説明

コエンザイムQ10含有組成物

【課題】 コエンザイムQ10は生体にとって必須の成分であり、これを飲食品・化粧品・医薬品・飼料に適用することは大きな需要がある。その利用を妨げているのは水への分散性が悪いこと、および結晶化しやすいことが挙げられる。本発明はコエンザイムQ10を水に容易に均一分散させることと、結晶化を抑制すること、この2点を同時に解決したコエンザイムQ10組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 コエンザイムQ10と、ポリグリセリンの水酸基価が1,200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸がエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保存安定性が高く、かつ水に容易に均一分散するコエンザイムQ10含有組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コエンザイムQ10(以下、CoQ10と言う。)はユビデカレノン、ユビキノン−10等とも呼ばれ、その特異な生理作用により代謝性強心剤等として医薬品に利用されている。また、国内においては食薬区分の見直しに伴い食品用途への利用が可能になり、健康食品分野での応用が期待されている。特に近年のCoQ10の研究成果は目覚しく、CoQ10の抗酸化作用に由来する心筋保護作用、発ガン予防、老化防止作用、血中LDL酸化抑制の他、血圧上昇抑制、虚血心筋での酸素利用効率の改善、心筋ミトコンドリアのATP合成賦活、心機能改善等が報告されている。しかしながら、CoQ10は常温において黄色〜橙色の固体で、水、アルコールにほとんど溶解せず、また油にも溶けにくいため、食品用途での利用において汎用性が極めて低く、特に飲料への応用には大きな制限を受けるという欠点があった。
【0003】
水に分散させることを目的としたCoQ10の製剤化方法としては、CoQ10、乳化剤、多価アルコールおよび水を混合後、高圧処理することによる脂溶性物質の水性液剤の調製方法(例えば、特許文献1参照。)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを用いて可溶化する方法(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。しかし、前者の方法によって調製される水性液剤は、1000kg/cmという超高圧処理により、一時的にCoQ10を水性液剤とし得るが、安定性が悪く経時的に白濁、またはCoQ10の結晶が析出する。また、後者の方法では、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを使用しており、このようなエチレンオキサイド系界面活性剤は、その製造工程上、合成反応中に毒性の高い副生成物が生成することから食品用途へ利用するには好ましくない。
また、CoQ10の生体吸収率を高めた製剤として、熱溶解したCoQ10を加熱した食用油に加えるか、またはCoQ10を食用油に加えた後に加熱溶解し、次いで冷却して得られる、CoQ10が結晶形態で分散したCoQ10と食用油との混合物が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、本製剤は、直接、水系食品に添加することはできない。
高濃度のCoQ10を含有する乳化組成物として、いくつかの報告が提案されている(例えば、特許文献4、5、6、7参照。)。
順に説明するとCoQ10が溶解した油相部と多価アルコール性相部を混合して乳化した組成物、CoQ10と2種のポリグリセリン脂肪酸エステルと可溶化助剤を用いて平均粒子系を小さくした組成物、CoQ10とモノグリセリン脂肪酸エステルと縮合リシノレイン酸エステルを含有することを特徴とする組成物。そしてCoQ10と中鎖脂肪酸トリグリセライドおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする組成物等がある。いずれの提案にしても高濃度の組成物得るために2液相を混合したり、2〜3種の乳化剤や可溶化助剤を使用し組成物を得るものであった。
また、CoQ10の融点は約50℃であり結晶化しやすいことも、その調製方法の困難さの一因となっている。CoQ10を医薬品・食品・化粧品への適用した場合、製品中で結晶化が進行すると内容の不均一化、生体への吸収性阻害、食感の悪化、見た目の悪化を引き起こし製品価値を大きく低下させてしまうこととなる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−212066号公報 (第2〜11頁)
【特許文献2】特表2001−504343号公報 (第2〜11頁)
【特許文献3】特開2003−125734号公報 (第2〜13頁)
【特許文献4】特開2003−238396号公報 (第2〜18頁)
【特許文献5】特開2004−196781号公報 (第2〜18頁)
【特許文献6】特開2005−43号公報 (第2〜18頁)
【特許文献7】特開2005−47851号公報 (第2〜18頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先に述べたように、CoQ10は生体にとって必須の成分であり、これを飲食品・化粧品・医薬品・飼料に適用することは大きな需要がある。その利用を妨げているのは水への分散性が悪いこと、および結晶化しやすいことが挙げられる。
従って、本発明はCoQ10を水に容易に均一分散させることと、結晶化を抑制すること、この2点を同時に解決したCoQ10組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、CoQ10の結晶化の抑制効果を持ち、更に乳化・可溶化の効果をもった特殊なポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる事によって、飲食品、化粧品、医薬品および飼料に添加する際に必要とされる耐酸性、耐熱性、耐塩性が優れ、長期保存においても安定な乳化・可溶化の状態を保ち、かつ生理効果が期待できるだけのCoQ10含量を含むCoQ10含有組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、これらの知見に基づき完成されたのものであって、その要旨はCoQ10と水酸基価が1,200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステルを必須成分として含有してなるCoQ10含有組成物を提供するものである。
