ショットキーバリアダイオード
【課題】順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能で、かつ、逆方向漏れ電流IRが増加してしまうことのないショットキーバリアダイオードを提供する。
【解決手段】第1主面及び当該第1主面の反対面である第2主面を有し、炭化珪素からなるn型の半導体基体110と、半導体基体110における第1主面上に形成されたバリアメタル層118と、半導体基体110における第1主面側の表面に部分的に形成され、高濃度のp型不純物を含有する小数キャリア注入層128と、小数キャリア注入層128の直下にのみカーボンが導入されたカーボン導入層132とを備えるショットキーバリアダイオード100。
【解決手段】第1主面及び当該第1主面の反対面である第2主面を有し、炭化珪素からなるn型の半導体基体110と、半導体基体110における第1主面上に形成されたバリアメタル層118と、半導体基体110における第1主面側の表面に部分的に形成され、高濃度のp型不純物を含有する小数キャリア注入層128と、小数キャリア注入層128の直下にのみカーボンが導入されたカーボン導入層132とを備えるショットキーバリアダイオード100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーバリアダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素を半導体材料として用いたショットキーバリアダイオードは、高耐圧、低損失、低リーク電流、高温動作可能、高速動作可能などの優れた特徴を有する。図10は、炭化珪素を半導体材料として用いた従来のショットキーバリアダイオード900の断面図である。従来のショットキーバリアダイオード900は、図10に示すように、第1主面及び当該第1主面の反対面である第2主面を有し、炭化珪素からなるn型の半導体基体910(第1導電型の半導体基体)と、半導体基体910における第1主面上に形成されたバリアメタル層918と、バリアメタル層918における端部の下方に形成されたガードリング層916とを備える。なお、半導体基体910は、炭化珪素からなるn+型の炭化硅素単結晶基板912と、当該炭化硅素単結晶基板912上にエピタキシャル成長により形成された炭化珪素からなるn−型のドリフト層914とを備える。図10中、符号920は表面電極を示し、符号922はパッシベーション層を示し、符号926は裏面電極を示す。
【0003】
しかしながら、従来のショットキーバリアダイオード900においては、珪素を半導体材料として用いたショットキーバリアダイオードの場合とは異なり、ガードリング層916からの正孔(小数キャリア)の注入による伝導度変調が起こり難いため、順方向サージ耐量が弱いという問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決することのできるショットキーバリアダイオードが提案されている。図11は、従来のショットキーバリアダイオード902の断面図である。従来のショットキーバリアダイオード902は、図11に示すように、従来のショットキーバリアダイオード900における半導体基体910の第1主面側表面に高濃度のp型不純物を含有する少数キャリア注入層928が部分的に形成された構造を有する。従来のショットキーバリアダイオード902によれば、順方向バイアス時に少数キャリア注入層928から正孔が注入されるようになる結果、伝導度変調によりドリフト層914の抵抗が下がり順方向サージ耐量を改善することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、従来のショットキーバリアダイオード902においては、少数キャリア注入層928が形成された領域は順方向電流が流れる経路として使用できなくなるため、順方向降下電圧VFが高くなってしまうという問題がある。すなわち、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとはトレードオフの関係にある。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、従来のショットキーバリアダイオード902における半導体基体910の第1主面側からライフタイム向上剤としてのカーボンを導入してカーボン導入層932を形成することが考えられる(例えば、特許文献1参照。)。図12は、そのように半導体基体910の第1主面側からライフタイム向上剤としてのカーボンを導入してカーボン導入層932が形成されたショットキーバリアダイオード904の断面図である。このようなショットキーバリアダイオード904によれば、図12に示すように、半導体基体910の第1主面側からライフタイム向上剤としてのカーボンが導入されているため、注入された正孔のライフタイムが長くなる結果、伝導度変調が効率的に起こるようになり、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−053667号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Material Science Forum Vols. 527-529(2006) pp 1155-1158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のようなショットキーバリアダイオード904においては、カーボンを導入することに起因して、半導体基体910とバリアメタル層918との界面に欠陥が形成されてしまい、逆方向漏れ電流IRが増加してしまうという新たな問題が発生する。
【0010】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能で、かつ、逆方向漏れ電流IRが増加してしまうことのないショットキーバリアダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明のショットキーバリアダイオードは、第1主面及び当該第1主面の反対面である第2主面を有し、炭化珪素からなる第1導電型の半導体基体と、前記半導体基体における前記第1主面上に形成されたバリアメタル層と、前記半導体基体における前記第1主面側の表面に部分的に形成され、高濃度の第2導電型不純物を含有する小数キャリア注入層と、前記小数キャリア注入層の直下にのみカーボンが導入されたカーボン導入層とを備えることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【0012】
本発明のショットキーバリアダイオードによれば、ライフタイム向上剤としてのカーボンが、電流の流れに関与しない小数キャリア注入層の直下にのみ導入されているため、逆方向漏れ電流IRを増加させずに、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能となる。
【0013】
[2]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記カーボン導入層は、前記少数キャリア注入層の最深部よりも深い領域に形成されていることが好ましい。
【0014】
小数キャリア注入層にカーボンを導入してもドリフト領域におけるライフタイム向上に寄与しないため、上記のような構成とすることにより、小数キャリア注入層にカーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクを低減することが可能となる。
【0015】
[3]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記カーボン導入層の最深部は、前記小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長と同じ長さだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、前記小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長の6倍の長さだけ深い深さ位置よりも浅いことが好ましい。
【0016】
カーボン導入層の最深部が、小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長の6倍の長さだけ深い深さ位置よりも浅いことが好ましい理由は、上記の深さ位置よりも深い領域には少数キャリアがほとんど存在しないため、上記の深さ位置よりも深い領域にまでカーボン導入層を形成したとしても、小数キャリアのライフタイムをより一層長くする効果が得られないからである。また、上記の深さ位置よりも深い領域までカーボン導入層を形成した場合には、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクが高まり、逆方向漏れ電流IRが増加してしまう場合があるからである。
