説明

コンバイン

【課題】排気ガスの浄化処理を実行可能で、且つ、収穫作業の最中に尿素水の補給をしなくて済むようにしたコンバインを提供する。
【解決手段】本願発明のコンバインは、脱穀装置を駆動させるディーゼルエンジンと、脱穀装置への動力伝達を継断する脱穀クラッチ93と、脱穀クラッチ93の入り作動を禁止する脱穀駆動回路118とを備える。更に、ディーゼルエンジンからの排気ガス中にあるNOxの還元を促すNOx浄化手段と、排気ガスに添加される尿素水を貯留する尿素水タンクと、尿素水タンク内の尿素水量を検出する尿素水センサ113とを備える。尿素水タンク内の尿素水量が規定量以下のときに、脱穀駆動回路118にて脱穀クラッチ93を動力切断状態に維持するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、刈取装置によって圃場の未刈り穀稈を刈取り、刈取った穀稈を脱穀装置によって脱穀するコンバインに係り、より詳しくは、ディーゼルエンジンが搭載されたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、ディーゼルエンジンに関する高次の排ガス規制が適用されるのに伴い、ディーゼルエンジンが搭載される農作業機、建設機械、船舶等に、排気ガス中の大気汚染物質を浄化処理する排気ガス浄化装置(後処理装置)を搭載することが要望されつつある。排気ガス浄化装置(後処理装置)としては、NOx触媒やディーゼルパティキュレートフィルタ等が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、自動車を対象とした技術であるが、排気ガス中にあるNOxの還元を促すNOx触媒を備えた排気ガス浄化装置の構成が開示されている。特許文献1の排気ガス浄化装置は、尿素水を還元剤とするSCR法(選択接触還元法)を利用したものであり、ディーゼルエンジンの排気通路中に配置されたNOx触媒と、排気ガスに噴霧される尿素水を貯留する尿素水タンクと、尿素水タンク内の尿素水量を検出する残量検出センサと、尿素水タンク内の尿素水量が所定量以下になった事実を報知する警報器とを備えている。この場合、尿素水タンク内の尿素水量が所定量以下になると、警報器が作動して尿素水が少なくなった旨を運転者に知らせると共に、ディーゼルエンジンの出力が低く抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−371831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の排気ガス浄化装置は、尿素水が少なくなると運転者に通知できるという利点があるものの、本願発明の対象であるコンバインにそのまま適用するのは、問題があると考えられる。なぜなら、例えば収穫(刈取脱穀)作業の最中に、尿素水が少なくなってディーゼルエンジンの出力が低く抑えられてしまうと、コンバインの走行速度や刈取装置及び脱穀装置の駆動力が抑えられることになり、わざわざ収穫作業を中断して尿素水の補給をせざるを得なくて、作業効率が低下する可能性が高いと考えられるからである。
【0006】
そこで、本願発明は、上記のような現状に鑑み、排気ガスの浄化処理を実行可能で、且つ、収穫作業の最中に還元剤の補給をしなくて済むようにしたコンバインを提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、脱穀装置を駆動させるディーゼルエンジンを備えているコンバインであって、前記脱穀装置への動力伝達を継断するクラッチ手段と、前記クラッチ手段の入り作動を禁止するクラッチ禁止機構とを備えると共に、前記ディーゼルエンジンからの排気ガス中にあるNOxの還元を促すNOx浄化手段と、排気ガスに添加される還元剤を貯留する還元剤タンクと、前記還元剤タンク内の還元剤量を検出する残量検出手段とを備えており、前記還元剤タンク内の還元剤量が所定量以下のときに、前記クラッチ禁止機構にて前記クラッチ手段を動力切断状態に維持するように構成されているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載したコンバインにおいて、前記コンバインの作動状態に応じた報知を行う報知手段を更に備えており、前記ディーゼルエンジンの始動時に前記還元剤タンク内の還元剤量が所定量以下であれば、前記報知手段にて還元剤の補給を要する旨を報知するように構成されているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、前記コンバインの作動状態に応じた報知を行う報知手段を更に備えており、前記ディーゼルエンジンの始動時には、前記還元剤タンク内の還元剤量から判断されるエンジン稼働可能時間、又は前記エンジン稼働可能時間に対応した圃場の作業可能面積を、前記報知手段にて報知するように構成されているというものである。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によると、脱穀装置への動力伝達を継断するクラッチ手段と、前記クラッチ手段の入り作動を禁止するクラッチ禁止機構とを備えると共に、ディーゼルエンジンからの排気ガス中にあるNOxの還元を促すNOx浄化手段と、排気ガスに添加される還元剤を貯留する還元剤タンクと、前記還元剤タンク内の還元剤量を検出する残量検出手段とを備えており、前記還元剤タンク内の還元剤量が所定量以下のときに、前記クラッチ禁止機構にて前記クラッチ手段を動力切断状態に維持するように構成されているから、例えば、収穫作業前に前記クラッチ手段を継断操作して前記脱穀装置を駆動点検することによって、オペレータは前記還元剤タンク内の還元剤量が不足しているか否かを把握できる。
