説明

コンテンツ受信装置およびコンテンツ受信方法

【課題】ICカードによる復号処理を効率よく行って複数のストリームを同時に視聴する。
【解決手段】暗号化されたコンテンツと暗号化されたコンテンツの暗号鍵とを含む1または2以上のストリームが入力される入力部120と、コンテンツの暗号鍵を復号するICカード104と、ICカードによるコンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間、暗号化されたコンテンツを保持するコンテンツ保持部118と、ストリームに含まれるコンテンツの暗号鍵が複数回変更されたか否かを判断する判断部116と、コンテンツの暗号鍵が複数回変更されたと判断部により判断された場合に、ICカード104に複数回変更されたコンテンツの暗号鍵を復号させるICカード制御部114と、を備えるコンテンツ受信装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ受信装置およびコンテンツ受信方法に関し、特に、ICカードにより効率よくコンテンツの暗号鍵を復号化するコンテンツ受信装置およびコンテンツ受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル信号を利用した画像・音声技術が普及してきている。また、従来のアナログ方式によるテレビジョン放送に代わって、デジタル方式による放送が世界中で広がりつつある。
【0003】
有料のデジタル放送では、視聴者が予め契約した番組のみを視聴できるようにするために、通常はスクランブル(暗号化)されて放送される。また、無料のデジタル放送でもコンテンツ保護の観点からスクランブルされて放送されている番組も存在する。デジタル放送を受信する受信装置には、暗号化されたコンテンツと当該コンテンツを復号するための鍵の元となる情報であるECM(Entitlement Control Message)とが同時に送信される。また、受信装置側には、スクランブルを解除(デスクランブル)するためのICカード(デジタルBS放送であればB−CASカード)が設けられている。
【0004】
受信装置は、B−CASカード等のICカードにECMを送り、ICカードにより復号処理された鍵によって、暗号化されたコンテンツを復号する。しかし、ICカードによるECMの処理は低速なため、一枚のICカードで多数のECM処理を行うことができない。そのため、複数のチューナーを用いて複数のストリームを同時に視聴したり記録したりすることが困難であった。
【0005】
そこで、受信装置に入力されるストリームを一定時間遅らせることにより、複数のストリームを同時に視聴する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1によれば、ICカードでは複数のECM処理を並行して行うことができないが、入力されるストリームに対応するECM処理が完了するまでストリームの入力を遅らせることにより、複数のストリームを同時にデスクランブルすることを可能としている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−80142号公報
【特許文献2】特開2005−316960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、受信装置がECMを抽出してからICカードによりECM処理が行われるまでに処理待ち時間が発生し、効率よく暗号鍵を復号することができず、複数のストリームを同時に視聴することが困難となるという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ICカードによる復号処理を効率よく行って複数のストリームを同時に視聴することが可能な、新規かつ改良されたコンテンツ受信装置およびコンテンツ受信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、暗号化されたコンテンツと暗号化されたコンテンツの暗号鍵とを含む1または2以上のストリームが入力される入力部と、コンテンツの暗号鍵を復号するICカードと、ICカードによるコンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間、暗号化されたコンテンツを保持するコンテンツ保持部と、ストリームに含まれるコンテンツの暗号鍵が複数回変更されたか否かを判断する判断部と、コンテンツの暗号鍵が複数回変更されたと判断部により判断された場合に、ICカードに複数回変更されたコンテンツの暗号鍵を復号させるICカード制御部と、を備えるコンテンツ受信装置が提供される。
【0009】
かかる構成によれば、コンテンツ受信装置に入力されたストリームに含まれるコンテンツの暗号鍵が複数回変更されたか否かを判断し、コンテンツの暗号鍵が複数回変更されたと判断された場合には、ICカードに複数回変更されたコンテンツの暗号鍵を復号させる。入力されたストリームに含まれる暗号化されたコンテンツは、コンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間保持される。そして、コンテンツ保持部に保持された暗号化されたコンテンツを、ICカードにより復号されたコンテンツの暗号鍵で復号する。
