説明

サイドエアバッグ装置

【課題】製造コストや質量を低減することができるサイドエアバッグ装置を得る。
【解決手段】サイドエアバッグ装置100のエアバッグ20では、上室基布26の下端側と下室基布26の上端側とが重ね合わされて縫合されているが、内側重ね合わせ部30のうちシートバックフレームと対向する部位に非縫合部37が設けられることによりインフレータ挿入口38が形成されている。これにより、本サイドエアバッグ装置100の製造時には、このインフレータ挿入口38を介してエアバッグ20内へインフレータ22を挿入することができる。しかも、インフレータ22は、エアバッグ20内に配置された本体部22Aとシートバックフレームとの間に非縫合部37を挟んだ状態でシートバックフレームに固定される。これにより、インフレータ挿入口38からのガス漏れを防止又は抑制することができるため、ガス漏れ防止用の当て布を省略することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに搭載されるサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されたエアバッグ装置では、エアバッグのバッグ本体に形成されたガス発生器挿入口が、当該バッグ本体の内部に設けられた当て布によって覆われている。この当て布には、バッグ本体のガス発生器挿入口とはズレた位置にガス発生器挿入口が形成されている。これらのガス発生器挿入口は、ガス発生器が作動した際のガスの圧力によって当て布がバッグ本体の内面に押し付けられることにより塞がれるようになっている。これにより、上記各ガス発生器挿入口を介したガス漏れを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−175302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如きエアバッグ装置では、上述の当て布(シール布等)を必要とすることによって装置の製造コストや質量が増加するため、改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、製造コストや質量を低減することができるサイドエアバッグ装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るサイドエアバッグ装置は、上室基布の下端側と下室基布の上端側とが重ね合わされて縫合され、内部が上室及び下室を含む複数の室に区画された袋状に縫製されると共に、前記複数の室を連通する連通部を有し、折り畳まれた状態で車両用シートのシートバックのサイド部に内設されると共に、前記重ね合わせ部のうちシートバックフレームのサイドフレーム部と対向する部位に非縫合部が設けられることによりガス発生器挿入口が設けられたエアバッグと、前記エアバッグ内に本体部が配置され、前記サイドフレーム部との間に前記非縫合部を挟んだ状態で前記サイドフレーム部に固定されると共に、作動することによりガスを発生させて前記エアバッグを膨張展開させるガス発生器と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載のサイドエアバッグ装置では、上室基布と下室基布とによって縫製されたエアバッグの内部が上室及び下室を含む複数の室に区画されており、エアバッグに設けられた連通部によって上記複数の室が連通されている。そして、ガス発生器がガスを発生させると、上記複数の室にガスが供給され、エアバッグが膨張展開する。
【0008】
ここで、上述のエアバッグは、上室基布の下端側と下室基布の上端側とが重ね合わされて縫合されているが、当該重ね合わせ部のうちシートバックフレームのサイドフレーム部と対向する部位に非縫合部が設けられることによりガス発生器挿入口が形成されている。これにより、本サイドエアバッグ装置の製造時には、当該ガス発生器挿入口を介してエアバッグ内へガス発生器を挿入することができる。しかも、ガス発生器は、エアバッグ内に配置された本体部とサイドフレーム部との間に上記非縫合部を挟んだ状態でサイドフレーム部に固定される。これにより、上記非縫合部(すなわちガス発生器挿入口)からのガス漏れを防止又は抑制することができるため、ガス漏れ防止用の当て布を省略することができる。したがって、装置の製造コストや質量を低減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係るサイドエアバッグ装置は、請求項1に記載のサイドエアバッグ装置において、前記ガス発生器は、前記本体部から前記サイドフレーム部側へ突出し、前記本体部を前記サイドフレーム部に締結するための上下一対のスタッドボルトを有し、前記非縫合部は、前記上下一対のスタッドボルトの間に配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載のサイドエアバッグ装置では、ガス発生器の本体部をサイドフレーム部に締結するための上下一対のスタッドボルト間に、上室基布と下室基布との重ね合わせ部に設けられた非縫合部が配置されるため、エアバッグの膨張展開によって上室基布及び下室基布に上下方向の張力が作用した際に、上記非縫合部(すなわちガス発生器挿入口)が広がることを防止又は抑制することができる。