説明

サンプルから標的因子を除去するためのデバイス及び方法

本発明は、サンプルから標的因子を除去するための、デバイス、試験キット及び方法を提供する。このデバイスには、1個又は2個以上の、10μmよりも大きい細孔サイズを有する多孔質マトリックス及びその中に含浸された複数個の粒子が含有されている。標的因子は、このデバイスに結合し、サンプルから除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連特許出願に対するクロスリファレンス]
本件特許出願は、2004年6月9日出願の米国仮特許出願第60/578,061号に対する35U.S.C.第119条(e)項による利益を主張する2004年10月6日出願の米国仮特許出願第60/616,118号に対する35U.S.C.第119条(e)項による利益を請求する2004年10月13日出願の米国仮特許出願第60/617,669号に対する37U.S.C.第119条(e)項による利益を請求し、これらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、サンプルから標的因子(target agent)を除去するためのデバイス及び方法に関する。特に、本発明は、生物学的サンプルからの病原体の除去に関する。
【背景技術】
【0003】
固体支持体への生物学的種の吸着方法は、多成分流からの標的分子の精製、検出及び除去において、多数の実用化を見出している。例えば、イオン交換、疎水性及びアフィニティーリガンドは、多数の因子をクロマトグラフィー支持体に選択的に吸着させて、水溶液からのそれらの分離に作用することができる。吸着されると、生物学的因子は、生成物として溶離するか又はELISA及び他の分析的アプローチによって検出することができる。
【0004】
場合によっては、標的生物学的因子を含有する溶液には、また、大きい実体(entities)、例えば、赤血球、ウイルス、細菌、リポソーム、白血球及び種々のサイズの凝集物が含有されている。これらの多くの場合、支持体に結合する標的生物学的因子の能力を妨げることなく、大きい凝集物が、固体マトリックス又は支持体を通過するようにすることが望ましい。これは、大きい実体の流れに適応するために十分に大きい、固体マトリックス内の細孔空間を必要とする。残念ながら、大きい細孔空間は、標的因子に結合するための固体マトリックスの能力を制限する、低い表面積を有し得る。
【0005】
他の場合に、より小さい標的因子の吸着分離を容易に実施するために、大きい粒子を実質的に濾過することが望ましい。一つの例は、細胞外生成物を回収するための、培養基からの細胞の除去である。
【0006】
更に、非常に大きい生物学的実体を、濾過するのではなくて結合させることが望ましい、多くの例が存在する。例えば、感染性プリオン、ウイルス、細菌及び生物学的因子の混合物からの毒素を含む、多数の病原体を特異的に吸着することが重要なことである。これらの実体は、しばしば、現在利用可能なサンプル精製及び分離デバイス内で結合のために必要とされる小さい細孔を通過することは困難である。
【0007】
溶融ブローンポリマー(melt blown polymer)繊維又はスパンボンドウエブ(spunbonded web)とも呼ばれる、不織繊維又は不織ウエブが公知であり、空気及び水溶液からの微粒子の濾過及び分離のために使用されている(例えば、米国特許第4,011,067号明細書及び米国特許第4,604,203号明細書(これらのそれぞれは、その全部を参照してここに取り込まれる)参照)。不織ウエブ中に収着性微粒子を装填させることも、当該技術分野で公知である(例えば、米国特許第4,433,024号明細書、米国特許第4,797,318号明細書及び米国特許第4,957,943号明細書(これらのそれぞれは、その全部を参照してここに取り込まれる)参照)。用途には、微粒子及び気体状汚染物質を除去するための顔呼吸マスク、保護衣服、流体保有物品並びに油用拭き取り具が含まれる。
【0008】
更に最近、分離及び精製用の、粒子含浸不織布の製作方法が報告された。例えば、米国特許第5,328,758号明細書(これは、その全部を参照してここに取り込まれる)参照。この特許には、アフィニティーリガンドの結合のための官能化された粒子が教示されている。この粒子が、溶融ブロー段階の間に、ポリマー繊維の中に吹き付けられることが開示されている。この不織布には、0.24〜10μm、好ましくは0.5〜5μmの範囲内の細孔サイズを有する細孔が含まれている。この含浸布材料は、少なくとも2秒間のガーレイ(Gurley)時間を有していなくてはならないことも記載されている。
【0009】
国際特許出願公開第93/01880号明細書には、媒体中に、多数の、0.01μm以下の繊維直径及び約1〜50μmの長さを有する小さい繊維片の塊を、3〜15mmの平均長さを有する、紡糸可能で製織可能な短繊維と一緒に分散させることによって製造された、白血球除去不織布フィルター材料が開示されている。米国特許第4,550,123号明細書及び米国特許第4,342,811号明細書(これらのそれぞれは、その全部を参照してここに取り込まれる)には、蒸気、液体及び溶質を収着することができる粒子を含有する、微孔質ポリマー繊維及びフィルムが記載されている。典型的な収着剤粒子には、活性炭、シリカゲル及び分子フィルター型材料が含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書中に開示された発明は、先行技術のデバイスを超えた、増加した効率及び特異性並びに時間及びコストにおける実質的な節約を伴った、サンプル精製並びにサンプルからの標的因子の検出及び除去のためのデバイス及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書中に開示され、記載された発明は、サンプルから標的因子を除去するための、方法、デバイス及びキットを提供する。
【0012】
一つの態様において、本発明は、サンプルから少なくとも1種の標的因子を分離するためのデバイスを提供する。このデバイスには、1個又は2個以上の、10μmよりも大きい細孔サイズを有する多孔質マトリックス及びその中に含浸された複数個の粒子が含まれ、ここで、少なくとも1種の標的因子が、1個又は2個以上の多孔質マトリックス、粒子又は両方に結合し、サンプルから除去される。一実施形態において、多孔質マトリックス、粒子又は両方は、均一な又は可変の細孔サイズを有する。他の実施形態において、粒子は、約0.001μm〜約0.1μmの細孔サイズを有する。更に他の実施形態において、粒子は、乾燥樹脂1g当たり約1〜2m2から乾燥樹脂1g当たり約300m2の範囲内の表面積を有する、互いにつながった細孔を有する多孔質樹脂を含む。
【0013】
更に他の実施形態において、多孔質マトリックスには、天然繊維、合成繊維又は両方が含まれる。好ましい実施形態において、多孔質マトリックスには、少なくとも1種の不織布が含まれる。他の実施形態において、多孔質マトリックスは、2種又は3種以上の、同じか又は異なった種類の織布及び/又は不織布の混紡物である。
【0014】
更に他の実施形態である請求項1に記載のデバイスでは、粒子に、ポリメタクリレート、メタクリレート樹脂、変性樹脂又はこれらの組合せが含まれる。
【0015】
一実施形態において、デバイスには変性樹脂が含まれ、1個又は2個以上の多孔質マトリックスには、第一級アミンを有するリガンド及びポリエチレングリコール単位を含有する親水性スペーサーを含む反応性基で官能化されているプラズマ処理されたポリプロピレンが含まれる。
【0016】
他の実施形態において、粒子は、1個又は2個以上の多孔質マトリックスの間にサンドイッチされ(挟まれ)ている。
【0017】
一実施形態において、粒子、多孔質マトリックス又は両方は、1種又は2種以上の反応性基によって官能化されている。標的因子は、吸収、吸着、イオン交換、共有結合、疎水性、双極子、四極子、水素結合、特異相互作用、荷電種の形成により、特異リガンドに対するアフィニティー相互作用により又はこれらの組合せにより、粒子、多孔質マトリックス又は両方に結合する。更に他の実施形態において、粒子は、例示するが、これに限定されず、フラクトゲル(FRACTOGEL)(登録商標)EMD、トヨパール(TOYOPEARL)(登録商標)又はTSK−ゲル(TSK−GEL)(登録商標)ポリマーマトリックスを含む、ポリメタクリレート又はメタクリレート樹脂である。更に他の実施形態において、樹脂は、例えば、アミノ650U、アミノ650M又はアミノ650M若しくはアミノ650Uの部分アセチル化形を含む、トヨパール(登録商標)アミノ650である。部分アセチル化樹脂には、約5%〜約95%以上アセチル化された樹脂が含まれる。一実施形態において、部分アセチル化樹脂には、約10%〜約85%アセチル化された樹脂が含まれる。他の実施形態において、部分アセチル化樹脂には、約20%〜約75%アセチル化された樹脂が含まれる。更に他の実施形態において、部分アセチル化樹脂には、約30%〜約60%アセチル化された樹脂が含まれる。他の実施形態において、部分アセチル化樹脂には、約40%〜約60%アセチル化された樹脂が含まれる。本発明において、このような特定の範囲の列挙によって、列挙された範囲には、また、列挙された範囲の間の特定の整数量の全ても含まれることが意図される。例えば、約40〜60%の範囲内において、それらと共にそれぞれの特定の範囲を実際に列挙することなく、45%、50%、55%、57%などを包含することが意図される。他の実施形態において、樹脂には、湿潤樹脂(即ち、完全に前水和されている)、乾燥樹脂(即ち、サンプルと接触する前に前水和されていない及び/又は前もって乾燥しているがサンプルと接触する前に水和される)が含まれる。部分アセチル化乾燥及び/又は湿潤樹脂の使用も、本発明の範囲内に包含される。
【0018】
他の態様において、このデバイスには、標的因子を吸着する能力を有する、官能化された多孔質不織又は織マトリックスが含まれる。一実施形態において、デバイスには、多孔質マトリックスと同様に非多孔質マトリックスが含まれ、このマトリックスの一方又は両方は官能化されていてよい。他の実施形態において、多孔質マトリックスには、10μmよりも大きい均一な又は可変の細孔サイズが含まれる。
【0019】
更に他の実施形態において、本発明は、サンプルからの少なくとも1種の標的因子の分離方法であって、(a)潜在的に1種又は2種以上の標的因子を含有するサンプルを用意する工程、(b)(i)1個又は2個以上の、10μmよりも大きい細孔サイズを有する多孔質マトリックス及び(ii)多孔質マトリックス中に含浸された複数個の粒子であって、少なくとも1種の標的因子に結合する能力を有する粒子を含むデバイスを用意する工程、(c)サンプルをこのデバイスに付する工程、(d)少なくとも1種の標的因子を、粒子、1個若しくは2個以上の多孔質マトリックス又は両方に結合させる工程並びに(e)少なくとも1種の標的因子をサンプルから分離する工程を含む方法を提供する。
【0020】
他の態様において、本発明は、標的分離、検出及びサンプル精製用の試験キットであって、下記の(i)10μmよりも大きい細孔サイズを有する多孔質マトリックス及びその中に含浸された複数個の粒子を含むデバイス、(ii)緩衝剤、反応試薬、化学試薬、官能化試薬、酵素、検出試薬、制御物質の1種又は2種以上を含有する容器、(iii)試験キットを使用するための使用説明並びに(iv)包装材料の1種又は2種以上を含むキットを提供する。
【0021】
本発明の他の好ましい実施形態は、当該技術分野で公知であるものに照らして、下記の図面及び本発明の説明に照らして、特許請求の範囲に照らして、当業者に明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
サンプルからの標的分子の効率的な分離のための方法、デバイス及びキットを、ここに説明する。本発明の方法、キット及びデバイスは、とりわけ、細胞からの発現遺伝子産物の精製、分離及びプロセシング、生物薬物の製造及び付与並びに予測、診断及び/又は検出用途を含む種々の用途において有用である。本明細書に記載された発明は、サンプルの異なった成分を分離し、標的因子を結合するための大きい表面積を与えながら、デバイスを通る、より大きい種が流れることを可能にする、新規なデバイスを定義する。
【0023】
本発明の具体的な用途には、例えば、全血を含む血液、赤血球含有組成物、赤血球濃縮物、血小板濃縮物、血漿、血漿誘導体、白血球、白血球枯渇血液、哺乳動物細胞培養物、発酵ブロス並びに生物薬物の製造及び付与並びに治療薬の製剤のために使用される他の媒体のような生物学的サンプルからの、病原体、例えば、プリオン、ウイルス、真菌、細菌及び毒素の除去が含まれる。
【0024】
1.定義
本件特許出願において使用される定義は、例示目的のためであり、本発明の範囲を限定しない。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「変性樹脂」は、本発明の範囲内で広く定義され、官能基を有する又は有しない樹脂の類似体、変形及び機能的誘導体を含む。変性には、例えば、特定の樹脂若しくはその官能基又は両方に対する、化学的実体(例えば、アミノ酸)の置換、削除又は付加が含まれる。例えば、樹脂のアミノ置換、アセチル化及び/又は部分的アセチル化は、変性樹脂の定義に含まれる。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「標的因子」は、本発明の範囲内で広く定義され、本発明のデバイスによって捕獲される化学的、生物学的又は物理的因子を含む。標的因子には、とりわけ、分子、化合物、細胞構成物質、オルガネラ、集塊、毒素、プリオン並びに微生物、例えば、ウイルス、細菌、真菌及び原虫を含む病原体が含まれる。標的分子には、また、とりわけ、ポリヌクレオチド分子のようなポリマー性分子、例えば、DNA、RNA、DNA−RNAハイブリッド、アンチセンスRNA、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、リボザイム、天然、合成又は組換え核酸分子、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ペプチド−核酸ハイブリッド、抗原、抗体、抗体フラグメント、巨大タンパク質及び集塊、例えば、νWF:FVIII及びHDLが含まれる。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「病原体」は、血液サンプルのような生物学的サンプル中に見出すことができる又はこのサンプルを冒すことができる全ての複製可能な(replicable)病原体を意味することを意図する。このような病原体には、一般的に、全血又は血液成分中に見出され、これらを冒すことが当業者に知られている種々のウイルス、細菌、原虫及び寄生虫並びにまだ知られていない他の病原体性汚染物質が含まれる。このような病原体の例示には、これらに限定されないが、細菌、例えば、ストレプトコッカス種、大腸菌種及びバチルス種;ウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス及び他のレトロウイルス、ヘルペスウイルス、パラミクソウイルス、サイトメガロウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルスを含む)、ポックスウイルス及びトガウイルス並びに寄生虫、例えば、マラリア原虫種及びトリパノソーマ寄生虫を含むマラリア寄生虫が含まれる。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「サンプル」には、本発明のデバイス及び方法によって捕獲することができる標的因子を含有する全てのサンプルが含まれる。サンプルは、潜在的に標的因子を含有する全ての源から得ることができる。このような源には、とりわけ、動物、植物、土壌、空気、水、真菌、細菌及びウイルスが含まれる。動物サンプルは、例えば、とりわけ、組織バイオプシー、血液、毛髪、頬のスクレープ(buccal scrapes)、血漿、血清、皮膚、腹水、複数の浸出液、胸腔穿刺液体、脊髄液体、リンパ液、骨髄、呼吸液体、腸液体、性器液体、糞、尿、痰、涙、唾液、腫瘍、器官、組織;in vitro細胞培養構成物質、胎児細胞、胎盤細胞又は羊膜細胞及び/若しくは液体のサンプルから得られる。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「細胞培養基」には、全ての原核生物又は真核生物培養基、例えば、細菌、酵母及び他の微生物細胞培養基、哺乳動物細胞培養基、植物細胞培養及び昆虫培養、発酵ブロス並びに生物薬物の製造及び付与並びに治療薬の製剤のために使用される他の培地が含まれる。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「血液サンプル」には、例えば、これらに限定されないで、全血、赤血球含有組成物(例えば、赤血球濃縮物及び血小板濃縮物)、白血球、白血球枯渇血液、血液タンパク質、例えば、血液凝固因子、酵素、アルブミン、プラスミノーゲン及びイムノグロブリン並びに他の血液サンプルの中で、液体血液成分、例えば、血漿、血漿誘導体及び血漿含有組成物が含まれる。
【0031】