【0017】
一方、カーボン導入層の最深部が、小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長と同じ長さだけ深い深さ位置よりもさらに深いことが好ましい理由は、上記の深さ位置よりも浅い領域には、少数キャリア注入層から注入された少数キャリアが比較的多数存在しているため、上記の深さ位置に達しないようにカーボン導入層を形成したのでは、小数キャリアのライフタイムを長くする効果が十分に得られないからである。
【0018】
[4]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記カーボン導入層におけるカーボンの濃度は、1×1016〜1〜1018cm−3の範囲内にあることが好ましい。
【0019】
カーボン導入層におけるカーボンの濃度が1×1016〜1×1018cm−3の範囲内にあることが好ましい理由は、カーボン導入層におけるカーボンの濃度が1×1016よりも低い場合には、小数キャリアのライフタイムを長くする効果が得られなくなる場合があるからであり、カーボン導入層におけるカーボンの濃度が1×1018よりも高い場合には、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクが高まり、逆方向漏れ電流IRが増加してしまう場合があるからである。この観点から言えば、カーボン導入層におけるカーボンの濃度は、3×1016〜3×1017cm−3の範囲内にあることがより好ましい。
【0020】
[5]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記カーボン導入層の最深部は、前記小数キャリア注入層の最深部から0.43μmだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、前記小数キャリア注入層の最深部から2.6μmだけ深い深さ位置よりも浅いことが好ましい。
【0021】
カーボン導入層の最深部が、小数キャリア注入層の最深部から2.6μmだけ深い深さ位置よりも浅いことが好ましい理由は、カーボン導入層におけるカーボンの濃度が1×1016〜1×1018cm−3の範囲内にある場合には、上記の深さ位置よりも深い領域には少数キャリアがほとんど存在しないため、上記の深さ位置よりも深い領域にまでカーボン導入層を形成したとしても、小数キャリアのライフタイムをより一層長くする効果が得られないからである。また、上記の深さ位置よりも深い領域までカーボン導入層を形成した場合には、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクが高まり、逆方向漏れ電流IRが増加してしまう場合があるからである。
【0022】
一方、カーボン導入層の最深部が、小数キャリア注入層の最深部から0.43μmだけ深い深さ位置よりも深いことが好ましい理由は、カーボン導入層におけるカーボンの濃度が1×1016〜1×1018cm−3の範囲内にある場合には、上記の深さ位置よりも浅い領域には、少数キャリア注入層から注入された少数キャリアが比較的多数存在しているため、上記の深さ位置に達しないようにカーボン導入層を形成したのでは、小数キャリアのライフタイムを長くする効果が十分に得られないからである。
【0023】
[6]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記少数キャリア注入層の表面には、前記バリアメタル層との間のコンタクト抵抗を低減するためのオーミック金属層が形成されていることが好ましい。
【0024】
このような構成とすることにより、少数キャリアの注入がスムーズに行われるようになるからである。なお、オーミック金属層は、少数キャリア注入層の表面に部分的に形成されていてもよい。
【0025】
[7]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記半導体基体における前記第1主面側の表面には、前記バリアメタル層の端部に対応する領域にガードリング層が形成されていることが好ましい。
【0026】
このように、本発明は、バリアメタル層の端部に対応する領域にガードリング層が形成されているショットキーバリアダイオードに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造する際の製造工程を示す図である。
【図3】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造する際の製造工程を示す図である。
【図4】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造する際の製造工程を示す図である。
【図5】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造する際の製造工程を示す図である。
【図6】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の電気的特性を示す図である。
【図7】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の電気的特性を示す図である。
【図8】実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102を説明するために示す図である。
【図9】変形例1〜4に係るショットキーバリアダイオードを説明するために示す図である。
【図10】従来のショットキーバリアダイオード900の断面図である。
【図11】従来のショットキーバリアダイオード902の断面図である。
【図12】ショットキーバリアダイオード904の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のショットキーバリアダイオードについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0029】
[実施形態1]
1.ショットキーバリアダイオード100の構成
図1は、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を説明するために示す図である。図1(a)はショットキーバリアダイオード100の断面図であり、図1(b)は図1(a)の符号R1で示す部分の拡大図である。
【0030】
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、図1に示すように、第1主面及び当該第1主面の反対面である第2主面を有し(以下、第1主面のことを表面と言い、第2主面のことを裏面と言うこともある。)、炭化珪素からなるn型の半導体基体(第1導電型の半導体基体)110と、半導体基体110における第1主面上に形成されたバリアメタル層118と、半導体基体110における第1主面側の表面に部分的に形成され、p+型の小数キャリア注入層(高濃度の第2導電型不純物を含有する小数キャリア注入層)128と、小数キャリア注入層128の直下にのみカーボンが導入されたカーボン導入層132とを備える。
【0031】
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100においては、半導体基体110における第1主面側の表面には、バリアメタル層118の端部に対応する領域にp型のガードリング層(ガードリング層)116が形成されている。半導体基体110は、炭化珪素からなるn+型の炭化硅素単結晶基板112と、当該炭化硅素単結晶基板112上に形成された炭化珪素からなるn−型のエピタキシャル層(以下、ドリフト層ということもある。)114とを備える。なお、図1中、符号122はパッシベーション層を示す。
【0032】
炭化硅素単結晶基板112としては、n型不純物濃度が例えば5×1017cm−3〜5×1019cm−3程度、厚さが例えば30μm〜400nm程度のものを用いることができる。また、炭化硅素単結晶基板112の結晶多形としては例えば4Hのものを用いることができる。
【0033】
エピタキシャル層114としては、n型不純物濃度が例えば5×1014cm−3〜5×1016cm−3程度、厚さが例えば3μm〜20μm程度のものを用いることができる。
【0034】
バリアメタル層118としては、エピタキシャル層114との間でショットキー接合を形成する金属(例えばチタン。)からなるバリアメタル層を用いることができる。バリアメタル層116上には、図1に示すように、バリアメタル層116とオーミック接続可能な表面電極(例えば、チタン及びアルミニウムが積層された積層膜、ニッケル膜など。膜厚2000nm程度。)120を設け、これをアノード電極として用いる。バリアメタル層118の層厚は、例えば100nmである。
