説明

コンバインにおける排出筒の旋回制御手段

【課題】旋回がギヤによって駆動される排出筒が、上昇時にギヤのバックラッシュによりフリーに回動して運転席側と接衝することを防止するコンバインにおける排出筒の旋回制御手段を提供することを課題としている。
【解決手段】走行機体1の運転席の後方に位置する穀粒タンク7から穀粒を排出する排出オーガの上下揺動及び左右旋回自在に取り付けられた排出筒9の左右旋回機構が、排出筒9側に設けられたギヤに噛合し、排出筒9に旋回駆動力を伝動する駆動ギヤを備えているものにおいて、駆動機構をコントロールする制御手段21側に、上記ギヤと駆動ギヤとのバックラッシュによる排出筒9の右回動を規制する回動規制手段を設けた。回動規制手段は、排出筒9を格納姿勢から上昇させる際、駆動ギヤを排出筒9の左旋回方向に、上記バックラッシュを解消する角度回転させる手段又は排出筒9を格納姿勢から上昇させる際、走行機体1が予め定められた所定角度以上傾斜している場合に、上記水平制御機構により、走行機体1を水平状態とする手段とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒の排出用の旋回可能な排出筒を備えたコンバインにおける排出筒の旋回制御手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来走行機体運転席の後方に穀粒を一時的に貯粒する穀粒タンクを設け、穀粒タンクから穀粒を排出する排出オーガを設け、該排出オーガが、運転席の後方から運転席の左側方を通過した下降状態で格納姿勢となる上下揺動及び左右旋回自在の排出筒を備えたコンバインが公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
そして上記排出筒は上下昇降及び左右旋回によって任意の姿勢に切り換えられ、オペレータの任意の場所に穀粒を排出させることができる。
【特許文献1】特開2001−178252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排出筒は上昇時には、排出筒が運転席側等に接衝することを避けるために旋回が規制されている。ただし排出筒を上下揺動及び左右旋回させる駆動機構の左右旋回機構は、排出筒側に設けられたギヤに噛合して、排出筒に旋回駆動力を伝動する駆動ギヤを備えている。このため上記ギヤと駆動ギヤとのバックラッシュによって排出筒は上昇時、バックラッシュ分だけ回動する可能性がある。このバックラッシュ分の排出筒の回動によって排出筒が運転席側、例えばキャビンに接衝する可能性があるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明のコンバインにおける排出筒の旋回制御手段は、走行機体1に、運転席と、該運転席の後方に位置して、穀粒を一時的に貯粒する穀粒タンク7と、該穀粒タンク7から穀粒を排出する排出オーガとを設け、該排出オーガが、上下揺動及び左右旋回自在に取り付けられた排出筒9を備え、排出筒9を上下揺動及び左右旋回させる駆動機構と、該駆動機構をコントロールする制御手段21とを設け、前記駆動機構における排出筒9の左右旋回機構が、排出筒9側に設けられたギヤに噛合し、排出筒9に旋回駆動力を伝動する駆動ギヤを備え、上記排出筒9が、運転席の後方から運転席の左側方を通過した下降状態で格納姿勢となるコンバインにおいて、上記制御手段21側に、上記ギヤと駆動ギヤとのバックラッシュによる排出筒9の右回動を規制する回動規制手段を設け、該回動規制手段が、排出筒9を格納姿勢から上昇させる際、駆動ギヤを排出筒9の左旋回方向に、上記バックラッシュを解消する角度回転させる手段であることを第1の特徴としている。
【0006】
