説明

サスペンションアッセンブリ取り付け方法

【課題】サスペンションアッセンブリを車両ボディに接近させていく過程でダンパーが車両ボディ側と干渉する場合でも、外部センシング機器を用いずに、その干渉を回避してサスペンションアッセンブリを車両に取り付けることのできるサスペンションアッセンブリ取り付け方法を提供すること。
【解決手段】サス整列・搭載ロボット4の上昇と同期させて、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5によりダンパーの位置を必要に応じて変更することで、ボディに対するダンパーの干渉を回避する。所定の高さに到達したとき、ダンパー取付孔13L,13Rの位置に関連して動作するエンジンルーム内締付ロボット6のエンドエフェクタ61の位置を測定し、測定した位置からダンパー取付孔の位置を算出し、算出した位置を下廻り締付・ダンパー挿入ロボットに伝送し、伝送された位置に応じてダンパーをダンパー取付孔に位置合わせする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションアッセンブリ取り付け方法に関する。詳しくは、サスペンションアッセンブリを車両に取り付けるため車両ボディに接近させていく過程で、起こり得るダンパーと車両ボディ側との干渉を回避するサスペンションアッセンブリ取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の製造ラインでは、サスペンションアッセンブリをボディに取り付けることが行われている。サスペンションアッセンブリは、前側あるいは後側の左右一対のダンパーの下端側をサブフレームで連結してアッセンブリ化したものである。この一対のダンパーの上端側を、車両ボディに形成された左右一対のダンパー取付穴に取り付けることで、サスペンションアッセンブリが車両ボディに取り付けられる。
【0003】
サスペンションアッセンブリを車両ボディに取り付けるときには、サスペンションアッセンブリを車両ボディに接近させていく。この接近工程中、左右一対のダンパーの姿勢を支持しながら、ダンパーの上端側を車両ボディの左右一対のダンパー取付穴にそれぞれ位置合わせする装置が必要であり、従来からさまざまな方法が提案されている。
【0004】
例えば、引用文献1には、サスペンションアッセンブリを載置するパレット上に把持具を設置し、この把持具によりダンパーをパレットに対して固定した位置に把持した状態で、ダンパー取付穴に取り付ける方法が開示されている。
【0005】
また、ダンパーの上端側をパレットに対して変位可能に把持する一方、カメラやレーザー変位計などの外部センシング機器を用いてダンパー取付穴の位置を測定し、センシング機器の測定値に基づいて、ダンパー取付穴に対するダンパーの上端側の相対的な位置ずれを補正しながら、取り付ける方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3904713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1に記載の方法では、ダンパーの位置はパレットに対して固定した状態に保たれるため、例えば、サスペンションアッセンブリを車両ボディに接近させていく過程でダンパーが車両ボディ側と干渉する場合は、この方法を採用することができないという課題がある。
【0008】
カメラやレーザー変位計などの外部センシング機器を用いて位置ずれを補正しながら取り付ける方法の場合は、サスペンションアッセンブリを車両ボディに接近させていく過程でダンパーが車両ボディ側と干渉する場合でも、その干渉を回避しながらサスペンションアッセンブリを車両に取り付けることができる。
【0009】
しかしながら、カメラやレーザー変位計などの外部センシング機器は高価であるため、汎用投資に影響を及ぼすという課題がある。
これらの外部センシング機器は、機種、環境によって条件が変わるので、機種導入のたびにキャリブレーション、マスター登録が必要となるという課題もある。
【0010】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、サスペンションアッセンブリを車両ボディに接近させていく過程でダンパーが車両ボディ側と干渉する場合でも、外部センシング機器を用いずに、その干渉を回避してサスペンションアッセンブリを車両に取り付けることのできるサスペンションアッセンブリ取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のサスペンションアッセンブリ取り付け方法は、サスペンションアッセンブリ(例えば、後述のサスペンションアッセンブリ20)を車両のボディ(例えば、後述のボディ10)に取り付ける方法であって、サスペンションアッセンブリを支持して昇降可能な第1の支持装置(例えば、後述のサス整列・搭載ロボット4)の上昇と同期させて、ダンパー(例えば、後述のダンパー25L,25R)を支持する第2の支持装置(例えば、後述の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5)により当該ダンパーの位置を必要に応じて変更することで、前記ボディに対する前記ダンパーの干渉を回避する干渉回避工程と、サスペンションアッセンブリが所定の高さに到達したとき、前記第2の支持装置により前記ダンパーを前記ボディの所定のダンパー取付穴(例えば、後述のダンパー取付穴13L,13R)に位置合わせする位置合わせ工程と、を含み、前記位置合わせ工程は、前記ダンパー取付孔の位置に関連して動作するロボット(例えば、後述のエンジンルーム内締付ロボット6)のエンドエフェクタ(例えば、後述のエンドエフェクタ61)の位置を測定し、測定した前記エンドエフェクタの位置から前記ダンパー取付孔の位置を算出し、算出した前記ダンパー取付孔の位置を前記第2の支持装置に伝送し、伝送された前記ダンパー取付孔の位置に応じて前記第2の支持装置が前記ダンパーを前記ダンパー取付孔に位置合わせする、ことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、サスペンションアッセンブリを車両ボディに接近させていく過程でダンパーが車両ボディ側と干渉する場合でも、外部センシング機器を用いずに、その干渉を回避することができ、サスペンションアッセンブリを車両に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サスペンションアッセンブリを車両ボディに接近させていく過程でダンパーが車両ボディ側と干渉する場合でも、外部センシング機器を用いずに、その干渉を回避することができ、サスペンションアッセンブリを車両に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るサスペンションアッセンブリ取り付け方法を実施するためのサスペンションアッセンブリのマウントシステムを示す斜視図である。
【図2】ボディおよびサスペンションアッセンブリの構成を示す正面から見た模式図である。
【図3】エンジンルーム内締付ロボットの構成を示す模式図である。
【図4】ダンパー締付用カートリッジを示す概略的斜視図である。
【図5】ダンパー締付用カートリッジを示す断面図である。
【図6】サスペンションアッセンブリ取り付け方法を実施するためのフローチャートである。
【図7】干渉回避工程を示す模式図である。
【図8】ダンパーのズレΔXを示す拡大図である。
