説明

コンクリート擁壁構築方法

【課題】 法面を覆うコンクリート擁壁を構築する際の施工コスト低減を図るとともに施工の信頼性を高める。
【解決手段】 基端部にフランジ部10aが形成された複数のセパレータ連結用治具10を、地山2の法面2aに沿って互いに所定間隔をおいて配置した状態で法面2aに仮固定した後、法面2aにモルタル6を吹き付けることにより各セパレータ連結用治具10の基端部を法面2aに固定する。その後、各セパレータ連結用治具10の先端部にセパレータ20の基端部を連結するとともに、これら各セパレータ20の先端部に堰板22を法面2aと平行になるように設置し、この堰板22と法面2aとの間にコンクリートを打設する。これにより、打設されたコンクリートから堰板22に作用する圧力によってセパレータ20に作用する張力に対抗するための反力を、セパレータ連結用治具10およびモルタル6によって確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、法面を覆うコンクリート擁壁を構築するコンクリート擁壁構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地山等の法面保護を図るための方法として、法面を覆うコンクリート擁壁を構築する方法が知られている。
【0003】
このコンクリート擁壁構築方法においては、法面と略平行になるように堰板を設置し、この堰板と法面との間にコンクリートを打設することにより、コンクリート擁壁を構築するようになっている。その際、堰板の設置は複数のセパレータを介して行われるが、これら各セパレータには、打設されたコンクリートから堰板に作用する圧力によって所定の張力が作用するので、この張力に対抗するための反力を法面側に受け持たせる必要がある。
【0004】
このため従来、法面にアンカを打ち込んで、このアンカの先端部にセパレータの基端部を連結したり、あるいは、あるいは「特許文献1」に記載されているように、セパレータ自体を法面に打ち込む工夫がなされている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−210004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のコンクリート擁壁構築方法においては、法面に打ち込まれたアンカあるいはセパレータにより所要の反力を確保するようになっているので、その打込みを法面からある程度の深さの位置に達するまで行う必要がある。
【0007】
しかしながら、法面を構成する地盤が軟弱な場合には、相当な深さまで打込みを行う必要があり、このため長尺のアンカあるいはセパレータを用いる必要がある。また、法面を構成する地盤が堅固な場合には、アンカあるいはセパレータの打込みを必要な深さまで行うこと自体が容易ではない。
【0008】
したがって、上記従来のコンクリート擁壁構築方法では、施工効率が悪く、このため施工コストが掛かってしまい、また、定量的な施工管理が困難であるため、施工の信頼性を十分に確保することができない、という問題がある。
【0009】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、法面を覆うコンクリート擁壁を構築する際の施工コスト低減を図るとともに施工の信頼性を高めることができるコンクリート擁壁構築方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、従来のアンカの代わりに所定のセパレータ連結用治具を用い、これをモルタル吹付けにより法面に固定するようにし、もって上記目的達成を図るようにしたものである。
【0011】
すなわち、本願発明に係るコンクリート擁壁構築方法は、
法面を覆うコンクリート擁壁を構築するコンクリート擁壁構築方法において、
基端部にフランジ部が形成された複数のセパレータ連結用治具を、法面に沿って互いに所定間隔をおいて配置した状態で上記法面に仮固定した後、上記法面にモルタルを吹き付けることにより上記各セパレータ連結用治具の基端部を上記法面に固定し、
その後、上記各セパレータ連結用治具の先端部にセパレータの基端部を連結するとともに、これら各セパレータの先端部に堰板を上記法面と略平行になるように設置し、この堰板と上記法面との間にコンクリートを打設する、ことを特徴とするものである。
【0012】
上記各「セパレータ連結用治具」は、その基端部にフランジ部が形成されるとともに、その先端部においてセパレータの基端部に連結し得るように構成されたものであれば、その形状、大きさ、材質等の具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0013】
上記各セパレータ連結用治具を法面に「仮固定」するための具体的方法は、この仮固定の後に行われるモルタル吹付けによる法面への固定までの間、セパレータ連結用治具を法面の所定位置に位置決め保持することができるものであれば、特定の方法に限定されるものではない。
