説明

ゴム引布の成形方法、ダイヤフラムの製造方法

【課題】 ゴム引布の基布を構成する繊維の縦方向及び横方向の各特性の変動の影響を受けないゴム引布の成形方法、ダイヤフラムの製造方法の提供。
【解決手段】 基布の両面にゴムを塗設及び圧縮して3層構造に積層したゴム引布の連続ロールを切断してシート体7を得る切断工程と、切断された複数枚のシート体を載置板8上に重ねて載置して一次加硫する一次加硫工程と、一次加硫工程後のシート体を、一枚ずつ成形金型に装填し、加熱しつつ加圧して、シート体に対する二次加硫とプレス成形とを同時に行うプレス二次加硫工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム引布の成形方法、ダイヤフラムの製造方法に係り、特に薄肉のダイヤフラムの製造に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基布の両面にゴムを塗設及び圧縮して3層構造に積層したゴム引布を用いて製造される種々のゴム製工業製品が知られている。このように基布の両面にゴム層を設けて積層されたゴム引布は、加硫工程にて通常は加硫処理が行われる。
【0003】
図8(a)は、従来のゴム引布を加硫するための垂れ加硫装置を示す模式図、(b)は従来の巻き加硫装置を示す模式図、(c)は従来の連続空気加硫装置を示す模式図、(d)は従来の連続プレス加硫装置を示す模式図である。
【0004】
先ず、図8(a)において、積層工程で連続成形されるゴム引布の積層体4は、水平に配置される複数の支持棒体11の間から下方に垂れ下がるように支持される。このとき、基布の繊維は長手方向に沿う縦方向と、長手方向に直交する横方向になる。このように支持した状態で加硫槽10内に収納して加硫を行った後に、支持棒体11による支持部位4aと垂れ下がりの最下部位4bは、加硫状態にムラがあるのでこれらを切除することで加硫後のシート体を得る。この加硫後のシート体を成形金型に一枚ごとに装填してゴム成形品を得るようにしている。
【0005】
また、図8(b)において、積層工程で連続成形されるゴム引布の積層体4を、水平に支持されるドラム体12の外周面に巻き付けることで、基布の繊維は長手方向に沿う縦方向と、長手方向に直交する横方向になる状態にする。このようにドラム体12に巻き付けた状態で加硫槽10内に収納して加硫を行う。その後、加硫後のシート体を得てから加硫後のシート体を成形金型に一枚ごとに装填してゴム成形品を得ることができる。
【0006】
さらに、図8(c)において、ゴム引布の積層体4を巻き付けた連続ロール5を連続空気加硫装置30に対して図示のようにセットし、各ローラ間で加熱を含む加硫を行い、不図示の巻き取り装置で連続ロール5を得る。このとき、基布の繊維は巻き取り方向の長手方向に沿う縦方向と、長手方向に直交する横方向になる。
【0007】
そして、図8(d)において、ゴム引布の積層体4を巻き付けた連続ロール5を連続プレス加硫装置40に対して図示のように装填し、加熱ローラ41とステンレスベルト42の間で加熱を含む加硫を行い不図示の巻き取り装置により連続ロール5を得る。この連続ロールの基布の繊維は巻き取り方向の長手方向に沿う縦方向と、長手方向に直交する横方向になる。
【0008】
以上のように3層構造に積層されたゴム引布の加硫処理は、通常は上記の各種加硫装置を経て実施される。
【0009】
一方、基布の片面にゴム層を形成した加硫前のゴムトッピングシートをカレンダリング装置を用いて準備し、さらにゴム成形金型を用いて加硫前のゴム成形品を準備しておき、ゴム成形金型を構成する下型と下型の間にゴムトッピングシートの基布側がゴム成形品に対して接する状態で装填した後に、型締めして加圧及び加硫処理することでダイヤフラムを製造する提案がなされている。この提案によれば上型と下型との間に設けられる中型を不要にできるので、ゴム成形金型の簡略化が実現可能になる(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−167941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゴム製工業製品の内で、例えば薄い肉厚のダイヤフラムをゴム成形金型を用いて製造する場合には、基布を構成する縦糸、横糸からなる繊維の方向性の影響を無視できなくなる。また、上記のように100%の加硫処理を行った後のゴム引布を用いて成型を行うと、特に薄肉の製品ではキャビティ形状に正確に沿う成形品を得ることが困難となることも知られている。
【0011】
