説明

サスペンション装置

【課題】 車両の静止時(イグニッションOFF時)にエアばね装置20内の気体が温度変化により収縮することによってアクチュエータ30がバウンドストッパ37に当接することが防止されたサスペンション装置を提供すること。
【解決手段】 車高補正部62は、車両の静止時(イグニッションOFF時)に、エアばね装置20内の気体の温度低下に伴うエアばね装置20内の空気の収縮によりアクチュエータ30が収縮することによりアクチュエータ30がバウンドストッパ37に当接しないように、上記空気の収縮により車高が変化する方向とは反対の方向に車高が変化するように、内部温度センサ27が検出した内部温度Tと外部温度センサ70が検出した外気温度Tとの差ΔTに基づいて、エアばね装置20内に封入された気体の容量を変化させることによりアクチュエータ30の基準長を補正して、車高を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンション装置に関する。本発明は特に、モータを有するアクチュエータと、このアクチュエータに取り付けられ、内部に封入された空気等の気体の圧力により車体側の部材を弾性的に保持する気体ばね装置とを備えるサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサスペンション装置は、車両の車体側の部材と車輪側の部材との間に配設される。このサスペンション装置の一つとしてアクティブサスペンション装置が知られている。アクティブサスペンション装置は、車体側の部材と車輪側の部材との間に配設されたアクチュエータとばね装置とを備える。アクチュエータが伸縮することにより車体側の部材と車輪側の部材との間の間隔が変化する。また、ばね装置により、車体側の部材が弾性的に保持される。
【0003】
特許文献1は、モータを有するアクチュエータと、エアばね装置とを備えたサスペンション装置を開示する。このサスペンション装置によれば、アクチュエータは、車体側の部材と車輪側の部材との間に設けられ、モータの回転によって伸縮する。アクチュエータの伸縮により、車体側の部材と車輪側の部材との間の間隔が変化する。また、エアばね装置はアクチュエータに気密的に取り付けられており、内部に封入された空気の圧力により車体側の部材を弾性的に保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−91032号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に記載のサスペンション装置によれば、アクチュエータを伸縮させるためにモータが回転駆動した場合、モータが発熱する。このモータの熱が、アクチュエータに気密的に取り付けられたエアばね装置内の空気に伝わる。したがって、車両が駆動している時(イグニッションがONであるとき)は、モータの発熱によりエアばね装置内の空気が加熱される。
【0006】
一方、車両が静止している時(イグニッションがOFFであるとき)は、モータが回転駆動しないため、加熱されたエアばね装置内の空気が徐々に冷却される。このためエアばね装置内の空気が収縮する。これによりエアばね装置内の空気の圧力が低下する。エアばね装置内の空気の圧力が低下した場合、アクチュエータが収縮してその基準長が短くなる。このため車高が低下する。
【0007】
また、サスペンション装置には、通常、アクチュエータの伸縮範囲を規定するストッパが設けられている。したがって、エアばね装置内の空気の温度低下に起因したアクチュエータの収縮量が大きい場合、アクチュエータの収縮は、アクチュエータがストッパに当接することにより停止する。このような状態を、本明細書ではフルバウンド状態と呼ぶ。
【0008】
フルバウンド状態である場合、ストッパに大きな荷重が加えられるので、ストッパの耐久性が低下する。また、フルバウンド状態で車両を走行させた場合、車高の低下によって路面干渉(例えば車両のバンパと輪留用縁石との干渉)が発生する可能性が大きい。
【0009】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、モータを有するアクチュエータおよびこのアクチュエータに取り付けられた気体ばね装置を備えるサスペンション装置において、車両の静止時(イグニッションOFF時)に気体ばね装置内の気体が温度変化により収縮や膨張することによってアクチュエータがストッパに当接することが防止された、サスペンション装置を提供することを目的とする。
【0010】
本発明のサスペンション装置は、モータを有し、前記モータが回転することにより伸縮して車体側の部材と車輪側の部材との間の間隔を変化させるアクチュエータと、前記アクチュエータの伸縮範囲を規定するストッパと、内部に気体が封入されるとともに前記アクチュエータに取り付けられ、前記気体の圧力により車体側の部材を弾性的に保持する気体ばね装置と、前記気体ばね装置内の気体の温度を検出する内部温度検出手段と、車両が駆動している間に、前記気体ばね装置内に封入された気体の容積を変化させることにより車高を調整する車高調整手段と、車両の静止時に、前記気体ばね装置内の気体の温度変化に伴う前記気体ばね装置内の気体の膨張または収縮により車高が変化する方向とは反対の方向に車高が変化するように、前記内部温度検出手段が検出した前記気体ばね装置内の気体の温度に基づいて、前記気体ばね装置内に封入された気体の容量を変化させることにより車高を補正する車高補正手段と、を備える。
【0011】
本発明のサスペンション装置によれば、車両の静止時、つまりイグニッションがOFFに切り換えられたときに、車高補正手段により、気体ばね装置内の気体の温度に基づいて、気体ばね装置内に封入された気体の容量が変化させられる。この場合、気体ばね装置内の気体の温度変化に伴う気体ばね装置内の気体の膨張または収縮によって車高が変化すると予測される方向とは反対の方向に車高が変化するように、気体ばね装置内に封入された気体の容量が変化させられる。例えば、車両静止時に得られる気体ばね装置内の気体の温度から、気体ばね装置内の気体がその後温度低下により収縮して車高が低下すると予測される場合には、車高補正手段は、気体ばね装置内に封入された気体の容量を増加させて車高が上昇するように、車高を補正する。
