端部をかしめる(かしめステップ)。すなわち,両かしめ治具によってコイルの両端部をそれぞれかしめる。なお,第1かしめ治具と第2かしめ治具とによるかしめは同時に行うと製造効率が良い。
【0012】
そして,第1かしめ治具および第2かしめ治具がそれぞれコイルの端部をかしめた状態で,両かしめ治具と電気的に接続する通電検査装置によりコイルの通電状態を検査する(通電検査ステップ)。具体的に,かしめ状態を検査する場合には,通電検査装置により所定の電流をコイルに供給する。検査電流は,電極機能を有する両かしめ治具を介してコイルに供給される。さらに,電流の供給とともに,第1かしめ治具と第2かしめ治具との間の電圧を検出する。この電圧値を基に,両かしめ治具間の電気抵抗を算出する。この電気抵抗を基に,コイル端と圧着端子とのかしめ状態を判断する。これにより,コイル端のかしめを行った後に,ワークを移動させることなくかしめ状態の検査を行うことができる。そのため,製造効率が良い。
【0013】
また,かしめ状態の検査時には,かしめ治具のかしめ型がコイルの端部をかしめた状態である。そのため,ワニ口クリップと比較して,電極と被検体(コイル端と圧着端子との接合箇所)との接触面積が大きい。よって,コイルに100A以上の大電流を供給することができ,実機に近い状態が再現できる。また,大電流であるため,微小な電気抵抗の変動を見つけることができる。よって,より確実で精細な検査を行うことができる。
【0014】
また,本発明のコイル検査システムは,かしめ状態のほか,コイルの絶縁状態も検査することができる。例えば,第1かしめ治具および第2かしめ治具を絶縁検査装置に接続し,両かしめ治具がそれぞれコイルの端部をかしめた状態で所定の電圧を印加し,そのコイルに流れた電流を検出する(絶縁検査ステップ)。あるいは,第1かしめ治具および第2かしめ治具がそれぞれコイルの端部をかしめた状態でインパルス電圧を印加し,第1かしめ治具と第2かしめ治具と間の電圧波形を検出する。これにより,コイルの部分放電やレイヤショートを検出することができる。すなわち,かしめ工程中に,コイルの絶縁状態の検査(つまり,コイル単体の検査)を行うことができる。そのため,コイル単体の検査とかしめ状態の検査との間でワークを移動する手間がなく,製造効率が良い。
【0015】
また,本発明のコイル検査システムは,コイルの他の部材との部分放電も検査することができる。例えば,被検体がステータコアに装着されたカセットコイルであれば,絶縁検査装置を第1かしめ治具とステータコアとにそれぞれ電気的に接続し,第1かしめ治具がコイルの端部をかしめた状態で所定の電圧を印加し,ステータコアに流れた電流を検出する。これにより,コイル−ステータコア間の部分放電を検出することができる。
【0016】
さらには,本発明のコイル検査システムは,検査項目に応じて被検体(カセットコイルやステータコア等)と検査装置(通電検査装置や絶縁検査装置等)との電気的な接続を切り替える切替装置を備えることとするとよりよい。
【0017】
すなわち,リレー等の切替装置によって,検査項目ごとに検査装置と被検体との接続を切り替える。例えば,コイルのかしめ状態を検査する場合には,抵抗測定器と各かしめ治具とを電気的に接続する。また,コイルのレイヤショートを検査する場合には,インパルス試験器や絶縁耐圧試験器を各かしめ治具に接続する。これにより,コイルのかしめとともに複数の項目の検査を容易に切り替えることができ,製造効率がより一層向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,かしめ治具が電極としての機能を兼ねることにより,大電流を供給することが可能になる。また,かしめ治具がコイルをかしめた状態で電流を流すことができるため,ワークを移動させることなくかしめ状態の検査を行うことができる。よって,大電流による検査が可能であり,製造効率が良いコイル検査システムおよびコイル検査方法が実現されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお,本実施の形態は,車両駆動用モータに利用されるカセットコイルのコイル検査システムに本発明を適用したものである。
【0020】
まず,カセットコイルおよびカセットコイルを装着したステータの構成例について簡単に説明する。図1は,カセットコイルの外観を示す斜視図である。図2は,ステータコアの外観を示す斜視図である。そして,図3は,カセットコイルをステータコアに装着した状態の外観を示す斜視図である。
【0021】
カセットコイル10は,図1に示すように,コイルボビン101に導線102を巻装してコイルを形成したものである。導線102は,単線であってもペア線であってもよい。コイルボビン101は,導線102が巻装される断面矩形の筒体104と,筒体104の両端に位置する一対の鍔部105,106とを有している。コイルボビン101および鍔部105,106は,絶縁性を有する材料からなり,例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)が適用可能である。
