説明

ショックアブゾーバーと該ショックアブゾーバーの製造方法

【課題】摩擦圧接接合によりシリンダーの接合部の内壁面の内面バリが剥離してフリーピストンの気密性が低下することを防止する。
【解決手段】ショックアブゾーバー1のシリンダー7を成すシリンダー本体8とシリンダーキャップ9との接合部7bの内壁面7b’に形成される内面バリ13を、シリンダー7の内壁面7a、シリンダーキャップ9の内壁面9aと内底部11、及び該シリンダーキャップ9の内底部11の逆円錐台形状のリブ12から形成される空間14内に位置させることで、剥落した内面バリは該空間内に留まりフリーピストン側への進出を阻止するので、フリーピストン及びシリンダーの内壁面に損傷を与えず気密性を確保できるので、入力荷重の減衰を長期間に亘り維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両のサスペンションを構成するショックアブゾーバー、特に単筒式ショックアブゾーバーと、該単筒式ショックアブゾーバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のサスペンションを構成するショックアブゾーバーの一つに、一端にオイルの流通を許容するピストンバルブを固持するロッドと、その内部において、該ロッドを含めその一端に固持するピストンバルブと共に、入力荷重を減衰するオイル及び高圧エアーをフリーピストンによって分離しつつ収容するシリンダーから構成される単筒式ショックアブゾーバーがある。そして、前記単筒式ショックアブゾーバーでは、シリンダー内においてオイル及び高圧エアーとを分離しつつ収容するためのフリーピストンを配置する等の構造上の必要性からシリンダーをシリンダー本体と車体取付部を一体に形成するシリンダーキャップとから構成するものとし、さらに両者をシリンダーキャップの雄ネジ部とシリンダー本体の雌ネジ部とを螺合させてなる接合部により一体に構成している。
【0003】
【特許文献1】特表2000−507666号
【0004】
しかしながら、上記単筒式ショックアブゾーバーのシリンダーを一体に構成するにあたり、接合部をシリンダーキャップの雄ネジ部とシリンダー本体の雌ネジ部との螺合によるものとすると、シリンダー内に収容されるオイル又は高圧エアーの漏出を防止する必要から接合部において互いに螺合する雄ネジ部及び雌ネジ部を精密に螺設する必要がある。その結果、部品の製造作業の効率が低下し、製造コストが上昇するおそれがある。
また、前記シリンダーキャップの雄ネジ部とシリンダー本体の雌ネジ部とが互いに螺合する接合部において夾雑物を噛み込むと、該雄ネジ部と雌ネジ部の精密な螺合が損なわれて気密性が低下し、シリンダー内において分離しつつ収容されるオイル又は高圧エアーが漏出するおそれもある。
【0005】
そのため、上記単筒式ショックアブゾーバーのシリンダーを一体に構成するシリンダーキャップとシリンダー本体との接合部を溶融接合することも提案されている。ところが、接合部の外部より溶融接合を行うとシリンダーキャップとシリンダー本体との接合面を完全に接合することは困難である。その結果、接合部における気密性は低下し、且つ強度を十分に確保することができない。また溶融接合の際に接合部では熱変形が生じ、シリンダーに大きな入力荷重が加わるとシリンダーの挫屈や破断等の破損を招くおそれもある。
【0006】
そこで、上記単筒式ショックアブゾーバーを構成するシリンダーを一体に構成するシリンダーキャップとシリンダー本体との接合部を摩擦圧接接合することが提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
その結果、上記シリンダーキャップとシリンダー本体との接合部では、シリンダーキャップ及びシリンダー本体の接合面が全面にわたり接合され、しかも摩擦圧接接合では該接合面でしか発熱せず塑性流動も起こらないので熱変形が少なく、高強度の接合部が得られるものである。
【0008】
しかしながら、上記シリンダーとの接合部においてシリンダーキャップとシリンダー本体とを摩擦圧接接合すると、接合部の外壁面又は内壁面において各々外部方向又は内部方向に突出するように外面バリ又は内面バリが形成されるものとなる。
このとき、シリンダーの外壁面に形成される外面バリは容易に整形することができるが、シリンダー内壁面に形成される内面バリは完全に整形することは困難である。
その結果、整形することができない内面バリは振動等により剥落し、この剥落した内面バリがシリンダー内で摺動自在となるフリーピストンに側に進入すると、シリンダーの内壁面及びフリーピストンに損傷を与え、フリーピストンによるオイルと高圧エアーとの分離は損なわれ、入力荷重の減衰が低下してしまうおそれがある。
【0009】
そこで、本願発明は、シリンダーを一体に構成するシリンダーキャップとシリンダー本体とを摩擦圧接接合により接合することで、変形のない、高強度の接合部を得るとともに、該摩擦圧接接合により形成される内面バリの剥落によって発生するフリーピストン又はシリンダーの内壁面への損傷を防ぎ、フリーピストンによるオイル又は高圧エアーの分離を図り、入力荷重の減衰を長期間に亘り維持できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の特徴として、摺動自在であり、一端にオイルの流通を許容する円板状のピストンバルブを固持するロッドと、その内部において、該ロッドを含めその一端に固持するピストンバルブと共に、摺動自在となる円板状のフリーピストンによってオイル及び高圧エアーを分離しつつ収容する円筒状のシリンダーから構成されるものであって、