【0012】
すなわち、本発明の車高補正手段は、車両の静止後に気体ばね装置内の気体の温度変化に起因して将来起こり得るであろう車高の変化の方向とは反対の方向に、車高が変化するように、気体ばね装置内に封入された気体の容量を変化させる。このため、車両静止後に気体ばね装置内の気体が温度変化して気体ばね装置内の気体が膨張または収縮したときには、車高が静止直前の車高付近の高さに戻る。したがって、車両静止後に気体ばね装置内の気体の温度変化に起因してアクチュエータがストッパに当接することが防止される。その結果、アクチュエータがストッパに当接することによるストッパの耐久性の悪化や、車高低下による路面干渉が防止される。
【0013】
本発明において、「車高の変化の方向」とは、上昇方向または下降方向である。したがって、気体ばね装置内の気体の温度変化によって車高が上昇方向に変化する(つまり車高が上昇する)場合には、車高補正手段により車高を下降方向に変化させる(つまり車高を低下させる)。一方、気体ばね装置内の気体の温度変化によって車高が下降方向に変化する(つまり車高が低下する)場合には、車高補正手段により車高を上昇方向に変化させる(つまり車高を上昇させる)。
【0014】
また、本発明の車高補正手段は、気体ばね装置内の気体の温度に基づいて、車高の補正量(車高補正量)を決定し、決定した車高補正量に基づいて、車高を補正するものであるのがよい。気体ばね装置内の気体の温度変化に起因する車高の変化量の大きさは、気体ばね装置内の気体の温度、特に温度変化量に依存する。一般に、気体ばね装置内の気体の温度が高ければ高いほど、また温度変化量が大きければ大きいほど、車高の変化量が大きい。したがって、気体ばね装置内の気体の温度に基づいて、温度変化に伴う車高の変化量や変化の方向が予測できる。そして、車高補正手段は、予測された変化量および変化の方向に基づいて、例えば予測された変化量の大きさとほぼ等しくなるように、車高補正量の大きさを決定し、こうして決定した車高補正量に基づいて車高を補正する。このように車高を補正することにより、気体ばね装置内の気体の温度変化によって車高が変化したときに、車高は元の高さ(車両の静止直前の車高)に戻る。したがって、車両静止後に気体ばね装置内の気体の温度変化に起因してアクチュエータがストッパに当接することが防止される。
【0015】
なお、車高補正手段により車高を補正した場合、補正した車高が車高の上限または下限を越えないように、車高の補正量の大きさに上限を設けておくとよい。
【0016】
また、本発明のサスペンション装置は、外気温度を検出する外部温度検出手段を更に備えるのがよい。そして、前記車高補正手段は、前記内部温度検出手段が検出した前記気体ばね装置内の気体の温度と前記外部温度検出手段が検出した外気温度との差に基づいて、前記気体ばね装置内に封入された気体の容量を変化させることにより車高を補正するものであるのがよい。
【0017】
これによれば、内部温度検出手段が検出した気体ばね装置内の気体の温度と外部温度検出手段が検出した外気温度との差に基づいて、車両の静止後に気体ばね装置内の気体が外気温度まで変化したときに起こり得るであろう車高の変化の方向および変化量が予測される。したがって、車高補正手段は、予測された車高の変化の方向および変化量に基づいて、予測方向とは反対の方向に予測した変化量分またはそれに近い分だけ車高が変化するように、気体ばね装置内に封入された気体の容量を変化させることができる。このように車高を補正することで、車両静止後に気体ばね装置内の気体が外気温度まで変化したときに、車高が元の高さ(静止直前の高さ)に戻る。このように車高が元の高さに戻るように車高を補正することにより、アクチュエータがストッパに当接することが防止される。
【0018】
また、前記車高補正手段は、前記内部温度検出手段が検出した前記気体ばね装置内の気体の温度が前記外部温度検出手段が検出した外気温度よりも高い場合は、車高が上昇方向に変化するように、前記内部温度検出手段が検出した前記気体ばね装置内の気体の温度と前記外部温度検出手段が検出した外気温度との差に基づいて、前記気体ばね装置内に封入された気体の容量を増加させることにより車高を補正するものであるのがよい。
【0019】
これによれば、気体ばね装置内の気体の温度が外気温度よりも高い場合は、車高補正手段により車高が上昇される。このように車両静止時に車高をかさ上げ制御することで、その後に気体ばね装置内の気体が冷却されて車高が低下したときに、車両がフルバウンド状態に陥ることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るサスペンション装置の概略図である。
【図2】サスペションユニットの概略断面図である。
【図3】車高調整制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図4】車高補正制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図5】温度差ΔTと車高補正量ΔHとの関係の一例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るサスペンション装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るサスペンション装置の概略図である。
【0022】
図1に示すように、サスペンション装置1は、複数のサスペンションユニット10と、エア給排ユニット50と、ECU60とを備える。
【0023】
サスペンションユニット10は、車両の各車輪に接続されたロアアームなどの車輪側の部材LAと、車体側の部材との間に介装される。サスペンションユニット10は、エアばね装置20と、アクチュエータ30を備える。エアばね装置20は、車体側の部材を弾性的に保持する機能を有する。アクチュエータ30は、路面の上下変位に応じて伸縮して路面から入力される振動をいなすことにより、乗り心地を向上させる機能を有する。
【0024】
エア給排ユニット50は、圧縮空気を送出する送出口51aと大気から空気を吸入する吸入口51bとを有するコンプレッサ51と、コンプレッサ51の送出口51aに連通したメイン配管(太線部分)52と、メイン配管52と各エアばね装置20とを連結する複数のサブ配管(細線部分)53とを備える。
