説明

コプレーナ線路のエアブリッジ構造

【課題】コプレーナ線路の信号線路とエアブリッジとの交差容量の影響を抑制しつつ、複数のエアブリッジを容易に使用できるようにする。
【解決手段】エアブリッジ構造100のうち、下層配線層8に、接地線路2A,2Bのうち信号線路1を挟んで互いに対向する位置を切り欠いて形成した空孔領域12A,12Bをそれぞれ設けるとともに、上層配線層7に、空孔領域12Aの上部位置に下層配線層8の接地線路2Aと電気的に接続された上層接地電極13Aと、空孔領域12Bの上部位置に下層配線層8の接地線路2Bと電気的に接続された上層接地電極13Bとを設け、エアブリッジ3で、上層接地電極13A,13Bを介して接地線路2A,2B間を電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路技術に関し、特にコプレーナ線路の接地電極間を接続するためのエアブリッジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路等の高誘電率基板上でコプレーナ(以下、CPW線路という:Coplanar Waveguide)線路に用いるエアブリッジ構造は、CPW線路の接地を良好に行うために不可欠な接続構造である。このCPW線路は、信号線の両側に2つの接地電極を持つ構造をなしており、これらの接地電極を等電位に保つためは何らかの方法で両者を接続する必要がある。これを行う簡便な方法がエアブリッジ構造である。通常のエアブリッジ構造は、CPW線路、すなわち信号線路と接地電極を構成する配線層とは別の配線層で、2つの接地電極間をエアブリッジにより最短距離で接続する接続構造となっている。
【0003】
このようなエアブリッジ構造では、信号線路とエアブリッジとが交差することから、両者の間に交差容量が生じ、しばしば問題となる。すなわち、エアブリッジは最寄りの接地電極に接続されていることから、信号線路とエアブリッジとの間の交差容量は、信号線に対し並列容量として振舞うことになる。このため、CPW線路の特性インピーダンスはエアブリッジの部分で低下し、信号の伝播に遅延を生じさせる。また、局所的な特性インピーダンスの低下に起因して、エアブリッジのある箇所で信号の反射が起こる。
【0004】
エアブリッジによるこれら作用が集積回路の動作に悪影響を及ぼす可能性がある場合、事前にエアブリッジの影響を考慮した回路設計を行わねばならない。ところが、現実にはエアブリッジが配置位置や個数は回路レイアウトの都合によって決まるため、回路設計の段階で正確に考慮することは困難である。そのため、回路設計とレイアウト作業を交互に行い、エアブリッジの配置を徐々に確定しながら回路設計へ反映する必要性があった。
【0005】
このようなエアブリッジ構造における課題を解決するため、従来より幾つかの技術が提案されている。第1の従来技術として、配線を微細化することで寄生容量を減らす方法がある。これは、微細なCPW線路を用いると、エアブリッジの交差容量も必然的に減少させることができるからである。
【0006】
また、第2の従来技術として、エアブリッジで生じる交差容量を補償する方法が考えられる。その1つとして、エアブリッジのある箇所だけCPW線路の信号線幅を細くすることで配線のインダクタンス成分を増加させる方法がある(例えば、特許文献1など参照)。配線の特性インピーダンスは、線路単位長さあたりのインダクタンス対容量比の平方根で与えられるため、交差容量の大きさに比例して信号線のインダクタンスを増加させれば特性インピーダンスは一定値に保たれ、信号の反射を防ぐことが可能になる。
【0007】
また、第3の従来技術として、マイクロストリップ線路を一部導入してエアブリッジを不要にする方法がある。これは、マイクロストリップ線路は接地電極が1つしかなく本質的にエアブリッジが不要であるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2569697号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】相川 他、「モノリシックマイクロ波集積回路」, pp. 51, 電子情報通信学会, ISBN88552-145-9, 1997/01/25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来技術では、コプレーナ線路の信号線路とエアブリッジとの交差容量の影響をある程度抑制であるものの、多数のエアブリッジを容易に使用できないという問題点があった。
例えば、第1の従来技術では、線路の微細化が線路損失とのトレードオフとなるため、線路の一部を選んで微細化する必要がある。このとき、CPW線路のピッチ変換が必要となり、ピッチ変換に伴う新たな寄生効果を回路設計に反映しておく必要が生じる。また、大電力を扱う回路の場合、線路の微細化は電力定格によって制限があるため、線路の微細化には限界がある。
【0011】
