説明

コンクリート用のケイ素を含有する含フッ素処理剤

本発明は、含フッ素単量体を含んでなる単量体から誘導された繰り返し単位を有する含フッ素重合体であって、含フッ素重合体が、メルカプト基含有シリコーンが有するシリコーン部分を有する含フッ素重合体を提供する。多孔性基材を常温乾燥下において処理した場合に、含フッ素アクリレート系重合体を含むコンクリート表面処理剤は、優れた撥水撥油性および防汚性を多孔性基材に与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等の多孔性基材に、その外観を著しく変えることなく優れた撥水性、撥油性、防汚性を付与する表面処理剤およびそれによる処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートなどの多孔性基材に、撥水撥油性および防水性を付与するために、撥水撥油性を付与するパーフルオロアルキル基と防水性を付与するシリコーン化合物とを配合してなる撥水撥油剤組成物が広く用いられてきた(例えば、特開平6−172677およびUSP5399191)。
【0003】
これら従来のコンクリート表面処理剤に用いられたフルオロアクリレート系ポリマーでは繊維用撥水剤を中心とした製品が転用されており、これらはフルオロアルキル基の側鎖の炭素数がいずれも8以上である。これらフルオロアクリル鎖長が8以上を含むフルオロアクリレート系ポリマーでは、乳化重合の場合、使用する乳化剤量を多量にする必要や乳化剤の種類が限られるといった問題や、含フッ素モノマーが他の非フッ素モノマーとの相溶性に劣るので、補助溶剤を使用する必要があった。十分な効果、特に優れた撥水撥油効果を付与するために100℃以上の加熱による強制乾燥が必要であったが。コンクリートの表面処理剤で強制乾燥措置は事実上不可能であり、常温下での乾燥条件で十分な効果が得られる必要がある。
【0004】
最近の研究結果(EPAレポート"PRELIMINARY RISK ASSESSMENT OF THE DEVELOPMENTAL TOXICITY ASSOCIATED WITH EXPOSURE TO PERFLUOROOCTANOIC ACID AND ITS SALTS" (http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoara.pdf))などから、PFOA(perfluorooctanoic acid)に対する環境への負荷の懸念が明らかとなってきており、2003年4月14日EPA(米国環境保護庁)がPFOAに対する科学的調査を強化すると発表した。
【0005】
一方、Federal Register(FR Vol.68,No.73/April 16,2003[FRL-7303-8])
(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafr.pdf)や
EPA Environmental News FOR RELEASE: MONDAY APRIL 14, 2003
EPA INTENSIFIES SCIENTIFIC INVESTIGATION OF A CHEMICAL PROCESSING AID
(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoaprs.pdf)や
EPA OPPT FACT SHEET April 14, 2003(http://www.epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafacts.pdf)は、「テロマー」が分解または代謝によりPFOAを生成する可能性があると公表している。また、「テロマー」が、泡消火剤;ケア製品と洗浄製品;カーペット、テキスタイル、紙、皮革に設けられている撥水撥油被覆および防汚加工被覆を含めた多くの製品に使用されていることをも公表している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、コンクリート基材を処理した場合に、常温乾燥下においてさえ、優れた撥水撥油性および防汚性をコンクリート基材に与える含フッ素アクリレート系ポリマーを含むコンクリート表面処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的が、含フッ素単量体を含んでなる単量体から形成され、メルカプト基含有シリコーンの存在下で重合された重合体によって、達成されることを見出した。
【0008】
本発明は、
(A)単量体であって、(a)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-O-Y-Rf (I)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、ハロゲン原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、またはハロゲン原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、