【0025】
メイン配管52には、排出配管54が連通している。この排出配管54に常閉型の排気バルブ55が接続される。排気バルブ55は駆動信号が入力されたときに開作動し、駆動信号の入力が停止されたときに閉作動する。排気バルブ55が開作動した場合、メイン配管52が大気開放される。また、各サブ配管53には、それぞれ常閉型のコントロールバルブ56が介装される。コントローブバルブ56も、駆動信号が入力されたときに開作動し、駆動信号の入力が停止されたときに閉作動する。コントロールバルブ56が開作動した場合、サブ配管53を介してエアばね装置20がメイン配管52に連通する。
【0026】
図2は、サスペンションユニット10の概略断面図である。このサスペンションユニット10は、上述したようにエアばね装置20とアクチュエータ30とを有する。
【0027】
アクチュエータ30は、モータ31と、ボールネジ機構35と、液圧式ダンパ装置40とを備える。モータ31は、モータケーシング311と、中空状の回転軸312と、永久磁石313と、極体314とを備える。モータケーシング311はモータ31の外郭を構成するハウジングであり、図示上下方向に軸を持ち上部から段階的に径が小さくなる段付円筒形状を成す。回転軸312は、モータケーシング311と同軸的にモータケーシング311内に配設され、軸受331,332によりモータケーシング311に回転可能に支持される。この回転軸312の外周面に永久磁石313が固定される。回転軸312および永久磁石313によりモータ31のロータが構成される。永久磁石313に対向するように極体(コアにコイルが巻回されたもの)314が、モータケーシング311の内周面に固定される。極体314によりモータ31のステータが構成される。
【0028】
また、モータケーシング311内に回転角センサ315が設けられる。この回転角センサ315は、モータ31の回転角を検出する。
【0029】
ボールネジ機構35は、モータ31に連結しており、モータ31の回転運動を直線運動に変換する変換機構としての機能を有する。ボールネジ機構35は、ネジ溝351aが形成されたボールネジ軸351と、このボールネジ軸351のネジ溝351aに螺合するボールネジナット352とを備える。ボールネジナット352はモータケーシング311内に配設され、回転軸312の下端部分に接続されるとともに、ボールベアリングを介して回転可能且つ軸方向移動不能にモータケーシング311に支持される。したがって、回転軸312が回転すると、それに伴いボールネジナット352も回転する。
【0030】
ボールネジ軸351は、図に示されるように、モータケーシング311に同軸的に配置されており、モータケーシング311内にてボールネジナット352を螺合するとともに、その上方部分にて回転軸312の内周側に挿入される。また、ボールネジ軸351の下方部分はモータケーシング311の下端面を突き抜けてさらに下方に延在する。
【0031】
ボールネジナット352の図示下方にスプラインナット36が配設される。このスプラインナット36はモータケーシング311の最下方部位に配置固定される。スプラインナット36にはスプラインが形成された貫通孔が設けられており、この貫通孔にボールネジ軸351が挿通される。なお、ボールネジ軸351のネジ溝351aにはスプライン溝も同時に形成されている。したがってボールネジ軸351はスプラインナット36にスプライン嵌合し、回転不能かつ軸方向移動可能にスプラインナット36に支持される。
【0032】
液圧式ダンパ装置40は、内部に作動液(例えば作動油)が封入されたハウジング41と、ハウジング41の内部に配設されハウジング41内で相対移動するバルブピストン42とを備える。バルブピストン42によってハウジング41の内部が上室と下室とに区画される。ハウジング41の下端はブッシュを介してロアアームなどの車輪側の部材LAに連結される。
【0033】
また、ハウジング41内にはピストンロッド43が挿入される。ピストンロッド43はその下端にてバルブピストン42に連結される。ピストンロッド43は、その上端にてボールネジ軸351の下端に連結され、その連結部分から図において下方に伸びて液圧式ダンパ装置40のハウジング41内に挿入される。
【0034】
ハウジング41の外周に環状の下部リテーナ44aが気密的に取り付けられる。下部リテーナ44aの外周には第1筒部21が気密的に連結される。第1筒部21は、下部リテーナ44aに連結された部分からハウジング41を覆うように図において上方に伸びる。第1筒部21の上端部に径内方に屈曲したフランジ部が形成され、このフランジ部の下面側に環状の上部リテーナ44bが設けられる。
【0035】
また、ボールネジ軸351とピストンロッド43との連結部分に中央リテーナ44cが取り付けられる。中央リテーナ44cは、ボールネジ軸351とピストンロッド43との連結部分から水平方向に放射状に伸びた円板状の部分と、円板状の部分の外周から下方に伸びた円筒状の部分と、円筒状の部分から径外方に伸びた環状の鍔部分とを備える。このような形状の中央リテーナ44cの鍔部分と下部リテーナ44aとの間に第1コイルスプリング46aが、鍔部分と上部リテーナ44bとの間に第2コイルスプリング46bが配設される。
【0036】
このような構成の液圧式ダンパ装置40は、路面側から高周波(例えば20Hz以上)の振動が入力したときに作動する。つまり、高周波の振動が路面から入力されたときに、ハウジング41がバルブピストン42に対して相対移動する。この相対移動により発生する減衰力により高周波振動が減衰される。
【0037】
エアばね装置20は、上述の第1筒部21と、第1筒部21の外周側に配置された第2筒部22と、第2筒部22の上端部分にその下端部分が気密的に接続され、その上端部分にてブラケット25を介して気密的にモータケーシング311に接続された第3筒部23と、展開形状がリング状をなし、内周部分が第1筒部21の外周に気密的に連結され外周部分が第2筒部22の内周に気密的に連結されたダイヤフラム24とを備える。第1筒部21と、第2筒部22と、第3筒部23と、ダイヤフラム24により、外部との連通が遮断された空間Sが形成される。
【0038】
