説明

コネクタ

【課題】コネクタを大型化することなく、ロックの信頼性を高めることのできるコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタは、カード900をホールドした状態においてカード900の切欠き部910内にロック部630を位置させることにより、カード900をホールド状態にロックする。コネクタには、受止部800が更に設けられている。この受止部800は、ホールド状態にあるカード900を無理に引き抜こうとしたときに、ロック部630と共に変位する当接部640を受け止める。詳しくは、受止部800は、当接部640をY方向において受けることにより当接部640のY方向における移動を規制するY方向移動規制部810を有している。このY方向移動規制部810の規制により、ロック部630のY方向への移動も制限されることから、ロックの信頼性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに接続されるコネクタに関する。本発明は、特に、携帯電話機等のメモリーカード用のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとしては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に開示されたコネクタには、カードがコネクタに接続された状態においてカードの不適切なイジェクトを防止するためのロック部材が設けられている。詳しくは、カードには切欠き部が設けられており、カードがコネクタ内に部分的に収容された状態においてロック部材のロック部がカードの切欠き部内に位置していることにより、カードの不適切なイジェクトが防止されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−200815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコネクタにおいて、ロックの信頼性を高めるためには、ロック部材の板厚を厚くして強度を上げる必要があり、その際にはバネ性等の問題からロック部材自体の長さを長くする等大型化しなければならないが、その場合、コネクタも大型化してしまうといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、コネクタを大型化することなく、ロックの信頼性を高めることのできるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第1のコネクタとして、
切欠き部の設けられたカードを第1方向に沿ってイジェクトすることのできるイジェクト機構と、コンタクトと、該コンタクトを保持するハウジングと、該ハウジングを覆うカバーとを備えるコネクタであって、
前記カバーと前記ハウジングとは、前記カードを少なくとも部分的に収容可能なキャビティと、前記カードを前記キャビティ内に挿入可能とするための開口部とを規定しており、
前記イジェクト機構には、前記カードの挿入排出動作に伴ってホールド位置とイジェクト位置との間で前記第1方向に沿って移動する移動部が設けられており、
前記移動部は、前記カードが前記コネクタに挿入保持されている際に前記ホールド位置に位置する一方、前記カードが前記コネクタからイジェクトされた際に前記イジェクト位置に位置しているものであり、
該移動部には、当該移動部の前記第1方向における移動に伴って前記第1方向に移動する一方で前記第1方向に直交する第2方向にも移動可能なロック部であって、該移動部が前記ホールド位置にあるときに前記カードの前記切欠き部内に位置することにより前記カードのイジェクトをロックするロック部が設けられており、
前記コネクタは、前記移動部が前記ホールド位置にある状態であるホールド状態における前記ロック部の前記第2方向の移動を規制する第2方向移動規制部を更に備えている
コネクタが得られる。
【0007】
また、本発明によれば、第2のコネクタとして、第1のコネクタにおいて、
前記ホールド状態における前記移動部の前記第1方向の移動を規制する第1方向移動規制部を更に備えている、コネクタが得られる。
【0008】
また、本発明によれば、第3のコネクタとして、第2のコネクタにおいて、
前記第1方向移動規制部と前記第2方向移動規制部とは、前記第1方向及び前記第2方向にて規定される面内において前記ハウジング及び前記カバーに対して固定されている、コネクタが得られる。
【0009】
また、本発明によれば、第4のコネクタとして、第2又は第3のコネクタにおいて、
前記第1方向移動規制部と前記第2方向移動規制部とは一体に形成されている、コネクタが得られる。
【0010】
また、本発明によれば、第5のコネクタとして、第4のコネクタにおいて、
前記第1方向移動規制部は、前記ロック部の第1方向の移動を規制することにより前記移動部の前記第1方向の移動を規制するように構成・配置されている、コネクタが得られる。
【0011】