【0011】
圃場は還元剤を補給可能な場所から遠く離れているのが通常であろうから、還元剤タンク内の還元剤量の確認・補給は、収穫作業を中断しなくて済むように収穫作業前(圃場に行く前)に実行しておくのが望ましいと考えられる。この点、本願発明のコンバインでは、収穫作業前(圃場に行く前)に、前記クラッチ手段を継断操作して前記脱穀装置を駆動点検し、還元剤量が不足していれば、還元剤を補給することが可能になる。従って、収穫作業中に還元剤が不足するのを未然に防止できる。その結果、前記NOx浄化手段のNOx還元性能を適正な状態に維持しながら、収穫作業の効率低下を防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの右側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】ディーゼルエンジンの左側面図である。
【図5】ディーゼルエンジンの正面図である。
【図6】ディーゼルエンジンの平面図である。
【図7】DPFの説明図である。
【図8】NOx浄化手段の説明図である。
【図9】動力伝達系統のスケルトン図である。
【図10】コントローラの機能ブロック図である。
【図11】クラッチ制御の一例を示すフローチャートである。
【図12】排気ガス温度制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0014】
(1).コンバインの全体構造
まず、図1〜図3を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。図1〜図3に示されるように、実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2(走行部)にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取る4条刈り用の刈取装置3が配置されている。単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に、走行機体1の前部に刈取装置3が装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留するグレンタンク7とが横並び状に搭載されている。脱穀装置5が走行機体1の前進方向に向かって左側に配置され、グレンタンク7が走行機体1の前進方向に向かって右側に配置されている(図3参照)。グレンタンク7内の穀粒を機体外部に排出する穀粒排出オーガ8が配設されている。
【0015】
走行機体1の右側前部には運転部10が設けられている。グレンタンク7の前方の運転部10には、オペレータが搭乗するステップ11、運転座席12、操向ハンドル13や各種の操作レバーなどを備えた操作装置を配置している。走行機体1のうち運転座席12の下方には、動力源としてのディーゼルエンジン20が配置されている。運転座席12の一側方に配置されたサイドコラム14には、走行機体1の変速操作を行う主変速レバー16、油圧無段変速機(図示省略)の出力及び回転数を所定範囲に設定保持する副変速レバー17、刈取装置3及び脱穀装置5への動力継断操作用のクラッチレバー18が設けられている。
【0016】
主変速レバー16は、走行機体1の前進、停止、後退及びその車速を無段階に変更操作するためのものである。副変速レバー17は、作業状態に応じてミッションケース86(図6参照)内の副変速機構(図示省略)を変更操作し、油圧無段変速機の出力及び回転数を、中立を挟んで低速と高速の2段階の変速段に設定保持するためのものである。
【0017】
クラッチレバー18は、刈取装置3の動力継断操作用のレバーと脱穀装置5の動力継断操作用のレバーとを1本で兼ねたものであり、サイドコラム18に形成されたL字状のクランク溝に沿って傾動可能に構成されている。この場合、クラッチレバー18をクランク溝の左部先端側に傾動させると刈取クラッチ92及び脱穀クラッチ93(図5及び図9参照)が共に切り状態になり、クランク溝の中途コーナ部に傾動させると脱穀クラッチ93のみが入り状態になり、クランク溝の前部先端側にまで傾動させると両クラッチ92,93とも入り状態になる。
【0018】
図1及び図2に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にディーゼルエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持する。
【0019】