【0022】
カセットコイル10は,筒体104内の貫通孔109からステータコア11のティース111に嵌め込まれることでステータコア11に装着される(図2,図3参照)。また,カセットコイル10は,ステータコア11に装着された際に,鍔部105がステータコアの外径側に,鍔部106が内径側になるように配置される。すなわち,鍔部106がロータと対向するように配置される。
【0023】
また,導線102の巻き始め部分であるコイル端102aおよび巻き終わり部分であるコイル端102bは,鍔部105から取り出されている。そして,鍔部105は両コイル端を非接触で把持している。
【0024】
ステータコア11は,図2に示すように,円環状であり,内側にティース111およびスロット112を有している。さらに,ステータコア11の上面には,カセットコイル10が装着された際に,カセットコイル10,10間を電気的に接続するためのバスバーモジュール113が付設されている。バスバーモジュール113からは,コイル端102aあるいはコイル端102bと電気的に接続するための端子114が上方に取り出されている。
【0025】
カセットコイル10は,図3に示すように,ステータコア11に組み付けられる。具体的には,ステータコア11のティース111にカセットコイル10が挿し込まれる。そして,カセットコイル10のコイル端102a,102bがそれぞれバスバーモジュール113の端子114とかしめられて接続される。さらに,カセットコイル10,10間を絶縁するために,絶縁紙(インシュレータ)12がカセットコイル10,10間に配設される。このように構成されたステータの中心に,ロータを配置することにより集中巻モータが構成される。
【0026】
続いて,コイル検査システムについて説明する。本形態のコイル検査システムでは,ステータコアに装着されたカセットコイルを被検体(検査ワーク)とする。
【0027】
[第1の形態]
第1の形態のコイル検査システム100は,図4に示すように,機械かしめ装置2と,抵抗測定器31と,データ処理計算機5とを有している。この他,検査ワーク1の温度を測定する温度測定器や,試験室内の温度および湿度を測定する温湿測定器等を付設してもよい。検査ワーク1は,例えば図5に示すように結線されるカセットコイルの1つである。なお,コイル数や相数は,モータの仕様によって異なることは言うまでもない。本形態の導線はペア線であるが,単線であってもよい。
【0028】
機械かしめ装置2は,コイル端102a,102bとバスバーモジュールの端子114とを機械的にかしめて繋ぎ合わせるものであり,1対のかしめ治具21,22を備えている。なお,機械かしめ装置2の機構やかしめ方法は一般的なものと同様であり,詳細な説明および図面は省略する。
【0029】
また,かしめ治具21は,図6に示すように固定かしめ型23と可動かしめ型24とが1対となっている。そして,かしめ治具21では,固定かしめ型23と可動かしめ型24との間にコイル端102とバスバーモジュールの端子114とを挟み,可動かしめ型24を固定かしめ型23側に移動させる(図6中の(A)から(B))。可動かしめ型24の移動中,バスバーモジュールの端子114が可動かしめ型24の内壁241に当たる。その後,内壁241の形状に沿ってバスバーモジュールの端子114が押し曲げられる。そして,最終的には,バスバーモジュールの端子114がコイル端102を取り囲むように押し曲げられ,カセットコイルのコイル端102とバスバーモジュールの端子114とが機械的にかしめられ,両者が電気的にも機械的にも繋ぎ合わせられる。
【0030】
また,かしめ治具21の固定かしめ型23は導電部材(例えば,タングステン)であり,電極としての機能を兼ねる。そのため,カセットコイルのコイル端をかしめる際に,かしめ治具21を介してコイルに所定の電流を流すあるいは所定の電圧を印加することができる。なお,かしめ治具22も同様の構成になっている。
【0031】
抵抗測定器31は,正極端子をかしめ治具21に接続し,負極端子をかしめ治具22に接続する。すなわち,抵抗測定器31は,かしめ治具21,22を介して検査ワーク1のコイルと電気的に接続される。そして,抵抗測定器31は,検査ワーク1のコイルに対して定電流を流し,そのコイルの電気抵抗を取得する。具体的に,抵抗測定器31は,被検体に応じて10A〜100Aの大電流を流す。そして,かしめ治具21,22間(カセットコイルの両端間)の電圧値を取得し,その電圧値を基にかしめ治具21,22間(カセットコイルの両端間)の電気抵抗を取得する。
【0032】
データ処理計算機5は,抵抗測定器31にて得られた電気抵抗を基に,検査ワーク1のかしめ状態の良否判定を行うものである。判定結果は,データ処理計算機5に付設されたモニタ51やプリンタ52等の出力手段に出力される。検査者は,例えばモニタ51を通じて試験結果を知ることができる。さらに,検査者は,キーボードやマウス等の入力手段により出力内容を加工することができる。
【0033】
