コンバイン
【課題】走行モードで刈取作業を行ってしまう不具合を改善しつつ、コンバイン各部の作動状況を確実にオペレータに認識させる技術を提案する。
【解決手段】エンジン80からの動力を高速(走行)モードまたは低速(作業)モードに切り換える副変速装置180と、該副変速装置180の変速位置を検知する位置センサ64と、警報ブザー58と、これらの入出力系機器を制御するためのコントローラ70と、を具備するコンバイン200において、前記コントローラ70が、前記位置センサ64が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、刈取部3を作動させないように制御する。
【解決手段】エンジン80からの動力を高速(走行)モードまたは低速(作業)モードに切り換える副変速装置180と、該副変速装置180の変速位置を検知する位置センサ64と、警報ブザー58と、これらの入出力系機器を制御するためのコントローラ70と、を具備するコンバイン200において、前記コントローラ70が、前記位置センサ64が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、刈取部3を作動させないように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの走行変速と作業切換の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のコンバインにおいては、運転席の操作部近傍に、液晶ディスプレイや表示計器等の表示装置が設けられており、これらの表示装置にコンバイン各部の状態情報を表示することにより、作動状況(例えば、エンジンの回転数や負荷、車速、グレンタンク内の穀粒量等)をオペレータが視覚的に認識できるようになっている。
また、従来のコンバインにおいては、副変速が高速(走行)モードであっても刈取部を作動させることが可能であり、この高速モードで刈取作業を行うと作業負荷が大き過ぎて、エンストが発生したり、穀稈の取込量が多くなって穀稈が搬送部で詰まったり、脱穀処理が十分できず扱き残しが発生したり、穀粒の選別がうまくできない等の不具合が発生していた。
この不具合を改善するために、副変速が低速(作業)モードであり、かつ刈取速度を高速に設定した場合や、または刈取作業中に副変速を低速(作業)モードから高速(走行)モードに変更した場合には、前記表示装置に表示を行うと共に警報を発報し、オペレータの注意を喚起するようにした技術が本発明と同一の出願人により開示され公知となっている(特許文献1参照)。
また、コンバインが刈取作業状態に移行し低速で走行する場合に、走行系の負荷状況に応じてHST(油圧式無段変速装置)の可変油圧モータを制御してエンジン回転数を略一定に保持すると共に、副変速の変速位置が高速(走行)であれば警報音や警告燈で報知し、かつ、副変速の変速位置を自動的に低速(作業)に変更する技術が開示され公知となっている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−80549号公報
【特許文献2】特許第3601035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
昨今のコンバインにおいては、前記従来技術に更に改良を加え、副変速の変速位置が高速(走行)モードであれば、電気回路上の刈取スイッチを「切」とし、刈取部を作動させないようにしている。これにより、穀稈が搬送部で詰まったり、穀粒の選別がうまくできない等の不具合が発生しやすい状況に陥ることが防止できるようにしている。
しかしながら、このような場合には刈取部が作動しない理由をオペレータが判別しにくく、故障や異常との間違った認識を起こさせ、不要な点検等を実施することが増えた結果、作業効率を低下させる原因となっていた。
そこで本発明では、このような状況を鑑み、高速(走行)モードで刈取作業を行ってしまう不具合を防止しつつ、コンバイン各部の作動状況を確実にオペレータに認識させる技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、エンジンからの動力を、高速(走行)モードまたは低速(作業)モードに切り換える副変速装置と、該副変速装置の変速位置を検知する検知手段と、警報手段と、これらの入出力系機器を制御するための制御手段と、を具備するコンバインにおいて、前記制御手段が、前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、刈取部を作動させないように制御すること、を特徴としたものである。
【0006】
請求項2においては、前記制御手段が、前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知し、刈取部を作動させないように制御したときには、走行または前記エンジンを停止するように制御すること、を特徴としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記制御手段に操作部に設ける表示手段を接続し、前記制御手段が、前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、前記表示手段に副変速装置が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するように制御すること、を特徴としたものである。
【0008】
請求項4においては、前記制御手段に警報手段を接続し、前記制御手段が、前記表示手段に副変速装置が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するときには、前記警報手段により警報を発するように制御すること、を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、走行変速状態で刈取作業ができなくなり、搬送部や脱穀部や選別部等で詰まりが発生することがなく、未処理物(穀粒)の圃場への排出をなくすことができる。また、高負荷のまま作業することがなく、機体等を傷めることがない。
【0011】
請求項2においては、高速(走行)モード中には刈取部を回転させようとした場合には、意に反して刈取部が回転しないが、走行しないため、稲を踏み倒すことが防止できる。
【0012】
請求項3においては、走行モードで刈取クラッチを「入」側に操作したときに、刈取部が作動しないが、このとき故障や異常であるかが表示手段により表示されて、オペレータは容易に認識することができる。
【0013】
請求項4においては、走行モードで刈取クラッチを「入」側に操作したときに警報が発せられるので、オペレータに操作間違いであることを喚起し、刈取部が回転しない理由の理解を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態について、二つの実施例を挙げながら説明をする。
以下に、本発明に係るコンバイン200の全体構成について、図1乃至図3を用いて説明をする。尚、コンバイン200の全体構成は、実施例1および実施例2において共通である。
図1または図3に示す如く、コンバイン200は、クローラ式走行装置1上に機体フレーム2が載置され、該機体フレーム2前端に配設された刈取フレーム12には、刈取部3が昇降可能に配設されている。該刈取部3は前端に分草板4を突出して穀稈を分草し、その後部に引起しケース5を立設して該引起しケース5より突出したタイン6の回転により穀稈を引き起こし、前記分草板4後部に配設した刈刃7にて株元を刈り取るようにしている。
【0015】
刈り取られた穀稈は、上部搬送装置、下部搬送装置、縦搬送装置8にて後部へ搬送され、該縦搬送装置8の上端から株元側がフィードチェーン9に受け継がれ、脱穀部20および選別部21からなる脱穀装置内に穀稈が搬送される。そして、該フィードチェーン9後端には排藁搬送チェーン10が配設され、該排藁搬送チェーン10後部下方には排藁カッター装置、拡散コンベア等からなる排藁処理部11が形成され、排藁を切断して藁片にした後、拡散しながら圃場に均一放出し、或いは切断せずに放出するようにしている。
【0016】
また、前記脱穀部20側部には選別後の穀粒を貯留するグレンタンク13が配設され、該グレンタンク13前部には操縦部30を覆う運転室14が配設されている。つまり、運転室14は進行方向機体右前方に配置されている。一方、グレンタンク13後部には排出オーガ15の縦オーガ15aが立設され、該縦オーガ15aを中心にして排出オーガ15及びグレンタンク13が側方へ回動可能とし、グレンタンク13を側方へ回動することにより本機内部側に配置した駆動系や油圧系のメンテナンスを容易にしている。
【0017】
そして、該グレンタンク13の底部には排出コンベア16が前後方向に配設され、該排出コンベア16の後部が縦オーガ15aの下部に連通されるとともに、該排出コンベア16後部から前記排出オーガ15に動力が伝達されて、排出オーガ15先端よりトラック等へグレンタンク13内の穀粒を排出できるようにしている。更に、脱穀部20下方には、選別部21が配設され、脱穀部20から流下する穀粒や藁屑等から穀粒を選別し、精粒を前記グレンタンク13に搬送したり、藁屑等を機外に排出したり前記グレンタンク13に搬送するようにしている。
【0018】
また、図2または図3に示す如く、前記グレンタンク13前方の前記運転室14下部には、コンバイン200の走行や各部駆動の動力源となるエンジン80が横設されている。該エンジン80の側方にはカウンタケース88が横設され、該カウンタケース88等を介して前記刈取部3や脱穀部20等の各部作業要素に動力が伝達されるようにしている。
【0019】
次に、コンバイン200の操縦部30について、図4乃至図6を用いて説明をする。尚、操縦部30の構成は、実施例1および実施例2において共通である。
図4に示す如く、オペレータが座る運転座席37の前方にはハンドルコラム39が立設され、該ハンドルコラム39上面中央部から上方へ向けて図示しないハンドル軸が突出し、該ハンドル軸の上端部に操向操作手段である操向ハンドル35が取り付けられている。また、ハンドルコラム39上面前端部から上方へ向けて表示装置本体31を支持する脚部31aが突出し、該表示装置本体31は該脚部31a上端から後方(運転座席37側)へ向けて延出され、該表示装置本体31の上面は水平状態からやや後方下方へ傾斜した状態に配置されている。この表示装置本体31の上面に表示パネル36が取り付けられ、運転座席37に座ったオペレータが見易い角度に配置されている。但し、表示パネル36の取付位置は見易い位置であればよく、ハンドルコラム上等であってもよく限定するものではない。
【0020】
図5に示す如く、表示手段である表示パネル36は、例えば、表示装置本体31上面の大部分を占める大画面の液晶パネルで構成されており、該表示パネル36を備えた表示装置本体31は、平面視で、操向ハンドル35のループ状の把手部35a内における中央に位置するように配置されている。この表示装置本体31は、脚部31aを介してハンドルコラム39のみに固定されていて、操向ハンドル35には連結していない構成としているので、操向ハンドル35を回動させても、表示装置本体31は動かないようになっている。
【0021】
表示装置本体31上面において、表示パネル36の前方には、コンバイン全体の電気系統の電源を入り切り操作する電源スイッチの入り操作時等に点灯する作業ランプ51が配置され、表示パネル36の左右両側方には、画面表示の切替え等のための入力手段となるスイッチ54・55・56・57が左右各2つずつ設けられている。これら各スイッチ54・55・56・57は、スイッチの一回の押下により一つのONパルス信号が出るいわゆるプッシュスイッチで、ノンロックタイプのものであり、それぞれに複数の役割を有する多機能スイッチとなっている。
【0022】
操向ハンドル35の把手部35aの左右対称位置には、内方側に膨出した左右の内膨らみ部35b・35cが形成されており、この左右の内膨らみ部35b・35cには、機体水平制御用や刈取昇降・扱深さ制御用などの4方向操作スイッチ52・53がそれぞれ設けられている。この左右の4方向操作スイッチ52・53は、オペレータが操向ハンドル35の把手部35aを握った状態で直進及び旋回操作いずれにおいても、親指等で操作可能に構成されており、操作性の向上が図られている。
【0023】
図4に示す如く、運転座席37の一側方(本実施例では進行方向左方)には、長手方向を前後方向に向けたサイドコラム38が配置されており、このサイドコラム38の前部には、車速を無段階に変速させる主変速レバー32と、有段で変速する副変速レバー33が配置され、サイドコラム38の後部には、作業動力を入切する作業(脱穀・刈取)クラッチレバー34が配置されて、これらのレバー32・33・34は前後回動可能に構成されている。
【0024】
サイドコラム38の前部において、図6に示す如く、主変速レバー32と副変速レバー33とは左右に並置されていて、主変速手段である主変速レバー32は副変速手段である副変速レバー33の内側(運転座席37側)に配置されている。
