コネクタ
【課題】90度曲げ部を有する光ファイバを収容しても、今までと同等の精度で接続可能なコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ200は、90度曲げ部をそれぞれ有する複数の低損失光ファイバ10と、V溝付きフェルール220と、蓋体230と、複数のファイバ保持孔を有する第2のフェルール250とを備えている。V溝付きフェルール220は、複数の低損失光ファイバ100の90度曲げ部より端部側のファイバ端部13cを一列に配列させる位置決め溝である複数のV溝と開口部とを有する。
【解決手段】コネクタ200は、90度曲げ部をそれぞれ有する複数の低損失光ファイバ10と、V溝付きフェルール220と、蓋体230と、複数のファイバ保持孔を有する第2のフェルール250とを備えている。V溝付きフェルール220は、複数の低損失光ファイバ100の90度曲げ部より端部側のファイバ端部13cを一列に配列させる位置決め溝である複数のV溝と開口部とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、90度曲げ部をそれぞれ有する複数本の光ファイバを配列した光ファイバアレイを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、例えば、光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス(FTTH:Fiber To The Home)等では、ユーザー宅の建物内に光ファイバを配線する際に、光の伝播方向を例えば90度に曲げるためのファイバ曲げ構造や曲げコネクタ構造が必要になる。
【0003】
このような曲げコネクタ構造には、曲げ損失を小さく抑えるために、例えば、コアの周囲のクラッドに複数の空孔を形成することにより、等価的に比屈折率差(Δ)を大きくしたホールアシスト型ホーリーファイバ(いわゆるホールアシストファイバ)を用いるのが望ましい。このようなホールアシストファイバとして、クラッドに形成される空孔の位置を、コア中心から異なった位置に任意に配置させることが可能な光ファイバが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、100フェムト秒程度のパルス幅を有するフェムト秒レーザを光源として用いてレーザ加工を行い、高精度な光デバイスなどを作製するレーザ加工装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−69871号公報
【特許文献2】特開2006−198634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来技術のような高比屈折率差(Δ)構造の光ファイバでは、モードフィールド径が小さくなるため、接続部のコネクタに高精度が要求される。また、受発光素子との位置合わせにも高精度が要求される。さらに、現在FTTH等でも導入されている一般のシングルモードファイバ(SMF)と接続することは、モードフィールド径が小さくなるために困難である。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は90度曲げ部を有する光ファイバを収容しても、今までと同等の精度で接続可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るコネクタは、90度曲げ部をそれぞれ備え、コアとクラッドを有する複数本の光ファイバを配列した光ファイバアレイと、
底壁部と、奥側の垂直壁部と、左右の側壁部とからなり、上部および前記垂直壁部に対向する周壁部の一部が開口した開口部と、前記垂直壁部に形成された溝であって、複数の前記光ファイバの前記90度曲げ部より端部側に位置する当該光ファイバの部分を一列に配列させるための位置決め溝である複数のV溝と、を有する第1のフェルールと、
前記第1のフェルールの前記開口部に係合し、前記複数の光ファイバを前記複数のV溝に押し付ける蓋体と、
前記第1フェルールに嵌合可能であり、前記蓋体により前記複数のV溝に押し付けられた前記光ファイバの部分のさらに端部側を保持するためのファイバ保持孔を有する第2のフェルールと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、光ファイバが、蓋体との1つの接触点と、第1のフェルールのV溝との2つの接触点の合計3点で接触して位置決めされることから、V溝の精度で高精度に光ファイバを配列することが可能なコネクタを実現することができる。これにより、90度曲げ部を有する光ファイバを収容しても、今までと同等の精度で接続可能なコネクタを実現することができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第1の態様に係るコネクタにおいて、前記開口部と前記蓋部の係合部が、前記開口部の前記周壁部の一部に開口した部分に対して前記垂直壁部に近い奥側に位置する、前記左右の側壁部間となる横幅の狭い第1係合部と、前記垂直壁部から遠い手前側に位置し前記第1係合部よりも横幅の広い第2係合部とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第1または2の態様に係るコネクタにおいて、前記蓋体が、前記複数の光ファイバを前記複数のV溝に押し付ける部分の厚さが、他の部分より薄いことを特徴とする。この構成によれば、例えば、蓋体の第1係合部の厚さを蓋体の第2係合部の厚さより薄くすることにより、蓋体の第1係合部の一部が光ファイバの90度曲げ部の部分に当たって該90度曲げ部を破断させることを防止することができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第1乃至3のいずれか1つの態様に係るコネクタにおいて、前記第1のフェルールの前記底壁部には樹脂を充填するための注入口が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第1乃至4のいずれか1つの態様に係るコネクタにおいて、前記第2のフェルールの前記ファイバ保持孔が、テーパ穴であることを特徴とする。この構成によれば、ファイバ保持孔において光ファイバを挿入する側から孔の奥方向に向けて径が小さくなるようなテーパ穴にすることで、光ファイバのファイバ保持孔への挿入が容易になる。
【0014】
本発明の第6の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第1乃至5のいずれか1つの態様に係るコネクタにおいて、前記光ファイバの前記90度曲げ部が、前記コアの周囲の前記クラッドに前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成されたホールアシストファイバにより形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、光ファイバの90度曲げ部をホールアシストファイバにすることで、そのホールアシストファイバの部分は等価的に比屈折率差(Δ)の大きい光ファイバになる。これにより、90度曲げ部においても、曲げ損失が低減される。
【0016】
本発明の第7の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第6の態様に係るコネクタにおいて、前記ホールアシストファイバの両端に、第1および第2の中実な光ファイバを有することを特徴とする。この構成によれば、90度曲げ部がホールアシストファイバとなっているので、90度曲げ部での曲げ損失を低減できる。また、ホールアシストファイバの両端は通常の光ファイバであるので、FTTH等で使用される一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続が可能になる。