第2に、走行機体1に、運転席と、該運転席の後方に位置して、穀粒を一時的に貯粒する穀粒タンク7と、該穀粒タンク7から穀粒を排出する排出オーガとを設け、該排出オーガが、上下揺動及び左右旋回自在に取り付けられた排出筒9を備え、排出筒9を上下揺動及び左右旋回させる駆動機構と、該駆動機構をコントロールする制御手段21とを設け、前記駆動機構における排出筒9の左右旋回機構が、排出筒9側に設けられたギヤに噛合し、排出筒9に旋回駆動力を伝動する駆動ギヤを備え、上記排出筒9が、運転席の後方から運転席の左側方を通過した下降状態で格納姿勢となり、走行機体1が水平状態となるように水平制御する水平制御機構を設けたコンバインにおいて、上記制御手段側に、上記ギヤと駆動ギヤとのバックラッシュによる排出筒9の右回動を規制する回動規制手段を設け、該回動規制手段を、排出筒9を格納姿勢から上昇させる際、走行機体1が予め定められた所定角度以上傾斜している場合に、上記水平制御機構により、走行機体1を水平状態とする手段としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の構造によると、例えば走行機体が右側や前方に大きく傾斜した状態から、排出筒を左又は右旋回するために上昇させる際、回動規制手段によって、排出筒側のギヤと駆動機構側の駆動ギヤとのバックラッシュによる排出筒の右側へのフリー状態での回動が規制される。これにより上記バックラッシュによる回動により排出筒が運転席側、例えばキャビンに接衝するという不都合を防止することができる。
【0008】
特に回動規制手段が、排出筒を格納姿勢から上昇させる際に、排出筒を左旋回させる方向に駆動ギヤを所定角度回転させる手段である場合は、排出筒が上昇するときに必ず排出筒の上記バックラッシュによる回動が規制される。このため排出オーガの上昇時に発生する走行機体の右傾斜又は前方への傾斜以外の条件による排出筒の上記右側へのフリー回動も全て規制することができ、排出筒とキャビンとの接衝等を防止することができる。
【0009】
一方回動規制手段を、排出筒を格納姿勢から上昇させる際、走行機体が予め定められた所定角度以上傾斜している場合に、上記水平制御機構により走行機体を水平状態とする手段とすると、回動規制手段を簡単に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の排出筒の旋回制御手段を採用したコンバインの平面図である。従来同様走行機体1が図示しない左右のクローラ式の走行装置に支持されている。走行機体1の前方には前処理部2が上下昇降自在に取り付けられている。走行機体1の右側前方にはキャビン3に覆われた運転席が搭載されている。
【0011】
キャビン3の左側には従来同様、前処理部2からの穀稈を後方に搬送する穀稈搬送部から穀稈を受け継ぎ脱穀する脱穀装置4が後方に至り配置されている。脱穀装置4の側方となるキャビン3の後方には、脱穀後の穀粒を一時的に貯粒するグレンタンク6が設けられている。
【0012】
走行機体1の前方には左右にフラッシャランプ7L,7Rが設けられている。走行機体1の後方には左右にリヤフラッシャランプ8L,8Rが設けられている。
【0013】
上記グレンタンク6の後方から前方に至り、グレンタンク6内の穀粒を必要に応じて機外に排出する排出オーガの一部を構成する前後方向のオーガ筒9が設けられている。オーガ筒9は、略水平に下降した状態で、グレンタンク6の後方からキャビン3に接衝しないようにキャビン3の右側方を通過する平面視で傾斜した格納位置に姿勢維持され収納されている。オーガ筒9は格納位置においてはホルダに収容されて位置決めされている。
【0014】
排出オーガは、グレンタンク7の底部に前後方向に設けられた横ラセンの回転によって、グレンタンク7内の穀粒を、縦ラセン筒内に設けられた縦ラセンの下端部分に移送し、移送された穀粒を縦ラセンの回転駆動によって上方に移送してオーガ筒9内に設けられた排出ラセンの端部に移送し、さらに排出ラセンの回転駆動によってオーガ筒9の先端側に移送し、オーガ筒9の先端に設けられた排出口から排出する。
【0015】
ただしオーガ筒9は従来同様排出オーガの一部を構成する縦ラセン筒の上部に、上下揺動駆動及び左右旋回駆動可能に取り付けられている。このためオーガ筒9を上記格納位置から上方に揺動(上昇)させ、左右に旋回させることによって排出口を任意の位置に移動させ、任意の位置に穀粒を排出させることができる。また穀粒排出後等に左右旋回させて下方に揺動(下降)させ、格納位置に戻すこともできる。