本明細書で使用されるとき、用語「赤血球含有組成物」は、全血、赤血球濃縮物及び赤血球を含有する全ての他の組成物を意味する。赤血球以外に、この組成物には、また、生物学的に適合する溶液、例えば、ARC−8、ヌトリセル(Nutricell)(AS−3)、ADSOL(AS−1)、オプチゾル(Optisol)(AS−5)若しくはRAS−2(エリスロゾル(Erythrosol))並びに1種若しくは2種以上の細胞血液成分、1種若しくは2種以上の血液タンパク質又は1種若しくは2種以上の細胞血液成分及び/又は1種若しくは2種以上の血液タンパク質の混合物が含有されていてよい。このような組成物には、また、血漿のような液体血液成分が含有されていてよい。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「粒子」は、約1〜約200μm以上の直径を有する、有機又は無機の多孔質又は非孔質形を意味し、これらには、例えば、これらに限定されないで、とりわけ、収着性粒子、例えば、顆粒、ビーズ、樹脂又は粉末に加えて、約1μm〜約20μm以上の長さ対直径比を有する繊維が含まれる。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「収着剤」、「収着性」又は「収着」は、吸収又は吸着によって、吸収及び保持できることを意味する。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「結合」は、本発明の範囲内で広く定義され、2個の実体の間の物理的、化学的又は生物学的結合過程の全ての種類を含み、例えば、これらに限定されないで、とりわけ、吸収、吸着、共有結合、イオン交換、疎水性、水素結合、双極子、四極子又はアフィニティー相互作用、帯電した種の形成、アフィニティーリガンド(例えば、ペプチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、スペーサーアーム、疎水性部位、フッ素化物質を含む)の結合を含む。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「スパイクされた溶液(spiked solution)」は、一定量の標的タンパク質、毒素、ウイルス、細菌又は他の生物が、その純粋な、部分的に精製された又は粗製の形で加えられた溶液を指す。
【0036】
2.多孔質マトリックス
本発明のデバイスには、その中に含浸された粒子を有する多孔質マトリックスが含まれる。多孔質マトリックスの選択は、本発明の範囲内で広く変えることができる。有用なマトリックスには、織布及び不織布(例えば、繊維ウエブ)、微孔質繊維並びに微孔質膜が含まれる。これらの繊維は、当該技術分野で公知の全ての材料並びに溶融ブロー、スピンボンディング(spinbonding)及び電気紡績(electrospinning)を含む、当該技術分野で公知の全ての方法で製造することができる。
【0037】
繊維ウエブは、このようなウエブが大きい表面積を与えるので特に望ましく、不織繊維ウエブが、製造の容易性、低い材料コスト並びに繊維構成及び繊維密度における変動の許容性のために好ましい。広範囲の種々の繊維直径、例えば、0.05〜50μmが、本発明のデバイスの製造において使用される。マトリックス厚さは、デバイスの所望の有用性に適合するように、例えば、約0.1μm〜約100cm厚さ以上で変化する。このマトリックスは、単一シートの形で又は所望の吸着容量を達成する要望どおりに積み重ねた形で使用することができる。一実施形態において、所望の厚さ及び細孔サイズを達成するために、多孔質マトリックスをカレンダー加工又は圧縮することが必要である。本発明のデバイスの多孔質マトリックスは、最終用途のために意図される多孔質マトリックスの正確な物理的性質及び化学的性質に従って、広範囲の種々の天然及び合成繊維から製造される。本発明の多孔質マトリックスは、例えば、とりわけ、ポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン、アラミド及び/又は綿を含む、天然又は合成原料から選択される。
【0038】
また、1種又は2種以上の、異なった化学的又は物理的特徴を有する、2種又は3種以上の異なったマトリックスの使用も、本発明の範囲内に包含される。本発明の一実施形態において、多孔質マトリックスは、同じ又は異なった種類の織布及び/又は不織布の2種又は3種以上のブレンド物である。他の実施形態において、2種又は3種以上の、異なった細孔サイズを有する多孔質マトリックスのハイブリッドが使用され、より小さい細孔サイズを有する1種のマトリックスは、より小さい物質を捕獲するように作用し、他方、より大きい細孔サイズを有する他のマトリックスは、より大きい物質(例えば、白血球)のためのフィルターとして作用する。他の実施形態において、所定の細孔サイズを有するアフィニティー分離のための官能化された多孔質マトリックスは、支持体として他の膜の間に置かれる。
【0039】
2.1.不織布
不織布は、機械的湿式又は乾式堆積手段により形成され、断面を通して相互連結開口領域を有する、ランダム繊維状ウエブである。不織布は、通常、分離した繊維から又は溶融プラスチック若しくはプラスチックフィルムから直接製造される、平らな多孔質シートである。これらの布は、例えば、接着剤結合、ニードリング又は流体ジェットにより機械的にかみ合わせること、絡み合わせ、熱結合及び縫合を含む種々の技術を使用して機械的に、熱的に又は化学的に、繊維若しくはフィラメントを絡み合わせること又はフィルムに穴をあけることにより、一緒に結合されたシート又はウエブ構造物として広く定義される。
【0040】
典型的に、不織布は、約1〜約500μmの範囲内の平均細孔流(pore flow)(MPF)直径を有する。一実施形態において、多孔質マトリックスは、少なくとも10μmの細孔サイズを有する。好ましい実施形態において、多孔質マトリックスは10μmよりも大きい細孔サイズを有する。更に他の実施形態において、多孔質マトリックスは15μmよりも大きい細孔サイズを有する。本発明において、このような特定の数値の列挙によって、列挙された値は、また、列挙された値の間の全てのこれらの特定の整数量を含むことが意図される。例えば、10μmよりも大きいという表現は、また、それらの中のそれぞれの特定の範囲を実際に列挙することなく、12、20、30、45、70、100、200、300、400及び500μmなども包含することを意図する。
【0041】
布の平均細孔直径は、生物学的混合物中の大きい集塊の流れのための所望の細孔直径に対応するように選択することができる。例えば、赤血球の場合に、細孔流直径は、約12μm程度であろう。この場合に、12μmを大きく超える直径を有する全ての多孔質又は非多孔質粒子は、繊維の間の空間内に捕獲され、粒子は、標的種の吸着のために、なお利用可能であろう。その結果、有意により小さい直径の粒子を、細孔空間を通過する、より大きい粒子の流れを可能にしながら、吸着のために使用することができる。
【0042】
不織布は、製造方法によって、例えば、約0.01〜約10μmの範囲内の直径を有する繊維から製造される。この繊維は、天然繊維及び合成繊維を含む広範囲の種々の材料からなる。天然繊維には、例えば、とりわけ、セルロース、綿及び羊毛が含まれる。合成繊維には、一般的なポリマー、例えば、ポリプロピレン及びポリエステル(PET、ポリエチレンテレフタレート)が含まれる。適切なポリマーには、ポリアルキレン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、例えば種々のナイロン、ポリスチレン、ポリアリールスルホン、ポリビニルアルコール、ポリブチレン、エチル酢酸ビニル、ポリアクリレート、例えばポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、セルロース誘導体、例えば酢酸酪酸セルロース、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリイミド並びにポリウレタン、例えばポリエーテルポリウレタン並びにこれらの組合せが含まれる。
【0043】
不織布は、また、ポリエステル及びポリアルキレンのような共押出ポリマーの組合せから製造することができる。上記のポリマーのモノマーのコポリマーも、本発明の範囲内に含まれる。更に、不織布は、微細な繊維と捲縮したステープル繊維との緊密なブレンドである、組合せウエブである。一実施形態において、本発明のデバイスの不織布は、また、米国特許第4,433,024号明細書(その全部は参照してここに取り込まれる)に記載されているような、布の片側又は両側にラミネートされた浸透性支持体布を含み又はさらに強化繊維を含有する。
【0044】
不織布は、溶融ブロー及びスピンボンディングを含む、異なる手段によって製造される。不織布を一緒に結合するための幾つかの機械的アプローチが存在し、例えば、膜は、超音波カッター/シーラーを使用して又は熱及び圧力を同時に適用したプレスの使用により、一緒に溶接される。乾式堆積不織布には、それぞれの層が、ランダムに配置された又は平行になった繊維を含有する、繊維の層が含まれる。乾式堆積不織布は、接着剤又は熱によって結合することが必要である。湿式堆積不織布は、水スラリーからの繊維の堆積から得られる層状化による、層状にした繊維のランダム配置を含有する紙状不織布である。ニードルパンチした不織布は、繊維状ウエブへの、熱、水分及び攪拌の適用から得られる絡み合いによる、それらが構成されている繊維の絡み合った状態によって特徴付けられる。スパンレースの(spunlaced)不織布は、高速度水ジェットの作用(ハイドロエンタングルメント(hydroentanglement)とも呼ばれるプロセス)により絡み合った繊維を有する。
【0045】
3.粒子
一つの態様において、本発明のデバイスには、多孔質マトリックスと同様に粒子が含まれる。粒子は、標的因子を結合する能力を有する。この粒子は、多孔質、非孔質又は両方である。一実施形態において、多孔質粒子は、標的因子を吸着又は吸収することができる収着性粒子である。この粒子は、1種の材料又は2種若しくは3種以上の材料の組合せから製造され、この材料は、有機液体又は水性液体中で非膨潤性又は膨潤性であり、水又は液体中に実質的に不溶性である。広い範囲内に入る2種又は3種以上の粒子サイズ範囲内の粒子を使用することが、幾つかの例において有利であることが見出された。
【0046】
粒子のサイズ及び形状は、本発明の範囲内で広く変化させることができ、その中にこのような粒子が含有される多孔質マトリックス支持体の種類に、或る程度依存する。例えば、粒子は、球形状、規則的形状又は不規則的形状又はこれらの組合せを有する。
【0047】
本発明のデバイス中に使用される粒子は、約1〜2μmから約200〜300μmまでの範囲内の見掛けサイズを有する。一般的に、有用な粒子サイズの差は、その中に粒子が含有される多孔質マトリックスの種類、多孔質マトリックスを形成するために使用される方法及び装置並びにそのようにして形成されたマトリックスの多孔度によって決定される。例えば、不織繊維状ウエブ及びフィブリル化したポリマーマトリックスは、粒子の全サイズ範囲を決定することができる。好ましくは、約40〜200μmのサイズの粒子が不織布のために使用され、他方、1〜100μmのサイズの粒子が、フィブリル化されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)マトリックスのために好ましい。
【0048】
広い範囲の細孔サイズを有する粒子も、本発明の範囲内に含まれる。比較的大きい細孔サイズを有する粒子が、より大きい標的分子、例えばタンパク質の有効な捕獲のために使用され、他方、より小さい細孔サイズを有する粒子が、より小さい標的分子の有効な捕獲のために使用される。利用可能な細孔サイズの範囲は、例えば、約0.001μm〜約0.1μmである。一実施形態において、細孔サイズは約0.1〜0.55μmである。他の実施形態において、細孔サイズは約0.6〜2μmである。更に他の実施形態において、細孔サイズは約0.25〜5μm以上である。本発明において、このような特定の範囲の列挙によって、列挙された範囲は、また、列挙された範囲の間の全てのこれらの特定の整数量を含むことが意図される。例えば、約0.1〜0.55μmの範囲内において、それぞれの特定の範囲を実際に列挙することなく、0.2、0.3、0.4、0.5μmなども包含することが意図される。
【0049】
この粒子は、炭素又はポリマー若しくはコポリマーであってよい有機化合物から製造される。例えば、粒子は、とりわけ、スチレン及びジビニルベンゼン及びこれらの誘導体のコポリマー、ポリメタクリル酸エステル、誘導アズラクトンポリマー又はコポリマー、有機被覆した無機酸化物粒子、例えば、シリカ、アルミナ、酸化アルミニウム、チタニア、酸化チタニウム、ジルコニア及び他のセラミック材料、ガラス、セルロース、アガロース並びにポリスチレン及びポリメチルメタクリレートを含む、広範囲の種々の異なったポリマー、アクリル樹脂及び電気泳動のために使用される他の種類のゲルから製造される。
【0050】
本発明の目的のための他の適切な粒子には、それらの外部及び/又は内部表面上に、不溶性、膨潤性又は非膨潤性収着剤材料で被覆することができる全ての粒子が含まれる。一実施形態において、粒子は、それらの元の乾燥重量と比較したとき、約2〜5倍の体積まで膨潤する。
【0051】
被覆の機能は、意図される特定の分離アッセイに応じて適合させることができる、特定の機能性及び物理的特性を与えることである。これらの機能には、収着、イオン交換、キレート化、立体排除、キラル、アフィニティーなどが含まれる。このような被覆のための好ましい粒子材料には、無機酸化物粒子、最も好ましくはシリカ粒子が含まれる。被覆された表面を有するこのような粒子は、当該技術分野で公知であり(例えば、Snyder及びKirkland著、「最新液体クロマトグラフィー概論(Introduction to Modern Liquid Chromatography)」、第2版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)(1979年)及びH.Figgeら、Journal of Chromatography、第351巻(1986年)、第393〜408頁参照)、これには、変性シリカ粒子;シアノ、シクロヘキシル、C8(オクチル)基及びC18(オクタデシル)基を含む共有結合された有機基を有するシリカ粒子が含まれる。この被覆は、ポリマーのin situ架橋によって機械的に適用することができ又は粒子の表面に共有結合された官能基であってよい。
【0052】
多孔質マトリックスの中に取り込まれる粒子の量は、本発明の範囲内で広く変えることができる。一般的に、粒子の量は、デバイスの約1〜約99体積%の範囲である。好ましくは、この量は、20体積%よりも多く、更に好ましくは50体積%よりも多い。従って、本発明のデバイスは、95重量%以下又はそれ以上の粒子を含有していてよく、それによって、標的結合のための潜在的に高い容量を提供する。本発明の粒子は、一般的に、広範囲のpH、例えば、約4以下のpH値から約12以上のpH値までに耐える。
【0053】
本発明の粒子は用途が広く、種々のクロマトグラフィーの又は非クロマトグラフィーの分離アッセイを実施するために使用される。本発明の範囲内に意図される分離方法の例には、サンプルの他の成分から、化学的又は生物学的標的因子を分離、測定又は回収する方法の中でも、逆相分離、アフィニティー分離、膨張床分離、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、クロマトグラフィー成分分離、固相抽出が含まれる。この粒子は、また、核酸分子及び/又はポリペプチド標的因子に結合し、それによって、これらをサンプルから分離するために使用される。
【0054】
本発明のデバイスの好ましい粒子は、多孔質樹脂である。吸着分離のための多孔質樹脂は、シリカ、ガラス、セルロース、アガロースを含む非常に他種類の異なった材料並びにポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、アガロース、ヒドロゲル、アクリル樹脂及び電気泳動のために使用される他の種類のゲルを含む広範囲の種々の異なったポリマー内で利用可能である。シリカ、ガラス及びポリマーのような多孔質吸着樹脂の多くは、乾燥させることができ、乾燥樹脂1g当たり約1〜2m2から乾燥樹脂1g当たり300m2を超える範囲内の表面積を有する相互に連結された細孔を有する。他の種類の樹脂は、構造を損傷することなく乾燥させることができない架橋したゲルである。これらの種類の樹脂は、通常、材料が架橋したマトリックスを介して均一に拡散することができるので、比表面積を有しない。
【0055】
また、天然若しくは変性樹脂又はこれらの官能基の類似体、変形及び官能性誘導体を含む変性樹脂の使用も、本発明の範囲内に包含される。変性には、例えば、特定の樹脂若しくはその官能基又は両方に対する、化学的実体(例えば、アミノ酸)の置換、削除又は付加が含まれる。例えば、樹脂のアミノ置換、アセチル化及び/又は部分的アセチル化は、本発明の範囲内に含まれる。樹脂の官能基に対するいずれの変性も、本発明に従った変性樹脂の範囲内に含まれる。
【0056】
本発明の範囲内で有用な天然又は変性樹脂の他の種類には、これらに限定されないが、とりわけ、フェニルセファロース、ブチルセファロース、オクチルセファロース、ジビニルベンゼンで架橋したポリスチレン、ヒドロセルC3ポリスチレン−ジビニルベンゼン、ヒドロセルC4ポリスチレン−ジビニルベンゼン、ヒドロセルフェニルポリスチレン−ジビニルベンゼン、メチルHICメタクリレート、−ブチルHICメタクリレート、ワイド−ポア−ハイ−フェニル(wide-pore-hi-phenyl)、フラクトゲルEMD、疎水性樹脂−プロピルメタクリレートコポリマーフラクトゲルEMD、疎水性樹脂−フェニルメタクリレートコポリマーオクチルセファロース、フェニルセファロース、トヨパールHIC、トヨパールアミノ−650S、トヨパールアミノ−650M、トヨパールアミノ−650C、トヨパールアミノ−650EC、トヨパールブチル−650S、トヨパールブチル−650C、トヨパールブチル−650M、トヨパールエーテル−650S、トヨパールエーテル−650C、トヨパールエーテル−650M、トヨパールヘキシル−650S、トヨパールヘキシル−650C、トヨパールヘキシル−650M、トヨパールフェニル−650S、トヨパールフェニル−650C(PRDT)、トヨパールフェニル−650M及びトヨパール659CU(PRDT)が含まれる。全てのトヨパール樹脂は、ペンシルベニア州モントゴメリービル(Montgomeryville)のトーソー・バイオセプ社(Tosoh Biosep)から市販されている。セファロース樹脂は、ニュージャージー州ピスカタウエイ(Piscataway)のジーイー・ヘルスケア社(GE Healthcare)から入手できる。フラクトゲル樹脂は、ドイツ国ダルムシュタット(Darmstadt)のメルク社(Merck)から入手できる。ヒドロセル樹脂は、インディアナ州テレホート(Terre Haute)のバイオクロム・ラブス社(BioChrom Labs,Inc.)から入手できる。残りの樹脂は、公然と入手できる樹脂のための種々の基本材料についての一般名である。
【0057】
多孔質樹脂をカラムの中に充填する場合、流れのために利用可能な流体力学的直径は、粒子直径及び床空隙率によって決定される。
【0058】
【数1】

