説明

コネクタ

【課題】外側のスルーホールに挿入される端子だけでなく、内側のスルーホールに挿入される端子においても良好なはんだ付けを実行することが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】互いに平行に延びる複数の列に沿って並ぶ複数のスルーホールを有する基板に実装されるコネクタ1は、第1〜3端子3〜5と、これらの端子3〜5を保持するハウジング2とを備えている、ハウジング2の立直壁2bには、リフローはんだ付け時に発生する熱風が立直壁2bに最も近い第1端子3の挿入部分3aを通過した後にハウジング内部へ導入されることを許容する形状を有する開口9が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルーホールを有する基板に実装されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の車体内部には、車載部品を接続するためのコネクタが多く用いられている。コネクタの端子を基板のスルーホール内部の配線めっき部分にはんだ付けする方法として、基板裏面をはんだ槽の溶融はんだに接触させてはんだ付けをする、いわゆるフローはんだ付けが以前より知られているが、新しいはんだ付け方法として、近年、自動的で短時間にでき、量産性、経済性に優れているという点でリフローはんだ付けが実施されるようになっている。
【0003】
リフローはんだ付けは、特許文献1に記載されているように、基板上にクリームはんだを塗布した後に熱風などにより加熱してはんだ付けを行う方法である。具体的には、基板表面およびスルーホール内部における所定の位置にスクリーン印刷の手法でクリームはんだを部分的に塗布し、スルーホールにコネクタ端子を挿入後、端子先端にはんだペーストが付着した状態で、リフロー炉において基板の表裏両面から熱風を吹き付けて端子を加熱する。このときの端子が受けた熱を利用してスルーホール内部でクリームはんだを溶融させることにより、端子とスルーホールとの間を電気的に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−182141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近では、コネクタは多極化の傾向にあり、それに対応して基板のスルーホールの数も増大している。そのような場合、スルーホールは、コネクタのハウジングに対して横断する方向に並ぶ複数列に亘って配列される。しかし、スルーホールが複数列に亘って配列されると、ハウジングから遠い側の列、すなわち外側のスルーホールに比べ、ハウジングに近い側の列、すなわち内側のスルーホールでは熱風が当たりにくく、はんだ付けが不十分となるおそれがあることが判明した。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、外側のスルーホールに挿入される端子だけでなく、内側のスルーホールに挿入される端子においても良好なはんだ付けを実行することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するにあたって、本発明者は鋭意研究を重ねた末、その課題の原因を以下のように解明した。すなわち、リフロー炉で基板の表裏両面から熱風を吹き付けたときに、ハウジングに遠い側の列、すなわち外側のスルーホールに挿入された端子には熱風が当たりやすいが、ハウジングに近い側の列、すなわち内側のスルーホールに挿入された端子には、外側のスルーホールに挿入された端子が邪魔になって熱風の流れが当たりにくくなるだけでなく、ハウジングの立直壁が存在することによって熱風が内側のスルーホールに挿入された端子の周囲を通り抜けにくくなることが判明した。
【0008】
そこで、上記課題を解決するためのものとして、本発明は、リフローはんだ付け時に発生する熱風がハウジングの立直壁が存在することによって内側のスルーホールに挿入された端子の周囲を通り抜けにくくなっていることに着目し、これを解消することによって熱風の通路を確保するようにしたものである。
【0009】
