説明

シャシフレーム構造

【課題】素材にアルミニウムを用いる場合に適し且つ合理的な組付作業を行なえるシャシフレーム構造を提供する。
【解決手段】インナレール7の下側のフランジ6、及びアウタレール5の車両中心寄りを向いた面に当接するように、フロントサイドレール34の後端部にリヤサイドレール35を嵌め込み、これら当接個所で両レール34,35をボルト36,37によって締結し、リヤサイドレール35の車両中心側の面に当接する内向き突出面38を成立させるための凹陥部39をインナレール7に設けて、この当接個所で両レール34,35をボルト40により締結し、フロントサイドレール34の既存の2ヶ所の内側面と、内向き突出面38の合計3ヶ所で、リヤサイドレール35を下側と左右両側から支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャシフレーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は従来のトラック用シャシフレーム構造の一例を示すものであり、車両前後方向に延びる一対のサイドレール51と、該サイドレール51をつなぐクロスメンバ52,53とを備えている。
【0003】
サイドレール51は、プレス加工によりチャンネル材状の断面となるように形作られ、そのフロント部分には、リーフスプリングを装着するためのスプリングブラケット54、フロントアブソーバが取り付られるアブソーバブラケット55、及びキャブを支持するキャブマウントブラット56などが付帯している。
【0004】
このようなシャシフレームには、架装対象となる荷台や箱形荷室などの多様な物品積載装置に見合った各種ホイールベースが得られるように、複数の全長が設定されている。
【0005】
従来のシャシフレームは鋼製であったが、シャシフレームの素材にアルミニウム合金を用いて、車体の軽量化を図ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−314869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところがシャシフレームに複数の全長を設定する場合、各種ホイールベースごとにリヤ部分の長さが相違するサイドレール51をアセンブリとして用意しなければならず、当該サイドレール51の長さの相違に応じたプレス成形型が個別に必要になるため、架装対象となる物品積載装置の範囲が拡がるほど、生産コストが高くなるし、アルミニウム合金を素材に用いただけではシャシフレームの組付工程の合理化は達成されない。
【0007】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、素材にアルミニウムを用いる場合に適し且つ合理的な組付作業を行なえるシャシフレーム構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、矩形断面を呈したリヤサイドレールと、後端部に嵌め込まれたリヤサイドレールの上下外側面の一方、及び左右外側面の一方が内側面に当接する中空状のフロントサイドレールとを備え、リヤサイドの上下外側面の他方、あるいは左右外側面に他方のどちらかに当接する内向き突出面をフロントサイドレールに設け、該フロントサイドレールに対してリヤサイドレールを締結している。
【0009】
また、リヤサイドレールの上下外側面の他方、あるいは左右外側面に他方のどちらかに覆い被さっているフロントサイドレールの外側面を、リヤサイドレール外側面露出個所にリインフォースメントによりつなぎ、フロントサイドレールに対してリヤサイドレールを締結する。
【0010】
これらの他に、車両中心へ向けて開いた断面形状のアウタレールに、車両側方へ向けて開いた断面形状のインナレールを嵌め合わせてフロントサイドレールを構成する。
【0011】
本発明においては、フロントサイドレールの上下内側面の一方、及び左右内側面の一方と、フロントサイドレールに設けた内向き突出面との3ヶ所で物品積載装置の架装対象となるリヤサイドレールの外側面を支持する。
【0012】
また、フロントサイドレールの上下内側面の一方、及び左右内側面の一方と、フロントサイドレールの外側面につながったリインフォースメントの3ヶ所で物品積載装置の架装対象となるリヤサイドレールの外側面を支持する。
【0013】
更に、断面形状が車両中心へ向けて開いたアウタレールと断面形状が車両側方へ向けて開いたインナレールを嵌め合わせて中空状のフロントサイドレールとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【0015】
(1)フロントサイドレールの既存の2ヶ所の内側面と、これとは別途の内向き突出面やリインフォースメントの3ヶ所で、物品積載装置の架装対象となるリヤサイドレールの外側面を支持するので、フロントサイドレールとリヤサイドレールの締結が強固になり、アルミニウム合金を素材に用いた場合には、シャシフレームの軽量化と剛性の向上を達成できる。
【0016】
(2)キャブや操舵機構の装着対象となるフロントサイドレールをリヤサイドレールに連ねるので、リヤサイドレールの長さが異なる多種類のシャシフレームでフロントサイドレールを共通化でき、合理的な組付作業が可能になり、生産性が向上し且つコストが低減する。
【0017】