エアばね装置20内の空間Sは、ボールネジ機構35とモータ31との間の隙間を通じて、モータ31内の空間に連通する。したがって、モータ31内の空間も、エアばね装置20内の空間といえる。エアばね装置20内には流体としての圧縮空気が封入される。エアばね装置20内の圧縮空気の圧力により車体側の部材が弾性的に保持される。
【0039】
第3筒部23には、給排ポート26が設けられている。この給排ポート26に、エア給排ユニット50のサブ配管53が接続される。さらに、第2筒部22には、内部温度センサ27が取り付けられる。内部温度センサ27は、エアばね装置20内の空気の温度(内部温度)Tを検出する。
【0040】
図2に示すように、モータケーシング311の外周に環状に形成されたバウンドストッパ37が取り付けられる。また、第2筒部22の上端に環状のリバウンドストッパ38が取り付けられる。バウンドストッパ37およびリバウンドストッパ38は、エアばね装置20内に配設される。バウンドストッパ37はリバウンドストッパ38の上方に配置される。
【0041】
また、第1筒部21には、第1筒部21から上方に延びた第4筒部28が連結される。この第4筒部28の上端には、環状に形成されたストッパ受け29が取り付けられる。図からわかるように、ストッパ受け29は、エアばね装置20内に配置される。また、ストッパ受け29の上下方向位置は、バウンドストッパ37とリバウンドストッパ38との間の位置である。
【0042】
また、アクチュエータ30は、車体側の部材Bに形成される孔部からモータ31のモータケーシング311の上方部分が上部に突出するように配置され、且つそのような配置状態を保つように、アッパーサポート12を介して車体側の部材Bに取り付けられている。アッパーサポート12により、アクチュエータ30は車体側の部材Bに弾性的に連結される。また、上述のように液圧式ダンパ装置40は、車輪側の部材LAに連結される。したがって、アクチュエータ30は、車体側の部材Bと車輪側の部材LAとの間に介在するように配置される。
【0043】
以上のように構成されたサスペンション装置1において、図示しないバッテリ電源などからの電力供給によりモータ31が回転駆動力を発生する。すると、モータ31の回転軸312に連結したボールネジナット352が回転する。ボールネジナット352の回転によってボールネジ軸351およびこのボールネジ軸351に連結された液圧式ダンパ装置40がともに軸方向移動する。これによりアクチュエータ30が伸縮する。ボールネジ軸351の軸方向は、車体側の部材Bと車輪側の部材LAとの接近・離間方向(上下方向)と同じ方向である。したがって、アクチュエータ30の伸縮作動により、車体側の部材Bと車輪側の部材LAとの間の間隔が変化する。
【0044】
また、モータ31は、図示しない制御装置により駆動制御される。例えば、車両走行時に車輪が路面の凸部に乗り上げて車体が突き上げられるおそれがある場合、その凸部に車輪が差し掛かるタイミングでアクチュエータ30が収縮するように、モータ31が駆動制御される。また、車輪が路面の凹部に落ち込んで車体が沈み込むおそれがある場合、その凹部に車輪が差し掛かるタイミングでアクチュエータ30が伸長するように、モータ31が駆動制御される。このようにモータ31を駆動制御することにより、路面凹凸による車体振動が抑えられて乗り心地が向上する。
【0045】
アクチュエータ30の伸縮作動に伴い、下部リテーナ44aを介して液圧式ダンパ装置40に気密的に連結された第1筒部21および、第1筒部21に連結された第4筒部28が図の上下方向に移動する。第4筒部28の上端にはストッパ受け29が取り付けられているので、アクチュエータ30の伸縮作動に伴い、このストッパ受け29も図の上下方向に移動する。そして、ストッパ受け29がバウンドストッパ37に当接することにより、アクチュエータ30の収縮作動が規制され、リバウンドストッパ38に当接することにより、アクチュエータ30の伸長作動が規制される。したがって、アクチュエータ30は、バウンドストッパ37とリバウンドストッパ38との間の上下間隔の範囲内で伸縮し得る。
【0046】
アクチュエータ30の長さは、車体側の部材と車輪側の部材との間の距離を表す。この距離により車高が定められる。したがって、ストッパ受け29がバウンドストッパ37に当接することにより車高の上限が規制され、ストッパ受け29がリバウンドストッパ38に当接することにより車高の下限が規制される。
【0047】
また、アクチュエータ30の基準長(アクチュエータ30が伸縮していない状態(基準状態)であるときにおける長さ)は、車体側の部材の重量や、基準状態であるときにおけるエアばね装置20により発生される弾性力(圧力)などの力の釣り合いによって、変化する。例えば、エアばね装置20内に空気を送り込むことにより、あるいはエアばね装置20内の空気を加熱することにより、エアばね装置20内の圧力が増加した場合、アクチュエータ30は、力の釣り合いが取れるように伸び、力の釣り合いが取れた長さで停止する。停止時におけるアクチュエータ30の長さが基準長である。一方、エアばね装置20内から空気を排出することにより、あるいはエアばね装置20内の空気を冷却することにより、エアばね装置20内の圧力が減少した場合、アクチュエータ30は、力の釣り合いが取れるように縮み、力の釣り合いが取れた長さで停止する。停止時におけるアクチュエータ30の長さが基準長である。アクチュエータ30は、この基準長を基準として伸縮する。
【0048】
上述のように、エアばね装置20内の空気の容量を変化させることにより、アクチュエータ30の基準長が変わる。この基準長が変わると、車体側の部材と車輪側の部材との間の距離が変わるため車高も変わる。したがって、エア給排ユニット50によりエアばね装置20内の空気の容量を変化させることで、車高が変化する。具体的には、エア給排ユニット50によりエアばね装置20内に空気が送り込まれた場合、アクチュエータ30の基準長が長くなって車高が上昇する。一方、エア給排ユニット50によりエアばね装置20内から空気が排出された場合、アクチュエータ30の基準長が短くなって車高が低下する。
【0049】