作業クラッチレバー34は、前記主変速レバー32および副変速レバー33の後部に立設されており、平面視「L」字状のガイド溝に沿って移動可能に構成され、該ガイド溝の後端外側位置に作業クラッチレバー34が位置するときには、刈取スイッチ及び脱穀スイッチが切り作動して刈取クラッチ22「切」かつ脱穀クラッチ23「切」の状態となり、後端内側位置では脱穀スイッチのみが入り作動して刈取クラッチ22「切」かつ脱穀クラッチ23「入」の状態となり、ガイド溝の前端位置では脱穀スイッチとともに刈取スイッチが入り作動して刈取クラッチ22「入」かつ脱穀クラッチ23「入」の状態となるように構成されている。なお、脱穀クラッチ23及び刈取クラッチ22はテンションプーリをモータやシリンダ等のアクチュエータにより回動して、スイッチのON/OFFにより「入」「切」できるようにしている。また、作業クラッチレバー34のレバーガイドはL型に限定するものではなく、3段階に操作できるものであればよい。
【0025】
次に、主変速レバー32について、図4および図6、図7を用いて説明をする。尚、主変速レバー32の構成は、実施例1と実施例2において相違があるため、実施例ごとに説明をする。
(実施例1)
【0026】
図4および図6に示す如く、主変速レバー32は、主変速とともに複数の機能が操作できる多機能オールマイティシフトレバーで構成されており、前後回動可能に立設されたレバーロッド49の上端部にオペレータが一方の手(本実施の形態では左手)で握って操作するためのグリップ部40が取り付けられている。この操作部となるグリップ部40の上半部は前方上方へ傾斜した状態に形成されていて、運転座席37に座ったオペレータが見易い角度に配置されており、該グリップ部40の上半部上面40aには、4方向操作スイッチで構成された機体傾斜スイッチ41、刈取速度変速スイッチ42、扱き深さスイッチ43、刈取部昇降スイッチ44、刈取部オートリフトスイッチ45、刈取部オートセットスイッチ46、副変速スイッチ47が配置されている。
【0027】
機体傾斜スイッチ41は、上下方向に操作することで、クローラ式走行装置1・1に対するコンバインの機体の高さを変更して昇降でき、左右方向に操作することで、左右のクローラに対して機体を昇降することで機体を任意に左右傾倒可能とする4方向操作スイッチである。
刈取速度変速スイッチ42はコンバインの機体前端部に設けられた刈取部の回転速度を切り換える押しボタンスイッチである。
扱き深さスイッチ43は、刈取穀稈の穂先の位置を検知して、穀稈を扱胴における適正な位置に搬送するための縦搬送装置を回動するスイッチである。
刈取部昇降スイッチ44は上下のボタンを押すことで刈取部を昇降させるように構成され、該上下のボタンを軽く押すと刈取部がゆっくりと昇降し、該上下のボタンを深く押すと刈取部が速やかに昇降する2段スイッチで構成されている。
刈取部オートリフトスイッチ45は、刈り終わりに押すだけで、刈取部を設定高さまで上昇させる。
刈取部オートセットスイッチ46は、刈り始めに押すだけで、刈取部を自動制御状態にして、刈り始めの操作がワンタッチで簡単に行えるように構成されている。
副変速スイッチ47は、押される度にコントローラ70へ操作がなされた旨の操作信号を出力して、該コントローラ70から後述する走行アクチュエータ71へ作動信号が出力し、該走行アクチュエータ71では作動信号を受信する度に、該走行アクチュエータ71の作動位置が「高速」位置と「低速」位置との間で順繰りに切り換えられる。そして、第一走行油圧モータ92の可動斜板92bの角度を変更して、低速の作業速度と高速の走行速度に変速可能としている。但し、該副変速スイッチ47はトグルスイッチやシーソースイッチ等でも可能であり限定するものではない。
(実施例2)
【0028】
図7に示す如く、実施例2においては、主変速レバー32上に前記副変速スイッチ47を具備せず、副変速状態の切替は、副変速レバー33の操作により行う構成としている。
【0029】
以上のような構成で、オペレータは右手で操向ハンドル35を握って操作し、左手で主変速レバー32のグリップ部40を握って主変速を行うことができるとともに、該グリップ部40を握った左手の親指で、これらのスイッチ41〜47(実施例2においてはスイッチ41〜46)の操作が可能に構成されて、操作性の向上が図られている。
以上が、主変速レバー32についての説明である。
【0030】
次に、エンジン80の出力伝達系統について、図8を用いて説明をする。尚、エンジン80の出力伝達系統は、実施例1および実施例2において共通である。
図8に示す如く、エンジン80は、前側及び後側に2系統の出力軸80a・80bを有している。前側の出力軸80aは、ミッションケース100に連結されている。該ミッションケース100は、前記クローラ式走行装置1を駆動する1対の油圧走行ポンプ91及び油圧走行モータ92を有する走行主変速用の走行用HST59を備え、また1対の油圧旋回ポンプ95及び油圧旋回モータ96を設けて旋回用の旋回用HST99とを備えている。
つまり、前記エンジン80の出力軸80aにミッションケース100の入力軸101を介して連結させて前記各ポンプ91・95を駆動するように構成している。
【0031】
また、図8に示す如く、前記後側の出力軸80bは、作業出力プーリ102およびテンションクラッチ136を介してVベルト104によりカウンタケース88に連結されている。
該カウンタケース88は、前記脱穀部20を駆動する扱胴入力軸144と、前記フィードチェーン9を駆動するフィードチェーン出力軸117と、揺動選別機構等を駆動する定速軸149と、前記刈取部3を駆動する刈取伝動軸160の各軸を備えている。
つまり、エンジン80の出力軸80bにカウンタケース88の扱胴入力軸144を介して前記各部を駆動するように構成している。
また、前記後側の出力軸80bには、作業出力プーリ102およびVベルト121を介して排出コンベア16が連結されており、グレンタンク13内の穀粒を排出できるように構成している。
以上が、エンジン80の出力伝達系統についての説明である。
【0032】
次に、前記ミッションケース100の構造について、図9を用いて詳述する。尚、ミッションケース100の構造は、実施例1と実施例2において相違があるため、実施例ごとに説明をする。
(実施例1)
【0033】
図9に示す如く、前記入力軸101にファン軸122を連結させ、該ファン軸122によってエンジン80のラジエータ用冷却ファン122aを駆動させると共に、前記油圧走行及び油圧旋回ポンプ91・95の各ポンプ入力軸91a・95aに前記ファン軸122を連結させ、各ポンプ91・95に入力軸101を連結させると共に、油圧走行ポンプ91のポンプ入力軸91aと、油圧走行モータ92・93のモータ出力軸93aを、定速クラッチ123を介して連結させる定速軸124を設け、定速クラッチ123を「入」にしたとき、定速軸124を介してポンプ入力軸91aとモータ出力軸93aをギヤ連結させ、走行用HST59を介することなく、ポンプ入力軸91aの回転を副変速機構85に伝え、エンジン80の定速回転によって左右のクローラ式走行装置1・1を駆動させ、略一定の車速で走行して収穫作業などを行わせる。なお、ポンプ入力軸95a上にチャージポンプ74を設けて駆動するように構成している。
【0034】
前記油圧走行モータ92・93のモータ出力軸93aに、副変速機構85及び差動機構86を介して左右のクローラ式走行装置1・1の各駆動輪81・81を連動連結させるもので、前記差動機構86は左右対称の1対の遊星歯車機構87・87を有し、各遊星歯車機構87は1つのサンギヤ87aと、該サンギヤ87aの外周で噛合う3つのプラネタリギヤ87bと、これらプラネタリギヤ87bに噛合うリングギヤ87cなどで形成している。
【0035】
前記プラネタリギヤ87bは、サンギヤ87aの遊転軸87dと同軸線上の車軸82のキャリヤ87eにそれぞれ回転自在に軸支させ、左右のサンギヤ87a・87aを挾んで左右のキャリヤ87e・87eを対向配置させると共に、前記リングギヤ87cは各プラネタリギヤ87bに噛み合う内歯を有して車軸82に回転自在に軸支させ、車軸82を延設して駆動輪81を軸支させている。
【0036】
また、走行用HST59は、油圧走行ポンプ91の後述する可動斜板91bの角度を変更することにより油圧走行モータ92・93の正逆回転と回転数の制御を行うもので、該油圧走行モータ92・93の回転を、モータ出力軸93aと副変速機構85の低速及び高速ギヤ85a・85bとブレーキ軸127と分岐軸128を介して、左右のリングギヤ87c・87cに伝達して左右のキャリア87e・87eを回転させるように構成している。前記副変速機構85は前記副変速レバー33を回動することによりスライダーを摺動させて低速ギヤ85aまたは高速ギヤ85bと噛合させることにより高低変速を可能としている。また、前記ブレーキ軸127に駐車ブレーキ127aを設けると共に、刈取部3に回転力を伝達する刈取駆動プーリ129を前記モータ出力軸93aに設け、刈取部3を車速同調速度で駆動させるように構成している。
【0037】
つまり、前記分岐軸128を介しリングギヤ87cに伝達された油圧走行モータ92・93の駆動力を、左右の遊星歯車機構87・87を介して左右のキャリヤ87e・87eに伝達させると共に、該左右のキャリヤ87e・87eに伝達された回転を左右の駆動輪81・81にそれぞれ伝え、左右のクローラ式走行装置1・1を同一方向に同一速度で駆動するように構成している。
【0038】
また、旋回用HST99は、油圧旋回ポンプ95の後述する可動斜板95bの角度を変更することにより油圧旋回モータ96の正逆回転と回転数の制御を行うもので、操向出力ブレーキ130を設けるモータ出力軸96cと、操向出力クラッチ116を設けるクラッチ軸118と、前記左右のサンギヤ87a・87aに常時噛合させる左右の入力ギヤ133a・133bを設け、油圧旋回モータ96の前記モータ出力軸96c及び操向出力クラッチ116を介してクラッチ軸118を連結させ、該クラッチ軸118に正転ギヤ174及び逆転ギヤ175を介して左右の入力ギヤ133a・133bを連結させる。そして、(図9における)右側のサンギヤ87aに正転ギヤ174を介して油圧旋回モータ96の回転を伝え、また(図9における)左側のサンギヤ87aに逆転ギヤ175を介して油圧旋回モータ96の回転を伝え、該油圧旋回モータ96が正転(逆転)した時には、左右同一回転数で、左サンギヤ87aを逆転(正転)させ、かつ右サンギヤ87aを正転(逆転)させ、左右のクローラ式走行装置1・1が互いに逆方向に同一速度で駆動するように構成している。
【0039】
このようにして、油圧旋回モータ96を停止させて左右のサンギヤ87a・87aを静止固定させた状態で、油圧走行モータ92・93を駆動すると、該油圧走行モータ92・93の回転は左右のリングギヤ87c・87cに同一回転数で伝達され、左右の遊星歯車機構87・87のキャリヤ87e・87eを介して左右のクローラ式走行装置1・1が左右同一回転方向かつ同一回転数で駆動され、機体の前後方向直進走行が行われる。一方、油圧走行モータ92・93を停止させて左右のリングギヤ87c・87cを静止固定させた状態で、油圧旋回モータ96を正逆回転駆動すると、(図9中における)左側の遊星歯車機構87が正あるいは逆回転し、また(図9中における)右側の遊星歯車機構87が逆あるいは正回転し、左右のクローラ式走行装置1・1を互いに逆方向に駆動し、機体を左あるいは右に旋回させる。また、油圧走行モータ92・93を駆動させながら、油圧旋回モータ96を駆動することにより、機体が左右に旋回して進路が修正されるように構成している。機体の旋回半径は油圧旋回モータ96の出力回転数によって決定される。
(実施例2)
【0040】
図10に示す如く、実施例2においては、前述の如く副変速スイッチ47を具備しない構成としているため、前記副変速レバー33を回動することにより副変速機構85のスライダーを摺動させて低速ギヤ85a、中速ギヤ85bおよび高速ギヤ85cと噛合させることにより3段階の変速を可能としている。尚、走行変速はHSTを用いることなく、歯車噛合式や油圧クラッチ式等でも可能であり、旋回制御もHSTを用いることなく、サイドクラッチの断接及びブレーキの作動により可能であり、限定するものではない。
以上が、ミッションケース100の構造についての説明である。
【0041】
次に、前記カウンタケース88の構造について、図11を用いて詳述する。尚、カウンタケース88の構造は、実施例1および実施例2において共通である。
【0042】
図11に示す如く、前記エンジン80の後側の出力軸80bに作業出力プーリ102を設けると共に、エンジン80の左側で脱穀部20前側の機体フレーム2上面にカウンタケース88を設け、入力プーリ131、車速同調プーリ90、脱穀プーリ133、刈取プーリ134、選別プーリ135をカウンタケース88に軸支させ、該カウンタケース88後側の前記入力プーリ131を作業出力プーリ102にテンションクラッチ136を介してVベルト104により連結させ、エンジン80の駆動力をカウンタケース88に伝えるように構成している。
また、アイドルプーリ105を介してミッションケース100の刈取駆動プーリ129に前記カウンタケース88の車速同調プーリ132をVベルト137により連結させると共に、機体フレーム2の前側上面に刈取入力ケース138を回転自在に軸支させ、該刈取入力ケース138に刈取フレーム12を連結させて刈取入力ケース138回りに刈取部3を回転させて昇降させるもので、前記刈取入力ケース138左側に刈取入力軸139を介して刈取入力プーリ140を軸支させ、前記カウンタケース88左側の刈取プーリ134を刈取入力プーリ140にVベルト145により連結させ、刈取部3の各部に駆動力を伝えるように構成している。
