説明

コンデンサ

【課題】熱劣化を抑制することのできるコンデンサにおいてコンデンサ素子の両方向から金属を溶射するためにコンデンサ素子の巻回軸部分に設けられた中空部内で短絡して不具合となり、同様に安定して容量を引き出せないという課題を有していた。
【解決手段】コンデンサ素子2は、表面に蒸着電極を有する誘電体フィルムを柱状形状に巻回し、この柱状形状の上、下端部に溶射により集電極3を形成し、これら上、下の集電極3にそれぞれリード線4を接続するとともに、コンデンサ素子2の巻回軸部分に設けた中空部2fに絶縁体2gを挿入し、封口部材5とともにケース1に収納し、座板6に設置する構造としたコンデンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は周波数、温度特性に優れ、過酷な温度環境下でも使用することの出来るフィルタなどに用いられるコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンデンサは金属化フィルムを巻回してコンデンサ素子を形成し、これに設けた集電極であるメタリコン電極にリード線を接続したものであって、耐湿性などを確保するためこれらをケースに収納し、樹脂を充填することによって構成されるものであり、これらは熱環境が変化しやすい状況下となる自動車やパソコンでよく用いられるものであった。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特許第2877364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成においては、金属化フィルムを巻回したコンデンサ素子の両端面に金属を溶射するなどして形成した集電極はコンデンサ素子の両端面、すなわち両方向から金属を溶射するためにコンデンサ素子をプレスするなどして偏平形状にしていた。本来、コンデンサ素子は略円柱形状とする方が電気特性が良好になるものであったが、略円柱形状では巻回軸部分に設けられた中空部内で溶射された金属が短絡し、安定して容量を引き出せないという課題を有していた。
【0005】
そこで、本発明は安定して容量を引き出すことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そしてこの目的を達成するために本発明は、コンデンサ素子の中空部内に絶縁体を挿入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンデンサは、コンデンサ素子の中空部内に絶縁体が挿入されているので、両方から金属を溶射することで集電極を形成しても、この中空部内で集電極が短絡することなく安定して容量を引き出すことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0009】
(実施の形態)
図1に示すケース1は、アルミニウム製等の有天筒状であって、後述するコンデンサ素子2をケース1内に収納した際に、周囲の温度変化などを緩衝することができるものである。
【0010】
コンデンサ素子2は図2のごとく、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムとする。)等の誘電体フィルム(図示せず)の表面に非蒸着部分であるマージン部分2a、2bを形成しつつ、アルミニウムなどの金属を蒸着し、蒸着電極2c、2dとし、異常電流が流れた際には蒸着した部分が飛散することによって電気的に切断されるという自己保安機能を有したヒューズ2eを有した金属化フィルムを一対とし、蒸着電極2c、2dが誘電体フィルムを介して対向するように柱状形状に巻回した構成としたものである。
【0011】
コンデンサ素子2はフィルム状のものを巻回したためにその巻回軸部分にはフィルム状のものの巻始めとなる中空部2fが設けられることとなっている。
【0012】
このコンデンサ素子2の両端面にアルミニウム、スズ、銅などの金属を溶融して吹きつける溶射によって図1のように集電極3を形成して電気的に引き出すことができるようになっている。
【0013】
このコンデンサ素子2の上下に形成された集電極3にそれぞれ接続されたリード線4は、外方へさらに電気的に引き出すものであって、このリード線4はゴム製等の封口部材5の貫通孔(図示せず)へ挿通されている。
【0014】
これらのコンデンサ素子2、集電極3、リード線4、封口部材5を前述のケース1に収納し、ケース1の下面開口部で封口部材5の周囲を絞るなどしてこれらをケース1内に封止する。このとき、コンデンサ素子2、集電極3、リード線4はいずれもケース1の内壁面には接触しないように隙間を設けるようにしておく。
【0015】
ケース1の外方へ引き出されているリード線4は、封口部材5の下面側に配置された座板6の下面で端子4aを形成することによって、図3のようにコンデンサを構成しており、下面側から見ると図4のように座板6で折り曲げられたリード線4が端子4aを形成するようになっている。
【0016】
このように構成することによって、従来であれば、周囲の温度や湿度変化などによる環境の変化がコンデンサ素子2に伝わっていたところ、本発明の実施の形態によれば、ケース1やコンデンサ素子2の周辺に設けた隙間によって上記の環境の変化が緩衝されることとなり、温度、周波数変化に対しても安定して容量などの製品特性を発揮することのできるコンデンサとすることができる。
【0017】
図5(a)〜(e)は本発明の実施の形態によるコンデンサ素子2の巻回軸方向での断面を示した斜視図である。
【0018】
コンデンサ素子2は前述のように金属化フィルムを巻回して構成されるため、巻き始め部分はいわゆる先巻きフィルム(図示せず)と呼ばれる誘電体フィルムのみを巻くことによって巻き芯を形成させてから金属化フィルムが巻回されるので、巻回軸部分には通常中空部2fが設けられることとなる。このようにして設けられた中空部2fに図5(a)のごとく、絶縁体2gを挿入する。
【0019】
この絶縁体2gはポリアセタール樹脂からなり、中空部2fを保持するのに十分な強度をもった定形形状である球形状となっている。
【0020】
このようにコンデンサ素子2の中空部2fに絶縁体2gを挿入することが本発明における技術的特徴の一つであり、これらによって、従来であれば、コンデンサ素子2の両端面から金属を溶射して集電極3を形成する際に、両端面から溶射された金属が中空部2f内でそれぞれ導通し、短絡することによって不具合となっていたところ、本発明の実施の形態によれば、絶縁体2gによって両端面から溶射された金属が中空部2f内へ入り込み、短絡することがなくなるので、両端面の集電極3が短絡することなく、安定して容量を発揮することができるものである。
【0021】