これにより、ガス発生器挿入口からのガス漏れを一層良好に防止又は抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係るサイドエアバッグ装置は、請求項2に記載のサイドエアバッグ装置において、前記上下一対のスタッドボルトのうち下側のスタッドボルトは、前記上室基布と前記下室基布との重ね合わせ部において前記上室基布及び前記下室基布のそれぞれに形成された貫通孔を貫通していることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載のサイドエアバッグ装置では、ガス発生器の下側のスタッドボルトが、上室基布と下室基布との重ね合わせ部において上室基布及び下室基布のそれぞれに形成された貫通孔を貫通している。これにより、上室基布と下室基布との上記重ね合わせ部における上下方向の位置ずれが下側のスタッドボルトによって規制されるため、当接位置ずれに起因した非縫合部(ガス発生器挿入口)の広がりを下側のスタッドボルトによって阻止することができる。したがって、ガス発生器挿入口からのガス漏れをより一層良好に防止又は抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、請求項1に記載の発明に係るサイドエアバッグ装置では、製造コストや質量を低減することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明に係るサイドエアバッグ装置では、エアバッグの膨張展開時にガス発生器挿入口が広がることを防止又は抑制することができ、ガス発生器挿入口からのガス漏れを一層良好に防止又は抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明に係るサイドエアバッグ装置では、ガス発生器挿入口からのガス漏れをより一層良好に防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係るサイドエアバッグ装置が搭載された車両用シートの主要部の構成を示す概略的な側面図である。
【図2】第1実施形態に係るサイドエアバッグ装置をシートバックフレーム側から見た状態で示す概略的な側面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った切断面を示す拡大断面図である。
【図4】図2の4−4線に沿った切断面を示す拡大断面図である。
【図5】図2の5−5線に沿った切断面を示す拡大断面図である。
【図6】第1実施形態に係るサイドエアバッグ装置の構成部材であるエアバッグに設けられたインフレータ挿入口が広げられた状態を示す拡大断面図である。
【図7】第1実施形態に係るエアバッグに設けられた筒状部が腰部チャンバの内圧で押し潰された状態を示す図5に対応した拡大断面図である。
【図8】第2実施形態に係るサイドエアバッグ装置をシートバックフレーム側から見た状態で示す概略的な側面図である。
【図9】図8の9−9線に沿った切断面を示す拡大断面図である。
【図10】図8の10−10線に沿った切断面を示す拡大断面図である。
【図11】第2実施形態に係るエアバッグに設けられた筒状部が腰部チャンバの内圧で押し潰された状態を示す図10に対応した拡大断面図である。
【図12】参考例に係るサイドエアバッグ装置をシートバックフレーム側から見た状態で示す概略的な側面図である。
【図13】図12の13−13線に沿った切断面を示す拡大断面図である。
【図14】図12の14−14線に沿った切断面を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、図1〜図7を用いて、本発明の第1実施形態に係るサイドエアバッグ装置100について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは、このサイドエアバッグ装置100が搭載された車両用シート15の前方側を示し、矢印UPは車両用シート15の上方側を示し、矢印INは車両用シート15の幅方向内側を示している。
【0018】
図1には、サイドエアバッグ装置100が搭載された車両用シート15の主要部の構成が概略的な側面図にて示されている。この図に示されるように、車両用シート15は、乗員14が着座するシートクッション16と、このシートクッション16の後端部に傾倒可能に支持されて着座乗員17の背もたれとして利用されるシートバック18とを備えている。なお、本実施形態では、車両用シート15の前方向、上方向、及び幅方向は、車両の前方向、上方向、及び幅方向と略一致している。
【0019】