そこで、加硫前のゴム引布を金型に装填することが考えられる。しかしこの場合には、型締め後の圧縮時において、ゴム成形金型のキャビティ面に当接するゴム層が圧縮されるとゴム層は金型のキャビティ面に沿うように流動してしまうことになる。一方、本来は中間に位置するべき基布は、キャビティ面に追従して移動できないことから、特にキャビティの凹凸面で基布の繊維の偏りが生じることになる。
【0012】
このようにして発生する基布の偏在化は、基布の縦方向及び横方向に沿う収縮率の異方性及び加硫時における皺の発生原因となる。このため、最終製品の性能を顕著に低下させてしまう問題がある。
【0013】
したがって、本発明は上記の事情に鑑み、ゴム引布の基布を構成する繊維の縦方向及び横方向の各特性の変動の影響を受けないゴム引布の成形方法、ダイヤフラムの製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、本発明のゴム引布の成形方法によれば、基布の両面にゴムを積層したゴム引布の連続ロールを切断してシート体を得る切断工程と、前記切断された複数枚の前記シート体を載置部材上に重ねて載置して一次加硫する一次加硫工程と、前記一次加硫工程後の前記シート体を、一枚ずつ成形金型に装填し、加熱しつつ加圧して、前記シート体に対する二次加硫とプレス成形とを同時に行うプレス二次加硫工程とを含むことを特徴としている。
【0015】
また、前記載置部材は、その収縮率及び熱伝導率が前記ゴム引布の収縮率及び熱伝導率と近似する樹脂材料から構成されることを特徴としている。
【0016】
また、基布の両面にゴムを積層したゴム引布の連続ロールからダイヤフラムを製造するダイヤフラムの製造方法であって、上記の各工程を含むことを特徴としている。
【0017】
そして、前記ダイヤフラムは、スロットルの開閉操作で変動する空気流量と、ガソリンの供給量との混合比を最適にするように燃料弁を作動させるキャブレター用ダイヤフラムであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明のゴム引布の成形方法、ダイヤフラムの製造方法によれば、ゴム成形金型の型締め後の圧縮時にゴム成形金型のキャビティ面に当接するゴム層が圧縮され、キャビティ面に追従する際に発生する応力が作用しても、基布に偏りが生じることが防止され、基布の縦方向及び横方向の特性を同様にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明すると、図1は、本発明の基布の両面にゴムを塗設及び圧縮して3層構造に積層したゴム引布の連続ロールを得る工程で使用されるカレンダリング装置100の一例を図示した模式図である。このカレンダリング装置100によれば、1回の通過工程を経ることで基布の両面にゴム層が形成される事例について図示しているが、基布の片側の片面に対して1工程で一方のゴム層を形成し、続く工程で基布の他方の面に他方のゴム層を形成するカレンダリング加工でも良いことは言うまでもない。
【0020】
また、図2は、本発明の切断工程後にゴム引布を加硫する一次加硫工程について、模式図とともに図示したフローチャートである。
【0021】
先ず、図2において、処理が開始されるとステップS1においてカレンダリング装置を用いて積層体の積層が行われて、ステップS2において連続ロール5を得る。具体的には、図1を参照して、加硫剤、触媒などを混練したゴム2がホッパー内に収容されており、ホッパーの下方に連続供給されることで、夫々矢印方向に回転駆動されるトップロール102とサイドロール101の間の間隙部を通過する。この通過の過程でゴム2は一次圧延されて所定肉厚のシート状のゴム層2となる。この後に、矢印方向に回転駆動される下方の中間ロール103の外周面に沿うように案内されて、矢印方向に駆動されるプレスロール105との間の間隙部に案内されることで、二次圧延されてさらに薄い肉厚にされた後に基布1の上面と合体される。
【0022】
基布1は図示のように巻き付けられた長尺体として準備されており、プレスロール105に対向して所定間隙を隔てて設けられるプレスローラ104により案内されることで図示のように挟み込まれる。また、さらに同様なカレンダー加工により得られたシート状のゴム層3を基布1の上に積層するために矢印方向に回転駆動されるプレスロール106、107の間隙の間を通過されることでゴム引布の積層体4が連続製造される。
【0023】
この積層体4を巻き取り装置110により巻き取ることで連続ロール5を得る。以上の工程を経て得られるゴム引布は、ゴムと基布の間の実接着強度は小さくても、基布がゴムから脱離することがなくなる結果、見掛け上大きい接着強度が得られることになる。
【0024】