前記シリンダーは、互いに摩擦圧接接合により一体となるシリンダー本体と、車体取付部を一体に形成するシリンダーキャップとからなり、
前記シリンダーキャップの内底面において開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブを形成し、
シリンダー本体とシリンダーキャップとを摩擦圧接接合することでシリンダーの接合部の内壁面に突出するように形成される内面バリが、シリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される前記逆円錐台形状のリブにより形成される空間内に位置してなるものである。
【0011】
そして、第2の特徴として、第1の特徴を踏まえて、シリンダー本体とシリンダーキャップとを摩擦圧接接合することでシリンダーの接合部の内壁面に突出するように形成される内面バリが、シリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される逆円錐台状のリブにより形成される空間内に位置してなる際に、
シリンダーキャップの内底面からシリンダー本体側の内面バリとシリンダーキャップ側の内面バリとの仮想等分割位置までの距離をx、
シリンダー本体側の内面バリの最大厚さをy、
シリンダー本体側の内面バリのシリンダー本体の内壁面よりの最大突出量をz、
シリンダーキャップの内底面からシリンダー本体の内壁面に対する開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブの最接近位置までの距離をa、
シリンダー本体の内壁面と開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブとの距離をb、
及び
シリンダーキャップの内底面において該シリンダーキャップの内壁面と開口部を有する中空であるリブまでの最大距離をcとした時に、
0<a≦50 (mm)
0≦b≦10 (mm)
0.5<c≦50 (mm)
であって、且つ
(x+y)/(c−z)≧a/(c−b)
の関係を満たすものである。
【0012】
以上のように、シリンダーの接合部において、シリンダーキャップとシリンダー本体とを摩擦圧接接合することにより該シリンダー内壁面に形成される内面バリを、シリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブにより形成される空間内に位置させるので、振動等により該内面バリがシリンダー内壁面から剥落しても、前記空間内に留まってフリーピストン側へ進出することはない。その結果、前記内面バリはフリーピストン又はシリンダー内壁面に損傷を与えることがなく、フリーピストンの気密性は十分に維持されオイルと高圧エアーとの分離が図られるものである。
【0013】
その上、特にシリンダーを一体に構成するシリンダーキャップとシリンダー本体との接合部において形成される内面バリとシリンダーキャップの内底面に形成される逆円錐台形状のリブとが上記所定の関係を満たすことで、該内面バリは確実にシリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される逆円錐台形状のリブにより形成される空間内に確実に位置させることができるものとなる。
【0014】
ここで、シリンダー本体の内壁面とシリンダーキャップの内底面に形成される逆円錐台形状のリブとの距離bを0(mm)とすると、該リブはシリンダー内壁面に完全に当接することになる。その結果振動等により内面バリが剥落し微少に粉砕されても決してフリーピストン側へ進出することを十分に防止できる。一方最大でもb=10mm以下とすれば、該内面バリがフリーピストン側へ進出しようとしても、フリーピストン又はシリンダーの内壁面に損傷を与えるような致命的な大きさの内面バリが進出することを十分に防止できる。
【0015】
また、第3の特徴として、本願発明のショックアブゾーバーは、摺動自在であり、一端にオイルの流通を許容する円板状のピストンバルブを固持するロッドと、その内部において、該ロッドを含めその一端に固持するピストンバルブと共に、摺動自在となる円板状のフリーピストンによってオイル及び高圧エアーを分離しつつ収容するシリンダーから構成されるものであって、
円筒状のシリンダー本体と、一端に車体取付部を一体に形成するとともに、その内底部に円筒状のリブを形成するシリンダーキャップとを一体に摩擦圧接接合して前記シリンダーとし、
前記シリンダー内において、シリンダーキャップの内底面に形成される円筒状のリブに対し先端に向かって細径化する逆テーパ面を有するコーンを挿嵌し押勢することで開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブに変形させ、