また、本発明によれば、第6のコネクタとして、第5のコネクタにおいて、
前記移動部は、ロック部材と、該ロック部材を保持する保持部を有するイジェクトバーとを備えており、
前記イジェクトバーは、前記第1方向に沿って移動可能なものであり、
前記ロック部は、前記ロック部材の一部として構成されており、
前記ロック部材には、前記ロック部と共に移動する当接部が更に設けられており、
前記第2方向規制部は、前記ホールド状態において前記当接部が前記第2方向に移動した場合に該移動した前記当接部を前記第2方向において受け、それによって、前記ロック部の前記第2方向の移動を規制するように構成・配置されており、
前記第1方向規制部は、前記ホールド状態において前記当接部が前記第1方向に移動した場合に該移動した前記当接部を前記第1方向において受け、それによって、前記ロック部材の前記第1方向の移動を規制するように構成・配置されている
コネクタが得られる。
【0012】
また、本発明によれば、第7のコネクタとして、第6のコネクタにおいて、
前記ホールド状態にある前記第1方向移動規制部と前記当接部との間に少なくとも前記第2方向においてクリアランスを有するように、前記第1方向規制部と前記当接部とが配置されている、コネクタが得られる。
【0013】
また、本発明によれば、第8のコネクタとして、第6又は第7のコネクタにおいて、
前記ロック部材は、前記保持部に保持される被保持部と、該被保持部から前記ロック部まで延びるばね部とを備えている、コネクタが得られる。
【0014】
また、本発明によれば、第9のコネクタとして、第8のコネクタにおいて、
前記当接部は、前記ばね部の先端又は前記ロック部の先端から前記第1方向に延びるようにして、設けられている、コネクタが得られる。
【0015】
また、本発明によれば、第10のコネクタとして、第8又は第9のコネクタにおいて、
前記保持部は、遊びをもった状態で前記被保持部を保持しており、
前記ロック部材は、前記被保持部及び前記ばね部と共に略U字形状を構成するように前記被保持部から延びる補助ばね部を更に備えており、
前記補助ばね部は、当該コネクタ内部の所定部位に当接することにより該所定部位から反力を得、その反力をもって前記ロック部を前記カードの前記切欠き部内に向けて付勢するように、構成・配置されている、
コネクタが得られる。
【0016】
また、本発明によれば、第11のコネクタとして、第10のコネクタにおいて、
前記カバー又は前記ハウジングは、前記補助ばね部に加わる反力を増幅するための反力増幅部を備えており、
前記反力増幅部は、前記ホールド状態にあるときに、前記補助ばね部が前記第2方向において前記ロック部と当該反力増幅部との間に位置するようにして且つ前記第2方向において当該反力増幅部に当接するように、構成・配置されている、
コネクタが得られる。
【0017】
また、本発明によれば、第12のコネクタとして、第11のコネクタにおいて、
前記反力増幅部は、前記カバーの一部として、且つ、前記ハウジングに向けて延びるようにして、形成されている
コネクタが得られる。
【0018】
また、本発明によれば、第13のコネクタとして、第10乃至第12のコネクタのいずれかにおいて、
前記ロック部材には、第2方向当接部が設けられており、
当該コネクタは、前記ホールド状態において前記第2方向当接部よりも前記キャビティ側に位置することにより前記付勢された前記ロック部の前記第2方向における位置決めを行うロック部位置決め部を更に備えている
コネクタが得られる。
【0019】
また、本発明によれば、第14のコネクタとして、第13のコネクタにおいて、
前記ロック部移動規制部は、前記カバーの一部として、且つ、前記ハウジングに向けて延びるようにして、形成されている
コネクタが得られる。
【0020】
また、本発明によれば、第15のコネクタとして、第14のコネクタにおいて、
前記第2方向当接部は、前記第1方向及び前記第2方向の双方と直交する第3方向において、前記ロック部とは異なる位置に設けられている
コネクタが得られる。
【0021】
また、本発明によれば、第16のコネクタとして、第6乃至第15のコネクタのいずれかにおいて、
前記第1方向移動規制部と前記第2方向移動規制部は、前記カバー又は前記ハウジングの一部として構成されている
コネクタが得られる。
【0022】
また、本発明によれば、第17のコネクタとして、第6乃至第16のコネクタのいずれかにおいて、
前記保持部は、前記開口部から離れるに従って大きくなるように構成されており、それによって、前記移動部が前記イジェクト位置にある状態において、前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向に沿って見た場合に前記第1方向移動規制部及び前記第2方向移動規制部と前記保持部とは少なくとも一部において重なっている、
コネクタが得られる。
【0023】
また、本発明によれば、第18のコネクタとして、第6乃至第17のコネクタのいずれかにおいて、
前記ホールド状態において、第2方向移動規制部は、前記第2方向において前記当接部よりも前記キャビティから離れた位置にあり、