【0043】
また、前記扱胴19の駆動入力プーリ147にカウンタケース88前側の脱穀プーリ133をVベルト172により連結させ、扱胴19下側の図示しない選別唐箕及び揺動選別機構に選別プーリ135から駆動力を伝え、脱穀部20の各部を駆動すると共に、前記カウンタケース88の左側面にフィードチェーン出力軸117を設け、前記フィードチェーン9の駆動スプロケット9aに該フィードチェーン出力軸117から動力を伝える。また、前記グレンタンク13の前側に排出駆動プーリ141を設け、該排出駆動プーリ141を前記作業出力プーリ102に排出テンションクラッチ142を介してVベルト143により連結させ、排出コンベア16にエンジン80の出力を伝えて、排出オーガ15によりグレンタンク13に貯溜されている穀粒を排出させる構成としている。
【0044】
さらに、前記カウンタケース88に扱胴入力軸144を軸支させ、該扱胴入力軸144を前後方向に延設させ、カウンタケース88前面外側の該扱胴入力軸144前側に脱穀プーリ133を設け、カウンタケース88の後面外側の前記扱胴入力軸144後側に入力プーリ131を設け、扱胴入力軸144にエンジン80の一定回転動力を入力させて定速回転させる。また、前記カウンタケース88の右側に同調入力軸146を軸支させ、カウンタケース88の右外側の前記同調入力軸146右側に車速同調プーリ132を設け、アイドルプーリ105を介して刈取駆動プーリ129と車速同調プーリ132間にVベルト137を緊張させ、ミッションケース100からカウンタケース88に車速同調動力を入力させる構成としている。
【0045】
さらに、前記扱胴入力軸144に右側をベベルギヤ148により連結させるカウンタ軸または選別入力軸である定速軸149と、該定速軸149の前側に略平行に設ける車速同調軸155とを、カウンタケース88に軸支させると共に、刈取変速機構150を形成する低速ギヤ151及び高速ギヤ152を前記各軸146・149の間に設け、低速及び中立及び高速の各刈取変速を行う刈取変速スライダ153によって前記各ギヤ151・152を前記車速同調軸155に択一的に係合させ、刈取変速を行う構成としている。
また、前記各ギヤ151・152に同調入力軸146の車速同調回転力を伝えるワンウェイクラッチ154を同調入力軸146上に設け、車速同調プーリ132からの動力を前記ワンウェイクラッチ154によって伝える前記ギヤ151・152を介して車速同調軸155を回転させるように構成する。
【0046】
さらに、刈取定速機構156を形成する流し込みギヤ157と高速カットギヤ158を前記各軸149・155の間に設け、刈取部3を流し込み駆動または高速カット駆動させる切換スライダ159によって前記各軸149・155に前記各ギヤ157・158を択一的に係合させ、刈取部3を流し込み駆動して走行状態に関係なく刈取部3の穀稈をフィードチェーン9側に搬送させる一方、刈取部3を高速カット駆動して車速同調の最高速よりも早い一定回転速度で刈取部3を駆動して倒伏した穀稈を刈取るように構成している。
尚、前記刈取変速スライダ153を作動させる油圧刈取変速シリンダ173と、前記切換スライダ159を作動させる油圧刈取定速シリンダ173が、前記チャージポンプ74に並列に油圧接続する構成としている。
【0047】
また、前記カウンタケース88の左側で下部後側に定速軸149の左側端を突出させ、該定速軸149左側端部に選別プーリ135を軸支させる。さらに、カウンタケース88の左側で下部前側に刈取伝動軸160を軸支させ、該刈取伝動軸160右側を車速同調軸155にトルクリミッタ161を介して連結させ、カウンタケース88左側に突出させる前記刈取伝動軸160の左側端部に刈取プーリ134を軸支させると共に、前記刈取入力軸139に刈取駆動軸171をギヤ162により連結させ、該刈取駆動軸171に刈取入力プーリ140を軸支させるように構成している。
【0048】
さらに、前記カウンタケース88の左側上部に前記フィードチェーン出力軸117を軸支させ、フィードチェーンクラッチ163を設けるフィードチェーン駆動軸164に前記フィードチェーン出力軸117をチェーン165により連結させると共に、定速軸149の回転を車速同調軸155の回転数変化によって変速して伝えるフィードチェーン変速機構168を設け、サンギヤ166aとプラネタリギヤ166bとリングギヤ166cを備える遊星歯車機構166によって無段変速可能に前記遊星歯車機構166を形成するもので、定速軸149にサンギヤ166aを係合軸支させ、定速軸149に遊転支持させるリングギヤ166cを車速同調軸155にギヤ167により連結させると共に、プラネタリギヤ166bを遊転支持させる軸受体169を定速軸149に遊転支持させ、前記フィードチェーンクラッチ163を介して前記フィードチェーン駆動軸164に軸受体169をギヤ170により連結させ、穀稈の搬送に必要な最低回転を確保しつつ、低い一定回転から高回転にフィードチェーン9の回転速度を車速と同調させて変更可能に構成している。
以上が、カウンタケース88の構造についての説明である。
【0049】
次に、走行用HST59について、図12(a)・(b)を用いて説明をする。尚、走行用HST59の構成は、実施例1および実施例2において相違しているため、実施例ごとに説明をする。
(実施例1)
【0050】
図12(a)に示す如く、実施例1における走行用HST59は、エンジン80からの動力で駆動する可変容積型の油圧走行ポンプ91と、該油圧走行ポンプ91から供給された作動油によって駆動される可変容積型の第一油圧走行モータ92と固定容積型の第二油圧走行モータ93とを備え、エンジン80からの出力軸80aはカウンタケース88、動力伝達機構89を介して油圧走行ポンプ91のポンプ入力軸91aへ動力を伝達するように構成している。油圧走行ポンプ91の可動斜板91bはリンク機構を介して前記主変速レバー32と連結している。また、第一油圧走行モータ92の可動斜板92bはリンク機構を介して走行アクチュエータ71と連結し、副変速装置180を構成している。
【0051】
油圧走行ポンプ91は油圧閉回路94により第一油圧走行モータ92及び第二油圧走行モータ93に接続されており、該油圧走行ポンプ91の吐出する作動油により第一油圧走行モータ92及び第二油圧走行モータ93が駆動されるように構成している。この第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93は動力伝達機構83により接続されており、第一油圧走行モータ92の回転に対して第二油圧走行モータ93が一定の比率で回転する構成になっている。該動力伝達機構83はギヤ等により構成することも可能であるが、第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93の出力軸を直接接続することもできる。第二油圧走行モータ93にはモータ出力軸93aが接続されており、第一油圧走行モータ92及び第二油圧走行モータ93により発生する駆動力がモータ出力軸93aに伝達されるように構成している。
【0052】
上記の構成において、動力伝達機構83が第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93を1対1の比率で回転するように接続している場合には、油圧走行ポンプ91の作動油の吐出量と第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93の作動油の吸入量比によりモータ出力軸93aにおける回転出力が決定される。
【0053】
すなわち、第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93の吸入量の和が油圧走行ポンプ91の作動油の吐出量よりも少ない場合にはモータ出力軸93aの回転数が大きくなり、第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93の吸入量の和が油圧走行ポンプ91の作動油の吐出量よりも多い場合にはモータ出力軸93aの回転数が小さくなる。
【0054】
そして、走行用HST59の第二油圧走行モータ93からのモータ出力軸93aは動力伝達機構84、差動機構86を介して駆動輪81・81の車軸82・82を駆動し、該差動機構86には動力伝達機構97を介して旋回用HST99からも動力が伝達されるように構成されている。この旋回用HST99は、エンジン80からの動力で駆動する可変容積型の油圧旋回ポンプ95と、該油圧旋回ポンプから供給された作動油によって駆動される可変容積型の油圧旋回モータ96とを備え、エンジン80からの出力軸80aは動力伝達機構98を介して前記油圧旋回ポンプ95のポンプ入力軸99aへ動力を伝達するように構成している。
(実施例2)
【0055】
図12(b)に示す如く、実施例2においては、可変容積型の第一油圧走行モータ92は具備せず、可変容積型の油圧走行ポンプ91と固定容積型の第二油圧走行モータ93の組合せによる構成としている点で実施例1と相違している。
以上が、走行用HST59についての説明である。
【0056】
次に、主変速および副変速に係る変速操作について、図7、図11乃至図13を用いて説明をする。尚、主変速および副変速に係る変速操作は、実施例1および実施例2において相違しているため、実施例ごとに説明をする。
(実施例1)
【0057】
図12(a)に示す如く、油圧走行ポンプ91の可動斜板91bの角度を変更する操作レバーと前記主変速レバー32とはリンク機構を介して連結されており、該油圧走行ポンプ91の可動斜板91bの角度は該主変速レバー32の操作により変更でき、油圧走行ポンプ91からの作動油の吐出量を調節できるように構成されている。この油圧走行ポンプ91の可動斜板91bは主変速レバー32の操作量に応じて回動し、油圧走行ポンプ91からの作動油の吐出量を無段階に変更できるとともに、吐出方向も変更できて、前後進と主変速が同時に行えるように構成されている。
【0058】
また、第一油圧走行モータ92の可動斜板92bはリンク機構を介して走行アクチュエータ71と連結され副変速装置180を構成しており、該走行アクチュエータ71は制御手段となるコントローラ70を介して前記副変速スイッチ47と接続されている。該第一油圧走行モータ92の可動斜板92bの角度は主変速レバー32に設けた副変速スイッチ47の操作により高低2段階に変更できるように構成されて、第一油圧走行モータ92への作動油の吸込量を調節できるように構成されている。但し、副変速装置180は油圧モータで変速する構成に限定するものではなく、前記副変速機構85の歯車の選択数を多くして変速したり、また、クラッチの断接で変速したりすることが可能であり、その構成は限定するものではない。この場合、副変速レバー33の変速位置をセンサ等で検知し、該副変速レバー33はアクチュエータで回動して変速可能に構成する。
【0059】
このような構成で、主変速レバー32を操作することにより油圧走行ポンプ91の容量を制御し、副変速スイッチ47を操作することにより第一油圧走行モータ92の容量を変化させ副変速装置180を制御して、変速操作を行うことができるようになっている。これにより、高回転に対応可能であり、変速比の範囲の広い走行用HST59を構成することができる。
【0060】
図13に示す如く、前記走行アクチュエータ71は、斜板操作ピストン72と、油路切換電磁弁73と、により構成され、該油路切換電磁弁73にはチャージポンプ74より作動油が供給され、該油路切換電磁弁73を摺動することにより、斜板操作ピストン72を操作する構成になっている。該斜板操作ピストン72は第一油圧走行モータ92の可動斜板92bの角度を変更する第2の操作軸にリンク機構を介して連結されており、該斜板操作ピストン72の摺動により、第一油圧走行モータ92の可動斜板92bの角度が制御されるように構成されている。この油路切換電磁弁73には二通りの油路が設けられており、第一油圧走行モータ92の可動斜板92bの傾斜角を2段階に制御する構成になっている。この可動斜板92bの回動位置、即ち、副変速の高低は検知手段となるポテンショメータ等の位置センサ64で検知され、コントローラ70と接続してその検知信号を送信する構成としている。
(実施例2)
【0061】
図12(b)に示す如く、前述の通り、実施例2においては可変容積型の第一油圧走行モータ92は具備せず、可変容積型の油圧走行ポンプ91と固定容積型の第二油圧走行モータ93の組合せによる構成としている。
【0062】
このような構成で、主変速レバー32を操作することにより油圧走行ポンプ91の容量を制御し、主変速操作を行うことができる構成としている。
【0063】
また図12(b)に示す如く、実施例2においては、走行用HST59には副変速機能を具備しない構成としている。
この場合、図7に示す如く、副変速機能は副変速レバー33を回動して、「標準」、「高速(走行)」、「低速(作業)」の3段階に設定されたレバー位置を選択することにより、リンク機構で連結したスライダーを摺動させ、そして、図11に示す如く、前記スライダーを低速ギヤ85a、中速ギヤ85bまたは高速ギヤ85cと噛合させることによってモードを切り換えて、3段階に変速可能な構成としている。
以上が、主変速および副変速に係る変速操作についての説明である。
【0064】