【図9】ダンパーのズレΔYを示す拡大図である。
【図10】取り付け工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るサスペンションアッセンブリ取り付け方法を実施するためのサスペンションアッセンブリのマウントシステム1を示す斜視図である。本実施形態に係るサスペンションアッセンブリ取り付け方法は、このマウントシステム1を用いて実施される。
【0016】
マウントシステム1は、車両のボディ10の所定の位置に、サスペンションアッセンブリ20を取り付けるものであり、車両の製造ラインの一部に設けられる。マウントシステム1は、ボディ搬送装置2、プリセット台3、第1の支持装置としてのサス(サスペンションアッセンブリ)整列・搭載ロボット4、第2の支持装置としての下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5、エンジンルーム内締付ロボット6、および制御装置7で構成される。
【0017】
ボディ搬送装置2は、ボディ10を懸架して、車両の製造ラインに沿って搬送する。プリセット台3は、パレット31にサスペンションアッセンブリ20を載置して搬送する。サス整列・搭載ロボット4は、プリセット台3上のパレット31からサスペンションアッセンブリ20を受け取り、支持してボディ10に搭載する。下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5は、サスペンションアッセンブリ20のダンパーを支持してボディ10に挿入する。エンジンルーム内締付ロボット6は、ボディ10の所定位置に搭載されるサスペンションアッセンブリ20のダンパーを締付ける。制御装置7は、これらを制御する。
なお、符号に付けるL,R,f,rの文字は、それぞれ、車両から見て左、右、前、後を表す。
【0018】
図2は、ボディ10およびサスペンションアッセンブリ20の構成を示す車両の正面から見た模式図である。サスペンションアッセンブリ20は、車両の下廻りを構成するものである。
図1に示すように、サスペンションアッセンブリ20は、左右の前輪が取り付けられる前側のサスペンションアッセンブリ20fと、左右の後輪が取り付けられる後側のサスペンションアッセンブリ20rとで構成される。
【0019】
本実施形態では、前輪駆動の車両を取り扱う。前側のサスペンションアッセンブリ20fにはエンジンEが搭載されるが、後側のサスペンションアッセンブリ20rにはエンジンが搭載されない。エンジンの搭載の有無を除けば、前側のサスペンションアッセンブリ20fと、後側のサスペンションアッセンブリ20rとは、基本的に大差はない。
【0020】
図2以降では、前側のサスペンションアッセンブリ20fおよび前側のロボット4f,5f,6の構成のみを示し、後側のサスペンションアッセンブリ20rおよび後側のロボット4r,5rについては、括弧を付けた符号によって示す。
【0021】
サスペンションアッセンブリ20f(20r)は、サブフレーム21f(21r)をベースとして、複数の部品を概ね左右対称に組み合わせて構成される。サブフレーム21f(21r)の左右両側には、左右一対のロアアーム22Lf,22Rf(22Lr,22Rr)、ハブ23Lf,23Rf(23Lr,23Rr)、およびダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)が組み付けられる。前側のサブフレーム21fのほぼ中央には、図示しないエンジンが組み付けられる。ハブ23Lf,23Rf(23Lr,23Rr)には、後工程において図示しない一対の前輪(後輪)が取り付けられる。
【0022】
ダンパーアッセンブリ24Lf(24Lr)は、ほぼ棒状のダンパー25Lf(25Lr)と、ダンパー25Lf(25Lr)にほぼ同心状に設けられたスプリング26Lf(26Lr)と、ダンパーアッセンブリ24Lf(24Lr)の上端側を構成するダンパーマウント27Lf(27Lr)とを備える。
【0023】
ダンパーアッセンブリ24Rf(24Rr)は、ほぼ棒状のダンパー25Rf(25Rr)と、ダンパー25Rf(25Rr)にほぼ同心状に設けられたスプリング26Rf(26Rr)と、ダンパーアッセンブリ24Rf(24Rr)の上端側を構成するダンパーマウント27Rf(27Rr)とを備える。
【0024】
ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の下端側は、ロアアーム22Lf,22Rf(22Lr,22Rr)をそれぞれ介してサブフレーム21f(21r)の両端側に連結されている。
【0025】
ダンパーマウント27Lf(27Lr)には、ダンパー25Lf(25Lr)とほぼ平行に延びる複数のボルト部28Lf(28Lr)が立設されている。
ダンパーマウント27Rf(27Rr)には、ダンパー25Rf(25Rr)とほぼ平行に延びる複数のボルト部28Rf(28Rr)が立設されている。
【0026】
ボディ10は、車両を構成する基礎フレームであり、前側にはエンジンが収容されるエンジンルーム11を備え、後側にはトランクルーム(図示省略)を備えている。エンジンルーム11(トランクルーム)の左右両側には、左右一対のダンパーハウジング12Lf,12Rf(12Lr,12Rr)が形成されている。ダンパーハウジング12Lf,12Rf(12Lr,12Rr)には、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)がそれぞれ収納される。
【0027】
ダンパーハウジング12Lf(12Lr)には、ダンパーアッセンブリ24Lf(24Lr)のダンパー25Lf(25Lr)の上端部が挿入されるダンパー取付穴13Lf(13Lr)、および、複数のボルト部28Lf(28Lr)がそれぞれ挿入される複数のボルト挿入穴14Lf(14Lr)が形成されている。
【0028】
ダンパーハウジング12Rf(12Rr)には、ダンパーアッセンブリ24Rf(24Rr)のダンパー25Rf(25Rr)の上端部が挿入されるダンパー取付穴13Rf(13Rr)、および、複数のボルト部28Rf(28Rr)がそれぞれ挿入される複数のボルト挿入穴14Rf(14Rr)が形成されている。
【0029】
ダンパー取付穴13Lf,13Rf(13Lr,13Rr)、およびボルト挿入穴14Lf,14Rf(14Lr,14Rr)は、ボディ10の中心に対して左右対称に形成されている。特に、ダンパー取付穴13Lf,13Rf(13Lr,13Rr)は、ボディ10の姿勢の基準となる。
【0030】
図1に示すように、プリセット台3は、ボディ10の前側のプリセット台3f、後側のプリセット台3r、の合計2台で構成される。
前側のプリセット台3fは、床面に敷設されてボディ10の幅方向に延びる走行路30fに沿って走行可能に設置されている。前側のプリセット台3fには、前側のパレット31fが載置され、前側のパレット31f上には、前側のサスペンションアッセンブリ20fが支持される。前側のサスペンションアッセンブリ20fには、前輪駆動用のエンジンEが搭載される。
【0031】
後側のプリセット台3rは、床面に敷設されてボディ10の幅方向に延びる走行路30rに沿って走行可能に設置されている。後側のプリセット台3rには、後側のパレット31rが載置され、後側のパレット31r上には、後側のサスペンションアッセンブリ20rが支持される。後側のサスペンションアッセンブリ20rには、エンジンは搭載されない。
【0032】