すなわち、本発明の請求項1に係るコネクタは、互いに平行に延びる第1列および第2列に沿って並ぶ複数のスルーホールを有する基板に実装されるコネクタであって、前記スルーホールの第1列に対して挿入される複数の第1端子と、前記スルーホールの第2列に対して挿入される複数の第2端子と、前記基板上に取り付けられる底壁、および当該底壁から立ち上がるとともに前記第1端子および第2端子を保持する立直壁を有し、前記基板の上において前記スルーホールの第1列に対して前記スルーホールの第2列と反対側に配置されるハウジングとを備えており、前記第1端子は、前記立直壁を貫通して一方の端部がコネクタ接続部を構成する貫通部分と、この貫通部分の他方の端部から前記基板に向かって延び、かつ前記立直壁に最も近い前記スルーホールの第1列に挿入される挿入部分とを有しており、前記第2端子は、前記立直壁を貫通して一方の端部がコネクタ接続部を構成する貫通部分と、この貫通部分の他方の端部から前記基板に向かって延び、かつ、前記立直壁に対して前記スルーホールの第1列よりも遠い当該スルーホールの第2列に挿入される挿入部分とを有しており、前記立直壁には、リフローはんだ付け時に発生する熱風が前記第1端子の挿入部分を通過した後に前記ハウジング内部へ導入されることを許容する形状を有する開口が形成されていることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、ハウジングの立直壁にはリフローはんだ付け時に発生する熱風が第1端子の挿入部分を通過した後にハウジング内部へ導入されることを許容する形状を有する開口が形成されているので、リフローはんだ付け時の熱風の通路をハウジング内部に確保することができる。そのため、ハウジングの立直壁に近い第1端子の挿入部分にリフローはんだ付け時の熱風が良好に当たることが可能になるので、外側の第2列のスルーホールに挿入される第2端子だけでなく、内側の第1列のスルーホールに挿入される第1端子においても良好なはんだ付けを行うことができる。
【0011】
また、前記開口は、前記ハウジングの立直壁における前記ハウジングの長手方向の一部の領域であって、前記第1端子が配列されている範囲と前記第2端子が配列されている範囲とが重なっている領域に形成されているのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、第1端子が配列されている範囲と第2端子が配列されている範囲とが重なり合うことにより熱風が当たりにくい第1端子が存在する領域に開口が部分的に形成されているので、第1端子を通り過ぎる熱風の通路を確保しながら、ハウジングの強度の低下を抑えることができる。
【0013】
さらに、前記ハウジングの立直壁には、前記第1端子または前記第2端子のいずれかのみが設けられている領域があり、前記開口は、当該前記第1端子または前記第2端子のいずれかのみが設けられている領域以外の領域に形成されているのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、第1端子または第2端子のいずれかのみが設けられている領域では、第2端子が第1端子へ向かう熱風の流れを阻害しないので、そのような領域には開口を形成しないように、その領域以外の領域に開口が部分的に形成されている。これによって、ハウジングの強度の低下をさらに抑制することができる。
【0015】
さらに、前記開口は、前記ハウジングの長手方向に延びており、前記ハウジングは、前記開口の内部において前記立直壁と前記底壁との間を連結する補強板を有しており、前記補強板は、その厚さ方向が前記ハウジングの長手方向に合致する形状を有するのが好ましい。
【0016】
第1端子が配列されている範囲と第2端子が配列されている範囲が重なり合っている領域が広い場合には、熱風の通路を広く確保するために、開口が長手方向に延びるように形成される必要がある。そのような場合でも、上記の構成によれば、開口の内部において立直壁と底壁との間を連結する補強板が設けられているので、第1端子を通り過ぎる熱風の通路を確保しながら、ハウジングの強度を維持することができる。また、補強板は、その厚さ方向がハウジングの長手方向に合致する形状を有しているので、開口面積の減少を抑えることができる。
【0017】
前記開口は、前記立直壁および前記底壁に形成されているのが好ましい。かかる構成によれば、開口が立直壁だけでなく底壁にまで拡大して形成されているので、ハウジング内部におけるリフローはんだ付け時の熱風の通路を十分広く確保することができ、ハウジングの立直壁に近い第1端子の挿入部分にリフローはんだ付け時の熱風がさらに良好に当たることが可能になる。そのため、端子間の温度差がさらに減少し、ハンダペーストが完全に溶けてはんだ不良の発生を効果的に回避することができる。
【0018】