【0008】
また、多価アルコール中油型(O/D型)のCoQ10含有組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によりCoQ10を水に容易にかつ安定に分散させることが可能となり、もって価値の高い飲食品・化粧品・医薬品・飼料の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、詳細に本発明を説明する。
【0011】
CoQ10とは、10個のイソプレン単位からなるイソプレノイド鎖を側鎖として有するベンゾキノン誘導体であり、広く自然界に分布する。動植物等においては、ミトコンドリア内で酸化的リン酸化の電子伝達系に関与する。本発明に使用されるCoQ10としては、生体、例えば、哺乳動物、中でもヒトが摂取可能なものであれば特に限定されるものではない。該CoQ10としては、例えば、一般的に用いられている工業的合成品、発酵法により得られる酵母抽出品等の菌体抽出品、イワシ、ブタ、ウシ、ニワトリ、ブロッコリー、ナス、ニンニク、キャベツ等の動植物からの抽出品等が挙げられ、それぞれ単独でもしくは2種以上を混合して使用することができる。好ましくは、製品イメージの点または製造効率の観点より発酵法により得られる酵母抽出品を使用する方がよい。
なお、自然界には1〜12個のイソプレン単位からなるイソプレノイド鎖を側鎖として有するもの(CoQ1〜12)が存在するため、本発明のCoQ10組成物には、本発明の所望効果の発現が阻害されない限り、それらのイソプレノイド鎖の長さの異なる類縁体が一部含まれていてもよい。
【0012】
本発明の技術はイソプレノイド鎖の長さが変わっても適用可能であり、特に動物用の飼料に使用する場合には、対象とする動物に合わせたイソプレノイド鎖のものを選択すればよい。また、CoQ10は他の還元作用を有する物質により容易に還元され、酸化型のキノン体から還元型のアルコール体へと構造が変化する。この還元型CoQ10は別名ユビキノールとも呼ばれるが、生体に対する作用は酸化型も還元型も同じである。よって本特許では酸化型・還元型を区別せずに、共にCoQ10と認識するものである。
【0013】
CoQ10組成物に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの水酸基価が1,200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸とがエステル化されていることに大きな特徴を有する。
【0014】
かかる特徴を有することにより、CoQ10組成物に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルはCoQ10の水分散性の付与に優れ、かつ結晶化を抑制する界面活性剤として使用することができる。
【0015】
ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるポリグリセリンとは、グリセリンを脱水縮合する等して得られる分子内に水酸基とエーテル結合を有している物質をいう。
【0016】
ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるポリグリセリンは全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であり、得られるポリグリセリン脂肪酸エステルの可溶化性能および乳化安定性をさらに向上する観点から、1級水酸基が好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上のポリグリセリンである。さらに上限値は、特に限定するものではないが、その効果を最大限に発揮させるためには90%以下であることが望ましい。ポリグリセリンの全水酸基のうち1級水酸基の占める割合はポリグリセリンの縮合度に応じて変化するため、また一般的に流通しているポリグリセリンの種類がテトラ、ペンタ、ヘキサ、デカであることを考慮してその上限値を例示するならば、テトラグリセリンでは70%以下、好ましくは65%以下、ペンタグリセリンでは75%以下、好ましくは70%以下、ヘキサグリセリンでは80%以下、好ましくは75%以下、デカグリセリンでは85%以下、好ましくは80%以下といった数値を示すことができる。さらに、ポリグリセリンの水酸基価は、1,200以下であり、用途に応じてポリグリセリン脂肪酸エステルの親水性(HLB)を調整できる観点から、1,100以下がより好ましく、1,000以下がさらに好ましい。また、作業性および脂肪酸とのエステル化の容易性の観点から、水酸基価は770以上が好ましい。
【0017】
全ての水酸基のうちの1級水酸基の割合は、炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定する方法を用いて測定される。また、水酸基価は当該分野で公知の方法により測定することができる。
【0018】
なお、炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)は、以下のようにして測定することができる。ポリグリセリン500mgを重水2.8mLに溶解し、ろ過後ゲートつきデカップリングにより13C−NMR(125MHz)スペクトルを得る。ゲートデカップルド測定手法によりピーク強度は炭素数に比例する。1級水酸基と2級水酸基の存在を示す13C化学シフトはそれぞれメチレン炭素(CHOH)が63ppm付近、メチン炭素(CHOH)が71ppm付近であり、2種それぞれのシグナル強度の分析により、1級水酸基と2級水酸基の存在比を算出する。但し、2級水酸基を示すメチン炭素(CHOH)は、1級水酸基を示すメチレン炭素に結合するメチン炭素にさらに隣接するメチレン炭素ピークと重なり、それ自体の積分値を得られないため、メチン炭素(CHOH)と隣り合うメチレン炭素(CH)の74ppm付近のシグナル強度により積分値を算出する。
【0019】
CoQ10組成物に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリン調製方法は限定するものではない。例えば、合成法の工夫または市販のポリグリセリンから分画精製により得ることができる。
【0020】