次に、コンバイン200の制御構成について、図14(a)・(b)乃至図18を用いて説明をする。尚、コンバイン200の制御構成は、実施例1および実施例2において相違しているため、実施例ごとに説明をする。
(実施例1)
【0065】
図14(a)に示すように、コンバイン200の制御手段であるコントローラ70には、コンバイン200の各種情報を表示する前記表示パネル36と、警報ブザー58と、前記可動斜板92bの回動位置または回動角を検知する手段となる位置センサ64と、作業クラッチレバー34の操作位置を検出する手段となるクラッチ位置センサ179と、刈取クラッチ22を作動させる刈取アクチュエータ177と、脱穀クラッチ23を作動させる脱穀アクチュエータ178と、可動斜板92bを回動する走行アクチュエータ71が接続されている。前記位置センサ64は角度を検出するロータリエンコーダやポテンショメータやスイッチ等で構成することができ、前記各アクチュエータ71・177・178はモータやシリンダやソレノイド等で構成することができる。
また前述した通り、前記副変速スイッチ47により変速される副変速装置180は走行アクチュエータ71がリンク機構を介して前記第一油圧走行モータ92の可動斜板92bの角度を「作業」位置と「走行」位置との間で切り換えて速比を切り換えるように構成されている。但し、本実施例では2段の変速としているが、3段以上設けることも可能である。
【0066】
この「高速(走行)」モード又は「低速(作業)」モードの副変速装置180の変速状態は、位置センサ64により前記可動斜板92bの位置(または副変速操作位置)が検出されることで検知され、前記コントローラ70にフィードバックされる。そして、操向ハンドル35の中央に配置されている表示パネル36上に、この副変速装置180の変速状態が略全画面に渡って大きく表示されて、運転座席37に座るオペレータが一目瞭然に見えるように構成されている。この構成では、現在の副変速装置180の変速状態を確実に把握することができて、現在の副変速装置180の変速状態に反して誤操作を行うこともなくなり、安全性が向上する。
【0067】
また、前述の通りコントローラ70には、副変速スイッチ47を「高速(走行)」モードに切り換えた状態のままで、刈取作業を行おうとして前記作業クラッチレバー34を平面視「L」字状ガイド溝の前端位置へ操作して刈取スイッチが「入」へと切り換えられた場合、変速制御プログラム77によりその切り換えを防止するように構成している。
【0068】
図17に示す如く、前記変速制御プログラム77は、副変速装置180を構成する走行油圧モータ92の可動斜板92bの角度を位置センサ64により検知して、副変速装置180の変速状態を判断する(S17−1)。そして、副変速装置180の変速状態が「高速(走行)」モードに切り換えられた状態であれば、作業クラッチレバー34を「入」側に回動しても(S17−2)、刈取クラッチ22を作動させる刈取アクチュエータ177は作動されず(S17−4)、刈取クラッチ22は「入」とはならず(S17−5)、刈取部3を駆動しないようにしている。また、それと同時に走行アクチュエータ71を解除し(S17−6)、走行を停止させる(S17−7)ようにしている。これにより、意に反して刈取部3が回転しないままに走行してしまい、稲を踏み倒してしまうことが防止される。そして、表示パネル36上にその旨が略全画面に渡って大きく警告表示(図15参照)されるととも警報ブザー58が鳴動し警報を発するように構成されており(S17−3)、この表示は運転座席37に座るオペレータがはっきりと視認することができて、視覚および聴覚を通じてオペレータに刈取部3が回転しない理由が報知され、副変速装置を傷めないようにするとともに、作業負荷を適切にするように構成している。この警告表示は表示パネル36上に短時間表示された後、現在の副変速装置180の変速状態を示す画面(図16参照)に切り換わるように構成されている。
また、副変速装置180が走行状態のとき、作業クラッチレバー33を脱穀「入」位置から刈取「入」側に回動できないように構成することも可能である。この場合、作業クラッチレバー33の刈取操作部に牽制機構を設ける。該牽制機構はレバーガイドまたは作業クラッチレバーの回動部にシリンダまたはソレノイド等のアクチュエータを配置して、副変速ソレノイドが走行状態となると、アクチュエータを作動させてレバーの回動軌跡側にロッド等を突出させて、作業クラッチレバーが脱穀位置から刈取位置に回動できないようにするものである。
また、表示パネル36上に警告が表示されるのと同時に、警報装置として警報ブザー58が鳴動し、確実に警告がオペレータに認知されるように構成している。但し、警報装置はブザーに限定するものではなく、ランプやスピーカ等であってもよい。
すなわち、走行状態を優先とし、走行中には刈取作業に切り換えられないようにコントローラ70のプログラムを構成している。該プログラムはコントローラ70のROM等の記憶装置に記憶されている。
(実施例2)
【0069】
実施例2においては、副変速スイッチ47および走行アクチュエータ71等を具備せず、副変速レバー33がリンク機構を介して副変速機構85の各ギヤ85a・85b・85cに接続されている点で実施例1とは相違している。そして、その他の構成は実施例1と共通である。
また前述した通り、副変速機構85の変速状態の切換は、副変速レバー33を「低速(作業)」、「標準」、「高速(走行)」位置で切り換えて速比を切り換える構成としている。但し、本実施例においては3段の変速としているが、4段以上設けることも可能である。
【0070】
図14(b)に示す如く、この「高速(走行)」モード又は「低速(作業)」モードの副変速機構85の変速状態は、位置センサ64により前記副変速レバー33の位置が検出されることで検知され、前記コントローラ70にフィードバックされる。そして、操向ハンドル35の中央に配置されている表示パネル36上に、この副変速機構85の変速状態が略全画面に渡って大きく表示されて、運転座席37に座るオペレータが一目瞭然に見えるように構成されている。この構成では、現在の副変速機構85の変速状態を確実に把握することができて、現在の副変速機構85の変速状態に反して誤操作を行うこともなくなり、安全性が向上する。
【0071】
また、前述の通りコントローラ70には、副変速レバー33を「高速(走行)」位置に切り換えた状態(走行モード)のままで、刈取作業を行おうとして前記作業クラッチレバー34を平面視「L」字状ガイド溝の前端位置へ操作して刈取スイッチが「入」へと切り換えられた場合、その切り換えを防止する切換防止手段としての変速制御手段77を備えている。
【0072】
図18に示す如く、実施例1と同様に変速制御手段77は、副変速レバー33の位置を位置センサ64により検知して、副変速機構85の変速状態を判断する(S18−1)。そして、副変速機構85の変速状態が「高速」モードに切り換えられた状態(すなわち、副変速レバー33が「高速(走行)」位置にあるとき)では、作業クラッチレバー34を「入」側に回動した場合であっても(S18−2)、刈取クラッチ22を作動させる刈取アクチュエータ177は作動されず(S18−4)、刈取クラッチ22は「入」とはならず(S18−5)、刈取部3を駆動しないようにすると同時に、エンジン80を停止する(S18−6)ことにより走行を停止させ(S18−7)、さらに表示パネル36上にその旨が略全画面に渡って大きく警告表示(図15参照)されるとともに警報ブザー58が鳴動し警報を発するように構成されている(S18−3)。
また、図19に示す如く、刈取クラッチ22を作動させる刈取アクチュエータ177が作動されず(S19−4)、刈取クラッチ22が「入」とはならないときには(S19−5)、走行を停止させる(S18−7)ように構成することもできる。
以上が、コンバイン200の制御構成についての説明である。
【0073】
以上の説明に示す如く、エンジン80からの動力を高速(走行)モードまたは低速(作業)モードに切り換える副変速装置180と、該副変速装置180の変速位置を検知する位置センサ64と、警報ブザー58と、これらの入出力系機器を制御するためのコントローラ70と、を具備するコンバイン200において、前記コントローラ70が、前記位置センサ64が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、刈取部3を作動させないように制御する構成としている。
これにより、走行変速状態で刈取作業ができなくなり、搬送部や脱穀部や選別部等で詰まりが発生することがなく、未処理物(穀粒)の圃場への排出をなくすことができるのである。また、高負荷のまま作業することがなく、機体等を傷めることがないのである。
【0074】
また、前記コントローラ70が、前記位置センサ64が前記高速(走行)モードの変速位置を検知し、刈取部3を作動させないように制御したときには、走行またはエンジン80を停止するように制御する構成としている。
これにより、高速(走行)モード中に刈取部を回転させようとした場合には意に反して刈取部が回転しないが、走行しないため、稲を踏み倒すことが防止できるのである。
【0075】
また、前記コントローラ70に操縦部30に設ける表示パネル36を接続し、前記コントローラ70が、前記位置センサ64が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、前記表示パネル36に副変速装置180が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するように制御する構成としている。
これにより、走行モードで刈取クラッチ22を「入」側に操作したときに、刈取部3が作動しないが、このとき故障や異常であるかが表示パネル36により表示されて、オペレータは容易に認識することができるのである。
【0076】
また、前記コントローラ70に警報ブザー58を接続し、前記表示パネル36に副変速装置180が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するときには、前記警報ブザー58により警報を発するように制御する構成としている。
これにより、走行モードで刈取クラッチ22を「入」側に操作したときに警報が発せられるので、オペレータに操作間違いであることを喚起し、刈取部3が回転しない理由の理解を促すことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した右側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく左側面図。
【図4】コンバインの運転座席廻りの構成を示した斜視図。
【図5】コンバインの操向ハンドル部分の詳細を示した平面図。
【図6】実施例1に係る主変速レバー及び副変速レバーの詳細を示した斜視図。
【図7】実施例2に係る主変速レバー及び副変速レバーの詳細を示した斜視図。
【図8】エンジンの出力伝達経路を示したスケルトン図。
【図9】実施例1に係るミッションケース部の詳細を示したスケルトン図。
【図10】実施例2に係るミッションケース部の詳細を示したスケルトン図。
【図11】カウンタケース部の詳細を示したスケルトン図。
【図12】各実施例に係る走行用HSTの構成を示した模式図。(a)実施例1の場合、(b)実施例2の場合。
【図13】走行用HSTの油圧回路構成を示した回路図。
【図14】各実施例に係るコンバインの制御機器構成を示した模式図。(a)実施例2の場合、(b)実施例2の場合。
【図15】表示パネルの警告表示例を示す図。
【図16】表示パネルの警報発報中の通常表示例を示す図。
【図17】実施例1における変速制御プログラムの制御フロー図。
【図18】実施例2における変速制御プログラム(1)の制御フロー図。
【図19】実施例2における変速制御プログラム(2)の制御フロー図。
【符号の説明】
【0078】
3 刈取部
30 操縦部
36 表示パネル
58 警報ブザー
64 位置センサ
70 コントローラ
80 エンジン
180 副変速装置
200 コンバイン
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの走行変速と作業切換の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のコンバインにおいては、運転席の操作部近傍に、液晶ディスプレイや表示計器等の表示装置が設けられており、これらの表示装置にコンバイン各部の状態情報を表示することにより、作動状況(例えば、エンジンの回転数や負荷、車速、グレンタンク内の穀粒量等)をオペレータが視覚的に認識できるようになっている。
また、従来のコンバインにおいては、副変速が高速(走行)モードであっても刈取部を作動させることが可能であり、この高速モードで刈取作業を行うと作業負荷が大き過ぎて、エンストが発生したり、穀稈の取込量が多くなって穀稈が搬送部で詰まったり、脱穀処理が十分できず扱き残しが発生したり、穀粒の選別がうまくできない等の不具合が発生していた。
この不具合を改善するために、副変速が低速(作業)モードであり、かつ刈取速度を高速に設定した場合や、または刈取作業中に副変速を低速(作業)モードから高速(走行)モードに変更した場合には、前記表示装置に表示を行うと共に警報を発報し、オペレータの注意を喚起するようにした技術が本発明と同一の出願人により開示され公知となっている(特許文献1参照)。