【0059】
(式中、Dhは、粒子間の流れのための等価水力直径であり、dpは、粒子直径であり、εは、空隙率である)。
【0060】
大きい種がカラムを通して流れるのを可能にするために、樹脂の中への収着のための拡散抵抗を順次増加させる大きい粒子を使用することが必要である。例えば、赤血球がカラムを通して流れるのを可能にするために、約65μmの直径の粒子が、床多孔度が約0.4である場合に、粒子間の空間内に14μmの細孔直径を与えるためには必要である。
【0061】
4.樹脂含浸不織布(RIN)
マトリックスの中への粒子の取り込みは、種々の方法によって達成することができる。不織布は、制御された平均細孔直径で作ることができるので、前記のもののような多孔質樹脂粒子を、不織布を作る繊維の中に含浸させることが可能である。
【0062】
これらの含浸された不織布は、種々の方法で製造することができる。例えば、乾燥粒子を、2枚の予め形成された不織布の間に、水力で絡み合わせする(hydroentangled)ことができる。または、溶融ブロー又はスパンボンディングの間に繊維を形成させながら、乾燥粒子を導入することができる。湿式堆積方法を使用して濡れている間に、樹脂粒子を絡み合わせることも可能である。一実施形態において、粒子は、水力による絡み合わせ(hydroentanglement)によって、予め形成された繊維の中に含浸され、この場合粒子とポリマー繊維マトリックスとの溶融結合は存在しない。
【0063】
一つの好ましい製作方法は、溶融ブロー又はスパンボンドされていてよい、予め製造された不織布の直接カレンダー加工である。一実施形態において、膜が、単位面積当たりの所定の質量の粒子で覆われている不織布は、直接カレンダー加工によって一定の質量比率で付与される粒子が均一に散布され、粒子が散布されると、第二の膜が第一の膜の上に置かれてサンドイッチを作り、この組合せが、2枚の膜を、低い温度及び圧力で一緒に結合することができるパターンを有するカレンダーロールを通過する。表面上の粒子密度は、約0.1〜約10g/m2以上の範囲内である。このデバイスのために使用される膜の細孔サイズは、それらの細孔サイズが10μmよりも大きいので、例えば、赤血球のようなより大きい実体が通過することを可能にする。膜内の粒子は、標的因子、例えば、赤血球濃縮物及び血漿からのプリオンタンパク質への、粒子の結合を容易にするリガンドに結合される。
【0064】
カレンダー加工工程の運転は、通常、不織布の結合のために高い温度を必要とするが、この温度は粒子の溶融温度よりも下に保持され、それらの性能に影響を与えない。一実施形態において、より大きい又はより高密度の粒子が、水力による絡み合わせによって不織膜の間に置かれてもよい。
【0065】
不織布の密度及び重量は、所望の細孔寸法を維持しながら、布上の高い粒子密度を確実にするための広範囲の値をとることができる。約60%w/wの粒子濃度を、布の中に含浸させることができる。2種の異なったポリマー繊維及び2種の異なったポリマーを有する共押出された繊維を有する布を含む、不織布の全ての一般的な製造方法を、この手順のために使用することができる。この柔軟性のために、湿潤及び乾燥樹脂の両方を含浸させることができる。必要な場合、必要な寸法の細孔流れをなお可能にしながら、粒子の捕獲を容易にするために、短繊維(chopped fiber)を布の中に埋め込むことができる。
【0066】
短繊維は、通常1/2インチよりも短い長さであり、それらは、スピンドル又はロールの周りに巻き付けられた単繊維を切断することによって製造される。この細断は、回転刃又は他の鋭利な切断表面を使用して、機械的になされる。短繊維は、非常に小さい(約1μmより小さい)から大きい(>100μm)範囲の直径を有する、種々のポリマー繊維又は炭素繊維から製造することができる。一実施形態において、特定のリガンドが繊維上に化学的にグラフト化又は被覆され、次いでこの繊維は約1/2インチの長さに切断される。次いで、短繊維を、大きい実体、例えば、赤血球が、膜(>10μm細孔サイズ)を通過することができるために適した細孔サイズ及び繊維直径を有する不織布(ポリプロピレン又は他のポリマー)の単一層の上に分布させることができる。
【0067】
短繊維は、繊維の分布における均一性を確実にするために所定の比率で膜に付与することができる。短繊維が表面上に存在すると、不織布の第二の層が短繊維の上に置かれ、この組合せをカレンダーに通して、2枚の不織布層を結合させることができる。一実施形態において、多孔質マトリックス膜又は短繊維をリガンドで官能化させ、例えば、空気堆積技術により、他の膜の中に置かれる。他の実施形態において、リガンドをポリマーに結合させ、このポリマーを続いて繊維に押し出す。繊維を細断して小さいセグメントを作り、これを2枚の膜の間に容易に一体化させることができる。
【0068】
5.表面修飾
反応性基によって1個又は2個以上の内部及び/又は外部表面上で官能化された、表面修飾された不織布又は織布(SMN)及び表面修飾された粒子も、本発明の範囲内に含まれる。官能化は、多孔質マトリックス(例えば、織布又は不織布)、粒子又は両方の表面への、1種又は2種以上の反応性基の付加によって達成される。この反応性基は、標的因子と相互作用し、標的因子を結合する。反応性基と標的因子との間の相互作用は、化学的、物理的及び/又は生物学的相互作用である。
【0069】
一実施形態において、多孔質マトリックス、粒子又は両方は、標的因子と共有化学結合を形成することができる官能基によって表面修飾される。本発明の範囲内で有用である官能基には、これらに限定されないが、下記の基、即ち、とりわけ、エポキシ、ホルミル、トレシル(tresyl)、ヒドロキシスクシンイミドエステルの1種又は2種以上が含まれる。本発明の範囲内で有用である他の基には、これらに限定されないが、下記の基、即ち、スルホン酸、第四級アミン、カルボキシル基、第一級アミン、シアノ、シクロヘキシル、オクチル及びオクタデシル基、オキシラン、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホニルエステル、イミダゾリルカルバメート、第四級アミン、カルボキシル基、染料リガンド、アフィニティーリガンド、抗原−抗体、核酸分子;イオン交換、キレート化、酸化/還元反応、立体排除反応、触媒反応、疎水性反応、逆相並びにクロマトグラフィー分離で通常遭遇する他の反応のための基の1種又は2種以上が含まれる。
【0070】
官能基、例えば、リガンドは、支持体に化学的に共役できるか又はリンカー、例えば、ストレプトアビジン、β−アラニン、グリシン、グリシン−セリンを含有するポリマー、式−−(CH2)−−の短鎖炭化水素、ポリエチレングリコール、ε−アミノカプロン酸及び−−O(CH2n(式中、nは1〜30である)を含むリンカーを介して結合することができる。所望により、リガンド(群)は、1個又は数個の異なった開裂性リンカー、例えば、分析のためのリガンドの集団の選択的脱離を可能にする、光解離性の部位又は酸に不安定な部位によって結合させることができる。脱離したリガンドは、例えば、(例えば、サンプル中の標的を、濃縮、単離、検出、特徴付け、定量又は同定するための)タンパク質及びエナンチオマー分離用のアフィニティー精製媒体として、診断治療ツール、触媒及び化学反応のエンハンサーとして並びにタンパク質の選択的安定剤として使用することができる。
【0071】
一実施形態において、不織膜は、官能基としてアフィニティーリガンドで被覆され、このアフィニティーリガンドは、それらの表面上のプリオンのための特異的アフィニティーを有する。アフィニティーリガンドの例には、ポリエチレングリコール単位を含有する親水性スペーサーを有する第一級アミンが含まれる。このリガンドは、化学的グラフト化により又はラテックスエマルジョン被覆方法(パディング)により、膜(例えば、マコファルマ社(Macopharma)からの血漿処理ポリプロピレン)上に置くことができる。
【0072】
5.1.多孔質マトリックス上のリガンドの重合
多孔質マトリックス上のモノマーの重合は、これらのマトリックスの表面にエポキシ基を導入し、これは順次、リガンドの、マトリックスの表面への化学的結合を容易にする。一実施形態において、モノマーエマルジョンを、パディングによって、綿、ポリプロピレン、ポリエステル及びナイロン布の上に塗布する。パディングは、布の染色、漂白及び被覆のための、織物工業において使用される連続工程である。パディングについての追加の情報は、セラニーズ(Celanese)LLCウエブサイト:www.vectranfiber.com(参照してここに取り込まれる)に掲載されている。パディングは、一般的に、布を液体に連続的に通過させ、次いでローラーの間に通過させて、過剰の溶液を絞り出すことによって、布に液体を含浸させるために使用される一組のスクィーズローラーからなる。シングルディップ、シングルニップパディング技術を使用することが可能である。Habeishら、「グリシジルメタクリレートでのエマルジョン重合により、綿染色及び他の特性を改良する(IMPROVING COTTON DYEING AND OTHER PROPERTIES BY EMULSION POLYMERIZATION WITH GLYCIDYL METHACRYLATE)」、American Dyestuff Reporter、4月号、第26〜34頁(1986年)(参照してここに取り込まれる)では、パディング技術を使用して、グリシジルメタクリレート(GMA)エマルジョンを綿繊維に塗布している。パディングの後、過剰の水を蒸発させ、重合を上昇した温度で実施する。繊維表面上のポリマーの量は、約1〜約10%以上の範囲内である。この重合は、また、所望の細孔サイズ(>10μm)を有する、PET、PPなどの不織ウエブ上で実施することができる。
【0073】
5.2.布上のラテックス被覆
ラテックスエマルジョンを、所望のポリマーの小さい粒子を製造するための水中での従来のエマルジョン重合によって合成する。エマルジョンを製造するために、種々の可溶性フリーラジカル開始剤並びに非アニオン性及びアニオン性界面活性剤を使用することができる。一実施形態において、ラテックスエマルジョンを、前記のようなパディングによって、PP、PET及び他のポリマーの単一繊維又は不織ウエブ上の多孔質マトリックスの上に被覆する。この種のアプローチの例は、De Boos及びJedlinek、「織物へのエポキシ官能性ポリアクリレートエマルジョンの適用(APPLICATION OF EPOXY FUNCTIONAL POLYACRYLATE EMULSION TO TEXTILES)」、J.Macromol.Sci−Chem.、第A17(2)巻、第311〜235頁(1982年)(参照してここに取り込まれる)により示されている。
【0074】
6.使用方法
本発明の方法、キット及びデバイスは、発現されたin vitro遺伝子産物の、予後、診断、検出、精製、分離、プロセシング並びに生物薬物の製造及び付与を含む種々の用途において有用である。本発明は、平板、螺旋巻き又は中空繊維カートリッジデバイスからの、膜操作のために一般的に利用可能である全てのデバイスに適用可能である。フローは、圧力滴下及び所望の流量に依存して、ポンプへの重力から、全ての一般的手段により、デバイスを通して誘導することができる。
【0075】
本発明の精製及び抽出技術は、精製工程の数を減らすこと、収率を向上すること、純度を高めること及び従来の方法に付随する制限を克服することにより、従来の精製技術を超えた利点を提供する。
【0076】
本発明のデバイスは、非常に感度が高く、サンプルから微量の病原体を分離することが可能である。一実施形態において、本発明のデバイスは、全血、赤血球濃縮物、血小板濃縮物、血漿、血漿誘導体、白血球、白血球枯渇血液、哺乳動物細胞培養物、発酵ブロス並びに生物薬物の製造及び付与並びに治療薬の製剤のために使用される他の媒体からの、病原体、例えば、PrPC、PrPSC、PrPresを含むプリオン、ウイルス、細菌及び毒素の除去のために使用される。複数の病原体は、治療及び/又は薬物製品の製造を目的とする血漿プロセシング工業における全ての流れから、本発明のデバイスにより付随的に且つ迅速に、サンプルから分離することができる。
【0077】
特に、本発明の方法及びデバイスは、効率及び純度を上昇させることにより、タンパク質精製方法を最適化し、生物薬物の製造方法を改良する。生物薬物は、タンパク質、ペプチド又は他の複合のポリヌクレオチド若しくは蛋白質系巨大分子(総合的に「遺伝子産物」)である薬物である。これらの製造方法には、所望の遺伝子産物を、そのホストバイオマス、例えば、血漿又は他のヒト及び非ヒト生物学的源(例えば、組換え若しくは非組み換え細胞培養物、トランスジェニック動物のミルク又は組換え若しくは非組み換え植物抽出物)から回収することが含まれる。バイオマスから商業的に実行可能な収率の所望のタンパク質を分離することは、バイオマスには、望ましくないホストタンパク質、核酸分子及び他の天然に生じる化学的実体が含有されているので、厄介である。
【0078】
タンパク質分離及び精製方法は、タンパク質の多様性、可能性のある汚染物質及び不純物の異なった性質並びに媒体から分離するための生成物の量のために、独特の難題を示す。従来の精製技術には、一般的に、一連の精製工程が含まれている。それぞれの工程で、収率は低下し、製造コストは増加する。タンパク質分離及び精製コストは、一般的に、全製造コストの50%以上に相当する。
【0079】
他の実施形態において、本発明のデバイスは、それらが二つの同時操作、即ち濾過及び吸着を実施するように設計されている。この実施形態において、布細孔サイズは、同時に、所望の分子を含有するサンプルの通過を可能にするために十分に大きい細孔サイズを維持しながら、大きい粒子材料を排除するために十分に小さくなっている。この技術は、単一デバイス内で同時の濾過及び吸着工程を達成し、膜濾過及びそれに続く吸着クロマトグラフィーに取って代わる。例えば、本発明のデバイスは、培養基から直接細胞外に分泌された、所望の又は望まない分子を吸着することを可能にする。
【0080】
他の実施形態において、本発明のデバイスは、バイオテクノロジー工業における吸着除去技術用のカラムへの代替物として使用される。これらの技術は、生化学相互作用、例えば、イオン交換、キレート化、酸化/還元反応、立体排除、触媒反応、疎水性相互作用、逆相、染料リガンド、アフィニティーリガンド、抗原−抗体並びにクロマトグラフィー及び/又は他の分離技術で通常遭遇する他の相互作用を利用する。
【0081】
7.試験キット
サンプルからの標的因子の分離によるサンプル精製用の試験キットも、本発明の範囲内に包含される。
【0082】
完全な試験キットには、生物学的サンプルの標的分離及び精製のための溶液及びデバイスが含まれている。例えば、試験キットには、高処理量サンプル精製のための96個、384個又は1536個ウエルプレート並びに/又は個々のタンパク質、抗体及びプレートフォーマット内のタンパク質分離のために必要な溶液をカスタマイズするための、本発明のデバイス内のリガンドの粒子への結合のための溶液が含まれている。
【0083】
一般的に、本発明の試験キットには、下記のもの、即ち、(1)1個又は2個以上の、本明細書に記載したようなデバイスを含有する容器、(2)本明細書に記載した方法を実施するための使用説明、(3)1種又は2種以上のアッセイ成分及び(4)包装材料が含まれている。本明細書に記載されたデバイスは、本発明の分離方法を実施するために必要なコンポーネント要素の、全部ではないにしても多くを含むように包装される。例えば、試験キットには、とりわけ、緩衝液、反応剤、化学試薬、官能化試薬、酵素、検出試薬、制御物質などの1種又は2種以上に加えて、多孔質マトリックス及び粒子を含有するデバイスが含まれている。
【0084】
一実施形態において、このキットには、更に、別の容器内に官能性基が含まれており、この官能性基は、アッセイを実施する前に粒子及び/又は多孔質マトリックスに結合させなくてはならない。または、デバイスを官能性基を含まないキットで提供することができ、この場合、多孔質マトリックス、粒子又は両方は、好ましくは予め官能化されている。
【0085】
本発明のデバイスは、どのような所望のサイズ及び形状のものであってよい。好ましくは、このデバイスは、例えば、ディスク又は細長い一片の形状であるシート状材料である。試験キットの一部として提供することができる他の品目には、固体表面注射器、ピペット、キュベット及び容器が含まれる。多孔質マトリックス又は粒子の表面上のポリマー又は共有結合官能性分子のin situ架橋によって与えられる、単層材料又はより厚い材料で多孔質マトリックス又は粒子を被覆することによって、クロマトグラフィー的選択率及び分離効率の両方の最適化が可能になる。
【0086】
検出は、多孔質マトリックス、粒子又は両方を検出可能な試薬と結合することによって容易に促進できる。検出可能な試薬の例には、これらに限定されないが、種々の酵素、補綴グループ、蛍光材料、ルミネセンス材料、バイオルミネセンス材料、放射性材料、分散染料、金粒子又はこれらの組合せが含まれる。
【0087】
実施例
関連する技術分野の当業者によって、本明細書に記載した方法及び応用に対する他の適切な修正及び適応が、当業者に公知の情報に鑑みて、本明細書に含まれる本発明の説明から容易に明らかであり、本発明の範囲及びその如何なる実施形態からも逸脱することなく行うことができることが理解されるであろう。ここで本発明を詳細に説明して、同じことが、例示のみの目的のために本明細書に含められ、本発明の限定であることを意図しない下記の実施例を参照することによって、一層明瞭に理解されるであろう。
【実施例1】
【0088】
表面修飾不織布(SMN)
表面修飾不織布は、吸着すべき標的種が大きく、それが樹脂の細孔を透過できないとき、特に有用である。この例において、不織布を構成する繊維の表面を、標的因子の吸着に影響を与えるように変性した。吸着工程には、イオン交換、疎水性若しくはアフィニティー相互作用又は全ての他の一般的な吸着工程が含まれる。SMNを粒子無しに使用する場合、結合のために利用可能な材料の単位体積当たりの表面積は、布の多孔度及び繊維の直径によって制御される。
【0089】
【数2】

