説明

ゴムロールの製造方法及びゴムロール

【課題】研削工程における製品の切替に対応する砥石形状の変更の手間や、1本あたりに要する研削の時間、更に研削によって発生するゴムカスの問題に対する解決策であり、該後工程となる研削工程を必要としない、もしくは研削工程における研削量の削減を可能とする端部外径<中央部外径となるゴムロールの製造方法及び該方法によって作られるゴムロールを提供する。
【解決手段】芯金をクロスヘッドダイを通過させ,該芯金の外周上にゴム押出し機によりゴム材料を供給してなるゴムロールの押出し工程、該ゴムロールを該芯金長に切断する工程を有する端部外径<中央部外径となるゴムロール製造方法において、芯金にゴムを被覆するエリアにおける芯金とゴム材料を密着させる区間をクロスヘッドダイに内包される芯金ガイドを前後方向にスライドさせることによりゴム圧力及び密着区間を増減し、押出されるロールの外径を変動させながらゴムロールを押出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンター等に組み込まれる給紙ロール、帯電ロール、転写ロール、現像ロール、トナー供給ロール、クリーニングロール等に用いられる端部外径<中央部外径となるゴムロールの製造方法及びゴムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なクロスヘッド押出し機を使った端部外径<中央部外径の形状を持つゴムロールの製造方法において、連続的に芯金を投入しながらゴムコンパウンドを被覆していく成形方法では、図2に示すような押出し機ヘッド(1)内で円柱状にゴムが押出される中心部分に芯金ガイド(4)によって位置を決定されたあらかじめ接着用のプライマーが塗られた芯金(3)が芯金送りロール(2)により断続的且つ一定速度で送り込まれてくることにより、芯金-ゴム密着エリア(8)において該芯金外周に一定速度量で供給されるゴム材料(6)が一体的に被覆される。被覆エリアをとおり押出し機ヘッド先端口金(7)より押出された芯金-ゴムの円柱状一体物は押出し機に併設される引取り切断機によりロール1本づつの長さに引き離される。
【0003】
さらにこのようなロール製造においては以降の工程として、1本毎のロール長にされた円柱状のワークはコンベアーによって熱風炉の中を連続して搬送される。加硫反応がなされた後、必要なゴム長さに切断され、外径寸法及び必要外径寸法及び形状に加工するために研削工程に運ばれる。
【0004】
研削工程では、ゴム長を超える幅の切削回転砥石を回転させた該ワークに一定速度で押し当て、ワークを必要な外径寸法まで削り込む。この際、押し当てる研削砥石は製品に必要な形状に加工されており、一般的に端部外径<中央部外径となるゴムロール作成にあたっては、端部から中央部にかけて外径が大きくなるようなクラウン形状であったり端部から中央部にかけて何段階かのテーパー形状を持つように砥石がドレッシング加工されている。
【0005】
しかしながら、この研削工程では円柱形状のワークを高精度に形状加工できる反面、製品の切替に対応する砥石形状の変更の手間や、1本あたりに要する研削の時間、更に研削によって発生するゴムカスは材料使用の非効率に繋がり、処分する問題も発生する。
【0006】
また、クロスヘッド押出し機を用いたクラウン形状ゴムロール等の作成にあたっては、ゴムの供給量を押出し機のスクリュー回転数で制御する方法や、芯金を送る速度を制御し芯金にゴムをクラウン形状に付着させる方法が報告されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、ゴム供給量のスクリューによる制御では使用するゴムコンパウンドの特性や押出し機及びスクリュー形状仕様に大きく左右され、また制御の時間差から期待する高精度が望むことは困難である。また、芯金の供給速度を変化させて投入する手段においては芯金をヘッド内においても常に速度制御を維持させることが困難なためやはり高精度化には適さない。