【0035】
カソード電極としての裏面電極126としては、例えばチタン、ニッケル及び銀が積層された積層膜からなるものを用いることができる。裏面電極126は、炭化硅素単結晶基板112の裏面にそのまま形成しても良いし、図1に示すように、炭化硅素単結晶基板112の裏面にシリサイド層124を介して形成しても良い。シリサイド層124としては、例えば、炭化硅素単結晶基板112の裏面にニッケル層(厚さ:50nm)を形成後アニールすることによって形成されるNiのシリサイド層を用いることができる。
【0036】
ガードリング層116は、深さが0.5μm〜1.0μm程度であり、p型不純物濃度が例えば1×1016cm−3〜1×1018cm−3程度である。ガードリング層116は、エピタキシャル層114の表面所定領域において環状に形成されている。
【0037】
小数キャリア注入層128は、深さが0.2μm〜0.5μm程度であり、p型不純物濃度が例えば2×1018cm−3〜2×1020cm−3程度である。小数キャリア注入層128は、エピタキシャル層114の表面における能動領域(ガードリングに囲まれた領域)において部分的に形成されている(面積比率が例えば1%〜50%。)。
【0038】
少数キャリア注入層128の表面には、バリアメタル層118との間のコンタクト抵抗を低減するためのオーミック金属層130が形成されている。オーミック金属層130としては、例えば、チタン(例えば10nm)及びアルミニウム(例えば50nm)の積層膜を形成後アニールすることによって形成されるシリサイド層を用いることができる。
【0039】
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、上記したように、小数キャリア注入層128の直下にのみカーボンが導入されたカーボン導入層132とを備える。
カーボン導入層132は、少数キャリア注入層128の最深部よりも深い領域に形成されている。また、カーボン導入層132の最深部は、小数キャリア注入層128の最深部から少数キャリア拡散長Lpと同じ長さLpだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、小数キャリア注入層128の最深部から少数キャリア拡散長Lpを6倍して得られる長さ6Lpだけ深い深さ位置よりも浅い。
【0040】
具体的には、カーボン導入層132の最深部は、小数キャリア注入層128の最深部から例えば0.43μmだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、小数キャリア注入層128の最深部から例えば2.6μmだけ深い深さ位置よりも浅い。
【0041】
カーボン導入層132におけるカーボンの濃度は、1×1016〜1×1018cm−3の範囲内にある。
【0042】
2.ショットキーバリアダイオード100の製造方法
図2〜図5は、ショットキーバリアダイオード100の製造方法を示す図である。図2(a)〜図2(c)、図3(a)〜図3(c)、図4(a)〜図4(c)及び図5(a)〜図5(c)は各工程図である。
【0043】
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、図2〜図5に示す工程(S1)〜(S10)を行うことによって製造することができる。以下、工程毎に説明する。
【0044】
(S1)半導体基体準備工程
n+型の炭化珪素単結晶基板112(厚さ:400μm、不純物(窒素)濃度:1×1019cm−3)と、炭化珪素単結晶基板112の上面に形成された炭化硅素からなるn−型のエピタキシャル層(ドリフト層)114(厚さ:5μm、不純物(窒素)濃度:5×1015cm−3)を備える半導体基体110を準備する(図2(a)参照。)。
【0045】
(S2)ガードリング層形成工程
半導体基体110の表面を清浄化した後、エピタキシャル層114の表面に、ガードリング層116に対応する部分に開口を有する酸化硅素マスクM1を形成する。その後、当該酸化硅素マスクM1を介して、エピタキシャル層114の所定部位にp型不純物としてのアルミニウムイオンを打ち込んでガードリング層(深さ:0.7μm、p型不純物濃度:1×1017cm−3)を形成する(図2(b)参照。)。アルミニウムイオンの打ち込みは、エピタキシャル層114の表面に異なるエネルギー(30kev、60kev、・・・、700kev。)でもってアルミニウムイオンを多段に打ち込むことにより行う。なお、ガードリング層形成工程においては、マスクM1の開口に薄い酸化硅素膜などが存在する条件下でアルミニウムイオンの打ち込みを行ってもよい。
【0046】
(S3)少数キャリア注入層形成工程
マスクM1を除去した後、エピタキシャル層114の表面に、少数キャリア注入層128に対応する部分に開口を有する酸化硅素マスクM2を形成する。その後、当該酸化硅素マスクM2を介してエピタキシャル層114の所定部位にp型不純物としてのアルミニウムイオンをガードリング層形成工程においてよりも低エネルギー量でかつ多量打ち込んで少数キャリア注入層128(深さ:0.3μm、p型不純物濃度:2×1019cm−3)を形成する(図2(c)参照。)。アルミニウムイオンの打ち込みは、エピタキシャル層114の表面に異なるエネルギー(30kev、60kev、・・・、150kev。)でもってアルミニウムイオンを多段に打ち込むことにより行う。なお、少数キャリア注入層形成工程においては、酸化硅素マスクM2の開口に薄い酸化硅素膜などが存在する条件下でアルミニウムイオンの打ち込みを行ってもよい。
【0047】
(S4)カーボン導入工程
少数キャリア注入層形成工程終了後、そのまま酸化硅素マスクM2を除去することなく、当該酸化硅素マスクM2を介してエピタキシャル層114の所定部位にライフタイム向上剤としてのカーボンを打ち込んでカーボン導入層132(最浅部:0.3μm、最深部:2.6μm、カーボン濃度:1×1017cm−3)を形成する(図3(a)参照。)。カーボンの打ち込みは、エピタキシャル層114の表面に異なるエネルギー(180kev、360kev、・・・、1620kev。)でもってカーボンを多段に打ち込むことにより行う。なお、カーボン導入工程においては、酸化硅素マスクM2の開口に薄い酸化硅素膜などが存在する条件下でカーボンの打ち込みを行ってもよい。
【0048】
(S5)不純物活性化焼鈍工程
マスクM2を除去した後、半導体基体110の表面及び裏面に保護レジスト層(図示せず。)を形成した後、当該保護レジスト層を炭化してグラファイトマスク(図示せず。)を形成する。その後、半導体基体110を1600℃以上の温度に加熱することによりp型不純物及びカーボンの活性化を行い、その後、グラファイトマスクを除去する(図3(b)参照。)。その後、この工程で表面の荒れた半導体基体110の表面及び裏面を乾燥酸素雰囲気の下1000℃以上の温度で犠牲酸化して犠牲酸化膜140,142を形成する(図3(c)参照。)。
【0049】
(S6)裏面Niシリサイド層形成工程
その後、半導体基体110の裏面の犠牲酸化膜142を除去した後、半導体基体110の裏面にニッケル層(厚さ:50nm)を形成し、半導体基体110を950℃の温度でアニールすることにより、半導体基体110の裏面にNiのシリサイド層を形成する(図4(a)参照)。
【0050】
(S7)オーミック金属層形成工程
その後、半導体基体110の表面の犠牲酸化膜140における少数キャリア注入層128に対応する部分に開口を有するレジストM3を形成する。その後、当該レジストM3をマスクとして犠牲酸化膜140をエッチングした後、半導体基体110の上方からチタン層(例えば10nm)及びアルミニウム層(例えば50nm)からなる積層膜を蒸着により形成し(図4(b)参照。)、その後、リフトオフ法によりレジストM3及びレジストM3上に形成された積層膜を除去し、さらには犠牲酸化膜140を除去した後、半導体基体110を800℃の温度でアニールすることにより、少数キャリア注入層128の上方にオーミック金属層130を形成する(図4(c)参照)。
【0051】
(S8)バリアメタル層形成工程
その後、エピタキシャル層114の表面に、バリアメタルとしてのチタン層(100nm)及び表面電極としてのアルミニウム層(2000nm)を順次蒸着により形成した後、エッチングを行って、バリアメタル層118及び表面電極120を形成する(図5(a)参照)。)。
【0052】
(S9)パッシベーション層形成工程
その後、半導体基体110の表面にポリイミドを塗布した後、バリアメタル層118の外周部分を覆う領域以外の領域からポリイミドを除去することにより、パッシベーション層122を形成する(図5(b)参照。)。