また、本発明の請求項6に係るコネクタは、互いに平行に延びる第1列および第2列に沿って並ぶ複数のスルーホールを有する基板に実装されるコネクタであって、前記スルーホールの第1列に対して挿入される複数の第1端子と、前記スルーホールの第2列に対して挿入される複数の第2端子と、前記基板上に取り付けられる底壁、および当該底壁から立ち上がるとともに前記第1端子および第2端子を保持する立直壁を有し、前記基板の上において前記スルーホールの第1列に対して前記スルーホールの第2列と反対側に配置されるハウジングとを備えており、前記第1端子は、前記立直壁を貫通して一方の端部がコネクタ接続部を構成する貫通部分と、この貫通部分の他方の端部から前記基板に向かって延び、かつ前記立直壁に最も近い前記スルーホールの第1列に挿入される挿入部分とを有しており、前記第2端子は、前記立直壁を貫通して一方の端部がコネクタ接続部を構成する貫通部分と、この貫通部分の他方の端部から前記基板に向かって延び、かつ、前記立直壁に対して前記スルーホールの第1列よりも遠い当該スルーホールの第2列に挿入される挿入部分とを有しており、前記ハウジングは、前記ハウジングの長手方向に互いに離間して配置され、前記底壁の下面から突出し、かつ、リフローはんだ付け時に発生する熱風が前記第1端子の挿入部分を通過した後に前記基板と前記底壁との間を通り抜けることを許容するように前記基板に当接して当該基板と前記底壁との間に隙間を確保することが可能な形状を有する複数の突出部をさらに備えていることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、ハウジングが、底壁の下面から突出した複数の突出部を備えている。これらの突出部は、ハウジングの長手方向に互いに離間して配置され、かつ、リフローはんだ付け時に発生する熱風が第1端子の挿入部分を通過した後に基板と底壁との間を通り抜けることを許容するように基板に当接して当該基板と底壁との間に隙間を確保することが可能な形状を有する。これにより、コネクタを基板に取り付けたときに、突出部が基板に当接してハウジングを基板表面から離間させることにより、ハウジングの底壁と基板との間にはリフローはんだ付け時の熱風の通路を確保することができる。その結果、ハウジングの立直壁に近い第1端子の挿入部分にリフローはんだ付け時の熱風が良好に当たることが可能になり、外側の第2列のスルーホールに挿入される第2端子だけでなく、内側の第1列のスルーホールに挿入される第1端子においても良好なはんだ付けを行うことができる。
【0020】
さらに、前記第1端子の挿入部分は、前記第1端子が配列された列と前記第2端子が配列された列とが並ぶ方向から見て隣接する前記第2端子の挿入部分の間に位置するように、配置されているのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、第1端子の挿入部分と第2端子の挿入部分は、第1端子が配列された列と第2端子が配列された列とが並ぶ方向から見て、互いに重なり合わないように配置される。そのため、リフローはんだ付け時に発生する熱風が基板表面に沿って流れるときに、ハウジングの立直壁から遠い列の第2端子が近い列の第1端子への熱風の流れを阻害することがなくなり、ハウジングの立直壁に近い第1端子の挿入部分にリフローはんだ付け時の熱風がさらに良好に当たることが可能になる。その結果、端子間の温度差がさらに減少し、ハンダペーストが完全に溶けてはんだ不良の発生をより確実に回避することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明のコネクタによれば、外側の第2列のスルーホールに挿入される第2端子だけでなく、内側の第1列のスルーホールに挿入される第1端子においても良好なはんだ付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のコネクタの第1実施形態に係るコネクタを斜め下方から見た斜視図である。
【図2】図1のコネクタが基板にリフロー実装された状態を斜め上方から見た斜視図である。
【図3】図1のコネクタが基板にリフロー実装された状態における開口および補強板の配置を示す斜視図である。
【図4】図1のコネクタが基板にリフロー実装された状態における開口の配置を示す断面斜視図である。
【図5】図1のコネクタが基板にリフロー実装された状態における開口の配置を示す縦断面図である。
【図6】本発明のコネクタの第2実施形態に係るコネクタが基板にリフロー実装された状態におけるハウジングの下部に突出部が設けられた構造の縦断面図である。
【図7】本発明の変形例である端子列がハウジングの長手方向に沿って第1端子および第2端子が交互に形成された領域のみに開口が形成されたコネクタの平面図である。
【図8】図7のコネクタの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、図面を参照しながら、本発明のコネクタについてさらに詳細に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1〜4に示されるように、本発明の第1実施形態に係るコネクタ1は、互いに平行になるように3列に並んで形成された複数のスルーホール33〜35を有するプリント配線基板(以下、基板という)31にリフローはんだ付けによって実装されるコネクタである。コネクタ1と基板31とによって1つの電子装置30を構成している。