また、コンバインが刈取作業状態に移行し低速で走行する場合に、走行系の負荷状況に応じてHST(油圧式無段変速装置)の可変油圧モータを制御してエンジン回転数を略一定に保持すると共に、副変速の変速位置が高速(走行)であれば警報音や警告燈で報知し、かつ、副変速の変速位置を自動的に低速(作業)に変更する技術が開示され公知となっている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−80549号公報
【特許文献2】特許第3601035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
昨今のコンバインにおいては、前記従来技術に更に改良を加え、副変速の変速位置が高速(走行)モードであれば、電気回路上の刈取スイッチを「切」とし、刈取部を作動させないようにしている。これにより、穀稈が搬送部で詰まったり、穀粒の選別がうまくできない等の不具合が発生しやすい状況に陥ることが防止できるようにしている。
しかしながら、このような場合には刈取部が作動しない理由をオペレータが判別しにくく、故障や異常との間違った認識を起こさせ、不要な点検等を実施することが増えた結果、作業効率を低下させる原因となっていた。
そこで本発明では、このような状況を鑑み、高速(走行)モードで刈取作業を行ってしまう不具合を防止しつつ、コンバイン各部の作動状況を確実にオペレータに認識させる技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、エンジンからの動力を、高速(走行)モードまたは低速(作業)モードに切り換える副変速装置と、該副変速装置の変速位置を検知する検知手段と、警報手段と、これらの入出力系機器を制御するための制御手段と、を具備するコンバインにおいて、前記制御手段が、前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、刈取部を作動させないように制御すること、を特徴としたものである。
【0006】
請求項2においては、前記制御手段が、前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知し、刈取部を作動させないように制御したときには、走行または前記エンジンを停止するように制御すること、を特徴としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記制御手段に操作部に設ける表示手段を接続し、前記制御手段が、前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、前記表示手段に副変速装置が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するように制御すること、を特徴としたものである。
【0008】
請求項4においては、前記制御手段に警報手段を接続し、前記制御手段が、前記表示手段に副変速装置が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するときには、前記警報手段により警報を発するように制御すること、を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、走行変速状態で刈取作業ができなくなり、搬送部や脱穀部や選別部等で詰まりが発生することがなく、未処理物(穀粒)の圃場への排出をなくすことができる。また、高負荷のまま作業することがなく、機体等を傷めることがない。
【0011】
請求項2においては、高速(走行)モード中には刈取部を回転させようとした場合には、意に反して刈取部が回転しないが、走行しないため、稲を踏み倒すことが防止できる。
【0012】
請求項3においては、走行モードで刈取クラッチを「入」側に操作したときに、刈取部が作動しないが、このとき故障や異常であるかが表示手段により表示されて、オペレータは容易に認識することができる。
【0013】
請求項4においては、走行モードで刈取クラッチを「入」側に操作したときに警報が発せられるので、オペレータに操作間違いであることを喚起し、刈取部が回転しない理由の理解を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態について、二つの実施例を挙げながら説明をする。
以下に、本発明に係るコンバイン200の全体構成について、図1乃至図3を用いて説明をする。尚、コンバイン200の全体構成は、実施例1および実施例2において共通である。
図1または図3に示す如く、コンバイン200は、クローラ式走行装置1上に機体フレーム2が載置され、該機体フレーム2前端に配設された刈取フレーム12には、刈取部3が昇降可能に配設されている。該刈取部3は前端に分草板4を突出して穀稈を分草し、その後部に引起しケース5を立設して該引起しケース5より突出したタイン6の回転により穀稈を引き起こし、前記分草板4後部に配設した刈刃7にて株元を刈り取るようにしている。
【0015】
刈り取られた穀稈は、上部搬送装置、下部搬送装置、縦搬送装置8にて後部へ搬送され、該縦搬送装置8の上端から株元側がフィードチェーン9に受け継がれ、脱穀部20および選別部21からなる脱穀装置内に穀稈が搬送される。そして、該フィードチェーン9後端には排藁搬送チェーン10が配設され、該排藁搬送チェーン10後部下方には排藁カッター装置、拡散コンベア等からなる排藁処理部11が形成され、排藁を切断して藁片にした後、拡散しながら圃場に均一放出し、或いは切断せずに放出するようにしている。
【0016】
また、前記脱穀部20側部には選別後の穀粒を貯留するグレンタンク13が配設され、該グレンタンク13前部には操縦部30を覆う運転室14が配設されている。つまり、運転室14は進行方向機体右前方に配置されている。一方、グレンタンク13後部には排出オーガ15の縦オーガ15aが立設され、該縦オーガ15aを中心にして排出オーガ15及びグレンタンク13が側方へ回動可能とし、グレンタンク13を側方へ回動することにより本機内部側に配置した駆動系や油圧系のメンテナンスを容易にしている。
【0017】
そして、該グレンタンク13の底部には排出コンベア16が前後方向に配設され、該排出コンベア16の後部が縦オーガ15aの下部に連通されるとともに、該排出コンベア16後部から前記排出オーガ15に動力が伝達されて、排出オーガ15先端よりトラック等へグレンタンク13内の穀粒を排出できるようにしている。更に、脱穀部20下方には、選別部21が配設され、脱穀部20から流下する穀粒や藁屑等から穀粒を選別し、精粒を前記グレンタンク13に搬送したり、藁屑等を機外に排出したり前記グレンタンク13に搬送するようにしている。
【0018】
また、図2または図3に示す如く、前記グレンタンク13前方の前記運転室14下部には、コンバイン200の走行や各部駆動の動力源となるエンジン80が横設されている。該エンジン80の側方にはカウンタケース88が横設され、該カウンタケース88等を介して前記刈取部3や脱穀部20等の各部作業要素に動力が伝達されるようにしている。
【0019】
次に、コンバイン200の操縦部30について、図4乃至図6を用いて説明をする。尚、操縦部30の構成は、実施例1および実施例2において共通である。
図4に示す如く、オペレータが座る運転座席37の前方にはハンドルコラム39が立設され、該ハンドルコラム39上面中央部から上方へ向けて図示しないハンドル軸が突出し、該ハンドル軸の上端部に操向操作手段である操向ハンドル35が取り付けられている。また、ハンドルコラム39上面前端部から上方へ向けて表示装置本体31を支持する脚部31aが突出し、該表示装置本体31は該脚部31a上端から後方(運転座席37側)へ向けて延出され、該表示装置本体31の上面は水平状態からやや後方下方へ傾斜した状態に配置されている。この表示装置本体31の上面に表示パネル36が取り付けられ、運転座席37に座ったオペレータが見易い角度に配置されている。但し、表示パネル36の取付位置は見易い位置であればよく、ハンドルコラム上等であってもよく限定するものではない。
【0020】
図5に示す如く、表示手段である表示パネル36は、例えば、表示装置本体31上面の大部分を占める大画面の液晶パネルで構成されており、該表示パネル36を備えた表示装置本体31は、平面視で、操向ハンドル35のループ状の把手部35a内における中央に位置するように配置されている。この表示装置本体31は、脚部31aを介してハンドルコラム39のみに固定されていて、操向ハンドル35には連結していない構成としているので、操向ハンドル35を回動させても、表示装置本体31は動かないようになっている。
【0021】
表示装置本体31上面において、表示パネル36の前方には、コンバイン全体の電気系統の電源を入り切り操作する電源スイッチの入り操作時等に点灯する作業ランプ51が配置され、表示パネル36の左右両側方には、画面表示の切替え等のための入力手段となるスイッチ54・55・56・57が左右各2つずつ設けられている。これら各スイッチ54・55・56・57は、スイッチの一回の押下により一つのONパルス信号が出るいわゆるプッシュスイッチで、ノンロックタイプのものであり、それぞれに複数の役割を有する多機能スイッチとなっている。
【0022】
操向ハンドル35の把手部35aの左右対称位置には、内方側に膨出した左右の内膨らみ部35b・35cが形成されており、この左右の内膨らみ部35b・35cには、機体水平制御用や刈取昇降・扱深さ制御用などの4方向操作スイッチ52・53がそれぞれ設けられている。この左右の4方向操作スイッチ52・53は、オペレータが操向ハンドル35の把手部35aを握った状態で直進及び旋回操作いずれにおいても、親指等で操作可能に構成されており、操作性の向上が図られている。
【0023】
図4に示す如く、運転座席37の一側方(本実施例では進行方向左方)には、長手方向を前後方向に向けたサイドコラム38が配置されており、このサイドコラム38の前部には、車速を無段階に変速させる主変速レバー32と、有段で変速する副変速レバー33が配置され、サイドコラム38の後部には、作業動力を入切する作業(脱穀・刈取)クラッチレバー34が配置されて、これらのレバー32・33・34は前後回動可能に構成されている。
【0024】
サイドコラム38の前部において、図6に示す如く、主変速レバー32と副変速レバー33とは左右に並置されていて、主変速手段である主変速レバー32は副変速手段である副変速レバー33の内側(運転座席37側)に配置されている。
作業クラッチレバー34は、前記主変速レバー32および副変速レバー33の後部に立設されており、平面視「L」字状のガイド溝に沿って移動可能に構成され、該ガイド溝の後端外側位置に作業クラッチレバー34が位置するときには、刈取スイッチ及び脱穀スイッチが切り作動して刈取クラッチ22「切」かつ脱穀クラッチ23「切」の状態となり、後端内側位置では脱穀スイッチのみが入り作動して刈取クラッチ22「切」かつ脱穀クラッチ23「入」の状態となり、ガイド溝の前端位置では脱穀スイッチとともに刈取スイッチが入り作動して刈取クラッチ22「入」かつ脱穀クラッチ23「入」の状態となるように構成されている。なお、脱穀クラッチ23及び刈取クラッチ22はテンションプーリをモータやシリンダ等のアクチュエータにより回動して、スイッチのON/OFFにより「入」「切」できるようにしている。また、作業クラッチレバー34のレバーガイドはL型に限定するものではなく、3段階に操作できるものであればよい。
【0025】
次に、主変速レバー32について、図4および図6、図7を用いて説明をする。尚、主変速レバー32の構成は、実施例1と実施例2において相違があるため、実施例ごとに説明をする。
(実施例1)
【0026】
図4および図6に示す如く、主変速レバー32は、主変速とともに複数の機能が操作できる多機能オールマイティシフトレバーで構成されており、前後回動可能に立設されたレバーロッド49の上端部にオペレータが一方の手(本実施の形態では左手)で握って操作するためのグリップ部40が取り付けられている。この操作部となるグリップ部40の上半部は前方上方へ傾斜した状態に形成されていて、運転座席37に座ったオペレータが見易い角度に配置されており、該グリップ部40の上半部上面40aには、4方向操作スイッチで構成された機体傾斜スイッチ41、刈取速度変速スイッチ42、扱き深さスイッチ43、刈取部昇降スイッチ44、刈取部オートリフトスイッチ45、刈取部オートセットスイッチ46、副変速スイッチ47が配置されている。
【0027】
機体傾斜スイッチ41は、上下方向に操作することで、クローラ式走行装置1・1に対するコンバインの機体の高さを変更して昇降でき、左右方向に操作することで、左右のクローラに対して機体を昇降することで機体を任意に左右傾倒可能とする4方向操作スイッチである。
刈取速度変速スイッチ42はコンバインの機体前端部に設けられた刈取部の回転速度を切り換える押しボタンスイッチである。
扱き深さスイッチ43は、刈取穀稈の穂先の位置を検知して、穀稈を扱胴における適正な位置に搬送するための縦搬送装置を回動するスイッチである。
刈取部昇降スイッチ44は上下のボタンを押すことで刈取部を昇降させるように構成され、該上下のボタンを軽く押すと刈取部がゆっくりと昇降し、該上下のボタンを深く押すと刈取部が速やかに昇降する2段スイッチで構成されている。