前記シリンダー本体とシリンダーキャップとを摩擦圧接接合することでシリンダーの接合部の内壁面に突出するように形成される内面バリを、シリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される逆円錐台形状のリブにより形成される空間内に位置させてなるものである。
【0016】
そして、第4の特徴として、上記第3の特徴を踏まえて、シリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される逆円錐台状のリブにより形成される空間内において、前記シリンダー本体とシリンダーキャップとを摩擦圧接接合することでシリンダーの接合部の内壁面に突出するように形成される内面バリを位置させてなる際に、
シリンダーキャップの内底面からシリンダー本体側の内面バリとシリンダーキャップ側の内面バリとの仮想等分割位置までの距離をx、
シリンダー本体側の内面バリの最大厚さをy、
シリンダー本体側の内面バリのシリンダー本体の内壁面よりの最大突出量をz、
シリンダーキャップの内底面からシリンダー本体の内壁面に対する開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブの最接近位置までの距離をa、
シリンダー本体の内壁面と開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブとの距離をb、
及び
シリンダーキャップの内底面において該シリンダーキャップの内壁面と開口部を有する中空であるリブまでの最大距離をcとした時に、
0<a≦50 (mm)
0≦b≦10 (mm)
0.5<c≦50 (mm)
であって、且つ
(x+y)/(c−z)≧a/(c−b)
の関係を満たすものである。
【0017】
以上のように、互いに摩擦圧接接合により一体に構成するシリンダーにおいてシリンダーキャップの内底部に形成される円筒状のリブをコーンにより逆円錐台形状に変形させることで、シリンダー内にはシリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び前記リブによる空間を簡易且つ確実に形成することができる。
その上、特にシリンダーを一体に構成するシリンダーキャップとシリンダー本体との接合部において形成される内面バリとシリンダーキャップの内底面に形成されるリブとが上記所定の関係を満たすものとすると、該内面バリは確実に前記空間内に確実に位置させることができるものとなる。
その結果、振動等によりシリンダーの内壁面より剥落した内面バリは確実に前記空間内に留まってフリーピストン側へ進出することを防止するので、フリーピストン又はシリンダーの内壁面への損傷を与えることを防止して、フリーピストンの気密性を確実に維持させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明は、単筒式ショックアブゾーバーのシリンダーを一体に構成するにあたりシリンダーの内壁面に形成される内面バリを、シリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される逆円錐台形状のリブにより形成される空間内に位置させるので、シリンダー内壁面から剥落した内面バリは確実に該空間内に留められる。その結果、フリーピストン又はシリンダー内壁面に損傷を与えることを防止し、フリーピストンの気密性を確実に維持できるので、フリーピストンによるオイル又は高圧エアーの分離を確保して、ショックアブゾーバーによる入力荷重の減衰を長期間に亘って維持させることができる優れた効果を有する。
【0019】
以下において、本願発明の実施例について説明する。
なお、この実施例は、本願発明の好ましい一実施態様を説明するためのものであって、これにより本願発明が制限されるものでない。
【実施例】
【0020】
まず、本願発明であるショックアブゾーバー1は、一端にオイル4の流通を許容する円板状のピストンバルブ3を固持するロッド2と、その内部において、該ロッド2を含めその一端に固持するピストンバルブ3と共に、摺動自在となる円板状のフリーピストン6によるオイル4及び高圧エアー5を分離しつつ収容する円筒状のシリンダー7から構成されるものである。
まず前記シリンダー7は、互いに摩擦圧接接合するシリンダー本体8と、車体取付部10を一体に形成するシリンダーキャップ9とからなるものである。
更に前記シリンダーキャップ9の内底面11には開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブ12が形成されている。
そして、前記シリンダー本体8とシリンダーキャップ9とを摩擦圧接接合することでシリンダー7の内壁面7a、特に接合部7bの内壁面7b’に突出するように形成される内面バリ13は、シリンダー本体8の内壁面8a、シリンダーキャップ9の内壁面9aと内底面11、及び該シリンダーキャップ9の内底面11に形成される前記逆円錐台形状のリブ12により形成される空間14内に位置するものとなる。
【0021】
ここで、本願発明の前記ショックアブゾーバー1は以下のようにして製造されるものである。