図1に示すように、各サスペンションユニット10の付近にストロークセンサ57が配置される。このストロークセンサ57は、各アクチュエータ30の長さ(ストローク量)を検出する。各ストロークセンサ57が検出したストローク量、および、各内部温度センサ27が検出した内部温度Tは、ECU60に入力される。ECU60は、ROM,RAM,CPUを備えるマイクロコンピュータであり、エア給排ユニット50を制御する。このECU60から排気バルブ55および各コントロールバルブ56に駆動信号が出力される。
【0050】
また、本実施形態のサスペンション装置1は、外部温度センサ70を更に備える。この外部温度センサ70は車体に取り付けられており、外気温度Tを検出する。外部温度センサ70が検出した外気温度Tは、ECU60に入力される。
【0051】
また、図1に示すように、ECU60は、車高調整部61と、車高補正部62とを備える。車高調整部61は、車両が駆動しているとき、すなわちイグニッションがONであるときに、様々な条件やドライバーの要求に基づいて、エアばね装置20内に封入された空気の容量を変化させることにより、車高を調整する機能(車高調整機能)を有する。車高補正部62は、車両が静止しているとき、すなわちイグニッションがOFFであるときに、内部温度センサ27が検出した内部温度Tと外部温度センサ70が検出した外気温度Tとの差に基づいて、各エアばね装置20内に封入された空気の容量を変化させることにより、車高を補正する機能(車高補正機能)を有する。
【0052】
図3は、車高調整部61が上述した車高調整機能を達成するために実行する車高調整制御ルーチンを表すフローチャートである。このルーチンが起動すると、車高調整部61は、まず図3のステップ(以下ステップ番号をSと略記する)S100にて、イグニッションがONであるか否かを判断する。イグニッションがOFFである場合(S100:No)、このルーチンを終了する。イグニッションがONである場合(S100:Yes)、S102に進み、車高調整が必要であるか否かを判断する。車高調整が必要であるか否かは、所定の条件(例えば車速が所定の車速以上であるか否かなど)に基づいて自ら決定してもよいし、あるいはドライバーの要求の有無によって決定してもよい。
【0053】
車高調整が必要でない場合(S102:No)、このルーチンを終了する。車高調整が必要である場合(S102:Yes)、車高調整部61は、現在の車高Hを取得する(S104)。現在の車高Hは、各アクチュエータ30の現在の基準長に基づいて求めることができる。各アクチュエータ30の現在の基準長は、例えば各ストロークセンサ57が検出したストローク量の平均値に基づいて、取得することができる。
【0054】
次いで、車高調整部61は、目標車高H*を設定する(S106)。目標車高H*は、ドライバーが運転しやすいように、例えばドライバーの要求に応じて設定されてもよい。また、目標車高H*は、車速に応じて変化するように設定してもよい。例えば、高速走行時に車高が低くなり、低速走行時に車高が高くなるように、車速−車高マップなどを参照して目標車高H*を設定してもよい。あるいは、荷物の積載荷重の大小にかかわらず車高が一定になるように、目標車高H*を設定してもよい。
【0055】
S106にて目標車高H*を設定した後は、車高調整部61は、現在の車高Hが目標車高H*となるように、エア給排ユニット50を制御する(S108)。この場合において、例えば現在の車高Hが目標車高H*よりも大きい(高い)ときは、車高調整部61は、排気バルブ55および各コントロールバルブ56に駆動信号を出力する。これにより排気バルブ55および各コントロールバルブ56が開作動する。これらのバルブの開作動により、各エアばね装置20内の空気がサブ配管53に排出され、排出された空気はさらにメイン配管52、排出配管54を通って大気に排出される。各エアばね装置20内の空気が排出されることにより、各エアばね装置20内の空気量が減少する。エアばね装置20内の空気量の減少により、エアばね装置20内の圧力が低下する。圧力低下によりアクチュエータ30が縮み、アクチュエータ30の基準長が短くなる。このため車高が低下する。そして、現在の車高Hが目標車高H*になったときに、車高調整部61は、各コントロールバルブ56への駆動信号の出力を停止する。これにより各コントロールバルブ56が閉作動し、車高の低下が停止する。
【0056】
また、例えば現在の車高Hが目標車高H*よりも小さい(低い)ときは、車高調整部61は、コンプレッサ51に駆動信号を出力するとともに、各コントロールバルブ56に駆動信号を出力する。これによりコンプレッサ51が駆動し、高圧の空気がメイン配管52に送り出されるとともに、各コントロールバルブ56が開作動する。メイン配管52内の高圧空気がサブ配管53およびコントロールバルブ56を介してエアばね装置20内に送り込まれることにより、各エアばね装置20内の空気量が増加する。エアばね装置20内の空気量の増加によりエアばね装置20内の圧力が増加する。圧力増加によりアクチュエータ30が伸び、アクチュエータ30の基準長が長くなる。これにより車高が上昇する。そして、現在の車高Hが目標車高H*になったときに、車高調整部61は、コンプレッサ51に駆動停止信号を出力するとともに、各コントロールバルブ56への駆動信号の出力を停止する。これによりコンプレッサ51が駆動停止するとともに各コントロールバルブ56が閉作動し、車高の上昇が停止する。
【0057】
車高調整部61は、S108にて上記のようにして、車両が駆動している間にエアばね装置20内に封入された空気の容量を変化させることにより、現在の車高Hが目標車高H*となるように、車高が調整される。その後、このルーチンを終了する。
【0058】
ところで、車両の走行中にアクチュエータ30のモータ31が駆動した場合、モータ31が発熱する。モータ31の発熱により、モータ31の内部空間が加熱される。また、エアばね装置20はアクチュエータ30に取り付けられており、モータ31の内部空間は上記したようにエアばね装置20内の空間に連通している。よって、モータ31の発熱によりエアばね装置20内の空気が加熱される。また、熱伝導などによりモータ31の熱がエアばね装置20内の空気に伝達されることによっても、エアばね装置20内の空気が加熱される。
【0059】