【0017】
本発明の第8の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第6または7の態様に係るコネクタにおいて、前記複数の管状の空隙が、前記シングルモードファイバに曲げ加工を施す前或いはその加工後に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工により形成された空隙であることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、100フェムト秒程度のパルス幅を有するフェムト秒レーザを光源としたレーザ加工技術により、ホールアシストファイバ部分の空隙を高い精度、例えば1μm以下の加工精度で作製することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光ファイバが、蓋体との1つの接触点と、第1のフェルールのV溝との2つの接触点の合計3点で接触して位置決めされることから、V溝の精度で高精度に光ファイバを配列することが可能なコネクタを実現することができる。これにより、90度曲げ部を有する光ファイバを収容しても、今までと同等の精度で接続可能なコネクタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第1実施形態に係る低損失光ファイバ10の一部を示す拡大図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】低損失光ファイバ10の作製に用いるレーザ加工装置を示す概略構成図。
【図4】本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第2実施形態に係る低損失光ファイバ10Aの一部を示す拡大図。
【図5】図4のB−B線に沿った断面図。
【図6】本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバアレイの一実施形態に係る光ファイバアレイ100を示す斜視図。
【図7】本発明のコネクタの一実施形態に係るコネクタ200を示す斜視図。
【図8】図7に示すコネクタ200の縦断面図。
【図9】V溝付きフェルール220を示す斜視図。
【図10】複数のファイバ保持穴を有する第2のフェルール250を示す斜視図。
【図11】図10のD−D線に沿った断面図。
【図12】コネクタ200の組み立て作業の説明に用いる説明図。
【図13】図12に示す組み立て作業の後に行う組み立て作業の説明に用いる説明図。
【図14】複数の低損失光ファイバのファイバ端部が位置決めされて保持されている様子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を具体化したコネクタの実施形態を図面に基づいて説明する。
(本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第1実施形態)
図1は本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第1実施形態に係る低損失光ファイバ10の一部を示す拡大図である。図2は図1のA−A線に沿った断面図である。
【0022】
低損失光ファイバ10では、図1および図2に示すように、コア11とクラッド12を有するシングルモードファイバ(SMF)13の一部が、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成されたホールアシストファイバとなっている。光ファイバの第1実施形態では、コア11の周囲に、6つの管状の空隙14が略等間隔に形成されている。
【0023】
このように、低損失光ファイバ10では、シングルモードファイバ13の一部は90度曲げ部13aになっており、この90度曲げ部13aのみがホールアシストファイバとなっている。複数の管状の空隙14が、シングルモードファイバ13に曲げ加工を施す前或いはその加工後に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工により形成されている。
【0024】
(低損失光ファイバ10の作製方法)
まず、低損失光ファイバ10の作製に用いるレーザ加工装置を、図3に基づいて説明する。図3に示すレーザ加工装置20は、フェムト秒、例えば100フェムト秒程度のパルス幅の超短パルス光26を出射するレーザ発振器21と、メモリ22と、レーザ加工されるシングルモードファイバ13が載置されるステージ23と、光学系24と、それらの情報や制御プログラムに従ってレーザ光源21およびステージ23を制御するコントローラ25と、を備えている。
【0025】
メモリ22には、加工位置(形成する空隙14の位置)の情報、各加工位置での空隙14の大きさ、つまり、光学系24により集光される超短パルス光26のビーム径などの情報、および制御プログラムなどが格納されている。コントローラ25は、メモリ22に格納された加工位置の情報、各加工位置での空隙14の大きさ(ビーム径)などの情報および制御プログラムに従って、レーザ発振器21、ステージ23および光学系24を駆動制御して、フェムト秒程度のパルス幅の超短パルス光(レーザ光)26の焦点位置、その焦点位置でのスポットサイズ(ビーム径)を制御する。
【0026】
このようなレーザ加工装置20を用いて、コア11とクラッド12を有するシングルモードファイバ13の一部にレーザ加工を施して、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14を形成する。これにより、シングルモードファイバ13の一部を、コア11の周囲のクラッド12にコア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成されたホールアシストファイバとした低損失光ファイバ10が作製される。なお、レーザ加工装置20を用いたレーザ加工は、シングルモードファイバ13の一部に曲げ加工を施す前に行ってもよいし、或いはその曲げ加工後に行ってもよい。
以上のように構成された光ファイバの第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0027】
(1)シングルモードファイバ13の一部である90度曲げ部13aをホールアシストファイバにすることで、そのホールアシストファイバの部分(90度曲げ部13a)は等価的に比屈折率差(Δ)の大きい光ファイバになる。これにより、ホールアシストファイバとなったシングルモードファイバの一部を、曲げ加工により曲げ部、例えば90度曲げ部13aにしても、その90度曲げ部13aの曲げ損失が低減される。
【0028】
(2)ホールアシストファイバの両側は通常のシングルモードファイバ13であるので、FTTH等で使用される一般のシングルモードファイバと接続が可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能である。
【0029】
(3)従って、曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバ10を実現することができる。
【0030】
(4)シングルモードファイバ13の一部である90度曲げ部13aのみがホールアシストファイバとなっているので、90度曲げ部13aでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバ10を実現することができる。