図1に示すように、サス整列・搭載ロボット4は、ボディ10の左前側のサス整列・搭載ロボット4Lf,右前側のサス整列・搭載ロボット4Rf,左後側のサス整列・搭載ロボット4Lr,右後側のサス整列・搭載ロボット4Rr、の合計4台で構成され、それぞれ床面に設置されている。
これらのサス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf,4Lr,4Rrは、互いに共通の空間座標を有している。
【0033】
図2に示すように、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)の各々は、いわゆる多関節ロボットであり、ロボット本体40Lf,40Rf(40Lr,40Rr)から延びる多段のアームを備える。
サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)の各々のアームの先端には、エンドエフェクタ41Lf,41Rf(41Lr,41Rr)が備えられる。エンドエフェクタ41Lf,41Rf(41Lr,41Rr)には、基準ピン42Lf,42Rf(42Lr,42Rr)が備えられる。
サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)は、下記(a)〜(c)の動作を行う。
【0034】
(a)サスペンションアッセンブリ受け取り
前側のサス整列・搭載ロボット4Lf,4Rfは、協働して、前側のプリセット台3fのパレット31fから、前側のサスペンションアッセンブリ20fを受け取る。このとき、前側のサス整列・搭載ロボット4Lf,4Rfのエンドエフェクタ41Lf,41Rfに備えられた基準ピン42Lf,42Rfを、前側のサスペンションアッセンブリ20f側に設けられる搭載基準穴29Lf,29Rfにそれぞれ差し込むことにより、前側のサスペンションアッセンブリ20fの位置を検出する。
これにより、前側のサスペンションアッセンブリ20fの位置を、前側のサス整列・搭載ロボット4Lf,4Rfの空間座標に取り込む。
【0035】
後側のサス整列・搭載ロボット(4Lr,4Rr)は、協働して、後側のプリセット台(3r)のパレット(31r)から、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)を受け取る。このとき、後側のサス整列・搭載ロボット(4Lr,4Rr)のエンドエフェクタ(41Lr,41Rr)に備えられた基準ピン(42Lr,42Rr)を、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)側に設けられる搭載基準穴(29Lr,29Rr)にそれぞれ差し込むことにより、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)の位置を検出する。
これにより、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)の位置を、後側のサス整列・搭載ロボット(4Lr,4Rr)の空間座標に取り込む。
【0036】
(b)前側/後側のサスペンションアッセンブリ整列
サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)は、前側のサスペンションアッセンブリ20fと、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)とを整列させる。すなわち、前側のサス整列・搭載ロボット4Lf,4Rfと、後側のサス整列・搭載ロボット(4Lr,4Rr)とが連動して、前側/後側のサスペンションアッセンブリ20f/(20r)を整列させる。
【0037】
具体的には、前側のサス整列・搭載ロボット4Lf,4Rfがその空間座標に取り込んだ前側のサスペンションアッセンブリ20fの位置情報と、後側のサス整列・搭載ロボット(4Lr,4Rr)が同じ空間座標に取り込んだ後側のサスペンションアッセンブリ(20r)の位置情報とに基づいて、前側のサス整列・搭載ロボット4Lf,4Rfに支持された前側のサスペンションアッセンブリ20fと、後側のサス整列・搭載ロボット(4Lr,4Rr)に支持された後側のサスペンションアッセンブリ(20r)とを、空間座標上で(すなわち、前後、左右、上下のすべての方向に沿って)整列させる。
【0038】
(c)サスペンションアッセンブリ搭載
サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)は、サスペンションアッセンブリ20f(20r)をボディ10に搭載する。すなわち、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)は、後述するボディ10の位置情報と、サスペンションアッセンブリ20f(20r)の位置情報とから、ズレを補正し、前側のサスペンションアッセンブリ20fと、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)との整列を保持した状態で、前側/後側のサスペンションアッセンブリ20f/(20r)をボディ10に搭載する。
【0039】
具体的には、後述するようにサス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)と同じ空間座標に取り込んだボディ10の位置情報と、空間座標上で整列させた前側/後側のサスペンションアッセンブリ20f/(20r)の位置情報とに基づいて、ボディ10の位置と、前側/後側のサスペンションアッセンブリ20f/(20r)の位置とのズレを検出する。サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)は、前側/後側のサスペンションアッセンブリ20f/(20r)の整列を保持した状態で、上記のズレを補正するように移動させながら、前側/後側のサスペンションアッセンブリ20f/(20r)をボディ10に搭載する。
【0040】
図1に示すように、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5は、ボディ10の左前側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,右前側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Rf,左後側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lr,右後側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Rr、の合計4台で構成され、それぞれ床面に設置されている。
これらの下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf,5Lr,5Rrは、互いに共通の、かつ、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf,4Lr,4Rrとも共通の、空間座標を有している。
【0041】
図2に示すように、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)の各々は、いわゆる多関節ロボットであり、ロボット本体50Lf,50Rf(50Lr,50Rr)から延びる多段のアームを備える。
下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)の各々のアームの先端には、エンドエフェクタ51Lf,51Rf(51Lr,51Rr)が備えられる。