例えば上記のように合成したポリグリセリンまたは市販のポリグリセリンに、1級水酸基に選択的に結合反応する試薬、すなわち1級水酸基の保護基となる試薬を反応させる。そうするとポリグリセリン1分子中に1級水酸基の数が多いものほど保護基の数が多くなるので、結果としてそのポリグリセリンの極性が低下する。一方、2級水酸基を多く含むポリグリセリンには保護基が導入されにくいので、該ポリグリセリンはもとの高い極性を維持したままとなる。この極性の差を利用して両者を分別することが可能となる。分別した後のポリグリセリンは保護基の脱離処理を行い、1級水酸基を多く含むポリグリセリンを得ることができる。
【0021】
この場合、1級水酸基に選択的に反応する試薬としては、例えば、クロロトリフェニルメタン、イソブテン、1−トリメチルピリジニウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。1,2−ジオール以外に2級水酸基を有さないポリグリセリンについては、ポリグリセリンとアセトナイドを形成する化合物(例えば、メチルイソプロペニルエーテル、2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジエトキシプロパン、アセトン等)を使用することもできる。なかでも、1級水酸基の導入および脱離のしやすさから、クロロトリフェニルメタンが好ましい。
【0022】
ポリグリセリンと該試薬との反応比は、所望されるポリグリセリン中の1級水酸基の数にあわせて適宜調整されるが、確実に反応を進行させるため該試薬を過剰量使用することが好ましい。例えば、該試薬は、ポリグリセリン1モルに対して、好ましくは2〜10モル、より好ましくは3〜7モル使用される。
【0023】
ポリグリセリンと該試薬との反応は、反応の進行および保護の確実性の観点から、好ましくは5〜30℃、より好ましくは10〜25℃で行われる。
【0024】
反応終了後、通常の化学反応と同様に後処理を行えばよい。ピリジン等の有機溶剤は減圧下蒸留により除去することができる。
【0025】
得られた反応物から目的のポリグリセリンを分別する方法は、保護基が導入されたポリグリセリンの化学的および物理的差を利用して達成することができる。例えば、沸点の差を利用して蒸留、減圧蒸留、分子蒸留等の方法で目的のポリグリセリンを分別することができ、または水もしくは有機溶剤への溶解度の差を利用して目的のポリグリセリンを分画することもできる。例えば、反応物を水に分散させ、水と混和しない有機溶剤(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、石油エーテル、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、エーテル、酢酸エチル等)で抽出することにより目的のポリグリセリンを分画することができる。この分画方法を使用する場合、水の代わりに水含有エタノール、食塩水、硫酸ナトリウム溶液等の無機塩の溶液を使用することもできる。水と酢酸エチルを用いて目的のポリグリセリンを分画することが好ましい。
【0026】
溶剤抽出した後に溶剤を除去することにより、極性の低いポリグリセリン誘導体、すなわち1分子中に保護基が多く導入されたポリグリセリンが得られる。この誘導体からの保護基の脱離は、一般の有機合成で行われている方法で行うことができる。例えば、メタノール中でp−トルエンスルホン酸を作用させる方法、酢酸水溶液中で加熱撹拌する方法等により保護基の脱離が達成される。1例として、トリフェニルメチル基をポリグリセリンに導入した場合、得られた反応物に対して2〜3倍量の酢酸水溶液を加えて、55〜60℃で10時間撹拌することにより、保護基を脱離することができる。
さらに、当該ポリグリセリンは、グリシドールやエピクロルヒドリンといったグリセリン誘導体を縮合させて1級水酸基を多く含むポリグリセリンを調製しておき、これを市販のポリグリセリンと混合して、本発明の目的に合うよう1級水酸基と2級水酸基の比率を調整してもよい。
【0027】
水酸基価が1,200以下のポリグリセリンを調製する方法としては、特に限定するものではなく、例えばポリグリセリン反応工程を以下のように調整することで可能である。例えば、グリセリン重合法を用いて調製する場合、重合反応時間の経過と共に水酸基価が低下するため、反応中のポリグリセリンの水酸基価低下過程を確認することで、水酸基価が1,200以下のポリグリセリンを容易に得ることができる。
【0028】
本発明に使用される脂肪酸としては、天然の動植物より抽出した油脂を加水分解し、分離してまたは分離せずに精製して得られるカルボン酸を官能基として含む物質であれば特に限定するものではない。または石油等を原料にして化学的に合成して得られる脂肪酸であってもよい。もしくはこれら脂肪酸を水素添加等して還元したものや、水酸基を含む脂肪酸を縮重合して得られる縮合脂肪酸や、不飽和結合を有する脂肪酸を加熱重合して得られる重合脂肪酸であってもよい。これら脂肪酸の選択に当たっては所望の効果を勘案して適宜決めればよい。本発明に使用される脂肪酸の具体例としては、炭素数6〜22の飽和または不飽和の脂肪酸、すなわちカプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘニン酸、エルカ酸の他、分子中に水酸基を有するリシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびこれらの縮合物等が挙げられるが、なかでも植物ステロールの安定化を考慮するとラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、縮合リシノール酸が好ましい。さらに好ましくはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が望ましい。
【0029】
ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化は、当該分野で公知の方法に従って行われる。例えばアルカリ触媒下、酸触媒下、または無触媒下にて、常圧または減圧下エステル化することができる。また、ポリグリセリンと脂肪酸の混合量を変更することにより種々の性質をもつポリグリセリン脂肪酸エステルを調製することができる。例えば、親水性の界面活性剤に使用するためのポリグリセリン脂肪酸エステルを得る場合、ポリグリセリンの水酸基価と脂肪酸の分子量から計算により等モルになるように重量を計算してポリグリセリンと脂肪酸を仕込めばよく、親油性の界面活性剤に使用するためのポリグリセリン脂肪酸エステルを得る場合、脂肪酸のモル数を増加させればよい。得られたポリグリセリン脂肪酸エステルは使用される製品の使用上の要求によってさらに精製してもよい。精製の方法は公知のいかなる方法でもよく特に限定するものではない。例えば、活性炭や活性白土等にて吸着処理したり、水蒸気、窒素等をキャリアーガスとして用いて減圧下脱臭処理を行ったり、または酸やアルカリを用いて洗浄を行ったり、分子蒸留を行ったりして精製してもよい。