また、第2の従来技術では、コプレーナ線路における信号の伝播速度が低下してしまう。これは、信号の伝播速度は、伝播定数βにより決定され、その値は線路単位長さあたりのインダクタンス容量積の平方根に反比例するからである。このため、第2の従来技術で特性インピーダンスを補償すると、CPW線路の遅延時間がさらに増加してしまう。
また、第3の従来技術では、CPWマイクロストリップ変換による寄生効果を別途考慮する必要があり(例えば、非特許文献1など参照)、エアブリッジの影響を回路設計に反映させるための設計負担と変わりのない結果となる。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、コプレーナ線路の信号線路とエアブリッジとの交差容量の影響を抑制しつつ、複数のエアブリッジを容易に使用できるエアブリッジ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、本発明にかかるエアブリッジ構造は、高誘電率基板上に形成された信号線路とこの信号線路を挟んで配置された第1および第2の接地線路とからなるコプレーナ線路を構成する下層配線層と、信号線路の上部を交差して第1および第2の接地線路間を電気的に接続するエアブリッジを構成する上層配線層とを備え、下層配線層は、第1および第2の接地線路のうち信号線路を挟んで互いに対向する位置を切り欠いて形成した第1および第2の空孔領域をそれぞれ有し、上層配線層は、第1の空孔領域の上部位置に下層配線層の第1の接地線路と電気的に接続された第1の上層接地電極と、第2の空孔領域の上部位置に下層配線層の第2の接地線路と電気的に接続された第2の上層接地電極とを有し、エアブリッジで、第1および第2の上層接地電極を介して第1および第2の接地線路間を電気的に接続するようにしたものである。
【0014】
この際、第1の接地線路のうち第1の空孔領域と隣接する位置に、第1の接地線路と第1の上層接地電極とを電気的に接続するための第1のコンタクトをさらに備え、第2の接地線路のうち第2の空孔領域と隣接する位置に、第2の接地線路と第2の上層接地電極とを電気的に接続するための第2のコンタクトをさらに備えてもよい。
【0015】
また、第1のコンタクトを、第1の接地線路のうち第1の空孔領域と隣接する位置に、第1の空孔領域を取り囲むように形成し、第2のコンタクトを、第2の接地線路のうち第2の空孔領域と隣接する位置に、第2の空孔領域を取り囲むように形成してもよい。
【0016】
また、CPW線路のうちエアブリッジ構造が形成されていない部分における、CPW線路上方での信号線路と第1および第2の接地線路との間の線路間容量をCaとするとともに、高誘電率基板内部での信号線路と第1および第2の接地線路との間の線路間容量をCbとし、CPW線路のうちエアブリッジ構造が形成されている部分における、CPW線路上方での信号線路と第1および第2の接地線路との間および信号線路とエアブリッジとの間の線路間容量をCcとするとともに、高誘電率基板内部での信号線路と第1および第2の接地線路との間の線路間容量をCdとし、信号線路と第1および第2の接地線路との間の距離をLとした場合、Cc−Ca(L)=Cb−Cd(L)の式を満足する距離Lだけ、エアブリッジ構造における信号線路と第1および第2の接地線路とを離して形成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、CPW線路の信号線路を細線化することなく信号線路とエアブリッジとの間に生じる交差容量の影響を抑制することができる。よって、エアブリッジ付近におけるCPW線路の特性インピーダンスや遅延時間の乱れを抑制することができ、優れたエアブリッジ構造を実現することができる。また、CPWマイクロストリップ変換による寄生効果など、複雑な回路設計を必要としないことから、複数のエアブリッジを容易に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施の形態にかかるエアブリッジ構造の構成を示す平面図である。
【図2】コプレーナ線路の形状を示す平面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1のIV−IV断面図である。
【図5】複数のエアブリッジ構造を密集配置した例である。
【図6】略楕円形状からなる空孔領域を持つエアブリッジ構造の例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[エアブリッジ構造]
まず、図1〜図4を参照して、本実施の形態にかかるコプレーナ(以下、CPW線路という:Coplanar Waveguide)線路のエアブリッジ構造について説明する。図1は、一実施の形態にかかるエアブリッジ構造の構成を示す平面図である。図2は、コプレーナ線路の形状を示す平面図である。図3は、図1のIII−III断面図である。図4は、図1のIV−IV断面図である。