続いて,コイル検査システム100による検査方法の一例について説明する。本検査では,抵抗測定器31によるかしめ状態の検査を行う。以下,ステータの作製および検査の手順について,図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
まず,巻線装置によって導線をコイルボビンに巻き付け,カセットコイルを形成する(S11)。次に,カセットコイル単体の検査を行う(S12)。次に,良品のカセットコイルをステータコアに組み付ける(S13)。
【0035】
次に,かしめ治具21およびかしめ治具22により,コイル端102a,102bとバスバーモジュールの端子114とをかしめて繋ぎ合わせる(S14)。すなわち,図6に示したように,各かしめ治具の固定かしめ型23と可動かしめ型24との間にコイル端102とバスバーモジュールの端子114とを挟み,荷重をかけてそれらを機械的にかしめる。かしめ治具21およびかしめ治具22によるかしめは同時に行ってもよいし,別々に行ってもよい。同時に行うと,製造効率がよい。なお,かしめが完了した後であっても,かしめ型が圧着した状態を維持する。
【0036】
さらに,かしめ治具21およびかしめ治具22のかしめ型が圧着した状態のまま,コイルのかしめ状態の検査を行う。この検査の際,コイル端102a,102bとバスバーモジュールの端子114との接合部分(以下,「かしめ部分」とする)は,それぞれかしめ治具21およびかしめ治具22によってかしめ型に圧着された状態のままである。そのため,電極である各かしめ型との接触面積が大きい。よって,検査ワーク1に対して,大電流を流すことができる。
【0037】
具体的に,かしめ状態の検査を行うには,かしめ治具21,22と抵抗測定器31とを接続し,検査ワーク1に対して定電流を供給する。そして,かしめ治具21,22間の電圧を取得するとともに電気抵抗を算出し,データ処理計算機5にて電気抵抗の良否を判断する。
【0038】
かしめ状態の検査(S14)後は,隣り合うカセットコイル間を絶縁するためのインシュレータを組み付け,インシュレータが組み付けられた状態でモータの性能検査を行う(S15)。なお,かしめ状態についてはS14の処理で行われているため,S15の処理でかしめ状態の検査は行わなくてもよい。
【0039】
以上詳細に説明したように本形態のコイル検査システム100では,コイル端部をかしめる機能と電極としての機能とを有する2つのかしめ治具21,22を備えることとしている。そして,かしめ治具21によりコイルの一方の端部をかしめ,かしめ治具22によりコイルの他方の端部をかしめる。すなわち,両かしめ治具によってコイルの両端部を同時にかしめる。そして,かしめ治具21およびかしめ治具22のかしめ型がコイル端部を圧着した状態で,かしめ治具21およびかしめ治具22に電気的に接続された抵抗測定器31により,定電流をコイルに流す。さらに,抵抗測定器31では,電流の供給とともに,かしめ治具21,22間の電圧を検出する。この電圧値を基に電気抵抗を算出し,データ処理計算機5によりかしめ状態,すなわち端子接合不良を判断する。これにより,かしめ治具21,22にてコイル端102a,102bとバスバーモジュールの端子114とを繋ぎ合わせた後,検査ワーク1を移動させることなくかしめ状態の検査を行うことができる。そのため,製造効率が良い。
【0040】
また,かしめ治具21およびかしめ治具22のかしめ型を電極として利用しているため,ワニ口クリップと比較して被検体との接触面積が大きい。よって,コイルに100A以上の大電流を供給することができる。そのため,実機に近い状態を再現できる。また,大電流であるため,微小な電気抵抗の変動を見つけることができる。よって,より精細な検査を行うことができる。従って,大電流による検査が可能であり,製造効率が良いコイル検査システムおよびコイル検査方法が実現している。
【0041】
[第2の形態]
第2の形態のコイル検査システム200は,図8に示すように,機械かしめ装置2と,抵抗測定器31と,インパルス試験器32と,絶縁試験器33と,データ処理計算機5と,切替ボックス6とを有している。検査ワーク1は,ステータコアに装着されたカセットコイルである。本形態のコイル検査システム200は,複数台の検査装置が設置され,検査項目に応じてそれら検査装置とかしめ治具21,22との接続を切り替える点が第1の形態と異なる。
【0042】
インパルス試験器32は,正極端子をかしめ治具21に接続し,負極端子をかしめ治具22に接続し,検査ワーク1(かしめ治具21,22間)に対してインパルス電圧を印加し,その後の電圧の減衰振動波形や電流値を取得するものである。例えば,5kVの電圧を印加する。絶縁試験器33は,正極端子をかしめ治具21に接続し,負極端子をかしめ治具22に接続し,検査ワーク1に所定の電圧を印加してコイルに流れた電流を取得するものである。各検査装置は,切替ボックス6を介し,かしめ治具21,22と電気的に接続される。
【0043】