【0031】
(5)100フェムト秒程度のパルス幅を有するフェムト秒レーザを光源としたレーザ加工技術(レーザ加工装置20)により、ホールアシストファイバ部分(90度曲げ部13a)の空隙14を高い精度、例えば1μm以下の加工精度で作製することができる。
【0032】
(本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第2実施形態)
図4は本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第2実施形態に係る低損失光ファイバ10Aの一部を示す拡大図である。図5は図4のB−B線に沿った断面図である。
【0033】
低損失光ファイバ10Aは、図4および図5に示すように、コア11とクラッド12をそれぞれ有する第1および第2のシングルモードファイバ131および132と、コア11とクラッド12を有し、第1のシングルモードファイバ131と第2のシングルモードファイバ132との間に融着された第3のシングルモードファイバ133と、を備えている。図4において、符号「31」は第1のシングルモードファイバ131と第3のシングルモードファイバ133との融着部を、符号「32」は第2のシングルモードファイバ132と第3のシングルモードファイバ133との融着部をそれぞれ示している。
【0034】
この低損失光ファイバ10Aでは、第3のシングルモードファイバ133が、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成されたホールアシストファイバである。また、第3のシングルモードファイバ133は90度曲げ部13bを有し、この90度曲げ部13bがホールアシストファイバである。
【0035】
(低損失光ファイバ10Aの作製方法)
この低損失光ファイバ10Aは、次のようにして作製される。
まず、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成された石英系の光ファイバ母材(図示省略)を線引き加工して、ホールアシストファイバである第3のシングルモードファイバ133を形成する。
【0036】
次に、第3のシングルモードファイバ133を、第1のシングルモードファイバ131と第2のシングルモードファイバ132との間に融着する。これにより、低損失光ファイバ10Aが作製される。なお、複数の管状の空隙14が形成された光ファイバ母材は、石英系の光ファイバ母材に限らず、プラスチック製の光ファイバ母材であっても良い。ここで用いる光ファイバ母材は、中心部にある屈折率の高いコアと、その周囲にあるコアより屈折率の低いクラッドと、このクラッド内に複数の管状の空隙があるものであれば、その材料は石英系の材料に限らない。
以上のように構成された光ファイバの第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0037】
(1)第3のシングルモードファイバ133の90度曲げ部13bのみがホールアシストファイバとなっており、かつ、第3のシングルモードファイバ133の一端側は第1のシングルモードファイバ131に、その他端側は第2のシングルモードファイバ132にそれぞれ融着されている。このため、90度曲げ部13bでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバ10Aを実現することができる。
【0038】
(2)低損失光ファイバ10Aを、線引き加工と融着という一般的な技術を用いて作製することができる。このため、低損失光ファイバ10Aを低コストで作製することができる。
【0039】
(本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバアレイの一実施形態)
図6は本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバアレイの一実施形態に係る光ファイバアレイ100を示す斜視図である。
この光ファイバアレイ100は、図1および図2に示す低損失光ファイバ10が複数本配列されたものである。この光ファイバアレイ100は、12本の低損失光ファイバ10が一列に配列された多心テープ光ファイバである。なお、図6に示す符号「120」は光ファイバアレイ100の被覆部である。
【0040】
この光ファイバアレイの一実施形態によれば、90度曲げ部13aでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続可能な光ファイバアレイ100を実現することができる。
なお、光ファイバアレイ100は、図4および図5に示す低損失光ファイバ10Aを複数本配列したものであってもよい。
【0041】
(本発明のコネクタの一実施形態)
本発明のコネクタの一実施形態に係るコネクタ200を図7乃至図14に基づいて説明する。
【0042】
コネクタ200の具体的構成を以下に説明する。
コネクタ200は、図7および図8に示すように、90度曲げ部13aをそれぞれ有する複数の低損失光ファイバ10を含む光ファイバアレイ100と、V溝付きフェルール220と、蓋体230と、複数のファイバ保持孔251(図8参照)を有する第2のフェルール(コネクタ端面を有するフェルール)250と、を備えている。
【0043】
V溝付きフェルール220は、図9に示すように、複数の低損失光ファイバ10の90度曲げ部13aより端部側のファイバ端部13cを一列に配列させる位置決め溝である複数のV溝221と、開口部222と、を有する。このV溝付きフェルール220は、底壁部224と、奥側の垂直壁部225と、左右の側壁部226,227とを有し、上部および周壁部の一部が開口した箱型容器である。垂直壁部225の内壁面には、複数のV溝、本例では12個のV溝221が形成されている。底壁部224には、樹脂を充填するための注入口223が形成されている。複数のV溝221は、底壁部224に対して垂直方向にそれぞれ延びている。
【0044】
また、このV溝付きフェルール220にあっては、左右の側壁部226,227は、奥側にある横幅の狭い側壁部226a,227aと、手前側にある横幅の広い側壁部226b、227bと、を有している。横幅の狭い左右の側壁部226a,227aの外面に、図10に示す第2のフェルール250の左右の側壁部254,255の内面がそれぞれ嵌合可能になっている。このような構成を有するV溝付きフェルール220は、樹脂等の材料からなる成形体である。
【0045】
蓋体230は、図7および図12に示すように、V溝付きフェルール220の横幅の狭い側壁部226a,227aの内面にそれぞれ嵌合する横幅の狭い第1係合部231と、その横幅の広い側壁部226b、227bの内面にそれぞれ嵌合する横幅の広い第2係合部232とを有している。この蓋体230は、図7および図8に示すようにV溝付きフェルール220の開口部222に装着された状態で、V溝付きフェルール220内に90度曲げ部13aおよびその前後の部分が収容された複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cを複数のV溝221に端面230aで押し付けるようになっている。蓋体230の第1係合部231は、その端面230aで複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cを複数のV溝221に押し付ける際に、第1係合部231の一部が各低損失光ファイバ10の90度曲げ部13aの部分に当たって90度曲げ部13aを破断させないように、第2係合部232よりも厚さが薄くなっている(図8参照)。このような構成を有する蓋体230は、樹脂等の材料からなる成形体である。