【0026】
コネクタ1は、複数の端子、すなわち、第1端子3、第2端子4ならびに第3端子5と、これらの端子3〜5を保持するハウジング2とを備えている。これらの端子3〜5は、3列に並ぶ複数のスルーホール33〜35に挿入されてリフローはんだ付けされる。コネクタ1の各構成要素は、具体的には以下のように構成されている。
【0027】
複数の第1端子3は、図2〜5に示されるように、基板31上においてハウジング2に最も近い第1列に並ぶスルーホール33に対してそれぞれ挿入される端子である。第1端子3は、挿入部分3aと、貫通部分3bとを有する。貫通部分3bは、立直壁2bを貫通し、その一方の端部(図4〜5の右側端部)がハウジング2の内部でコネクタ接続部となる。挿入部分3aは、この貫通部分3bの他方の端部(図4〜5の左側端部)から基板31に向かって延び、かつ立直壁2bに最も近い第1列のスルーホール33に挿入される。挿入部分3aと貫通部分3bとは、互いに直交する。また、第1端子3の挿入部分3aは、基板31の第1列のスルーホール33に挿入できるような形状を有しており、具体的には、スルーホール33の内径よりも若干小さい外径を有し、かつ、それぞれの先端が尖っており、基板31の表面に直交して第1列のスルーホール33の位置と対応して配列されている。
【0028】
複数の第2端子4は、ハウジング2から見て第2列目に並ぶスルーホール34に対して挿入される端子である。第2端子4は、挿入部分4aと、貫通部分4bとを有する。貫通部分4bは、立直壁2bを貫通し、その一方の端部(図4〜5の右側端部)がハウジング2の内部でコネクタ接続部となる。挿入部分4aは、この貫通部分4bの他方の端部(図4〜5の左側端部)から基板31に向かって延び、かつ立直壁2bに対して第1列のスルーホール33よりも遠い第2列のスルーホール34に挿入される。挿入部分4aと貫通部分4bとは、互いに直交する。また、第2端子4の挿入部分4aは、基板31の第2列のスルーホール34に挿入できるような形状を有しており、具体的には、スルーホール34の内径よりも若干小さい外径を有し、かつ、それぞれの先端が尖っており、基板31の表面に直交して第2列のスルーホール34の位置と対応して配列されている。
【0029】
複数の第3端子5は、ハウジング2から見て最も遠い第3列目に並ぶスルーホール35に対して挿入される端子である。第3端子5は、挿入部分5aと、貫通部分5bとを有する。貫通部分5bは、立直壁2bを貫通し、その一方の端部(図4〜5の右側端部)がハウジング2の内部でコネクタ接続部となる。挿入部分5aは、この貫通部分5bの他方の端部か(図4〜5の左側端部)ら基板31に向かって延び、かつ立直壁2bに対して第1〜2列のスルーホール33〜34よりも遠い第3列のスルーホール35に挿入される。挿入部分5aと貫通部分5bとは、互いに直交する。また、第3端子5の挿入部分5aは、基板31の第3列のスルーホール35に挿入できるような形状を有しており、具体的には、スルーホール35の内径よりも若干小さい外径を有し、かつ、それぞれの先端が尖っており、基板31の表面に直交して第3列のスルーホール35の位置と対応して配列されている。
【0030】
また、本実施形態では、最も外側に配列される第3端子5は、ハウジング2の長手方向Lにおいて中間位置付近の空間部11を挟んで両側に配置されている。そのため、空間部11を通して第2端子4に熱風が当たりやすくなっている。
【0031】
ハウジング2は、合成樹脂などからなり、車載部品などのプラグが接続できるように後面側が開放された中空箱体であり、基板31の上において第1列のスルーホール33に対して第2列のスルーホール35と反対側に配置される。ハウジング2は、基板31上に取り付けられる底壁2aと、当該底壁2aから立ち上がるとともに第1〜3端子3〜5を保持する立直壁2bを有する。
【0032】
ハウジング2の底壁2aは、基板31に対向するように平坦な形状を有しており、コネクタ1のリフローはんだ付け時には基板31の表面と平行に延びるように配置される。本実施形態のコネクタ1では、立直壁2bと底壁2aとは、直交する位置関係になっている。
【0033】
立直壁2bは、図4に示されるように、突起状の取付部分6、7、8を有している。第1〜3端子3〜5における水平に延びる貫通部分3b、4b、5bは、それぞれ取付部分6、7、8に連結されている。取付部分6、7、8には、第1〜3端子3〜5が配列された列が並ぶ方向Aに沿って当該取付部分6〜8を貫通する貫通孔6a、7a、8aが形成されている。第1〜3端子3〜5の貫通部分3b、4b、5bは、これら貫通孔6a、7a、8aに挿入されることにより各取付部分6、7、8に保持されている。