【0053】
(S10)裏面電極形成工程
その後、半導体基体110の裏面にチタン層、ニッケル層及び銀層が積層された積層膜からなる裏面電極126を形成する(図5(c)参照。)。
【0054】
以上の工程を行うことによって、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造することができる。
【0055】
3.ショットキーバリアダイオード100の効果
以上のように構成された実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、ライフタイム向上剤としてのカーボンが、電流の流れに関与しない小数キャリア注入層128の直下にのみ導入されているため、逆方向漏れ電流IRを増加させずに、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能となる。
【0056】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、カーボン導入層132が少数キャリア注入層128の最深部よりも深い領域に形成されているため、カーボンを導入してもドリフト領域114におけるライフタイム向上に寄与しない小数キャリア注入層128にカーボンを導入することがなくなり、このことに起因して欠陥が発生するリスクを低減することが可能となる。
【0057】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、カーボン導入層132の最深部が「小数キャリア注入層128の最深部から少数キャリア拡散長Lpを6倍して得られる長さ(6Lp)だけ深い深さ位置」よりも浅いため、小数キャリアのライフタイムを十分に長くしながら、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクを低減して逆方向漏れ電流IRが増加してしまうリスクを低減することができる。
【0058】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、カーボン導入層132の最深部が「小数キャリア注入層128の最深部から少数キャリア拡散長Lpと同じ長さLpだけ深い深さ位置」よりもさらに深いため、小数キャリアのライフタイムを十分に長くすることが可能となる。
【0059】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、カーボン導入層132におけるカーボンの濃度が1×1016〜1〜1018cm−3の範囲内にあるため、小数キャリアのライフタイムを十分に長くしながら、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクを低減して逆方向漏れ電流IRが増加してしまうリスクを低減することができる。
【0060】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、カーボン導入層132の最深部が「小数キャリア注入層128の最深部から0.43μmだけ深い深さ位置」よりも深く、かつ、「小数キャリア注入層128の最深部から2.6μmだけ深い深さ位置」よりも浅いため、カーボン導入層132におけるカーボンの濃度が1×1016〜1〜1018cm−3の範囲内にある場合において、小数キャリアのライフタイムを十分に長くしながら、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクを低減して逆方向漏れ電流IRが増加してしまうリスクを低減することができる。
【0061】
さらにまた、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、少数キャリア注入層128の表面にはバリアメタル層118との間のコンタクト抵抗を低減するためのオーミック金属層130が形成されているため、少数キャリアの注入がスムーズに行われるようになる。
【0062】
本発明は、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100のように、バリアメタル層118の端部に対応する領域にガードリング層116が形成されているショットキーバリアダイオードに好適に用いることができる。
【0063】
[試験例]
図6は、ショットキーバリアダイオード100における少数キャリア注入領域128の面積(能動領域の面積に対する小数キャリア注入領域128の面積)と順方向サージ耐量との関係を示す図である。図7は、ショットキーバリアダイオード100における少数キャリア注入領域128の面積(能動領域の面積に対する小数キャリア注入領域128の面積)と順方向降下電圧との関係を示す図である。なお、これらの図において、従来のSBD900は従来のショットキーバリアダイオード900を示し、従来のSBD902は従来のショットキーバリアダイオード902を示し、実施形態1に係るSBD100は実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を示す。また、図7中、小数キャリア注入層128の面積割合が3.6%、11.6%又は20%の場合においては、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と従来のショットキーバリアダイオード902とで同一の順方向降下電圧が得られたため、図7においてはこれらを少しだけずらして表示している(図7中、左右方向両端のデータを除く真ん中の3点のデータ参照。)。
【0064】
これらの試験例の結果、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100においては、従来のショットキーバリアダイオード900及び従来のショットキーバリアダイオード902のいずれの場合よりも高い順方向サージ耐量を得ることができる(図6参照。)。また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100においては、従来のショットキーバリアダイオード900及び従来のショットキーバリアダイオード902の場合と同等の順方向降下電圧を得ることができる(図7参照。)。従って、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能であることがわかった。
【0065】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102を説明するために示す図である。
実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102は、基本的には実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と同様の構成を有するが、図8に示すように、少数キャリア注入層の表面にオーミック金属層が形成されていない点で実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合とは異なる。
【0066】
このように、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102は、少数キャリア注入層の表面にオーミック金属層が形成されていない点で実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合とは異なるが、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合と同様に、ライフタイム向上剤としてのカーボンが、電流の流れに関与しない小数キャリア注入層の直下にのみ導入されているため、逆方向漏れ電流IRを増加させずに、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能となる。
【0067】
また、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102によれば、少数キャリア注入層の表面にオーミック金属層を形成する必要がないため、製造工程が簡略化され、製造工程が短く、製造コストの安価なショットキーバリアダイオードとなる。
【0068】
なお、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102は、少数キャリア注入層の表面にオーミック金属層が形成されていない点以外の点においては実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合と同様の構成を有するため、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0069】