Yは、直接結合または炭素数1〜10の非置換もしくは置換の炭化水素基、
Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体を含んでなる単量体、および
(B)メルカプト基含有シリコーン
を含んでなる含フッ素重合体を含んでなる、コンクリート用の表面処理剤を提供する。
【0009】
本発明は、含フッ素単量体を含んで成る単量体から誘導される繰り返し単位を有して成る含フッ素重合体であって、含フッ素重合体が、メルカプト基含有シリコーンが有するシリコーン部分を有する含フッ素重合体を提供する。
【0010】
本発明は、含フッ素単量体を含んで成る単量体から誘導される繰り返し単位を有して成る含フッ素重合体の製造方法であって、メルカプト基含有シリコーンの存在下において含フッ素単量体を重合することによって含フッ素重合体を得る製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、常温(20〜25℃)乾燥で基材を処理した場合においても、優れた撥水撥油性および防汚性を多孔性基材に与える含フッ素アクリレート系ポリマーを含んでなる撥水撥油剤を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、含フッ素重合体を形成する単量体(A)は、
(a)含フッ素単量体、
(b)必要により存在する、架橋性単量体以外の、フッ素原子を含まない単量体、および
(c)必要により存在する、架橋性単量体
を含んでなる。
【0013】
含フッ素重合体は、1種の単量体からなる単独重合体であっても、2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。
【0014】
単独重合体は、含フッ素単量体(a)から誘導された繰り返し単位を有する。
共重合体は、2種以上の含フッ素単量体(a)から誘導された繰り返し単位を有してもよいし、あるいは含フッ素単量体(a)から誘導された繰り返し単位に加えて、フッ素原子を含まない単量体(b)、および必要により存在する、架橋性単量体(c)から誘導された繰り返し単位を有してもよい。
【0015】
含フッ素重合体は、単量体(A)を、メルカプト基含有シリコーン(B)の存在下で重合することによって得られる。
【0016】
本発明の表面処理剤を構成する含フッ素重合体は、(a)含フッ素単量体、ならびに場合により存在する、(b)架橋性単量体以外の、フッ素原子を含まない単量体、および(c)架橋性単量体を含んでなる。
【0017】
含フッ素単量体(a)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-O-Y-Rf (I)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、
Yは、直接結合または炭素数1〜10の非置換もしくは置換の炭化水素基、
好ましくは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)、
Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物である。
【0018】
含フッ素単量体はα位がハロゲン原子などで置換されていることがある。したがって、式(I)において、Xが、炭素数2〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。
【0019】
式(I)において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜21、例えば1〜6、特に4〜6、特別に6である。
Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)である。脂肪族基はアルキレン基(特に炭素数1〜4、例えば、1または2)であることが好ましい。芳香族基および環状脂肪族基は、置換されていてもあるいは置換されていなくてもどちらでもよい。
【0020】
含フッ素単量体(a)の例は、次のとおりである。
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-C6H4-Rf
CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-(CH2)2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2N(-CH3)SO2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-(CH2)2N(-C2H5)SO2-Rf
CH2=C(-H)-C(=O)-O-CH2CH(-OH)CH2-Rf
【0021】