次に、図2のステップS3において、切断工程を行うために、連続ロール5を切断装置9で同じサイズに切断して多数のシート体7を得る。このように切断した後に、ステップS4に進み、載置部材である載置板8上に最大で80枚(例えば、シート体7の肉厚が0.2mmの場合)、通常は50枚重ねた状態で載置する。シート体7のサイズは一片が約30cmの正方形が良いが、このサイズは成形金型のサイズから決定されるので、適宜設定されることになる。
【0025】
この載置板8は、シリコン樹脂、ゴム板などその収縮率及び熱伝導率がゴム引布の収縮率及び熱伝導率と近似する樹脂材料から構成すると良い。ちなみに、この載置板8を金属製とした場合には、その収縮率及び熱伝導率がゴム引布の約10倍以上となることから、特に収縮率の差に基づく皺がシート体7の載置面に大きく発生する不良品となることが確認された。これに対して、上記の樹脂製の載置板8を使用することで、皺発生の不良品がゼロになった。また、加硫工程でブロッキングし易いゴム引布の場合には、各シート体7の間に澱粉粉、炭酸カルシウムなどの粉体を散布すると良い。
【0026】
このステップS4に続いてステップS5に進み、切断された複数枚のシート体7を載置板8上に重ねて載置した状態で、加硫槽10内に収納し、加熱により約80%分の加硫を行う。具体的には、約110℃で、約2時間かけて一次加硫を行う。続くステップS6において、この一次加硫が終了したと判断されると、ステップS7に進み、加硫槽10から、複数枚のシート体7を載置板8上に重ねて載置した状態で外部に取り出す。
【0027】
この後、図3の一次加硫工程後のゴム引布を成形金型に装填し、成形金型を型締めしてプレス加工を行う本発明のプレス二次加硫工程に進む。
【0028】
図3において、ステップS8では加硫工程後のシート体7を、一枚ずつ成形金型の上型21と下型20の間に装填する。この装填作業はロボット装置により行うことで省力化が図れることになるが、無論手作業で行っても良い。次に、ステップS9に進み、型締めを行うことでキャビティの上面と下面との間でシート体7を挟持する状態を維持する。これに続き、ステップS10に進み、成形金型に内蔵されたヒータ25への通電を行い、加熱しつつ加圧して、シート体7に対する二次加硫とプレス成形とを同時に行うプレス二次加硫工程を行う。次のステップS11では、無論、ゴム引布の肉厚により変動するが、例えば180℃で約3.5分間のプレス二次加硫工程が終了するのを待ち、この工程が終了するとステップS12に進み、離型及び完成品の取り出しを行い全処理工程を終了する。
【0029】
以上のように成形することで、成形金型の型締め後の圧縮時にゴム成形金型のキャビティ面に当接するゴム層2、3が厚み変動なく圧縮される。また、仮にキャビティ面に追従する際に発生する応力が作用しても、基布1に偏りが生じることが防止され、基布1の縦方向及び横方向の特性を略同様にすることができる。
【0030】
図4は、図8を参照して述べた従来の加硫後のゴム引布と、上記の各工程を経て得られた成形品の基布の繊維の縦横方向の収縮率の対比表である。
【0031】
本図において、図8(a)で図示された垂れ加硫装置によれば基布の繊維の縦(糸)方向の収縮率は約0.35%であり、横(糸)方向の収縮率は約0.15%となり、その差は約0.2%となった。
【0032】
また、図8(b)で図示された巻き加硫装置によれば基布の繊維の縦(糸)方向の収縮率は約0.85%であり、横(糸)方向の収縮率は約0.1%となり、その差は約0.75%と大きくなることが確認された。
【0033】
また、図8(c)で図示された連続空気加硫装置によれば基布の繊維の縦(糸)方向の収縮率は約0.75%であり、横(糸)方向の収縮率は約0.15%となり、その差は約0.65%とやや大きくなることが確認された。
【0034】
そして、図8(d)で図示された連続プレス加硫装置によれば基布の繊維の縦(糸)方向の収縮率は約0.65%であり、横(糸)方向の収縮率は約0.25%となり、その差は約0.4%となることが確認された。
【0035】
これに対して、本発明の重ね加硫によれば、上段の基布の繊維の縦(糸)方向の収縮率は約0.35%であり、横(糸)方向の収縮率は約0.25%となり、その差は約0.1%と少なくなることが確認された。また、中段の基布の繊維の縦(糸)方向の収縮率は約0.3%であり、横(糸)方向の収縮率は約0.3%と略同一になることが確認された。 そして、下段の基布の繊維の縦(糸)方向の収縮率は約0.45%であり、横(糸)方向の収縮率は約0.38%となり、その差は約0.07%となり、少なくなることが確認された。
【0036】
以上のような収縮率を得ることで、基布の縦方向及び横方向に沿う収縮率の異方性により加硫時における皺の発生原因を排除できるようになる。このため、最終製品の性能を顕著に低下させることが無くなる。