【0010】
これにより、入力ストリームに含まれるコンテンツの暗号鍵は複数回変更される毎に復号化がなされる。例えば、2つのコンテンツの暗号鍵が含まれている場合には、2回変更される毎に1回復号化がなされる。2つのコンテンツの暗号鍵が交互に更新され、2つのコンテンツの暗号鍵のいずれかが更新された場合にコンテンツの暗号鍵のバージョンが変更される場合には、コンテンツの暗号鍵のバージョンが2回変更される毎に復号化がなされる。したがって、2つのコンテンツの暗号鍵の両方が変更された場合にICカードによりコンテンツの復号化がなされるため、ICカードによるECM処理を効率よく行うことができる。
【0011】
また、入力されたストリームに含まれる暗号化されたコンテンツは、コンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間保持されるため、ICカードによるECM処理が終了する前に暗号化されたコンテンツが入力されてしまい、デスクランブルをすることができないという事態を回避することが可能となる。よって、ICカードによるECM処理を効率よく行いつつ複数のストリームを同時に視聴することを可能とする。
【0012】
上記コンテンツ受信装置は、コンテンツ保持部に保持された暗号化されたコンテンツを、ICカードにより復号されたコンテンツの暗号鍵により暗号化されたコンテンツを復号するコンテンツ復号部を備えてもよい。
【0013】
コンテンツの暗号鍵には複数の暗号鍵が含まれ、判断部はコンテンツの暗号鍵が暗号鍵の数に応じた回数変更されたか否かを判断してもよい。入力部には、コンテンツの暗号鍵のバージョン情報が入力され、判断部は、コンテンツの暗号鍵のバージョン情報が複数回変更されたか否かを判断してもよい。
【0014】
コンテンツの暗号鍵には複数の暗号鍵が含まれ、複数の暗号鍵の少なくとも1つが変更された場合にコンテンツの暗号鍵のバージョン情報が変更されるようにしてもよい。コンテンツの暗号鍵は周期的に変更され、コンテンツ保持部は、コンテンツの暗号鍵の変更周期およびコンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間、暗号化されたコンテンツを保持してもよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、暗号化されたコンテンツと暗号化されたコンテンツの暗号鍵とを含む1または2以上のストリームが入力されるコンテンツ受信装置が、入力されたコンテンツの暗号鍵が複数回変更された否かを判断するステップと、コンテンツの暗号鍵が複数回変更されたと判断された場合に、ICカードに複数回変更されたコンテンツの暗号鍵を復号させるステップと、入力された暗号化されたコンテンツを、コンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間保持するステップと、を含むコンテンツ受信方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、ICカードによる復号処理を効率よく行って複数のストリームを同時に視聴することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
まず、本発明の実施形態の目的について説明する。近年、デジタル信号を利用した画像・音声技術が普及してきている。また、従来のアナログ方式によるテレビジョン放送に代わって、デジタル方式による放送が世界中で広がりつつある。有料のデジタル放送では、視聴者が予め契約した番組のみを視聴できるようにするために、通常はスクランブル(暗号化)されて放送される。また、無料のデジタル放送でもコンテンツ保護の観点からスクランブルされて放送されている番組も存在する。デジタル放送を受信する受信装置には、暗号化されたコンテンツと当該コンテンツを復号するための鍵の元となる情報であるECM(Entitlement Control Message)とが同時に送信される。また、受信装置側には、スクランブルを解除(デスクランブル)するためのICカード(デジタルBS放送であればB−CASカード)が設けられている。
【0019】
受信装置は、B−CASカード等のICカードにECMを送り、ICカードにより復号処理された鍵によって、暗号化されたコンテンツを復号する。しかし、ICカードによるECMの処理は低速なため、一枚のICカードで複数のECM処理を行うことができない。そのため、複数のチューナーを用いて複数のストリームを同時に視聴したり記録したりすることができなかった。
【0020】