【0022】


【0023】


【0024】


[式中、Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
【0025】
含フッ素重合体は、フッ素原子を含まない単量体(b)から誘導される繰り返し単位を有していてよい。単量体(b)は、架橋性単量体(c)以外の単量体である。単量体(b)は、フッ素を含有せず、炭素-炭素二重結合を有する単量体であることが好ましい。単量体(b)は、フッ素を含有しないビニル性単量体であることが好ましい。フッ素原子を含まない単量体(b)は、一般に、1つの炭素-炭素二重結合を有する化合物である。フッ素原子を含まない単量体(b)として好ましい単量体としては、例えば、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルキルエーテルなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。フッ素原子を含まない単量体(b)は、ハロゲン化ビニルおよび/またはハロゲン化ビニリデンを含んでよい。
【0026】
フッ素原子を含まない単量体(b)は、アルキル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルであってよい。アルキル基の炭素数は、1〜30、例えば、6〜30、例示すれば、10〜30であってよい。例えば、フッ素原子を含まない単量体(b)は一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは水素原子、メチル基、またはフッ素以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)、
はC2n+1(n=1〜30)で示されるアルキル基である。]
で示されるアクリレート類であってよい。
【0027】
フッ素原子を含まない単量体(b)は、重量比[(i)/(ii)] 10:90〜90:10、例えば15:85〜60:40、特に20:80〜40:60で(i)(メタ)アクリレートエステルと(ii)ハロゲン化ビニルおよび/またはハロゲン化ビニリデンとの組合せを有することが好ましい。
【0028】
含フッ素重合体は、架橋性単量体(c)から誘導される繰り返し単位を有してよい。架橋性単量体(c)は、少なくとも2つの反応性基および/または炭素−炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。架橋性単量体(c)は、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックドイソシアネート、アミノ基、カルボキシル基、などである。
【0029】
架橋性単量体(c)としては、例えば、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
【0030】
架橋性単量体(c)における反応性基は、ヒドロキシル基、エポキシ基またはヒドロキシル基とエポキシ基の組合せであることが好ましい。架橋性単量体(c)がヒドロキシル基とエポキシ基の組合せを有する場合に、ヒドロキシル基を有する単量体とエポキシ基を有する単量体との重量比は、10:90〜90:10、例えば85:15〜40:60、特に80:20〜60:40であることが好ましい。
【0031】
単量体(b)および/または単量体(c)を共重合させることにより、撥水撥油性や防汚性およびこれらの性能の耐久性、溶剤への溶解性などの種々の性質を必要に応じて改善することができる。
【0032】
含フッ素重合体において、含フッ素単量体(a)100重量部に対して、
フッ素原子を含まない単量体(b)の量が0.1〜100重量部、例えば0.1〜50重量部であり、
架橋性単量体(c)の量が50重量部以下、例えば20重量部以下、特に0.1〜15重量部であってよい。
【0033】
メルカプト基含有シリコーン(B)は、2以上のシロキサン結合を有するシリコーン部分および少なくとも1つ(特に、1つの)メルカプト基を有するシロキサン化合物である。メルカプト基含有シリコーン(B)は、連鎖移動剤として機能する。重合反応において、−SH基から水素(H)ラジカルが発生し、シリコーン部分に結合した硫黄(S)原子が、含フッ素重合体に結合する。
【0034】
メルカプト基含有シリコーン(B)は、例えば、式:


[式中、R1はメチル基、メトキシ基、フェニル基、水酸基、
2はメチル基、メトキシ基、フェニル基、あるいは水酸基、
R3はメチル基、メトキシ基、フェニル基、あるいは水酸基、
Aは場合によりエーテル結合1個または2個で遮断されている直鎖状または分岐鎖状の炭素鎖を有する炭素数1〜10の2価の飽和炭化水素基、
Bは場合によりエーテル結合1個または2個で遮断されている直鎖状または分岐鎖状の炭素鎖を有する炭素数1〜10の2価の飽和炭化水素基、
Cはアミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、あるいはカルボキシル基である。
a、b、およびcは繰り返し単位数を表す正の整数であり、aは1〜4000、例えば2〜2000、bは0〜1000、好ましくは1〜800、cは0〜1000、好ましくは1〜800である。]
【0035】
AおよびBの例は、炭素数1〜10、特に2〜6のアルキレン基である。
【0036】
メルカプト基含有シリコーン(B)の具体例は、例えば、次の式で示される:



[式中、aは、0〜4000、あるいは、1〜1000、あるいは、2〜400であり、
bは、0〜1000、あるいは、1〜100、あるいは、2〜50であり、
cは、1〜1000、あるいは、2〜100、あるいは、3〜50であり;
それぞれのR’は、独立して、H、炭素数1〜40のアルキル基またはMe3Siである。]。
【0037】
この具体例のメルカプト含有シリコーンは、アミノ官能性基および/またはメルカプト官能性基を含有するオルガノポリシロキサンターポリマーを製造するためにこの分野で知られている任意の技術によって製造することができる。典型的には、メルカプト含有シリコーンは、下記の一般的な反応スキームによって例示されるように、アミノ官能性アルコキシシランと、メルカプト官能性シラン単量体と、アルコキシ末端またはシラノール末端を有するオルガノポリシロキサンとの縮重合反応によって製造される。
【0038】