【0030】
CoQ10含有組成物に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは単独で用いる他に乳化安定性を向上する観点から、他の界面活性剤と混合した乳化剤組成物として使用してもよい。例えば混合される界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ただし、CoQ10組成物に使用のポリグリセリン脂肪酸エステルを除く)等の非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、レシチン、酵素分解レシチン、サポニンといった天然物由来の界面活性剤等が挙げられる。
【0031】
本発明のCoQ10含有組成物において、該組成物が飲食品中に均一、且つ長期的に安定に分散することは勿論であるが、さらに多価アルコールを用いる事によって、ハンドリング性向上、組成物の安定性向上、水分散時の安定性が向上する。この場合の多価アルコールとは1分子中に水酸基を2個以上有する化合物の総称であり、特に限定するものではないが、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物の総称であり、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビタン、キシロース、アラビノース、マンノース、乳糖、砂糖、カップリングシュガー、ブドウ糖、酵素水飴、酸糖化水飴、麦芽糖水飴、麦芽糖、異性化糖、果糖、還元麦芽糖水飴、還元澱粉糖水飴、蜂蜜、果糖ブドウ糖液糖、およびこれらの溶液が例示でき、これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも製剤の調製のしやすさ、安定性からプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリンが好適に使用でき、さらにプロピレングリコール、グリセリンが食品に使用できるという観点からも望ましい。
【0032】
さらに、本発明品のCoQ10含有組成物を多価アルコール中油型(O/D型)の乳化物とすることによってCoQ10を高濃度で配合でき、特に飲料への使用時の安定性が格段に向上した組成物とすることができる。
【0033】
本発明中の多価アルコール中油型(O/D型)乳化とは、多価アルコールおよび界面活性剤を混合物とし、その中に油成分を分散させることにより、微細でかつ粒径の揃ったエマルジョンが得られる乳化法をさす。O/D型乳化は多大な機械力を要さず微細な乳化が可能であり、また界面活性剤の効力を最大限に利用でき、多様な界面活性剤に応用が可能であること等から優れた乳化法であるといえる。O/D型乳化は本発明においてはCoQ10の微細な乳化とともに結晶化抑制に有効であることが見出されたため、本組成物の調製に推奨されるものである。
【0034】
本発明のCoQ10含有組成物をO/D型乳化とすることによって、飲料等の水系食品に添加される際に必要である耐酸性、耐塩性、耐熱性が共に優れ、経時的に結晶や沈殿等を生じない組成物となることから、商品価値を落とすことなく飲食品等にCoQ10を多量に添加することができる。
【0035】
本発明のCoQ10含有組成物の調製法としては多価アルコールと本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物を作り、CoQ10と乳化する上記O/D型乳化法が推奨される。CoQ10との混合方法は特に限定するものではなく、攪拌、乳化装置を用い乳化することにより得られる。例えばプロペラ型、アンカー型、パドル型の攪拌機、より強力なせん断力を付与できるローター・ステーター型乳化機、磨砕機能を備えたミル型乳化機、高圧化でキャビテーションを発生させる高圧ノズル型乳化機、高圧下で液同士を衝突させ、衝撃力、乱流によるせん断力およびキャビテーションにより乳化させる高圧衝突型乳化機、超音波でキャビテーションを発生させる超音波乳化機、細孔を通して均一乳化を行う膜乳化機、エレメント内で液の分散集合を繰り返して均一混合するスタティックミキサーといったものが例示できる。これらは単独で使用できるほか、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
CoQ10含有組成物の組成については特に限定されるものではないが、CoQ10が0.01重量%から50重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.01重量%から50重量%、多価アルコールが10重量%から99.98重量%で構成され、好ましくはCoQ10が1重量%から30重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが1重量%から30重量%、多価アルコールが50重量%から90重量%であり、より好ましくはCoQ10が5重量%から20重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが5重量%から20重量%、多価アルコールが70重量%から80重量%である。
CoQ10組成物の製品価値を向上させるため、他の添加物素材を加えてもよい。例えば香料や色素の他、ビタミン類、多価不飽和脂肪酸等の機能性油脂類、抗酸化剤、ミネラル等が挙げられる。
【0037】
CoQ10含有組成物は、そのまま経口的に摂取することにより、CoQ10の生体への補給剤として使用することができる。例えば、CoQ10補給を目的とした液剤、錠剤、粉末製剤、カプセル剤等がある。また、CoQ10含有組成物の一態様として、CoQ10含有組成物を含有してなる飲食品が提供される。
CoQ10含有組成物を配合してなる飲食品は、特にヒトを対象とするものであるが、家畜や家庭用ペット等の飼料を排除するものではない。以下においては、ヒトを対象とした飲食品について説明する。
【0038】