以上、本発明のショットキーバリアダイオードを上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0070】
(1)上記した各実施形態においては、カーボン導入層132の幅が小数キャリア注入層128の幅と同一であり、また、カーボン導入層132の上面と小数キャリア注入層128の下面とが一致しているが、本発明はこれに限定されるものではない。図9は、変形例1〜4に係るショットキーバリアダイオードを説明するために示す図である。図9(a)は変形例1に係るショットキーバリアダイオードにおける要部拡大図であり、図9(b)は変形例2に係るショットキーバリアダイオードにおける要部拡大図であり、図9(c)は変形例3に係るショットキーバリアダイオードにおける要部拡大図であり、図9(d)は変形例4に係るショットキーバリアダイオードにおける要部拡大図である。図9に示すように、例えば、カーボン導入層132の幅が小数キャリア注入層128の幅よりも広くてもよいし(図9(a)参照。)、カーボン導入層132の幅が小数キャリア注入層128の幅よりも狭くてもよいし(図9(b)参照。)、カーボン導入層132の上面が小数キャリア注入層128の下面よりも深い位置に位置していてもよいし(図9(c)参照。)、カーボン導入層132の上面が小数キャリア注入層128の下面よりも浅い位置に位置していてもよい(図9(d)参照。)。
【0071】
(2)上記各実施形態においては、少数キャリア注入層が、平面的に見てガードリング層に囲まれた領域に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、少数キャリア注入層が、平面的に見てガードリング層の内部に形成されてもよい。
【0072】
(3)上記した各実施形態においては、炭化珪素単結晶基板として結晶多形が4Hであるものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、炭化珪素単結晶基板として結晶多形が6H又は3Cであるものを用いることもできる。
【0073】
(4)上記した各実施形態においては、第1導電型をn型とし第2導電型をp型として、本発明の半導体装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1導電型をp型とし第2導電型をn型としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100,102,900,902,904…ショットキーバリアダイオード、110,910…半導体基体、112,912…炭化珪素単結晶基板、114,914…エピタキシャル層(ドリフト層)、116,916…ガードリング層、118,918…バリアメタル層、120,920…表面電極、122,922…パッシベーション層、124…シリサイド層、126,926…裏面電極、128,928…少数キャリア注入層、130…オーミック金属層、132,932…カーボン導入層、140,142…犠牲酸化膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーバリアダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素を半導体材料として用いたショットキーバリアダイオードは、高耐圧、低損失、低リーク電流、高温動作可能、高速動作可能などの優れた特徴を有する。図10は、炭化珪素を半導体材料として用いた従来のショットキーバリアダイオード900の断面図である。従来のショットキーバリアダイオード900は、図10に示すように、第1主面及び当該第1主面の反対面である第2主面を有し、炭化珪素からなるn型の半導体基体910(第1導電型の半導体基体)と、半導体基体910における第1主面上に形成されたバリアメタル層918と、バリアメタル層918における端部の下方に形成されたガードリング層916とを備える。なお、半導体基体910は、炭化珪素からなるn+型の炭化硅素単結晶基板912と、当該炭化硅素単結晶基板912上にエピタキシャル成長により形成された炭化珪素からなるn−型のドリフト層914とを備える。図10中、符号920は表面電極を示し、符号922はパッシベーション層を示し、符号926は裏面電極を示す。
【0003】
しかしながら、従来のショットキーバリアダイオード900においては、珪素を半導体材料として用いたショットキーバリアダイオードの場合とは異なり、ガードリング層916からの正孔(小数キャリア)の注入による伝導度変調が起こり難いため、順方向サージ耐量が弱いという問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決することのできるショットキーバリアダイオードが提案されている。図11は、従来のショットキーバリアダイオード902の断面図である。従来のショットキーバリアダイオード902は、図11に示すように、従来のショットキーバリアダイオード900における半導体基体910の第1主面側表面に高濃度のp型不純物を含有する少数キャリア注入層928が部分的に形成された構造を有する。従来のショットキーバリアダイオード902によれば、順方向バイアス時に少数キャリア注入層928から正孔が注入されるようになる結果、伝導度変調によりドリフト層914の抵抗が下がり順方向サージ耐量を改善することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、従来のショットキーバリアダイオード902においては、少数キャリア注入層928が形成された領域は順方向電流が流れる経路として使用できなくなるため、順方向降下電圧VFが高くなってしまうという問題がある。すなわち、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとはトレードオフの関係にある。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、従来のショットキーバリアダイオード902における半導体基体910の第1主面側からライフタイム向上剤としてのカーボンを導入してカーボン導入層932を形成することが考えられる(例えば、特許文献1参照。)。図12は、そのように半導体基体910の第1主面側からライフタイム向上剤としてのカーボンを導入してカーボン導入層932が形成されたショットキーバリアダイオード904の断面図である。このようなショットキーバリアダイオード904によれば、図12に示すように、半導体基体910の第1主面側からライフタイム向上剤としてのカーボンが導入されているため、注入された正孔のライフタイムが長くなる結果、伝導度変調が効率的に起こるようになり、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−053667号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Material Science Forum Vols. 527-529(2006) pp 1155-1158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のようなショットキーバリアダイオード904においては、カーボンを導入することに起因して、半導体基体910とバリアメタル層918との界面に欠陥が形成されてしまい、逆方向漏れ電流IRが増加してしまうという新たな問題が発生する。
【0010】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能で、かつ、逆方向漏れ電流IRが増加してしまうことのないショットキーバリアダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明のショットキーバリアダイオードは、第1主面及び当該第1主面の反対面である第2主面を有し、炭化珪素からなる第1導電型の半導体基体と、前記半導体基体における前記第1主面上に形成されたバリアメタル層と、前記半導体基体における前記第1主面側の表面に部分的に形成され、高濃度の第2導電型不純物を含有する小数キャリア注入層と、前記小数キャリア注入層の直下にのみカーボンが導入されたカーボン導入層とを備えることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【0012】
本発明のショットキーバリアダイオードによれば、ライフタイム向上剤としてのカーボンが、電流の流れに関与しない小数キャリア注入層の直下にのみ導入されているため、逆方向漏れ電流IRを増加させずに、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能となる。