【0046】
第2のフェルール250は、図10、図11および図13に示すように、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cをそれぞれ保持する複数の(本例では12個の)ファイバ保持孔251と、これらのファイバ保持孔251の左右に形成された2つのガイドピン孔252とを有している。また、第2のフェルール250の複数のファイバ保持孔251のファイバ挿入側端部には、各ファイバ保持孔251へ複数の低損失光ファイバ10の各ファイバ端部13cを挿入するのを容易にするために、テーパ穴253(図10、図11参照)がそれぞれ形成されている。これら複数のテーパ穴253には、複数のテーパ穴253へ複数の低損失光ファイバ10の各ファイバ端部13cを挿入するのを容易にするために、複数のファイバガイド溝256がそれぞれ形成されている。このような構成を有する第2のフェルール250は、樹脂等の材料からなる成形体である。また、コネクタ200にあっては、図8に示すように、蓋体230とV溝付きフェルール220との間の空間240に樹脂241が充填されている。
【0047】
次に、図7に示すコネクタ200の作製方法を説明する。
(1)まず、図6に示す複数の低損失光ファイバ10の、90度曲げ部13aおよびその前後の部分を、図9に示すV溝付きフェルール220に収容させる(図12参照)。
【0048】
(2)次に、図12に示す状態で、V溝付きフェルール220内に収容された複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cを複数のV溝221に端面230aで押し付けるように、蓋体230をV溝付きフェルール220の開口部222に装着する(図8,図13参照)。
【0049】
(3)次に、V溝付きフェルール220に形成された注入口223(図9参照)から、蓋体230とV溝付きフェルール220との間の空間240に樹脂241を注入し、樹脂241を硬化させる(図8参照)。これにより、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cが、複数のV溝221の精度で高精度に配列されて、V溝付きフェルール220から垂直に突き出た形になる(図8参照)。なお、樹脂241は、例えば紫外線硬化型樹脂である。
【0050】
(4)次に、複数の低損失光ファイバ10の、V溝付きフェルール220から突き出たファイバ端部13cを第2のフェルール250の複数のファイバ保持孔251にそれぞれ挿通させ、第2のフェルール250をV溝付きフェルール220にエポキシ系接着剤で固定する。これにより、図7および図8に示すコネクタ200が出来る。
【0051】
(5)次に、コネクタ200の第2のフェルール250の端面と、複数の低損失光ファイバ10のV溝付きフェルール220から突き出たファイバ端部13cとを、図8のC―C線に沿って研磨する。これにより、コネクタ200が完成する。このコネクタ200は、その2つのガイドピン孔252にガイドピン(図示省略)をそれぞれ嵌合させると共に、これら2つのガイドピンを、図示を省略した別の多心用フェルール型コネクタ(MTコネクタ)のガイドピン孔に嵌合させることにより、MTコネクタ等の別のコネクタと接続させることができる。
【0052】
以上のように構成された本発明のコネクタの一実施形態に係るコネクタ200によれば、90度曲げ部13aでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続可能なコネクタを実現することができる。
【0053】
また、コネクタ200によれば、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cは、図14に示すように、蓋体230の端面230aとの一つの接触点と、V溝付きフェルール220の各V溝221との2つの接触点との3点で接触して位置決めされる。これにより、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cがV溝221の精度で高精度に配列されるという利点が得られる。
【0054】
上記各実施形態に係る低損失光ファイバにおいて、ホールアシストファイバ部分に形成される複数の管状の空隙14の数、配置および大きさを適宜変更した低損失光ファイバにも本発明は適用可能である。具体的には、複数の管状の空隙14を「6」以外の複数個形成したもの、或いは、複数の管状の空隙14を周方向に複数列に配置したもの、或いは、複数の管状の空隙14の大きさが異なるもの、等にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10,10A,10B,10C:低損失光ファイバ
11:コア
12:クラッド
13:シングルモードファイバ
13a,13b:90度曲げ部
131:第1のシングルモードファイバ
132:第2のシングルモードファイバ
133:第3のシングルモードファイバ
14:空隙
20:レーザ加工装置
200:コネクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、90度曲げ部をそれぞれ有する複数本の光ファイバを配列した光ファイバアレイを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、例えば、光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス(FTTH:Fiber To The Home)等では、ユーザー宅の建物内に光ファイバを配線する際に、光の伝播方向を例えば90度に曲げるためのファイバ曲げ構造や曲げコネクタ構造が必要になる。
【0003】
このような曲げコネクタ構造には、曲げ損失を小さく抑えるために、例えば、コアの周囲のクラッドに複数の空孔を形成することにより、等価的に比屈折率差(Δ)を大きくしたホールアシスト型ホーリーファイバ(いわゆるホールアシストファイバ)を用いるのが望ましい。このようなホールアシストファイバとして、クラッドに形成される空孔の位置を、コア中心から異なった位置に任意に配置させることが可能な光ファイバが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、100フェムト秒程度のパルス幅を有するフェムト秒レーザを光源として用いてレーザ加工を行い、高精度な光デバイスなどを作製するレーザ加工装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−69871号公報
【特許文献2】特開2006−198634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来技術のような高比屈折率差(Δ)構造の光ファイバでは、モードフィールド径が小さくなるため、接続部のコネクタに高精度が要求される。また、受発光素子との位置合わせにも高精度が要求される。さらに、現在FTTH等でも導入されている一般のシングルモードファイバ(SMF)と接続することは、モードフィールド径が小さくなるために困難である。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は90度曲げ部を有する光ファイバを収容しても、今までと同等の精度で接続可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るコネクタは、90度曲げ部をそれぞれ備え、コアとクラッドを有する複数本の光ファイバを配列した光ファイバアレイと、