【0090】
式中、avは、固体の単位体積当たりの比表面積であり、dfは繊維直径であり、εは空隙率である。
【0091】
100nm〜10μmの範囲内のどの繊維直径でも利用可能であり、多孔度は通常0.4〜0.5の範囲内であるので、これらのデバイスで非常に大きい表面積が達成できる。例えば、0.1μmの繊維直径で、布の単位体積当たりの表面積は、ほぼ
【0092】
【数3】

【0093】
であろう。
【0094】
これは、多くの多孔質クロマトグラフィー支持体の、単位体積当たりの表面積と比べても、引けをとらない。しかしながら、この布の平均細孔流直径は独立に制御することができるので、細孔サイズは、直径で数ミクロンに達し得る。電気紡績のような技術は、より小さい直径でも製造することが可能であり、それにより体積あたり、より大きな面積とすることができる。
【0095】
デバイスへの標的因子の結合を容易にし、デバイス中に使用される特定の多孔質マトリックスの化学作用と適合する、全ての表面修飾が、本発明の範囲内に包含される。表面修飾には、例えば、とりわけ、帯電した種の形成、アフィニティーリガンド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、スペーサーアーム、疎水性部位、フッ素化材料の結合が含まれる。
【0096】
不織布中の繊維の表面は、平滑である傾向があるので、これらの表面は、特に大きい種、例えば、プリオンタンパク質、ウイルス又は細菌へのアフィニティーリガンドの暴露のために好ましい形状を示す。
【実施例2】
【0097】
プリオンタンパク質(PrP)除去のためのデバイス構成
この実施例は、種々の形状の非多孔質表面への吸着を可能にすることにより、内因性感染性海綿状脳症感染力を除去するための異なったデバイス構成を設計する可能性を示す。赤血球濃縮物からの内因性感染力には、約200ng/mLの全濃度での、感染性PrPSC(プリオンタンパク質のスクレイピー形)又はPrPres(プリオンタンパク質の抵抗性形)の除去が含まれる。350mLを含有する赤血球濃縮物(rbcc)の袋内には、合計で7×10-5gのPrPが存在した。タンパク質の単層が、約2mg/m2の密度の単層で表面を被覆するとすると、rbcc中の内因性PrPの全部を結合するために必要な全表面積は、下記のように推定される。
【0098】
【数4】

【0099】
ここで、Aは、デバイスの全表面積である。
【0100】
上記の式から明らかなように、プリオンを結合するために必要である全表面は、比較的小さく、正確な表面密度でアフィニティーリガンドを暴露するために適した幾つかのデバイス形状を収容する。
【0101】
A.四角形シート
血液に暴露させたリガンドで被覆された両面を有する不織布の、N個の四角形シートの一組は、
【0102】
【数5】

【0103】
によって与えられる全表面積を有する。ここで、Nはシートの数であり、Lは、正方形シートの長さ/幅である。10枚のシート(N=10)の場合に、それぞれのシートの必要な幅は、
【0104】
【数6】

【0105】
であろう。
【0106】
この形式のデバイスは、図2に示されるような、シートの間の曲がりくねった通路内を流体が流れる、シートの互い違いの配置からなる。
【0107】
B.被覆した繊維
外側上にアフィニティーリガンドで被覆されたN個の不織布繊維の一組は、
【0108】
【数7】

【0109】
によって与えられる全表面積を有する。
ここで、Rは繊維の半径である。
【0110】
例えば、5μmの半径及び5cmの長さの繊維の数は、
【0111】
【数8】

【0112】
であろう。これらの繊維の体積は、
【0113】
【数9】

【0114】
であろう。ここで、Vfは繊維の体積である。
【0115】
上記の式から明らかなように、この繊維の体積は比較的小さく、これは、主として、単位体積当たりの非常に高い表面積を生じさせた、非常に小さい繊維直径に起因する。このような繊維マットを通過する赤血球の適切な流れを可能にするために、多孔度は、かなり高くなければならず、例えば、約50%である。この場合に、デバイスの体積は、繊維体積のほぼ2倍すなわち0.17mLであろう。これは非常に小さい体積であり、再び、この形の捕獲のためのデバイスが、容量必要条件に適合するために大きいことを必要としないことを示す。例えば、半径2cmの繊維マットは、この体積を与えるために、厚さがほぼ0.135mmでなくてはならないのみである。1枚又は2枚以上の繊維のシートを、外側上にアフィニティーリガンドで被覆することができる。
【0116】
C.粒子
小さい非多孔質粒子も、単位体積当たりの非常に高い表面積を示す。
【0117】
上記の表面積を有するために必要な粒子の数及び体積は、円柱構造物の場合に使用されるものと同様の方法で計算した。
【0118】
【数10】

【0119】
ここで、Vsは、粒子の体積である。
【0120】
半径10μmの粒子が与えられると、式5によって与えられる粒子の数及び体積は、
【0121】
【数11】

【0122】
である。
【0123】
この式は、小さい粒子の極めて小さい体積を示す。システムを通過する赤血球の容易な流れを可能にするために、小さい粒子は、より大きい粒子と共に分散させるか又は大きい細孔を有する架橋したゲル(例えば、アガロース)中に懸濁させることができた。
【実施例3】
【0124】
樹脂有り又は無しでの、カレンダー加工による膜の2つの層の結合
プリオン除去デバイスを開発するために、ポリプロピレン膜の2つの層を、室温/400PLI及び150F/100PLI下で、1mg/cm2の樹脂密度で、成功裡にカレンダー加工した。カレンダー加工した膜を、超音波シーラーを使用して密閉した。カレンダー加工した膜サンプルからの溶血のパーセンテージは、十分に許容できる限界内であった。2つの膜層の間にアミノ650M樹脂を含浸させるためにカレンダー加工を使用した。
【0125】
トヨパールアミノ650M樹脂粒子を、不織布膜の2つの層の間に含浸した。マコファルマロイコフィルター (Maco Pharma Leucofilter)内に現在使用されているポリプロピレン(内側層)膜及びポリエステル(外側層)膜は、これらが既に、ヒト血液をプロセシングするために承認されているので、これらの膜のための良好な候補である。
【0126】
デバイスを通過する赤血球の流れを妨害することなく、粒子を固定できるかどうかを調査するために、内側層膜及び/又は外側層膜を、粒子有り又は無しでカレンダー加工した。カレンダー加工は、2本のローラーの間に膜を通過させてシートにすることによって達成された。
【0127】
材料及び方法
ポリプロピレン膜(PP)の1個のロール及びポリエステル膜(PET)の1個のロールを、3インチ内径のプラスチックスピンドルに巻き付けた。ロールの幅は約0.5メートルであった。膜は、幅22.5cm及び長さ800mであった。膜を、22.5cm×22.5cmの正方形シートに切断した。乾燥樹脂を、1mg/cm2で膜の片側上に散布し、次いで他の膜で覆った。膜単独サンプルは、樹脂散布を必要としなかった。上記のサンプルを、2本のカレンダーロール(1本のエンボスロール及び1本の平滑ロール)に通過させた。カレンダー加工のために、両方のロールを加熱して温度を上昇させることができる。ロールの間の圧力も調節した。カレンダー加工したサンプルを、目視検査、重量測定、SEM(走査型電子顕微鏡検査)細孔サイズ試験による断面検査及び全血をカレンダー加工したデバイスに通過させた後の通過流の溶血パーセント試験により試験した。
【0128】
溶血パーセントの測定のための手順
膜サンプルを25mmの円形に切断し、ミリポア・スウィンネックス(Millipore Swinnex)25mmフィルターホルダーの中に置いた。それぞれのサンプルを、通過流で二重に、次いで96ウエルプレートで三重に試験した。それぞれのサンプルを、2mLの作業緩衝液(作業緩衝液は、20mMのクエン酸塩及び140mMのNaCl、pH7.0)で洗浄し、次いで、全血を、頂部から、0.5mL/分で、膜を通してポンプ輸送した。それぞれのサンプルから、通過流5mLを集めた。通過流又は未処理血液を、12000rpmで10分間4℃で遠心分離して、上澄み液を得た。それぞれのサンプルからの3個の100μLアリコートを、96ウエルプレートの3個のウエルの中に入れた。それぞれのプレートのUV吸光度を、415nmで読み取った。A415nmの平均値を、同じ血液の100%リーシスからの値によって割った。溶血のパーセンテージは、それが1%未満であれば、許容できる。
【0129】
結果
【0130】
【表1】

【0131】
目視検査から、サンプル番号4、7及び13が、粒子埋設のために最良のものと決定された。ロールの温度を上昇させるとき、サンプル4及び13について示されるように、膜を結合するために、より低い圧力を使用することができる。外側層膜は、内側層よりも厚くて、堅いポリエステルから製造した。外側又は内側層膜を有する外側層をカレンダー加工するために、サンプル21について示されるように、より高いロール温度及び圧力が必要であった。
【0132】
【表2】

【0133】
樹脂密度について、1mg/cm2は、10g/m2に等しい(1mg/cm2×104cm2/m2=10g/cm2)。単一層、二重層及び樹脂が埋設された二重層からの重量は、相対的に比例した。結果は、樹脂が、2枚の膜の層の間に十分に維持されたことを示した。
【0134】
サンプル11及び13の走査型電子顕微鏡写真(SEM)によって、幾つかのものは亀裂したけれども、殆どの樹脂粒子は、カレンダー加工の後に元のままであったことが明らかになった。サンプル2もSEMによって検査し、同様の結果が明らかになった。カレンダーのエンボスロール上に、2mm×2mmの正方形格子スペースを置いた。カレンダー加工の間に、膜は、格子が触れた場所で強くプレスされた。この領域を、結合領域として参照する。ポケット領域は、結合領域から最も遠い領域を指す。
【0135】
サンプル11は、1個の内側層と1個の外側層との間に、樹脂粒子を固定する実施例である。図3は、50倍でのサンプル11のポケット領域を示す。サンプル13は、2個の内側層の間に、樹脂粒子を固定する実施例である。図4は、50倍でのサンプル13のポケット領域を示す。
【0136】
細孔サイズ分布
カレンダー加工したサンプルの細孔サイズ分布の結果を、下記の表3に示す。カレンダー加工したサンプルについて、最小、平均及び最大細孔サイズは、単一層と比較して、30%〜50%減少した。細孔サイズにおける減少が、デバイスを通過する赤血球の通過を阻害するかどうかを決定するために、全血通過流の溶血での更なる試験を実施した。
【0137】
【表3】