また、例えば車両の駆動時に車高調整部61が、常に車高を一定に維持する制御(オートレベリング制御)を実行しているときに、モータ31が駆動してエアばね装置20内の空気が加熱された場合、エアばね装置20内の空気が熱膨張する。熱膨張によりエアばね装置20内の圧力が上昇する。車高調整部61は、圧力上昇によりアクチュエータ30の基準長が長くなって車高が上昇することを防止するため、エアばね装置20内の空気が排出されるようにエア給排ユニット50を制御する。
【0060】
エアばね装置20内の空気が排出された状態で、イグニッションがOFFに切り換えられて車両が静止した場合、静止直後における車高は、車両の駆動時における車高に等しい。また、エアばね装置20内の空気の温度は、モータ31の発熱により加熱されているので高温である。しかし、車両の静止後はモータ31は駆動しないので、時間が経つにつれてエアばね装置20内の空気は冷却される。このためエアばね装置20内の空気が収縮して内部圧力が低下する。圧力低下によりアクチュエータ30が縮み、車高が低下する。アクチュエータ30が縮んだ場合、ストッパ受け29が図2において上昇し、バウンドストッパ37に近づく。そして、ストッパ受け29がバウンドストッパ37に当接した時点(つまりアクチュエータ30がバウンドストッパ37に当接した時点)でフルバウンド状態に陥り、アクチュエータ30の収縮が停止する。
【0061】
フルバウンド状態であるとき、バウンドストッパ37はストッパ受け29から大きな荷重を受けるため、バウンドストッパ37の耐久性が悪化する。特にイグニッションがONからOFFに切り換えられた場合は、例えばドライバーが帰宅した場合など、その後に長時間車両を駆動しない可能性が高い。バウンドストッパ37の変形時間が長時間持続した場合、バウンドストッパ37の耐久性の悪化が促進される。また、フルバウンド状態のまま車両を走行させた場合、路面干渉を生ずるおそれがある。本実施形態では、車両静止時にフルバウンド状態に陥ることを防止するために、車高補正部62が車高補正制御を実行する。
【0062】
図4は、車高補正部62が実行する車高補正制御ルーチンを表すフローチャートである。このルーチンが起動すると、車高補正部62は、まず図4のS200にて、イグニッションがOFFであるか否かを判断する。イグニッションがONである場合(S200:No)、このルーチンを終了する。イグニッションがOFFである場合(S200:Yes)、S202に進み、各内部温度センサ27から内部温度Tを取得する。次いで、外部温度センサ70から外気温度Tを取得する(S204)。
【0063】
続いて、車高補正部62は、各内部温度Tから外気温度Tを減算することにより、各温度差ΔTを演算する。さらに、車高補正部62は、現在の車高Hを取得する(S208)。現在の車高Hは、例えば、各ストロークセンサ57が検出したストローク量の平均値に基づいて求められる各アクチュエータ30の現在の基準長に基づいて、取得することができる。
【0064】
次に、車高補正部62は、車高補正量ΔHを取得する(S210)。車高補正量ΔHは、車高補正部62によりかさ上げすべき車高量を表す。この車高補正量ΔHの大きさは、本実施形態では、現在の車高Hと、エアばね装置20内の空気の温度が現在の温度から外気温度Tまで低下したときに予測される車高(予測車高)との差の大きさに等しい。つまり、車高補正量ΔHは、エアばね装置20内の空気の温度変化により将来起こり得るであろう車高の変化量である。
【0065】
車高補正量ΔHは、例えば、エアばね装置20内の空気の温度が現在の温度(内部温度T)であるときにおけるエアばね装置20内の空気の容積と、エアばね装置20内の空気の温度が外気温度Tまで冷却されたときにおけるエアばね装置20内の空気の容積との差、すなわち温度変化に起因したエアばね装置20内の空気の変化量(収縮量)から求めることができる。エアばね装置20内の空気の変化量(収縮量)は、気体の状態方程式から求められる。また、エアばね装置20内の空気の変化量(収縮量)は温度差ΔTに依存する。したがって車高補正量ΔHは温度差ΔTに依存する。エアばね装置20内の空気の変化量(収縮量)は、温度差ΔTの大きさが大きければ大きいほど大きい。よって、温度差ΔTの大きさが大きければ大きいほど、車高補正量ΔHの大きさは大きい。車高補正部62は、例えば温度差ΔTと車高補正量ΔHとの関係を表すマップ(温度差−補正量マップ)を参照し、温度差ΔTに基づいて車高補正量ΔHを取得する。なお、車高補正量ΔHは、各サスペンションユニット10ごとに定められてもよい。
【0066】
温度差−補正量マップは、図4に示すように、各温度差ΔTに対応する車高補正量ΔHがそれぞれ予め決められているようなマップでも良いし、温度差ΔTを所定の温度範囲に区分けし、各区分けされた温度範囲に対応する車高補正量ΔHが予め決められているようなマップでも良い。あるいは、温度差−補正量マップは、気体の状態方程式に基づいた、温度差ΔTと車高補正量ΔHとの関係式であってもよい。また、車高補正量ΔHを定めるにあたり、コンプレッサ51から供給される空気の温度や供給量、コンップレッサ51の発熱など、様々な条件を考慮してもよい。これらの条件を考慮して、温度差ΔTと車高補正量ΔHとの関係を、予め実験などにより調べておくとよい。
【0067】
図5は、温度差ΔTと車高補正量ΔHとの関係の一例を表すグラフである。図からわかるように、ΔTが正であるとき、つまり内部温度Tが外気温度Tよりも高いときは、車高補正量ΔHが正である。また、ΔTが負であるとき、つまり内部温度Tが外気温度Tよりも低いときは、車高補正量ΔHが負である。この車高補正量ΔHが正であれば、車高が上昇方向に変化するように補正され、車高補正量ΔHが負であれば、車高が下降方向に変化するように補正される。なお、本実施形態では、モータ31の発熱によりエアばね装置20内の空気が加熱されるため、内部温度Tが外気温度Tよりも高い。よって、温度差ΔTは正であり、その温度差ΔTに基づいて取得される車高補正量ΔHも正である。
【0068】