【0034】
図1および図3〜5に示されるように、立直壁2bには、リフローはんだ付け時に発生する熱風H3(図5参照)が第1端子3の挿入部分3aを通過した後にハウジング2内部へ導入されることを許容する形状を有する開口9が形成されている。
【0035】
具体的には、開口9は、ハウジング2の長手方向Lに延びる細長い形状を有しており、立直壁2bから底壁2aにかけて形成されている。すなわち、開口9は、前方開口部分9aと、底部開口部分9bとを有している。前方開口部分9aは、立直壁2bを貫通してハウジング2内部の空間部2eに連通する。底部開口部分9bは、底壁2aを貫通して当該空間部2eに連通する。これらの前方開口部分9aおよび底部開口部分9bが連通することによって、熱風H3の通路となる開口9を構成している。
【0036】
開口9は、図1に示されるように、ハウジング2の立直壁2bにおけるハウジング2の長手方向の一部の領域であって、第1端子3が配列されている範囲と第2端子4が配列されている範囲とが重なっている領域R1に形成されている。本実施形態では、第1端子3が配列されている範囲は、ハウジングの長手方向Lにおいてハウジング2のほぼ全長よりやや狭い範囲である。また、第2端子4が配列されている範囲も第1端子3が配列されている範囲とほぼ同じ長さの範囲である。さらに、第3端子5が配列されている範囲は、第1〜2端子3〜4が配列されている範囲のうち中間付近の空間部11を挟んで両側の範囲である。
【0037】
また、第1実施形態では、ハウジング2の長手方向Lに延びる形状を有する開口9の周囲の部分を補強するために、ハウジング2は、開口9の内部において立直壁2bと底壁2aとの間を連結する複数の補強板10を有している。補強板10は、その厚さ方向がハウジング2の長手方向Lに合致する形状を有する。具体的には、補強板10は、ハウジング2の底壁2aおよび立直壁2bと一体形成された薄板状の部材からなり、開口9においてその厚さ方向がハウジング2の長手方向Lに合致するように配置されている。また。隣接する補強板10同士は、ハウジングの長手方向Lに沿って互いに離間しており、熱風の通路を確保している。
【0038】
また、図4〜5に示されるように、ハウジング2の後面2cには、車載部品などのプラグが挿入可能な開口2dが形成されている。ハウジング2の内部の空間部2eには、第1〜3端子3〜5の貫通部分3b〜5bが突出しているので、ハウジング2の内部に挿入されるプラグと第1〜3端子3〜5の貫通部分3b〜5bとを電気的に接続することが可能である。
【0039】
また、図2に示されるように、ハウジング2の長手方向において離間する左右の側端部には、ハウジング2を基板31にねじSで締結するための突出部2fが形成されている。突出部2fには、上下に貫通する貫通孔2gが形成されており、当該貫通孔2gにねじSが挿入できるようになっている。ねじSを貫通孔2gに挿入して基板31のねじ孔(図示せず)に螺入することにより、突出部2fを基板31の所定の位置に締結することができる。
【0040】
コネクタ1が実装される基板31には、図2および図5に示されるように、互いに平行になるように3列に並んで形成された複数のスルーホール33〜35が形成され、各スルーホール33〜35の内面から基板31の表裏両面(または表面もしくは裏面のいずれか)にかけて配線めっき部分36、37、38が形成されている。
【0041】
コネクタ1を基板31にリフローはんだ付けする場合、図5に示されるように、各スルーホール33〜35の内部にクリームはんだを塗布した後に、コネクタ1の第1〜3端子3〜5の挿入部分3a〜3bを基板31のスルーホール33〜35に挿入し、その状態で、基板31の表裏両面から熱風H1、H2を吹き付ける。これにより、第1〜3端子3〜5の挿入部分3a〜3bが加熱されるので、これらの端子3〜5を介して伝わる熱によってクリームはんだを溶融させる。溶融したはんだは、図5のはんだ部分41、42、43となって各挿入部分3a〜3cと配線めっき部分36〜38との間を電気的に接続する。
【0042】
上記のようにリフローはんだ付けを行うとき、本実施形態のコネクタ1では、ハウジング2の立直壁2bに開口9が形成されているので、リフローはんだ付け時に発生する基板31に沿って流れる熱風H3が第1端子3の挿入部分3aを通過した後に、開口9を通してハウジング2内部へ導入することができる。そのため、ハウジング2の立直壁2bに近い第1端子の挿入部分3aにリフローはんだ付け時の熱風H3が良好に当たり、挿入部分3aのリフローはんだ付けを良好に行うことができる。
【0043】
(第1実施形態の特徴)
(1)