【0014】
上記法面に対する「モルタル」の吹付けは、各セパレータ連結用治具の基端部を法面に固定し得る態様で行われるものであれば、法面の全域に対して行うようにしてもよいし、各セパレータ連結用治具の基端部の近傍領域に対してのみ行うようにしてもよい。
【0015】
上記各セパレータ連結用治具の先端部と各セパレータの基端部との「連結」を行うための具体的方法は特に限定されるものではなく、例えばネジ締めや嵌合等による連結が採用可能である。
【発明の効果】
【0016】
上記構成に示すように、本願発明に係るコンクリート擁壁構築方法においては、基端部にフランジ部が形成された複数のセパレータ連結用治具を、法面に沿って互いに所定間隔をおいて配置した状態で法面に仮固定した後、法面にモルタルを吹き付けることにより各セパレータ連結用治具の基端部を法面に固定し、その後、各セパレータ連結用治具の先端部にセパレータの基端部を連結するとともに、これら各セパレータの先端部に堰板を法面と略平行になるように設置し、この堰板と法面との間にコンクリートを打設するようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0017】
すなわち、法面に仮固定されたセパレータ連結用治具は、モルタル吹付けにより法面に固定されるので、その後、打設されたコンクリートから堰板に作用する圧力によってセパレータに所定の張力が作用しても、この張力に対抗するための反力をセパレータ連結用治具およびモルタルによって確保することができる。
【0018】
その際、このセパレータ連結用治具の法面への固定は、該セパレータ連結用治具の仮固定およびモルタル吹付けにより行われるので、従来のようなアンカ等の打込作業に比して法面への固定を簡易に行うことができ、これにより施工効率を高めることができる。
【0019】
また、セパレータに作用する張力に対抗するための反力を、従来のようにアンカ等の引抜き抵抗力に依存するのではなく、打設されたコンクリートの圧力を利用してセパレータ連結用治具およびモルタルにより確保するようになっているので、定量的な施工管理を行うことができる。
【0020】
したがって本願発明によれば、法面を覆うコンクリート擁壁を構築する際の施工コスト低減を図ることができ、また、その施工の信頼性を高めることができる。
【0021】
上記構成において、各セパレータ連結用治具を法面に仮固定するための具体的方法が特に限定されないことは上述したとおりであるが、この仮固定を、法面に棒状部材を予め打ち込んでおくとともに、この棒状部材にセパレータ連結用治具を装着することにより行うようにすれば、セパレータ連結用治具の構成を簡素化した上で、該セパレータ連結用治具の法面への仮固定を確実に行うことができる。
【0022】
あるいは、このようにする代わりに、セパレータ連結用治具に棒状突起部を予め設けておくとともに、この棒状突起部を法面に打ち込むことにより行うようにすれば、必要機材を削減することができる。
【0023】
これらの場合において、法面に対する棒状部材あるいは棒状突起部の打込みは、セパレータ連結用治具の仮固定のために必要な程度に行えば足り、従来のアンカ等のようにコンクリート打設時の引抜き力に対抗するための反力を確保する必要はないので、法面に浅いドリル穴をあけて、このドリル穴に棒状部材あるいは棒状突起部を挿し込むことにより容易に行うことができる。その際、法面を構成する地盤が比較的軟弱であれば、棒状部材あるいは棒状突起部を法面に直接打ち込むことも可能であり、これにより打込み作業を一層容易に行うことができる。
【0024】
上記構成において、法面にモルタルを吹き付ける前に、法面にラス金網を張り付けるようにすれば、セパレータに作用する張力に対抗するための反力を、セパレータ連結用治具およびモルタルだけでなく、ラス金網によっても確保することができるので、施工の信頼性を一層高めることができる。
【0025】
このように法面にラス金網を張り付けるようにした場合には、各セパレータ連結用治具の法面に対する仮固定を、該セパレータ連結用治具のフランジ部をラス金網に係止することにより行うようにすることも可能である。このようにした場合には、棒状部材あるいは棒状突起部の法面への打込みを不要とすることが可能となり、これにより施工効率を一層高めることができる。その際、ラス金網への係止と法面への打込みとを併用することも可能であり、このようにした場合には施工の信頼性をより一層高めることができる。
【0026】
上記構成において、各セパレータ連結用治具の先端部と各セパレータの基端部との連結方法が特に限定されないことも上述したとおりであるが、各セパレータ連結用治具の先端部にネジ孔を形成しておくとともに、各セパレータの基端部にネジ部を形成しておき、各セパレータの各セパレータ連結用治具に対する連結を、該セパレータをセパレータ連結用治具にネジ締めすることにより行うようにすれば、汎用のセパレータを用いて施工を行うことができ、これにより施工コスト低減効果を高めることができる。