次いで、車高補正部62は、現在の車高Hに車高補正量ΔHを加算することにより目標車高H*を演算する(S212)。この目標車高H*は各サスペンションユニット10ごとに定められてもよい。その後、目標車高H*が閾値車高Hthよりも小さいか否かを判断する(S214)。閾値車高Hthは、ストッパ受け29がリバウンドストッパ38に当接することにより規定される車高の上限よりも僅かに低い車高として予め定められる車高である。目標車高H*が閾値車高Hthよりも小さい場合(S214:Yes)は、現在の車高Hが目標車高H*となるように、エア給排ユニット50を制御する(S218)。一方、目標車高H*が閾値車高Hth以上である場合(S214:No)は、S216に進み、目標車高H*を閾値車高Hthに設定する。その後、S218に進み、現在の車高Hが目標車高H*となるように、エア給排ユニット50を制御する。
【0069】
S218にて車高補正部62がエア給排ユニット50を制御するにあたり、目標車高H*が現在の車高Hよりも大きい場合、つまり車高補正量ΔHが正である場合、車高補正部62は、コンプレッサ51に駆動信号を出力するとともに、各コントロールバルブ56に駆動信号を出力する。駆動信号の入力によりコンプレッサ51が駆動し、高圧の空気がメイン配管52に送り出されるとともに、各コントロールバルブ56が開作動する。メイン配管52内の高圧空気はサブ配管53およびコントロールバルブ56を介してエアばね装置20内に送り込まれる。これにより各エアばね装置20内の空気量が増加してエアばね装置20内の圧力が増加する。圧力増加によりアクチュエータ30が伸び、アクチュエータ30の基準長が長くなる。これにより車高が上昇する。そして、現在の車高Hが目標車高H*になったときに、車高補正部62は、コンプレッサ51に駆動停止信号を出力するとともに、各コントロールバルブ56への駆動信号の出力を停止する。駆動停止信号の入力によりコンプレッサ51が駆動停止するとともに各コントロールバルブ56が閉作動し、車高の上昇が停止する。
【0070】
S218では、車高補正部62は、車高が目標車高H*となるようにエア供給ユニット50を制御する。ここで、目標車高H*は、現在の車高Hに車高補正量ΔHを加算することにより得られる。車高補正量ΔHが正である場合、車高が上昇方向に変化する。また、車高補正量ΔHが正であるときは、図5からわかるように温度差ΔTが正である。温度差ΔTが正であるということは、エアばね装置20内の空気の温度が外気温度よりも高い。このため、車両の静止後に、エアばね装置20内の空気は冷却されて、収縮する。この収縮により、車両の静止後にアクチュエータ30の基準長が短くなり、車高が低下する(車高が下降方向に変化する)と予測される。
【0071】
すなわち、車高補正部62は、車両の静止後にエアばね装置20内の気体の温度変化に起因して将来起こり得るであろう車高の変化の方向(本実施形態では下降方向)とは反対の方向(本実施形態では上昇方向)に、車高が変化するように、エアばね装置20内に封入された気体の容量を変化(本実施形態では増加)させる。また、車高補正部62は、温度差ΔTに基づいて、車両の静止後にエアばね装置20内の気体の温度変化に起因して将来起こり得るであろう車高の変化量を車高補正量ΔHとして予測する。そして、車高が、将来起こり得るであろう車高の変化の方向とは反対の方向に車高補正量ΔHだけ変化するように、車高を補正する。
【0072】
車高補正部62による車高の補正により、イグニッションOFFの直後に車高は上昇する。つまり、車高補正部62によって、イグニッションOFFの直後に車高がかさ上げ制御される。かさ上げされた車高は、時間が経つにつれてエアばね装置20内の空気の温度が冷却されることにより低下する。そして、エアばね装置20内の空気が外気温度に等しくなったときに、車高が元の高さ(イグニッションOFFの直前の車高)に戻る。
【0073】
車高補正部62が上述した車高補正制御を実行して車高を予めかさ上げすることにより、車両の静止後(イグニッションOFF後)に、エアばね装置20内の空気が冷やされることにより車高が低下しても、車高はイグニッションOFFの直前の車高に戻るだけである。またアクチュエータ30の基準長も、イグニッションOFFの直前の基準長に戻るだけである。アクチュエータ30の基準長が元の基準長に戻ったときは、ストッパ受け29がバウンドストッパ37に当接していない。したがって、イグニッションOFF後にエアばね装置20内の空気の温度低下によりストッパ受け29がバウンドストッパ37に当接すること、すなわちアクチュエータ30がバウンドストッパ37に当接することが防止される。よって、バウンドストッパ37の耐久性の悪化や、フルバウンド状態で車両が走行することによる路面干渉が防止される。
【0074】
以上のように、本実施形態のサスペンション装置1は、モータ31有し、モータ31が回転することにより伸縮して車体側の部材と車輪側の部材との間の間隔を変化させるアクチュエータ30と、アクチュエータ30の伸縮範囲を規定するストッパ37,38と、内部に気体が封入されるとともにアクチュエータ30に取り付けられ、気体の圧力により車体側の部材を弾性的に保持するエアばね装置20と、エアばね装置20内の気体の温度を検出する内部温度センサ27と、外気温度を検出する外部温度センサ70と、車両が駆動している間(イグニッションがONである間)に、エアばね装置20内に封入された気体の容積を変化させることにより車高を調整する車高調整部61と、車両の静止時(イグニッションがOFFである時)に、エアばね装置20内の気体の温度低下に伴うエアばね装置20内の気体の収縮により車高が変化する方向(下降方向)とは反対の方向(上昇方向)に車高が変化するように、内部温度センサ27が検出したエアばね装置20内の気体の温度Tと外部温度センサ70が検出した外気温度Tとの差ΔTに基づいて、エアばね装置20内に封入された気体の容量を変化(増加)させることにより車高を補正する車高補正部62と、を備える。
【0075】
本実施形態のサスペンション装置1によれば、車高補正部62により、車両の静止後にエアばね装置20内の気体の温度変化に起因して将来起こり得るであろう車高の変化の方向(下降方向)とは反対の方向(上昇方向)に、予め車高が変化するように、エアばね装置20内に封入された気体の容量を増加させる。このため、車両静止後にエアばね装置20内の気体が温度変化してエアばね装置20内の気体が収縮したときには、車高が静止直前の車高に戻る。したがって、車両静止後にエアばね装置20内の気体の温度変化に起因してアクチュエータ30(ストッパ受け29)がバウンドストッパ37に当接することが防止される。その結果、バウンドストッパ37の耐久性の悪化や、車高低下による路面干渉が防止される。また、その後に車両を駆動させるときの車高が、前回車両を駆動させていたときの車高とほぼ同じ高さであるので、ドライバーに車高の変化を感じさせることがない。このため車高の変化による不快感をドライバーに与えることが防止される。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、空気を封入したエアばね装置20をアクチュエータ30に取り付けた例を示したが、空気以外の気体を利用することもできる。