【0013】
[2]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記カーボン導入層は、前記少数キャリア注入層の最深部よりも深い領域に形成されていることが好ましい。
【0014】
小数キャリア注入層にカーボンを導入してもドリフト領域におけるライフタイム向上に寄与しないため、上記のような構成とすることにより、小数キャリア注入層にカーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクを低減することが可能となる。
【0015】
[3]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記カーボン導入層の最深部は、前記小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長と同じ長さだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、前記小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長の6倍の長さだけ深い深さ位置よりも浅いことが好ましい。
【0016】
カーボン導入層の最深部が、小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長の6倍の長さだけ深い深さ位置よりも浅いことが好ましい理由は、上記の深さ位置よりも深い領域には少数キャリアがほとんど存在しないため、上記の深さ位置よりも深い領域にまでカーボン導入層を形成したとしても、小数キャリアのライフタイムをより一層長くする効果が得られないからである。また、上記の深さ位置よりも深い領域までカーボン導入層を形成した場合には、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクが高まり、逆方向漏れ電流IRが増加してしまう場合があるからである。
【0017】
一方、カーボン導入層の最深部が、小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長と同じ長さだけ深い深さ位置よりもさらに深いことが好ましい理由は、上記の深さ位置よりも浅い領域には、少数キャリア注入層から注入された少数キャリアが比較的多数存在しているため、上記の深さ位置に達しないようにカーボン導入層を形成したのでは、小数キャリアのライフタイムを長くする効果が十分に得られないからである。
【0018】
[4]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記カーボン導入層におけるカーボンの濃度は、1×1016〜1〜1018cm−3の範囲内にあることが好ましい。
【0019】
カーボン導入層におけるカーボンの濃度が1×1016〜1×1018cm−3の範囲内にあることが好ましい理由は、カーボン導入層におけるカーボンの濃度が1×1016よりも低い場合には、小数キャリアのライフタイムを長くする効果が得られなくなる場合があるからであり、カーボン導入層におけるカーボンの濃度が1×1018よりも高い場合には、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクが高まり、逆方向漏れ電流IRが増加してしまう場合があるからである。この観点から言えば、カーボン導入層におけるカーボンの濃度は、3×1016〜3×1017cm−3の範囲内にあることがより好ましい。
【0020】
[5]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記カーボン導入層の最深部は、前記小数キャリア注入層の最深部から0.43μmだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、前記小数キャリア注入層の最深部から2.6μmだけ深い深さ位置よりも浅いことが好ましい。
【0021】
カーボン導入層の最深部が、小数キャリア注入層の最深部から2.6μmだけ深い深さ位置よりも浅いことが好ましい理由は、カーボン導入層におけるカーボンの濃度が1×1016〜1×1018cm−3の範囲内にある場合には、上記の深さ位置よりも深い領域には少数キャリアがほとんど存在しないため、上記の深さ位置よりも深い領域にまでカーボン導入層を形成したとしても、小数キャリアのライフタイムをより一層長くする効果が得られないからである。また、上記の深さ位置よりも深い領域までカーボン導入層を形成した場合には、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクが高まり、逆方向漏れ電流IRが増加してしまう場合があるからである。
【0022】
一方、カーボン導入層の最深部が、小数キャリア注入層の最深部から0.43μmだけ深い深さ位置よりも深いことが好ましい理由は、カーボン導入層におけるカーボンの濃度が1×1016〜1×1018cm−3の範囲内にある場合には、上記の深さ位置よりも浅い領域には、少数キャリア注入層から注入された少数キャリアが比較的多数存在しているため、上記の深さ位置に達しないようにカーボン導入層を形成したのでは、小数キャリアのライフタイムを長くする効果が十分に得られないからである。
【0023】
[6]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記少数キャリア注入層の表面には、前記バリアメタル層との間のコンタクト抵抗を低減するためのオーミック金属層が形成されていることが好ましい。
【0024】
このような構成とすることにより、少数キャリアの注入がスムーズに行われるようになるからである。なお、オーミック金属層は、少数キャリア注入層の表面に部分的に形成されていてもよい。
【0025】
[7]本発明のショットキーバリアダイオードにおいては、前記半導体基体における前記第1主面側の表面には、前記バリアメタル層の端部に対応する領域にガードリング層が形成されていることが好ましい。
【0026】
このように、本発明は、バリアメタル層の端部に対応する領域にガードリング層が形成されているショットキーバリアダイオードに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造する際の製造工程を示す図である。
【図3】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造する際の製造工程を示す図である。
【図4】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造する際の製造工程を示す図である。
【図5】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造する際の製造工程を示す図である。
【図6】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の電気的特性を示す図である。
【図7】実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の電気的特性を示す図である。
【図8】実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102を説明するために示す図である。
【図9】変形例1〜4に係るショットキーバリアダイオードを説明するために示す図である。
【図10】従来のショットキーバリアダイオード900の断面図である。
【図11】従来のショットキーバリアダイオード902の断面図である。
【図12】ショットキーバリアダイオード904の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のショットキーバリアダイオードについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0029】
[実施形態1]
1.ショットキーバリアダイオード100の構成
図1は、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を説明するために示す図である。図1(a)はショットキーバリアダイオード100の断面図であり、図1(b)は図1(a)の符号R1で示す部分の拡大図である。
【0030】
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、図1に示すように、第1主面及び当該第1主面の反対面である第2主面を有し(以下、第1主面のことを表面と言い、第2主面のことを裏面と言うこともある。)、炭化珪素からなるn型の半導体基体(第1導電型の半導体基体)110と、半導体基体110における第1主面上に形成されたバリアメタル層118と、半導体基体110における第1主面側の表面に部分的に形成され、p+型の小数キャリア注入層(高濃度の第2導電型不純物を含有する小数キャリア注入層)128と、小数キャリア注入層128の直下にのみカーボンが導入されたカーボン導入層132とを備える。
