説明

ゴムクローラの加硫成型金型

【課題】はみ出しゴムの生成を回避し得るゴムクローラの加硫成型用金型を提案する。
【解決手段】ロックリング1の外周面に沿って設置される内型2と、この内型2に合わさってその内側にゴムクローラのキャビティを区画形成する外型3とを備えた加硫成形金型において、内型2を、端面を相互に突き合わせてロックリング1の周りに沿って設置する複数のセグメント2a〜2dにて構成する。そして、該セグメント2a〜2dの突き合わせ端面の少なくとも一方に、セグメントの端面相互間に生じる隙間を消滅させるシール部材4を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械やコンバイン、トラクター等の農業機械、その他のクローラ式の車輌に装着されるゴムクローラを製造するのに適したゴムクローラの加硫成型金型に関するものであり、加硫成型時に生じるのが避けられなかった金型突き合わせ面からのゴムのはみ出しをより軽減しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
クローラ式の車輌は、油圧モータ等の駆動手段に連結するスプロケットタイプの駆動輪と、この駆動輪に間隔をおいて配置された従動輪との相互間に帯状体をエンドレスに巻き掛けることにより構成されたクローラが取り付けられており、これを駆動輪によって回動させることによって機体の走行を可能にしている。
【0003】
ゴム製のクローラは、路面に対してやさしく(畑等の土壌を荒らさず、アスファルトやコンクリート道路でも路面を傷めることが少ない)、低振動、低騒音であるうえ、接地圧を低くとることができるので雪上、砂上での安定した走行が可能なので、鉄製のものに比較して機械的な結合部を有しないので泥詰まり皆無で鉄シューのような煩わしいメンテナンスも必要ないという特長を有しており、近年では、この種のクローラが多用されるようになってきている。
【0004】
また、ゴム製のクローラは、ショベル、農業機械、産業機械、トラクター、舗装機等適用機体の種類に応じてタイプの異なるものが使用されており、具体的には、芯金を補強層とともにゴム層中に埋設固定した金属補強タイプと、芯金を備えず補強層のみを配設したプライ補強タイプ等が存在している。
【0005】
加硫成型方式としては、インナーゴムとアウターゴムの相互間に芯金、中間ゴム層、コード補強層を介在せしめて積層体を構成し、これを下型と上型によって形成されたキャビティ内に配置、加圧、加硫して帯状の加硫成型体となし、さらに該加硫成型体の端部同士を重ね合わせて接合する加硫接合方式と、円形の内型にクローラの構成部材を配置して該内型に外型を重ね合わせて所定の条件のもとで加圧、加硫を施す円形一体型加硫方式が知られており、円形一体型加硫方式に係わる先行技術としては特許文献1が参照される。
【特許文献1】特開2002-127267号公報
【0006】
上記の加硫成型方式のうち、円形一体型加硫方式は、加硫成型体の端面同士を重ね合わせて加硫、接合する加硫接合方式のような接合工程を省略することが可能であり接合加硫方式に比較して効率的な製造が行える利点があるところ、円形の内型は複数のセグメントを組み合わせた分割構造をなしており、加硫成型時における熱膨張を加味してセグメントの相互間には予めクリアランスが設けられているために、その隙間内には圧縮により変形、膨張したゴムが入り込み、これが「はみ出しゴム」となるのが避けられない不具合があり、その改善が求められていた。
【0007】
ここに、とくに内型においてゴムの入り込みが問題となるのは、通常、クローラの構成部材は内型に順次積層されていくため内型の温度は制限され(外型は温度の制限はない)、加硫成型開始時の温度が低く加硫成型中に大きな温度変化が生じ内型を構成するセグメントは熱膨張するためこの熱膨張によるセグメントの変形を避けるために予め隙間が必要になるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、円形一体型加硫方式を適用してゴムクローラを製造する場合に生じていた「はみ出しゴム」の生成を回避できる新規な加硫成型金型を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ロックリングの外周面に沿って設置される内型と、この内型に合わさってその内側にゴムクローラのキャビティを区画形成する外型とを備えた加硫成形金型であって、
前記内型が、端面を相互に突き合わせてロックリングの周りに沿って設置する複数のセグメントからなり、
該セグメントの突き合わせ端面の少なくとも一方に、セグメントの端面相互間に生じる隙間を消滅させてキャビティ内に配されたゴム部材の変形、膨張にかかるゴムの侵入を阻止するシール部材を配置したことを特徴とするゴムクローラの加硫成型金型である。
【0010】
上記加硫成型金型においてシール部材は、セグメントの端面相互の突き合わせ(常温状態での突き合わせ)に際して隙間を0とする突出代を有するものが好ましい。
【0011】
シール部材として具体的に、テフロン(登録商標)樹脂、フッ素又はシリコンゴムを適用することができる。
【0012】
また、セグメントの突き合わせ端面には、成型面からシール部材に至るまでの間に緩衝領域を形成するのがよい。
【発明の効果】
【0013】
内金型を構成するセグメントの突き合わせ端面にシール部材を配置することによりゴムの侵入が回避され、はみ出しゴムが生じるのを軽減することができ、はみ出しゴムの除去作業等の簡便化が図られ、作業性が改善される。
【0014】
セグメント同士を付き合わせた際にその相互間に形成される隙間を0とするようにシール部材の突出代(シール代)を設定しておくことではみ出しゴムの生成を皆無とすることが可能となる。
【0015】