【0020】
CPW線路は、高誘電率基板9上に形成された、導電膜からなる信号線路1と、この信号線路1を挟んで配置された、導電膜からなる接地線路(第1の接地線路)2Aおよび接地線路(第2の接地線路)2Bとから構成されている。これら信号線路1および接地線路2A,2Bの一方の端部からなる入力端子4から入力された高周波信号が、信号線路1および接地線路2A,2Bの他方の端部からなる出力端子5から取り出せるようにレイアウトされている。
【0021】
CPW線路のうち、信号線路1および接地線路2A,2Bは、高誘電率基板9の表面に位置する下層配線層8によって構成されている。また、CPW線路の中央には、信号線路1の上部を交差して接地線路2A,2B間を電気的に接続する導電部材からなるエアブリッジ3が配置されている。このエアブリッジ3は、導電部材からなるコンタクト11A,11Bを介して接地線路2A,2Bと電気的に接続されている。これらエアブリッジ3およびコンタクト11A,11Bは、下層配線層8の上部に位置する上層配線層7によって構成されている。
【0022】
本実施の形態にかかるエアブリッジ構造100は、このような下層配線層8において、接地線路2A,2Bのうち信号線路1を挟んで互いに対向する位置を切り欠いて形成した空孔領域(第1の空孔領域)12Aと空孔領域(第2の空孔領域)12Bとをそれぞれ有している。
【0023】
また、上層配線層7において、空孔領域12Aの上部位置に、下層配線層8の接地線路2Aと電気的に接続された上層接地電極(第1の上層接地電極)13Aを有し、空孔領域12Bの上部位置に、下層配線層8の接地線路2Bと電気的に接続された上層接地電極(第2の上層接地電極)13Bとを有しており、エアブリッジ3で、上層接地電極13A,13Bを介して接地線路2A,2B間を電気的に接続している。
図2の例では、空孔領域12A,12Bは、接地線路2A,2Bのうち信号線路1側の側部を矩形状に切り欠いて形成されている。
【0024】
上層接地電極13A,13Bは、上層配線層7のうちエアブリッジ3と同じ高さ位置であって、これら空孔領域12A,12Bの上部位置に、これら空孔領域12A,12Bを覆うように配置されている。これら上層接地電極13A,13Bは、エアブリッジ3とは別個の導電部材で形成した後、エアブリッジ3と電気的に接合してもよく、エアブリッジ3と同一の導電部材で一括形成してもよい。
【0025】
コンタクト11A,11Bは、接地線路2A,2Bのうち、空孔領域12A,12B、すなわち切り欠き部と隣接する位置に配置されており、上層接地電極13A,13Bを空孔領域12A,12Bの上部位置に支持するとともに、下層配線層8の接地線路2A,2Bと上層接地電極13A,13Bの周部とを電気的に接続している。
また、コンタクト11Aは、接地線路2Aのうち空孔領域12Aと隣接する位置に、空孔領域12Aを取り囲むように形成し、コンタクト11Bは、接地線路2Bのうち空孔領域12Bと隣接する位置に、空孔領域12Bを取り囲むように形成してもよい。
これらCPW線路およびエアブリッジ構造100については、例えばモノリシックマイクロ波集積回路技術など、既存の半導体製造プロセス技術を用いて製造すればよい。
【0026】
次に、空孔領域12A,12Bの作用について詳細に説明する。
図3に示すように、CPW線路のうちエアブリッジ構造100が形成されていないIII−III断面付近では、CPW線路上方の容量として、信号線路1と接地線路2A,2Bとの間に線路間容量21(Ca)が生じるとともに、高誘電率基板9内部の容量として、信号線路1と接地線路2A,2Bとの間に線路間容量22(Cb)が生じる。通常、誘電体基板の比誘電率は、1より少なくとも何倍か大きな値を持つことから、CbはCaより何倍か大きな値になる。
【0027】
また、図4に示すように、CPW線路のうちエアブリッジ構造100が形成されているIV−IV断面付近には、信号線路1および接地線路2A,2Bのほかに、エアブリッジ3、空孔領域12A,12B、およびコンタクト6が存在する。したがって、IV−IV断面付近では、CPW線路上方の容量として、信号線路1と接地線路2A,2Bとの間、および信号線路1とエアブリッジ3との間に、線路間容量23(Cc)が生じるとともに、高誘電率基板9内部の容量として、信号線路1と接地線路2A,2Bとの間に線路間容量24(Cd)が生じる。通常、誘電体基板の比誘電率は、1より少なくとも何倍か大きな値を持つことから、CcはCdより何倍か大きな値になる。
【0028】
ここで、CaとCcとを比較すると、信号線路1とエアブリッジ3との交差部分で生じる交差容量の影響でCcはCaより大きな値を持ち、その交差容量の値は2つの容量の差Cc−Caで表される。
【0029】