【0016】
オーガ筒9を上下揺動及び左右旋回させる駆動機構は、従来同様オーガ筒9側と縦ラセン筒側との間に設けられた昇降油圧シリンダ11と電動のオーガ旋回モータとを備えた構成となっている。昇降油圧シリンダ11の伸縮によってオーガ筒9が上下揺動駆動される。オーガ旋回モータの左右回転によってオーガ筒9が左右旋回駆動される。
【0017】
従来同様オーガ旋回モータ側には、オーガ旋回モータの回転によって回転駆動されるギヤが設けられている。オーガ筒9側には上記ギヤと噛合する駆動ギヤが設けられている。オーガ旋回モータの回転により上記ギヤが回転し、該ギヤの回転が駆動ギヤに噛合伝動されて駆動ギヤが回転し、オーガ筒9の旋回が行われる。
【0018】
なおオーガ旋回モータ側にはオーガ電磁ブレーキが設けられており、オーガ筒9の昇降時と穀粒の排出作業等を行うために所定位置で位置決めされている状態では、オーが電磁ブレーキがかかっており、上記ギヤの回転がロックされ、オーガ筒9の旋回が規制されている。ただし上記ギヤと駆動ギヤとの間にはバックラッシュが存在しており、オーガ筒9はオーガ電磁ブレーキが作用している状態でも上記バックラッシュ分はフリーに回動し得る。
【0019】
キャビン3内には、図2に示されるように、シート12が設けられている。該シート12の前方にはフロント操作パネル13が、シート12の後方にはリヤ操作パネル14が設けられている。リヤ操作パネル14には、オーガ筒9の昇降(上下揺動)及び旋回を手動で操作するオーガ手動レバー16と、オーガ筒9を自動的に昇降及び旋回させ、予め定められている所定の姿勢に自動的に位置決めするオーガ自動スイッチ17とが設けられている。
【0020】
本コンバインには、走行機体1の傾斜角度を調節することができる傾斜制御機構が設けられている。このため走行機体1側には走行機体1の左右傾斜を検出する左右傾斜センサと、左右の走行装置側と走行機体1側との間に設けられる左右の油圧傾斜シリンダとが設けられている。
【0021】
傾斜制御機構には、走行機体1の傾斜角度を予め定められた所定の角度に維持する自動傾斜機構が備えられている。例えば上記所定の角度を水平(0°)とすると走行機体1を水平に維持する水平制御を行う水平制御機構となる。上記フロント操作パネル13には、傾斜制御機構を手動で操作して走行機体1の傾斜を手動操作する傾斜手動レバー18と、上記自動傾斜機構を自動的に作動させる傾斜自動スイッチ19が設けられている。
【0022】
自動傾斜機構を含む傾斜制御機構及びオーガ筒9の昇降と旋回は、走行機体1側に設けられているマイコンユニットからなる制御機構によってコントロールされる。図3に示されるように、マイコンユニット21には、オーガ手動レバー16からのデータ、オーガ自動スイッチ17からのデータが入力されている。マイコンユニット21はオーガ手動レバー16の前後及び左右操作によるオーガ筒9の上昇,下降,左旋回,右旋回の操作を検出することができる。
【0023】
オーガ筒9側にはオーガ筒9の上昇上限を検出するオーガ上限スイッチと、オーガ筒9の旋回角度を検出するオーガポテンショメータとが設けられている。マイコンユニット21には、オーガ上限スイッチ22からのデータとオーガポテンショメータ23からのデータが入力されている。
【0024】
マイコンユニット21には、傾斜手動レバー18からのデータ、傾斜自動スイッチ19からのデータが入力されている。マイコンユニット21は傾斜手動レバー18の前後及び左右操作による走行機体1の車高上昇,車高ダウン,右傾斜,左傾斜の操作を検出することができる。上記左右傾斜センサ24からのデータもマイコンユニット21に入力されている。
【0025】