図1〜図3に示されるように、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに刈取フレーム9を連結している。刈取装置3は、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置47と、圃場の未刈り穀稈を引起す4条分の穀稈引起装置48と、刈刃装置47によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置49と、圃場の未刈り穀稈を分草する4条分の分草体50とを備える。刈取フレーム9の下方に刈刃装置47が設けられている。刈取フレーム9の前方に穀稈引起装置48が配置されている。穀稈引起装置48とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間に穀稈搬送装置49が配置されている。穀稈引起装置48の下部前方に分草体50が突設されている。ディーゼルエンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0020】
図1及び図2に示されるように、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴26と、扱胴26の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別機構としての揺動選別盤27と、揺動選別盤27に選別風を供給する唐箕ファン28と、扱胴26の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴29と、揺動選別盤27の後部の排塵を機外に排出する排塵ファン30とを備えている。
【0021】
図1乃至図3に示す如く、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン34が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン34に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ35にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0022】
揺動選別盤27の下方側には、揺動選別盤27にて選別された穀粒(一番選別物)を取出す一番コンベヤ31と、枝梗付き穀粒等の二番選別物を取出す二番コンベヤ32とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ31,32は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ31、二番コンベヤ32の順で、側面視において走行機体1の上面側に横設されている。
【0023】
図1乃至図3に示す如く、揺動選別盤27は、扱胴26の下方に落下した脱穀物を、揺動選別(比重選別)するように構成している。揺動選別盤27から落下した穀粒(一番選別物)は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン28からの選別風によって除去され、一番コンベヤ31に落下する。一番コンベヤ31のうち脱穀装置5におけるグレンタンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる一番揚穀筒33が連通接続されている。一番コンベヤ31から取出された穀粒は、一番揚穀筒33内の一番揚穀コンベヤ(図示せず)によってグレンタンク7に搬入され、グレンタンク7に収集される。
【0024】
揺動選別盤27は、揺動選別(比重選別)によって、枝梗付き穀粒等の二番選別物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)を二番コンベヤ32に落下させるように構成している。二番コンベヤ32によって取出された二番選別物は、二番還元筒36及び二番処理部37を介して揺動選別盤27の上面側に戻されて再選別される。また、扱胴26からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等は、唐箕ファン28からの選別風によって、走行機体1の後部から圃場に向けて排出される。
【0025】
(2).コンバインの動力伝達系統
次に、図9を参照しながら、コンバインの動力伝達系について説明する。
【0026】
ディーゼルエンジン20の動力は、ディーゼルエンジン20の左右両側に突出した出力軸83の一方から、ミッションケース86及び刈取装置3と、脱穀装置5との2方向に分岐して伝達される。ディーゼルエンジン20の他の動力は、出力軸83の他方から穀粒排出オーガ8に伝達される。
【0027】
ミッションケース86には、直進用の油圧無段変速機と旋回用の油圧無段変速機(共に図示省略)とを備えている。出力軸83からミッションケース86に向かう分岐動力は、直進用の油圧無段変速機の直進用入力軸88に伝達され、直進用入力軸52から旋回用の油圧無段変速機の旋回用入力軸89に動力伝達される。
【0028】
運転部10に配置された操向ハンドル13の操作量に応じて、各油圧ポンプにおける回転斜板の傾斜角度を調節することにより、油圧ポンプ油圧モータ間の作動油の吐出方向及び吐出量が変更され、直進用又は旋回用出力軸(図示せず)の回転方向及び回転数、ひいては左右の走行クローラ2の駆動速度及び駆動方向が任意に調節される。