底壁部と、奥側の垂直壁部と、左右の側壁部とからなり、上部および前記垂直壁部に対向する周壁部の一部が開口した開口部と、前記垂直壁部に形成された溝であって、複数の前記光ファイバの前記90度曲げ部より端部側に位置する当該光ファイバの部分を一列に配列させるための位置決め溝である複数のV溝と、を有する第1のフェルールと、
前記第1のフェルールの前記開口部に係合し、前記複数の光ファイバを前記複数のV溝に押し付ける蓋体と、
前記第1フェルールに嵌合可能であり、前記蓋体により前記複数のV溝に押し付けられた前記光ファイバの部分のさらに端部側を保持するためのファイバ保持孔を有する第2のフェルールと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、光ファイバが、蓋体との1つの接触点と、第1のフェルールのV溝との2つの接触点の合計3点で接触して位置決めされることから、V溝の精度で高精度に光ファイバを配列することが可能なコネクタを実現することができる。これにより、90度曲げ部を有する光ファイバを収容しても、今までと同等の精度で接続可能なコネクタを実現することができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第1の態様に係るコネクタにおいて、前記開口部と前記蓋部の係合部が、前記開口部の前記周壁部の一部に開口した部分に対して前記垂直壁部に近い奥側に位置する、前記左右の側壁部間となる横幅の狭い第1係合部と、前記垂直壁部から遠い手前側に位置し前記第1係合部よりも横幅の広い第2係合部とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第1または2の態様に係るコネクタにおいて、前記蓋体が、前記複数の光ファイバを前記複数のV溝に押し付ける部分の厚さが、他の部分より薄いことを特徴とする。この構成によれば、例えば、蓋体の第1係合部の厚さを蓋体の第2係合部の厚さより薄くすることにより、蓋体の第1係合部の一部が光ファイバの90度曲げ部の部分に当たって該90度曲げ部を破断させることを防止することができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第1乃至3のいずれか1つの態様に係るコネクタにおいて、前記第1のフェルールの前記底壁部には樹脂を充填するための注入口が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第1乃至4のいずれか1つの態様に係るコネクタにおいて、前記第2のフェルールの前記ファイバ保持孔が、テーパ穴であることを特徴とする。この構成によれば、ファイバ保持孔において光ファイバを挿入する側から孔の奥方向に向けて径が小さくなるようなテーパ穴にすることで、光ファイバのファイバ保持孔への挿入が容易になる。
【0014】
本発明の第6の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第1乃至5のいずれか1つの態様に係るコネクタにおいて、前記光ファイバの前記90度曲げ部が、前記コアの周囲の前記クラッドに前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成されたホールアシストファイバにより形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、光ファイバの90度曲げ部をホールアシストファイバにすることで、そのホールアシストファイバの部分は等価的に比屈折率差(Δ)の大きい光ファイバになる。これにより、90度曲げ部においても、曲げ損失が低減される。
【0016】
本発明の第7の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第6の態様に係るコネクタにおいて、前記ホールアシストファイバの両端に、第1および第2の中実な光ファイバを有することを特徴とする。この構成によれば、90度曲げ部がホールアシストファイバとなっているので、90度曲げ部での曲げ損失を低減できる。また、ホールアシストファイバの両端は通常の光ファイバであるので、FTTH等で使用される一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続が可能になる。
【0017】
本発明の第8の態様に係るコネクタは、上記の本発明の第6または7の態様に係るコネクタにおいて、前記複数の管状の空隙が、前記シングルモードファイバに曲げ加工を施す前或いはその加工後に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工により形成された空隙であることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、100フェムト秒程度のパルス幅を有するフェムト秒レーザを光源としたレーザ加工技術により、ホールアシストファイバ部分の空隙を高い精度、例えば1μm以下の加工精度で作製することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光ファイバが、蓋体との1つの接触点と、第1のフェルールのV溝との2つの接触点の合計3点で接触して位置決めされることから、V溝の精度で高精度に光ファイバを配列することが可能なコネクタを実現することができる。これにより、90度曲げ部を有する光ファイバを収容しても、今までと同等の精度で接続可能なコネクタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第1実施形態に係る低損失光ファイバ10の一部を示す拡大図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】低損失光ファイバ10の作製に用いるレーザ加工装置を示す概略構成図。
【図4】本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第2実施形態に係る低損失光ファイバ10Aの一部を示す拡大図。
【図5】図4のB−B線に沿った断面図。
【図6】本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバアレイの一実施形態に係る光ファイバアレイ100を示す斜視図。
【図7】本発明のコネクタの一実施形態に係るコネクタ200を示す斜視図。
【図8】図7に示すコネクタ200の縦断面図。
【図9】V溝付きフェルール220を示す斜視図。
【図10】複数のファイバ保持穴を有する第2のフェルール250を示す斜視図。
【図11】図10のD−D線に沿った断面図。
【図12】コネクタ200の組み立て作業の説明に用いる説明図。
【図13】図12に示す組み立て作業の後に行う組み立て作業の説明に用いる説明図。
【図14】複数の低損失光ファイバのファイバ端部が位置決めされて保持されている様子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を具体化したコネクタの実施形態を図面に基づいて説明する。
(本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第1実施形態)
図1は本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第1実施形態に係る低損失光ファイバ10の一部を示す拡大図である。図2は図1のA−A線に沿った断面図である。
【0022】
低損失光ファイバ10では、図1および図2に示すように、コア11とクラッド12を有するシングルモードファイバ(SMF)13の一部が、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成されたホールアシストファイバとなっている。光ファイバの第1実施形態では、コア11の周囲に、6つの管状の空隙14が略等間隔に形成されている。