シール部材としてテフロン(登録商標)樹脂やフッ素またシリコンゴムを適用すると再使用ができるのでシール部材の取り替えにかかる作業頻度が少なくてすみ、効率的な加硫成型が行える。
【0016】
内型の成型面を形成するセグメントの内側面からシール部材の設置位置に至るまでの間に緩衝領域を形成しておく(シール部材を内型の成型面より内側(ロックリング側)へオフセットして配置すること)ことでゴムが変形、膨張する際の緩衝領域へゴムを逃がすことができるため、成型品の不良率を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明にしたがう円形一体加硫成型金型の実施の形態を模式的に示した図であり、図2は図1に示した加硫成型金型の要部の外観斜視図である。
【0018】
図における符号1はロックリング(油圧シリンダー等の駆動機構を備える)、2はロックリング1の外周面に沿って設置された内型である。内型2は端面を相互に突き合わせて連結した分割可能なセグメント2a〜2dからなっており、加硫成型に際しては該セグメント2a〜2dが位置ずれしないようにロックリング1において固定保持されている。
【0019】
また、3は内型2の上部に合わさってその内側にゴムクローラのキャビティを区画形成する外型である。この外型3も複数のセグメント3a〜3dからなっており、各セグメント3a〜3dは内型2を構成するセグメント2a〜2dに近接離隔する向きに移動できるようになっている(移動機構については図示せず)。
【0020】
さらに、4はセグメント2a〜2dの突き合わせ端面に配置されたシール部材である。セグメント2a〜2dの突き合わせ端面には緩衝領域mを隔てた箇所に該セグメント2a〜2dの幅方向に沿う溝部(成型面の形状に沿って形成されている)が設けられており、この溝部にシール部材4が配置されている。
【0021】
上記の構成になる加硫成型金型を用いて加硫成型を行うには、まず内型2をロックリング1で円形に固定し、該内型2にクローラを構成する各部材を順次に組み付ける。そして、外型3を縮径して内型2に合致させ加硫成型を実行し加硫成型完了後に外型3の拡径するとともにロックリング1による固定を解除、内型2を分解することにより成型品を取り出す。
【0022】
本発明にしたがう加硫金型を用いた加硫成型では、シール部材4がセグメント2a〜2dの突き合わせ端面においてゴムの侵入を阻止することができるためゴムの入り込みが軽減ないしは皆無となる。
【0023】
図3はセグメント2a〜2dの要部を示した図である。シール部材4の突出代tは常温状態でセグメント2a〜2dの端面相互の突き合わせに際して隙間が0となるように設定する。また、緩衝領域の幅Wについては成型品の不良を防止するため3〜5mm程度に設定するのがよく、さらに、シール部材4が変形する余地を持たせるためシール部材4と溝部との間には1mm程度の隙間δを設ける。
【0024】
セグメント2a〜2dは実際にはサイズの異なるものを交互に組み合わせて円形に固定し、大きいサイズのセグメントを移動させたのち小さいサイズのセグメントを移動させて分解する内型構造を採用する場合があり、このような内型2を適用するにあたっては小さいサイズのセグメントにシール部材4を配置し、図示はしないが、大きいサイズのセグメントの突き合わせ端面の下端部に面取りを設け、大きいサイズのセグメントを移動させる際にシール部材4に接触しないようにしておく。
【0025】
シール部材4は内型2の熱膨張による隙間の変化に対応するため少なくとも内型2の周長の1%以上の長さ変化に対して永久変形を生じさせない必要があり、とくにテフロン(登録商標)樹脂やフッ素又はシリコンゴムが本発明に有利に適合する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
はみ出しゴムの生成を軽減乃至は回避可能な円形一体加硫成型金型が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明にしたがうゴムクローラの加硫成型金型の実施の形態を模式的に示した図である。
【図2】図1に示した加硫成型金型の要部の外観斜視図である。
【図3】内型の要部の断面を示した図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ロックリング
2 内型
3 外型
4 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックリングの外周面に沿って設置される内型と、この内型に合わさってその内側にゴムクローラのキャビティを区画形成する外型とを備えた加硫成形金型であって、
前記内型が、端面を相互に突き合わせてロックリングの周りに沿って設置する複数のセグメントからなり、
該セグメントの突き合わせ端面の少なくとも一方に、セグメントの端面相互間に生じる隙間を消滅させるシール部材を配置したことを特徴とするゴムクローラの加硫成型金型。
【請求項2】
前記シール部材は、セグメントの端面相互の突き合わせに際して隙間を0とする突出代を有する請求項1記載のゴムクローラの加硫成型金型。
【請求項3】
前記シール部材は、テフロン(登録商標)樹脂、フッ素又はシリコンゴムである請求項1又は2記載のゴムクローラの加硫成型金型。
【請求項4】
前記セグメントの突き合わせ端面は、成型面からシール部材に至るまでの間に緩衝領域を有する請求項1〜3の何れかに記載のゴムクローラの加硫成型金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−202441(P2009−202441A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47368(P2008−47368)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】