また、この絶縁体2gは球形状をなしているので、絶縁体2gの作製が容易であるとともに中空部2fに対しての挿入が容易となるものである。なお、図5(b)のようにポリアセタールからなる絶縁体2hが砲弾形状であってもよく、このようにすることによって絶縁体2hの先端が球形状であるので同様に挿入が容易であるだけでなく、絶縁体2hがコンデンサ素子2の両端面に留まった状態でも、さらに中空部2fの奥深くまで絶縁体2hの挿入が可能となり、より絶縁の効果を奏するものである。
【0022】
さらに、図5(c)のようにポリアセタールからなる絶縁体2iを円錐形状とすることによって、中空部2fの径がある程度バラツキを有していたとしても、より確実に中空部2f内に挿入されることとなる。
【0023】
また、従来であれば、コンデンサ素子2に熱が加わった際には誘電体フィルムが収縮することによって対向する蒸着電極の距離が縮まり、容量が不安定に変化してしまうということがあったが、図5(d)のごとく、ポリアセタールからなる絶縁体2jを支持体として中空部2f内に挿入することによって、周囲の温度変化に対しても絶縁体2jが支持体となって中空部2fを保持するため、誘電体フィルムを介して対向する蒸着電極の距離が保たれることで、安定して容量を発揮することができるものである。
【0024】
特に、コンデンサ素子2において両端面は金属からなる集電極3が形成されるため、金属による収縮が非常に小さいので、両端面での熱による誘電体フィルムの収縮の割合は比較的小さいが、中空部2fの両端に対して中央近傍は収縮の割合が大きいので、この中空部2fの中央近傍に支持体となる絶縁体2jを挿入することによって、蒸着電極の対向する距離が保たれ、安定して容量を発揮する効果はより顕著になるものである。
【0025】
さらに、図5(e)のように絶縁体2kを円柱状とすることによって、中空部2fのほぼ全ての内面を均一に支持することが出来るので、高温によって誘電体フィルムが収縮しても誘電体フィルムの一部分に圧力が集中しないので、圧力が集中した部分に生じるストレスによるフィルムの耐電圧性能の低下が抑えられる。
【0026】
なお、円柱状の絶縁体2kを中空部2fに設ける方法として、本実施の形態では、表面に蒸着電極2c、2dを形成した誘電体フィルムを巻回するときの巻芯に、巻回する金属化フィルムの幅よりも長いポリアセタール製の円柱状の絶縁体2kを用い、巻回後余分な絶縁体2kを切除した。
【0027】
また、従来であればコンデンサ素子2の両端面の集電極3が短絡しないようにコンデンサ素子2を側面方向からプレスするなどして偏平形状としていたが、偏平形状とするためには熱圧着を行う必要がありこれによる誘電体フィルムなどへの耐電圧低下、物理的ストレス、耐パルス電流性低下などが懸念されていたが、本発明の実施の形態によれば、コンデンサ素子2を略円柱形状とすることができるのでこれらの懸念を低減することが可能である。
【0028】
なお、図5(d)において絶縁体2jは両端と中央近傍の計3個挿入されているが、これは少なくとも中央近傍の1個であってもよく、その数を増加させることによって、絶縁の効果と安定して容量を引き出す効果のそれぞれがより高まるものである。
【0029】
また、本実施の形態では、絶縁体2g、2h、2i、2j、2kの材質をポリアセタール樹脂としたが、これに限られるものではなく、絶縁性を有するものであれば他の材質でも構わないが、加工性やコスト等を考慮すると、樹脂系のものが適している。そして、この材質を熱硬化性樹脂にすれば高温時の変形がより少なくなるので、さらに安定して容量を発揮することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明によるコンデンサによれば、周囲の温度変化や周波数変化に対して安定して容量を引き出すことのできるコンデンサとすることができるので、温度などの環境変化の激しい、自動車やパソコンなどのフィルタ回路などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態によるコンデンサの分解斜視図
【図2】本発明の一実施の形態によるコンデンサ素子の構成を示す斜視図
【図3】本発明の一実施の形態によるコンデンサの斜視図
【図4】本発明の一実施の形態によるコンデンサの斜視図
【図5】(a)は本発明の一実施の形態によるコンデンサ素子の一部を断面で示した斜視図、(b)〜(e)はそれぞれ他の実施の形態の一部を断面で示した斜視図
【符号の説明】
【0032】
1 ケース
2 コンデンサ素子
2a、2b マージン部分
2c、2d 蒸着電極
2e ヒューズ
2f 中空部
2g、2h、2i、2j、2k 絶縁体
3 集電極
4 リード線
5 封口部材
6 座板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有天筒状のケースと、このケース内に収納されたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子に接続されるとともに、前記ケースの下面開口部からケース外に引き出されたリード線と、このリード線が挿通される貫通孔を有するとともに、前記ケースの下面開口部を封止する封口部材と、この封口部材の下面側に配置され、前記リード線の端子を設けた座板とを備え、前記コンデンサ素子は、表面に蒸着電極を有する誘電体フィルムを柱状形状に巻回し、この柱状形状の上、下端部に溶射により集電極を形成した構造とし、これら上、下の集電極にそれぞれ前記リード線を接続するとともに、前記コンデンサ素子の巻回軸部分に設けた中空部には絶縁体を挿入したことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記絶縁体は定形形状とし、少なくとも一つは前記中空部の両端に対し中央近傍に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記絶縁体は球形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記絶縁体は砲弾形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記絶縁体は円錐形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記絶縁体は円柱形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記絶縁体が熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載のコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−60553(P2008−60553A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194181(P2007−194181)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】