【0029】
また、直進用出力軸88に伝達された動力は、ミッションケース86から突出した刈取PTO軸90にも伝達され、次いで、一方向クラッチ91及びベルトテンション式の刈取クラッチ92を介して、刈取装置3に動力伝達される。
【0030】
ディーゼルエンジン20の出力軸83の一方から脱穀装置5に向かう分岐動力は、クラッチ手段であるベルトテンション式の脱穀クラッチ93を介して、唐箕ファン28の唐箕軸40に伝達される。唐箕軸40に伝達された動力の一部は、ベルト41及びプーリ伝動により、一番コンベヤ31及び一番揚穀筒33内の揚穀コンベヤ38、二番コンベヤ32及び二番還元筒36内の還元コンベヤ39、揺動選別盤27の揺動軸42、排塵ファン30の排塵軸43、並びに排藁カッタ35に伝達される。
【0031】
また、唐箕軸40からは、フィードチェンクラッチ44及びフィードチェン軸45を経て、フィードチェン6の前端にも動力伝達される。更に、唐箕軸40からの動力は扱胴入力軸52にも伝達される。扱胴入力軸52に伝達された動力は、扱胴26と処理胴29との2方向に分岐して伝達される。扱胴入力軸52から扱胴26への分岐動力は、扱胴26の回転軸53及び排藁チェン34に伝達される。扱胴入力軸52から処理胴29への分岐動力は、処理胴入力軸54を経由して処理胴29の回転軸55に伝達される。処理胴入力軸54からは二番処理部37の回転軸56にも分岐動力が伝達される。
【0032】
ディーゼルエンジン20の出力軸83から穀粒排出オーガ8に向かう動力は、グレン入力ギヤ機構94及び動力継断用のオーガクラッチ95を介して、グレンタンク7内の底コンベヤ96及び穀粒排出オーガ8における縦オーガ筒内の縦コンベヤ97に動力伝達され、次いで、受継スクリュー98を介して、穀粒排出オーガ8における横オーガ筒内の排出コンベヤ99に動力伝達される。
【0033】
(3).ディーゼルエンジンの吸排気構造
次に、図4乃至図6を参照しながら、ディーゼルエンジン20の吸排気構造について説明する。ディーゼルエンジン20は、上面にシリンダヘッド60が締結されたシリンダブロック(図示省略)を備えている。シリンダヘッド60には、ターボ過給機61が取付けられている。ターボ過給機61は、タービンホイール(図示省略)を内蔵したタービンケース62と、ブロアホイール(図示省略)を内蔵したコンプレッサケース63とを備えている。
【0034】
図5に示す如く、シリンダヘッド60の前側面に排気マニホールド64が配置されている。タービンケース62の排気ガス取入れ側は排気マニホールド64に接続されている。タービンケース62の排気ガス排出側には、排気ガス処理装置の一例であるディーゼルパティキュレートフィルタ65(以下、DPFという)が設けられている。DPF65の排気ガス取入れ側とタービンケース62の排気ガス排出側とが接続されて連通している。
【0035】
図4に示す如く、DPF65の排気ガス排出側には、中間排気管67を介して、排気ガス処理装置の一例であるNOx浄化手段68の排気ガス取入れ側が接続されている。NOx浄化手段68の排気ガス排出側にテールパイプ69が接続されている。すなわち、ディーゼルエンジン20の各気筒から排気マニホールド64に排出された排気ガスは、DPF65を経由して浄化処理されたのち、NOx浄化手段68を経由して浄化処理され、テールパイプ69から外部に放出される。
【0036】
DPF65は排気ガス中の粒子状物質(PM)等を捕集するためのものである。図7に示す如く、DPF65は、耐熱金属材料製のDPFケーシング100に内蔵した略筒型のフィルタケース101,102に、例えば白金等のディーゼル酸化触媒103とハニカム構造のフィルタ体であるスートフィルタ104とを直列に並べて収容した構造になっている。DPFケーシング100は、シリンダヘッド60の左側面にボルト等にて着脱可能に締結されている。
【0037】
また、NOx浄化手段68は、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を還元して無害化し、且つ排気音を減衰(消音)するためのものである。図8に示す如く、実施形態のNOx浄化手段68においては、尿素水を還元剤とした選択接触還元触媒であるNOx除去触媒105が採用されている。NOx浄化手段68は、耐熱金属材料製のNOx触媒ケーシング106に内蔵した略筒型のフィルタケース107,108に、NOx除去触媒105とアンモニア除去触媒109とを直列に並べて収容した構造になっている。
【0038】
DPF65とNOx浄化手段68との間をつなぐ中継排気管67内には、尿素水供給ポンプ(図示省略)等によって還元剤タンクとしての尿素水タンク66から尿素水を噴射するように構成されている。実施形態の尿素水タンク66は、脱穀装置5の扱口81の下方に形成されたデッドスペースを活用して、走行機体1のうち脱穀装置5の前面側の箇所にコンパクトに設置されている(図5参照)。尿素水タンク66には、残量検出手段であるフロート式の尿素水センサ113(図5及び図10参照)が取り付けられている。実施形態の尿素水センサ113は、尿素水タンク66内にあるフロート(図示省略)の上下高さ位置から、尿素水タンク66内の尿素水量を検出するように構成されている。