そこで、上記のような事情を一着眼点として、本発明の実施形態にかかるコンテンツ受信装置100が創作されるに至った。本実施形態にかかるコンテンツ受信装置100によれば、ICカードによるECM処理を効率よく行って複数のストリームを同時に視聴することが可能となる。以下、このような受信装置100の構成および動作を詳細に説明する。
【0021】
次に、図1に基づいて、本実施形態にかかるコンテンツ受信装置100の構成について説明する。図1は、本実施形態にかかるコンテンツ受信装置の機能構成を示すブロック図である。図1においては、2系統のデジタルチューナを有した受信装置を例示しているが、かかる例に限定されず、複数系統のデジタルチューナを有していてもよい。
【0022】
図1に示したように、コンテンツ受信装置100は、プロセッサ102、ICカード104、デジタルチューナ106a、106b(以下、デジタルチューナ106とも称する。)、デマルチプレクサ108a、108b(以下、デマルチプレクサ108とも称する。)、ストリームバッファ110a、110b(以下、ストリームバッファ110とも称する。)、デスクランブラ112a、112b(以下、デスクランブラ112とも称する。)
【0023】
デジタルチューナ106は、デジタル放送(BS、CS、地上波)の電波を受信したRF信号を入力し、当該信号を復調してトランスポートストリーム(以下、TSと称する。)をデマルチプレクサ108に入力する機能を有する。TSには暗号化されたコンテンツと、暗号化されたコンテンツの鍵の元となる情報(ECM)とが含まれている。
【0024】
デマルチプレクサ108は、デジタルチューナ106により入力されたTSに含まれるECMの抽出を行う機能を有する。また、TSから抽出したECMをプロセッサ102に出力し、暗号化されたコンテンツのストリームをストリームバッファに出力する。
【0025】
プロセッサ102は、デマルチプレクサ108により入力されたECMを時分割でICカード104に送り、ICカードからコンテンツを復号するための鍵を受信してデスクランブラ112に提供する機能を有する。
【0026】
ICカード104は、プロセッサ102から送信されたECMの処理を行う。ICカード104によるECMの処理とは、ECMから暗号化されたコンテンツを復号するための暗号鍵を生成する処理をいう。ICカード104による暗号鍵の生成処理は、具体的には、ECMに含まれている暗号化されたコンテンツを復号するための暗号鍵を復号化する処理をいう。そして、当該生成したコンテンツの鍵をプロセッサ102に提供する。
【0027】
デスクランブラ112は、プロセッサ102により入力されたコンテンツ鍵を用いて、ストリームバッファ110に保持されている暗号化されたコンテンツのストリームを復号して、デスクランブルしたストリームを出力する機能を有する。以上、コンテンツ受信装置100の機能構成について説明した。
【0028】
次に、図2を参照して、プロセッサ102の機能構成について詳細に説明する。図2の入力部120は、図1のデジタルチューナ106およびデマルチプレクサ108を例示でき、暗号化されたコンテンツと暗号化されたコンテンツ(トランスポートストリーム;TS)の暗号鍵の情報(ECM)とを含むストリームを入力する機能を有する。入力部120には、1または2以上のストリームが入力されてもよい。
【0029】
ここで、図3を参照して、入力部120に入力されるTSとECMについて詳細に説明する。図3に示したように、ECMには、対象となるTSの暗号鍵となる暗号化されたODD鍵とEVEN鍵の2つのペアが含まれている。ODD鍵とEVEN鍵は交互に更新され、ODD鍵とEVEN鍵のいずれかが更新された場合に、ECMのバージョンが更新される。また、上記したように、ECMは、プロセッサ102からICカード104に時分割で送信される。例えば、本実施形態においては、ARIB(Association of Radio Industrics and Businesses)規格に基づき、ECMは100ms周期でICカードに送信され、2000ms周期でECMのバージョンが更新されることとしている。
【0030】
図3に示したように、ECMは、ECM0、ECM1、ECM2、ECM3、ECM4の順に入力される。ECM0にはE(odd0)とE(even0)が含まれ、ECM1にはE(odd1)とE(even0)が含まれ、ECM2にはE(odd1)とE(even1)が含まれ、ECM2にはE(odd2)とE(even1)が含まれ、ECM3にはE(odd2)とE(even2)が含まれている。このように、ODD鍵とEVEN鍵のいずれかが更新されると、ECMのバージョンが更新される。
【0031】
ECMのバージョンが更新されると、上記したデマルチプレクサ108は、新しいバージョンのECMを抽出してプロセッサ102に送る。プロセッサ102は、新しいバージョンのECMをICカード104に送信し、ICカード104はECMの処理を行う。本実施形態においては、ICカード104によるECMの処理時間は例えば800msとする。例えば、ICカード104によってECM1が処理された場合には、コンテンツの暗号鍵even0とodd1とが復号されて、当該復号されたコンテンツの暗号鍵をプロセッサ102が取得し、デスクランブラ112にコンテンツの暗号鍵がセットされる。