なお走行機体1側には、トランスミッションの回転を検出するトランスミッション回転センサ,エンジンの回転を検出するエンジン回転センサ,穀稈搬送部に設けられた扱深さ搬送体への穀稈の供給を検出する扱深さメインスイッチ,前処理部2及び穀稈搬送部及び脱穀装置4の作動を入り切りする刈取りクラッチレバーの操作状態を検出する刈取りクラッチレバースイッチ,穀稈搬送部の回転駆動を検出する搬送回転センサとが設けられている。
【0026】
上記トランスミッション回転センサ26,エンジン回転センサ27,扱深さメインスイッチ28,刈取りクラッチレバースイッチ29,搬送回転センサ31からのデータはマイコンユニット21に入力されている。
【0027】
マイコンユニット21の出力側には、前述の昇降油圧シリンダの伸縮用のオーガ昇降バルブ32が接続されている。マイコンユニット21はオーガ昇降バルブ32に対してオーガ筒9を上昇及び下降させるためのデータを出力することができる。またマイコンユニット21の出力側には、前述のオーガ旋回モータ33とオーガ電磁ブレーキ34とが接続されている。
【0028】
つまりマイコンユニット21は、マイコンユニット21側に記憶されているオーガ手動制御プログラムに基づきオーガ手動制御手段として、又はオーガ自動制御プログラムに基づきオーガ自動制御手段として作動し、オーガ手動レバー16又はオーガ自動スイッチ17の操作に応じてオーガ昇降バルブ32やオーガ旋回モータ33、オーガ電磁ブレーキ34を作動させ、オーガ筒9を昇降又は左右旋回させる。
【0029】
マイコンユニット21の出力側には、前述の左右の油圧傾斜シリンダの伸縮用の左傾斜シリンダ昇降バルブ36と、右傾斜シリンダ昇降バルブ37とが接続されている。マイコンユニット21は左右の傾斜シリンダ昇降バルブ36,37に対して走行機体1の左右側を上昇及び下降させるためのデータを出力することができる。
【0030】
つまりマイコンユニット21は、マイコンユニット21側に記憶されている傾斜制御プログラムに基づき傾斜制御手段として作動し、傾斜手動レバー18又は傾斜自動スイッチ19の操作に応じて左右の傾斜シリンダ昇降バルブ36,37を作動させ、走行機体1の左右傾斜と車高(左右の両油圧傾斜シリンダを同時に同方向に作動させる)をコントロールする。
【0031】
マイコンユニット21の出力側には、前述の左右前方のフラッシャランプ7L,7R及び左右後方のリヤフラッシャランプ8L,8Rと電子ブザー38が接続されている。マイコンユニット21は各フラッシャランプ7L,7R,8L,8Rを点灯及び消灯させるためのデータと電子ブザー38を吹鳴させるためのデータを出力することができる。
【0032】
一方上記グレンタンク7内には、穀粒の検出を行う籾センサが上下方向に3つ設けられている。穀粒を検知している籾センサの数によってグレンタンク7内の穀粒の量を検出することができる。
【0033】
低位置に配置された籾センサのみが穀粒を検出している場合は、グレンタンク7内に概ね1/3程度の穀粒が収容されていること、低位置と中位置に配置された籾センサが穀粒を検出している場合は、グレンタンク7内に概ね2/3程度の穀粒が収容されていること、低位置と中位置と高位置に配置された籾センサが穀粒を検出している場合は、グレンタンク7内の穀粒がほぼ満タンであることを検出することができる。
【0034】
マイコンユニット21には、上記低位置の籾センサ39と中位置の籾センサ41と高位置の籾センサ42からのデータが入力されている。マイコンユニット21の出力側には各籾センサ39,41,42に対応して、各籾センサ39,41,42による穀粒の検出を表示する籾インジケータ43,44,46が接続されている。マイコンユニット21は各籾センサ39,41,42が穀粒を検出すると、対応する籾インジケータ43,44,46を点灯させる。
【0035】
作業者がオーガ手動レバー16の操作を行うと、マイコンユニット21は、オーガ手動制御手段として作動する。オーガ手動制御手段によるオーガ手動制御の作動フローチャート図を図4に示す。ただし図4はオーガ筒9を上昇させる場合についてのみ記載してあり、オーガ筒9を下降させる場合と左右旋回させる場合は従来同様であるため省略する。