以上説明したように、第1実施形態のコネクタ1では、図1および図3〜5に示されるように、立直壁2bには、リフローはんだ付け時に発生する熱風H3(図5参照)が第1端子3の挿入部分3aを通過した後にハウジング2内部へ導入されることを許容する形状を有する開口9が形成されているので、リフローはんだ付け時の熱風H3の通路をハウジング2内部に確保することができる。そのため、ハウジング2の立直壁2bに近い第1端子の挿入部分3aにリフローはんだ付け時の熱風が良好に当たることが可能になるので、外側の第2〜3列のスルーホール34〜35に挿入される第2〜3端子4、5だけでなく、最も内側の第1列のスルーホール33に挿入される第1端子3においても良好なはんだ付けを行うことができる。したがって、端子間の温度差が減少し、ハンダペーストが完全に溶けてはんだ不良の発生を回避することができる。その結果、リフローはんだ付け時の温度プロファイルの設定範囲(例えば、熱風の温度、風量、時間などのパラメータの設定)の自由度が向上する。
【0044】
(2)
また、第1実施形態のコネクタ1では、図1に示されるように、開口9は、ハウジング2の立直壁2bにおけるハウジング2の長手方向の一部の領域であって、第1端子3が配列されている範囲と第2端子4が配列されている範囲とが重なっている領域R1に形成されている。すなわち、本実施形態では、第1端子3が配列されている範囲と第2端子4が配列されている範囲とが重なり合うことにより熱風H3が当たりにくい第1端子3が存在する範囲を包含する領域R1に開口9が部分的に形成されているので、第1端子3を通り過ぎる熱風H3の通路を確保しながら、ハウジング2の強度の低下を抑えることができる。
【0045】
(3)
また、第1実施形態のコネクタ1では、図1に示されるように、第1端子3が配列されている範囲と第2端子4が配列されている範囲が重なり合っている領域R1が広く、熱風H3の通路を広く確保するために、開口9が長手方向に延びるように形成されている。このような長手方向に延びる開口9の周辺を補強するために、開口9の内部において立直壁2bと底壁2aとの間を連結する補強板10が設けられているので、第1端子3を通り過ぎる熱風の通路を確保しながら、ハウジング2の強度を維持することができる。また、補強板10は、その厚さ方向がハウジング2の長手方向Lに合致する形状を有しているので、開口9面積の減少を抑えることができる。
【0046】
なお、ハウジング2の立直壁2bには、第1端子3、第2端子4または第3端子5のいずれかのみが設けられている領域がある場合には、開口9は、当該第1端子3、第2端子4または第3端子5のいずれかのみが設けられている領域以外の領域に形成されているのが好ましい(例えば、後段で説明される図8に示される2列に配列されたコネクタ51のように、立直壁52bに近い第1端子53のみが設けられた領域以外の第1端子53および第2端子54が重なった領域R2のみに開口56を形成するのが好ましい。)。そのように構成することにより、第1端子3、第2端子4または第3端子5のいずれかのみが設けられている領域では、第2端子4および第3端子5が第1端子3へ向かう熱風の流れを阻害しないので、そのような領域には開口9を形成しないように、その領域以外の領域に開口9が部分的に形成される。これによって、ハウジング2の強度の低下をさらに抑制することができる。
【0047】
(4)
さらに、第1実施形態のコネクタ1では、図1およびに図5に示されるように、開口9は、立直壁2bおよび底壁2aに形成され、具体的には、開口9は、立直壁2bに形成された前方開口部分9aと底壁2aに形成された底部開口部分9bとが連通することにより構成されている。かかる構成によれば、開口9が立直壁2bだけでなく底壁2aにまで拡大して形成されているので、ハウジング2内部におけるリフローはんだ付け時の熱風H3の通路を十分広く確保することができ、ハウジング2の立直壁2bに近い第1端子3の挿入部分3aにリフローはんだ付け時の熱風H3がさらに良好に当たることが可能になる。そのため、端子間の温度差がさらに減少し、ハンダペーストが完全に溶けてはんだ不良の発生を効果的に回避することができる。
【0048】
(第2実施形態)
上記第1実施形態のコネクタ1では、ハウジング2の立直壁2bに近い第1端子の挿入部分3aにリフローはんだ付け時の熱風が良好に当たるように、ハウジング2の立直壁2bに開口9を形成してリフローはんだ付け時の熱風H3の通路をハウジング2内部に確保しているが、熱風の通路を確保する他の手段として、コネクタの底壁と基板との間に隙間を設けるような構成にしてもよい。
【0049】