(3)アウタレールとインナレールによって中空状のフロントサイドレールを構成したので、シャシフレームの重量軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1乃至図5は本発明のシャシフレーム構造の実施の形態の第1の例であり、車両前後方向に延びる一対のサイドレール1と、該サイドレール1をつなぐクロスメンバ15,3とを備えている。
【0020】
サイドレール1は、車両中心に向けて突き出るフランジ4を上下縁部に形成したアウタレール5に、車両側方に向けて突き出るフランジ6を上下縁部に形成したインナレール7を、当該フランジ6がアウタレール5のフランジ4間に入るように嵌め合わせた中空状のフロントサイドレール34と、金属押出加工によって形作られ且つフロントサイドレール34の後端部に連なる中空状のリヤサイドレール35とで構成してあり、フロントサイドレール34にはキャブ及び操舵機構が装着され、また、リヤサイドレール35には荷台や箱形荷室などの車両の用途に適合した物品載荷装置が架装される。
【0021】
サイドレール1を平面的に見ると次位のクロスメンバ3の締結部の直ぐ後側で、左右のサイドレール1の間隔が拡がるように湾曲しており、クロスメンバ3の車両幅方向端部は、インナレール7に装着したブラケット14にボルト締結してある。
【0022】
フロントサイドレール34の内側には、前位ブロック16、次位ブロック17、これらブロック16,17間に介在するエネルギ吸収材18、並びに次位ブロック17の後側に位置する補強材19が組み込んである。
【0023】
前位のクロスメンバ15の上縁部には、上方へ向けて突き出るフランジ20が形成してあり、また、クロスメンバ15の下縁部には、車両後方側へ向けて突き出るフランジ21が形成してある。
【0024】
前位ブロック16は、金属押出加工、または金属鋳造によって形作られ、キャブ架装用ボルトを受けるスペーサ22、ステアリングギヤボックス架装用ボルトを受けるスペーサ23、及びクロスメンバ取付用ボルトを受けるスペーサ24が一体的に形成されている。
【0025】
スペーサ22には、アウタレール5のキャブ架装用ボルト挿通個所に応じて上下方向に延びるボルト孔25が穿設してある。
【0026】
スペーサ23には、インナレール7のステアリングギヤボックス架装用ボルト挿通個所に応じて車両側方へ横向きに延びるボルト孔26が穿設してある。
【0027】
スペーサ24には、クロスメンバ15のフランジ20のクロスメンバ取付用ボルト挿通個所に応じて車両後方へ延びるボルト孔27と、クロスメンバ15のフランジ21、及びアウタレール5のフランジ4のクロスメンバ取付用ボルト挿通個所に応じて上下に延びるボルト孔28とが穿設してある。
【0028】
つまり、スペーサ22のボルト孔25に挿通されるキャブ架装用ボルト、及びスペーサ24のボルト孔28に挿通されるクロスメンバ取付用ボルトは、アウタレール5に対して前位ブロック16を締結する役割を兼ねる。
【0029】
スペーサ23のボルト孔26に挿通されるステアリングギヤボックス架装用ボルトは、インナレール7に対して前位ブロック16を締結する役割を兼ねる。
【0030】
すなわち、フロントサイドレール34の前端部を構成しているアウタレール5、インナレール7、及び前位ブロック16が固められ、スペーサ24のボルト孔27,28に挿通したクロスメンバ取付用ボルトが、フロントサイドレール34に対してクロスメンバ15を直接的に締結するので、シャシフレーム前端部のねじり剛性が高まる。
【0031】
これに加えて、スペーサ22,23,24を前位ブロック16に一体的に形成してあるので合理的な組付作業が可能になり、また、アウタレール5やインナレール7をはじめとするシャシフレームの素材にアルミニウム合金を用いても、溶接熱の影響による強度低下が発生しない。
【0032】
次位ブロック17には、アウタレール5のフランジ4のブロック取付用ボルト挿通個所に応じて上下方向に延びるボルト孔29が穿設してある。
【0033】
エネルギ吸収材18は金属押出加工により形作られ、車両前後方向に延びる隔壁30で区分され且つ前後端部が開口した複数の空間31が内部に並んだ形状を呈している。
【0034】
つまり、前位ブロック16と次位ブロック17の間に介在するエネルギ吸収材18は、その金属押出方向がフロントサイドレール34長手方向に沿っている。
【0035】
補強材19は金属押出加工により形成され、上下方向に延びる隔壁32で区分され且つ上下端部が開口した複数の空間33が内部並んだ形状を呈している。
【0036】
つまり、フロントサイドレール34の湾曲部分に設置した補強材19は、その金属押出方向がフロントサイドレール34長手方向に対して直立している。
【0037】
よって万が一、車両が障害物に衝突した際には、前位ブロック16と次位ブロック17との間にあるエネルギ吸収材18が車両前後方向へ圧縮変形して、フロントサイドレール34の湾曲部分へ加わろうとする衝撃力を緩和し、次位ブロック17の後側にある補強材19がフロントサイドレール34を支えて、その前方の湾曲部分の変形を防ぐので、衝撃エネルギを効率よく吸収することができる。
【0038】
リヤサイドレール35は、フロントサイドレール34の開口断面よりも小さい矩形断面を呈し、その前端部の外側面がインナレール7の下側のフランジ6、及びアウタレール5の車両中心寄りを向いた面の双方に当接するように、フロントサイドレール34の後端部に嵌め込んであり、これら当接個所でフロントサイドレール34とリヤサイドレール35をボルト36,37により締結している。