【実施例4】
【0138】
高い粒子密度を使用するカレンダー加工の最適化
この試行で使用したカレンダーロールは、ビーエフ・パーキンス社(BF Perkins)からプロメチック(ProMetic)により取り寄せた。このロールは、ステンレススチールから製造され、ハニカムパターンで彫刻され、テフロン(登録商標)(Teflon)剥離皮膜で被覆されている。使用したバックロールは、ゴム被覆されていた(3/4インチ〜1インチ厚さ)。
【0139】
乾燥樹脂の4グラムサンプルを、プラズマ処理したポリプロピレン膜の30cm×20cm(600cm2)膜片(swatch)の中に、手作業で散布した(これは、6.6mg樹脂/cm2の粒子密度に相当する)。膜の第二の膜片を、樹脂層の頂上に置き、このサンドイッチを、10m/分でカレンダーロールに通過させた。下記の表には、試験の間に得られた結果が含まれている。
【0140】
【表4】

【0141】
サンプルを顕微鏡下で観察して、ピンホールは示されなかった。それぞれの試行の膜片(樹脂無しのみ)を更に参照するために保存した。
【実施例5】
【0142】
β−ラクトグロブリンの結合及び樹脂含浸カレンダー加工膜の流動特性
この実験は、4mg/cm2の密度で乾燥樹脂を含有するカレンダー加工した膜材料へのモデルタンパク質(β−ラクトグロブリン)の結合について、漏出曲線を決定するために実施した。
【0143】
4mg/cm2の密度で乾燥樹脂を含有するポリプロピレン膜材料を、170°F及び150ポンド/直線インチ(PLI)でカレンダー加工した。この膜材料を切断し、ミリポア・スウィンネックスフィルター装置の中に組み込んだ。それぞれのフィルター装置には、フィルター装置の出口側に、1〜4枚の膜層と、カレンダー加工しなかった膜の1層との積層物が含まれていた。1×PBS中の0.5mg/mLのβ−ラクトグロブリンの溶液を、蠕動ポンプを使用して、1.5mL/分で、フィルター装置に通過させた。0.5mLの画分を4分間集め、ピアス・ミクロ(Pierce Micro)BCAアッセイキット(ピアス社、イリノイ州ロックフォード(Rockford))を使用して、それらのタンパク質濃度について分析した。
【0144】
図5〜7は、異なった数の膜層について集めた12個の画分の、ミクロBCAアッセイの結果を示す。対照として、樹脂を含有しないカレンダー加工した膜を使用した。この実験からの結果は、取り込まれた樹脂を有する膜と対照との間の、結合における差異を示す。全ての実験において、未結合濃度の初期勾配は類似していたが、層2〜4は、飽和条件を示すほどには十分に長く運転しなかった。
【0145】
【表5】