下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)は、下記(d)〜(f)の動作を行う。
【0042】
(d)ボディ搭載基準穴測定
下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)の中から選択された例えば1台の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット、例えば5Lfは、ボディ10の搭載基準穴(図示省略)を測定する。すなわち、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)が前側/後側のサスペンションアッセンブリ20f/(20r)の整列を保持した状態で、前側/後側のサスペンションアッセンブリ20f/(20r)をボディ10の所定位置に搭載するため、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lfは、ボディ10の基準位置としての搭載基準穴を測定する。
ボディ10の搭載基準穴の測定は、従来既知の適宜の方法によって実現することができる。
これにより、ボディ10の搭載基準穴の位置を、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lfの空間座標に取り込む。
【0043】
(e)ダンパーアッセンブリ把持、挿入
前側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rfは、エンドエフェクタ51Lf,51Rfによって、前側のサスペンションアッセンブリ20fに下端側が連結された左右一対のダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfを把持する。
このとき、前側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rfは、自身がその空間座標に取り込むエンドエフェクタ51Lf,51Rfの位置情報と、前側のサス整列・搭載ロボット4Lf,4Rfが同じ空間座標に取り込む前側のサスペンションアッセンブリ20fの位置情報とに基づいて、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfの位置情報を空間座標に取り込む。
【0044】
前側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rfは、前側のサス整列・搭載ロボット4Lf,4Rfが、前側のサスペンションアッセンブリ20fをボディ10に搭載するためエンドエフェクタ41Lf,41Rfを上昇させるとき、それに同期しながら、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfを把持したエンドエフェクタ51Lf,51Rfを上昇させる。
このとき、前側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rfは、後述するエンジンルーム内締付ロボット6L,6Rによるダンパー取付穴13Lf,13Rfの位置情報に基づいて、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfの位置補正を行いながら、ダンパー25Lf,25Rfの上端部をダンパー取付穴13Lf,13Rfに挿入する。
【0045】
具体的には、後述するように下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)と同じ空間座標に取り込んだダンパー取付穴13Lf,13Rfの位置情報と、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfの位置情報とに基づいて、前側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rfは、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfの位置補正を行いながら、ダンパー25Lf,25Rfの上端部をダンパー取付穴13Lf,13Rfに挿入する。
【0046】
後側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット(5Lr,5Rr)は、エンドエフェクタ(51Lr,51Rr)によって、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)に下端側が連結された左右一対のダンパーアッセンブリ(24Lr,24Rr)を把持する。
このとき、後側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット(5Lr,5Rr)は、自身がその空間座標に取り込むエンドエフェクタ(51Lr,51Rr)の位置情報と、後側のサス整列・搭載ロボット(4Lr,4Rr)が同じ空間座標に取り込む後側のサスペンションアッセンブリ(20r)の位置情報とに基づいて、ダンパーアッセンブリ(24Lr,24Rr)の位置情報を空間座標に取り込む。
【0047】
後側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット(5Lr,5Rr)は、後側のサス整列・搭載ロボット(4Lr,4Rr)が、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)をボディ10に搭載するためエンドエフェクタ(51Lr,51Rr)を上昇させるとき、それに同期しながら、ダンパーアッセンブリ(24Lr,24Rr)を把持した(51Lr,51Rr)を上昇させる。
このとき、後側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット(5Lr,5Rr)は、前側のダンパー取付穴13Lf,13Rfの位置情報から割り出した後側のダンパー取付穴(13Lr,13Rr)の位置情報に基づいて、ダンパーアッセンブリ(24Lr,24Rr)の位置補正を行いながら、ダンパー(25Lr,25Rr)の上端部をダンパー取付穴(13Lr,13Rr)に挿入する。
【0048】
(f)サスペンションアッセンブリ締付
前側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rfは、その後、エンドエフェクタ51Lf,51Rfに備えられたナットランナ(図示省略)を用いて、前側のサスペンションアッセンブリ20fをボディ10に締付ける。例えば、左前側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lfは、前側のサスペンションアッセンブリ20fをボディ10に対して、最大3本の締付を行う。右前側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Rfも、前側のサスペンションアッセンブリ20fをボディ10に対して、最大3本の締付を行う。
【0049】