[式中、Rは炭素数1〜40のアルキル基であり、Meはメチル基である。]
【0039】
オルガノポリシロキサンの縮合はこの分野では広く知られており、典型的には、強塩基(例えば、アルカリ金属水酸化物など)またはスズ化合物の添加によって触媒される。あるいは、官能化されたシクロシロキサンの共重合を使用することができる。
【0040】
単量体(A)とオルガノポリシロキサン(B)との含フッ素重合体は、そのような単量体の重合を行うために当技術で既知のいずれかの方法によって調製できる。好ましくは、含フッ素重合体は、重合反応によって、好ましくはラジカル重合反応によって、オルガノポリシロキサン(B)の存在下で、単量体(A)を反応させることによって製造できる。
【0041】
含フッ素重合体は、それぞれの成分(A)および成分(B)の量によって制御されるように、単量体(A)とオルガノポリシロキサン(B)の様々な比率を含有してよい。含フッ素重合体は、5重量%〜99.9重量%(好ましくは、10重量%〜95重量%)の単量体(A)と、0.1重量%〜95重量%(好ましくは、5重量%〜90重量%)のオルガノポリシロキサン(B)とを含有してよい(ここで、(A)および(B)の合計(重量%)は100%に等しい)。
【0042】
含フッ素重合体の重量平均分子量は、例えば2000〜5000000、特に3000〜5000000、特別に10000〜1000000であってよい。含フッ素重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めたものである(ポリスチレン換算)。
【0043】
含フッ素重合体は、いずれかの重合方法によって製造することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合および乳化重合が挙げられる。
【0044】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、30〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部、例えば0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0045】
有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜2000重量部、例えば、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0046】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる方法が採用される。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3−カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン−二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0047】
放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、油溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。また、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲で用いられる。アニオン性および/またはノニオン性および/またはカチオン性の乳化剤を使用することが好ましい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0048】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。また、低分子量の単量体としては、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられ、単量体の総量100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。
【0049】
本発明の処理剤は、(1)含フッ素重合体、および(2)液状媒体に加えて、(3)添加剤を含有してもよい。
【0050】
添加剤(3)の例は、含ケイ素化合物、ワックス、アクリルエマルションなどである。
含ケイ素化合物は、少なくとも1つのシロキサン結合を有する化合物であることが好ましい。
【0051】
含ケイ素化合物は、例えば、アルキルシリケート、シリコネートなどである。
アルキルシリケートの例は、下記一般式(I):