【0039】
図5に示す如く、ディーゼルエンジン20の前面に、ターボ過給機61が配置されている。ディーゼルエンジン20の左側面に、DPF65(前記DPFケーシング)が配置されている。DPF65から後方に向けて中間排気管67が延長される。中間排気管67の延長後端側を下向きに開口させ、これにNOx浄化手段68の排気ガス取入れ側を接続している。脱穀装置5とグレンタンク7の間において、NOx浄化手段68からテールパイプ69を下向きに延長させる。走行機体1のうち脱穀装置5の下面より低い位置で、テールパイプ69の後端側を後方に向けて開口させている。
【0040】
一方、図4乃至図6に示す如く、コンプレッサケース63の吸気取入れ側に吸気管70を介してエアクリーナ71の吸気排出側が接続されている。エアクリーナ71の吸気取入れ側は、吸気ダクト73を介してプリクリーナ72に接続されている。シリンダヘッド60の後側面に吸気マニホールド75が配置されている。コンプレッサケース63の吸気排出側に過給管74を介して吸気マニホールド75が接続されている。即ち、プリクリーナ72からエアクリーナ71に吸込まれた外気は、エアクリーナ71にて除塵されたのち、吸気マニホールド75からディーゼルエンジン20の各気筒に供給される。
【0041】
図4乃至図6に示す如く、ディーゼルエンジン20の前面側で、ディーゼルエンジン20の高位置に、ターボ過給機61とDPF65が配置されている。ディーゼルエンジン20の右側方に、ディーゼルエンジン20水冷用のラジエータ76と、ディーゼルエンジン20空冷用の冷却ファン77とが配置されている。図5及び図6から明らかなように、ディーゼルエンジン20を収容するエンジンルーム79の右側方に冷却ファン77が位置し、エンジンルーム79の前部上方にターボ過給機61とDPF65とが位置している。すなわち、ディーゼルエンジン20の前面右側にターボ過給機61が配置され、ディーゼルエンジン20の前面左側にDPF65が配置されている。ディーゼルエンジン20における前寄りの高位置に、ターボ過給機61とDPF65とが左右に並べて配置されている。
【0042】
図4及び図5に示す如く、ディーゼルエンジン20から左側方に出力軸83を突出させる。出力軸83上にフライホイール84を設けている。フライホイール84に、刈取装置3や脱穀装置5に駆動力を伝達する作業部駆動プーリ85や、走行クローラ2にミッションケース86から駆動力を伝達する走行駆動プーリ87を固着させ、ディーゼルエンジン20の出力部を構成している。
【0043】
作業部駆動プーリ85や走行駆動プーリ87の上方に形成されるデッドスペースを活用して、ディーゼルエンジン20における前寄りの高位置から走行機体1の下面側に向けて、中間排気管67及びテールパイプ69を延長させている。すなわち、中間排気管67の延長後端側を下向きに開口させてNOx浄化手段68の排気ガス取入れ側に接続している。テールパイプ69の前端側を上向きに開口させてNOx浄化手段68の排気ガス排出側に接続している。
【0044】
脱穀装置5とグレンタンク7の間では、NOx浄化手段68の排気ガス取入れ側を高くし、NOx浄化手段68の排気ガス排出側を低くした姿勢に、NOx浄化手段68を傾斜させて支持している。走行機体1等に固着した中間排気管67及びテールパイプ69によってNOx浄化手段68を支持させ、脱穀装置5とグレンタンク7の間にNOx浄化手段68を組付けている。走行機体1等にNOx浄化手段68を直接連結させないから、この場合は、ブラケットといったNOx浄化手段68専用の支持構造が不要である。
【0045】
なお、グレンタンク7の底部や脱穀装置5の扱口81に近接させてNOx浄化手段68を組付けることも可能である。ディーゼルエンジン20出力用のVベルト延長部の上方に形成されるデッドスペースに、中間排気管67及びNOx浄化手段68を配置しているから、DPF65やNOx浄化手段68の放熱によって、刈取装置3の穂先搬送機構、グレンタンク7及び扱口81等を加温することが可能になる。このため、湿材等の刈取作業において、扱口81に付着する湿材(穀稈の袴等)を少なくできる。また、グレンタンク7からの穀粒排出作業性や、朝露等にて湿った穀稈(湿材)を刈取・脱穀する収穫作業性の向上にも寄与できる。
【0046】
図4乃至図6から明らかなように、ディーゼルエンジン20を搭載した走行機体1と、左右の走行クローラ2と、刈取装置3と、脱穀装置5と、グレンタンク7とを備えたコンバインにおいて、ディーゼルエンジン20の排気ガス中の粒子状物質等を捕集するDPF65と、ディーゼルエンジン20の排気ガス中の窒素酸化物を還元するNOx浄化手段68とを備えている。ディーゼルエンジン20の相対向する側方部に振分けて、DPF65と、NOx浄化手段68を配置している。したがって、ディーゼルエンジン20を収容するエンジンルーム79の設置高さを低く抑えて、例えば運転座席12の下方といった機体内部にディーゼルエンジン20をコンパクトに収容できる。例えば、グレンタンク7の前方にディーゼルエンジン20及び運転座席12を設けたコンバイン機体構造において、DPF65及びNOx浄化手段68をコンパクトに配置できる。また、DPF65にて捕集された未燃焼物の燃焼処理用の加熱手段等を不要にでき、DPF65等を簡単に組付けできる。また、DPF65又はNOx浄化手段68の温度管理等の取扱い性を向上できる。