【0037】
さらに、図5(a)の従来の金型充填状態を示す要部断面図と図5(b)の本発明の装填及び型締めされた状態でゴム引布を加硫するプレス二次加硫工程を示す要部断面図において、図5(a)に図示されるように基布1がキャビティ面の凹部において偏在する編在部位1k、1kの発生を防止を図ることができる。
【0038】
すなわち、図5(b)に図示のように、キャビティの凹凸面で基布の繊維の偏りが生じることなくゴム層2、3間の中間層に基布1が位置されて成形されることになる。
【0039】
尚、ゴム引布は、布帛の両面に例えばニトリルブタジエンゴム(NBR)をゴム層を積層した積層構造を備えていると良い。また、布帛の材質に特に制限はなく、例えば、レーヨン、アセテート繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ボリエステル繊維などを挙げることができる。これらの中で、特にポリエスデル繊維が好適に用いられる。
【0040】
また、ゴム引布の基布を形成する縦横の糸の太さは適宜設定される。ゴム引布の基布の布目の大きさは、0.1〜1.2mmであると良い。基布の布目の大きさは、基布の布目と等しい面積を有する円の直径として表した値である。基布にはフェノール樹脂などを用いて前処理を施し、ゴムとの接着性を向上させることができるが、それでも基布とゴムの接着性が十分でない場合にはゴム引布の基布の布目の大きさを0.3〜1.5mmとすることにより、基布の両面のゴム層が布目を介して接合し、基布とゴムとの見掛け上の接着性を向上することができる。
【0041】
ゴム層として上記のニトリルブタジエンゴム(NBR)以外に、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)ゴムを使用することで耐熱性を得ることができる。このエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)ゴムは、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1、4−ヘキサジエンなどのジエンモノマーとの共重合体であり、硫黄を用いた加硫、過酸化物を用いた加硫(加硫反応)などが可能である。エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)ゴムは耐熟性か良好なので、繰り返し加熱して使用される用途に最適である。
【0042】
ゴム層は、上記の他に、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、EPDMエラストマー等が挙げられる。また、ゴム引布の基布用の素材としては、上記の他に、綿織物、ポリエステル織物、ポリアミド織物、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ニトロセルロース繊維等が挙げられる。
【0043】
この製造袋用のゴム引布の製造方法に特に制限はなく、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)ゴムには、必要に応じて、カーボンブラックFEF(Fast Extrusion Furnace)、ブロセスオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、加硫促進剤、硫黄、ジクミルパーオキシド、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)などを配合することができる。
【0044】
図6は、上記の各工程を経て製造されたダイヤフラム201を用いたキャブレター200の模式図である。このダイヤフラム201は耐油性、耐揮発油性を確保するために上記のニトリルブタジエンゴム(NBR)をゴム層として、肉厚が0.2mmとなるように形成される。
【0045】
このキャブレター200は、スロットルの開閉操作で変動する開閉弁202を空気流路203の上流側に配置しており、この空気流路203に対してその作動面が露出する状態でダイヤフラム201が図示のように固定されている。このダイヤフラム201は、スロットルの開度に応じて変動する空気流量に応じて白矢印方向に移動するように弾性変形する。このダイヤフラム201には燃料弁206を一端に固定したレバー部材204の他端が固定されており、上記の空気量と、ガソリンタンク205から供給されるガソリンの供給量との混合比を最適にするように燃料弁206を作動させることで、不図示の内燃機関に対してガソリンと空気の混合気を供給するように構成されている。
【0046】
このように使用されるダイヤフラムによれば、上記の弾性変形後に初期状態に復帰するヒステリシス特性が重要となる。