【0023】
このように、低損失光ファイバ10では、シングルモードファイバ13の一部は90度曲げ部13aになっており、この90度曲げ部13aのみがホールアシストファイバとなっている。複数の管状の空隙14が、シングルモードファイバ13に曲げ加工を施す前或いはその加工後に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工により形成されている。
【0024】
(低損失光ファイバ10の作製方法)
まず、低損失光ファイバ10の作製に用いるレーザ加工装置を、図3に基づいて説明する。図3に示すレーザ加工装置20は、フェムト秒、例えば100フェムト秒程度のパルス幅の超短パルス光26を出射するレーザ発振器21と、メモリ22と、レーザ加工されるシングルモードファイバ13が載置されるステージ23と、光学系24と、それらの情報や制御プログラムに従ってレーザ光源21およびステージ23を制御するコントローラ25と、を備えている。
【0025】
メモリ22には、加工位置(形成する空隙14の位置)の情報、各加工位置での空隙14の大きさ、つまり、光学系24により集光される超短パルス光26のビーム径などの情報、および制御プログラムなどが格納されている。コントローラ25は、メモリ22に格納された加工位置の情報、各加工位置での空隙14の大きさ(ビーム径)などの情報および制御プログラムに従って、レーザ発振器21、ステージ23および光学系24を駆動制御して、フェムト秒程度のパルス幅の超短パルス光(レーザ光)26の焦点位置、その焦点位置でのスポットサイズ(ビーム径)を制御する。
【0026】
このようなレーザ加工装置20を用いて、コア11とクラッド12を有するシングルモードファイバ13の一部にレーザ加工を施して、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14を形成する。これにより、シングルモードファイバ13の一部を、コア11の周囲のクラッド12にコア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成されたホールアシストファイバとした低損失光ファイバ10が作製される。なお、レーザ加工装置20を用いたレーザ加工は、シングルモードファイバ13の一部に曲げ加工を施す前に行ってもよいし、或いはその曲げ加工後に行ってもよい。
以上のように構成された光ファイバの第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0027】
(1)シングルモードファイバ13の一部である90度曲げ部13aをホールアシストファイバにすることで、そのホールアシストファイバの部分(90度曲げ部13a)は等価的に比屈折率差(Δ)の大きい光ファイバになる。これにより、ホールアシストファイバとなったシングルモードファイバの一部を、曲げ加工により曲げ部、例えば90度曲げ部13aにしても、その90度曲げ部13aの曲げ損失が低減される。
【0028】
(2)ホールアシストファイバの両側は通常のシングルモードファイバ13であるので、FTTH等で使用される一般のシングルモードファイバと接続が可能で、接続部のコネクタなどにも今までと同等の精度で接続可能である。
【0029】
(3)従って、曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバ10を実現することができる。
【0030】
(4)シングルモードファイバ13の一部である90度曲げ部13aのみがホールアシストファイバとなっているので、90度曲げ部13aでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバ10を実現することができる。
【0031】
(5)100フェムト秒程度のパルス幅を有するフェムト秒レーザを光源としたレーザ加工技術(レーザ加工装置20)により、ホールアシストファイバ部分(90度曲げ部13a)の空隙14を高い精度、例えば1μm以下の加工精度で作製することができる。
【0032】
(本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第2実施形態)
図4は本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバの第2実施形態に係る低損失光ファイバ10Aの一部を示す拡大図である。図5は図4のB−B線に沿った断面図である。
【0033】
低損失光ファイバ10Aは、図4および図5に示すように、コア11とクラッド12をそれぞれ有する第1および第2のシングルモードファイバ131および132と、コア11とクラッド12を有し、第1のシングルモードファイバ131と第2のシングルモードファイバ132との間に融着された第3のシングルモードファイバ133と、を備えている。図4において、符号「31」は第1のシングルモードファイバ131と第3のシングルモードファイバ133との融着部を、符号「32」は第2のシングルモードファイバ132と第3のシングルモードファイバ133との融着部をそれぞれ示している。
【0034】
この低損失光ファイバ10Aでは、第3のシングルモードファイバ133が、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成されたホールアシストファイバである。また、第3のシングルモードファイバ133は90度曲げ部13bを有し、この90度曲げ部13bがホールアシストファイバである。
【0035】
(低損失光ファイバ10Aの作製方法)
この低損失光ファイバ10Aは、次のようにして作製される。
まず、コア11の周囲のクラッド12に、コア11の中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙14が形成された石英系の光ファイバ母材(図示省略)を線引き加工して、ホールアシストファイバである第3のシングルモードファイバ133を形成する。
【0036】
次に、第3のシングルモードファイバ133を、第1のシングルモードファイバ131と第2のシングルモードファイバ132との間に融着する。これにより、低損失光ファイバ10Aが作製される。なお、複数の管状の空隙14が形成された光ファイバ母材は、石英系の光ファイバ母材に限らず、プラスチック製の光ファイバ母材であっても良い。ここで用いる光ファイバ母材は、中心部にある屈折率の高いコアと、その周囲にあるコアより屈折率の低いクラッドと、このクラッド内に複数の管状の空隙があるものであれば、その材料は石英系の材料に限らない。
以上のように構成された光ファイバの第2実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0037】
(1)第3のシングルモードファイバ133の90度曲げ部13bのみがホールアシストファイバとなっており、かつ、第3のシングルモードファイバ133の一端側は第1のシングルモードファイバ131に、その他端側は第2のシングルモードファイバ132にそれぞれ融着されている。このため、90度曲げ部13bでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続可能な低損失光ファイバ10Aを実現することができる。
【0038】
(2)低損失光ファイバ10Aを、線引き加工と融着という一般的な技術を用いて作製することができる。このため、低損失光ファイバ10Aを低コストで作製することができる。
【0039】