まず、前記シリンダー7は、円筒状のシリンダー本体8と、一端に車体取付部10を一体に形成するとともに、その内底部11に円筒状のリブ15を形成するシリンダーキャップ9とを、その接合面8bと9bとを当接させた上で、摩擦圧接接合することで一体に構成する。このとき、シリンダー7の接合部7bにおける外壁面及び内壁面7b’では各々外面バリ18及び内面バリ13が形成されるものとなる。なお、シリンダー7の外壁面に形成される外面バリ18は、この段階乃至は最終段階までに除去して整形してなるものである。
そして、前記シリンダー7内では、シリンダーキャップ9の内底面11に形成される円筒状のリブ15に対し先端に向かって細径化する逆テーパ面17を有するコーン16を挿嵌し押勢することで該円筒状のリブ15は徐々に拡開するように変形して開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブ12に形成されるものとなる。
その結果、前記シリンダー本体8とシリンダーキャップ9とを摩擦圧接接合することでシリンダー7の接合部7bの内壁面7b’に突出するように形成される内面バリ13を、シリンダー本体8の内壁面8a、シリンダーキャップ9の内壁面9aと内底面11、及び該シリンダーキャップ9の内底面11に形成される逆円錐台形状のリブ12により形成される空間14内に位置させるものとなる(図3参照)。
【0022】
このとき、特に内面バリ13が位置するシリンダー本体8の内壁面8a、シリンダーキャップ9の内底面11、及び該シリンダーキャップ9の内底面11に形成される逆円錐台状のリブ12により形成される空間14は、図2において示す関係を満足するものとする。即ち、
シリンダーキャップ9の内底面11からシリンダー本体8側の内面バリ13とシリンダーキャップ9側の内面バリ13との仮想等分割位置までの距離をx、
シリンダー本体8側の内面バリ13の最大厚さをy、
シリンダー本体8側の内面バリ13のシリンダー本体8の内壁面8aよりの最大突出量をz、
シリンダーキャップ9の内底面11からシリンダー本体8の内壁面8aに対する開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブ12の最接近位置までの距離をa、
シリンダー本体8の内壁面8aと開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブ12との距離をb、
及び
シリンダーキャップ9の内底面11において該シリンダーキャップ9の内壁面9aと開口部を有する中空であるリブ12までの最大距離をcとした時に、
0<a≦50 (mm)
0≦b≦10 (mm)
0.5<c≦50 (mm)
であって、且つ
(x+y)/(c−z)≧a/(c−b)
とするものである。
【0023】
以上のとおり、本願発明のショックアブゾーバー1では、前記シリンダー本体8とシリンダーキャップ9とを摩擦圧接接合することでシリンダー7の接合部7bの内壁面7b’に突出するように形成される内面バリ13は、シリンダー本体8の内壁面8a、シリンダーキャップ9の内壁面9aと内底面11、及び該シリンダーキャップ9の内底面11に形成される逆円錐台形状のリブ12によって形成される空間14内に確実に位置する。その結果、たとえ振動等によりシリンダー7の接合部7bの内壁面7aより内面バリ13が剥落しても確実に剥落した内面バリ13はフリーピストン6側へ進出してしまうことを防ぎ、フリーピストン6又はシリンダー7の内壁面7aに損傷を与えることがないので、フリーピストン6の気密性を確実に維持することができるものとなる。
【0024】
そこで、上記本願発明のショックアブゾーバー1を実際に以下のようにして製造し、その効果を確認した。
まず、本願発明の実施例であるショックアブゾーバー1のシリンダー本体8とシリンダーキャップ9からなるシリンダー7において、該シリンダー本体8はアルミニウム合金(JIS A6061−T8、直径φが45mm、及び厚さtが2.5mm)の抽伸管からなるものである。そして、前記シリンダーキャップ9はアルミニウム合金(JIS A6061−T6、直径φが45mm)の押出材からなるものであり、環状の車体取付部10を切削加工により一体に形成してなるものである。
そして、前記シリンダー本体8の接合面8bと、シリンダーキャップ9の接合面9bとを1800rpmで回転させつつ100MPaの圧力で摩擦圧接接合を行って接合部7bを形成し、シリンダー7を一体に構成した。
その上で、前記シリンダー7内において、シリンダーキャップ9の内底面11に形成される円筒状のリブ15に対し、先端に向かって細径化する逆テーパ面17を有するコーン16を挿嵌し、a=30mm、b=0.5mm、c=30mmの条件を満たすように押勢することで変形させ開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブ12に形成した。
その結果、前記シリンダー本体8とシリンダーキャップ9とを摩擦圧接接合することでシリンダー7の内壁面7aに突出するように形成される内面バリ13は、シリンダー本体8の内壁面8a、シリンダーキャップ9の内壁面9aと内底面11、及び該シリンダーキャップ9の内底面11に形成される逆円錐台形状のリブ12による空間14内に位置するものとなる。