【0031】
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100においては、半導体基体110における第1主面側の表面には、バリアメタル層118の端部に対応する領域にp型のガードリング層(ガードリング層)116が形成されている。半導体基体110は、炭化珪素からなるn+型の炭化硅素単結晶基板112と、当該炭化硅素単結晶基板112上に形成された炭化珪素からなるn−型のエピタキシャル層(以下、ドリフト層ということもある。)114とを備える。なお、図1中、符号122はパッシベーション層を示す。
【0032】
炭化硅素単結晶基板112としては、n型不純物濃度が例えば5×1017cm−3〜5×1019cm−3程度、厚さが例えば30μm〜400nm程度のものを用いることができる。また、炭化硅素単結晶基板112の結晶多形としては例えば4Hのものを用いることができる。
【0033】
エピタキシャル層114としては、n型不純物濃度が例えば5×1014cm−3〜5×1016cm−3程度、厚さが例えば3μm〜20μm程度のものを用いることができる。
【0034】
バリアメタル層118としては、エピタキシャル層114との間でショットキー接合を形成する金属(例えばチタン。)からなるバリアメタル層を用いることができる。バリアメタル層116上には、図1に示すように、バリアメタル層116とオーミック接続可能な表面電極(例えば、チタン及びアルミニウムが積層された積層膜、ニッケル膜など。膜厚2000nm程度。)120を設け、これをアノード電極として用いる。バリアメタル層118の層厚は、例えば100nmである。
【0035】
カソード電極としての裏面電極126としては、例えばチタン、ニッケル及び銀が積層された積層膜からなるものを用いることができる。裏面電極126は、炭化硅素単結晶基板112の裏面にそのまま形成しても良いし、図1に示すように、炭化硅素単結晶基板112の裏面にシリサイド層124を介して形成しても良い。シリサイド層124としては、例えば、炭化硅素単結晶基板112の裏面にニッケル層(厚さ:50nm)を形成後アニールすることによって形成されるNiのシリサイド層を用いることができる。
【0036】
ガードリング層116は、深さが0.5μm〜1.0μm程度であり、p型不純物濃度が例えば1×1016cm−3〜1×1018cm−3程度である。ガードリング層116は、エピタキシャル層114の表面所定領域において環状に形成されている。
【0037】
小数キャリア注入層128は、深さが0.2μm〜0.5μm程度であり、p型不純物濃度が例えば2×1018cm−3〜2×1020cm−3程度である。小数キャリア注入層128は、エピタキシャル層114の表面における能動領域(ガードリングに囲まれた領域)において部分的に形成されている(面積比率が例えば1%〜50%。)。
【0038】
少数キャリア注入層128の表面には、バリアメタル層118との間のコンタクト抵抗を低減するためのオーミック金属層130が形成されている。オーミック金属層130としては、例えば、チタン(例えば10nm)及びアルミニウム(例えば50nm)の積層膜を形成後アニールすることによって形成されるシリサイド層を用いることができる。
【0039】
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、上記したように、小数キャリア注入層128の直下にのみカーボンが導入されたカーボン導入層132とを備える。
カーボン導入層132は、少数キャリア注入層128の最深部よりも深い領域に形成されている。また、カーボン導入層132の最深部は、小数キャリア注入層128の最深部から少数キャリア拡散長Lpと同じ長さLpだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、小数キャリア注入層128の最深部から少数キャリア拡散長Lpを6倍して得られる長さ6Lpだけ深い深さ位置よりも浅い。
【0040】
具体的には、カーボン導入層132の最深部は、小数キャリア注入層128の最深部から例えば0.43μmだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、小数キャリア注入層128の最深部から例えば2.6μmだけ深い深さ位置よりも浅い。
【0041】
カーボン導入層132におけるカーボンの濃度は、1×1016〜1×1018cm−3の範囲内にある。
【0042】
2.ショットキーバリアダイオード100の製造方法
図2〜図5は、ショットキーバリアダイオード100の製造方法を示す図である。図2(a)〜図2(c)、図3(a)〜図3(c)、図4(a)〜図4(c)及び図5(a)〜図5(c)は各工程図である。
【0043】
実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、図2〜図5に示す工程(S1)〜(S10)を行うことによって製造することができる。以下、工程毎に説明する。
【0044】
(S1)半導体基体準備工程
n+型の炭化珪素単結晶基板112(厚さ:400μm、不純物(窒素)濃度:1×1019cm−3)と、炭化珪素単結晶基板112の上面に形成された炭化硅素からなるn−型のエピタキシャル層(ドリフト層)114(厚さ:5μm、不純物(窒素)濃度:5×1015cm−3)を備える半導体基体110を準備する(図2(a)参照。)。
【0045】
(S2)ガードリング層形成工程
半導体基体110の表面を清浄化した後、エピタキシャル層114の表面に、ガードリング層116に対応する部分に開口を有する酸化硅素マスクM1を形成する。その後、当該酸化硅素マスクM1を介して、エピタキシャル層114の所定部位にp型不純物としてのアルミニウムイオンを打ち込んでガードリング層(深さ:0.7μm、p型不純物濃度:1×1017cm−3)を形成する(図2(b)参照。)。アルミニウムイオンの打ち込みは、エピタキシャル層114の表面に異なるエネルギー(30kev、60kev、・・・、700kev。)でもってアルミニウムイオンを多段に打ち込むことにより行う。なお、ガードリング層形成工程においては、マスクM1の開口に薄い酸化硅素膜などが存在する条件下でアルミニウムイオンの打ち込みを行ってもよい。
【0046】
(S3)少数キャリア注入層形成工程
マスクM1を除去した後、エピタキシャル層114の表面に、少数キャリア注入層128に対応する部分に開口を有する酸化硅素マスクM2を形成する。その後、当該酸化硅素マスクM2を介してエピタキシャル層114の所定部位にp型不純物としてのアルミニウムイオンをガードリング層形成工程においてよりも低エネルギー量でかつ多量打ち込んで少数キャリア注入層128(深さ:0.3μm、p型不純物濃度:2×1019cm−3)を形成する(図2(c)参照。)。アルミニウムイオンの打ち込みは、エピタキシャル層114の表面に異なるエネルギー(30kev、60kev、・・・、150kev。)でもってアルミニウムイオンを多段に打ち込むことにより行う。なお、少数キャリア注入層形成工程においては、酸化硅素マスクM2の開口に薄い酸化硅素膜などが存在する条件下でアルミニウムイオンの打ち込みを行ってもよい。
【0047】
(S4)カーボン導入工程
少数キャリア注入層形成工程終了後、そのまま酸化硅素マスクM2を除去することなく、当該酸化硅素マスクM2を介してエピタキシャル層114の所定部位にライフタイム向上剤としてのカーボンを打ち込んでカーボン導入層132(最浅部:0.3μm、最深部:2.6μm、カーボン濃度:1×1017cm−3)を形成する(図3(a)参照。)。カーボンの打ち込みは、エピタキシャル層114の表面に異なるエネルギー(180kev、360kev、・・・、1620kev。)でもってカーボンを多段に打ち込むことにより行う。なお、カーボン導入工程においては、酸化硅素マスクM2の開口に薄い酸化硅素膜などが存在する条件下でカーボンの打ち込みを行ってもよい。
【0048】
(S5)不純物活性化焼鈍工程
マスクM2を除去した後、半導体基体110の表面及び裏面に保護レジスト層(図示せず。)を形成した後、当該保護レジスト層を炭化してグラファイトマスク(図示せず。)を形成する。その後、半導体基体110を1600℃以上の温度に加熱することによりp型不純物及びカーボンの活性化を行い、その後、グラファイトマスクを除去する(図3(b)参照。)。その後、この工程で表面の荒れた半導体基体110の表面及び裏面を乾燥酸素雰囲気の下1000℃以上の温度で犠牲酸化して犠牲酸化膜140,142を形成する(図3(c)参照。)。