【0077】
また、上記実施形態では、エアばね装置20内の空気の温度低下に伴うエアばね装置20内の空気の収縮により車高が変化する方向(下降方向)とは反対の方向(上昇方向)に車高が変化するように、エアばね装置20内に封入された空気の容量を増加させることにより車高を補正して、アクチュエータ30がバウンドストッパ37に当接することを防止する例を示したが、本発明のサスペンション装置は、アクチュエータ30がリバウンドストッパ38に当接することを防止するように構成されていてもよい。例えば、アクチュエータ30のモータ31の発熱や外気温度により、エアばね装置20内の空気が車両静止後に徐々に加熱される場合、車両静止後に時間が経つにつれて車高が上昇方向に変化し、アクチュエータ30がリバウンドストッパ38に当接するおそれがある。このような場合、車高補正部61は、エアばね装置20内の空気の温度上昇に伴うエアばね装置20内の空気の膨張により車高が変化する方向(上昇方向)とは反対の方向(下降方向)に車高が変化するように、エアばね装置20内に封入された空気の容量を減少させることにより、車高を補正してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、内部温度Tと外気温度Tとの差ΔTに基づいて車高補正量ΔHを定めている。しかし、車高補正量ΔHは、少なくとも内部温度Tに基づいて定められるものであればよい。例えば内部温度Tが80℃である場合と100℃である場合とを比較すると、内部温度Tが100℃である場合の方が、エアばね装置20内の空気の温度変化(温度低下)が大きいと予測される。よって、内部温度Tのみに基づいて、最適な車高補正量ΔHを定めることができる。あるいは、外気温度をある温度T(例えば常温25℃)に固定し、内部温度Tと温度Tとの差に基づいて、車高補正量ΔHを定めてもよい。
【0079】
また、車高補正量ΔHは、内部温度Tの変化に基づいて定められてもよい。例えば、内部温度TがイグニッションOFFの直後から5℃低下した場合に、その温度低下により収縮した空気量を補うように、車高補正部61によりエアばね装置20内に封入された空気の容量を増加させることにより車高を補正してもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…サスペンション装置、10…サスペンションユニット、20…エアばね装置(気体ばね装置)、21…第1筒部、22…第2筒部、23…第3筒部、24…ダイヤフラム、26…給排ポート、27…内部温度センサ(内部温度検出手段)、28…第4筒部、29…ストッパ受け、30…アクチュエータ、31…モータ、35…ボールネジ機構、37…バウンドストッパ、38…リバウンドストッパ、50…エア給排ユニット、51…コンプレッサ、52…メイン配管、53…サブ配管、54…排出配管、55…排気バルブ、56…コントロールバルブ、57…ストロークセンサ、60…ECU、61…車高調整部、62…車高補正部、70…外部温度センサ(外部温度検出手段)、T…内部温度、T…外気温度、ΔH…車高補正量、ΔT…温度差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサスペンション装置において、
モータを有し、前記モータが回転することにより伸縮して車体側の部材と車輪側の部材との間の間隔を変化させるアクチュエータと、
前記アクチュエータの伸縮範囲を規定するストッパと、
内部に気体が封入されるとともに前記アクチュエータに取り付けられ、前記気体の圧力により車体側の部材を弾性的に保持する気体ばね装置と、
前記気体ばね装置内の気体の温度を検出する内部温度検出手段と、
車両が駆動している間に、前記気体ばね装置内に封入された気体の容積を変化させることにより車高を調整する車高調整手段と、
車両の静止時に、前記気体ばね装置内の気体の温度変化に伴う前記気体ばね装置内の気体の膨張または収縮により車高が変化する方向とは反対の方向に車高が変化するように、前記内部温度検出手段が検出した前記気体ばね装置内の気体の温度に基づいて、前記気体ばね装置内に封入された気体の容量を変化させることにより車高を補正する車高補正手段と、
を備えるサスペンション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサスペンション装置において、
外気温度を検出する外部温度検出手段を更に備え、
前記車高補正手段は、前記内部温度検出手段が検出した前記気体ばね装置内の気体の温度と前記外部温度検出手段が検出した外気温度との差に基づいて、前記気体ばね装置内に封入された気体の容量を変化させることにより車高を補正することを特徴とする、サスペンション装置。
【請求項3】
請求項2に記載のサスペンション装置において、
前記車高補正手段は、前記内部温度検出手段が検出した前記気体ばね装置内の気体の温度が前記外部温度検出手段が検出した外気温度よりも高い場合は、車高が上昇方向に変化するように、前記内部温度検出手段が検出した前記気体ばね装置内の気体の温度と前記外部温度検出手段が検出した外気温度との差に基づいて、前記気体ばね装置内に封入された気体の容量を増加させることにより車高を補正することを特徴とする、サスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−25190(P2012−25190A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162749(P2010−162749)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】