飲食品としては、特に限定されるものではなく、CoQ10含有組成物を配合してなる飲食品であればよい。かかる飲食品としては、例えば、牛乳、乳飲料、チーズ、調製粉乳等の乳製品、ジュース、乳酸飲料、乳酸菌飲料等の清涼飲料類、コーヒー、紅茶、緑茶、ブレンド茶、麦茶等のコーヒー飲料および茶系飲料類、アイソトニック飲料、栄養ドリンク等の嗜好飲料類、またはキャンディー、ガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、和菓子、米菓、ケーキ・パイ等の菓子類、パン、麺類、ケーキミックス等の小麦粉製品類、アイスクリーム、氷菓、プリン、ゼリー、ヨーグルト、ジャム等のデザート類、醤油、ソース、味噌、甘味料、スパイス、ドレッシング等の調味料類、みそ汁、めんつゆ、スープ等の汁物類、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産缶詰等の水産加工品類、漬物、農産・果実缶詰等の農産加工品類、畜肉ハム・ソーセージ、畜肉缶詰等の畜産加工品類、その他種々の飲食品を挙げることができる。
CoQ10含有組成物を配合してなる飲食品中のCoQ10組成物の含有量としては、特に限定されるものではない。CoQ10の強化に充分な量の組成物が含有されていればよく、CoQ10含有組成物を適用しようとする飲食品の組成、該飲食品の摂取対象個体に応じて適宜決定すればよい。CoQ10含有組成物の含有量としては、例えば、飲食品中においてCoQ10換算で、好ましくは0.0001〜50重量%、より好ましくは0.001〜20重量%、さらに好ましくは0.002〜10重量%である。
例えば、既成の飲食品に対してCoQ10含有組成物を添加する場合は、そのまま添加して調製することができる。飲食品とCoQ10含有組成物を調製する場合は、使用原料に予め添加するか、もしくは調製工程中に共に配合することにより、調製することができる。また、CoQ10含有組成物を食品調理する場合(場合により飲料)に材料と共に添加してCoQ10含有組成物を含有してなる食品を調製することもできる。CoQ10含有組成物の所望の効果を発現しうる飲食品が得られるのであれば、飲食品への添加時期や添加方法については特に限定はない。
CoQ10含有組成物を配合してなる飲食品は従来の飲食品に比べてCoQ10を高含有するが、CoQ10が安定に乳化もしくは可溶化されているので、CoQ10の析出による白濁等がない。特に清涼飲料水等は透明であるものがほとんどであるが、CoQ10含有組成物を配合してなる該飲料の外観は、従来のものと遜色がない程度の透明性を有する。このように、本発明のCoQ10含有組成物によれば、飲食品の外観を悪化させることなく、CoQ10を飲食品に強化することができる。
【0039】
化粧料としては、特に限定するものではなく、化粧水、乳液、シャンプー、リンス、毛髪用化粧品、ファンデーション、口紅、保湿クリーム等を挙げることができる。該組成物の含量としては、特に限定するものではなく、CoQ10の効果に充分の組成物が含有されていればよい。
【0040】
医薬品としては、特に限定するものではなく、粉末タイプ、打錠タイプ、液体タイプ等を挙げることができる。CoQ10を高含有するが、該組成物中のCoQ10が安定に乳化もしくは可溶化されているので、CoQ10の析出による白濁、結晶化および沈殿等やCoQ10由来のざらつき感、油っぽさがない。本発明のCoQ10含有組成物によれば、商品の外観等を悪化させることなく、CoQ10を医薬品へ強化する事ができる。
【0041】
飼料としては、特に限定するものではなく、粉末タイプ、打錠タイプ、ペレットタイプ、液体タイプ等が挙げられる。飲食品、化粧料、医薬品等ヒトへの効果を求めることと異なり、効果の適量は体重に相応することが多いので、家畜等への効果を求める場合は、多く設定することになる。実際に使用する際は、摂取対象個体に応じて適宜決定すればよい。
【0042】
本発明の配合方法としては特に限定するものではないが、CoQ10を多価アルコールと本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物と高温下でO/D型乳化をおこなうことが推奨される。CoQ10の融点、結晶状態が変化し常温においてもペースト状の流動性を持たせる事ができるため、飲食品に用いた場合にも結晶化を抑制することが可能となる。さらに流動性を持たせることを考え、低級アルコールを添加することが望ましい。低級アルコールにはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等があるが、飲食品への用途を考える場合、エタノールを使用する事が望ましい。
【0043】
以下、調製例、実施例、試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がかかる調製例、実施例、試験例のみに限定されるものではない。
【0044】
調製例1 ポリグリセリンの調製
試料: グレートオイルDE−1 (太陽化学社製:デカグリセリン)
グレートオイルDE−2 (太陽化学社製:デカグリセリン)
グレートオイルDI−1 (太陽化学社製:ジグリセリン)
試薬: ピリジン(和光純薬社製)、クロロフェニルメチル(和光純薬社製)、酢酸エチル(和光純薬社製)
器具: 温度計、ジムロート、3つ口フラスコ、攪拌装置、減圧装置、還流装置、分液ロート
方法: 温度計、ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに、ポリグリセリンおよびピリジンを加えた。ここへ1級水酸基に選択的に反応する試薬であるクロロトリフェニルメタンを加えて100℃で1時間攪拌後室温に戻し、24時間攪拌した。さらに反応液を減圧下でピリジンの大部分を除去した。得られた反応物に水を加え、分液ロートに移して酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル層を合わせて濃縮し、得られた残渣および酢酸を温度計、ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに加えて8時間加熱還流し、トリメチルフェニル基を脱離させた。上記工程を繰り返し、精製したポリグリセリンを混合し、一定量のポリグリセリンBを得た。また、グレートオイルDE−2、グレートオイルDI−1についてもそれぞれ同様の操作を行ない、ポリグリセリンC、Dを得た。得られたポリグリセリンの水酸基価、1級水酸基、2級水酸基は表1の通りであった。
【0045】
調製例2
調製例1の水層部分を濃縮して得られた残渣および酢酸を温度計、ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに加えて8時間加熱還流し、トリメチルフェニル基を脱離させた。上記工程を繰り返し、精製したポリグリセリンを混合し、一定量のポリグリセリンEを得た。得られたポリグリセリンの水酸基価、1級水酸基、2級水酸基の割合は表1の通りであった。
【0046】
水酸基価は、第7版食品添加物公定書「油脂類試験法」または基準油脂分析試験法に準じて算出した。
【0047】
【表1】