刈取部オートリフトスイッチ45は、刈り終わりに押すだけで、刈取部を設定高さまで上昇させる。
刈取部オートセットスイッチ46は、刈り始めに押すだけで、刈取部を自動制御状態にして、刈り始めの操作がワンタッチで簡単に行えるように構成されている。
副変速スイッチ47は、押される度にコントローラ70へ操作がなされた旨の操作信号を出力して、該コントローラ70から後述する走行アクチュエータ71へ作動信号が出力し、該走行アクチュエータ71では作動信号を受信する度に、該走行アクチュエータ71の作動位置が「高速」位置と「低速」位置との間で順繰りに切り換えられる。そして、第一走行油圧モータ92の可動斜板92bの角度を変更して、低速の作業速度と高速の走行速度に変速可能としている。但し、該副変速スイッチ47はトグルスイッチやシーソースイッチ等でも可能であり限定するものではない。
(実施例2)
【0028】
図7に示す如く、実施例2においては、主変速レバー32上に前記副変速スイッチ47を具備せず、副変速状態の切替は、副変速レバー33の操作により行う構成としている。
【0029】
以上のような構成で、オペレータは右手で操向ハンドル35を握って操作し、左手で主変速レバー32のグリップ部40を握って主変速を行うことができるとともに、該グリップ部40を握った左手の親指で、これらのスイッチ41〜47(実施例2においてはスイッチ41〜46)の操作が可能に構成されて、操作性の向上が図られている。
以上が、主変速レバー32についての説明である。
【0030】
次に、エンジン80の出力伝達系統について、図8を用いて説明をする。尚、エンジン80の出力伝達系統は、実施例1および実施例2において共通である。
図8に示す如く、エンジン80は、前側及び後側に2系統の出力軸80a・80bを有している。前側の出力軸80aは、ミッションケース100に連結されている。該ミッションケース100は、前記クローラ式走行装置1を駆動する1対の油圧走行ポンプ91及び油圧走行モータ92を有する走行主変速用の走行用HST59を備え、また1対の油圧旋回ポンプ95及び油圧旋回モータ96を設けて旋回用の旋回用HST99とを備えている。
つまり、前記エンジン80の出力軸80aにミッションケース100の入力軸101を介して連結させて前記各ポンプ91・95を駆動するように構成している。
【0031】
また、図8に示す如く、前記後側の出力軸80bは、作業出力プーリ102およびテンションクラッチ136を介してVベルト104によりカウンタケース88に連結されている。
該カウンタケース88は、前記脱穀部20を駆動する扱胴入力軸144と、前記フィードチェーン9を駆動するフィードチェーン出力軸117と、揺動選別機構等を駆動する定速軸149と、前記刈取部3を駆動する刈取伝動軸160の各軸を備えている。
つまり、エンジン80の出力軸80bにカウンタケース88の扱胴入力軸144を介して前記各部を駆動するように構成している。
また、前記後側の出力軸80bには、作業出力プーリ102およびVベルト121を介して排出コンベア16が連結されており、グレンタンク13内の穀粒を排出できるように構成している。
以上が、エンジン80の出力伝達系統についての説明である。
【0032】
次に、前記ミッションケース100の構造について、図9を用いて詳述する。尚、ミッションケース100の構造は、実施例1と実施例2において相違があるため、実施例ごとに説明をする。
(実施例1)
【0033】
図9に示す如く、前記入力軸101にファン軸122を連結させ、該ファン軸122によってエンジン80のラジエータ用冷却ファン122aを駆動させると共に、前記油圧走行及び油圧旋回ポンプ91・95の各ポンプ入力軸91a・95aに前記ファン軸122を連結させ、各ポンプ91・95に入力軸101を連結させると共に、油圧走行ポンプ91のポンプ入力軸91aと、油圧走行モータ92・93のモータ出力軸93aを、定速クラッチ123を介して連結させる定速軸124を設け、定速クラッチ123を「入」にしたとき、定速軸124を介してポンプ入力軸91aとモータ出力軸93aをギヤ連結させ、走行用HST59を介することなく、ポンプ入力軸91aの回転を副変速機構85に伝え、エンジン80の定速回転によって左右のクローラ式走行装置1・1を駆動させ、略一定の車速で走行して収穫作業などを行わせる。なお、ポンプ入力軸95a上にチャージポンプ74を設けて駆動するように構成している。
【0034】
前記油圧走行モータ92・93のモータ出力軸93aに、副変速機構85及び差動機構86を介して左右のクローラ式走行装置1・1の各駆動輪81・81を連動連結させるもので、前記差動機構86は左右対称の1対の遊星歯車機構87・87を有し、各遊星歯車機構87は1つのサンギヤ87aと、該サンギヤ87aの外周で噛合う3つのプラネタリギヤ87bと、これらプラネタリギヤ87bに噛合うリングギヤ87cなどで形成している。
【0035】
前記プラネタリギヤ87bは、サンギヤ87aの遊転軸87dと同軸線上の車軸82のキャリヤ87eにそれぞれ回転自在に軸支させ、左右のサンギヤ87a・87aを挾んで左右のキャリヤ87e・87eを対向配置させると共に、前記リングギヤ87cは各プラネタリギヤ87bに噛み合う内歯を有して車軸82に回転自在に軸支させ、車軸82を延設して駆動輪81を軸支させている。
【0036】
また、走行用HST59は、油圧走行ポンプ91の後述する可動斜板91bの角度を変更することにより油圧走行モータ92・93の正逆回転と回転数の制御を行うもので、該油圧走行モータ92・93の回転を、モータ出力軸93aと副変速機構85の低速及び高速ギヤ85a・85bとブレーキ軸127と分岐軸128を介して、左右のリングギヤ87c・87cに伝達して左右のキャリア87e・87eを回転させるように構成している。前記副変速機構85は前記副変速レバー33を回動することによりスライダーを摺動させて低速ギヤ85aまたは高速ギヤ85bと噛合させることにより高低変速を可能としている。また、前記ブレーキ軸127に駐車ブレーキ127aを設けると共に、刈取部3に回転力を伝達する刈取駆動プーリ129を前記モータ出力軸93aに設け、刈取部3を車速同調速度で駆動させるように構成している。
【0037】
つまり、前記分岐軸128を介しリングギヤ87cに伝達された油圧走行モータ92・93の駆動力を、左右の遊星歯車機構87・87を介して左右のキャリヤ87e・87eに伝達させると共に、該左右のキャリヤ87e・87eに伝達された回転を左右の駆動輪81・81にそれぞれ伝え、左右のクローラ式走行装置1・1を同一方向に同一速度で駆動するように構成している。
【0038】
また、旋回用HST99は、油圧旋回ポンプ95の後述する可動斜板95bの角度を変更することにより油圧旋回モータ96の正逆回転と回転数の制御を行うもので、操向出力ブレーキ130を設けるモータ出力軸96cと、操向出力クラッチ116を設けるクラッチ軸118と、前記左右のサンギヤ87a・87aに常時噛合させる左右の入力ギヤ133a・133bを設け、油圧旋回モータ96の前記モータ出力軸96c及び操向出力クラッチ116を介してクラッチ軸118を連結させ、該クラッチ軸118に正転ギヤ174及び逆転ギヤ175を介して左右の入力ギヤ133a・133bを連結させる。そして、(図9における)右側のサンギヤ87aに正転ギヤ174を介して油圧旋回モータ96の回転を伝え、また(図9における)左側のサンギヤ87aに逆転ギヤ175を介して油圧旋回モータ96の回転を伝え、該油圧旋回モータ96が正転(逆転)した時には、左右同一回転数で、左サンギヤ87aを逆転(正転)させ、かつ右サンギヤ87aを正転(逆転)させ、左右のクローラ式走行装置1・1が互いに逆方向に同一速度で駆動するように構成している。
【0039】
このようにして、油圧旋回モータ96を停止させて左右のサンギヤ87a・87aを静止固定させた状態で、油圧走行モータ92・93を駆動すると、該油圧走行モータ92・93の回転は左右のリングギヤ87c・87cに同一回転数で伝達され、左右の遊星歯車機構87・87のキャリヤ87e・87eを介して左右のクローラ式走行装置1・1が左右同一回転方向かつ同一回転数で駆動され、機体の前後方向直進走行が行われる。一方、油圧走行モータ92・93を停止させて左右のリングギヤ87c・87cを静止固定させた状態で、油圧旋回モータ96を正逆回転駆動すると、(図9中における)左側の遊星歯車機構87が正あるいは逆回転し、また(図9中における)右側の遊星歯車機構87が逆あるいは正回転し、左右のクローラ式走行装置1・1を互いに逆方向に駆動し、機体を左あるいは右に旋回させる。また、油圧走行モータ92・93を駆動させながら、油圧旋回モータ96を駆動することにより、機体が左右に旋回して進路が修正されるように構成している。機体の旋回半径は油圧旋回モータ96の出力回転数によって決定される。
(実施例2)
【0040】
図10に示す如く、実施例2においては、前述の如く副変速スイッチ47を具備しない構成としているため、前記副変速レバー33を回動することにより副変速機構85のスライダーを摺動させて低速ギヤ85a、中速ギヤ85bおよび高速ギヤ85cと噛合させることにより3段階の変速を可能としている。尚、走行変速はHSTを用いることなく、歯車噛合式や油圧クラッチ式等でも可能であり、旋回制御もHSTを用いることなく、サイドクラッチの断接及びブレーキの作動により可能であり、限定するものではない。
以上が、ミッションケース100の構造についての説明である。
【0041】
次に、前記カウンタケース88の構造について、図11を用いて詳述する。尚、カウンタケース88の構造は、実施例1および実施例2において共通である。
【0042】
図11に示す如く、前記エンジン80の後側の出力軸80bに作業出力プーリ102を設けると共に、エンジン80の左側で脱穀部20前側の機体フレーム2上面にカウンタケース88を設け、入力プーリ131、車速同調プーリ90、脱穀プーリ133、刈取プーリ134、選別プーリ135をカウンタケース88に軸支させ、該カウンタケース88後側の前記入力プーリ131を作業出力プーリ102にテンションクラッチ136を介してVベルト104により連結させ、エンジン80の駆動力をカウンタケース88に伝えるように構成している。
また、アイドルプーリ105を介してミッションケース100の刈取駆動プーリ129に前記カウンタケース88の車速同調プーリ132をVベルト137により連結させると共に、機体フレーム2の前側上面に刈取入力ケース138を回転自在に軸支させ、該刈取入力ケース138に刈取フレーム12を連結させて刈取入力ケース138回りに刈取部3を回転させて昇降させるもので、前記刈取入力ケース138左側に刈取入力軸139を介して刈取入力プーリ140を軸支させ、前記カウンタケース88左側の刈取プーリ134を刈取入力プーリ140にVベルト145により連結させ、刈取部3の各部に駆動力を伝えるように構成している。
【0043】
また、前記扱胴19の駆動入力プーリ147にカウンタケース88前側の脱穀プーリ133をVベルト172により連結させ、扱胴19下側の図示しない選別唐箕及び揺動選別機構に選別プーリ135から駆動力を伝え、脱穀部20の各部を駆動すると共に、前記カウンタケース88の左側面にフィードチェーン出力軸117を設け、前記フィードチェーン9の駆動スプロケット9aに該フィードチェーン出力軸117から動力を伝える。また、前記グレンタンク13の前側に排出駆動プーリ141を設け、該排出駆動プーリ141を前記作業出力プーリ102に排出テンションクラッチ142を介してVベルト143により連結させ、排出コンベア16にエンジン80の出力を伝えて、排出オーガ15によりグレンタンク13に貯溜されている穀粒を排出させる構成としている。
【0044】
さらに、前記カウンタケース88に扱胴入力軸144を軸支させ、該扱胴入力軸144を前後方向に延設させ、カウンタケース88前面外側の該扱胴入力軸144前側に脱穀プーリ133を設け、カウンタケース88の後面外側の前記扱胴入力軸144後側に入力プーリ131を設け、扱胴入力軸144にエンジン80の一定回転動力を入力させて定速回転させる。また、前記カウンタケース88の右側に同調入力軸146を軸支させ、カウンタケース88の右外側の前記同調入力軸146右側に車速同調プーリ132を設け、アイドルプーリ105を介して刈取駆動プーリ129と車速同調プーリ132間にVベルト137を緊張させ、ミッションケース100からカウンタケース88に車速同調動力を入力させる構成としている。
【0045】
さらに、前記扱胴入力軸144に右側をベベルギヤ148により連結させるカウンタ軸または選別入力軸である定速軸149と、該定速軸149の前側に略平行に設ける車速同調軸155とを、カウンタケース88に軸支させると共に、刈取変速機構150を形成する低速ギヤ151及び高速ギヤ152を前記各軸146・149の間に設け、低速及び中立及び高速の各刈取変速を行う刈取変速スライダ153によって前記各ギヤ151・152を前記車速同調軸155に択一的に係合させ、刈取変速を行う構成としている。
また、前記各ギヤ151・152に同調入力軸146の車速同調回転力を伝えるワンウェイクラッチ154を同調入力軸146上に設け、車速同調プーリ132からの動力を前記ワンウェイクラッチ154によって伝える前記ギヤ151・152を介して車速同調軸155を回転させるように構成する。
【0046】