一方、空孔領域12の大きさを変えることで、図3の信号線路1と接地線路2A,2Bとの距離Lは任意の大きさまで増やすことができる。言い換えると、線路間容量Cdは、信号線路1と接地線路2A,2Bとの間の距離Lの関数で表され、距離Lを増加させて線路間容量Cdを減少させることが可能である。この際、線路間容量Caも同時に減少するが、既に述べた誘電率の違いからその変化量は小さい。
【0030】
したがって、交差容量の影響を取り除くための条件は、次の式(1)を満たす距離Lまで、信号線路1と接地線路2A,2Bとの間を離せばよいことが分かる。
Cc−Ca(L)=Cb−Cd(L) …(1)
交差容量が極度に大きい場合を除けば、CcとCaは、CbやCdより小さな値であることから、式(1)を満たす距離Lを見つけることは容易である。つまり、本実施の形態にかかるエアブリッジ構造100においては、エアブリッジ3の近傍で信号線路1の形状を変えることなく、交差容量が補正されることがわかる。
【0031】
また、空孔領域12A,12Bは、上層接地電極13A,13Bを構成する上層配線層7によって覆われている。すなわち、空孔領域12A,12Bに元々存在していた接地線路2A,2Bが、上層接地電極13A,13Bとしてコンタクト11A,11Bにより、空孔領域12A,12Bの上部の上層配線層7へ持ち上げられたことになる。そのため、空孔領域12A,12Bに元々存在していた接地線路2A,2Bによる働きは上層接地電極13A,13Bによって代替されている。つまり、CPW線路のギャップ(信号線路1と接地線路2A,2Bとの間の距離)は、入力端子4と出力端子5との間で実効的に一定に保たれており、空孔領域12による影響が最小に抑えられていることも理解できる。
【0032】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、エアブリッジ構造100のうち、下層配線層8に、接地線路2A,2Bのうち信号線路1を挟んで互いに対向する位置を切り欠いて形成した空孔領域12A,12Bをそれぞれ設けるとともに、上層配線層7に、空孔領域12Aの上部位置に下層配線層8の接地線路2Aと電気的に接続された上層接地電極13Aと、空孔領域12Bの上部位置に下層配線層8の接地線路2Bと電気的に接続された上層接地電極13Bとを設け、エアブリッジ3で、上層接地電極13A,13Bを介して接地線路2A,2B間を電気的に接続するようにしたものである。
【0033】
より具体的には、接地線路2Aのうち空孔領域12Aと隣接する位置に、接地線路2Aと上層接地電極13Aとを電気的に接続するためのコンタクト11Aを設けるとともに、接地線路2Bのうち空孔領域12Bと隣接する位置に、接地線路2Bと上層接地電極13Bとを電気的に接続するためのコンタクト11Bを設けたものである。
また、コンタクト11Aは、接地線路2Aのうち空孔領域12Aと隣接する位置に、空孔領域12Aを取り囲むように形成し、コンタクト11Bは、接地線路2Bのうち空孔領域12Bと隣接する位置に、空孔領域12Bを取り囲むように形成したものである。
【0034】
これにより、CPW線路の信号線路1を細線化することなく信号線路1とエアブリッジ3との間に生じる交差容量の影響を抑制することができる。よって、本実施の形態によるエアブリッジ構造100によれば、エアブリッジ3付近におけるCPW線路の特性インピーダンスや遅延時間の乱れを抑制することができ、優れたエアブリッジ構造を実現することができる。また、CPWマイクロストリップ変換による寄生効果など、複雑な回路設計を必要としないことから、複数のエアブリッジを容易に使用することが可能となる。
【0035】
図5は、複数のエアブリッジ構造を密集配置した例である。前述した本実施の形態によるエアブリッジ構造100の効果から、図5に示すように、エアブリッジ3を密集させたCPW線路も特性変動少なく構成できる。高密度のエアブリッジ3は、CPW線路から電磁波が放射されるのを防ぐ働きがある。よって、線路から電磁波が放射されやすい高周波ほど本発明によるエアブリッジ構造は有用になる。
【0036】
図6は、略楕円形状からなる空孔領域を持つエアブリッジ構造の例である。本実施の形態では、空孔領域12A,12Bが矩形状の切り欠き部から構成されている場合を例として説明したが、この切り欠き部の形状については、矩形状に限定されるものではなく、多角形状、円形状、楕円形状、略円形状、半円形状、略半円形状、半楕円形状、略半楕円形状など、他の形状であってもよい。
【0037】
また、本実施の形態において、CPW線路のうちエアブリッジ構造100が形成されていない部分における、CPW線路上方での信号線路1と接地線路2A,2Bとの間の線路間容量をCaとするとともに、高誘電率基板9内部での信号線路1と接地線路2A,2Bとの間の線路間容量をCbとし、CPW線路のうちエアブリッジ構造100が形成されている部分における、CPW線路上方での信号線路1と接地線路2A,2Bとの間および信号線路1とエアブリッジ3との間の線路間容量をCcとするとともに、高誘電率基板9内部での信号線路1と接地線路2A,2Bとの間の線路間容量をCdとし、信号線路1と接地線路2A,2Bとの間の距離をLとした場合、Cc−Ca(L)=Cb−Cd(L)の式を満足する距離Lだけ、エアブリッジ構造100における信号線路1と接地線路2A,2Bとを離して形成するようにしてもよい。