【0048】
調製例3 ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製
試料:表1記載のポリグリセリン、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸
試薬:水酸化ナトリウム(和光純薬社製)、リン酸(和光純薬社製)
器具:4つ口フラスコ、窒素ガス注入付減圧装置、攪拌装置
方法:表1記載のポリグリセリン、脂肪酸および水酸化ナトリウムを4つ口フラスコに
入れ、窒素気流下で生成水を除去しながら250℃で反応し、反応後リン酸を加えてポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。調製したポリグリセリン脂肪酸エステルについては表2の通りである。
【0049】
酸価は、第7版食品添加物公定書「油脂類試験法」または基準油脂分析試験法に準じて算出した。
【0050】
【表2】

【0051】
実施例1 CoQ10乳化製剤の調製
表2に記載した調製品1〜12のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いてCoQ10含有組成物を調製した。(本発明品1〜6及び比較品1〜6)ポリグリセリン脂肪酸エステルを加温し、融解させる。グリセリンに融解させたポリグリセリン脂肪酸エステルを加え、80℃以上に加温する。ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて10,000rpmで攪拌しながら混合状態を確認する。CoQ10を加え、攪拌しながら冷却する。品温が60℃に低下したら、エタノールを加え30分間乳化する。乳化安定性について室温(20〜30℃)にて5日間保存し、確認した。
<CoQ10含有組成物の成分組成> 配合量(重量%)
ポリグリセリン脂肪酸エステル 13.1
グリセリン 73.9
CoQ10 10.0
エタノール 3.0
【0052】
【表3】