【0032】
一方、ストリームTSは、TS0、TS1、TS2、TS3、TS4の順に入力される。そして、TS0はEVEN鍵(even0)により暗号化され、TS1はODD鍵(odd1)により暗号化され、TS2はEVEN鍵(even1)により暗号化され、TS3はODD鍵(odd2)により暗号化され、TS4はEVEN鍵(even2)により暗号化されている。また、ストリームTSはECMの更新から、ICカードによる処理遅延を考慮したオフセットが付けられており、例えばECMの更新から1600ms後に該当するストリームTSが入力される。例えば、TS1はECM1が入力されてから1600ms後だけ遅延して入力されることとなる。
【0033】
以上、入力部120に入力されるTSとECMについて詳細に説明した。図2に戻り、コンテンツ保持部118は、ICカード104によるコンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間、暗号化されたコンテンツを保持する機能を有する。上記したように、ICカード104によるECMの処理が終了した後に、TSが入力される必要があるため、所定時間の間TSを保持する必要がある。コンテンツ保持部118によりコンテンツが保持される所定時間については後で詳細に説明する。
【0034】
判断部116は、ストリームに含まれるコンテンツの暗号鍵が複数回変更されたか否かを判断する機能を有する。上記したように、コンテンツの暗号鍵であるECMは、ODD鍵とEVEN鍵を含み、いずれかが更新した場合に、ECMのバージョンが変更される。すなわち判断部116は、ECMのバージョンが複数回変更されたか否かを判断する機能を有する。本実施形態では、例えば、判断部116によりECMのバージョンが2回変更されたか否かが判断される。
【0035】
ICカード制御部114は、コンテンツの暗号鍵が複数回変更されたと判断部116により判断された場合に、ICカード104に複数回変更されたコンテンツの暗号鍵を復号させる機能を有する。例えば、判断部116によりECMのバージョンが2回変更されたと判断された場合にICカード104に2回バージョンが変更された後のコンテンツの暗号鍵を復号させるようにしてもよい。すなわち、ECMのバージョンが変更される毎にコンテンツの暗号鍵を復号させるのではなく、ECMのバージョンが2回変更される毎に暗号鍵を復号させる。
【0036】
上記したように、ECMにはODD鍵とEVEN鍵が含まれており、交互に更新される。ICカード制御部114からECMを送信されたICカード104は、ECMに含まれる暗号鍵のすべてを復号する。従来は、ECMのバージョンが変更される都度、ICカード104にECMが送信されていた。すなわち、ODD鍵とEVEN鍵のいずれかが更新される毎にICカード104にECMが送信されて、ODD鍵とEVEN鍵のいずれについても復号されることとなっていた。
【0037】
しかし、本実施形態では、ICカード制御部114は、ICカード104に、ECMのバージョンが2回変更される毎にECMに含まれる暗号鍵を復号させる。これにより、ICカード104は、バージョンが2回変更された場合に1回ECMの処理を行えばよく、ECM処理が半減することとなる。また、ICカード104によりECMの処理を2回に1回行う場合には、コンテンツ保持部118により所定時間の間コンテンツを保持して、TSの入力を遅延させる必要がある。コンテンツ復号部122は、例えば図1のデスクランブラ112を例示でき、ICカード104により復号化された暗号鍵を用いて暗号化されたコンテンツを復号化する機能を有する。以上、プロセッサ102の機能構成について説明した。
【0038】
図3を参照して、本実施形態にかかる遅延されたTS(Delayed TS)とECMの復号について説明する。図3に示したように、本実施形態では、ECM1を復号した後、ECM2を復号せず、ECM3を復号している。すなわち、ECMのバージョンがECM1から2回変更されたECM3を復号している。これにより、ICカード104によるECMの処理回数を半減させて、より多くのストリームのデスクランブラが可能となる。ECMの処理回数を半減させて多くのストリームのデスクランブラを可能とすることについては、後で詳細に説明する。
【0039】
そして、Delayed TSについては、ECMの更新周期(2000ms)からECM適用オフセット(1600ms)を減算し、さらにECMICカード処理時間(800ms)を加算した1200msだけ遅延して入力させる。これにより、ECM1の後にECM3が復号され、ECM3に含まれるodd2とeven1とがデスクランブラにセットされる。TS2およびTS3はそれぞれeven1とodd2により暗号化されている。1200msだけTSが遅延されたことにより、ECM3が復号された後に、TS2およびTS3が入力されることとなる。これにより、ICカード104によりECM処理を効率よく行うことが可能となる。以上、プロセッサ102の機能構成について説明した。