【0047】
図4及び図5から明らかなように、ディーゼルエンジン20の側方で、且つDPF65の設置位置よりも低位置に、NOx浄化手段68を配置したものであるから、NOx浄化手段68にて発生する水がDPF65側に移動するのを簡単に防止できる。脱穀装置5の選別風取入れ側又はグレンタンク7底部などに近接させてNOx浄化手段68やテールパイプ69を設置して、脱穀装置5の選別風又はグレンタンク7などの加温に、NOx浄化手段68やテールパイプ69の発熱を利用でき、湿材の収穫作業性を向上できる。
【0048】
図4から明らかなように、NOx浄化手段68の排気ガス排出側を下向きにした姿勢に傾斜させて、NOx浄化手段68を設置したものであるから、NOx浄化手段68の設置高を抑えながら、NOx浄化手段68の排水等に有利な姿勢にDPF65又はNOx浄化手段68を支持できる。
【0049】
図4及び図5から明らかなように、ディーゼルエンジン20とグレンタンク7の間で、ディーゼルエンジン20からグレンタンク7方向に排気管67やテールパイプ69を延長させ、排気ガス排出側が低くなる姿勢に排気管67やテールパイプ69を傾斜させ、排気管67やテールパイプ69の傾斜途中にNOx浄化手段68を配置したものであるから、排気管67やテールパイプ69の折り曲げ角度を大きくして排気管67やテールパイプ69の排気ガス流動抵抗を低減できる。また、グレンタンク7の底部外側のデッドスペースを活用してNOx浄化手段68を配置した構造において、ディーゼルエンジン20に排気管67やテールパイプ69を介してNOx浄化手段68を短距離で接続して、ディーゼルエンジン20の排気効率を向上できる。
【0050】
図4及び図5から明らかなように、NOx浄化手段68の排気ガス流入側から、NOx浄化手段68内に、還元剤(尿素水)を供給するように構成したものであるから、還元剤がDPF65側に移動するのを簡単に防止できる。ディーゼルエンジン20の排気マニホールド64等に前記還元剤が入るのを阻止できる。ディーゼルエンジン20の排気ガス排出部品が前記還元剤にて腐食するのを低減でき、ディーゼルエンジン20又は付属部品の耐久性を向上できる。
【0051】
(4).クラッチ制御を実行する構成及びその制御態様
次に、図10及び図11を参照しながら、尿素水量に応じてクラッチ制御を実行する構成とその制御態様の一例とについて説明する。
【0052】
走行機体1に搭載された制御手段としてのコントローラ110は、尿素水タンク66内の尿素水量に応じてクラッチ制御(脱穀クラッチ制御)を実行し得るものであり、中央演算装置(CPU)や記憶手段等を有している。
【0053】
図10に示すように、コントローラ110には、脱穀クラッチ制御に関連する構成として、刈取スイッチ111、脱穀スイッチ112、フロート式の尿素水センサ113、エンジン始動センサ114、刈取クラッチモータ115に対する刈取駆動回路117、脱穀クラッチモータ116に対する脱穀駆動回路118、及び、各種警報等の音声を発する音声装置119が電気的に接続されている。
【0054】
刈取スイッチ111は、クラッチレバー17が刈取脱穀入り位置(クランク溝の前部先端側)にあるか否かを検出するものである。脱穀スイッチ112は、クラッチレバー17が脱穀入り位置(クランク溝の中途コーナ部及び前部先端側)にあるか否かを検出するものである。エンジン始動センサ114は、ディーゼルエンジン20の始動を検出するものであり、例えばエンジン回転数センサを採用できる。この場合、ディーゼルエンジンの回転数が零(停止)の状態から変化したことをエンジン回転数センサにて検出することにより、ディーゼルエンジン20の始動が把握されることになる。
【0055】
刈取クラッチモータ115は、刈取クラッチ92を入り切り作動させる電動式のアクチュエータである。脱穀クラッチモータ116は、脱穀クラッチを入り切り作動させる電動式のアクチュエータである。脱穀クラッチモータ116に対する脱穀駆動回路118は、脱穀クラッチモータ116を介しての脱穀クラッチ93(クラッチ手段)の入り作動を禁止するクラッチ禁止機構に相当するものである。音声装置119は、コンバインの作動状態に応じた報知を行う報知手段に相当するものである。各種音声データは、コントローラ110の記憶手段に予め記憶されている。
【0056】
コントローラ110による脱穀クラッチ制御は以下のように実行される。すなわち、図11のフローチャートに示すように、コンバインの電源投入にてコントローラ110が起動してからディーゼルエンジン20が始動した後(ステップS1:YES)、尿素水センサ113にて検出された尿素水タンク66内の尿素水量Qが規定量QL以下であるか否かを判別する(ステップS2)。尿素水量Qが規定量QL以下であれば(ステップS2:YES)、クラッチレバー17の操作状態(刈取、脱穀スイッチ92,93の検出状態)に拘らず、脱穀駆動回路118から脱穀クラッチモータ116への指令を禁止し、脱穀クラッチ93を動力切断(切り)状態に維持する。そして、尿素水の補給を要する旨を音声装置119にて報知するのである(ステップS3〜S4)。