後側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット(5Lr,5Rr)は、その後、エンドエフェクタ(51Lr,51Rr)に備えられたナットランナを用いて、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)をボディ10に締付ける。例えば、左後側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット(5Lr)は、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)をボディ10に対して、最大3本の締付を行う。右後側の下廻り締付・ダンパー挿入ロボット(5Rr)も、後側のサスペンションアッセンブリ(20r)をボディ10に対して、最大3本の締付を行う。
【0050】
図1に示すように、本実施形態では、前輪駆動の車両を取り扱う。そのため、エンジンルーム内締付ロボット6は、左前側のエンジンルーム内締付ロボット6L,右前側のエンジンルーム内締付ロボット6R、の合計2台で構成され、それぞれ床面に設置されている。
これらのエンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、互いに共通の、かつ、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf,4Lr,4Rrおよび下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf,5Lr,5Rrとも共通の、空間座標を有している。
【0051】
エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rの各々は、いわゆる多関節ロボットであり、ロボット本体60L,60Rから延びる多段のアームを備える。エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rの各々のアームの先端には、エンドエフェクタ61L,61Rが備えられる。
【0052】
図2、図3に示すように、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rのエンドエフェクタ61L,61Rには、高トルク高回転ナットランナ62L,62Rが取り付けられる。高トルク高回転ナットランナ62L,62Rの先端には、後述するダンパー締付用カートリッジ80L,80Rのソケット86L,86Rを回転させるための扁平締付ツール63L,63Rが取り付けられる。扁平締付ツール63L,63Rの先端には、エンジンマウント締付用脱着式ソケット64L,64Rが取り付けられる。エンジンマウント締付用脱着式ソケット64L,64Rは、図3にのみ図示する。
【0053】
図4、図5に示すように、ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rは、プレート81L,81Rと、ガイド部材83L,83Rと、高さ位置決めマグネット84L,84Rと、ソケット86L,86Rと、脱着取手88L,88Rと、を備える。
ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rは、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfのボルト部28Lf,28Rfをボディ10に固定するための複数本(例えば3本)のナット89L,89Rを、ソケット86L,86Rにそれぞれ収容して、ダンパー締付工程に供されるものである。
【0054】
プレート81L,81Rは、三角形に近似した形状を有し、中央にほぼ円形の開口82L,82Rを有する。
ガイド部材83L,83Rは、プレート81L,81Rの中央開口82L,82Rから下向きに突出する実質的に中空円錐台の形状を有する。
高さ位置決めマグネット84L,84Rは、プレート81L,81Rの下面から所定高さ下向きに突出して、その下端にマグネット85L,85Rが取り付けられている。
【0055】
ソケット86L,86Rは、ボルト部28Lf,28Rfをボディ10に固定するためのナット89L,89Rを収容する。ソケット86L,86Rは、スプリング87L,87Rを備え、プレート81L,81Rに対して回転自在に保持される。
ソケット86L,86Rは、ソケット86L,86Rの六角頭部を例えばナットランナ62L,62Rで回転させることにより、それに追従してナット89L,89Rを回転させて、ボルト部28Lf,28Rfに固定する。
【0056】
脱着取手88L,88Rは、プレート81L,81Rの所定位置に取り付けられる。脱着取手88L,88Rはまた、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rのエンドエフェクタ61L,61Rの所定位置に把持される。
そのため、ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rの位置、具体的には、ガイド部材83L,83R、ソケット86L,86R等の位置は、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rの空間座標に取り込まれる。
エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、下記(g)〜(j)の動作を行う。
【0057】
(g)ダンパー締付用カートリッジセット
エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、ボディ10のダンパー取付穴13Lf,13Rfに、ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rをセットする。
すなわち、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rのガイド部材83L,83Rをダンパー取付穴13Lf,13Rfに挿入させるべく、あらかじめティーチングされた所定の空間位置へエンドエフェクタ61L,61Rを移動させる。
【0058】
このとき、図5に示すように、ガイド部材83L,83Rの中心位置と、ダンパー取付穴13Lf,13Rfの中心位置とにズレがあった場合でも、ガイド部材83L,83Rの円錐台形状により、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rのフローティング機構を利用して、ガイド部材83L,83Rは、ダンパー取付穴13Lf,13Rfに倣うように移動する。これにより、ガイド部材83L,83Rの中心位置が、ダンパー取付穴13Lf,13Rfの中心位置に一致するように、ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rの位置が補正される。
【0059】
この場合、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rのフローティング機構に代えて、力覚センサ(図示省略)による制御を利用してもよい。力覚センサは、互いに直交する3つの軸の各々の軸方向の力及びそれらの軸周りのトルクを検出する。ガイド部材83L,83Rは、力覚センサの検出結果を利用して、ダンパー取付穴13Lf,13Rfに倣うように移動してもよい。
【0060】
このダンパー締付用カートリッジ80L,80Rの位置補正により、ソケット86L,86Rの位置も、ボルト挿入穴14Lf,14Rfの位置に対して正確に適合するように補正される。この補正による移動が終了すると、高さ位置決めマグネット84L,84Rが、ボルト挿入穴14Lf,14Rf付近の鋼板に磁気吸着されることで、ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rは、適正位置に磁気的に固定される。