【0040】
次に、図4〜図8を参照して、コンテンツ受信装置100に複数ストリームが入力される場合のECM処理について説明する。なお、図4〜図8は、図3を簡略化したものであり、図4〜図8においても、ECMは100ms周期でICカード104に送信されている。また、図4〜図8において、ICカード104によりECM処理がなされている時間をXn(n=0、1、2・・・)とし、他のストリームのECM処理の待ち時間をYn(n=0、1、2・・・)とした。
【0041】
図4は、本発明が適用されていないコンテンツ受信装置に2ストリームが入力される場合について説明する説明図である。入力されるストリームは、ECM_aおよびTS_aを含むストリームと、ECM_bおよびTS_bを含むストリームである。まず、ECM1aがICカード104により処理されて、odd1aおよびeven0aが復号される(X1)。ICカード104は、ECMの処理を並行して行うことができないため、ECM1aの暗号鍵を復号している間は、ECM_bのECM1bを復号することはできず、待ち時間Y1が発生する。その後ECM1bがICカード104により処理されて、odd1bおよびeven0bが復号される(X2)。
【0042】
同様に、ECM_aに含まれる暗号鍵とECM_bに含まれる暗号鍵が交互に復号されることとなる。図4に示したように、2つのストリームが入力された場合には、従来通りECMのバージョンが変更される毎に暗号鍵の復号処理を行い、ECM適用オフセット(1600ms)分だけストリームを遅延させて、2つのストリームを並行してデスクランブルすることが可能となる。なお、2つのストリームが入力された場合に本発明が適用されたコンテンツ受信装置100を用いることも可能である。この場合には、ECMのバージョンが2回変更される毎に暗号鍵の復号処理を行う。これにより、ICカード104により効率よくECMの処理を行うことが可能となる。
【0043】
次に、図5を参照して、本発明が適用されていないコンテンツ受信装置に3ストリームが入力される場合について説明する。入力されるストリームは、ECM_aおよびTS_aを含むストリームと、ECM_bおよびTS_bを含むストリームと、ECM_cおよびTS_cを含むストリームである。2つのストリームが入力された場合と同様に、まず、ECM1aがICカード104により処理されて、odd1aおよびeven0aが復号される(X1)。ICカード104は、ECMの処理を並行して行うことができないため、ECM1aの暗号鍵を復号している間は、ECM_bのECM1bを復号することはできず、待ち時間Y1が発生する。その後ECMb1がICカード104により処理されて、odd1bおよびeven0bが復号される(X2)。
【0044】
次に、ECM1cがICカード104の他処理(X1、X2)待ち時間Y2の後、ICカード104により暗号鍵が復号される(X3)。しかし、ECM1cの暗号鍵の復号処理が終了する前に、ECM1cに含まれるodd1cで暗号化されたストリームTS1が入力されてしまい、NG1の区間についてはストリームTS1がデスクランブルされないこととなってしまう。同様に、NG2、NG3、NG4、NG5、NG6の区間については、対応するECMの暗号鍵の復号処理が終了する前にストリームTSが入力されてしまいデスクランブルをすることができない。
【0045】
次に、図6を参照して、本発明が適用されたコンテンツ受信装置100に3ストリームが入力される場合について説明する。入力されるストリームは、ECM_aおよびDelayedTS_aを含むストリームと、ECM_bおよびDelayedTS_bを含むストリームと、ECM_cおよびDelayedTS_cを含むストリームである。上記したように、本実施形態において、ICカード104は、ECMのバージョンが2回変更された場合に1回ECMの処理を行う。そして、DelayedTSは所定時間遅延されて入力される。
【0046】
図6に示したように、まず、ECM1aがICカード104により処理されて、odd1aおよびeven0aが復号される(X1)。ICカード104は、ECMの処理を並行して行うことができないため、ECM1aの暗号鍵を復号している間は、ECM_bのECM1bを復号することはできず、待ち時間Y1が発生する。その後ECMb1がICカード104により処理されて、odd1bおよびeven0bが復号される(X2)。
【0047】
次に、ECM1cがICカード104の他処理待ち時間Y2の後、ICカード104により暗号鍵復号される(X3)。上記したように、ECMのバージョンが2回変更される毎にECMの処理が行われるため、ECM_aのECM1aの暗号鍵が復号された後は、ECM3aの暗号鍵が復号される(X4)。同様に、ECM_bのECM1bの暗号鍵が復号された後はECM3bの暗号鍵が復号されるが、ICカード104によりECM_aの処理が行われているため待ち時間Y3が発生する。待ち時間Y3の発生後、ECM3bがICカード104により処理されて、odd2bおよびeven1bが復号される(X5)。