前記ホールド状態において、第1方向移動規制部は、前記第1方向において前記当接部よりも前記開口部に近い位置にある、
コネクタが得られる。
【0024】
また、本発明によれば、第19のコネクタとして、第6乃至第18のコネクタのいずれかにおいて、
前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向に沿って見た場合に、前記第1方向移動規制部と前記第2方向移動規制部とは、略L字形状を構成している、
コネクタが得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ホールド状態におけるロック部の第2方向(カード挿入抜去方向と直交する方向)への移動を規制する第2方向移動規制部を設けたことから、ロック部によるロックの信頼性を高めることができる。
【0026】
また、ホールド状態におけるロック部の第1方向(カード挿入抜去方向)への移動を規制する第1方向移動規制部を更に設けることとすると、イジェクト機構に含まれるカムフォロワに過度な負荷がかかることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1乃至図4を参照すると、本発明の実施の形態によるコネクタ100は、複数のコンタクト110と、コンタクト110を保持する絶縁体からなるハウジング120と、ハウジング120を覆う金属製のカバー130と、カード900をX方向(第1方向)に沿ってイジェクトすることのできるイジェクト機構140とを備えている。なお、カード900には切欠き部910が設けられている(図9参照)。
【0028】
ハウジング120とカバー130とは、カード900を部分的に収容可能なキャビティ200と、カード900をキャビティ200内に挿入可能とするための開口部250とを規定している。なお、本実施の形態によるカバー130には、フォロワ付勢部132、受止部800、反力増幅部850及びロック部位置決め部870が形成されている。これらについては、それぞれ、後述する。
【0029】
図3及び図4に示されるように、本実施の形態におけるイジェクト機構140は、絶縁体からなるイジェクトバー300と、コイルばね400と、カムフォロワ500と、ロック部材600とを備えている。
【0030】
イジェクトバー300には、ハートカム320と、ロック部材600を保持する保持部340とが形成されている。イジェクトバー300は、カード900のX方向における移動に応じて、ホールド位置とイジェクト位置との間で摺動可能となるように、ハウジング120内に組み込まれている。ここで、ホールド位置とは、カード900がコネクタ100に接続された状態におけるイジェクトバー300(移動部700)の位置であり、イジェクト位置とは、カード900がコネクタ100からイジェクトされた際におけるイジェクトバー300(移動部700)の位置である。即ち、ホールド位置は、イジェクト位置よりも開口部250から遠い位置にある。このイジェクトバー300は、コイルばね400によってイジェクト位置側に常時付勢されている。
【0031】
ハートカム320には、カムフォロワ500の一端が挿入されている。詳しくは、本実施の形態におけるカムフォロワ500は、略コの字形状を有する金属の棒であり、他端はハウジング120に軸支されている。ここで、イジェクトバー300は、カード900の挿入時においてはカード900により挿入方向への力を受け、カード900のイジェクト時においてはコイルばね400によりイジェクト方向への力を受ける。そのため、カムフォロワ500の一端は、基本的には、ハートカム320のカム面に常時押し付けられることとなり、イジェクトバー300の移動に応じてハートカム320のカム面に追従することとなっている。なお、カバー130に形成されたフォロワ付勢部132は、カムフォロワ500がハートカム320に確実に追従するように、カムフォロワ500をハートカム320に向けて常時付勢するためのものである(図1及び図2参照)。
【0032】
図3に示されるように、本実施の形態における保持部340は、遊びをもった状態でロック部材600を保持している。従って、ロック部材600は、保持部340に保持された状態で多少動くことができる。なお、本実施の形態における保持部340は、開口部250に近い端部として、X方向とZ方向(第3方向)とに斜交する面を有している。詳しくは、保持部340の開口部250に近い端部は、開口部250側から見た場合に、奥に向かうに従って高くなるように構成されている。
【0033】
上述したように、イジェクトバー300及びそれに保持されるロック部材600は、X方向に移動するが、コイルばね400やカムフォロワ500は伸縮したり回動したりするもののX方向へ移動するわけではない。即ち、本実施の形態においては、イジェクトバー300とロック部材600のみがX方向へ移動する移動部700を構成している(図4参照)。
【0034】