【0146】
結合したタンパク質の量は、一般的に、膜の層が追加されるたびに増加し、膜の3層でピークになり、続いて4層の場合はとても僅かだが減少した(表5)。膜の2〜4層を含有するフィルターは、飽和条件を示すほどには十分に長く運転しなかったので、これらが結合したことは確かではない。
【実施例6】
【0147】
膜ロール上の粒子分布
上記の場合、ビーズは手動で配置されていたが、これに代わる樹脂散布装置を開発した。この装置を試験し、較正した。
【0148】
粉末アプリケーターを手動で60%に設定した。これは、6.52〜6.99Kg/時(表示)の付与量に等価であった。重量によって決定された測定付与量は、6.96Kg/時の目標値の5%以内で、6.65Kg/時(3回の測定の平均)であった。
【0149】
付与された粉末は、均一に分布されたように見え(目視評価)、膜の縁を越えたこぼれは無かった。図9は、約1時間ラインを運転した後、底膜の上への粒子の分布を示す。粒子を含有する領域によって形成されるシャープな縁を、膜の両側上に見ることができる。他の注目すべき特徴は、製造時間がいくらか過ぎた後でも、コンベヤーベルトの上に粉末が無いことである。
【実施例7】
【0150】
プリオンバインダー
プリオンを結合するために使用した樹脂のリストを、下記に開示する。
【0151】
a)アミノ650M−ペプチドと他のリガンドとのカップリングのためのベース樹脂。このベース樹脂は、プリオンタンパク質、即ち、正常PrPCと感染性PrPSC(又はPrPres)との両方の結合において有用性を示した。この樹脂はカラムクロマトグラフィーフォーマットで使用され、本発明者らは、in vitro技術(ウエスタンブロット)による検出限界までの、赤血球濃縮物、血漿、全血からの、PrPSC(ハムスター、マウスvCJD、マウスフクオカ、ヒトspCJD及びヒトvCJD)の除去/結合及び、ハムスター263Kスクレイピー感染力、即ち、約4logsのin vivoモデル(赤血球濃縮物)における減少を示した。
【0152】
b)トヨパール−SYA−このトリペプチドは、プリオンタンパク質、即ち、正常PrPCと感染性PrPSC(又はPrPres)との両方の結合において有用性を示した。この樹脂はカラムクロマトグラフィーフォーマットで使用され、本発明者らは、in vitro技術(ウエスタンブロット)による検出限界までの、赤血球濃縮物からの、PrPSC(ハムスター、マウスvCJD、マウスフクオカ、ヒトspCJD及びヒトvCJD)の除去/結合及びハムスター263Kスクレイピー感染力、即ち、約4logsのin vivoモデルにおける減少を示した。
【0153】
c)トヨパール−DVR−このトリペプチドは、プリオンタンパク質、即ち、正常PrPCと感染性PrPSC(又はPrPres)との両方の結合において有用性を示した。この樹脂はカラムクロマトグラフィーフォーマットで使用され、本発明者らは、in vitro技術(ウエスタンブロット)による検出限界までの、赤血球濃縮物からの、PrPSC(ハムスター、マウスvCJD、マウスフクオカ、ヒトspCJD及びヒトvCJD)の除去/結合及びハムスター263Kスクレイピー感染力、即ち、約4logsのin vivoモデルにおける減少を示した。
【0154】
アミノ650M、SYA及びDVRは、フルスケール、即ち、樹脂(約350mL)の上を通過した赤血球濃縮物の1フル単位で使用した。カラムサイズは、10mLの膨潤樹脂であった。SYA、DVR及びアミノは、400μモル/g(乾燥樹脂)で機能する。
【実施例8】
【0155】
緩衝液、濾過された血漿及び全血の中にスパイクされたSBHから、アミノ650M及びアミノ650UへのPrPSC結合の比較
アミノ650Uは、アミノ650Mを含有する、異なったビーズサイズの混合物であり、これは、650Mよりも製造が安価である。アミノ650Uを、内因性PrPについて並びに現在使用されているマトリックス、即ち、緩衝液、濾過された血漿及び全血の全部中のPrPSCを結合するその能力について試験し、これを、スパイクされた全血で適用されたアミノ650Mとの結合に対して比較した。実験は、スパイクされた緩衝液、血漿及び全血からアミノ650Uへの、PrPSCの結合を比較し、血漿及び全血からアミノ650Uへ内因性PrPCの結合を確立するように設計した。更に、実験は、PrPCの除去における白血球濾過の効果を決定するように設計した。スパイクされた緩衝液は、作業緩衝液への脳ホモジネートの添加を指す。スパイクされた全血は、ヒト又はハムスター全血への脳ホモジネートの添加である。
【0156】
血漿又は全血中に存在するとき650U又は650Mによるプリオン除去について、信号における差は見出されなかった。要するに、アミノ650U及び650Mは、同様に機能した。白血球濾過によって除去されたPrPCの量は、血小板及び白血球中に一緒に存在すると推定されたものよりも多かった。従って、白血球濾過は、血漿由来のPrPCの幾らかをも捕獲することが可能であった。白血球フィルターは、ヒト及びハムスター血漿由来のPrPCの捕獲に関して、異なって挙動したことが示された。ハムスター血漿PrPCはこのフィルターによって捕獲されなかったけれども、ヒト血漿PrPCは捕獲される可能性がある。最後に、また、この二つの結果の間の差異は、PrPCと感染力との間の相互関連の欠如に起因すると思われる。
【0157】
白血球濾過によって除去されたPrPCの量は、血小板及び白血球中に一緒に存在すると推定されたものよりも多かった。従って、白血球濾過は、血漿由来のPrPCの幾らかをも捕獲することが可能であった。白血球フィルターは、ヒト及びハムスター血漿由来のPrPCの捕獲に関して、異なって挙動したことが示された。ハムスター血漿PrPCはこのフィルターによって捕獲されなかったけれども、ヒト血漿PrPCは捕獲されることが可能であった。最後に、また、この二つの結果の間の差異は、PrPCと感染性との間の相互関連の欠如に起因すると思われる。
【実施例9】
【0158】
AMN樹脂に対するハムスター脳PrPSCの結合
一連の樹脂(例えば、AMN−13、14、15、16及び17、アミノ650M及びアミノ650U)について、比較結合実験を実施した。AMNシリーズは、下記のような様々なアミノ置換レベルを有する650U(新たに、650C−prdtとして指定する)サンプルに関する。
AMN−13;0.094eq/L
AMN−14;0.078eq/L
AMN−15;0.072eq/L
AMN−16;0.063eq/L
AMN−17;0.098eq/L
これらの樹脂を、スパイクされた緩衝液、血漿及び全血からのPrPSCに結合させた。その結果は、スパイクされた緩衝液及びスパイクされた全血の両方でチャレンジしたとき、全てのAMN樹脂が等しく十分に結合したことを示した。更に、AMN樹脂での信号は、アミノ650M及び650Uでのものと同じであった。スパイクされた血漿からのPrPの樹脂結合を比較すると、全ての他の樹脂に比較して、アミノ650Mからの僅かに強い信号が存在した。AMN樹脂の中で、#13は、弱いPrP信号を有するようであるが、アミノ650Uに非常に匹敵し、一方、#15、16、17は全て、アミノ650Uよりも良く性能を発揮した。AMN14、15、16、17樹脂の間に、顕著な差は観察されなかった。
【0159】
要するに、この研究は、樹脂の間の一層の類似性を示し、最も重要なことに、これは650Mとよりも、アミノ650Uと、より密接な相互関係を示した。血漿で観察された差は、少なくとも置換のレベルを下げるチャレンジが有利であり、この樹脂はアミノ650Mに一層近い性能を発揮することを示唆した。
【実施例10】
【0160】
樹脂埋設膜に結合したタンパク質の抽出及び正常ハムスター脳ホモジネートからのPrPCの結合の決定
樹脂埋設カレンダー加工膜を使用する新規なデバイスの開発は、樹脂からの結合したタンパク質の抽出のための新規な手順を開発する必要性に至った。材料の取扱い並びに抽出溶液の組成、濃度及び体積に対する変更を行わなくてはならなかった。実験も、また、トヨパールアミノ650M樹脂埋設膜及びその完全アセチル化形の両方を使用して、新規なフォーマットで結合評価を遂行するように設計した。
【0161】
正常なハムスター脳ホモジネート(HaBH)を、サルコシル(sarkosyl)で処理し、沈降させた。得られた上澄み液を、作業緩衝液又はヒト全血を使用して、1%の最終濃度まで希釈した。50ミリリットルのスパイクされた溶液を、完全容量形又は対照として同じ樹脂の減少した置換容量形で、クロマトグラフィー樹脂、即ち、トヨパールアミノ650M又はその完全アセチル化形の4mg/cm2を埋設したカレンダー加工した膜の4個のサンドイッチを含有する、47mmスウィンネックスフィルターホルダー(ミリポア社)に通過させた。使用した流量は、蠕動ポンプを使用して、0.5mL/分であった。それぞれ5mLの10個のアリコートを、スパイクされた溶液及び膜型のそれぞれについて集めた。スパイクされた緩衝液でチャレンジした両方の膜の通過流サンプルを、ELISAによって分析した。樹脂及び完全にアセチル化した樹脂を含有し、スパイクされた全血でチャレンジした膜を、作業緩衝液を使用して洗浄した。
【0162】
膜(ある場合には全積層物)の一部を、SDS−PAGEサンプル緩衝液又は99%ギ酸で処理した。ギ酸による処理は、0.5mLの99%ギ酸及び10μLの20%SDSを膜サンドイッチの四分の一に添加し、続いて1時間インキュベーションし、液体を除去し、スピードバク(SpeedVac)を使用して蒸発することからなっていた。このサンプルは、水を使用して15μLに調節し、続いて15μLの2×サンプル緩衝液を添加した体積を有していた。サンプル緩衝液による処理は、3mLの1×サンプル緩衝液を膜の完全積層物に添加し、続いて30分間インキュベーションし、7分間沸騰させることからなっていた。この溶液を、膜に通過させることなく回収し、短時間遠心分離して、全ての樹脂を除去した。上記の処理の変形も試験した。これは、1mLの2×サンプル緩衝液を、フィルターの1/4に相当する、2個の分離した、膜の積層物に添加し、1時間インキュベーションし、続いてそれらの1個のみを沸騰させることからなっていた。フィルターホルダーを解体することが、感染力を使用するとき危険すぎるようになる場合には、沸騰を伴わないサンプル緩衝液での溶離を使用することができる。
【0163】
試験した最終条件は、チャレンジ溶液と接触するための第一、第二、第三及び第四の膜への結合を確認するための、サンプル緩衝液との膜の部分(1/4)のインキュベーションであった。次いで、サンプルをSDS−PAGEゲル上で泳動し、全タンパク質について染色した。ウエスタンブロットも実施した。フィルターホルダーの空隙体積は約7mLであった。フィルターのそれぞれに50mLのチャレンジ溶液を通過させ、続いて空気を通過させた後、回収された体積は、全血について45mL及び47mLであった。スパイクされた緩衝液を使用したとき、回収された体積は46mL及び46mLであった。異なったチャレンジ溶液を使用したとき、顕著な差異は見られなかった。
【0164】
開けるべき第一フィルターホルダーは、スパイクされた全血で適用された完全アセチル化したトヨパールを有する膜を含有するものであった。空気を通過させ、緩衝液で洗浄したにもかかわらず、フィルターの内側に幾らかの血液が尚も存在していたことが注目された。緩衝液で膜を洗浄することを試みる間、樹脂の顕著な損失が存在し、膜を廃棄した。
【0165】
全血でチャレンジされたトヨパールアミノ650Mを有するフィルターホルダーを、余分の200mLの緩衝液で洗浄した。流量は、最大(目盛板内で999)よりも高かった。ホルダーを開けた際、幾らかの血液が、内側、特に層の間に存在していたことが注目された。放射状ディストリビューターによって線引きしたカップル部分が、洗浄の間に迂回されたことも注目された。
【0166】