【0048】
ECM_cも同様に、ECM1cの暗号鍵が復号された後はECM3cの暗号鍵が復号されるが、ICカード104によりECM_aおよびECM_bの処理が行われているため待ち時間Y4が発生する。待ち時間Y4の発生後、ECM3cがICカード104により処理されて、odd2cおよびeven1cが復号される(x6)。このように、入力ストリームの各ECMはバージョンが2回変更される毎に1回復号化がなされる。そして、ストリームの各DelayedTSは所定時間遅延して入力されるため、ECM処理が終了する前にDelayedTSが入力されてしまい、デスクランブルをすることができないという事態を回避することが可能となる。
【0049】
ここで、入力されるストリームの遅延時間について説明する。図6に示したように、DelayedTS_a、DelayedTS_b、DelayedTS_cはそれぞれ、d1、d2、d3だけ遅延されて入力される。DelayedTS_aの遅延時間d1は、ECMの更新周期(2000ms)−ECM適用オフセット(1600ms)+ECMICカード処理時間(800ms)=1200msである。DelayedTS_bの遅延時間d2は、ECMの更新周期(2000ms)−ECM適用オフセット(1600ms)+ECMICカード処理時間(800ms)×2=2000msである。DelayedTS_cの遅延時間d3は、ECMの更新周期(2000ms)−ECM適用オフセット(1600ms)+ECMICカード処理時間(800ms)×3=2800msである。
【0050】
このように、ICカード104によるECM処理時間に応じてコンテンツを含む入力ストリームを遅延させることにより、当該コンテンツがデスクランブルされずにコンテンツを表示できないという事態を回避することができる。このように、コンテンツ受信装置100は、ICカードによるECM処理を効率よく行って、複数のストリームを同時に視聴することを可能としている。
【0051】
次に、図7を参照して、本発明が適用されたコンテンツ受信装置100に4ストリームが入力される場合について説明する。入力されるストリームは、ECM_aおよびDelayedTS_aを含むストリームと、ECM_bおよびDelayedTS_bを含むストリームと、ECM_cおよびDelayedTS_cを含むストリームと、ECM_dおよびDelayedTS_dを含むストリームである。図6と同様に、ICカード104は、ECMのバージョンが2回変更された場合に1回ECMの処理を行う。そして、DelayedTSは所定時間遅延されて入力される。
【0052】
ECM_aおよびDelayedTS_aを含むストリームと、ECM_bおよびDelayedTS_bを含むストリームと、ECM_cおよびDelayedTS_cを含むストリームの3ストリームのECM処理およびTSの遅延時間については図6と同様であるため、説明を省略する。4ストリーム目のECM_dについては、ECMの処理待ち時間(Y3)の後ECM1dの暗号鍵が復号される(X4)。さらに、他のECMの処理待ち時間(Y4)の後にECM3dの暗号鍵が復号される(X8)。
【0053】
DelayedTS_dの遅延時間d4は、ECMICカード処理時間(800ms)×4−ECM適用オフセット(1600ms)=1600msである。このように、DelayedTS_dについてもECMのバージョンが2回変更される毎に1回復号化がなされ、コンテンツを含むストリームが所定時間遅延して入力される。このため、ECM処理が終了する前にDelayedTSが入力されてしまい、デスクランブルをすることができないという事態を回避することが可能となる。以上、コンテンツ受信装置100に複数ストリームが入力される場合のECM処理について説明した。
【0054】
次に、図8および図9を参照して、コンテンツ受信装置100のプロセッサ102におけるストリーム処理について詳細に説明する。図8は、プロセッサ102により複数ストリームが処理される場合を示すフローチャートである。図8および図9においては、3ストリームが入力された場合について説明する。図8に示したように、プロセッサ102は、入力されたストリームa、ストリームb、ストリームcの3ストリームの処理を開始する(S102、S104、S106)。
【0055】
ストリームaの処理が開始されると、プロセッサ102によりDemux_a Process、ECM_a Process、Descramble_a Processが実行される。具体的には、ストリームaについて、デマルチプレクサ108にECMの抽出を指示する(Demux_a Process)。また、ICカード104にECM処理を指示する(ECM_a Process)。さらに、デスクランブラ112にTSパケットの取り出しおよびデスクランブルしたTSパケットの出力を指示する(Descramble_a Process)。