【0047】
図7(a)はダイヤフラム特性の試験装置の模式図、(b)はダイヤフラムの比較特性図である。
【0048】
図7(a)に図示のように、この試験装置はダイヤフラム201を圧力ポンプに接続された密閉室に対して固定し、途中に圧力計を接続している。また、ダイヤフラム201の作動面上には板部材を介してストローク計測のための変位計(マイクロメータ)が不図示の基板上に固定されている。
【0049】
以上の試験装置において、密閉室内の圧力を次第に高めた後に、低くすることで図7(b)において実線で図示したダイヤフラムのヒステリス特性を得た。また、比較のために試験した従来からの製造方法によるダイヤフラムによれば、破線で図示したダイヤフラムのヒステリス特性を得た。
【0050】
すなわち、本発明の製造方法で製造されたダイヤフラムによれば、小さいヒステリシス特性を得ることが可能になるので、ストロークと作動圧力から決定されるストットルの開度変動に対する反応速度を向上できることが確認された。これに対して従来からの製造方法によるダイヤフラムによれば、図示のような大きなヒステリシス特性となるので、ストットルの開度変動に対する反応速度が鈍くなり、燃費が悪化することも確認された。
【0051】
以上のように、最適なキャブレター用のダイヤフラムが実現可能になるが、これに限らすレギュレータ用ダイヤフラム、各種流量計用ダイヤフラム、空気圧発生用ダイヤフラムなどの製造にも本発明の製造方法が適用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】は、本発明の3層構造に積層したゴム引布の連続ロールを得るための一例であるカレンダリング装置の模式図である。
【図2】は、本発明の切断工程後にゴム引布を加硫する一次加硫工程について、模式図とともに図示したフローチャートである。
【図3】は、一次加硫工程後のゴム引布を成形金型に装填し、成形金型を型締めする本発明のプレス二次加硫工程について、模式図とともに図示したフローチャートである。
【図4】は基布の繊維方向の収縮率の対比表である。
【図5】(a)は従来の金型充填状態を示す要部断面図、(b)は本発明の装填及び型締めされた状態でゴム引布を加硫するプレス二次加硫工程を示す要部断面図である。
【図6】はキャブレターの模式図である。
【図7】(a)はダイヤフラム特性の試験装置の模式図、(b)はダイヤフラムの比較特性図である。
【図8】(a)は従来のゴム引布を加硫するための垂れ加硫装置を示す模式図、(b)は従来の巻き加硫装置を示す模式図、(c)は従来の連続空気加硫装置を示す模式図、(d)は従来の連続プレス加硫装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1 基布
2、3 ゴム層
4 積層体
5 連続ロール
7 シート体
8 載置部材
9 切断装置
10 加硫槽
20 下型(成形金型)
21 上型(成形金型)
200 キャブレター
201 ダイヤフラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布の両面にゴムを積層したゴム引布の連続ロールを切断してシート体を得る切断工程と、
前記切断された複数枚の前記シート体を載置部材上に重ねて載置して一次加硫する一次加硫工程と、
前記一次加硫工程後の前記シート体を、一枚ずつ成形金型に装填し、加熱しつつ加圧して、前記シート体に対する二次加硫とプレス成形とを同時に行うプレス二次加硫工程とを含むことを特徴とするゴム引布の成形方法。
【請求項2】
前記載置部材は、その収縮率及び熱伝導率が前記ゴム引布の収縮率及び熱伝導率と近似する樹脂材料から構成されることを特徴とする請求項2に記載のゴム引布の成形方法。
【請求項3】
基布の両面にゴムを積層したゴム引布の連続ロールからダイヤフラムを製造するダイヤフラムの製造方法であって、
請求項1又は請求項2に記載の前記各工程を含むことを特徴とするダイヤフラムの製造方法。
【請求項4】
前記ダイヤフラムは、スロットルの開閉操作で変動する空気流量と、ガソリンの供給量との混合比を最適にするように燃料弁を作動させるキャブレター用ダイヤフラムであることを特徴とする請求項3に記載のダイヤフラムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−51105(P2009−51105A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220340(P2007−220340)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】