さらに、刈取定速機構156を形成する流し込みギヤ157と高速カットギヤ158を前記各軸149・155の間に設け、刈取部3を流し込み駆動または高速カット駆動させる切換スライダ159によって前記各軸149・155に前記各ギヤ157・158を択一的に係合させ、刈取部3を流し込み駆動して走行状態に関係なく刈取部3の穀稈をフィードチェーン9側に搬送させる一方、刈取部3を高速カット駆動して車速同調の最高速よりも早い一定回転速度で刈取部3を駆動して倒伏した穀稈を刈取るように構成している。
尚、前記刈取変速スライダ153を作動させる油圧刈取変速シリンダ173と、前記切換スライダ159を作動させる油圧刈取定速シリンダ173が、前記チャージポンプ74に並列に油圧接続する構成としている。
【0047】
また、前記カウンタケース88の左側で下部後側に定速軸149の左側端を突出させ、該定速軸149左側端部に選別プーリ135を軸支させる。さらに、カウンタケース88の左側で下部前側に刈取伝動軸160を軸支させ、該刈取伝動軸160右側を車速同調軸155にトルクリミッタ161を介して連結させ、カウンタケース88左側に突出させる前記刈取伝動軸160の左側端部に刈取プーリ134を軸支させると共に、前記刈取入力軸139に刈取駆動軸171をギヤ162により連結させ、該刈取駆動軸171に刈取入力プーリ140を軸支させるように構成している。
【0048】
さらに、前記カウンタケース88の左側上部に前記フィードチェーン出力軸117を軸支させ、フィードチェーンクラッチ163を設けるフィードチェーン駆動軸164に前記フィードチェーン出力軸117をチェーン165により連結させると共に、定速軸149の回転を車速同調軸155の回転数変化によって変速して伝えるフィードチェーン変速機構168を設け、サンギヤ166aとプラネタリギヤ166bとリングギヤ166cを備える遊星歯車機構166によって無段変速可能に前記遊星歯車機構166を形成するもので、定速軸149にサンギヤ166aを係合軸支させ、定速軸149に遊転支持させるリングギヤ166cを車速同調軸155にギヤ167により連結させると共に、プラネタリギヤ166bを遊転支持させる軸受体169を定速軸149に遊転支持させ、前記フィードチェーンクラッチ163を介して前記フィードチェーン駆動軸164に軸受体169をギヤ170により連結させ、穀稈の搬送に必要な最低回転を確保しつつ、低い一定回転から高回転にフィードチェーン9の回転速度を車速と同調させて変更可能に構成している。
以上が、カウンタケース88の構造についての説明である。
【0049】
次に、走行用HST59について、図12(a)・(b)を用いて説明をする。尚、走行用HST59の構成は、実施例1および実施例2において相違しているため、実施例ごとに説明をする。
(実施例1)
【0050】
図12(a)に示す如く、実施例1における走行用HST59は、エンジン80からの動力で駆動する可変容積型の油圧走行ポンプ91と、該油圧走行ポンプ91から供給された作動油によって駆動される可変容積型の第一油圧走行モータ92と固定容積型の第二油圧走行モータ93とを備え、エンジン80からの出力軸80aはカウンタケース88、動力伝達機構89を介して油圧走行ポンプ91のポンプ入力軸91aへ動力を伝達するように構成している。油圧走行ポンプ91の可動斜板91bはリンク機構を介して前記主変速レバー32と連結している。また、第一油圧走行モータ92の可動斜板92bはリンク機構を介して走行アクチュエータ71と連結し、副変速装置180を構成している。
【0051】
油圧走行ポンプ91は油圧閉回路94により第一油圧走行モータ92及び第二油圧走行モータ93に接続されており、該油圧走行ポンプ91の吐出する作動油により第一油圧走行モータ92及び第二油圧走行モータ93が駆動されるように構成している。この第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93は動力伝達機構83により接続されており、第一油圧走行モータ92の回転に対して第二油圧走行モータ93が一定の比率で回転する構成になっている。該動力伝達機構83はギヤ等により構成することも可能であるが、第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93の出力軸を直接接続することもできる。第二油圧走行モータ93にはモータ出力軸93aが接続されており、第一油圧走行モータ92及び第二油圧走行モータ93により発生する駆動力がモータ出力軸93aに伝達されるように構成している。
【0052】
上記の構成において、動力伝達機構83が第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93を1対1の比率で回転するように接続している場合には、油圧走行ポンプ91の作動油の吐出量と第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93の作動油の吸入量比によりモータ出力軸93aにおける回転出力が決定される。
【0053】
すなわち、第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93の吸入量の和が油圧走行ポンプ91の作動油の吐出量よりも少ない場合にはモータ出力軸93aの回転数が大きくなり、第一油圧走行モータ92と第二油圧走行モータ93の吸入量の和が油圧走行ポンプ91の作動油の吐出量よりも多い場合にはモータ出力軸93aの回転数が小さくなる。
【0054】
そして、走行用HST59の第二油圧走行モータ93からのモータ出力軸93aは動力伝達機構84、差動機構86を介して駆動輪81・81の車軸82・82を駆動し、該差動機構86には動力伝達機構97を介して旋回用HST99からも動力が伝達されるように構成されている。この旋回用HST99は、エンジン80からの動力で駆動する可変容積型の油圧旋回ポンプ95と、該油圧旋回ポンプから供給された作動油によって駆動される可変容積型の油圧旋回モータ96とを備え、エンジン80からの出力軸80aは動力伝達機構98を介して前記油圧旋回ポンプ95のポンプ入力軸99aへ動力を伝達するように構成している。
(実施例2)
【0055】
図12(b)に示す如く、実施例2においては、可変容積型の第一油圧走行モータ92は具備せず、可変容積型の油圧走行ポンプ91と固定容積型の第二油圧走行モータ93の組合せによる構成としている点で実施例1と相違している。
以上が、走行用HST59についての説明である。
【0056】
次に、主変速および副変速に係る変速操作について、図7、図11乃至図13を用いて説明をする。尚、主変速および副変速に係る変速操作は、実施例1および実施例2において相違しているため、実施例ごとに説明をする。
(実施例1)
【0057】
図12(a)に示す如く、油圧走行ポンプ91の可動斜板91bの角度を変更する操作レバーと前記主変速レバー32とはリンク機構を介して連結されており、該油圧走行ポンプ91の可動斜板91bの角度は該主変速レバー32の操作により変更でき、油圧走行ポンプ91からの作動油の吐出量を調節できるように構成されている。この油圧走行ポンプ91の可動斜板91bは主変速レバー32の操作量に応じて回動し、油圧走行ポンプ91からの作動油の吐出量を無段階に変更できるとともに、吐出方向も変更できて、前後進と主変速が同時に行えるように構成されている。
【0058】
また、第一油圧走行モータ92の可動斜板92bはリンク機構を介して走行アクチュエータ71と連結され副変速装置180を構成しており、該走行アクチュエータ71は制御手段となるコントローラ70を介して前記副変速スイッチ47と接続されている。該第一油圧走行モータ92の可動斜板92bの角度は主変速レバー32に設けた副変速スイッチ47の操作により高低2段階に変更できるように構成されて、第一油圧走行モータ92への作動油の吸込量を調節できるように構成されている。但し、副変速装置180は油圧モータで変速する構成に限定するものではなく、前記副変速機構85の歯車の選択数を多くして変速したり、また、クラッチの断接で変速したりすることが可能であり、その構成は限定するものではない。この場合、副変速レバー33の変速位置をセンサ等で検知し、該副変速レバー33はアクチュエータで回動して変速可能に構成する。
【0059】
このような構成で、主変速レバー32を操作することにより油圧走行ポンプ91の容量を制御し、副変速スイッチ47を操作することにより第一油圧走行モータ92の容量を変化させ副変速装置180を制御して、変速操作を行うことができるようになっている。これにより、高回転に対応可能であり、変速比の範囲の広い走行用HST59を構成することができる。
【0060】
図13に示す如く、前記走行アクチュエータ71は、斜板操作ピストン72と、油路切換電磁弁73と、により構成され、該油路切換電磁弁73にはチャージポンプ74より作動油が供給され、該油路切換電磁弁73を摺動することにより、斜板操作ピストン72を操作する構成になっている。該斜板操作ピストン72は第一油圧走行モータ92の可動斜板92bの角度を変更する第2の操作軸にリンク機構を介して連結されており、該斜板操作ピストン72の摺動により、第一油圧走行モータ92の可動斜板92bの角度が制御されるように構成されている。この油路切換電磁弁73には二通りの油路が設けられており、第一油圧走行モータ92の可動斜板92bの傾斜角を2段階に制御する構成になっている。この可動斜板92bの回動位置、即ち、副変速の高低は検知手段となるポテンショメータ等の位置センサ64で検知され、コントローラ70と接続してその検知信号を送信する構成としている。
(実施例2)
【0061】
図12(b)に示す如く、前述の通り、実施例2においては可変容積型の第一油圧走行モータ92は具備せず、可変容積型の油圧走行ポンプ91と固定容積型の第二油圧走行モータ93の組合せによる構成としている。
【0062】
このような構成で、主変速レバー32を操作することにより油圧走行ポンプ91の容量を制御し、主変速操作を行うことができる構成としている。
【0063】
また図12(b)に示す如く、実施例2においては、走行用HST59には副変速機能を具備しない構成としている。
この場合、図7に示す如く、副変速機能は副変速レバー33を回動して、「標準」、「高速(走行)」、「低速(作業)」の3段階に設定されたレバー位置を選択することにより、リンク機構で連結したスライダーを摺動させ、そして、図11に示す如く、前記スライダーを低速ギヤ85a、中速ギヤ85bまたは高速ギヤ85cと噛合させることによってモードを切り換えて、3段階に変速可能な構成としている。
以上が、主変速および副変速に係る変速操作についての説明である。
【0064】
次に、コンバイン200の制御構成について、図14(a)・(b)乃至図18を用いて説明をする。尚、コンバイン200の制御構成は、実施例1および実施例2において相違しているため、実施例ごとに説明をする。
(実施例1)
【0065】
図14(a)に示すように、コンバイン200の制御手段であるコントローラ70には、コンバイン200の各種情報を表示する前記表示パネル36と、警報ブザー58と、前記可動斜板92bの回動位置または回動角を検知する手段となる位置センサ64と、作業クラッチレバー34の操作位置を検出する手段となるクラッチ位置センサ179と、刈取クラッチ22を作動させる刈取アクチュエータ177と、脱穀クラッチ23を作動させる脱穀アクチュエータ178と、可動斜板92bを回動する走行アクチュエータ71が接続されている。前記位置センサ64は角度を検出するロータリエンコーダやポテンショメータやスイッチ等で構成することができ、前記各アクチュエータ71・177・178はモータやシリンダやソレノイド等で構成することができる。
また前述した通り、前記副変速スイッチ47により変速される副変速装置180は走行アクチュエータ71がリンク機構を介して前記第一油圧走行モータ92の可動斜板92bの角度を「作業」位置と「走行」位置との間で切り換えて速比を切り換えるように構成されている。但し、本実施例では2段の変速としているが、3段以上設けることも可能である。
【0066】
この「高速(走行)」モード又は「低速(作業)」モードの副変速装置180の変速状態は、位置センサ64により前記可動斜板92bの位置(または副変速操作位置)が検出されることで検知され、前記コントローラ70にフィードバックされる。そして、操向ハンドル35の中央に配置されている表示パネル36上に、この副変速装置180の変速状態が略全画面に渡って大きく表示されて、運転座席37に座るオペレータが一目瞭然に見えるように構成されている。この構成では、現在の副変速装置180の変速状態を確実に把握することができて、現在の副変速装置180の変速状態に反して誤操作を行うこともなくなり、安全性が向上する。
【0067】
また、前述の通りコントローラ70には、副変速スイッチ47を「高速(走行)」モードに切り換えた状態のままで、刈取作業を行おうとして前記作業クラッチレバー34を平面視「L」字状ガイド溝の前端位置へ操作して刈取スイッチが「入」へと切り換えられた場合、変速制御プログラム77によりその切り換えを防止するように構成している。
【0068】