【0056】
次に、図9を参照して、プロセッサ102によるDemux_a Process、ECM_a Process、Descramble_a Processについて詳細に説明する。図9は、プロセッサ102における処理を詳細に示したフローチャートである。なお、図9は、ストリームaについての処理のみについて説明しているが、ストリームbおよびストリームcについての処理も同様に実行される。
【0057】
図9に示したように、Demux_a Processは、TSパケットの入力待ちをする(S202)。ステップS202においてTSパケットが入力されると、当該TSパケットがECMか否かを判定する(S204)。ステップS204において、TSパケットがECMであると判定された場合には、ECM_プロセス(ECM_a Process)にメッセージを発行し(S208)、再度TSパケットの入力を待つ(S202)。ステップS204において、TSパケットがECMではないと判定された場合には、ストリームバッファ110にTSパケットを書き込むようデマルチプレクサ108に指示し(S206)、再度TSパケットの入力を待つ(S202)。
【0058】
ECM_a Processは、Demux_aプロセス(Demux_a Process)からのメッセージを待つ(S210)。ステップS210において受け取ったDemux_aプロセスからのメッセージに含まれるECMバージョンを確認する(S212)。ステップS212において確認したECMのバージョンが2回変更されているか否かを判定する(S214)。ステップS214において、ECMのバージョンが2回変更されていない場合には、再度Demux_aプロセス(Demux_a Process)からのメッセージを待つ(S210)。
【0059】
ステップS214においてECMのバージョンが2回変更されたと判定された場合には、ICカード104による他の処理を待つ(S216)。ステップS216におけるICカード104による他の処理とは、他のストリームのECM処理である。ステップS216において、ICカード104による他の処理が実行されていないため、他の処理の実行が終了した場合には、ICカード104にECMを送信する(S218)。ステップS218において送信されたECMはICカード104により処理されECMに含まれるEVEN鍵およびODD鍵が復号されるため、当該暗号鍵を取得する(S220)。ステップS220において取得したEVEN鍵およびODD鍵をデスクランブラ112にセットする(S222)。
【0060】
Descramble_a Processは、TSを遅延させる所定時間だけ処理を停止する(S224)。そして、TSを遅延させる所定時間が経過した後にストリームバッファからTSパケットを取り出す(S226)。ステップS226において取り出したTSパケットのデスクランブルを行う(S228)。ステップS228において、ECM_a Procesから提供されたEVEN鍵またはODD鍵を用いてデスクランブルが実行される。ステップS228においてデスクランブルしたTSパケットを出力する(S230)。以上、プロセッサ102における処理について説明した。
【0061】
本実施形態にかかるコンテンツ受信装置100によれば、コンテンツ受信装置100に入力されたストリームに含まれるコンテンツの暗号鍵が複数回変更されたか否かを判断し、コンテンツの暗号鍵が複数回変更されたと判断された場合には、ICカード104に複数回変更されたコンテンツの暗号鍵を復号させる。入力されたストリームに含まれる暗号化されたコンテンツは、コンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間保持される。そして、コンテンツ保持部に保持された暗号化されたコンテンツを、ICカード104により復号されたコンテンツの暗号鍵で復号する。
【0062】
これにより、入力ストリームに含まれるコンテンツの暗号鍵は複数回変更される毎に復号化がなされる。例えば、2つのコンテンツの暗号鍵が含まれている場合には、2回変更される毎に1回復号化がなされる。2つのコンテンツの暗号鍵が交互に更新され、2つのコンテンツの暗号鍵のいずれかが更新された場合にコンテンツの暗号鍵のバージョンが変更される場合には、コンテンツの暗号鍵のバージョンが2回変更される毎に復号化がなされる。したがって、2つのコンテンツの暗号鍵の両方が変更された場合にICカード104によりコンテンツの復号化がなされるため、ICカード104によるECM処理を効率よく行うことができる。
【0063】