【0057】
なお、実施形態では、脱穀駆動回路118から脱穀クラッチモータ116への指令にて脱穀クラッチ93が入り作動していなければ、刈取駆動回路117から刈取クラッチモータ116への指令も禁止される。このため、尿素水量Qが規定量QL以下のときに、刈取クラッチ92が入り作動することはない。
【0058】
ステップS2に戻って、尿素水量Qが規定量QLより多い場合は(ステップS2:NO)、当該尿素水量Qの消費にかかる時間、すなわち排気ガス浄化処理を伴うディーゼルエンジン20の稼働可能時間T(以下、エンジン稼働可能時間という)を演算し、エンジン稼働可能時間Tから圃場の作業可能面積Sを求める。そして、圃場の作業可能面積Sを音声装置119にて報知するのである(ステップS5〜S7)。なお、この段階で音声装置119にて報知する内容は、圃場の作業可能面積Sに限らず、エンジン稼働可能時間Tでもよい。エンジン稼働可能時間Tを音声報知する場合は、ステップS6を省略できることになる。
【0059】
以上の説明から明らかなように、実施形態では、尿素水タンク66内の尿素水量Qが規定量QL以下のときに、脱穀クラッチモータ116に対する脱穀駆動回路118にて、脱穀クラッチ93を動力切断状態に維持するから、例えば、収穫作業前にクラッチレバー17を操作して脱穀装置5を駆動点検することによって、オペレータは尿素水タンク66内の尿素水量Qが不足しているか否かを把握できる。
【0060】
圃場は尿素水を補給可能な場所から遠く離れているのが通常であろうから、尿素水タンク内の尿素水量の確認・補給は、収穫作業を中断しなくて済むように収穫作業前(圃場に行く前)に実行しておくのが望ましいと考えられる。この点、実施形態では、収穫作業前(圃場に行く前)に、クラッチレバー17を操作して脱穀装置5を駆動点検し、尿素水量Qが不足していれば、尿素水を補給することが可能になる。従って、収穫作業中に尿素水が不足するのを未然に防止できる。その結果、NOx浄化手段68のNOx還元性能を適正な状態に維持しながら、収穫作業の効率低下を防止できる。
【0061】
また、ディーゼルエンジン20の始動時に、尿素水タンク66内の尿素水量Qが規定量QL以下であれば、音声装置119にて尿素水の補給を要する旨を報知するから、収穫作業を始める前(例えば圃場に行く前)に、尿素水タンク66内の尿素水量が不足しているか否かを把握でき、オペレータに尿素水不足の注意を喚起できる。
【0062】
更に、ディーゼルエンジン20の始動時には、尿素水タンク66内の尿素水量Qから判断されるエンジン稼働可能時間T、又はエンジン稼働可能時間Tに対応した圃場の作業可能面積Sを、音声装置119にて報知するから、エンジン稼働可能時間Tや圃場の作業可能面積Sに基づいて、尿素水タンク66に尿素水を補充する必要があるか否かをオペレータが簡単に判断でき、尿素水を頻繁に補充する必要がない。また、尿素水タンク66内の尿素水量Qが不足する前の適当な時期をオペレータが判断して、尿素水タンク66に尿素水を補充することが可能になる。
【0063】
(5).排気ガス温度制御を実行する構成及びその制御態様
次に、図3、図10及び図12を参照しながら、ディーゼルエンジン20の排気ガス温度制御を実行する構成とその制御態様の一例とについて説明する。
【0064】
排気ガス浄化装置としてのDPF65及びNOx浄化手段68において、排気ガスの浄化性能を適正状態に維持するには、排気ガス温度が所定温度(概ね300℃程度)以上である必要がある。この点、実施形態では、脱穀装置5の送塵弁121を利用して、ディーゼルエンジン20からの排気ガス温度を調節し得るように構成されている。
【0065】
図3に示すように、脱穀装置5における扱室120の上部内面には、脱穀物の搬送速度を調節するための複数の送塵弁121が扱胴26と対峙するように配置されている。これら送塵弁121群は、正逆回転可能な送塵弁駆動モータ122及び連結リンク123を介して、一緒に且つ同じ向きに開閉回動するように構成されている。
【0066】
ここで、図3において、各送塵弁121のうちフィードチェン6に近い側が扱胴26の終端側に変位する矢印A方向を開き方向と称し、逆に、フィードチェン6に近い側が扱胴26の始端側に変位する矢印B方向を閉じ方向と称する。送塵弁121群の開き方向への回動角度が大きいほど、扱室120内の脱穀物は扱胴26の終端側に速やかに搬送され易くなる。送塵弁121群の開閉回動角度の調整によって、扱室120内における脱穀物の搬送速度(滞留時間といってもよい)が穀稈の品種や状態に応じて調節される。なお、送塵弁121群の開閉回動角度は、例えば送塵弁駆動モータ122に設けられたロータリエンコーダ等の角度センサ124にて検出される。
【0067】