【0027】
上記構成において、各セパレータ連結用治具を、金属板に曲げ加工を施すことにより製作するようにすれば、打設されたコンクリートに埋め込まれて転用が利かないセパレータ連結用治具を低コストで製作することができ、これにより施工コスト低減効果を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本願発明の一実施形態に係るコンクリート擁壁構築方法を示す施工現場の側断面図である。また、図2は、図1のII部詳細図であり、図3は、図2のIII-III 線矢視断面詳細図である。
【0030】
これらの図に示すように、本実施形態に係るコンクリート擁壁構築方法は、地山2の法面2aをもたれ擁壁として覆うコンクリート擁壁4を構築する方法であって、その工程の概要は次のようになっている。
【0031】
すなわち、基端部にフランジ部10aが形成された複数のセパレータ連結用治具10を、地山2の法面2aに沿って互いに所定間隔をおいて配置した状態で法面2aに仮固定した後、法面2aにモルタル6を吹き付けることにより各セパレータ連結用治具10の基端部を法面2aに固定し、その後、各セパレータ連結用治具10の先端部にセパレータ20の基端部を連結するとともに、これら各セパレータ10の先端部に堰板22を法面2aと平行になるように設置し、この堰板22と法面2aとの間にコンクリートを打設するようになっている。
【0032】
その際、各セパレータ連結用治具10としては、治具本体10Aの先端部にナット10Bが溶接されたものを用いるようになっている。
【0033】
治具本体10Aは、金属板に曲げ加工を施すことにより製作されるようになっている。すなわち、この治具本体10Aは、その先端部においてコ字状に折り曲げられるとともに、この先端部から平行に延びる1対の中間部の基端部において両側へ直角に折り曲げられており、これにより上記1対のフランジ部10aが形成されるようになっている。また、この治具本体10Aの各中間部における基端部近傍部位の両側部には、1対のタブ部10bが内側へ折り曲げられるようにして形成されている。さらに、この治具本体10Aの先端部には、ナット10Bのネジ径よりも大きい貫通孔が形成されている。そして、この治具本体10Aは、その1対の中間部の間隔および1対のタブ部10bの間隔が、棒状部材12の径と略同じ大きさに設定されている。
【0034】
次に、本実施形態に係るコンクリート擁壁構築方法の工程を、図4〜10により詳細に説明する。
【0035】
まず、図4に示すように、地山2の法面2aに対して、上下および左右方向に各々所定間隔をおいて複数の浅いドリル穴2bをあけ、これら各ドリル穴2bに棒状部材12を打ち込む。その際、各ドリル穴2bの径は、棒状部材12の径と略同じ大きさに設定しておき、棒状部材12の打込みを容易に行い得るようにしておく。また、棒状部材12として、所定長の異形鋼棒を用い、ドリル穴2bの内壁との密着性を確保するようにする。そして、打ち込まれた棒状部材12は、その先端部を法面2aからある程度突出させるようにしておく。
【0036】
次に、図5に示すように、各棒状部材12にセパレータ連結用治具10を各々装着し、これにより各セパレータ連結用治具10を法面2aに仮固定する。その際、セパレータ連結用治具10の棒状部材12への装着は、その治具本体10Aの1対の中間部および1対のタブ部10bで囲まれた隙間に棒状部材12を挿入させることにより行う。
【0037】
次に、図6に示すように、法面2aにモルタル6を吹き付けることにより、各セパレータ連結用治具10の基端部を法面2aに固定する。このモルタル6の吹付けは、法面2aの全域にわたって略同じ厚さ(例えば50mm程度)で行い、各セパレータ連結用治具10が半分程度埋設されるようにする。このモルタル吹付けの際、各セパレータ連結用治具10における治具本体10Aの先端部に形成された貫通孔およびナット10Bのネジ孔が、モルタルによって不用意に塞がれてしまわないようにするため、ビニルテープ等を各セパレータ連結用治具10の先端部に巻き付けておくことが好ましい。
【0038】
その後、同図に示すように、各セパレータ連結用治具10の先端部にセパレータ20の基端部を連結する。その際、このセパレータ20として全ネジボルトを用い、これをセパレータ連結用治具10のナット10Bにネジ締めすることにより、その連結を行う。
【0039】
次に、図7に示すように、各セパレータ20の先端部にプラスチックコーン24を連結する。この連結は、プラスチックコーン24の雌ネジ部24aをセパレータ20の先端部にネジ締めすることにより行う。
【0040】
なお、このようにする代わりに、予めプラスチックコーン24をセパレータ20に連結した状態で、このセパレータ20をセパレータ連結用治具10に連結するようにしてもよい。