【0036】
オーガ筒9を上昇させる場合は、まずステップS1において、オーガ手動レバー16がオーガ筒9を上昇させる上昇操作されたか否かをチェックする。オーガ手動レバー16が上昇操作された場合は、ステップS2に進み、オーガ上昇出力をセットする。これによりオーガ昇降バルブ32が上昇側に切り換えられ、オーガ筒9の上昇が開始される。
【0037】
その後ステップS3に進み、初回フラグをチェックする。このとき初回フラグがセットされていない場合は、ステップS4に進み、初回フラグを1にセットし、ステップS5に進む。
【0038】
ステップS5においては、オーガ上限スイッチ22のON,OFFをチェックし、オーガ筒9が上限位置にあるか否かをチェックする。オーガ上限スイッチ22がOFFの場合、つまりオーガ筒9が上昇上限位置に達していない場合は、ステップS6に進み、オーガポテンショメータ23をチェックしてオーガ筒9が前述の格納位置にあるか否かをチェックする。
【0039】
ステップS6において、オーガ筒9が格納位置にある場合はステップS7に進み、エンジン回転センサ27をチェックし、エンジンが始動中か否かをチェックする。ステップS7においてエンジンが始動している場合は、ステップS8に進み、左旋回タイマをセットし、リターンする。
【0040】
なおステップS5においてオーガ上限スイッチ22がONの場合、つまりオーガ筒9が上昇上限位置にある場合、ステップS6においてオーガ筒9が格納位置にない場合、ステップS7においてエンジンが停止している場合は、リターンする。
【0041】
一方ステップS3において初回フラグがセットされている場合は、ステップS9に進み、左旋回タイマの終了をチェックする。左旋回タイマが終了していない場合は、ステップS10に進み、オーガ旋回モータ33をオーガ筒9が左旋回する方向に回転駆動する左旋回出力をセットし、リターンする。ステップS10において左旋回タイマが終了している場合は、リターンする。
【0042】
上記オーガ手動制御によって、オーガ筒9を格納位置から手動で上昇させる場合、図5に示されるように、オーガ筒9を上昇させる出力(オーガ手動レバー16の操作によるオーガ手動上昇スイッチのON)が出力されるとほぼ同時に、左旋回出力とオーガ上昇出力が出力される。オーガ上昇出力はオーガ筒9が上昇上限位置に達するまで出力される。
【0043】
左旋回出力は左旋回タイマのセット時間出力される。左旋回タイマは、少なくとも駆動機構におけるギヤと旋回ギヤとの間のオーガ筒9が右方向にフリー回動するバックラッシュを解消する角度オーガ旋回モータ33が回転するように設定されている。
【0044】
これによりオーガ筒9がオーガ上昇出力による上昇を開始すると、上昇開始直後から左旋回タイマによって設定される時間、オーガ筒9を左旋回させる方向にオーガ旋回モータ33が駆動され、上記駆動機構におけるギヤと旋回ギヤとの間のオーガ筒9が右方向にフリー回動するバックラッシュが解消される。上記オーガ手動制御のステップS3〜ステップS10が、上記ギヤと駆動ギヤとのバックラッシュによるオーガ筒9の右回動を規制する回動規制手段を構成している。
【0045】
上記回動規制手段によってオーガ筒9を左又は右旋回させるために上昇させる場合、走行機体1が右側や前方に傾斜した状態等、前述のオーガ電磁ブレーキ34の作動中に上記バックラッシュによるオーガ筒9のフリーな右方向への回動が発生するいかなる状況であっても、上昇直後に上記バックラッシュが解消されるため、オーガ筒9の上記右側へのフリー状態での回動が規制され、上記バックラッシュによるオーガ筒9の回動によりオーガ筒9がキャビン3に接衝するという不都合が防止される。
【0046】
一方作業者がオーガ自動スイッチ17の操作を行うと、マイコンユニット21は、オーガ自動制御手段として作動する。オーガ自動制御手段によるオーガ自動制御の作動フローチャート図を図6に示す。
【0047】