【0025】
一方、上記本願発明の実施例であるショックアブゾーバー1に対する比較例として以下のようなものを製造した。
まず、比較例1として、ショックアブゾーバー1のシリンダー本体8とシリンダキャップ9からなるシリンダー7において、該シリンダー本体8はアルミニウム合金(JIS A6061−T8、直径φが45mm、及び厚さtが2.5mm)の抽伸管からなるものである。そして、前記シリンダーキャップ9はアルミニウム合金(JIS A6061−T6、直径φが45mm)の押出材からなるものであり、環状の車体取付部10を切削加工により一体に形成してなるものである。
そして、前記シリンダー本体8の接合面8bと、シリンダーキャップ9の接合面9bとを1800rpmで回転させつつ100MPaの圧力で摩擦圧接接合を行って接合部7bを形成し、シリンダー7を一体に構成した。
しかしながら、逆円錐台形状のリブ12は形成せず、シリンダー7の接合部7bの内壁面7b’に突出するように形成される内面バリ13はそのままとした。
【0026】
また、比較例2として、ショックアブゾーバー1のシリンダー本体8とシリンダキャップ9からなるシリンダー7において、該シリンダー本体8はアルミニウム合金(JIS A6061−T8、直径φが45mm、及び厚さtが2.5mm)の抽伸管からなるものである。そして、前記シリンダーキャップ9はアルミニウム合金(JIS A6061−T6、直径φが45mm)の押出材からなるものであり、環状の車体取付部10を切削加工により一体に形成してなるものである。
そして、前記シリンダー本体8の接合面8bと、シリンダーキャップ9の接合面9bとを1800rpmで回転させつつ100MPaの圧力で摩擦圧接接合を行って接合部7bを形成し、シリンダー7を一体に構成した。
その上で、前記シリンダー7内において、シリンダーキャップ9の内底面11に形成される円筒状のリブ12へ先端に向かって細径化する逆テーパ面17を有するコーン16を挿嵌し、a=30mm、b=15mm、c=30mmの条件を満たすように押勢することで変形させ開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブ12に形成した。
なお、前記シリンダー本体8とシリンダーキャップ9とを摩擦圧接接合することでシリンダー7の内壁面7aに突出するように形成される内面バリ13は、シリンダー本体8の内壁面8a、シリンダーキャップ9の内壁面9aと内底面11、及び該シリンダーキャップ9の内底面11に形成される逆円錐台形状のリブ12による空間14内に位置するものである。
【0027】
そこで、以上の本願発明の実施例及び比較例1及び2について、加振振幅50mm、横荷重200Nの条件下で摺動耐久試験を行ったところ、本願発明が300万回でもオイル4又は高圧エアー5の漏洩が見られなかったのに対して、比較例1では1万回で、比較例2では10万回でオイル4又は高圧エアー5の漏出が見られた。
従って、本願発明では、たとえシリンダー7の接合部7bの内壁面7b’より内面バリ13が剥落しても、該内面バリ13は空間14内に留まり、フリーピストン6又はシリンダー7の内壁面7aに損傷を与えることなく、フリーピストン6の気密性の低下を防止し、入力荷重の減衰を長期間に亘り維持することができるという効果が十分に認められた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本願発明は、単筒式ショックアブゾーバーだけでなく、接合部を有する円筒内において摺動自在となるピストン等の摺動部材を具えることとなる様々な構造に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本願発明の実施例であるショックアブゾーバーの断面図である。
【図2】本願発明の実施例であるショックアブゾーバーにおける所定寸法を示した模式図である。
【図3】本願発明の実施例であるショックアブゾーバーの製造工程を示した模式図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ショックアブゾーバー
2 ロッド
3 ピストンバルブ
4 オイル
5 高圧エアー
6 フリーピストン
7 シリンダー
7a (シリンダーの)内壁面
7b 接合部
7b’ 内壁面
8 シリンダー本体
8a 内壁面
8b 接合面
9 シリンダーキャップ
9a 内壁面
9b 接合面
10 車体取付部
11 (シリンダーキャップの)内底面
12 (逆円錐台形状の)リブ
13 内面バリ
14 空間
15 (円筒状の)リブ
16 コーン
17 逆テーパ面
18 外面バリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動自在であり、一端にオイルの流通を許容する円板状のピストンバルブを固持するロッドと、その内部において、該ロッドを含めその一端に固持するピストンバルブと共に、摺動自在となる円板状のフリーピストンによってオイル及び高圧エアーを分離しつつ収容する円筒状のシリンダーから構成されるものであって、
前記シリンダーは、互いに摩擦圧接接合により一体となるシリンダー本体と、車体取付部を一体に形成するシリンダーキャップとからなり、