膜の積層物を4個の4分の1片に切断した。この片の1個は、4枚の層を有し、これを分離し、サンプル緩衝液で処理して、異なった層が異なった結合を有するかどうかを調査した。もう1個の四半分も片に分離し、ギ酸処理に付した。残りの2個の4分の1片を、加熱有り及び無しでの処理を比較するために使用した。
【0167】
スパイクされた緩衝液でチャレンジされた2個のフィルターを、それぞれ200mLの作業緩衝液で洗浄した。このフィルターを開き、積層物全体を小さいガラスバイアルに移し、これに3mLのサンプル緩衝液を添加した。
【0168】
カレンダー加工した膜中に埋設された樹脂は、カラムフォーマット内の樹脂の特徴と同じPrP結合特性を維持しているようであった。完全にアセチル化したアミノは、アミノ信号に比較して弱い膜結合PrP信号を示し、完全にアセチル化されたアミノは、PrPを効率的に結合することができないという結論を支持した。一般的に、この結果は、ブレンド形で又は化学合成による50%アセチル化は、PrPres結合を減少したことを示した。
【実施例11】
【0169】
正常ハムスター脳ホモジネートから、粒子含浸膜を含有するフィルターへのPrPCの結合
下記の実験は、樹脂粒子を含有する膜による、正常ハムスター脳ホモジネート(NBH)からの正常PrP(PrPC)の結合を示す。
【0170】
前の実施例に記載した溶離方法を、これらのサンプルに適用した。フィルターを開き、膜をガラスバイアル内に入れ、2mLのNuPageサンプル緩衝液(in vitroゲン社(Invitrogen corporation)、カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad))と共に混合しながらインキュベーションした。次いで、このバイアルを加熱し、フィルターから出てきた樹脂を集めた。溶離したタンパク質のウエスタンブロット結果は、この方法によって、PrPが膜から溶離されたことを示した。この結果は、また、樹脂を含有するフィルターが、樹脂を含有しないフィルターよりも多くのPrPを結合したことを示している。
【実施例12】
【0171】
スクレイピー脳ホモジネートから、粒子含浸膜を含有するフィルターへのPrPCの結合
この実験は、全血の中にスパイクされた及び緩衝液中の感染性ハムスター脳ホモジネート(SBH)からPrPSCを結合する際のフィルターの性能を示す。フィルターには、全容量樹脂が注入された膜並びに減少した容量の樹脂が含浸された膜及び対照として樹脂が注入されていない膜が含まれていた。
【0172】
溶離は、(実施例10に記載した抽出に従って)2mLのNuPageサンプル緩衝液を注入して実施した。溶離したタンパク質のウエスタンブロットは、PK(プロテインキナーゼ)無しで強い信号を示したが、PK有りで弱い信号を示した。タンパク質は2%SDSで溶離したので、PK消化は、0.2%SDS(標準手順)の代わりに2%界面活性剤濃度下で実施した。PK有りでのPrPres弱信号は、反応混合物中の過剰のSDSに起因すると思われる。この結果は、樹脂無しでの膜で、より弱い信号を示すが、試験した全ての他の樹脂について同様の信号強度を示す。全容量樹脂及び樹脂無しについて、緩衝液中及び全血中のSBHの間に、差は観察されなかった。減少した容量樹脂は、スパイクされた血液に比較して、スパイクされた緩衝液で、より強い信号を示した。
【実施例13】
【0173】
原型フィルターの試験
この実施例において、フィルターを、最終デバイスに類似の形状で、プラスチックケース内に組み立て、一緒に接着した。このようなデバイスの性能を、種々の適用、スパイク有り及びスパイク無しを使用して評価した。一実施形態において、最終デバイスは、カレンダー加工されていない膜の層(1〜約25枚以上)、続いて樹脂埋設膜の幾つかの層(デバイスの所望の容量に依存して、1〜約50枚)及びカレンダー加工されていない膜の1〜約25枚の層を含む硬い、又は柔軟なプラスチックケースから構成されていた。このフィルターを、超音波カッター/シーラーを使用して又は熱及び圧力を同時に適用するためのプレスの使用により、一緒に溶接した。この実施例において、熱及び圧力を使用した。
【0174】
ハムスター脳ホモジネートを、0.5%サルコシルで処理し、緩衝液中に100倍で希釈し、血漿及び全血を濾過し、樹脂への適用として使用した。樹脂を、80mLのサンプルで、蠕動ポンプにより0.5mL/分で適用した。PrPresサンプルを結合した樹脂のウエスタンブロットを、PK消化無しで実施した。この結果は、この膜が、緩衝液中及び血漿中のスパイクで良く性能を発揮したが、血液中の同じスパイクは減少したようであった。
【実施例14】
【0175】
一連のフィルターデバイスによるスパイクされたRBCCからのPrPの除去
この実験は、粒子含浸デバイスを含有するデバイスを使用する、スパイクされた赤血球濃縮物(RBCC)からのPrPの除去を示す。このデバイスは、過剰の標的タンパク質でチャレンジされているので、一連のデバイスを使用した。使用したRBCCの全体積は、1単位に等価であった。
【0176】
全ての濾過は、如何なる明白な問題も無しに進行し、全ての濾過のためにポンプを使用した。全てのフィルターは、軟質のケーシングを有しており、漏出のために予備テストした。フィルターのどれも、予備テストにおいて又は実際の実験において漏出しなかった。濾過時間は、それぞれRBCCの1単位(約300mL)について約10分間であった。フィルターを約460mLの作業緩衝液(クエン酸塩)で洗浄した。洗浄工程の効率は、洗浄後のフィルターの色を検査することによって、実験に基いて評価した。
【0177】
洗浄後、フィルターに空気を注入して、フィルター内の全ての液体を除去した。フィルターを、(フィルターの一方側に注入した)約4.6mLの溶離のためのサンプル緩衝液で処理した。サンプル緩衝液を集め、フィルターの他の側に注入した。この工程を3回行った。この結果は、PrPresがフィルター1から逃げ、フィルター2によって捕獲されたことを示し、これは、適用されたチャレンジが、1個のフィルター組の容量よりも高かったので予想された。PrPresは、フィルター3の溶離液中にも存在したであろうが、ウエスタンブロットの検出限界よりも低かった。第一PRDT感染力研究においてRBCCでのものと比較したこれらの結果は、フィルターが、カラムフォーマットで使用した同じ樹脂と同様に性能を発揮したことを示している。前の研究でのように、大過剰のPrPresはフィルターを通過し、全てのPrPresが第一フィルター内で捕獲されたわけではないことは、驚くことではない。
【実施例15】
【0178】
ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、綿及びナイロン支持体上のグリシジルメタクリレートのグラフト化
グラフト化は、ポリマーの表面特性を変更するための有効な方法である。支持体の優れた機械的特性と組み合わせて特定のリガンドによって適合されたグラフトポリマーは、グラフト化をタンパク質結合のための最も多用途な方法とし、その適用は、しばしば、十分な機械的強度と同様にリガンドの変更を必要とする。この実施例において、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、綿及びナイロン支持体へのグリシジルメタクリレート(GMA)のグラフト化は、ヒト血液からのPrPC除去のために、このアプローチを適用する可能性を示すために実施した。
【0179】
手順
この試験のために使用した支持体には、NCSUの織物カレッジ(College of Textile)からの、綿織布、ナイロン織布、PP不織布、PP不織膜(マコファルマPP175)、PP繊維及びPET繊維が含まれる。
【0180】
グラフト化は下記の工程によって実施した。
【0181】
1.サンプルを、アセトンで3回洗浄した。
【0182】
2.サンプルを、真空オーブン内で3時間以上乾燥した。
【0183】
3.サンプルを、アルゴンプラズマで、750Wで15秒間処理した。
【0184】
4.サンプルを、空気に30分間暴露した。
【0185】
5.次いで、サンプルを、UVチャンバー内で6時間、10%GMA溶液中に浸漬した。UV強度は、1.1W/m2であった。チャンバーの温度は30℃であり、サンプルラックの温度は60℃以上であった。
【0186】
6.UV重合の後、次いでサンプルを、アセトンで3回洗浄した。
【0187】
7.サンプルを、真空オーブン内で乾燥した。
【0188】
この段階で、サンプルは、それらの重量増加及びIRスペクトルについてのみ分析した。分析した後、グラフト化したPP不織布及びPP不織膜を、水酸化アンモニア溶液中で60℃で終夜、更にアミノ化した。次いで、元素分析のために、これらのサンプルを洗浄し、乾燥した。
【0189】
結果
重量測定及びIR分光法の結果から、PP支持体は、他の支持体、即ち、綿、ナイロン及びPETよりも顕著に良好なグラフト化結果を示す。3種のPP支持体、即ち、PP繊維、PP不織布及びPP不織膜(マコファルマ)を試験した。グラフト化後の重量増加は、それぞれ85%、154%及び57%であった(表6)。これらの値は、他の支持体のもの(−3%〜4%)よりも遙かに高い。これらの結果は、IRスペクトルにより更に確認される。IRスペクトルにおいて、グラフト化PP系は、GMAについてのシグニチャーである、カルボニル基に関する1720cm-1並びにエポキシド基に関する845及び910cm-1で強いピークを示す。他の支持体は、ブランクサンプルをグラフト化後のサンプルと比較したとき、大きい変化を示さなかった。
【0190】
種々の支持体へのグラフト化の差についての理由は、まだ明らかではない。一つの可能性のある理由は、C−H結合が、他の環境におけるよりも、PP環境において、より容易に破断されるであろうことである。他の可能性のある理由は、ナイロン及び綿布サンプルが、本発明者らに知られていない表面処理を有したかもしれないことである。アセトンにより単純に洗浄することは、仕上げ剤を除去するために十分ではないかもしれない。
【0191】
元のPP繊維及び不織膜(マコファルマPP175)について、サンプルが840〜920cm-1範囲内にピークを示すことに注目することは興味がある。しかしながら、このようなピークは、PP不織布については示されない。前者についてのピークは、高温度での加工から来る、サンプル表面の酸化の結果であるかもしれない。
【0192】
IRスペクトルから、アミノ化したマコファルマサンプルは、3400cm-1で、より広いピークを示し、これはアミノ化の結果である、−OH及び−NH2基に起因する。
【0193】
不織材料の表面積の決定
不織材料の表面積を決定することは、不織布を形成する繊維の複雑な絡み合いのために容易な仕事ではない。しかしながら、単繊維の表面積は、繊維の顕微鏡画像及び長さを測定することによって、正確に測定することができる。従って、繊維の表面特性が、不織材料のものと同じであれば、グラフト化方法により同じ材料の繊維による不織材料の表面積を測定することは、理論的には可能である。この方法は、下記の式により表すことができる。
【0194】
Wt=D(Sf+SNW
ここで、Wtは、グラフト化からの重量増加であり、Sfは、繊維の表面積であり、SNWは、不織材料の表面積である。式中に、2個のみの未知数、即ち、D及びSNWが存在する。これらは2個の独立の実験によって決定することができる。
【0195】
この方法によって決定される面積は、それぞれの型の反応に対応する有効表面積である。実際に、その程度が支持体の表面積に依存する全ての反応を、この方法のために使用することができる。
【0196】
結論
幾つかのポリマー支持体上にGMAをグラフト化する一次試験は、PPがこのようなグラフト化のための理想的な支持体であることを示している。PPにGMAをグラフト化する重量増加は、PP材料の形状に依存して60%から160%まで変化する。グラフト化効果は、また、FTIRスペクトルによって確認される。更に、グラフト化に基づいて、不織材料の表面積を測定するための簡単な方法が提案された(表6)。
【0197】
【表6】