【特許文献1】特開2004-145012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、研削工程における製品の切替に対応する砥石形状の変更の手間や、1本あたりに要する研削の時間、更に研削によって発生するゴムカスの問題に対して解決策を見出すものであり、該後工程となる研削工程を必要としない、もしくは研削工程における研削量の削減を可能とする端部外径<中央部外径となるゴムロールの製造方法及び該方法によって作られるゴムロールを提供することを目的とする。
【0008】
また、ゴムコンパウンドの供給量をスクリュー回転で制御したり、芯金の供給速度を制御することなく比較的安易な装置機構により端部外径<中央部外径となるゴムロールの製造方法を提供することにある。
またゴム圧力だけでなく、芯金ガイドをスライドさせる速度を調整することでよりローラの形状の制 御を効果的にし端部外径<中央部外径となるゴムロールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、以下により達成される。
【0010】
芯金をクロスヘッドダイを通過させ,該芯金の外周上にゴム押出し機によりゴム材料を供給してなるゴムロールの押出し工程、該ゴムロールを該芯金長に切断する工程を有する端部外径<中央部外径となるゴムロール製造方法において、ゴムロール押出し工程におけるゴムロールの端部形成部位でゴム圧力を減少させ、中央部形成部位で増加させることにより、押出されるロールの外径を変動させ、ゴムロールの端部外径<中央部外径としたことを特徴とするゴムロール製造方法によって達成される。
【0011】
また本発明は、上記成形方法を用いてゴムロールの形状が、長手方向1ロール長において0.1〜1.0mmの外径差を持たせた端部外径<中央部外径となるゴムロールに成形することにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、芯金にゴムを被覆するエリアにおけるゴム圧力及びゴム密着区間を芯金ガイドの前後方向スライドによって増減することにより、押出されるロールの外径を変動させながらゴムロールを押出すことによって、押出されるゴムロールの形状を長手方向1ロール長において0.1〜1.0mmの外径差を持たせた端部外径<中央部外径となるゴムロールに加工することができ、後工程における研削工程を必要としなくても同等の寸法精度のゴムロールを得ることができる。従って、研削工程が不要でゴムカスの発生が起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で用いられる芯金は、通常ロールの芯金として用いられている公知の材料を用いることができる。特に鉄、アルミニウム等の金属またはそれにメッキしたものが用いられ、芯金とゴム成分が十分に接着されるようにプライマーを塗布するものが好ましい。
【0014】
本発明で用いられるゴム材料としては、ロール材料として公知のもの、例えばニトリルブタジエンゴム、同水素化物、エピクロルヒドリンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、EPM、EPDM、シリコーンゴム、ウレタンゴムおよびこれらの混合物が例示される。ゴム材料のほかに、加硫剤、加硫促進剤、導電剤、帯電制御剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、滑剤等必要に応じて添加しても良い。
【0015】
以下、本発明につき、図1を参照にして詳しく説明する。
【0016】
本発明でのゴムロール製造方法では、ゴムコンパウンドと芯金を連続的に被覆可能なクロスヘッドタイプの押出し機を使用し、ゴム部分と接着をするために部分的に樹脂を主成分としたプライマーを塗布した芯金(3)を、断続的に芯金を供給する芯金送りロール(2)を用い芯金ガイド(4)に供給する。
【0017】
上記クロスヘッド押出し機はスクリュー径30から90mmの一軸ゴム用押出し機の先端にゴム押出し方向に垂直に芯金を通過させ芯金にゴムを被覆するヘッドを持つ。芯金は200〜350mmの長さの物を使用する。
【0018】
該芯金(3)はクロスヘッドダイ(1)内部の芯金-ゴム密着エリア(8)でゴムコンパウンドが被覆され円筒形の口金ダイス(7)からロール形状で押出される。
【0019】