(本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバアレイの一実施形態)
図6は本発明のコネクタの一実施形態に用いられる光ファイバアレイの一実施形態に係る光ファイバアレイ100を示す斜視図である。
この光ファイバアレイ100は、図1および図2に示す低損失光ファイバ10が複数本配列されたものである。この光ファイバアレイ100は、12本の低損失光ファイバ10が一列に配列された多心テープ光ファイバである。なお、図6に示す符号「120」は光ファイバアレイ100の被覆部である。
【0040】
この光ファイバアレイの一実施形態によれば、90度曲げ部13aでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続可能な光ファイバアレイ100を実現することができる。
なお、光ファイバアレイ100は、図4および図5に示す低損失光ファイバ10Aを複数本配列したものであってもよい。
【0041】
(本発明のコネクタの一実施形態)
本発明のコネクタの一実施形態に係るコネクタ200を図7乃至図14に基づいて説明する。
【0042】
コネクタ200の具体的構成を以下に説明する。
コネクタ200は、図7および図8に示すように、90度曲げ部13aをそれぞれ有する複数の低損失光ファイバ10を含む光ファイバアレイ100と、V溝付きフェルール220と、蓋体230と、複数のファイバ保持孔251(図8参照)を有する第2のフェルール(コネクタ端面を有するフェルール)250と、を備えている。
【0043】
V溝付きフェルール220は、図9に示すように、複数の低損失光ファイバ10の90度曲げ部13aより端部側のファイバ端部13cを一列に配列させる位置決め溝である複数のV溝221と、開口部222と、を有する。このV溝付きフェルール220は、底壁部224と、奥側の垂直壁部225と、左右の側壁部226,227とを有し、上部および周壁部の一部が開口した箱型容器である。垂直壁部225の内壁面には、複数のV溝、本例では12個のV溝221が形成されている。底壁部224には、樹脂を充填するための注入口223が形成されている。複数のV溝221は、底壁部224に対して垂直方向にそれぞれ延びている。
【0044】
また、このV溝付きフェルール220にあっては、左右の側壁部226,227は、奥側にある横幅の狭い側壁部226a,227aと、手前側にある横幅の広い側壁部226b、227bと、を有している。横幅の狭い左右の側壁部226a,227aの外面に、図10に示す第2のフェルール250の左右の側壁部254,255の内面がそれぞれ嵌合可能になっている。このような構成を有するV溝付きフェルール220は、樹脂等の材料からなる成形体である。
【0045】
蓋体230は、図7および図12に示すように、V溝付きフェルール220の横幅の狭い側壁部226a,227aの内面にそれぞれ嵌合する横幅の狭い第1係合部231と、その横幅の広い側壁部226b、227bの内面にそれぞれ嵌合する横幅の広い第2係合部232とを有している。この蓋体230は、図7および図8に示すようにV溝付きフェルール220の開口部222に装着された状態で、V溝付きフェルール220内に90度曲げ部13aおよびその前後の部分が収容された複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cを複数のV溝221に端面230aで押し付けるようになっている。蓋体230の第1係合部231は、その端面230aで複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cを複数のV溝221に押し付ける際に、第1係合部231の一部が各低損失光ファイバ10の90度曲げ部13aの部分に当たって90度曲げ部13aを破断させないように、第2係合部232よりも厚さが薄くなっている(図8参照)。このような構成を有する蓋体230は、樹脂等の材料からなる成形体である。
【0046】
第2のフェルール250は、図10、図11および図13に示すように、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cをそれぞれ保持する複数の(本例では12個の)ファイバ保持孔251と、これらのファイバ保持孔251の左右に形成された2つのガイドピン孔252とを有している。また、第2のフェルール250の複数のファイバ保持孔251のファイバ挿入側端部には、各ファイバ保持孔251へ複数の低損失光ファイバ10の各ファイバ端部13cを挿入するのを容易にするために、テーパ穴253(図10、図11参照)がそれぞれ形成されている。これら複数のテーパ穴253には、複数のテーパ穴253へ複数の低損失光ファイバ10の各ファイバ端部13cを挿入するのを容易にするために、複数のファイバガイド溝256がそれぞれ形成されている。このような構成を有する第2のフェルール250は、樹脂等の材料からなる成形体である。また、コネクタ200にあっては、図8に示すように、蓋体230とV溝付きフェルール220との間の空間240に樹脂241が充填されている。
【0047】
次に、図7に示すコネクタ200の作製方法を説明する。
(1)まず、図6に示す複数の低損失光ファイバ10の、90度曲げ部13aおよびその前後の部分を、図9に示すV溝付きフェルール220に収容させる(図12参照)。
【0048】
(2)次に、図12に示す状態で、V溝付きフェルール220内に収容された複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cを複数のV溝221に端面230aで押し付けるように、蓋体230をV溝付きフェルール220の開口部222に装着する(図8,図13参照)。
【0049】
(3)次に、V溝付きフェルール220に形成された注入口223(図9参照)から、蓋体230とV溝付きフェルール220との間の空間240に樹脂241を注入し、樹脂241を硬化させる(図8参照)。これにより、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cが、複数のV溝221の精度で高精度に配列されて、V溝付きフェルール220から垂直に突き出た形になる(図8参照)。なお、樹脂241は、例えば紫外線硬化型樹脂である。
【0050】
(4)次に、複数の低損失光ファイバ10の、V溝付きフェルール220から突き出たファイバ端部13cを第2のフェルール250の複数のファイバ保持孔251にそれぞれ挿通させ、第2のフェルール250をV溝付きフェルール220にエポキシ系接着剤で固定する。これにより、図7および図8に示すコネクタ200が出来る。
【0051】
(5)次に、コネクタ200の第2のフェルール250の端面と、複数の低損失光ファイバ10のV溝付きフェルール220から突き出たファイバ端部13cとを、図8のC―C線に沿って研磨する。これにより、コネクタ200が完成する。このコネクタ200は、その2つのガイドピン孔252にガイドピン(図示省略)をそれぞれ嵌合させると共に、これら2つのガイドピンを、図示を省略した別の多心用フェルール型コネクタ(MTコネクタ)のガイドピン孔に嵌合させることにより、MTコネクタ等の別のコネクタと接続させることができる。
【0052】
以上のように構成された本発明のコネクタの一実施形態に係るコネクタ200によれば、90度曲げ部13aでの曲げ損失を低減でき、一般のシングルモードファイバと今までと同等の精度で接続可能なコネクタを実現することができる。
【0053】