図3及び図6に示されるように、ロック部材600は、被保持部610と、被保持部から延びるばね部620と、ばね部620の先端からY方向(第2方向)においてキャビティ200内に突出するように設けられたロック部630と、ばね部620の先端からX方向に延びるように設けられた当接部640と、被保持部610及びばね部620と共に略U字形状を構成するように被保持部610から延びる補助ばね部650とを備えている。被保持部610は、イジェクトバー300の保持部340に保持されている。ばね部620は、ロック部630がY方向にも移動可能となるようにロック部630を弾性支持している。ロック部630は、イジェクトバー300がホールド位置にあるときにカード900の切欠き部910内に位置することにより、カード900のイジェクトをロックするための部位である(図7参照)。本実施の形態における当接部640は、ロック部630近傍に設けられている。本実施の形態における当接部640は、Z方向に沿って見た場合に、ロック部630と二股を構成している。また、本実施の形態における当接部640は、Z方向においてロック部630とは異なる位置に位置している。このように構成することとすると、ロック部材600のX方向におけるサイズを小さくすることができる。ここで、当接部640のキャビティ200側の面は、後述するように、Y方向当接部(第2方向当接部)645として機能する。補助ばね部650は、コネクタ100の内部の所定部位に当接することにより所定部位から反力を得て、その反力をもってロック部630をキャビティ200の内側に向けて付勢するものである。この補助ばね部650によるロック部630の付勢の効果を得るため、本実施の形態における保持部340は、上述したように、遊びをもった状態で被保持部610を保持している。
【0035】
本実施の形態におけるカバー130には、上述したように、反力増幅部850とロック部位置決め部870とが形成されている。
【0036】
図1、図2、図4及び図5に示されるように、本実施の形態における反力増幅部850は、カバー130の一部にコの字状の切り込みを入れ、その後、ハウジング120側に向けて折り込むようにして構成された小片である。この反力増幅部850は、イジェクトバー300がホールド位置にあるときに補助ばね部650にY方向において当接する一方でイジェクトバー300がイジェクト位置にあるときには補助ばね部650には当接しないように、設けられている。なお、イジェクトバー300がイジェクト位置にあるとき、補助ばね部650は、ハウジング120の側壁部122に当接している。即ち、本実施の形態における補助ばね部650は、常時はハウジング120の側壁部122に当接しているがイジェクトバー300がホールド位置に位置したときのみ反力増幅部850に当接することとなり、より大きな反力を受けることとなっている。但し、本発明はこれに限られない。例えば、反力増幅部850をX方向に長く構成し、イジェクトバー300がイジェクト位置にあるときにも補助ばね部650と当接するようにしてもよいが、その場合、コネクタが大型化してしまうことから、上述したように必要最低限の部位に反力増幅部850を設けることが好ましい。
【0037】
詳しくは、反力増幅部850は、イジェクトバー300がホールド位置にあるときに、補助ばね部650がY方向においてロック部630と反力増幅部850との間に位置するようにして且つY方向において反力増幅部850に当接するように、設けられている。これにより、イジェクトバー300がホールド位置にあるとき、補助ばね部650は、反力増幅部850がない場合と比較して、大きな反力を受けることとなる。この大きな反力により、本実施の形態におけるロック部630は、キャビティ200内部に向けて確実に付勢される。
【0038】
但し、カード900がコネクタ100に接続された状態においては、カード900に対してロック部630が強い力で当接させられるのは好ましくない。従って、補助ばね部650によって付勢されたロック部630がカード900の切欠き部910内に確実に位置する一方で、ロック部材600(ロック部630)のカード900に対する強い接触を避けることのできるような位置にロック部630を位置させるように、ロック部630の位置決めを行うことが好ましい。本実施の形態においては、このロック部630の位置決めを、ロック部位置決め部870に対してY方向当接部645を当接させることにより行っている。本実施の形態におけるロック部位置決め部870は、反力増幅部850と同様に、カバー130の一部にコの字状の切り込みを入れ、その後ハウジング120側に向けて折り込むようにして構成された小片である。上述したロック部630の位置決めを行うためには、このロック部位置決め部870は、少なくともイジェクトバー300がホールド位置にある場合には、図11及び図12に示されるように、Y方向当接部645よりもキャビティ200側に位置していなければならない。本実施の形態におけるロック部位置決め部870は、イジェクトバーがイジェクト位置にある場合にも、図9及び図10に示されるように、Y方向当接部645よりもキャビティ200側にあるように構成されている。