シートバック18のドア側サイド部18A(図示しないサイドドア側の側部)の内部には、サイドエアバッグ装置100が配設されている。サイドエアバッグ装置100は、シートバック18の前方側及び上下方向へ膨張展開して着座乗員17を保護するエアバッグ20と、このエアバッグ20内でガスを発生させるインフレータ22(ガス発生手段)とを備えており、エアバッグ20が折り畳まれた状態でインフレータ22と共にモジュール化されたもの(エアバッグモジュール)が、シートバックフレーム24のサイドフレーム部24A(図5参照)のサイドドア側に配置されている。シートバックフレーム24は、シートバック18の前方側から見て下方が開放された略逆U字状に構成されており、その幅方向両側にサイドフレーム部24Aが配置されている。このサイドフレーム部24Aは、板金材料によって形成されたものであり、シートバック18の上下方向に沿って延在している。
【0020】
なお、図1〜図5及び図7においては、エアバッグ20が膨張展開した状態が図示されている。また、図示は省略するが、サイドエアバッグ装置100の周囲には、シート表皮によって覆われたシートバックパッド(ウレタンパッド)が配置されており、エアバッグ20が膨張展開する際には、シート表皮の縫合部およびシートバックパッドが開裂される構成になっている。
【0021】
図1〜図3に示されるように、エアバッグ20は、上室基布26と下室基布28とを備えている。上室基布26は、エアバッグ20の膨張展開状態で前端部となる折り目26Aにおいて二つ折りにされており、図示しないサイドドア側に配置される外布26Bと、当該外布26Bに対してシート幅方向内側(シートバックフレーム24側)に配置される内布26Cとを一体に有している。外布26Bと内布26Cは、下端部の前部側が縫合部S2においてエアバッグ20の略前後方向に沿って縫合されている。外布26Bと内布26Cの下端部の後部側には、下方側へ突出した突出片26D、26Eが設けられており、これらの突出片26D、26Eは、前端部が縫合部S2においてエアバッグ20の略上下方向に沿って縫合されている。
【0022】
一方、下室基布28は、上室基布26と同様に、エアバッグ20の膨張展開状態で前端部となる折り目28Aにおいて二つ折りにされており、図示しないサイドドア側に配置される外布28Bと、当該外布28Bに対してシート幅方向内側(シートバックフレーム24側)に配置される内布28Cとを一体に有している。図3に示されるように、外布28Bの上端側と内布28Cの上端側との間には、上室基布26の下端側(外布26Bの下端側及び内布26Cの下端側)が挿入されており、外布26Bの下端側が外布28Bの上端側に対してシート幅方向内側に重ね合わされ、内布26Cの下端側が内布28Cの上端側に対してシート幅方向外側に重ね合わされている。以下、外布26Bと外布28Bとが重ね合わされた部分を「外側重ね合わせ部29」と称し、内布26Cと内布28Cとが重ね合わされた部分を「内側重ね合わせ部30」と称する。外側重ね合わせ部29及び内側重ね合わせ部30は、縫合部S1においてエアバッグ20の略前後方向に沿って縫合されている。
【0023】
さらに、図1及び図2に示されるように、上室基布26と下室基布28は、折り目26A、28Aを除く周縁部が縫合部S3において縫合されており、これにより、エアバッグ20は、閉じた袋状に縫製されている。このエアバッグ20の内部は、縫合部S2において上下に区画されており、縫合部S2の上側は、着座乗員17の胸部を拘束する胸部チャンバ32(上室)とされ、縫合部S2の下側は、着座乗員17の腰部を拘束する腰部チャンバ34(下室)とされている。また、突出片26D、26Eの前端部が縫合部S2においてエアバッグ20の略上下方向に沿って縫合されると共に、突出片26D、26Eの後端部が縫合部S3においてエアバッグ20の略上下方向に沿って縫合されることにより、エアバッグ20内の後部にエアバッグ20の上下方向を軸線方向とする筒状部36が配置されている。この筒状部36は、腰部チャンバ34内へ突出して配置されており、当該筒状部36の内側を介して胸部チャンバ32と腰部チャンバ34とが相互に連通されている。なお、上記構成のエアバッグ20が縫製される際には、上室基布26と下室基布28とが、縫合部S1→縫合部S2→縫合部S3の順番で縫合される。
【0024】
ここで、上述のエアバッグ20では、図2に示されるように、内布26Cと内布28Dとの内側重ね合わせ部30のうち後部側の一部、すなわちシートバックフレーム24のサイドフレーム部24Aと対向する部位に非縫合部37(縫合部S1によって縫合されていない部位。図5参照)が設けられている。これにより、エアバッグ20には、サイドフレーム部24Aと対向する部位に、エアバッグ20の内外を連通するインフレータ挿入口38(ガス発生器挿入口)が形成されており、本サイドエアバッグ装置100が製造される際には、当該インフレータ挿入口38を介してエアバッグ20内にインフレータ22が挿入される構成になっている(図6参照)。