また、入力されたストリームに含まれる暗号化されたコンテンツは、コンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間保持されるため、ICカード104によるECM処理が終了する前に暗号化されたコンテンツが入力されてしまい、デスクランブルをすることができないという事態を回避することが可能となる。よって、ICカード104によるECM処理を効率よく行いつつ複数のストリームを同時に視聴することを可能とする。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態にかかるコンテンツ受信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態にかかるプロセッサの機能構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態にかかる入力されるTSとECMについて説明する説明図である。
【図4】本発明が適用されていないコンテンツ受信装置に2ストリームが入力される場合について説明する説明図である。
【図5】本発明が適用されていないコンテンツ受信装置に3ストリームが入力される場合について説明する説明図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかるコンテンツ受信装置に3ストリームが入力される場合について説明する説明図である。
【図7】同実施形態にかかるコンテンツ受信装置に4ストリームが入力される場合について説明する説明図である。
【図8】同実施形態にかかるプロセッサにより複数ストリームが処理される場合を示すフローチャートである。
【図9】同実施形態にかかるプロセッサにおける処理を詳細に示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
100 コンテンツ受信装置
102 プロセッサ
104 ICカード
106 デジタルチューナ
108 デマルチプレクサ
110 ストリームバッファ
112 デスクランブラ
114 ICカード制御部
116 判断部
118 コンテンツ保持部
120 入力部
122 コンテンツ復号部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗号化されたコンテンツと暗号化された前記コンテンツの暗号鍵とを含む1または2以上のストリームが入力される入力部と、
前記コンテンツの暗号鍵を復号するICカードと、
前記ICカードによる前記コンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間、前記暗号化されたコンテンツを保持するコンテンツ保持部と、
前記ストリームに含まれる前記コンテンツの暗号鍵が複数回変更されたか否かを判断する判断部と、
前記コンテンツの暗号鍵が複数回変更されたと判断部により判断された場合に、前記ICカードに複数回変更された前記コンテンツの暗号鍵を復号させるICカード制御部と、
を備えるコンテンツ受信装置。
【請求項2】
前記コンテンツ保持部に保持された前記暗号化されたコンテンツを、前記ICカードにより復号された前記コンテンツの暗号鍵により前記暗号化されたコンテンツを復号するコンテンツ復号部を備える、請求項1に記載のコンテンツ受信装置。
【請求項3】
前記コンテンツの暗号鍵には複数の暗号鍵が含まれ、前記判断部は前記コンテンツの暗号鍵が前記暗号鍵の数に応じた回数変更されたか否かを判断する、請求項1または2のいずれかに記載のコンテンツ受信装置。
【請求項4】
前記入力部には、前記コンテンツの暗号鍵のバージョン情報が入力され、
前記判断部は、前記コンテンツの暗号鍵のバージョン情報が複数回変更されたか否かを判断する、請求項1〜3のいずれかに記載のコンテンツ受信装置。
【請求項5】
前記コンテンツの暗号鍵には複数の暗号鍵が含まれ、前記複数の暗号鍵の少なくとも1つが変更された場合に前記コンテンツの暗号鍵のバージョン情報が変更される、請求項4に記載のコンテンツ受信装置。
【請求項6】
前記コンテンツの暗号鍵は周期的に変更され、
前記コンテンツ保持部は、
前記コンテンツの暗号鍵の変更周期および前記コンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間、前記暗号化されたコンテンツを保持する、請求項1〜5のいずれかに記載のコンテンツ受信装置。
【請求項7】
暗号化されたコンテンツと暗号化されたコンテンツの暗号鍵とを含む1または2以上のストリームが入力されるコンテンツ受信装置が、
前記入力されたコンテンツの暗号鍵が複数回変更された否かを判断するステップと、
前記コンテンツの暗号鍵が複数回変更されたと判断された場合に、ICカードに複数回変更されたコンテンツの暗号鍵を復号させるステップと、
前記入力された暗号化されたコンテンツを、前記コンテンツの暗号鍵の復号処理時間に応じた所定時間の間保持するステップと、
を含むコンテンツ受信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−267722(P2009−267722A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114292(P2008−114292)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】