図10に示すように、コントローラ110には、排気ガス温度制御に関連する構成として、ディーゼルエンジン20の燃料ポンプに設けられた燃料噴射装置125、燃料噴射装置125からの燃料噴射量を検出する噴射量検出センサ126、ディーゼルエンジン20からの排気ガス温度を検出する排気ガス温度センサ127、送塵弁駆動モータ122に対するモータ駆動回路128、及び、送塵弁駆動モータ122に関連させた角度センサ124が電気的に接続されている。
【0068】
実施形態のコントローラ110は、前述した脱穀クラッチ制御以外に、排気ガス温度センサ127の検出結果に基づいて送塵弁121群を閉じ方向に回動させることにより、ディーゼルエンジン20の負荷を増大させて排気ガス温度を上昇させるという排気ガス温度制御を実行するように構成されている。排気ガス温度制御は、適宜時間間隔にて排気ガス温度センサ127の検出結果をチェックする割り込み診断処理の結果に応じて実行される。
【0069】
この場合、図12のフローチャートに示すように、排気ガス温度センサ127にて検出された排気ガス温度が設定下限温度(例えば300℃)以下になると、送塵弁駆動モータ122の駆動にて送塵弁121群を矢印Bの閉じ方向に回動させる。そうすると、扱室120内における脱穀物の搬送抵抗が大きくなって、扱胴23の回転抵抗が増大する。それから、ディーゼルエンジン20の負荷が増大して、エンジン回転数維持のためにディーゼルエンジン20の出力(燃料噴射量)が増大し、その結果、ディーゼルエンジン20からの排気ガス温度が上昇する。
【0070】
その後、排気ガス温度が設定上限温度(例えば305℃)以上になると、送塵弁駆動モータ122の駆動にて送塵弁121群を矢印Aの開き方向に回動させ、送塵弁121群の開閉回動角度を、閉じ方向への回動前の元の状態にまで戻す。そうすると、扱室120内における脱穀物の搬送抵抗、ひいては扱胴23の回転抵抗が減少して、ディーゼルエンジン20の負荷が減少し、エンジン回転数維持のためにディーゼルエンジン20の出力(燃料噴射量)が減少するのである。
【0071】
上記の説明から明らかなように、実施形態では、排気ガス温度が設定下限温度以下になると、送塵弁121群を矢印Bの閉じ方向に回動させて、ディーゼルエンジン20の負荷を増大させるように構成されているから、DPF65及びNOx浄化手段68において、排気ガスの浄化性能を適正状態に維持できる温度域に、排気ガス温度を強制的に上昇できる。従って、DPF65及びNOx浄化手段68での排気ガス浄化処理を高効率な状態に維持でき、排気ガスの浄化処理の確実性が向上することになる。
【0072】
また、送塵弁121群を矢印Bの閉じ方向に回動させた後、排気ガス温度が設定上限温度以上になった場合は、送塵弁121群を矢印Aの開き方向に回動させて、ディーゼルエンジン20の負荷を減少させるように構成されているから、排気ガス温度が設定上限温度以上になれば、ディーゼルエンジン20に過剰な負荷が掛かることはなく、排気ガス温度の強制上昇に伴う燃費の悪化を最小限に抑えられるのである。
【0073】
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 走行機体
5 脱穀装置
20 ディーゼルエンジン
66 還元剤タンクとしての尿素水タンク
68 NOx浄化手段
93 クラッチ手段としての脱穀クラッチ
113 残量検出手段としての尿素水センサ
116 脱穀クラッチモータ
118 クラッチ禁止機構としての脱穀駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置を駆動させるディーゼルエンジンを備えているコンバインであって、
前記脱穀装置への動力伝達を継断するクラッチ手段と、前記クラッチ手段の入り作動を禁止するクラッチ禁止機構とを備えると共に、
前記ディーゼルエンジンからの排気ガス中にあるNOxの還元を促すNOx浄化手段と、排気ガスに添加される還元剤を貯留する還元剤タンクと、前記還元剤タンク内の還元剤量を検出する残量検出手段とを備えており、
前記還元剤タンク内の還元剤量が所定量以下のときに、前記クラッチ禁止機構にて前記クラッチ手段を動力切断状態に維持するように構成されている、
コンバイン。
【請求項2】
前記コンバインの作動状態に応じた報知を行う報知手段を更に備えており、
前記ディーゼルエンジンの始動時に前記還元剤タンク内の還元剤量が所定量以下であれば、前記報知手段にて還元剤の補給を要する旨を報知するように構成されている、
請求項1に記載したコンバイン。
【請求項3】
前記コンバインの作動状態に応じた報知を行う報知手段を更に備えており、
前記ディーゼルエンジンの始動時には、前記還元剤タンク内の還元剤量から判断されるエンジン稼働可能時間、又は前記エンジン稼働可能時間に対応した圃場の作業可能面積を、前記報知手段にて報知するように構成されている、
請求項1に記載したコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−166878(P2010−166878A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14039(P2009−14039)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】