【0025】
インフレータ22は、長尺な円筒形状に形成された本体部22Aを備えている。この本体部22Aは、軸線方向がシートバック18の上下方向に沿う状態で、エアバッグ20内の後端部に配置されている。この本体部22Aは、非縫合部37をシートバック18の上下方向に跨る状態で配置されており、下部側が筒状部36の内側に収容されている。
【0026】
図5に示されるように、本体部22Aの外周部には、サイドフレーム部24A側(本体部22Aの半径方向外側)へ突出した上下一対のスタッドボルト22B、22Cが設けられており、これらのスタッドボルト22B、22Cの間に上記非縫合部37が配置されている。上側のスタッドボルト22Bは、内布26Cに形成された貫通孔40、及びサイドフレーム部24Aに形成された貫通孔42を貫通してサイドフレーム部24Aのシート幅方向内側へ突出しており、当該突出部分にナット44が螺合している。また、下側のスタッドボルト22Cは、内布26Cに形成された貫通孔46、内布28Cに形成された貫通孔48、及びサイドフレーム部24Aに形成された貫通孔50を貫通してサイドフレーム部24Aのシート幅方向内側へ突出しており、当該突出部分にナット52が螺合している。これにより、インフレータ22の本体部22Aとサイドフレーム部24Aとの間に上記非縫合部37が挟まれた(挟持された)状態で、本体部22Aがサイドフレーム部24Aに固定されており、当該本体部22Aによってエアバッグ20がサイドフレーム部24Aに取り付けられている。
【0027】
なお、インフレータ挿入口38の幅寸法は、インフレータ22の本体部22Aの直径にスタッドボルト22B(又はスタッドボルト22C)の長さ寸法を加えた寸法よりも長く設定されており、インフレータ挿入口38を介してインフレータ22を容易にエアバッグ72内へ挿入できるようになっている。
【0028】
インフレータ22の本体部22Aの下端部には、ガス噴出口が形成されたガス噴出部22Dが設けられている。このガス噴出部22Dから噴出されるガスは、筒状部36の上端開口部を介して胸部チャンバ32内へ流入すると共に、筒状部36の下端開口部を介して腰部チャンバ34内へ流入する(図5の矢印G参照)。これにより、エアバッグ20がシートバック18の前方側及び上下方向へ膨張展開する。具体的には、胸部チャンバ32が着座乗員17の胸部とサイドドアとの間へ膨張展開し、腰部チャンバ34が着座乗員17の腰部とサイドドアとの間へ膨張展開する。
【0029】
なお、インフレータ22から噴出されるガスの容量は、胸部チャンバ32及び腰部チャンバ34のそれぞれを十分に膨張展開させることができる程度の容量に設定されている。また、筒状部36によって腰部チャンバ34に優先的に供給されるようになっている。これにより、腰部チャンバ34の内圧(ガス圧)が、胸部チャンバ32の内圧(ガス圧)よりも高くなるように構成されている。
(本実施形態の作用・効果)
次に、本第1実施形態の作用および効果について説明する。
【0030】
車両が側面衝突をすると、図示しないエアバッグセンサによって側面衝突状態が検知され、その信号がエアバッグECUに入力される。エアバッグECUでは、サイドエアバッグ装置100を作動させるべきか否かを入力信号に基づいて判断し、「エアバッグ作動」と判断すると、インフレータ22に所定の電流が通電される。これにより、インフレータ22が作動して筒状部36の内側にガスが噴出される。
【0031】
筒状部36の内側にガスが噴出されると、筒状部36がディフューザとして機能し、エアバッグ20の胸部チャンバ32及び腰部チャンバ34へガスが分配される。この場合、筒状部36が腰部チャンバ34へ優先的にガスを供給することによって、腰部チャンバ34が早期に着座乗員17の腰部とサイドドアとの間へ膨張展開し、胸部チャンバ32が腰部チャンバ34に僅かに遅れて着座乗員17の胸部とサイドドアとの間へ膨張展開する。
【0032】
そして、腰部チャンバ34の内圧が所定値以上に高くなると、図7に示されるように、腰部チャンバ34内へ突出した筒状部36が腰部チャンバ34の内圧によって押し潰される(筒状部36が逆止弁として機能する)。これにより、腰部チャンバ34から胸部チャンバ32側へのガスの流出が阻止され、腰部チャンバ34の内圧が胸部チャンバ32の内圧よりも高く保たれる。
【0033】
これにより、着座乗員17の胸部よりも耐性が高い着座乗員17の腰部が腰部チャンバ34によって良好に拘束されると共に、着座乗員17の胸部が胸部チャンバ32によって必要以上に圧迫されることが防止される。
【0034】