切替ボックス6は,検査ワーク1の検査項目に応じて被検体と各検査装置との電気的な接続の切替えを行うものである。具体的に,かしめ状態を検査する際には,かしめ治具21,22と抵抗測定器31とを接続する。コイル単体を検査する際には,かしめ治具21,22とインパルス試験器32とを接続する。あるいは,かしめ治具21,22と絶縁試験器33とを接続する。
【0044】
なお,絶縁試験器33は,正極端子をかしめ治具21に接続し,負極端子をステータコア11に接続し,かしめ治具21とステータコアとの間に所定の電圧を印加してステータコアに流れた電流を取得してもよい。これにより,コイル−ステータコア間の絶縁検査を行うことができる。また,コイル単体の絶縁検査と,コイル−ステータコア間の絶縁検査とが同じ検査装置で実施できないのであれば,絶縁試験器を別々に設置してもよい。その場合であっても,切替ボックス6による接続先の切替えにより,コイル単体の絶縁検査と,コイル−ステータコア間の絶縁検査とを別に行うことができる。
【0045】
続いて,コイル検査システム200による検査方法の一例について説明する。本検査では,抵抗測定器31によるかしめ状態と,インパルス試験機32によるレイヤショートとを検査する。以下,ステータの作製および検査の手順について,図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0046】
まず,巻線装置によって導線をコイルボビンに巻き付ける(S21)。次に,カセットコイルをステータコアに組み付ける(S22)。次に,かしめ治具21およびかしめ治具22により,コイル端102a,102bとバスバーモジュールの端子114とをかしめて繋ぎ合わせる(S23)。
【0047】
さらに,かしめ治具21およびかしめ治具22のかしめ型が圧着した状態のまま,コイルのかしめ状態の検査を行う。このとき,切替ボックス6にてかしめ治具21,22と抵抗測定器31とを接続し,検査ワーク1に対して所定の定電流を供給する。そして,かしめ治具21,22間の電圧を取得し,データ処理計算機5にて電気抵抗値の良否を判断する。
【0048】
さらに,かしめ治具21およびかしめ治具22のかしめ型が圧着した状態のまま,コイルの絶縁状態の検査を行う。このとき,切替ボックス6にてかしめ治具21,22とインパルス試験器32とを接続し,検査ワーク1に対してインパルス電圧を印加する。そして,その後の電圧の減衰振動波形を取得し,データ処理計算機5にてコイルの絶縁良否を判断する。なお,コイルの絶縁検査とかしめ状態の検査とは,どちらを先に行ってもよい。
【0049】
なお,かしめ治具21およびかしめ治具22のかしめ型が圧着した状態のまま,切替ボックス6にてかしめ治具21,22と絶縁試験器33とを接続してもよい。これにより,コイルの絶縁耐圧検査や部分放電検査を行うことができる。
【0050】
検査(S23)後は,隣り合うカセットコイル間を絶縁するためのインシュレータを組み付け,インシュレータが組み付けられた状態でモータ性能検査を行う(S24)。なお,かしめ状態についてはS23の処理で行われるため,S24の処理でかしめ状態の検査は行わなくてもよい。また,コイル単体の絶縁検査についてもS23の処理で行われるため,あらかじめコイル単体の検査を行わなくてもよい。
【0051】
以上詳細に説明したように本形態のコイル検査システム100では,抵抗測定器31のほか,インパルス試験器32や絶縁試験器33を設けることとしている。そして,リレー等の切替ボックス6により,かしめ治具21およびかしめ治具22と各検査装置との電気的な接続を切り替えることとしている。これにより,かしめ工程中に,かしめ状態の検査の他,レイヤショート検査や絶縁耐圧検査等のコイル単体の検査を行うことができる。そのため,コイル単体の検査とかしめ状態の検査との間で検査ワーク1を移動する手間がなく,製造効率が良い。
【0052】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本実施の形態では,機械かしめ装置によってコイル端をかしめているが,これに限るものではない。すなわち,通電かしめ装置であってもよい。
【0053】
また,本実施の形態では,車両駆動用モータについて検査を行っているが,これに限るものではない。すなわち,家電製品用モータの検査に本発明を適用してもよい。
【0054】
また,本実施の形態では,カセットコイルを被検体としているが,これに限るものではない。例えば,分布巻コイルであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】カセットコイルの概略構成を示す図である。
【図2】ステータの概略構成を示す図である。
【図3】カセットコイルを装着したステータの概略構成を示す図である。
【図4】第1の形態にかかるコイル検査システムの概略構成を示す図である。
【図5】検査ワークの結線状態を示す図である。
【図6】かしめ治具の概略構成を示す図である。
【図7】第1の形態におけるステータの作製および検査の手順を示すフローチャートである。
【図8】第2の形態にかかるコイル検査システムの概略構成を示す図である。