前記シリンダーキャップの内底面において開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブを形成し、
シリンダー本体とシリンダーキャップとを摩擦圧接接合することでシリンダーの接合部の内壁面に突出するように形成される内面バリが、シリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される前記逆円錐台形状のリブにより形成される空間内に位置してなることを特徴とするショックアブゾーバー。
【請求項2】
シリンダー本体とシリンダーキャップとを摩擦圧接接合することでシリンダーの接合部の内壁面に突出するように形成される内面バリが、シリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される逆円錐台状のリブにより形成される空間内に位置してなる際に、
シリンダーキャップの内底面からシリンダー本体側の内面バリとシリンダーキャップ側の内面バリとの仮想等分割位置までの距離をx、
シリンダー本体側の内面バリの最大厚さをy、
シリンダー本体側の内面バリのシリンダー本体の内壁面よりの最大突出量をz、
シリンダーキャップの内底面からシリンダー本体の内壁面に対する開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブの最接近位置までの距離をa、
シリンダー本体の内壁面と開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブとの距離をb、
及び
シリンダーキャップの内底面において該シリンダーキャップの内壁面と開口部を有する中空であるリブまでの最大距離をcとした時に、
0<a≦50 (mm)
0≦b≦10 (mm)
0.5<c≦50 (mm)
であって、且つ
(x+y)/(c−z)≧a/(c−b)
の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載のショックアブゾーバー。
【請求項3】
摺動自在であり、一端にオイルの流通を許容する円板状のピストンバルブを固持するロッドと、その内部において、該ロッドを含めその一端に固持するピストンバルブと共に、摺動自在となる円板状のフリーピストンによってオイル及び高圧エアーを分離しつつ収容するシリンダーから構成されるものであって、
円筒状のシリンダー本体と、一端に車体取付部を一体に形成するとともに、その内底部に円筒状のリブを形成するシリンダーキャップとを一体に摩擦圧接接合して接合部を形成して前記シリンダーとし、
前記シリンダー内において、シリンダーキャップの内底面に形成される円筒状のリブに対し先端に向かって細径化する逆テーパ面を有するコーンを挿嵌し押勢することで開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブに変形させ、
前記シリンダー本体とシリンダーキャップとを摩擦圧接接合することでシリンダーの接合部の内壁面に突出するように形成される内面バリを、シリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される逆円錐台形状のリブにより形成される空間内に位置させてなることを特徴とするショックアブゾーバーの製造方法。
【請求項4】
シリンダー本体の内壁面、シリンダーキャップの内壁面と内底面、及び該シリンダーキャップの内底面に形成される逆円錐台状のリブにより形成される空間内において、前記シリンダー本体とシリンダーキャップとを摩擦圧接接合することでシリンダーの接合部の内壁面に突出するように形成される内面バリを位置させてなる際に、
シリンダーキャップの内底面からシリンダー本体側の内面バリとシリンダーキャップ側の内面バリとの仮想等分割位置までの距離をx、
シリンダー本体側の内面バリの最大厚さをy、
シリンダー本体側の内面バリのシリンダー本体の内壁面よりの最大突出量をz、
シリンダーキャップの内底面からシリンダー本体の内壁面に対する開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブの最接近位置までの距離をa、
シリンダー本体の内壁面と開口部を有する中空である逆円錐台形状のリブとの距離をb、
及び
シリンダーキャップの内底面において該シリンダーキャップの内壁面と開口部を有する中空であるリブまでの最大距離をcとした時に、
0<a≦50 (mm)
0≦b≦10 (mm)
0.5<c≦50 (mm)
であって、且つ
(x+y)/(c−z)≧a/(c−b)
の関係を満たすことを特徴とする請求項3記載のショックアブゾーバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−19384(P2010−19384A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182097(P2008−182097)
【出願日】平成20年7月12日(2008.7.12)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】