【0061】
この位置補正の際のエンドエフェクタ61L,61Rの移動に基づいて、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rの静止位置、すなわち、ダンパー取付穴13Lf,13Rfおよびボルト挿入穴14Lf,14Rfの位置をセンシングする。
これにより、ダンパー取付穴13Lf,13Rfおよびボルト挿入穴14Lf,14Rfの位置を、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rの空間座標に取り込む。
【0062】
(h)エンジン/トランスミッションマウント締付
エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、エンジン/トランスミッションマウント(図示省略)をボディ10に締付ける。例えば、左前側のエンジンルーム内締付ロボット6Lは、エンジン/トランスミッションマウントをボディ10に対して、3点で締付を行う。右前側のエンジンルーム内締付ロボット6Rは、エンジン/トランスミッションマウントをボディ10に対して、2点で締付を行う。
【0063】
(i)ソケットチェンジ
エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、ソケットチェンジを行う。すなわち、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、ナットランナ62L,62Rの回転を利用して、エンジンマウント締付け用脱着式ソケット64L,64Rを取り外す。
【0064】
(j)ダンパーアッセンブリ締付
エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfの締付けを行う。すなわち、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rのナット89L,89Rを収容したソケット86L,86Rを、ナットランナ62L,62Rで締付ける。
【0065】
制御装置7は、例えば、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)を用いて構成される。制御装置7は、例えば、図6に示すフローチャートにしたがって、全体を制御するように構成される。
【0066】
つぎに、図6に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係るサスペンションアッセンブリ取り付け方法を実施する手順について説明する。サスペンションアッセンブリ20を車両のボディ10に取り付ける手順は、干渉回避工程と、位置合わせ工程とを含む。
【0067】
干渉回避工程は、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)の上昇と同期させて、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)によりダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の位置(姿勢)を必要に応じて変更することで、ボディ10に対するダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の干渉を回避する。
【0068】
位置合わせ工程は、サスペンションアッセンブリ20f(20r)が所定の高さに到達したとき、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)によりダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の位置を調整して、ダンパー25Lf,25Rf(25Lr,25Rr)をボディ10のダンパー取付孔13Lf,13Rf(13Lr,13Rr)に位置合わせする。
【0069】
まず、ステップS71において、PLC7は、サスペンションアッセンブリ20f(20r)およびボディ10が、マウント工程を行う作業位置に到着したことを確認する。
すると、PLC7は、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)、およびエンジンルーム内締付ロボット6L,6Rに指示を出す。
【0070】
ステップS41において、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)は、PLC7からの指示により、エンドエフェクタ41Lf,41Rf(41Lr,41Rr)が持つ基準ピン42Lf,42Rf(42Lr,42Rr)を、プリセット台3f(3r)で搬送されてきたサスペンションアッセンブリ20f(20r)の搭載基準穴29Lf,29Rf(29Lr,29Rr)に適合するように、移動させる。
【0071】
ステップS51において、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)のうちの少なくとも1台、例えば5Lfは、PLC7からの指示により、エンドエフェクタ51Lfをボディ10の下方へ移動させ、ボディ10のサスペンションアッセンブリ搭載基準穴(図示省略)の位置をセンシングする。
【0072】
ステップS52において、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)は、PLC7からの指示により、エンドエフェクタ51Lf,51Rf(51Lr,51Rr)を、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の把持位置へ移動させる。
【0073】
ステップS61において、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、PLC7からの指示により、エンドエフェクタ61L,61Rを、ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rのセット位置へ移動させる。
【0074】
ステップS42において、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)は、サスペンションアッセンブリ20f(20r)をプリセット台3f(3r)のパレット31f(31r)から受け取って支持し、このとき、サスペンションアッセンブリ20f(20r)の搭載基準穴29Lf,29Rf(29Lr,29Rr)の位置情報を取得する。
【0075】
ステップS53において、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)は、エンドエフェクタ51Lf,51Rf(51Lr,51Rr)を操作して、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)を把持する。
【0076】
ステップS62において、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、エンドエフェクタ61L,61Rを操作して、ダンパー締付用カートリッジ80L,80Rをダンパー取付穴13Lf,13Rfにセットする。
【0077】