すなわち、本発明の第2実施形態に係るコネクタとして、図6に示されるコネクタ21では、図1〜5に示される開口9を設ける代わりに、ハウジング2が、底壁2aの下面から突出した複数の突出部12を備えている。その他の構成は、上記の図1〜5に示されるコネクタ1の構成と共通している。
【0050】
図6に示される複数の突出部12は、ハウジング2の長手方向(図6の紙面垂直方向)に互いに離間して配置され、かつ、リフローはんだ付け時に発生する熱風H4が第1端子3の挿入部分3aを通過した後に基板31と底壁2aとの間を通り抜けることを許容するように基板31に当接して当該基板31と底壁2aとの間に隙間13を確保することが可能な形状を有する。具体的には、図1の補強板10のように、薄板状の複数の突出部12が底壁2aの下面から突出し、ハウジング2の長手方向(図6の紙面垂直方向)に沿って互いに離間して配置されている。
【0051】
上記のようにコネクタ21を複数の突出部12を底壁2aから突出した構成にすることより、突出部12を基板31に当接させることによりハウジング2の底壁2aを基板31表面から所定の高さの隙間13だけ離間させることができ、ハウジング2の底壁2aと基板31との間にはリフローはんだ付け時の熱風H4の通路を確保することができる。したがって、ハウジング2の立直壁2bに近い第1端子3の挿入部分3aにリフローはんだ付け時の熱風が良好に当たることが可能になり、外側の第2〜3列のスルーホール34〜35に挿入される第2〜3端子4、5だけでなく、最も内側の第1列のスルーホール33に挿入される第1端子3においても良好なはんだ付けを行うことができる。したがって、端子間の温度差が減少し、ハンダペーストが完全に溶けてはんだ不良の発生を回避することができる。その結果、リフローはんだ付け時の温度プロファイルの設定範囲(例えば、熱風の温度、風量、時間などのパラメータの設定)の自由度が向上する。
【0052】
(変形例)
上記第1〜2実施形態で説明したコネクタ1、21では、複数の端子3〜5が第1〜3端子3〜5が配列された列が並ぶ方向Aに沿って重なり合う位置に並んで配列されているが、ハウジング2に近い第1端子3により良好に熱風が当たるようにするために、端子の配列を第1〜3端子3〜5が配列された列が並ぶ方向Aに沿ってずらして配置しても良い。
【0053】
具体的には、本発明の変形例として、図7〜8に示される複数の端子53〜54が2列に並んで配列されたコネクタ51のように、第1端子53の挿入部分53aは、第1〜2端子53〜54が配列された列が並ぶ方向Aから見て隣接する第2端子54の挿入部分54aの間に位置するように配置されている。この構成では、第1端子53の挿入部分53aと第2端子54の挿入部分54aは、第1〜2端子53〜54が配列された列が並ぶ方向Aから見て、互いに重なり合わないように配置されている。そのため、リフローはんだ付け時に発生する熱風が基板31表面に沿って流れるときに、ハウジング52の立直壁52bから遠い列の第2端子54が近い列の第1端子53への熱風の流れを阻害することがなくなり、ハウジング52の立直壁52bに近い第1端子53の挿入部分53aにリフローはんだ付け時の熱風がさらに良好に当たることが可能になる。その結果、端子間の温度差がさらに減少し、ハンダペーストが完全に溶けてはんだ不良の発生をより確実に回避することができる。
【0054】
また、この図7〜8に示されるコネクタ51では、ハウジング52の長手方向Lについての中間位置付近には、第2端子54が形成されておらず、第1端子53のみが形成されている領域55がある。この領域55における第1端子53は、リフローはんだ付け時には第2端子54に邪魔されずに熱風を良好に受けることができる。そこで、その範囲55については、熱風の通路を確保するための開口をハウジング52の立直壁52bに形成しないでおき、立直壁52bに近い第1端子53のみが設けられた領域55以外の第1端子53および第2端子54が重なった領域R2のみに開口56が形成されている。これによって、ハウジング52の強度の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0055】
1、21 コネクタ
2、52 ハウジング
2a 底壁
2b、52b 立直壁
2f 突出部
3、53 第1端子
4、54 第2端子
5 第3端子
3a、4a、5a、53a、54a 挿入部分
3b、4b、5b 貫通部分
9、56 開口
10 補強板
31 プリント配線基板
33、34、35 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に延びる第1列および第2列に沿って並ぶ複数のスルーホールを有する基板に実装されるコネクタであって、
前記スルーホールの第1列に対して挿入される複数の第1端子と、
前記スルーホールの第2列に対して挿入される複数の第2端子と、