図17に示す如く、前記変速制御プログラム77は、副変速装置180を構成する走行油圧モータ92の可動斜板92bの角度を位置センサ64により検知して、副変速装置180の変速状態を判断する(S17−1)。そして、副変速装置180の変速状態が「高速(走行)」モードに切り換えられた状態であれば、作業クラッチレバー34を「入」側に回動しても(S17−2)、刈取クラッチ22を作動させる刈取アクチュエータ177は作動されず(S17−4)、刈取クラッチ22は「入」とはならず(S17−5)、刈取部3を駆動しないようにしている。また、それと同時に走行アクチュエータ71を解除し(S17−6)、走行を停止させる(S17−7)ようにしている。これにより、意に反して刈取部3が回転しないままに走行してしまい、稲を踏み倒してしまうことが防止される。そして、表示パネル36上にその旨が略全画面に渡って大きく警告表示(図15参照)されるととも警報ブザー58が鳴動し警報を発するように構成されており(S17−3)、この表示は運転座席37に座るオペレータがはっきりと視認することができて、視覚および聴覚を通じてオペレータに刈取部3が回転しない理由が報知され、副変速装置を傷めないようにするとともに、作業負荷を適切にするように構成している。この警告表示は表示パネル36上に短時間表示された後、現在の副変速装置180の変速状態を示す画面(図16参照)に切り換わるように構成されている。
また、副変速装置180が走行状態のとき、作業クラッチレバー33を脱穀「入」位置から刈取「入」側に回動できないように構成することも可能である。この場合、作業クラッチレバー33の刈取操作部に牽制機構を設ける。該牽制機構はレバーガイドまたは作業クラッチレバーの回動部にシリンダまたはソレノイド等のアクチュエータを配置して、副変速ソレノイドが走行状態となると、アクチュエータを作動させてレバーの回動軌跡側にロッド等を突出させて、作業クラッチレバーが脱穀位置から刈取位置に回動できないようにするものである。
また、表示パネル36上に警告が表示されるのと同時に、警報装置として警報ブザー58が鳴動し、確実に警告がオペレータに認知されるように構成している。但し、警報装置はブザーに限定するものではなく、ランプやスピーカ等であってもよい。
すなわち、走行状態を優先とし、走行中には刈取作業に切り換えられないようにコントローラ70のプログラムを構成している。該プログラムはコントローラ70のROM等の記憶装置に記憶されている。
(実施例2)
【0069】
実施例2においては、副変速スイッチ47および走行アクチュエータ71等を具備せず、副変速レバー33がリンク機構を介して副変速機構85の各ギヤ85a・85b・85cに接続されている点で実施例1とは相違している。そして、その他の構成は実施例1と共通である。
また前述した通り、副変速機構85の変速状態の切換は、副変速レバー33を「低速(作業)」、「標準」、「高速(走行)」位置で切り換えて速比を切り換える構成としている。但し、本実施例においては3段の変速としているが、4段以上設けることも可能である。
【0070】
図14(b)に示す如く、この「高速(走行)」モード又は「低速(作業)」モードの副変速機構85の変速状態は、位置センサ64により前記副変速レバー33の位置が検出されることで検知され、前記コントローラ70にフィードバックされる。そして、操向ハンドル35の中央に配置されている表示パネル36上に、この副変速機構85の変速状態が略全画面に渡って大きく表示されて、運転座席37に座るオペレータが一目瞭然に見えるように構成されている。この構成では、現在の副変速機構85の変速状態を確実に把握することができて、現在の副変速機構85の変速状態に反して誤操作を行うこともなくなり、安全性が向上する。
【0071】
また、前述の通りコントローラ70には、副変速レバー33を「高速(走行)」位置に切り換えた状態(走行モード)のままで、刈取作業を行おうとして前記作業クラッチレバー34を平面視「L」字状ガイド溝の前端位置へ操作して刈取スイッチが「入」へと切り換えられた場合、その切り換えを防止する切換防止手段としての変速制御手段77を備えている。
【0072】
図18に示す如く、実施例1と同様に変速制御手段77は、副変速レバー33の位置を位置センサ64により検知して、副変速機構85の変速状態を判断する(S18−1)。そして、副変速機構85の変速状態が「高速」モードに切り換えられた状態(すなわち、副変速レバー33が「高速(走行)」位置にあるとき)では、作業クラッチレバー34を「入」側に回動した場合であっても(S18−2)、刈取クラッチ22を作動させる刈取アクチュエータ177は作動されず(S18−4)、刈取クラッチ22は「入」とはならず(S18−5)、刈取部3を駆動しないようにすると同時に、エンジン80を停止する(S18−6)ことにより走行を停止させ(S18−7)、さらに表示パネル36上にその旨が略全画面に渡って大きく警告表示(図15参照)されるとともに警報ブザー58が鳴動し警報を発するように構成されている(S18−3)。
また、図19に示す如く、刈取クラッチ22を作動させる刈取アクチュエータ177が作動されず(S19−4)、刈取クラッチ22が「入」とはならないときには(S19−5)、走行を停止させる(S18−7)ように構成することもできる。
以上が、コンバイン200の制御構成についての説明である。
【0073】
以上の説明に示す如く、エンジン80からの動力を高速(走行)モードまたは低速(作業)モードに切り換える副変速装置180と、該副変速装置180の変速位置を検知する位置センサ64と、警報ブザー58と、これらの入出力系機器を制御するためのコントローラ70と、を具備するコンバイン200において、前記コントローラ70が、前記位置センサ64が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、刈取部3を作動させないように制御する構成としている。
これにより、走行変速状態で刈取作業ができなくなり、搬送部や脱穀部や選別部等で詰まりが発生することがなく、未処理物(穀粒)の圃場への排出をなくすことができるのである。また、高負荷のまま作業することがなく、機体等を傷めることがないのである。
【0074】
また、前記コントローラ70が、前記位置センサ64が前記高速(走行)モードの変速位置を検知し、刈取部3を作動させないように制御したときには、走行またはエンジン80を停止するように制御する構成としている。
これにより、高速(走行)モード中に刈取部を回転させようとした場合には意に反して刈取部が回転しないが、走行しないため、稲を踏み倒すことが防止できるのである。
【0075】
また、前記コントローラ70に操縦部30に設ける表示パネル36を接続し、前記コントローラ70が、前記位置センサ64が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、前記表示パネル36に副変速装置180が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するように制御する構成としている。
これにより、走行モードで刈取クラッチ22を「入」側に操作したときに、刈取部3が作動しないが、このとき故障や異常であるかが表示パネル36により表示されて、オペレータは容易に認識することができるのである。
【0076】
また、前記コントローラ70に警報ブザー58を接続し、前記表示パネル36に副変速装置180が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するときには、前記警報ブザー58により警報を発するように制御する構成としている。
これにより、走行モードで刈取クラッチ22を「入」側に操作したときに警報が発せられるので、オペレータに操作間違いであることを喚起し、刈取部3が回転しない理由の理解を促すことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した右側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく左側面図。
【図4】コンバインの運転座席廻りの構成を示した斜視図。
【図5】コンバインの操向ハンドル部分の詳細を示した平面図。
【図6】実施例1に係る主変速レバー及び副変速レバーの詳細を示した斜視図。
【図7】実施例2に係る主変速レバー及び副変速レバーの詳細を示した斜視図。
【図8】エンジンの出力伝達経路を示したスケルトン図。
【図9】実施例1に係るミッションケース部の詳細を示したスケルトン図。
【図10】実施例2に係るミッションケース部の詳細を示したスケルトン図。
【図11】カウンタケース部の詳細を示したスケルトン図。
【図12】各実施例に係る走行用HSTの構成を示した模式図。(a)実施例1の場合、(b)実施例2の場合。
【図13】走行用HSTの油圧回路構成を示した回路図。
【図14】各実施例に係るコンバインの制御機器構成を示した模式図。(a)実施例2の場合、(b)実施例2の場合。
【図15】表示パネルの警告表示例を示す図。
【図16】表示パネルの警報発報中の通常表示例を示す図。
【図17】実施例1における変速制御プログラムの制御フロー図。
【図18】実施例2における変速制御プログラム(1)の制御フロー図。
【図19】実施例2における変速制御プログラム(2)の制御フロー図。
【符号の説明】
【0078】
3 刈取部
30 操縦部
36 表示パネル
58 警報ブザー
64 位置センサ
70 コントローラ
80 エンジン
180 副変速装置
200 コンバイン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力を、高速(走行)モードまたは低速(作業)モードに切り換える副変速装置と、
該副変速装置の変速位置を検知する検知手段と、
警報手段と、
これらの入出力系機器を制御するための制御手段と、
を具備するコンバインにおいて、
前記制御手段が、
前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、刈取部を作動させないように制御すること、
を特徴としたコンバイン。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知し、刈取部を作動させないように制御したときには、
走行または前記エンジンを停止するように制御すること、
を特徴とした請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記制御手段に操作部に設ける表示手段を接続し、
前記制御手段が、
前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、
前記表示手段に副変速装置が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するように制御すること、
を特徴とした請求項1または請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記制御手段に警報手段を接続し、
前記制御手段が、
前記表示手段に副変速装置が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するときには、
前記警報手段により警報を発するように制御すること、
を特徴とした請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項1】
エンジンからの動力を、高速(走行)モードまたは低速(作業)モードに切り換える副変速装置と、
該副変速装置の変速位置を検知する検知手段と、
警報手段と、
これらの入出力系機器を制御するための制御手段と、
を具備するコンバインにおいて、
前記制御手段が、
前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、刈取部を作動させないように制御すること、
を特徴としたコンバイン。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知し、刈取部を作動させないように制御したときには、
走行または前記エンジンを停止するように制御すること、
を特徴とした請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記制御手段に操作部に設ける表示手段を接続し、
前記制御手段が、
前記検知手段が前記高速(走行)モードの変速位置を検知したときには、
前記表示手段に副変速装置が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するように制御すること、
を特徴とした請求項1または請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記制御手段に警報手段を接続し、
前記制御手段が、
前記表示手段に副変速装置が前記高速(走行)モードであることを示す情報を表示するときには、
前記警報手段により警報を発するように制御すること、
を特徴とした請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−195490(P2007−195490A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19713(P2006−19713)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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