この際、芯金へのゴム被覆エリア(8)の長さである芯金ガイド先端と口金ダイスとの距離は、一ロール長の端部部位を押出している時は短く、一ロール中央部に向かうにつれ長くなる。その後、端部に向かって再度短くなるよう増減する。その結果、ゴム被覆エリアにおけるゴムの圧力が増減し、口金から押出されるゴムロールの外径が変化する。
【0020】
この距離の変化を芯金ガイド(4)の前進後退のスライド動作により一定に行なうことで押出されるワークは端部外径が細く、中央部に向かい外径が大きくなり、中央部を過ぎて端部に向かい外径が細くなるというゴム被覆過程を得る。
【0021】
該芯金ガイドのスライドは、芯金ガイドが一定の筒内を前後することを可能とする後方の機械的機構(11)(12)(図不示)をプログラムされた電気的制御によって駆動し、ロールの送り速度と合わせてプログラムによるロールの外径コントロールを可能としている。
【0022】
このようにして所望の端部外径<中央部外径にゴムを被覆したワークは熱風加硫炉内で加熱処理され、必要なゴム長に切断されゴムロール製品とされる。
【0023】
本願発明のロールは単層構造でも積層構造でも良い。本発明のロールは電子写真用の現像ロール、帯電ロール、転写ロール等として用いることができる。
【0024】
以下、具体的に本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0025】
軸体となる金属芯金は鉄材を押し出し成形により直径約6mmの棒材に押出し、長さ258mmに切断後、これに化学メッキを厚さ約3μm施したものを用意した。
【0026】
該芯金にスチレン系樹脂を主成分とするホットメルトタイプの導電性プライマーを端部から14mmを除き一様に厚さ約10μm塗布した。
【0027】
該芯金は押出し機ヘッドに付帯された芯金供給装置及びクロスヘッドダイ内の芯金ガイドによりクロスヘッド内部のゴム被覆エリアへ搬送される。
【0028】
押出し機はφ60mmスクリューを持つ一軸ベント式押出し機にクロスヘッドタイプの芯金、ゴム被覆機能を備え、ゴム突出部のダイス径はφ11.5mmとし、ヘッド全体は約40℃に温度調整がなされる。
【0029】
クロスヘッド内に芯金を搬送する芯金ガイドは後端部にボールねじを有しモータートルクによって芯金送り方向に前後35mmスライドする機構を備えており、その駆動制御は電気的プログラムによる。
【0030】
押出し機によりEPDMを主成分とし、各種充填材、可塑剤、補強剤、及び加硫剤を混練したゴムコンパウンドをスクリュウ回転数15rpmで押出し、合わせて芯金を2.0m/minで断続的に供給した。
【0031】
芯金ガイドのスライドプログラムは端部時に、ダイス先端からニップル先端までの距離3mm、以降中央部押出しにかけて円弧形状を押出せる速度で距離を離し、中央部においてダイス先端からニップル先端までの距離は18mmとなるように設定した。
【0032】
該芯金ガイドのスライド動作に伴うスクリュー付近のゴム圧力(9)、口金付近のゴム圧力(10)及び押出されるゴムロールの外径の関係を表1に示す。
【0033】
実際には芯金ガイドの前後スライドに対し、ゴム圧力の変化、押出し外径の変化は一定の時間差があり、一ロールをクラウン形状もしくは端部外径<中央部外径形状に押出し成形するにあたり時間差を考慮したプログラムによってスライド動作が行なわれる。
【0034】
このように押出されたゴムロールは併設される引取り機により1本づつに切り離され一ロールは外径端部<外径中央部となるゴムロールとなり、後工程の熱処理により加硫される。
【0035】
その後、両端部12mmのゴム部位を切除することで両端部12mm芯金部位と234mmの円弧状からなるゴムロール部位を作りだし一定の製品となる。
【0036】
このようにして得られたゴムロール外径寸法を芯金面をV溝で受け10rpmで9秒間回転させた状態でレーザー測長機により測定し、ロール各点における平均外径、周回転に伴う半径の振れを測定したものを表2に示す。
【比較例】
【0037】
軸体となる金属芯金は鉄材を押し出し成形により直径約6mmの棒材に押出し、長さ258mmに切断後、これに化学メッキを厚さ約3μm施したものを用意した。
【0038】
該芯金にスチレン系樹脂を主成分とするホットメルトタイプの導電性プライマーを端部から14mmを除き一様に厚さ約10μm塗布した。
【0039】