オーガ自動制御は、図6に示されるように、ステップS1で自動フラグをチェックし、自動フラグが0の場合に、ステップS2に進み、オーガ自動スイッチ17が操作(OFFからON)されたか否かをチェックする。オーガ自動スイッチ17が操作された場合は、ステップS3に進み、オーガ筒9が格納位置にあるか否かをチェックする。
【0048】
オーガ筒9が格納位置にない場合は、オーガ筒9を格納位置に自動的に収納するためにオーガ自動スイッチ17を操作したと判断され、ステップS4に進み、自動フラグを1にセットし、ステップS5に進み、オーガ筒9を自動的に格納位置に収納するオーガ自動収納制御を作動させ、リターンする。
【0049】
一方ステップS3においてオーガ筒9が格納位置にある場合は、予め定められている所定の姿勢にオーガ筒9を自動的に切り換えるためにオーガ自動スイッチ17を操作したと判断され、ステップS6に進み自動フラグをチェックする。ステップS6において自動フラグが1以外の場合は、ステップS7に進み自動フラグを2にセットし、ステップS8に進み、左右傾斜センサ24によって走行機体1の左右傾斜角度をチェックする。
【0050】
ステップS8において走行機体1の左右傾斜角度が予め設定されている所定角度より小さい場合は、駆動機構におけるギヤと旋回ギヤとの間のバックラッシュによりオーガ筒9が右方向にフリー回動することはないと判断され、ステップS9に進み、オーガ筒9を自動的に上昇させ、予め定められている位置まで旋回させて位置決めするオーガ自動旋回制御を作動させ、リターンする。
【0051】
ただしステップS8において走行機体1の左右傾斜角度が上記所定角度以上の場合は、駆動機構におけるギヤと旋回ギヤとの間のバックラッシュによりオーガ筒9が右方向にフリー回動すると判断され、S10に進み、電子ブザー38等を作動させる警報制御を作動させ、ステップS11に進み、前述の傾斜制御機構によって走行機体1を水平状態とする水平復帰制御を作動させ、リターンする。
【0052】
前述のステップS1において自動フラグが0以外の場合は、ステップS12に進み、オーガ自動スイッチ17が操作(OFFからON)されたか否かをチェックする。ステップS11においてオーガ自動スイッチ17の操作がなかった場合はステップS6に進む。ステップS11においてオーガ自動スイッチ17の操作があった場合は、ステップS13に進み、自動フラグを0にセットしてリターンする。
【0053】
なおステップS2においてオーガ自動スイッチ17の操作がなかった場合は、そのままリターンする。そしてステップS6において自動フラグが1であった場合はステップS4に進む。
【0054】
以上に示されるオーガ自動制御により、オーガ筒9が格納位置にある場合に、オーガ自動スイッチ17を操作(OFF→ON)すると、走行機体1の左右傾斜角度が所定の角度未満の場合には、そのまま所定の姿勢にオーガ筒9が自動的に移動し、走行機体1の左右傾斜角度が所定の角度以上の場合は、警報の発生とともに走行機体1の左右傾斜角度を水平に復帰させた後に、オーガ筒9が所定の姿勢に自動的に移動する。
【0055】
なおオーガ筒9が格納位置以外に位置決めされている状態からオーガ自動スイッチ17を操作(OFF→ON)すると、オーガ筒9は自動的に格納姿勢に戻る。ただしオーガ筒9が自動的に移動制御されている状態でオーガ自動スイッチ17を操作(OFF→ON)すると、オーガ筒9の自動制御がキャンセルされる。
【0056】
上記オーガ自動制御におけるステップS8,S10,S11がオーガ自動制御時に上記ギヤと駆動ギヤとのバックラッシュによるオーガ筒9の右回動を規制する回動規制手段を構成している。この場合既にコンバインに設けられている傾斜制御機構を利用して回動規制手段を構成することができるため、回動規制手段を簡単に設けることができる。
【0057】
この場合はオーガ筒9が格納位置から自動的に上昇する際に、走行機体1の左右傾斜角度が所定の角度以上の場合は、オーガ電磁ブレーキ34の作動状態で駆動機構におけるギヤと旋回ギヤとの間のバックラッシュによりオーガ筒9が右方向にフリー回動すると判断され、走行機体1が水平状態に復帰した後、オーガ筒9が上昇して旋回する。