【0041】
次に、図8に示すように、各プラスチックコーン24の型枠受面に堰板22を当接させて、堰板22を法面2aと平行になるように設置する。その際、堰板22として、適当なサイズの堰板22を複数枚用い、その端面を互いに密接させるようにして配置する。これら各堰板22の設置は、該堰板22に形成された小孔22aにプラスチックコーン24の雄ネジ部24bを挿入させることによって行う。そして、このようにした設置された複数の堰板22に対して、その背面側から複数の縦桟角パイプ26を当接させる。
【0042】
次に、図9に示すように、堰板22の背面側に突出した各プラスチックコーン24の雄ネジ部24bにフォームタイ28の基端部をネジ締めにより連結した後、これら各フォームタイ28の上下両側に横桟丸パイプ30を配置して、これら各フォームタイ28の先端部にクランプ32を挿通させ、このクランプ32で両横桟丸パイプ30を縦桟角パイプ26に押し当てた状態で、ナット34をフォームタイ28に締め付けることにより、各堰板22の設置を完了させる。
【0043】
そして、図10に示すように、法面2aと平行になるように設置された複数の堰板22と法面2aとの間にコンクリートを打設することにより、コンクリート擁壁4を構築する。
【0044】
その際、打設されたコンクリートから堰板22に作用する圧力により、各セパレータ20には所定の張力が作用するが、打設されたコンクリートの圧力は、法面2aに吹き付けられたモルタル6にも作用するとともに、このモルタル6を介して各セパレータ連結用治具10にも作用するので、これら各セパレータ連結用治具10およびモルタル6によって各セパレータ20の張力に対抗するための反力が確保され、各堰板22は法面2aと平行に設置された状態に維持される。
【0045】
以上詳述したように、本実施形態に係るコンクリート擁壁構築方法においては、基端部にフランジ部10aが形成された複数のセパレータ連結用治具10を、地山2の法面2aに沿って互いに所定間隔をおいて配置した状態で法面2aに仮固定した後、法面2aにモルタル6を吹き付けることにより各セパレータ連結用治具10の基端部を法面2aに固定し、その後、各セパレータ連結用治具10の先端部にセパレータ20の基端部を連結するとともに、これら各セパレータ20の先端部に堰板22を法面2aと平行になるように設置し、この堰板22と法面2aとの間にコンクリートを打設するようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0046】
すなわち、法面2aに仮固定されたセパレータ連結用治具10は、モルタル吹付けにより法面2aに固定されるので、その後、打設されたコンクリートから堰板22に作用する圧力によってセパレータ20に所定の張力が作用しても、この張力に対抗するための反力をセパレータ連結用治具10およびモルタル6によって確保することができる。
【0047】
その際、セパレータ連結用治具10の法面2aへの仮固定は、セパレータ連結用治具10の仮固定およびモルタル吹付けにより行われるので、従来のようなアンカ等の打込作業に比して法面2aへの固定を簡易に行うことができ、これにより施工効率を高めることができる。
【0048】
また、セパレータ20に作用する張力に対抗するための反力を、従来のようにアンカ等の引抜き抵抗力に依存するのではなく、打設されたコンクリートの圧力を利用してセパレータ連結用治具10およびモルタル6により確保するようになっているので、定量的な施工管理を行うことができる。
【0049】
したがって本実施形態によれば、地山2の法面2aを覆うコンクリート擁壁4を構築する際の施工コスト低減を図ることができ、また、その施工の信頼性を高めることができる。
【0050】
特に本実施形態においては、各セパレータ連結用治具10の法面2aに対する仮固定を、法面2aに棒状部材12を予め打ち込んでおくとともに、この棒状部材12にセパレータ連結用治具10を装着することにより行うようになっているので、セパレータ連結用治具10の構成を簡素化した上で、該セパレータ連結用治具10の法面2aへの仮固定を確実に行うことができる。
【0051】
その際、法面2aに対する棒状部材12の打込みは、セパレータ連結用治具10の仮固定のために必要な程度に行えば足り、従来のアンカ等のようにコンクリート打設時の引抜き力に対抗するための反力を確保する必要はないので、法面2aに浅いドリル穴2bをあけて、このドリル穴2bに棒状部材12を打ち込むことにより(あるいは挿し込むことにより)容易に行うことができる。その際、地山2の法面2aを構成する地盤が比較的軟弱であれば、棒状部材12を法面2aに直接打ち込むことも可能であり、これにより打込み作業を一層容易に行うことができる。
【0052】