ステップS72において、PLC7は、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)から、ボディ10のサスペンションアッセンブリ搭載基準穴の位置情報を取得する。
【0078】
ステップS73において、PLC7は、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)から、サスペンションアッセンブリ20f(20r)の搭載基準穴29Lf,29Rf(29Lr,29Rr)の位置情報を取得する。
【0079】
ステップS74において、PLC7は、ボディ10のサスペンションアッセンブリ搭載基準穴の位置情報と、サスペンションアッセンブリ20f(20r)の搭載基準穴29Lf,29Rf(29Lr,29Rr)の位置情報とから、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)および下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)のシフト量を計算する。
【0080】
ステップS43において、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)は、PLC7にて計算されたシフト量分、サスペンションアッセンブリ20f(20r)を支持するエンドエフェクタ41Lf,41Rf(41Lr,41Rr)を、移動させる。
【0081】
ステップS54において、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)は、PLC7にて計算されたシフト量分、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)を把持するエンドエフェクタ51Lf,51Rf(51Lr,51Rr)を、移動させる。
【0082】
このとき、すなわち、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)がサスペンションアッセンブリ20f(20r)を移動させ、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)がダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)を移動させながら、サスペンションアッセンブリ20f(20r)およびダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)を上昇させていくとき、干渉回避工程が行われる。
【0083】
すなわち、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)は、図2に示すように、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)がボディ10と干渉する高さに到達する前に、図7に示すように、エンドエフェクタ51Lf,51Rf(51Lr,51Rr)を動かしてダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の位置(姿勢)を変更する。これにより、ボディ10に対するダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の干渉は回避される。
【0084】
この干渉回避のためのダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の位置(姿勢)変更を、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)により必要回数行うことで、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)は、それ以上は干渉回避のための位置(姿勢)変更が不要な所定の高さまで上昇する。
【0085】
ステップS63において、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、ダンパー取付穴13Lf,13Rfにダンパー締付用カートリッジ80L,80Rをセットしたときの、マスターダンパー穴位置との差分ΔX,ΔYを取得する。
すなわち、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、ダンパー取付穴13Lf,13Rfにダンパー締付用カートリッジ80L,80Rをセットしたときの、事前の設定値(ティーチングされた設定値)と、補正後の測定値との差分ΔX,ΔYを取得する。
【0086】
ステップS75において、PLC7は、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rから、ダンパー取付穴位置差分(ΔX,ΔY)を取得する。
すなわち、PLC7は、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rから、ダンパー取付穴13Lf,13Rfにダンパー締付用カートリッジ80L,80Rをセットしたときの、補正された差分情報(ΔX,ΔY)を取得する。
【0087】
ステップS76において、PLC7は、ダンパー取付穴位置情報から、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の回転角度(α,β)を計算する。
すなわち、PLC7は、ダンパー取付穴13Lf,13Rfにダンパー締付用カートリッジ80L,80Rをセットしたときの、補正された差分情報(ΔX,ΔY)から、この差分(ΔX,ΔY)をダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の角度に反映するために、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の回転角度(α,β)を計算する。
この計算はつぎのようにして行う。
【0088】
図8,図9に示すように、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfとロアアーム22Lf,22Rfとの取付部を、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfの補正回転支点Oとする。
ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfの全長Lは、機種によってあらかじめ決められている。
【0089】
図8において、機種のサスペンション倒れ角:θx、マスターダンパー穴位置:X、ズレ量:ΔX、補正回転角度:α、とすると、αは次式から求められる。
X/L=sin(θx)
X=L×sin(θx)
ΔX+X=sin(θx+α)
θx+α=sin−1(ΔX+X)
α=sin−1(ΔX+X)−θx
【0090】
図9において、機種のサスペンション倒れ角:θy、マスターダンパー穴位置:Y、ズレ量:ΔY、補正回転角度:β、とすると、βは次式から求められる。
Y/L=sin(θy)
Y=L×sin(θy)
ΔY+Y=sin(θy+β)
θy+β=sin−1(ΔY+Y)
β=sin−1(ΔY+Y)−θy
【0091】
ステップS55において、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)は、PLC7にて計算された回転角度分、支点Oを中心としてダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)を回転させる。