【0058】
このためオーガ筒9の自動位置決めに際して、上記バックラッシュによるオーガ筒9の回動によりオーガ筒9がキャビン3に接衝するという不都合が防止される。なお走行機体1が所定角度以上左右傾斜している場合は、オーガ自動制御自体をキャンセルし、走行機体1の水平復帰を警報等によってオペレータに促すように構成してもよい。
【0059】
また走行機体1が前方に傾斜している場合も上記バックラッシュによりオーガ筒9がフリー回転してキャビン3に接衝する場合があるため、走行機体1の前後傾斜検出を行い、前方に所定角度以上走行機体1が傾斜している場合に、上記オーガ筒9の回動を規制するように構成することもできる。
【0060】
なお本実施形態においては、駆動機構におけるギヤと旋回ギヤとの間のバックラッシュによるオーガ筒9の右方向へのフリー回動を規制する回動規制手段を、オーガ手動制御時にオーガ旋回モータ33の駆動によるもの、オーガ自動制御時に走行機体1の傾斜制御によるものとしたが、オーガ手動制御時に走行機体1の傾斜制御によるものを使用したり、オーガ自動制御時にオーガ旋回モータ33の駆動によるものを使用したりすることもでき、いずれか一方の手段によってオーガ自動制御時及びオーガ手動制御時の両方の回動規制手段を構成することもできる。
【0061】
また上記実施形態は運転席がキャビン3に覆われているため、オーガ筒9の上記バックラッシュに基づくフリー回転により、オーガ筒9とキャビン3との接衝が問題となる例を示しているが、キャビン3を備えない運転席の場合は、オーガ筒9と運転席側との直接の接衝が問題となる。この場合も上記回動規制手段によって、オーガ筒9と運転席側との接衝を防止することができる。
【0062】
一方本コンバインには、中位置の籾センサが穀粒を検出した後所定距離刈り取り走行後、フラッシャランプ7L,7R、8L,8Rをハザード点灯(全フラッシャランプ7L,7R、8L,8Rを点滅)させる籾警報制御手段が備えられている。籾警報制御手段は、マイコンユニット21側に記憶されている籾警報制御プログラムに基づきマイコンユニット21が作動することによって実現されている。
【0063】
籾警報制御プログラムに基づく籾警報制御手段による籾警報制御は、図7のフローチャート図に示されるように、まずステップS1において中位置の籾センサ41のON(穀粒検出),OFF(穀粒非検出)をチェックする。上記籾センサ41がONの場合は、ステップS2に進み、前回の籾センサ41のON,OFFをチェックする。
【0064】
ステップS2において前回の籾センサ41がOFFであった場合は、籾センサ41がOFFからONに切り換った直後であり、ステップS3に進み籾警報フラグを1とし、ステップS4に進み、中位置の籾センサ41に対応する籾インジケータ44を点灯させる。ステップS2において前回の籾センサ41がONの場合は、中位置の籾センサ41による穀粒の検出が継続しているため、直接ステップS4に進み上記籾インジケータ44を点灯させる。
【0065】
その後ステップS5に進み籾警報フラグのチェックを行う。ステップS5において籾警報フラグが1の場合はステップS6に進み、刈取走行中か否かをチェックする。刈取走行中か否かは、扱深さメインスイッチ28がON(扱深さ搬送体に穀稈が存在する)且つ刈取クラッチレバースイッチ29がON(作業機の作動側に切り換え)且つ搬送回転センサ31が穀稈搬送部回転駆動を検出ということによって刈取走行中と判断する。
【0066】
刈取走行中の場合はステップ7に進み走行距離を積算し、ステップS8に進む。ステップS7において刈取走行中でないと判断される場合には、ステップS9に進み、現在の走行距離の積算値を保存してステップS8に進む。ステップS5において籾警報フラグが0の場合は、ステップS10に進み、積算値を予め定められている設定距離Xを越える値とし、ステップS8に進む。
【0067】