[式中、R1nは炭素数1〜18のアルキル基を表し、nnが2以上の場合には同一であっても異なっていてもよい。 R2nは、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、nnが2以上の場合には同一であっても異なっていてもよい。nnは、1〜20の整数を表す。]
で示される化合物であってよい。
【0052】
上記R1nに関して、炭素数1〜18のアルキル基(すなわち、飽和鎖状脂肪族炭化水素基)としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等を挙げることができ、これらは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0053】
上記R2nに関して、炭素数1〜5のアルキル基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等を挙げることができ、これらは直鎖状であっても分岐状であってもよい。
上記nnは、1〜20、例えば1〜10の整数である。
【0054】
アルキルシリケートとしては、更に具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン等を挙げることができ、なかでも、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシランが好ましい。
【0055】
また、含ケイ素化合物のダイマー等も、含ケイ素化合物として使用することができ、このようなものとしては、上記一般式(I)において、nnが2または3のもの等を挙げることができる。また更に、nnが20までの整数のものであっても良い。
【0056】
シリコネート(特にアルキルシリコネート)は、例えば、式:
Si(OR(OM)で表される化合物である。
[式中、aは0以上の整数(好ましくは1)、bは0以上の整数(好ましくは2)、cは1以上の整数(好ましくは1)であり、a+b+c=4を満たす。
は同一または異なるものであってよく、炭素数1〜18の炭化水素基を表す。
は同一または異なるものであってよく、水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基を表す。
Mは同一または異なるものであってよく、アルカリ金属を表す。]
【0057】
炭化水素基は、例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基)、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または芳香脂肪族炭化水素基である。
【0058】
としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。このうち、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0059】
としては、水素原子の他、Rと同様の基が挙げられる。このうち、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
Mとしては、Li、Na、K等が挙げられ、特にNaが好ましい。
アルキルシリコネートの具体例は、ナトリウムメチルシリコネート〔CH3Si(OH)2(ONa)〕やカリウムエチルシリコネート〔C2H5Si(OH)2(OK)〕である。
【0060】
添加剤(3)の量は、含フッ素重合体(1)100重量部に対して、0〜200重量部、例えば0〜50重量部、例示すれば0.1〜50重量部であってよい。
【0061】
またさらに、処理剤は上記成分(1)〜(3)に加え必要に応じて、他の撥水剤,他の撥油剤,乾燥速度調整剤,架橋剤,造膜助剤,相溶化剤,界面活性剤,凍結防止剤,粘度調整剤,紫外線吸収剤,酸化防止剤,pH調整剤,消泡剤,すべり性調整剤,帯電防止剤,親水化剤,抗菌剤,防腐剤,防虫剤,芳香剤,難燃剤、色調調整剤等を含有しても良い
【0062】
本発明の表面処理剤は、溶液、エマルションまたはエアゾールの形態であることが好ましい。表面処理剤は、含フッ素重合体および媒体(特に、液状媒体、例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。表面処理剤において、含フッ素重合体の濃度は、例えば、0.1〜50重量%であってよい。
【0063】
本発明の表面処理剤は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。表面処理剤の適用は、浸漬、スプレー、塗布によって行える。通常、該表面処理剤を有機溶剤または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。
【0064】
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【実施例】
【0065】
以下の製造例および実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。
【0066】
合成例1
メルカプト基含有シロキサン(シロキサンA)の合成:
冷却器、上部攪拌機および熱電対を取り付けた三つ口丸底フラスコに、第1シラノール末端ポリジメチルシロキサン(323g、Mn約900)、第2シラノール末端ポリジメチルシロキサン(380g、Mn約300)、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(230g)、アミノプロピルメチルジエトキシシラン(27g)、トリメチルエトキシシラン(42g)、水酸化バリウム(0.62g)およびオルトリン酸ナトリウム(0.25g)を仕込んだ。反応混合物を75℃に加熱し、この温度で3時間保った。次いで、揮発物を、75℃で4時間、減圧(200mbar)下で除き、アミノメルカプトシロキサン(シロキサンA)を得た。
【0067】
アミノメルカプトシロキサンの物理的性質および構造的性質を下記の表に記載する:
【0068】
【表1】