また本実施形態においては、各セパレータ連結用治具10を、治具本体10Aの先端部にナット10Bが溶接された構成としておくとともに、各セパレータ20として全ネジボルトを用い、これら各セパレータ20の各セパレータ連結用治具10に対する連結を、該セパレータ20をセパレータ連結用治具10にネジ締めすることにより行うようになっているので、汎用のセパレータ20を用いて施工を行うことができ、これにより施工コスト低減効果を高めることができる。
【0053】
さらに本実施形態においては、各セパレータ連結用治具10の治具本体10Aを、金属板に曲げ加工を施すことにより製作するようになっているので、打設されたコンクリートに埋め込まれて転用が利かないセパレータ連結用治具10を低コストで製作することができ、これにより施工コスト低減効果を一層高めることができる。
【0054】
なお、上記実施形態において、堰板22を設置する前に、鉄筋を適当に組み立てて法面2aに沿って配置しておくことにより、コンクリート擁壁4を鉄筋コンクリート構造とすることも可能である。
【0055】
また、上記実施形態においては、セパレータ連結用治具10として、治具本体10Aの先端部にナット10Bが溶接されたものを用いるものとして説明したが、治具本体10Aの先端部に直接ネジ孔を形成するようにしてもよく、このようにした場合にはナット10Bの溶接を不要とすることができる。
【0056】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0057】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0058】
図11は、本変形例に係るコンクリート擁壁構築方法を示す、図5と同様の図である。
【0059】
同図に示すように、本変形例においては、上記実施形態のセパレータ連結用治具10の代わりにセパレータ連結用治具110を用いる点で上記実施形態の場合と異なっているが、それ以外の工程は上記実施形態の場合と同様である。
【0060】
このセパレータ連結用治具110は、その基端部に環状のフランジ部110aが形成されるとともにその基端部中央に棒状突起部110bが形成される一方、その先端部にセパレータ連結用のネジ孔110cが形成された構成となっており、鋳造等により製作されるようになっている。
【0061】
そして、本変形例においては、各セパレータ連結用治具110の棒状突起部110bを法面2aの各ドリル穴2bに打ち込むことにより(あるいは挿し込むことにより)、各セパレータ連結用治具110の法面2aへの仮固定を行うようになっている。
【0062】
本変形例の方法を採用することにより、上記実施形態の場合のように法面2aに予め棒状部材12を打ち込んでおく必要をなくすことができ、これによりコンクリート擁壁4の構築に必要な機材を削減することができる。
【0063】
なお、本変形例の方法を採用した場合においても、地山2の法面2aを構成する地盤が比較的軟弱であれば、棒状突起部110bを法面2aに直接打ち込むことも可能であり、これにより打込み作業を一層容易に行うことができる。
【0064】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0065】
図12は、本変形例に係るコンクリート擁壁構築方法を示す、図3と同様の図である。
【0066】
同図に示すように、本変形例においては、法面2aにモルタル6を吹き付ける前に、法面2aにラス金網40を張り付けるとともに、各セパレータ連結用治具10の法面2aに対する仮固定を、上記実施形態の場合のように法面2aに打ち込まれた棒状部材12にセパレータ連結用治具10を装着する代わりに、セパレータ連結用治具210のフランジ部210aをラス金網40に係止することにより行うようになっている。
【0067】
このため、本変形例においては、セパレータ連結用治具210として、上記実施形態の場合と同様、治具本体210Aの先端部にナット210Bが溶接されたものを用いるようになっているが、その治具本体210Aには、上記実施形態のセパレータ連結用治具10における治具本体10Aの場合のようなタブ部10bは形成されておらず、その分だけ構成が簡素化されている。
【0068】
本変形例の方法を採用することにより、セパレータ20に作用する張力に対抗するための反力を、セパレータ連結用治具210およびモルタル6だけでなく、ラス金網40によっても確保することができるので、施工の信頼性を一層高めることができる。また、各セパレータ連結用治具210の法面2aに対する仮固定を、セパレータ連結用治具210のフランジ部210aをラス金網40に係止することにより行うようになっているので、上記実施形態の場合のような棒状部材12の法面2aへの打込みを不要とすることができ、これにより施工効率を一層高めることができる。
【0069】
なお、本変形例において、セパレータ連結用治具210の位置決めをより確実に行うようにするため、結束用鋼線等を用いて治具本体210Aをラス金網40に適宜巻き付けるようにしてもよい。