【0039】
また、インナレール7には、リヤサイドレール35の車両中心側の面に当接する内向き突出面38を成立させるための凹陥部39が設けてあり、この当接個所でフロントサイドレール34とリヤサイドレール35をボルト40により締結している。
【0040】
よって、フロントサイドレール34の既存の2ヶ所の内側面と、これとは別途の内向き突出面38の合計3ヶ所で、リヤサイドレール35を下側と左右両側から支持するので、中空状の両レール34,35の締結が強固になり、アルミニウム合金を素材に用いた場合には、シャシフレームの軽量化と剛性の向上を達成できる。
【0041】
更に、先述したリヤサイドレール35は金属押出加工により同一な横断面が続くように直線的に形作ってあるので、リヤサイドレール35の長さを車両のほとんどを占める物品積載装置に応じて設定でき、シャシフレームの素材にアルミニウム合金を用いた場合は、強度的にも軽量化についても最適な断面形状を有するリヤサイドレール35を得ることができる。
【0042】
また、リヤサイドレール35の長さが異なる多種類のシャシフレームでフロントサイドレール34を共通化でき、合理的な組付作業が可能になる。
【0043】
図6及び図7は本発明のシャシフレーム構造の実施の形態の第2の例であり、前述した内向き突出面38を成立させるための凹陥部39をインナレール7に設けることに代えて、リインフォースメント41を使っている。
【0044】
フロントサイドレール34とリヤサイドレール35をボルト36,37により締結することに加えて、インナレール7の車両中心側の面に、リインフォースメント41の一端部を当接させてボルト42により締結し、また、リヤサイドレール35の車両中心側の面の露出個所(フロントサイドレール34に入っていないところ)に、リインフォースメント41の他端部を当接させてボルト43により締結している。
【0045】
よって、フロントサイドレール34の既存の2ヶ所の内側面と、フロントサイドレール34につながったリインフォースメント41の他端部の3ヶ所で、リヤサイドレール35を下側と左右両側から支持するので、中空状の両レール34,35の締結が強固になり、アルミニウム合金を素材に用いた場合には、シャシフレームの軽量化と剛性の向上を達成できる。
【0046】
また、リヤサイドレール35の長さが異なる多種類のシャシフレームでフロントサイドレール34を共通化でき、合理的な組付作業が可能になる。
【0047】
なお、本発明のシャシフレーム構造は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のシャシフレーム構造は、様々な車種に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のシャシフレーム構造の実施の形態の第1の例の主要部分を示す水平断面図である。
【図2】図1に関連するフロントサイドレール及びリヤサイドフレームの横断面図である。
【図3】図1に関連するシャシフレームの部分斜視図である。
【図4】図1に関連するフロントサイドレールの分解斜視図である。
【図5】図1に関連するフロントサイドレールの水平断面図である。
【図6】本発明のシャシフレーム構造の実施の形態の第2の例の主要部分を示す水平断面図である。
【図7】図6に関連するシャシフレームの部分斜視図である。
【図8】従来のシャシフレーム構造の一例を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
5 アウタレール
7 インナレール
34 フロントサイドレール
35 リヤサイドレール
38 内向き突出面
41 リインフォースメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形断面を呈したリヤサイドレールと、後端部に嵌め込まれたリヤサイドレールの上下外側面の一方、及び左右外側面の一方が内側面に当接する中空状のフロントサイドレールとを備え、リヤサイドの上下外側面の他方、あるいは左右外側面に他方のどちらかに当接する内向き突出面をフロントサイドレールに設け、該フロントサイドレールに対してリヤサイドレールを締結したことを特徴とするシャシフレーム構造。
【請求項2】
矩形断面を呈したリヤサイドレールと、後端部に嵌め込まれたリヤサイドレールの上下外側面の一方、及び左右外側面の一方が内側面に当接する中空状のフロントサイドレールとを備え、リヤサイドレールの上下外側面の他方、あるいは左右外側面に他方のどちらかに覆い被さっているフロントサイドレールの外側面を、リヤサイドレール外側面露出個所にリインフォースメントによりつなぎ、フロントサイドレールに対してリヤサイドレールを締結したことを特徴とするシャシフレーム構造。
【請求項3】
車両中心へ向けて開いた断面形状のアウタレールに、車両側方へ向けて開いた断面形状のインナレールを嵌め合わせてフロントサイドレールを構成した請求項1または請求項2のいずれかに記載のシャシフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−111111(P2006−111111A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299757(P2004−299757)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】