【0038】
これにより、エアブリッジ構造100における信号線路1とエアブリッジ3との間の交差容量の影響を完全に取り除くことができ、極めて優れたエアブリッジ構造を実現することができる。
【0039】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0040】
100…エアブリッジ構造、1…信号線路、2A…接地線路(第1の接地線路)、2B…接地線路(第2の接地線路)、3…エアブリッジ、4…入力端子、5…出力端子、7…上層配線層、8…下層配線装置、9…高誘電率基板、11A…コンタクト(第1のコンタクト)、11B…コンタクト(第2のコンタクト)、12A…空孔領域(第1の空孔領域)、12B…空孔領域(第2の空孔領域)、13A…上層接地電極(第1の上層接地電極)、13B…上層接地電極(第2の上層接地電極)、Ca,Cb,Cc,Cd…線路間容量、L…距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高誘電率基板上に形成された信号線路とこの信号線路を挟んで配置された第1および第2の接地線路とからなるコプレーナ線路を構成する下層配線層と、
前記信号線路の上部を交差して前記第1および第2の接地線路間を電気的に接続するエアブリッジを構成する上層配線層とを備え、
前記下層配線層は、前記第1および第2の接地線路のうち前記信号線路を挟んで互いに対向する位置を切り欠いて形成した第1および第2の空孔領域をそれぞれ有し、
前記上層配線層は、前記第1の空孔領域の上部位置に前記下層配線層の前記第1の接地線路と電気的に接続された第1の上層接地電極と、前記第2の空孔領域の上部位置に前記下層配線層の前記第2の接地線路と電気的に接続された第2の上層接地電極とを有し、
前記エアブリッジは、前記第1および第2の上層接地電極を介して前記第1および第2の接地線路間を電気的に接続する
ことを特徴とするエアブリッジ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエアブリッジ構造において、
前記第1の接地線路のうち前記第1の空孔領域と隣接する位置に、前記第1の接地線路と前記第1の上層接地電極とを電気的に接続するための第1のコンタクトをさらに備え、
前記第2の接地線路のうち前記第2の空孔領域と隣接する位置に、前記第2の接地線路と前記第2の上層接地電極とを電気的に接続するための第2のコンタクトをさらに備える
ことを特徴とするエアブリッジ構造。
【請求項3】
請求項2に記載のエアブリッジ構造において、
前記第1のコンタクトは、前記第1の接地線路のうち前記第1の空孔領域と隣接する位置に、前記第1の空孔領域を取り囲むように形成されており、
前記第2のコンタクトは、前記第2の接地線路のうち前記第2の空孔領域と隣接する位置に、前記第2の空孔領域を取り囲むように形成されている
ことを特徴とするエアブリッジ構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のエアブリッジ構造において、
前記コプレーナ線路のうち前記エアブリッジ構造が形成されていない部分における、前記コプレーナ線路上方での前記信号線路と前記第1および第2の接地線路との間の線路間容量をCaとするとともに、前記高誘電率基板内部での前記信号線路と前記第1および第2の接地線路との間の線路間容量をCbとし、前記コプレーナ線路のうち前記エアブリッジ構造が形成されている部分における、前記コプレーナ線路上方での前記信号線路と前記第1および第2の接地線路との間および前記信号線路と前記エアブリッジとの間の線路間容量をCcとするとともに、前記高誘電率基板内部での前記信号線路と前記第1および第2の接地線路との間の線路間容量をCdとし、前記信号線路と前記第1および第2の接地線路との間の距離をLとした場合、Cc−Ca(L)=Cb−Cd(L)の式を満足する距離Lだけ、前記エアブリッジ構造における前記信号線路と前記第1および第2の接地線路とが離れて形成されていることを特徴とするエアブリッジ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−90207(P2012−90207A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237204(P2010−237204)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノテク・先端部材実用化研究開発/ナノ構造テラヘルツデバイスによる透過型物体計測技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】