ここで、このサイドエアバッグ装置100では、エアバッグ20は、上室基布26の内布26Cの下端側と下室基布28の内布28Cの上端側とが内側重ね合わせ部30において重ね合わされて縫合されているが、この内側重ね合わせ部30のうちシートバックフレーム24のサイドフレーム部24Aと対向する部位には、非縫合部37が設けられている。これにより、エアバッグ20には、サイドフレーム部24Aと対向する部位にインフレータ挿入口38が形成されているため、本サイドエアバッグ装置100の製造時には、当該インフレータ挿入口38を介してエアバッグ20内へインフレータ22を挿入することができる。しかも、インフレータ22は、エアバッグ20内に配置された本体部22Aとサイドフレーム部24Aとの間に非縫合部37(すなわちインフレータ挿入口38)を挟んだ状態でサイドフレーム部24Aに固定されている。これにより、インフレータ挿入口38からのガス漏れが防止又は抑制されるため、ガス漏れ防止用の当て布を省略することができる。したがって、装置の製造コストや質量を低減することができる。
【0035】
さらに、このサイドエアバッグ装置100では、インフレータ22の上下一対のスタッドボルト22B、22Cの間に、非縫合部37が配置されるため、インフレータ22の本体部22Aとサイドフレーム部24Aとの間で非縫合部37が強固に挟持され、非縫合部37の広がりが阻止される。また、インフレータ22の本体部22Aとサイドフレーム部24Aとの間で内側重ね合わせ部30が強固に挟持されるため、内布26Cの下端側と内布28Cの上端側とが上下方向に相対移動しようとした際には、両者の間に大きな摩擦力が作用する。したがって、この摩擦力により上記相対移動(位置ずれ)が規制されるので、当接位置ずれに起因した非縫合部37の広がりが阻止される。したがって、エアバッグ20の膨張展開によって上室基布26及び下室基布28に上下方向の張力が作用した際に、非縫合部37(すなわちインフレータ挿入口38)が広がることが防止される。これにより、インフレータ挿入口38からのガス漏れが一層良好に防止される。
【0036】
しかも、このサイドエアバッグ装置100では、インフレータ22の下側のスタッドボルト22Cが、内側重ね合わせ部30において、内布26Cに形成された貫通孔46と内布28Cに形成された貫通孔48とを貫通している。これにより、内布26Cと内布28Cとの内側重ね合わせ部30における上下方向の位置ずれがスタッドボルト22Cによっても規制されるため、当接位置ずれに起因した非縫合部37の広がりが一層良好に阻止される。したがって、インフレータ挿入口38からのガス漏れがより一層良好に防止される。
【0037】
また、このサイドエアバッグ装置100では、上室基布26の下端側が縫製されることにより筒状部36(ディフューザおよび逆止弁)が形成されているため、部品点数や質量の増加を抑制することができる。
【0038】
なお、上記第1実施形態では、インフレータ22から噴出されたガスが筒状部36によって整流されることにより、腰部チャンバ34(下室)の内圧が胸部チャンバ32(上室)の内圧よりも高くなる構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、複数の室の内圧は適宜設定変更することができる。この点は、以下に説明する本発明の第2の実施形態においても同様である。
<第2の実施形態>
次に、図8〜図11を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、前記第1実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0039】
図8には、本第2実施形態に係るサイドエアバッグ装置200がシートバックフレーム24(図8では図示省略)の側から見た概略的な側面図にて示されている。このサイドエアバッグ装置200は、前記第1実施形態に係るサイドエアバッグ装置100と基本的に同様の構成とされているが、エアバッグ52の構成が前記第1実施形態に係るエアバッグ20とは異なっている。なお、図8〜図11では、エアバッグ52が膨張展開した状態が図示されている。
【0040】
このエアバッグ52は、前記第1実施形態に係るエアバッグ20と基本的に同様の構成とされているが、このエアバッグ52では、下室基布28の上端側が縫製されることにより、エアバッグ52内が胸部チャンバ32と腰部チャンバ34とに区画されると共に、エアバッグ52内の後部にエアバッグ52の上下方向を軸線方向とする筒状部54が設けられている。具体的には、図8及び図9に示されるように、下室基布28を構成する外布28Bと内布28Cは、上端側の前部側が縫合部S2においてエアバッグ52の略前後方向に沿って縫合されると共に腰部チャンバ34側へ折り返されており、これにより、エアバッグ52内が胸部チャンバ32と腰部チャンバ34とに区画されている。また、外布28Bと内布28Cの上端側における後部側には、腰部チャンバ34側へ折り返された突出片28D、28Eが設けられている。これらの突出片28D、28Eは、前端部が縫合部S2においてエアバッグ52の略上下方向に沿って縫合されると共に、後端部が縫合部S3においてエアバッグの略上下方向に沿って縫合されている。これにより、エアバッグ52内の後部側に筒状部54が設けられており、当該筒状部54の内側を介して胸部チャンバ32と腰部チャンバ34とが連通している。