【図9】第2の形態におけるステータの作製および検査の手順を示すフローチャートである。
【図10】従来の形態におけるステータの作製および検査の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 検査ワーク
2 機械かしめ装置(かしめ装置)
21 かしめ治具(第1かしめ治具)
22 かしめ治具(第2かしめ治具)
31 抵抗測定器(通電検査装置)
32 インパルス試験器(絶縁検査装置)
33 絶縁試験器(絶縁検査装置)
5 データ処理計算機
6 切替ボックス(切替装置)
100 コイル検査システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの端部をコイルの圧着端子と併せてかしめ,両者を繋ぎ合わせるかしめ装置を備え,そのコイルの通電状態を検査するコイル検査システムにおいて,
前記かしめ装置に付設され,コイルの端部をかしめるかしめ型を有し,そのかしめ型が通電可能な電極である第1かしめ治具と,
前記かしめ装置に付設され,コイルの端部をかしめるかしめ型を有し,そのかしめ型が通電可能な電極である第2かしめ治具と,
前記第1かしめ治具および前記第2かしめ治具と電気的に接続され,前記第1かしめ治具がコイルの一方の端部をかしめ,前記第2かしめ治具がコイルの他方の端部をかしめた状態でそのコイルの通電状態を検査する通電検査装置とを備えることを特徴とするコイル検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載するコイル検査システムにおいて,
前記通電検査装置は,前記第1かしめ治具および前記第2かしめ治具がそれぞれコイルの端部をかしめた状態で所定の電流を供給し,前記第1かしめ治具と前記第2かしめ治具と間の電圧を検出することを特徴とするコイル検査システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するコイル検査システムにおいて,
前記第1かしめ治具および前記第2かしめ治具と電気的に接続され,前記第1かしめ治具および前記第2かしめ治具がそれぞれコイルの端部をかしめた状態で所定の電圧を印加し,そのコイルに流れた電流あるいは電圧波形を検出する絶縁検査装置を備えることを特徴とするコイル検査システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載するコイル検査システムにおいて,
被検体と検査装置との電気的な接続を検査項目に応じて切り替える切替装置を備えることを特徴とするコイル検査システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載するコイル検査システムにおいて,
前記コイルは,モータのステータコアに装着されたカセットコイルであることを特徴とするコイル検査システム。
【請求項6】
コイルの端部をコイルの圧着端子と併せてかしめ,両者を繋ぎ合わせるかしめ装置を備え,そのコイルの通電状態を検査するコイル検査方法において,
コイルの端部をかしめるかしめ型が通電可能な電極である第1かしめ治具および第2かしめ治具により,前記第1かしめ治具が一方のコイルの端部をかしめ,前記第2かしめ治具が他方のコイルの端部をかしめるかしめステップと,
前記第1かしめ治具および前記第2かしめ治具を通電検査装置と電気的に接続し,前記第1かしめ治具および前記第2かしめ治具がそれぞれコイルの端部をかしめた状態でそのコイルの通電状態を検査する通電検査ステップとを含むことを特徴とするコイル検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載するコイル検査方法において,
前記通電検査ステップでは,前記第1かしめ治具および前記第2かしめ治具にてコイルの両端部をそれぞれかしめた状態で所定の電流を供給し,前記第1かしめ治具と前記第2かしめ治具と間の電圧を検出し,その電圧を基に通電状態の良否を判断することを特徴とするコイル検査方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載するコイル検査方法において,
前記第1かしめ治具および前記第2かしめ治具を絶縁検査装置と電気的に接続し,前記第1かしめ治具および前記第2かしめ治具にてコイルの両端部をそれぞれかしめた状態で前記第1かしめ治具と前記第2かしめ治具と間に所定の電圧を印加し,そのコイルに流れた電流あるいは電圧波形を検出し,検出したデータを基にコイルの絶縁状態を検査する絶縁検査ステップを含むことを特徴とするコイル検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−192624(P2007−192624A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9943(P2006−9943)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】