【実施例16】
【0198】
PGMA繊維、電気紡績したウエブ、PGMAグラフト化した及びパッド化したPP支持体によるPrPCの結合
目的
PGMA繊維、電気紡績したウエブ並びにGMAグラフト化した及びパッド化したポリプロピレン不織布によるPrPCの結合を決定すること
手順
試験した材料は、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)溶融紡糸した繊維、PGMA電気紡績したウエブ、GMAグラフト化した及びパッド化したポリプロピレン(GMA−g−PP)不織布であった。これらの支持体は、ノースカロライナ州立大学の織物カレッジからのサンプル、マコファルマPP175及びマコファルマPP235である。それぞれの材料について、タンパク質結合のために、2個の複製品を製造した。
【0199】
このサンプルは重量及び見掛け面積(布の測定面積)の両方で製造した。第二方法は、パッド化したマコファルマ膜のような、通常形状を有するサンプルにのみ適用した。
【0200】
全てのサンプルを、小片に細断した。次いで、それぞれのサンプルを、5mLの1%正常ハムスター脳ホモジネート(HaBH)溶液を含有するコニカルチューブ(50mL)の中に浸漬させた。次いで、サンプルを、ロッキング・プラットフォーム上で30分間インキュベーションした。この後、サンプルを、ロッキング・プラットフォーム上で10分間の3回、10mLのサンプル緩衝液で洗浄した。
【0201】
結果
サンプル重量、面積及び元素分析によって決定したアミノ化レベルを、下記の表7に示す。
【0202】
【表7】

【0203】
ウエスタンブロットからの結果に基づけば、PGMAグラフト化PP及びPGMAパッド化PPは、プリオンを結合する。
【0204】
均等
本明細書中に例示的に説明した本発明は、本明細書中に特に開示されていない、全ての要素又は要素群、限定又は限定群の不存在下で実施することができる。使用した用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定するものではなく、このような用語及び表現の使用において、示し説明した特徴又はそれらの一部の全ての均等を排除する意図は無く、種々の修正が、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で可能であることが認められる。従って、本発明は本明細書中に特に開示されていないけれども、本明細書中に開示された概念の任意の特徴、修正及び変形は、当業者によって使用できること並びにこのような修正及び変形は、付属する特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0205】
本明細書中で検討した全ての参照文献は、参照して取り込まれる。当業者は、本発明が、目的を達成するために、そこで固有であるものと同様に、記載した結果及び利点を得るために、良く適合していることを容易に認めるであろう。本発明は、本発明の精神又は本質的属性から逸脱することなく、他の特別の形態で具体化することができる。別の見地から、手段は、本明細書の説明を読んだ後、本発明の精神及び/又は付属する特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆され得る、その種々の他の実施形態、修正及び均等を有することができることが、明らかに理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】樹脂含浸不織布(RIN)のための図解表示を示す。不織布は、約12μmの細孔サイズを有し、これには多孔質樹脂支持体が含浸されている。平均細孔サイズは、赤血球が、損傷の如何なる徴候も示すことなく、デバイスを通って自由に流れることができるために十分に大きい。粒子(10)、繊維(20)、含浸粒子(11)及び不織布(21)を示す。
【図2】不織布又は織布の四角形のシートから構成されたデバイスの図解表示を示す。不織布又は織布のシートの互い違いになった配置は、両側がアフィニティーリガンドで被覆されている。サンプルは、シートの間の曲がりくねった通路を流れる。シートの細孔サイズは、所望の用途に従って調節される。
【図3】150F及び100ポンド/直線インチ(PLI)で、樹脂と共にカレンダー加工したサンプル13内側/内側層の走査型電子顕微鏡写真を示す。この顕微鏡写真は、50倍でのサンプル13のポケット領域を示す。
【図4】180F及び400PLIで、樹脂と共にカレンダー加工したサンプル11内側/外側層の走査型電子顕微鏡写真を示す。この顕微鏡写真は、50倍でのサンプル11のポケット領域を示す。
【図5】異なった数の膜(多孔質マトリックス)層について集められた、12個の画分のミクロBCAアッセイの結果を示す棒グラフを示す。異なったβ−ラクトグロブリン濃度が、樹脂埋め込み膜(「樹脂」とラベルを付ける)の1層又は膜(「対照」とラベルを付ける)の1層を通過する溶液のフロー−スルー画分上に示された。
【図6】異なった数の膜層について集められた、12個の画分のミクロBCAアッセイの結果を示す棒グラフを示す。異なったβ−ラクトグロブリン濃度が、樹脂埋め込み膜(「樹脂」とラベルを付ける)の2層又は膜(「対照」とラベルを付ける)の2層を通過する溶液のフロー−スルー画分上に示された。
【図7】異なった数の膜層について集められた、12個の画分のミクロBCAアッセイの結果を示す棒グラフを示す。異なったβ−ラクトグロブリン濃度が、樹脂埋め込み膜(「樹脂」とラベルを付ける)の3層又は膜(「対照」とラベルを付ける)の3層を通過する溶液のフロー−スルー画分上に示された。
【図8】異なった数の膜層について集められた、12個の画分のミクロBCAアッセイの結果を示す棒グラフを示す。異なったβ−ラクトグロブリン濃度が、樹脂埋め込み膜(「樹脂」とラベルを付ける)の4層又は膜(「対照」とラベルを付ける)の4層を通過する溶液のフロー−スルー画分上に示された。
【図9】膜ロール上の粒子の分布を示す。樹脂粒子は、膜の縁を越えるこぼれ無しに、底膜の上に均一に分散された。
【符号の説明】
【0207】
10 粒子
11 含浸粒子
20 繊維
21 不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルから少なくとも1種の標的因子を分離するためのデバイスであって、1個又は2個以上の、10μmよりも大きい細孔サイズを有する多孔質マトリックス、及びその中に含浸された複数個の粒子を含有し、ここで、前記少なくとも1種の標的因子が、前記1個又は2個以上の多孔質マトリックス若しくは粒子又はその両方に結合し、前記サンプルから除去されるデバイス。
【請求項2】
前記粒子が、多孔質若しくは非孔質又はその両方である、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記1種又は2種以上の多孔質マトリックス、前記粒子又は両方が、均一な又は可変の細孔サイズを有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記粒子が、約0.001μm〜約0.1μmの細孔サイズを有する、請求項2記載のデバイス。
【請求項5】
前記1個又は2個以上の多孔質マトリックスが、少なくとも1種の不織布を含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記1個又は2個以上の多孔質マトリックスが、天然繊維、合成繊維又は両方を含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記粒子が、乾燥樹脂1g当たり約1〜2m2から乾燥樹脂1g当たり約300m2の範囲内の表面積を有する、互いにつながった細孔を有する多孔質樹脂を含む、請求項2記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1種の標的因子が、吸収、吸収、イオン交換、共有結合、疎水性、アフィニティー相互作用、荷電種の形成、アフィニティーリガンドの結合又はこれらの組合せにより、前記粒子若しくは前記1個又は2個以上の多孔質マトリックス又はその両方に結合する、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
前記1種又は2種以上の多孔質マトリックス、前記粒子又は両方が、化学基、生物学的基又は両方を含む少なくとも1種の反応性基によって表面修飾されている、請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1種の反応性基が、エポキシ、ホルミル、トレシル、ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホン酸、第四級アミン、カルボキシル基、第一級アミン、シアノ、シクロヘキシル、オクチル及びオクタデシル基、エポキシド、オキシラン、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホニルエステル、イミダゾリルカルバメート、第四級アミン、カルボキシル基、染料リガンド、アフィニティーリガンド、抗原−抗体、核酸分子、イオン交換、キレート化、酸化/還元反応、立体排除反応、触媒反応、疎水性反応若しくは逆相のための反応性基又はこれらの組合せを含む官能基を含む、請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
前記サンプルが血液サンプルであり、前記少なくとも1種の標的因子に、プリオン、ウイルス、細菌、原虫及び毒素又はこれらの組合せが含まれる、請求項1記載のデバイス。
【請求項12】
前記粒子に、ポリメタクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、変性樹脂又はこれらの組合せが含まれる、請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
前記変性樹脂に、トヨパール(登録商標)アミノ650が含まれる、請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
前記樹脂に、湿潤樹脂、乾燥樹脂又はこれらの組合せが含まれる、請求項7記載のデバイス。
【請求項15】
前記粒子に変性樹脂が含まれ、前記1個又は2個以上の多孔質マトリックスにプラズマ処理したポリプロピレンが含まれ、前記反応性基に、第一級アミンを有するリガンド及びポリエチレングリコール単位を含有する親水性スペーサーが含まれる、請求項10記載のデバイス。
【請求項16】
前記粒子が、前記1個又は2個以上の多孔質マトリックスの間に挟まれている、請求項1記載のデバイス。
【請求項17】
1個又は2個以上の、10μmよりも大きい細孔サイズを有する多孔質マトリックスを含む、サンプルから少なくとも1種の標的因子を分離するためのデバイスであって、前記1個又は2個以上の多孔質マトリックスが、化学基、生物学的基又は両方を含む少なくとも1種の反応性基によって表面修飾されているデバイス。
【請求項18】
サンプルからの少なくとも1種の標的因子を分離する方法であって、(a)潜在的に1種又は2種以上の標的因子を含有するサンプルを用意する工程、(b)(i)1個又は2個以上の、10μmよりも大きい細孔サイズを有する多孔質マトリックス及び(ii)前記1個又は2個以上の多孔質マトリックス中に含浸された複数個の粒子を含むデバイスを用意する工程、(c)前記サンプルをこのデバイスに付する工程、(d)前記少なくとも1種の標的因子を、前記粒子、前記1個若しくは2個以上の多孔質マトリックス又は両方に結合させる工程並びに(e)前記少なくとも1種の標的因子を前記サンプルから分離する工程を含む方法。
【請求項19】
標的分離及びサンプル精製用の試験キットであって、(i)1個又は2個以上の、10μmよりも大きい細孔サイズを有する多孔質マトリックス及びその中に含浸された複数個の粒子を含むデバイス、(ii)緩衝剤、反応試薬、化学試薬、官能化試薬、酵素、検出試薬、制御物質の1種又は2種以上を含有する容器、(iii)試験キットの使用のための使用説明、(iv)包装材料又は(ii)、(iii)及び(iv)の何れかの組合せを含むキット。
【請求項20】
前記検出試薬に、種々の酵素、補綴グループ、蛍光材料、ルミネセンス材料、バイオルミネセンス材料、放射性材料、分散染料、金粒子又はこれらの組合せが含まれる、請求項20記載の試験キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−502920(P2008−502920A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527661(P2007−527661)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/020036
【国際公開番号】WO2005/123952
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506410361)パサジャン リムーヴァル アンド ダイアグナスティック テクノロジーズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】