【0041】
また、このエアバッグ52では、上室基布26を構成する外布26Bの下端側と内布26Cの下端側との間に、下室基布28を構成する外布28Bの上端側と内布28Cの上端側とが挿入されており、外布26Bの下端側が外布28Bの上端側に対してシート幅方向外側に重ね合わされ、内布26Cの下端側が内布28Cの上端側に対してシート幅方向内側に重ね合わされている。以下、外布26Bと外布28Bとが重ね合わされた部分を「外側重ね合わせ部56」と称し、内布26Cと内布28Cとが重ね合わされた部分を「内側重ね合わせ部58」と称する。
【0042】
外側重ね合わせ部56及び内側重ね合わせ部58は、縫合部S1においてエアバッグ52の略前後方向に沿って縫合されているが、図8に示されるように、内側重ね合わせ部58のうち後部側の一部、すなわちシートバックフレーム24のサイドフレーム部24Aと対向する部位には、非縫合部60(縫合部S1によって縫合されていない部位。図10参照)が設けられている。これにより、エアバッグ52には、サイドフレーム部24Aと対向する部位に、エアバッグ52の内外を連通するインフレータ挿入口62(ガス発生器挿入口)が形成されており、本サイドエアバッグ装置200が製造される際には、当該インフレータ挿入口62を介してエアバッグ52内にインフレータ22が挿入される構成になっている。
【0043】
インフレータ22の本体部22Aは、非縫合部60をシートバック18の上下方向に跨る状態で配置されており、下部側が筒状部54の内側に収容されている。インフレータ22の上側のスタッドボルト22Bは、内布26Cに形成された貫通孔40、及びサイドフレーム部24Aに形成された貫通孔42を貫通してサイドフレーム部24Aのシート幅方向内側へ突出しており、当該突出部分にナット44が螺合している。また、インフレータ22の下側のスタッドボルト22Cは、突出片28Eに形成された貫通孔64、内布28Cに形成された貫通孔48、及びサイドフレーム部24Aに形成された貫通孔50を貫通してサイドフレーム部24Aのシート幅方向内側へ突出しており、当該突出部分にナット52が螺合している。これにより、これにより、インフレータ22の本体部22Aとサイドフレーム部24Aとの間に上記非縫合部60が挟まれた(挟持された)状態で、本体部22Aがサイドフレーム部24Aに固定されており、当該本体部22Aによってエアバッグ20がサイドフレーム部24Aに取り付けられている。なお、上述のエアバッグ52が縫製される際には、上室基布26と下室基布28とが、縫合部S1→縫合部S2→縫合部S3の順番で縫合される。
【0044】
上記構成のサイドエアバッグ装置200においても、上室基布26の内布26Cの下端側と下室基布28の内布28Cの上端側との内側重ね合わせ部58のうち、シートバックフレーム24のサイドフレーム部24Aと対向する部位に非縫合部60が設けられることによりインフレータ挿入口62が形成されている。したがって、本サイドエアバッグ装置200の製造時には、このインフレータ挿入口62を介してエアバッグ20内へインフレータ22を挿入することができる。しかも、インフレータ22は、エアバッグ20内に配置された本体部22Aとサイドフレーム部24Aとの間に非縫合部60を挟んだ状態でサイドフレーム部24Aに固定されている。これにより、インフレータ挿入口62からのガス漏れが防止又は抑制されるため、ガス漏れ防止用の当て布を省略することができる。したがって、装置の製造コストや質量を低減することができ、前記第1実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【0045】
なお、上記各実施形態においては、非縫合部37、60がインフレータ22の上下一対のスタッドボルト22B、22C間に配置された構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、エアバッグの非縫合部は、ガス発生器の本体部とサイドフレーム部との間に挟まれる位置に設けられていればよい。
【0046】
また、上記各実施形態においては、エアバッグ20、52が筒状部36、54を備えた構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、筒状部36、54が省略された構成にしてもよい。
【0047】
また、上記各実施形態においては、筒状部36、54が腰部チャンバ34(下室)側へ突出して配置された構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、筒状部36、54の配置は適宜変更することができる。
【0048】
さらに、上記各実施形態においては、エアバッグ20、52が胸部チャンバ32(上室)と腰部チャンバ34(下室)とを備えた構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、エアバッグが上下室以外の他の室を備えた構成にしてもよい。