【0039】
なお、反力増幅部850及び/又はロック部位置決め部870は、カバー130ではなくハウジング120に設けられていてもよいし、カバー130やハウジングとは別個の部材であってカバー130やハウジング120に取り付けられた部材に設けられていてもよい。
【0040】
本実施の形態におけるカバー130には、上述したように、受止部800も形成されている。この受止部800は、図5、図7及び図8に示されるように、カバー130の主面よりも一段下がった状態で(ハウジング120側に近づいた状態で)挿入方向に向かって延びている。受止部800の先端のキャビティ200に近い箇所には、Z方向に沿って見た場合に、略L字状をなす部位が形成されている。この略L字状をなす部位のうちX方向に延びるエッジは、イジェクトバー300がホールド位置にある状態において当接部640がY方向の反対方向に移動してきた場合に当接部640をY方向において受けることにより、ロック部630のY方向の反対方向への所定量以上の移動を規制するY方向移動規制部(第2方向移動規制部)810を構成している。一方、略L字状をなす部位のうちY方向と若干ずれるようにして延びるエッジは、イジェクトバー300がホールド位置にある状態においてY方向の反対方向に移動した当接部640が更にX方向に移動してきた場合に当該当接部640をX方向において受けることにより、ロック部630のX方向への所定量以上の移動を規制するX方向移動規制部(第1方向移動規制部)820を構成している。本実施の形態において、X方向移動規制部820として機能するエッジとY方向移動規制部810として機能するエッジとは、90度より若干小さい角をなしている。これにより、X方向において当接部640を確実に受けることができる。
【0041】
上述したように、Y方向移動規制部810とX方向移動規制部820とは、カバー130の一部である受止部800として構成されていることから、イジェクトバー300やロック部材600とは異なり、XY平面内においてハウジング120及びカバー130に対して実質的に固定されている。
【0042】
詳しくは、図7、図11及び図12に示されるように、Y方向移動規制部810は、イジェクトバー300がホールド位置にある場合にY方向において当接部640よりもカード900(即ち、キャビティ200)から離れた位置にあり、X方向移動規制部820は、イジェクトバー300がホールド位置にある場合にX方向において当接部640よりも開口部250に近い位置にある。ホールド状態にあるカード900を無理に引き抜こうとすると、ロック部630がカード900の切欠き部910の外部に押し出されそうになるが、その際に、図13及び図14に示されるように、当接部640がY方向移動規制部810に当接してY方向への移動を規制されることからロック部630が切欠き部910の外部に出てしまうといったことが避けられる。即ち、本実施の形態によれば、ロック部材600のばね力のみに頼った場合と比較して、カード900のホールド状態のロックの信頼性が高められている。加えて、Y方向移動規制部810に当接部640が当接した状態において更にカード900を無理に抜き去ろうとすると、仮にX方向移動規制部820が設けられていなかった場合には、カード900の無理な抜去による力がカムフォロワ500のみに加わってしまうことになりカムフォロワ500が伸びてしまう(壊れてしまう)恐れもあるが、本実施の形態においては、図13及び図14に示されるように、当接部640がX方向移動規制部820に当接することによりカード900の無理な抜去を防ぐこととしていることから、カムフォロワ500が壊れてしまうといった問題が生じない。
【0043】
更に、本実施の形態における受止部800は、イジェクトバー300がホールド位置からイジェクト位置に移動する際にイジェクトバー300と共に移動するロック部材600と干渉してはならない。従って、本実施の形態においては、図7に示されるように、イジェクトバー300がイジェクト位置にある状態において受止部800と当接部640との間にクリアランスCがあるように、受止部800を設けてある。なお、コネクタ100のY方向におけるサイズを考慮するとクリアランスCを大きくすることは困難であるが、本実施の形態においては、上述したように、補助ばね部650によってロック部630をキャビティ200内に向けるように常時付勢していることから、クリアランスCが小さかったとしても、イジェクトバー300がホールド位置からイジェクト位置に移動する際におけるロック部材600と受止部800との干渉を確実に防止することができる。
【0044】
加えて、本実施の形態においては、上述したように、保持部340の開口部250に近い端部は、開口部250側から見た場合に、奥に向かうに従って高くなるように構成されていることから、イジェクトバー300がホールド位置からイジェクト位置に移動する際に、保持部340が受止部800の下方にガイドされることとなり、その結果、イジェクトバー300がイジェクト位置にあるときにはZ方向に沿って見ると受止部800と保持部340とは一部において重なって見えることとなる(図9参照)。