また、コネクタ200によれば、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cは、図14に示すように、蓋体230の端面230aとの一つの接触点と、V溝付きフェルール220の各V溝221との2つの接触点との3点で接触して位置決めされる。これにより、複数の低損失光ファイバ10のファイバ端部13cがV溝221の精度で高精度に配列されるという利点が得られる。
【0054】
上記各実施形態に係る低損失光ファイバにおいて、ホールアシストファイバ部分に形成される複数の管状の空隙14の数、配置および大きさを適宜変更した低損失光ファイバにも本発明は適用可能である。具体的には、複数の管状の空隙14を「6」以外の複数個形成したもの、或いは、複数の管状の空隙14を周方向に複数列に配置したもの、或いは、複数の管状の空隙14の大きさが異なるもの、等にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10,10A,10B,10C:低損失光ファイバ
11:コア
12:クラッド
13:シングルモードファイバ
13a,13b:90度曲げ部
131:第1のシングルモードファイバ
132:第2のシングルモードファイバ
133:第3のシングルモードファイバ
14:空隙
20:レーザ加工装置
200:コネクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
90度曲げ部をそれぞれ備え、コアとクラッドを有する複数本の光ファイバを配列した光ファイバアレイと、
底壁部と、奥側の垂直壁部と、左右の側壁部とからなり、上部および前記垂直壁部に対向する周壁部の一部が開口した開口部と、前記垂直壁部に形成された溝であって、複数の前記光ファイバの前記90度曲げ部より端部側に位置する当該光ファイバの部分を一列に配列させるための位置決め溝である複数のV溝と、を有する第1のフェルールと、
前記第1のフェルールの前記開口部に係合し、前記複数の光ファイバを前記複数のV溝に押し付ける蓋体と、
前記第1フェルールに嵌合可能であり、前記蓋体により前記複数のV溝に押し付けられた前記光ファイバの部分のさらに端部側を保持するためのファイバ保持孔を有する第2のフェルールと、
を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記開口部と前記蓋部の係合部は、前記開口部の前記周壁部の一部に開口した部分に対して前記垂直壁部に近い奥側に位置する、前記左右の側壁部間となる横幅の狭い第1係合部と、前記垂直壁部から遠い手前側に位置し前記第1係合部よりも横幅の広い第2係合部とを有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記蓋体は、前記複数の光ファイバを前記複数のV溝に押し付ける部分の厚さが、他の部分より薄いことを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1のフェルールの前記底壁部には樹脂を充填するための注入口が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第2のフェルールの前記ファイバ保持孔は、テーパ穴であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記光ファイバの前記90度曲げ部は、前記コアの周囲の前記クラッドに前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成されたホールアシストファイバにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記ホールアシストファイバの両端に、第1および第2の中実な光ファイバを有することを特徴とする請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記複数の管状の空隙が、前記光ファイバに曲げ加工を施す前或いはその加工後に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工により形成された空隙であることを特徴とする請求項6または7に記載のコネクタ。
【請求項1】
90度曲げ部をそれぞれ備え、コアとクラッドを有する複数本の光ファイバを配列した光ファイバアレイと、
底壁部と、奥側の垂直壁部と、左右の側壁部とからなり、上部および前記垂直壁部に対向する周壁部の一部が開口した開口部と、前記垂直壁部に形成された溝であって、複数の前記光ファイバの前記90度曲げ部より端部側に位置する当該光ファイバの部分を一列に配列させるための位置決め溝である複数のV溝と、を有する第1のフェルールと、
前記第1のフェルールの前記開口部に係合し、前記複数の光ファイバを前記複数のV溝に押し付ける蓋体と、
前記第1フェルールに嵌合可能であり、前記蓋体により前記複数のV溝に押し付けられた前記光ファイバの部分のさらに端部側を保持するためのファイバ保持孔を有する第2のフェルールと、
を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記開口部と前記蓋部の係合部は、前記開口部の前記周壁部の一部に開口した部分に対して前記垂直壁部に近い奥側に位置する、前記左右の側壁部間となる横幅の狭い第1係合部と、前記垂直壁部から遠い手前側に位置し前記第1係合部よりも横幅の広い第2係合部とを有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記蓋体は、前記複数の光ファイバを前記複数のV溝に押し付ける部分の厚さが、他の部分より薄いことを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1のフェルールの前記底壁部には樹脂を充填するための注入口が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第2のフェルールの前記ファイバ保持孔は、テーパ穴であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記光ファイバの前記90度曲げ部は、前記コアの周囲の前記クラッドに前記コアの中心軸に沿って延びる複数の管状の空隙が形成されたホールアシストファイバにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記ホールアシストファイバの両端に、第1および第2の中実な光ファイバを有することを特徴とする請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記複数の管状の空隙が、前記光ファイバに曲げ加工を施す前或いはその加工後に、フェムト秒レーザを光源としたレーザ加工により形成された空隙であることを特徴とする請求項6または7に記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−230399(P2012−230399A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142252(P2012−142252)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2008−301711(P2008−301711)の分割
【原出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2008−301711(P2008−301711)の分割
【原出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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