【0049】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは言うまでもない。
<参考例>
次に、図12〜図14を参照して、本発明の参考例について説明する。なお、前記第1実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0050】
図12には、本発明の参考例に係るサイドエアバッグ装置300がシートバックフレーム24(図12では図示省略)の側から見た概略的な側面図にて示されている。このサイドエアバッグ装置300は、前記第1実施形態に係るエアバッグ20とは異なるエアバッグ72を備えている。このエアバッグ72は、基布74と、この基布74に縫合された一対の補強布76、78(バッグ内側布。図13参照)とによって構成されている。
【0051】
基布74は、エアバッグ72の膨張展開状態で前端部となる折り目74Aにおいて二つ折りにされており、図示しないサイドドア側に配置される外布74Bと、当該外布74Bに対してシート幅方向内側(シートバックフレーム24側)に配置される内布74Cとを一体に有している。外布74B及び内布74Cは、折り目74Aを除く周縁部が縫合部S3において縫合されており、これにより、エアバッグ72は、閉じた袋状に縫製されている。
【0052】
一方、図13に示されるように、一対の補強布76、78は、外布74Bの後部と内布74Cの後部との間にシート幅方向に並んで配置されており、上下両端部及び後端部が、縫合部S3において外布74B及び内布74Cの上下両端部及び後端部に縫合されている。外布74B側に配置された補強布76は、外布74Bの後部に重ね合わされており、前端部が縫合部S1において外布74Bの前後方向中間部における後部側寄りに、エアバッグ72の上下方向に沿って縫合されている。また、内布74C側に配置された補強布78は、内布74Cの後部に重ね合わされており、前端部が縫合部S2において内布74Cの前後方向中間部における後部側寄りに、エアバッグ72の上下方向に沿って縫合されている。これにより、一対の補強布76、78によって外布74B及び内布74Cの後部が補強されている。なお、エアバッグ72が縫製される際には、基布74及び補強布76、78が縫合部S1→縫合部S2→縫合部S3の順番、又は縫合部S2→縫合部S1→縫合部S3の順番で縫合される。
【0053】
ここで、このエアバッグ72では、内布74Cの後部における上下方向中間部にはインフレータ挿入口80(ガス発生器挿入口)が形成されている。また、内布74Cの後部に重ね合わされた補強布78の上下方向中間部には、インフレータ挿入口80よりも上方側において、インフレータ挿入口82(ガス発生器挿入口)が形成されている。これらのインフレータ挿入口80、82は、エアバッグ72の前後方向に沿ったスリット状に形成されており、図14に示されるように、互いにエアバッグ72の上下方向にズレて配置されている(なお、図14では説明の都合上、インフレータ22及びサイドフレーム部24Aの図示を省略してある)。
【0054】
インフレータ挿入口80、82の幅寸法(エアバッグ72の前後方向に沿った長さ寸法)は、インフレータ22の本体部22Aの直径にスタッドボルト22B(又はスタッドボルト22C)の長さ寸法を加えた寸法よりも長く設定されており、これらのインフレータ挿入口80、82を介してエアバッグ72の外側から内側へインフレータ22を挿入できるようになっている。
【0055】
エアバッグ72内へ挿入されたインフレータ22は、インフレータ挿入口82の上方側で補強布78に形成された貫通孔84、内布74Cに形成された貫通孔86、及びサイドフレーム部24Aに形成された貫通孔42(図5参照)に上側のスタッドボルト22Bが挿通され、当該スタッドボルト22Bにナット44(図5参照)が螺合される。また、インフレータ22の下側のスタッドボルト22Cは、インフレータ挿入口80の下方側で補強布78に形成された貫通孔88、内布74Cに形成された貫通孔90、及びサイドフレーム部24Aに形成された貫通孔50(図5参照)に挿通され、当該スタッドボルト22Cにナット52(図5参照)が螺合される。これにより、インフレータ22の本体部22Aとサイドフレーム部24Aとの間に補強布78及び内布74Cが挟まれた(挟持された)状態で、本体部22Aがサイドフレーム部24Aに固定されており、当該本体部22Aによってエアバッグ72がサイドフレーム部24Aに取り付けられている。
【0056】
上記構成のサイドエアバッグ装置300では、製造時にはインフレータ挿入口80、82を介してエアバッグ72内へインフレータ22を挿入することができる。しかも、インフレータ22がサイドフレーム部24Aに固定されることにより、インフレータ22の本体部22Aと、サイドフレーム部24Aとの間に補強布78と内布74Cとが挟まれるため、補強布78によってインフレータ挿入口80を塞ぐことができると共に、内布74Cによってインフレータ挿入口82を塞ぐことができる。これにより、インフレータ挿入口38からのガス漏れを防止することができる。