【0069】
製造例1(「C6 Hybrid」ポリマーエマルションの調製)
CF3CF2-(CF2CF2)2-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 [Rf(C6)メタクリレート] 9.2g、ステアリルアクリレート(StA)1.15g、グリセロールメタクリレート(GLM)0.22g、グリシジルメタクリレート(GMA)0.07g、合成例1で製造したアミノメルカプトシロキサン(シロキサンA)1.42g、純水23.3g、ジプロピレングリコール4.25g、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム0.76g、ソルビタンモノパルミテート0.13g、ポリオキシエチレン(100)硬化ひまし油誘導体0.635gの混合物を、60℃で加熱し、ホモミキサーで予備乳化した後、超音波ホモジナイザーで粒径が約200nm(動的光散乱法)となるまで乳化した。このモノマーエマルションをオートクレープに移し、窒素置換後、塩化ビニル3.36gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.18gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水型ポリマーエマルションを得た。このエマルションの固形分を130℃で2時間加熱した後の蒸発残分から求めて、固形分が20重量%となるように水で希釈した。
【0070】
比較製造例1(C6 non-Hybrid)
製造例1においてアミノメルカプトシロキサンを、n-ドデシルメルカプタン0.23gに置き換える以外は全く同じ方法で製造した。
【0071】
比較製造例2(C8 non-Hybrid)
製造例1においてCF3CF2-(CF2CF2)2-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 [Rf(C6)メタクリレート]をCF3CF2-(CF2CF2)3-CH2CH2OCOCH=CH2 [Rf(C8)アクリレート]9.2gに置き換え、アミノメルカプトシロキサンを、n-ドデシルメルカプタン0.23gに置き換える以外は全く同じ方法で製造した。
【0072】
実施例1および比較例1〜2
製造例1で得られたポリマーエマルションをそれぞれイオン交換水で固形分3重量%になるように希釈した(実施例1)。比較製造例1〜2で得られたポリマーエマルションを同様にイオン交換水で固形分3重量%になるように希釈した(比較例1〜2)。それぞれの希釈水溶液をコンクリート試験片に均一に塗布(200g/m2の割合)した。その後20℃で24時間乾燥させ、耐汚染性試験を実施した。
【0073】
耐汚染性試験は以下の方法で行った。
汚染物質の液滴を処理済み基材にのせ、液滴を24時間放置し、紙タオルで除去した。以下の基準に従って目視評価を行った。
1=濃い染み、油滴の広がりがひろい
2=濃い染み、広がりがわずか、またはない
3=中程度の染み、広がりはない
4=かすかな染み
5=染みがない
【0074】
結果を次表に示す。
【0075】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)単量体であって、(a)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-O-Y-Rf (I)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、ハロゲン原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、またはハロゲン原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、
Yは、直接結合または炭素数1〜10の非置換もしくは置換の炭化水素基、
Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体を含んでなる単量体、および
(B)メルカプト基含有シリコーン
を含んでなる含フッ素重合体を含んでなる、コンクリート用の表面処理剤。
【請求項2】
単量体(A)が、含フッ素単量体(a)に加えて、
(b)フッ素原子を含まない単量体、および
(c)必要により存在する、架橋性単量体
をも含む請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
単量体(A)において、X基が水素原子またはメチル基である請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項4】
単量体(A)において、Y基が、
直接結合、
炭素数1〜10の脂肪族基、
炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、
−CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH2CH(OY1)CH2−基(但し、Y1は水素原子またはアセチル基である。)
である請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項5】
Rf基の炭素数が1〜6である請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項6】
Rf基がパーフルオロアルキル基である請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項7】
フッ素原子を含まない単量体(b)が、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは、水素原子、メチル基、またはフッ素原子以外のハロゲン原子、
は炭素数1〜30の炭化水素基(特に、C2n+1(n=1〜30)で示されるアルキル基)である。]
で表わされるアクリレートである請求項2に記載の表面処理剤。
【請求項8】
架橋性単量体(c)が、少なくとも2つの反応性基を有する単量体、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する単量体、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する単量体である請求項2に記載の表面処理剤。
【請求項9】
メルカプト基含有シリコーン(B)が、2以上のシロキサン結合を有するシリコーン部分および少なくとも1つのメルカプト基を有する請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項10】
メルカプト基含有シリコーン(B)が、


[式中、R1はメチル基、メトキシ基、フェニル基、水酸基、R2はメチル基、メトキシ基、フェニル基、あるいは水酸基、R3はメチル基、メトキシ基、フェニル基、あるいは水酸基、
Aは、エーテル結合1個または2個で遮断されていてよい直鎖状または分岐鎖状の炭素鎖を有する炭素数1〜10の2価の飽和炭化水素基、
Bは、エーテル結合1個または2個で遮断されていてよい直鎖状または分岐鎖状の炭素鎖を有する炭素数1〜10の2価の飽和炭化水素基、
Cはアミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、あるいはカルボキシル基である。
a、b、およびcは繰り返し単位数を表す正の整数であり、aは1〜4000、例えば2〜2000、bは0〜1000、好ましくは1〜800、cは0〜1000、好ましくは1〜800である。]
で表わされる請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項11】
さらに液状媒体を含む請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項12】
請求項1に記載の表面処理剤で基材を処理する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の表面処理剤で処理されたコンクリート。

【公表番号】特表2012−505285(P2012−505285A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530726(P2011−530726)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/JP2009/067958
【国際公開番号】WO2010/044479
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】