【0053】
<乳化安定性>
◎:調製直後と差なし
○:結晶析出(乳化製剤の約1%未満)
△:結晶析出(乳化製剤の約1〜10%)
×:結晶析出(乳化製剤の約10%を超える)
××:結晶析出(乳化製剤の約50%を超える)
なお、◎および○を合格品とする。
【0054】
実施例2 CoQ10粉末製剤の調製
実施例1にて調製した本発明品1〜6及び比較品1〜6の各10gを300gの水に溶解する。そしてデキストリンを90gを加えて、十分に混合し、スプレードライ(大川原化工機株式会社製)を行い、CoQ10粉末製剤を得た。(本発明品7〜12及び比較品7〜12)
分散安定性についてCoQ10粉末製剤0.5gを水200mLに溶解し、室温(20〜30℃)にて2日間保存し、確認した。
【0055】
【表4】

【0056】
<分散安定性の結果>
◎:均一に分散し、浮遊物および沈殿物を認めない
○:分散するが、わずかに沈殿物を認める
△:分散するが、わずかに浮遊物および沈殿物を認める
×:分散するが、浮遊物および沈殿物を確実に認める
××:多くの浮遊物および沈殿物を認める
なお、◎および○を合格品とする。
【0057】
試験例1 酸糖液の調製
水88.695g、果糖ブドウ糖液糖10.8g、クエン酸0.18g、クエン酸三ナトリウム0.04gを攪拌しながら、本発明のCoQ10含有組成物0.285gを混合し、CoQ10を含有する淡黄色透明な酸糖液を得た。
分散安定性について40℃で7日間保存し、目視確認した。
【0058】
【表5】

【0059】
<分散安定性>
◎:黄色透明な液体
○:やや白濁を認める(100mLビーカー越しに文字が確認可能)
△:白濁を認める(100mLビーカー越しに文字が確認不可能)
×:沈殿を認める
なお、◎および○を合格品とする。
【0060】
試験例2 牛乳の調製
市販牛乳99.715gを攪拌しながら、本発明のCoQ10組成物0.285gを混合し、CoQ10を含有する淡黄色な牛乳を得た。
分散安定性について40℃で7日間保存し、目視確認した。
【0061】
【表6】

【0062】
<分散安定性>
◎:黄白色な液体
○:僅かに黄白濁を認める(液面にリング状)
△:黄白濁を認める(液面にリング状)
×:沈殿を認める
なお、◎および○を合格品とする
【0063】
試験例3 茶飲料の調製
チャエキス粉末(商品名「カメリアエキスAS」、太陽化学株式会社製)0.25gに水99.465gを加えて攪拌しながら、本発明のCoQ10組成物0.285gを混合し、CoQ10を含有する淡黄色透明な茶飲料を得た。
分散安定性について40℃で7日間保存し、目視確認した。
【0064】
【表7】

【0065】
<分散安定性>
◎:黄〜茶色透明な液体
○:やや白濁を認める(100mLビーカー越しに文字が確認可能)
△:白濁を認める(100mLビーカー越しに文字が確認不可能)
×:沈殿を認める
なお、◎および○を合格品とする
【0066】
試験例4 スポーツ飲料の調製
果糖ブドウ糖液糖8.0g、クエン酸(結晶)0.16g、クエン酸三ナトリウム0.06g、食塩0.069g、塩化カリウム0.04g、乳酸カルシウム0.03g、L−グルタミン酸ナトリウム0.008g、本発明のCoQ10組成物1.0g、香料製剤(商品名「ナチュレイドグレープフルーツJX」、太陽化学株式会社製)0.1g、香料(グレープフルーツフレーバー)適量、残量をイオン交換水で調製し、100gのCoQ10を含有する淡黄色透明なスポーツ飲料を得た。
分散安定性について40℃で7日間保存し、目視確認した。
【0067】
【表8】