【0057】
さらに、このサイドエアバッグ装置300では、インフレータ22の上下一対のスタッドボルト22B、22Cの間に、インフレータ挿入口80、82が配置されているため、インフレータ22の本体部22Aとサイドフレーム部24Aとの間で内布74C及び補強布78が強固に挟持され、内布74C及び補強布78の離間が阻止される。また、内布74Cと補強布78とが上下方向に位置ずれしようとした際には、両者の間に大きな摩擦力が作用し、この摩擦力により上記位置ずれが規制される。したがって、エアバッグ72の膨張展開によって内布74C及び補強布78に上下方向の張力が作用した際に、インフレータ挿入口80、82が広がることを防止できる。これにより、インフレータ挿入口80、82からのガス漏れを一層良好に防止することができる。
【0058】
しかも、このサイドエアバッグ装置300では、インフレータ22のスタッドボルト22Bが、補強布78に形成された貫通孔84及び内布74Cに形成された貫通孔86を貫通しており、スタッドボルト22Cが、補強布78に形成された貫通孔88及び内布74Cに形成された貫通孔90を貫通している。これにより、内布26Cと補強布78との上下方向の位置ずれがスタッドボルト22B、22Cによっても規制されるため、当接位置ずれに起因したインフレータ挿入口80、82の広がりが一層良好に阻止される。したがって、インフレータ挿入口38からのガス漏れがより一層良好に防止される。
【0059】
また、このサイドエアバッグ装置300では、補強布78に形成されたインフレータ挿入口82が、インフレータ22のガス噴出部22Dから上方側に離れて配置されているため、ガス噴出部22Dから噴出されるガスがインフレータ挿入口82へ直接噴出されることを抑制することができる。また、インフレータ挿入口80、82の長手方向が、インフレータ22の本体部22Aの軸線方向(長手方向)と直交する方向に設定されているため、本体部22Aによってインフレータ挿入口82、80を良好に塞ぐことができる。これにより、インフレータ挿入口80、82からのガス漏れを良好に防止することができる。
【符号の説明】
【0060】
100 サイドエアバッグ装置
15 車両用シート
17 着座乗員
18 シートバック
18A サイド部
20 エアバッグ
22 インフレータ
22A 本体部
22B スタッドボルト
22C スタッドボルト
24 シートバックフレーム
24A サイドフレーム部
26 上室基布
28 下室基布
29 外側重ね合わせ部
30 内側重ね合わせ部
32 胸部チャンバ(上室)
34 腰部チャンバ(下室)
36 筒状部
37 非縫合部
38 インフレータ挿入口
200 サイドエアバッグ装置
52 エアバッグ
54 筒状部
56 外側重ね合わせ部
58 内側重ね合わせ部
60 非縫合部
62 インフレータ挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上室基布の下端側と下室基布の上端側とが重ね合わされて縫合され、内部が上室及び下室を含む複数の室に区画された袋状に縫製されると共に、前記複数の室を連通する連通部を有し、折り畳まれた状態で車両用シートのシートバックのサイド部に内設されると共に、前記重ね合わせ部のうちシートバックフレームのサイドフレーム部と対向する部位に非縫合部が設けられることによりガス発生器挿入口が設けられたエアバッグと、
前記エアバッグ内に本体部が配置され、前記サイドフレーム部との間に前記非縫合部を挟んだ状態で前記サイドフレーム部に固定されると共に、作動することによりガスを発生させて前記エアバッグを膨張展開させるガス発生器と、
を備えたサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記ガス発生器は、前記本体部から前記サイドフレーム部側へ突出し、前記本体部を前記サイドフレーム部に締結するための上下一対のスタッドボルトを有し、前記非縫合部は、前記上下一対のスタッドボルトの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記上下一対のスタッドボルトのうち下側のスタッドボルトは、前記上室基布と前記下室基布との重ね合わせ部において前記上室基布及び前記下室基布のそれぞれに形成された貫通孔を貫通していることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−194936(P2011−194936A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61215(P2010−61215)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】