【0045】
上述したように、本実施の形態におけるY方向移動規制部810及びX方向移動規制部820は、受止部800の一部である。即ち、本実施の形態におけるY方向移動規制部810及びX方向移動規制部820は、互いに一体に形成されている。また、本実施の形態においては、イジェクトバー300がホールド位置にある場合におけるロック部630のX方向への移動を規制することにより、イジェクトバー300のX方向への移動を間接的に規制することとしている。しかしながら、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、Y方向移動規制部810とX方向移動規制部820とを分けて構成することとしてもよいし、また、イジェクトバー300のX方向への移動を直接的に規制するものとしてX方向移動規制部を構成してもよい。更には、本実施の形態における受止部800は、カバー130の一部として構成したが、ハウジング120の一部として構成することとしてもよいし、カバー130やハウジング120とは別体の部品にて構成することとしてもよい。なお、カバー130やハウジング120とは別体の部品にて受止部800を構成する場合、この部品はカバー130又はハウジング120に固定されるのが好ましい。
【0046】
なお、ロック部材600は、本実施の形態の形状には限られない。例えば、ロック部材600は、補助ばね部650を有しないものであっても良い。その場合、イジェクトバー300の保持部340は、しっかりと(即ち、遊びを持たせることなく)被保持部610を保持することが好ましい。更に、上述した実施の形態において、当接部640は、ばね部620の先端からX方向に延びるように構成されていたが、例えば、図15に示されるように、当接部650aはロック部630の先端からX方向に延びるように、設けられていてもよい。
【0047】
また、上述した本実施の形態において、受止部800は略L字状の形状を有していたが、例えば、略J字状又は略U字状の形状を有することとしてもよい。但し、その場合、受止部800のY方向におけるサイズが若干大きくなる。
【0048】
更に、上述した実施の形態においては、ロック部材600をイジェクトバー300とは別部品にて構成しているが、イジェクトバー300の一部にロック部630と同等の機能を果たす部位を設けることとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態によるコネクタを示す斜視図である。
【図2】図1のコネクタに対してカードを挿入する際の初期段階を示す斜視図である。
【図3】図1のコネクタのカバーを省略した状態を示す斜視図である。
【図4】図1のコネクタを示す分解斜視図である。
【図5】図1のコネクタに含まれるカバーを示す上面図である。
【図6】図1のコネクタに含まれるロック部材を示す斜視図である。
【図7】ホールド状態におけるロック部材のロック部とその近傍を示す拡大上面図である。
【図8】図1のコネクタに含まれるカバーの一部を示す上面図である。
【図9】イジェクト状態にあるコネクタを示す上面図である。ここで、カバーについては、その一部のみが示されている。
【図10】図9のコネクタにおいて、ロック部とその近傍を示す拡大上面図である。
【図11】ホールド状態にあるコネクタを示す上面図である。ここで、カバーについては、その一部のみが示されている。
【図12】図11のコネクタにおいて、ロック部とその近傍を示す拡大上面図である。
【図13】ホールド状態にあるコネクタにおいてカードを無理に引き抜こうとした状態を示す上面図である。ここで、カバーについては、その一部のみが示されている。
【図14】図13のコネクタにおいて、ロック部とその近傍を示す拡大上面図である。
【図15】図6に示されるロック部材の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
100 コネクタ
110 コンタクト
120 ハウジング
122 側壁部
130 カバー
132 フォロワ付勢部
140 イジェクト機構
200 キャビティ
250 開口部
300 イジェクトバー
320 ハートカム
340 保持部
400 コイルばね
500 カムフォロワ
600 ロック部材
610 被保持部
620 ばね部
630 ロック部
640 当接部
640a 当接部
645 Y方向当接部(第2方向当接部)
645a Y方向当接部(第2方向当接部)
650 補助ばね部
700 移動部
800 受止部
810 Y方向移動規制部(第2方向移動規制部)
820 X方向移動規制部(第1方向移動規制部)
850 反力増幅部
870 ロック部位置決め部
900 カード
910 切欠き部
C クリアランス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