前記基板上に取り付けられる底壁、および当該底壁から立ち上がるとともに前記第1端子および第2端子を保持する立直壁を有し、前記基板の上において前記スルーホールの第1列に対して前記スルーホールの第2列と反対側に配置されるハウジングと
を備えており、
前記第1端子は、前記立直壁を貫通して一方の端部がコネクタ接続部を構成する貫通部分と、この貫通部分の他方の端部から前記基板に向かって延び、かつ前記立直壁に最も近い前記スルーホールの第1列に挿入される挿入部分とを有しており、
前記第2端子は、前記立直壁を貫通して一方の端部がコネクタ接続部を構成する貫通部分と、この貫通部分の他方の端部から前記基板に向かって延び、かつ、前記立直壁に対して前記スルーホールの第1列よりも遠い当該スルーホールの第2列に挿入される挿入部分とを有しており、
前記立直壁には、リフローはんだ付け時に発生する熱風が前記第1端子の挿入部分を通過した後に前記ハウジング内部へ導入されることを許容する形状を有する開口が形成されている、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記開口は、前記ハウジングの立直壁における前記ハウジングの長手方向の一部の領域であって、前記第1端子が配列されている範囲と前記第2端子が配列されている範囲とが重なっている領域に形成されている、
請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングの立直壁には、前記第1端子または前記第2端子のいずれかのみが設けられている領域があり、
前記開口は、当該前記第1端子または前記第2端子のいずれかのみが設けられている領域以外の領域に形成されている、
請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記開口は、前記ハウジングの長手方向に延びており、
前記ハウジングは、前記開口の内部において前記立直壁と前記底壁との間を連結する補強板を有しており、
前記補強板は、その厚さ方向が前記ハウジングの長手方向に合致する形状を有する、
請求項2または3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記開口は、前記立直壁および前記底壁に形成されている、
請求項1から4のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
互いに平行に延びる第1列および第2列に沿って並ぶ複数のスルーホールを有する基板に実装されるコネクタであって、
前記スルーホールの第1列に対して挿入される複数の第1端子と、
前記スルーホールの第2列に対して挿入される複数の第2端子と、
前記基板上に取り付けられる底壁、および当該底壁から立ち上がるとともに前記第1端子および第2端子を保持する立直壁を有し、前記基板の上において前記スルーホールの第1列に対して前記スルーホールの第2列と反対側に配置されるハウジングと
を備えており、
前記第1端子は、前記立直壁を貫通して一方の端部がコネクタ接続部を構成する貫通部分と、この貫通部分の他方の端部から前記基板に向かって延び、かつ前記立直壁に最も近い前記スルーホールの第1列に挿入される挿入部分とを有しており、
前記第2端子は、前記立直壁を貫通して一方の端部がコネクタ接続部を構成する貫通部分と、この貫通部分の他方の端部から前記基板に向かって延び、かつ、前記立直壁に対して前記スルーホールの第1列よりも遠い当該スルーホールの第2列に挿入される挿入部分とを有しており、
前記ハウジングは、前記ハウジングの長手方向に互いに離間して配置され、前記底壁の下面から突出し、かつ、リフローはんだ付け時に発生する熱風が前記第1端子の挿入部分を通過した後に前記基板と前記底壁との間を通り抜けることを許容するように前記基板に当接して当該基板と前記底壁との間に隙間を確保することが可能な形状を有する複数の突出部をさらに備えている、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項7】
前記第1端子の挿入部分は、前記第1端子が配列された列と前記第2端子が配列された列とが並ぶ方向から見て隣接する前記第2端子の挿入部分の間に位置するように、配置されている、
請求項1から6のいずれかに記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−146533(P2012−146533A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4334(P2011−4334)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】