該芯金は押出し機ヘッドに付帯された芯金供給装置及びクロスヘッドダイ内の芯金ガイドによりクロスヘッド内部のゴム被覆エリアへ搬送される。
【0040】
押出し機はφ60mmスクリューを持つ一軸ベント式押出し機にクロスヘッドタイプの芯金、ゴム被覆機能を備え、ゴム突出部のダイス径はφ11.5mmとし、ヘッド全体は約40℃に温度調整がなされる。
【0041】
クロスヘッド内に芯金を搬送する芯金ガイドは、ゴムを排出する円柱形口金に対し、ロール中心軸を規定する位置に固定される。
【0042】
押出し機によりEPDMを主成分とし、各種充填材、可塑剤、補強剤、及び加硫剤を混練したゴムコンパウンドをスクリュウ回転数15rpmで押出し、合わせて芯金を2.0m/minで断続的に供給した。
【0043】
このようにして押出されたゴムロールは一定の外径を保った円柱状として排出され、併設する引取り機によって一本づつに切り離される。
【0044】
このゴムロールは熱処理による加硫工程を経て形状を固めた後、両端部12mmのゴム部位を切除することで両端部12mmの芯金部位と234mmのゴムロール部位を作成する。
【0045】
更に本ロールは幅250mm、直径約300mmの研削用砥石を用いて研削する。該砥石はゴムロール長にあたる234mmにおいて中央部が深いクラウン形状にドレッシング加工されており、本砥石を約1500rpmで回転させ、ワークは砥石とは逆回転方向に200rpmで回転させ、ワークを所望の外径寸法まで10.0mm/minで削り込んで行き、スハ゜ークアウト10秒をとり所望のロール形状を得た。
【0046】
このようにして得られたゴムロール外径寸法を芯金面をV溝で受け10rpmで9秒間回転させた状態でレーザー測長機により測定し、ロール各点における平均外径、周回転に伴う半径の振れを測定したものを表3に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】芯金ガイド部分をスライド可にしたゴムロール製造装置略図
【図2】従来のクロスヘッド押出し機によるゴムロール製造装置略図
【符号の説明】
【0051】
1.クロスヘッド
2.芯金供給コロ
3.プライマー塗布済み芯金
4.芯金ガイド
5.押出し機シリンダー
6.ゴム
7.口金ダイス
8.芯金-ゴム密着エリア
9.シリンダー内圧測定機
10.口金部内圧測定機
11.スライド機構ネジ
12.スライド機構モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金をクロスヘッドダイを通過させ、該芯金の外周上にゴム押出し機によりゴム材料を供給してなるゴムロールの押出し工程、該ゴムロールを該芯金長に切断する工程を有するゴムロール製造方法において、ゴムロール押出し工程におけるゴムロールの端部形成部位でゴム圧力を減少させ、中央部形成部位で増加させることにより、押出されるロールの外径を変動させ、ゴムロールの端部外径<中央部外径としたことを特徴とするゴムロール製造方法。
【請求項2】
該ゴムロール押出し工程における該芯金と該ゴム材料を密着させる区間において、クロスヘッドダイに内包される芯金ガイドを芯金送り方向に対して、該ゴムロールの端部形成部位での前後方向にスライドさせる速度を速め、また、該中央部形成部位で、該速度を遅くすることによってゴム圧力及び密着区間を暫増暫減させることを特徴とする請求項1記載のゴムロール製造方法。
【請求項3】
ゴムロールの形状が、1ロール長において0.1〜1.0mmの外径差を有し且つ端部外径<中央部外径となっていることを特徴とする請求項1及び2記載のゴムロール製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の製造方法により作製されたことを特徴とする電子写真装置用ゴムロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−305770(P2006−305770A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128174(P2005−128174)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】