【0070】
また、本変形例のように、各セパレータ連結用治具210をラス金網40に係止するだけでなく、これら各セパレータ連結用治具210を上記実施形態の場合のように法面2aに打ち込まれた棒状部材12に装着するようにすることも可能であり、このようにすることにより施工の信頼性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本願発明の一実施形態に係るコンクリート擁壁構築方法を示す施工現場の側断面図
【図2】図1のII部詳細図
【図3】図2のIII-III 線矢視断面詳細図
【図4】上記コンクリート擁壁構築方法の工程図(その1)
【図5】上記コンクリート擁壁構築方法の工程図(その2)
【図6】上記コンクリート擁壁構築方法の工程図(その3)
【図7】上記コンクリート擁壁構築方法の工程図(その4)
【図8】上記コンクリート擁壁構築方法の工程図(その5)
【図9】上記コンクリート擁壁構築方法の工程図(その6)
【図10】上記コンクリート擁壁構築方法工程図(その7)
【図11】上記実施形態の第1変形例を示す、図5と同様の図
【図12】上記実施形態の第2変形例を示す、図3と同様の図
【符号の説明】
【0072】
2 地山
2a 法面
2b ドリル穴
4 コンクリート擁壁
6 モルタル
10、110、210 セパレータ連結用治具
10A、210A 治具本体
10B、210B ナット
10a、110a、210a フランジ部
10b タブ部
12 棒状部材
20 セパレータ
22 堰板
22a 小孔
24 プラスチックコーン
24a 雌ネジ部
24b 雄ネジ部
26 縦桟角パイプ
28 フォームタイ
30 横桟丸パイプ
32 クランプ
40 ラス金網
110b 棒状突起部
110c ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面を覆うコンクリート擁壁を構築するコンクリート擁壁構築方法において、
基端部にフランジ部が形成された複数のセパレータ連結用治具を、法面に沿って互いに所定間隔をおいて配置した状態で上記法面に仮固定した後、上記法面にモルタルを吹き付けることにより上記各セパレータ連結用治具の基端部を上記法面に固定し、
その後、上記各セパレータ連結用治具の先端部にセパレータの基端部を連結するとともに、これら各セパレータの先端部に堰板を上記法面と略平行になるように設置し、この堰板と上記法面との間にコンクリートを打設する、ことを特徴とするコンクリート擁壁構築方法。
【請求項2】
上記各セパレータ連結用治具の上記法面に対する仮固定を、上記法面に棒状部材を予め打ち込んでおくとともに、この棒状部材に上記セパレータ連結用治具を装着することにより行う、ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート擁壁構築方法。
【請求項3】
上記各セパレータ連結用治具の上記法面に対する仮固定を、上記各セパレータ連結用治具に棒状突起部を予め設けておくとともに、この棒状突起部を上記法面に打ち込むことにより行う、ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート擁壁構築方法。
【請求項4】
上記法面にモルタルを吹き付ける前に、上記法面にラス金網を張り付ける、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のコンクリート擁壁構築方法。
【請求項5】
上記各セパレータ連結用治具の上記法面に対する仮固定を、上記各セパレータ連結用治具のフランジ部を上記ラス金網に係止することにより行う、ことを特徴とする請求項4記載のコンクリート擁壁構築方法。
【請求項6】
上記各セパレータ連結用治具の先端部にネジ孔を形成しておくとともに、上記各セパレータの基端部にネジ部を形成しておき、
上記各セパレータの上記各セパレータ連結用治具に対する連結を、該セパレータを上記セパレータ連結用治具にネジ締めすることにより行う、ことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のコンクリート擁壁構築方法。
【請求項7】
上記各セパレータ連結用治具を、金属板に曲げ加工を施すことにより製作する、ことを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のコンクリート擁壁構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−316474(P2006−316474A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139171(P2005−139171)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】