【0068】
<分散安定性>
◎:黄色透明な液体
○:やや白濁を認める(100mLビーカー越しに文字が確認可能)
△:白濁を認める(100mLビーカー越しに文字が確認不可能)
×:沈殿を認める
なお、◎および○を合格品とする。
【0069】
試験例5 酸乳飲料の調製
水88.5gに、グラニュー糖7.2g、ペクチン0.3gを加熱溶解し、20〜30℃に冷却したものに脱脂加糖煉乳4.0gを混合した。その溶液を撹拌しながらクエン酸50%水溶液にてpH3.8に調整し、実施例2にて得られた本発明のCoQ10組成物1.5%を混合した。この飲料をホモジナイザー(150kg/cm)にて均質化し、350mLペットボトルに充填し、酸乳飲料を得た。
分散安定性について37℃で2ヶ月間保存し、目視確認した。
【0070】
また、同様に保存した飲料について、5℃の冷蔵庫に保存しておいた試料を標準としてそれに対する風味の変化、ざらつきの程度を、よく訓練された8名のパネラーにより官能評価を行った。
【0071】
なお、表7中の評価の点数は、下記の基準で採点した各パネルの合計点である。
<官能評価>
冷蔵保存試料と同等(変化なし) :3点
冷蔵保存試料と比べ少し変化しており、ざらつきを感じる :2点
冷蔵保存試料と比べかなり変化しており、ざらつきを感じる :1点
【0072】
【表9】

【0073】
<分散安定性>
◎:均一に分散しており、沈殿、凝集、油浮きを認めない。
○:均一分散しているが、わずかに沈殿を認める。
△:分散しているが、沈殿、凝集を認める。
×:不均一であり沈殿、凝集、油浮きを認める。
なお、◎および○を合格品とする。
【0074】
試験例6 乳液(エモリエントクリーム)の調製
表10に示す割合にしたがって乳液100gを調製した。精製水67.3gにプロピレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミンを加え加熱混合し、水相部とした。また、他の成分を70℃にて混合し、この油相部を水相部に加えて予備乳化を行った。ここに実施例2にて得られた本発明品のCoQ10組成物5.0gを添加した後、ホモミキサーで均一に乳化し、乳化後30℃まで冷却して乳液を得た。
分散安定性について50℃で1ヶ月保存し、目視確認した。
【0075】
【表10】

【0076】
【表11】

【0077】
<分散安定性>
◎:均一に分散しており、沈殿、凝集、油浮きを認めない。
○:均一分散しているが、わずかに沈殿を認める。
△:分散しているが、沈殿、凝集、油浮きを認める。
×:不均一であり沈殿、凝集、油浮きを認める。
なお、◎および○を合格品とする。
【0078】
試験例7 医薬品の調製
CoQ10組成物15g、タウリン50g、ビタミンB 20g、ビタミンB 200mg、ビタミンB12 100mg、イノシトール5g、無水カフェイン2gを蒸留水に溶解させ、さらにショ糖100g、D−ソルビトール300g、クエン酸30gを加えて、均一攪拌した。その後にクエン酸ナトリウムにてpHを3.0に調整し、蒸留水にて5000mLとした。
分散安定性について、40℃にて3ヶ月間保存し、目視確認した。
【0079】
【表12】

【0080】
<分散安定性>
◎:均一に分散しており、沈殿、凝集、油浮きを認めない。
○:均一分散しているが、わずかに沈殿を認める。
△:分散しているが、沈殿、凝集、油浮きを認める。
×:不均一であり沈殿、凝集、油浮きを認める。
なお、◎および○を合格品とする。
【0081】
試験例8 飼料の調製
CoQ10組成物5g、ヨウ素10g、ビタミンE15g、ビタミンB 2g、ビタミンB 2gを基礎飼料1000gに配合し、CoQ10高含有飼料を調製した。
保存安定性について、40℃にて1ヶ月間保存し、目視確認した。
【0082】
【表13】

【0083】
<分散安定性>
◎:飼料中に均一に分散しており、黄色の油しみを認めない。
○:飼料中に均一分散しているが、わずかに黄色の油しみを認める。
△:飼料中に分散しているが、黄色の油しみを認める。
×:飼料中に不均一であり、黄色の油しみを認める。
なお、◎および○を合格品とする。
【産業上の利用可能性】
【0084】
上記試験例で示されたように特定のポリグリセリン脂肪酸エステルにて調製されたCoQ10含有組成物を飲食品および化粧料へ添加することにより、元来の外観・性状を失う事が無いことが分かった。これは特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを必須成分として含むCoQ10含有組成物が安定的に乳化または可溶化されているものと考えられる。
従って、該CoQ10含有組成物を含む飲食品、化粧料、医薬品や飼料を調製するにあたり、何ら困難を伴うことなく、汎用されることを確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コエンザイムQ10と、ポリグリセリンの水酸基価が1,200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上であるポリグリセリンと脂肪酸がエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とするコエンザイムQ10含有組成物。
【請求項2】
組成物が多価アルコール中油型(O/D型)の組成物であることを特徴とする請求項1記載のコエンザイムQ10含有組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の組成物を含有する飲食品。
【請求項4】
請求項1または2記載の組成物を含有する化粧料。
【請求項5】
請求項1または2記載の組成物を含有する医薬品。
【請求項6】
請求項1または2記載の組成物を含有する飼料。

【公開番号】特開2007−209251(P2007−209251A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32522(P2006−32522)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】