【0092】
このとき、すなわち、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rが、ダンパー取付穴13Lf,13Rfにダンパー締付用カートリッジ80L,80Rをセットしたときのマスターダンパー穴位置との差分ΔX,ΔYを取得し、これに基づいてPLC7が計算した回転角度(α,β)分、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)が、支点Oを中心としてダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)を回転させるとき、位置合わせ工程が行われる。
【0093】
すなわち、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)および下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)が前記所定の高さからさらに上昇するのにともない、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)は、差分情報(ΔX,ΔY)に基づく回転角度(α,β)分だけダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)を回転させる。これにより、ダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)は、差分(ΔX,ΔY)を反映した角度に位置合わせされる。
【0094】
ステップS44において、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)は、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)と同期して、ボディ10にサスペンションアッセンブリ20f(20r)を搭載する。
【0095】
ステップS56において、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)は、サス整列・搭載ロボット4Lf,4Rf(4Lr,4Rr)と同期して、図10に示すように、ボディ10にダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)を搭載する。
【0096】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)サスペンションアッセンブリ20f(20r)を車両のボディ10に接近させていく過程で、ダンパー25Lf,25Rf(25Lr,25Rr)を含むダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)がボディ10側と干渉する場合でも、下廻り締付・ダンパー挿入ロボット5Lf,5Rf(5Lr,5Rr)がダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)の位置(姿勢)変更を行うことで、その干渉を回避することができる。
【0097】
(2)エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rのエンドエフェクタ61L,61Rに取り付けられたダンパー締付用カートリッジ80L,80Rをダンパー取付穴13Lf,13Rfにセットすることで、エンジンルーム内締付ロボット6L,6Rは、ダンパー取付穴13Lf,13Rfの位置情報を取得することができる。
つまり、カメラやレーザー変位計などの外部センシング機器を用いることなく、ダンパー取付穴13Lf,13Rfの位置情報を取得することができる。
【0098】
以下、この(2)の効果について補足する。
例えば、カメラやレーザー変位計などの外部センシング機器を用いれば、ダンパー取付穴13Lf,13Rfの位置情報を取得することは可能である。しかし、これらの外部センシング機器は、高価であるうえ、機種、環境によって条件が変わるので、機種導入のたびにキャリブレーション、マスター登録が必要となる。
このような外部センシング機器を用いる代わりに、ダンパーへの作業を行う(つまりダンパー取付孔の位置に関連して動作する)ロボット6L,6Rのエンドエフェクタ61L,61Rを利用して、ダンパー取付穴13Lf,13Rfの位置情報を取得することは、さまざまな機種に共通して、より安価に、より正確に、より容易に、ダンパー取付穴13Lf,13Rfの位置情報の取得を実現することができる。
【0099】
(3)ダンパー取付穴13Lf,13Rfの位置情報に基づいて、ダンパー25Lf,25Rfを含むダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfを、ダンパー取付穴13Lf,13Rfに位置合わせすることができる。
ダンパー取付穴13Lf,13Rfの実際の位置情報に基づいて、ダンパー25Lf,25Rfを含むダンパーアッセンブリ24Lf,24Rfを直接位置合わせするため、正確な位置合わせが可能である。
【0100】
(4)したがって、サスペンションアッセンブリ20f(20r)を車両のボディ10に接近させていく過程で、ダンパー25Lf,25Rf(25Lr,25Rr)を含むダンパーアッセンブリ24Lf,24Rf(24Lr,24Rr)がボディ10側と干渉する場合でも、外部センシング機器を用いずに、その干渉を回避することができ、サスペンションアッセンブリ20f(20r)を車両に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0101】
4…サス整列・搭載ロボット(第1の支持装置)
5…下廻り締付・ダンパー挿入ロボット(第2の支持装置)
6…エンジンルーム内締付ロボット
10…ボディ
13…ダンパー取付穴
20…サスペンションアッセンブリ
25…ダンパー
61…エンドエフェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションアッセンブリを車両のボディに取り付ける方法であって、
サスペンションアッセンブリを支持して昇降可能な第1の支持装置の上昇と同期させて、ダンパーを支持する第2の支持装置により当該ダンパーの位置を必要に応じて変更することで、前記ボディに対する前記ダンパーの干渉を回避する干渉回避工程と、
サスペンションアッセンブリが所定の高さに到達したとき、前記第2の支持装置により前記ダンパーを前記ボディの所定のダンパー取付穴に位置合わせする位置合わせ工程と、を含み、
前記位置合わせ工程は、
前記ダンパー取付孔の位置に関連して動作するロボットのエンドエフェクタの位置を測定し、
測定した前記エンドエフェクタの位置から前記ダンパー取付孔の位置を算出し、
算出した前記ダンパー取付孔の位置を前記第2の支持装置に伝送し、
伝送された前記ダンパー取付孔の位置に応じて前記第2の支持装置が前記ダンパーを前記ダンパー取付孔に位置合わせする、ことを特徴とするサスペンションアッセンブリ取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−111283(P2012−111283A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260112(P2010−260112)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】