ステップS8においては積算値を上記設定距離Xと比較する。積算値≧設定距離の場合はステップS11に進みフラッシャランプ7L,7R,8L,8Rをハザード点灯させリターンする。ステップ積算値<設定距離Xの場合はそのままリターンする。ステップS1において中位置の籾センサ41がOFFの場合は、ステップS12に進み、籾警報フラグを0としてステップS13に進み、積算値を0クリアしてリターンする。
【0068】
これによりグレンタンク7への穀粒の充填量をオペレータや籾運搬者に段階的に報知することができる他、設定距離Xの値に応じて籾運搬者の準備から穀粒の排出までの行程をの無駄を省くことができ、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】コンバインの平面図である。
【図2】キャビン内(運転席)の平面図である。
【図3】マイコンユニットの要部ブロック図である。
【図4】オーガ手動制御の作動フローチャート図である。
【図5】オーガ手動レバーによりオーガ筒を上昇させる場合のマイコンユニットからの出力のタイムチャート図である。
【図6】オーガ自動制御の作動フローチャート図である。
【図7】もみ警報制御のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0070】
1 走行機体
7 グレンタンク(穀粒タンク)
9 オーガ筒(排出筒)
21 マイコンユニット(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(1)に、運転席と、該運転席の後方に位置して、穀粒を一時的に貯粒する穀粒タンク(7)と、該穀粒タンク(7)から穀粒を排出する排出オーガとを設け、該排出オーガが、上下揺動及び左右旋回自在に取り付けられた排出筒(9)を備え、排出筒(9)を上下揺動及び左右旋回させる駆動機構と、該駆動機構をコントロールする制御手段(21)とを設け、前記駆動機構における排出筒(9)の左右旋回機構が、排出筒(9)側に設けられたギヤに噛合し、排出筒(9)に旋回駆動力を伝動する駆動ギヤを備え、上記排出筒(9)が、運転席の後方から運転席の左側方を通過した下降状態で格納姿勢となるコンバインにおいて、上記制御手段(21)側に、上記ギヤと駆動ギヤとのバックラッシュによる排出筒(9)の右回動を規制する回動規制手段を設け、該回動規制手段が、排出筒(9)を格納姿勢から上昇させる際、駆動ギヤを排出筒(9)の左旋回方向に、上記バックラッシュを解消する角度回転させる手段であるコンバインにおける排出筒の旋回制御手段。
【請求項2】
走行機体(1)に、運転席と、該運転席の後方に位置して、穀粒を一時的に貯粒する穀粒タンク(7)と、該穀粒タンク(7)から穀粒を排出する排出オーガとを設け、該排出オーガが、上下揺動及び左右旋回自在に取り付けられた排出筒(9)を備え、排出筒(9)を上下揺動及び左右旋回させる駆動機構と、該駆動機構をコントロールする制御手段(21)とを設け、前記駆動機構における排出筒(9)の左右旋回機構が、排出筒(9)側に設けられたギヤに噛合し、排出筒(9)に旋回駆動力を伝動する駆動ギヤを備え、上記排出筒(9)が、運転席の後方から運転席の左側方を通過した下降状態で格納姿勢となり、走行機体(1)が水平状態となるように水平制御する水平制御機構を設けたコンバインにおいて、上記制御手段側に、上記ギヤと駆動ギヤとのバックラッシュによる排出筒(9)の右回動を規制する回動規制手段を設け、該回動規制手段を、排出筒(9)を格納姿勢から上昇させる際、走行機体(1)が予め定められた所定角度以上傾斜している場合に、上記水平制御機構により、走行機体(1)を水平状態とする手段としたコンバインにおける排出筒の旋回制御手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−254825(P2006−254825A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78619(P2005−78619)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】