切欠き部の設けられたカードを第1方向に沿ってイジェクトすることのできるイジェクト機構と、コンタクトと、該コンタクトを保持するハウジングと、該ハウジングを覆うカバーとを備えるコネクタであって、
前記カバーと前記ハウジングとは、前記カードを少なくとも部分的に収容可能なキャビティと、前記カードを前記キャビティ内に挿入可能とするための開口部とを規定しており、
前記イジェクト機構には、前記カードの挿入排出動作に伴ってホールド位置とイジェクト位置との間で前記第1方向に沿って移動する移動部が設けられており、
前記移動部は、前記カードが前記コネクタに挿入保持されている際に前記ホールド位置に位置する一方、前記カードが前記コネクタからイジェクトされた際に前記イジェクト位置に位置しているものであり、
該移動部には、当該移動部の前記第1方向における移動に伴って前記第1方向に移動する一方で前記第1方向に直交する第2方向にも移動可能なロック部であって、該移動部が前記ホールド位置にあるときに前記カードの前記切欠き部内に位置することにより前記カードのイジェクトをロックするロック部が設けられており、
前記コネクタは、前記移動部が前記ホールド位置にある状態であるホールド状態における前記ロック部の前記第2方向の移動を規制する第2方向移動規制部を更に備えている
コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタにおいて、前記ホールド状態における前記移動部の前記第1方向の移動を規制する第1方向移動規制部を更に備えている、コネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のコネクタにおいて、
前記第1方向移動規制部と前記第2方向移動規制部とは、前記第1方向及び前記第2方向にて規定される面内において前記ハウジング及び前記カバーに対して固定されている、コネクタ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載のコネクタにおいて、前記第1方向移動規制部と前記第2方向移動規制部とは一体に形成されている、コネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のコネクタにおいて、前記第1方向移動規制部は、前記ロック部の第1方向の移動を規制することにより前記移動部の前記第1方向の移動を規制するように構成・配置されている、コネクタ。
【請求項6】
請求項5記載のコネクタにおいて、
前記移動部は、ロック部材と、該ロック部材を保持する保持部を有するイジェクトバーとを備えており、
前記イジェクトバーは、前記第1方向に沿って移動可能なものであり、
前記ロック部は、前記ロック部材の一部として構成されており、
前記ロック部材には、前記ロック部と共に移動する当接部が更に設けられており、
前記第2方向規制部は、前記ホールド状態において前記当接部が前記第2方向に移動した場合に該移動した前記当接部を前記第2方向において受け、それによって、前記ロック部の前記第2方向の移動を規制するように構成・配置されており、
前記第1方向規制部は、前記ホールド状態において前記当接部が前記第1方向に移動した場合に該移動した前記当接部を前記第1方向において受け、それによって、前記ロック部材の前記第1方向の移動を規制するように構成・配置されている
コネクタ。
【請求項7】
請求項6記載のコネクタにおいて、前記ホールド状態にある前記第1方向移動規制部と前記当接部との間に少なくとも前記第2方向においてクリアランスを有するように、前記第1方向規制部と前記当接部とが配置されている、コネクタ。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載のコネクタにおいて、前記ロック部材は、前記保持部に保持される被保持部と、該被保持部から前記ロック部まで延びるばね部とを備えている、コネクタ。
【請求項9】
請求項8記載のコネクタにおいて、前記当接部は、前記ばね部の先端又は前記ロック部の先端から前記第1方向に延びるようにして、設けられている、コネクタ。
【請求項10】
請求項8又は請求項9記載のコネクタにおいて、
前記保持部は、遊びをもった状態で前記被保持部を保持しており、
前記ロック部材は、前記被保持部及び前記ばね部と共に略U字形状を構成するように前記被保持部から延びる補助ばね部を更に備えており、
前記補助ばね部は、当該コネクタ内部の所定部位に当接することにより該所定部位から反力を得、その反力をもって前記ロック部を前記カードの前記切欠き部内に向けて付勢するように、構成・配置されている、
コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−129307(P2010−129307A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301365(P2008−301365)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】