【0049】
(S6)裏面Niシリサイド層形成工程
その後、半導体基体110の裏面の犠牲酸化膜142を除去した後、半導体基体110の裏面にニッケル層(厚さ:50nm)を形成し、半導体基体110を950℃の温度でアニールすることにより、半導体基体110の裏面にNiのシリサイド層を形成する(図4(a)参照)。
【0050】
(S7)オーミック金属層形成工程
その後、半導体基体110の表面の犠牲酸化膜140における少数キャリア注入層128に対応する部分に開口を有するレジストM3を形成する。その後、当該レジストM3をマスクとして犠牲酸化膜140をエッチングした後、半導体基体110の上方からチタン層(例えば10nm)及びアルミニウム層(例えば50nm)からなる積層膜を蒸着により形成し(図4(b)参照。)、その後、リフトオフ法によりレジストM3及びレジストM3上に形成された積層膜を除去し、さらには犠牲酸化膜140を除去した後、半導体基体110を800℃の温度でアニールすることにより、少数キャリア注入層128の上方にオーミック金属層130を形成する(図4(c)参照)。
【0051】
(S8)バリアメタル層形成工程
その後、エピタキシャル層114の表面に、バリアメタルとしてのチタン層(100nm)及び表面電極としてのアルミニウム層(2000nm)を順次蒸着により形成した後、エッチングを行って、バリアメタル層118及び表面電極120を形成する(図5(a)参照)。)。
【0052】
(S9)パッシベーション層形成工程
その後、半導体基体110の表面にポリイミドを塗布した後、バリアメタル層118の外周部分を覆う領域以外の領域からポリイミドを除去することにより、パッシベーション層122を形成する(図5(b)参照。)。
【0053】
(S10)裏面電極形成工程
その後、半導体基体110の裏面にチタン層、ニッケル層及び銀層が積層された積層膜からなる裏面電極126を形成する(図5(c)参照。)。
【0054】
以上の工程を行うことによって、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を製造することができる。
【0055】
3.ショットキーバリアダイオード100の効果
以上のように構成された実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、ライフタイム向上剤としてのカーボンが、電流の流れに関与しない小数キャリア注入層128の直下にのみ導入されているため、逆方向漏れ電流IRを増加させずに、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能となる。
【0056】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、カーボン導入層132が少数キャリア注入層128の最深部よりも深い領域に形成されているため、カーボンを導入してもドリフト領域114におけるライフタイム向上に寄与しない小数キャリア注入層128にカーボンを導入することがなくなり、このことに起因して欠陥が発生するリスクを低減することが可能となる。
【0057】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、カーボン導入層132の最深部が「小数キャリア注入層128の最深部から少数キャリア拡散長Lpを6倍して得られる長さ(6Lp)だけ深い深さ位置」よりも浅いため、小数キャリアのライフタイムを十分に長くしながら、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクを低減して逆方向漏れ電流IRが増加してしまうリスクを低減することができる。
【0058】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、カーボン導入層132の最深部が「小数キャリア注入層128の最深部から少数キャリア拡散長Lpと同じ長さLpだけ深い深さ位置」よりもさらに深いため、小数キャリアのライフタイムを十分に長くすることが可能となる。
【0059】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、カーボン導入層132におけるカーボンの濃度が1×1016〜1〜1018cm−3の範囲内にあるため、小数キャリアのライフタイムを十分に長くしながら、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクを低減して逆方向漏れ電流IRが増加してしまうリスクを低減することができる。
【0060】
また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、カーボン導入層132の最深部が「小数キャリア注入層128の最深部から0.43μmだけ深い深さ位置」よりも深く、かつ、「小数キャリア注入層128の最深部から2.6μmだけ深い深さ位置」よりも浅いため、カーボン導入層132におけるカーボンの濃度が1×1016〜1〜1018cm−3の範囲内にある場合において、小数キャリアのライフタイムを十分に長くしながら、カーボンを導入することに起因して欠陥が発生するリスクを低減して逆方向漏れ電流IRが増加してしまうリスクを低減することができる。
【0061】
さらにまた、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100によれば、少数キャリア注入層128の表面にはバリアメタル層118との間のコンタクト抵抗を低減するためのオーミック金属層130が形成されているため、少数キャリアの注入がスムーズに行われるようになる。
【0062】
本発明は、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100のように、バリアメタル層118の端部に対応する領域にガードリング層116が形成されているショットキーバリアダイオードに好適に用いることができる。
【0063】
[試験例]
図6は、ショットキーバリアダイオード100における少数キャリア注入領域128の面積(能動領域の面積に対する小数キャリア注入領域128の面積)と順方向サージ耐量との関係を示す図である。図7は、ショットキーバリアダイオード100における少数キャリア注入領域128の面積(能動領域の面積に対する小数キャリア注入領域128の面積)と順方向降下電圧との関係を示す図である。なお、これらの図において、従来のSBD900は従来のショットキーバリアダイオード900を示し、従来のSBD902は従来のショットキーバリアダイオード902を示し、実施形態1に係るSBD100は実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100を示す。また、図7中、小数キャリア注入層128の面積割合が3.6%、11.6%又は20%の場合においては、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と従来のショットキーバリアダイオード902とで同一の順方向降下電圧が得られたため、図7においてはこれらを少しだけずらして表示している(図7中、左右方向両端のデータを除く真ん中の3点のデータ参照。)。
【0064】
これらの試験例の結果、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100においては、従来のショットキーバリアダイオード900及び従来のショットキーバリアダイオード902のいずれの場合よりも高い順方向サージ耐量を得ることができる(図6参照。)。また、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100においては、従来のショットキーバリアダイオード900及び従来のショットキーバリアダイオード902の場合と同等の順方向降下電圧を得ることができる(図7参照。)。従って、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100は、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能であることがわかった。
【0065】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102を説明するために示す図である。
実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102は、基本的には実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100と同様の構成を有するが、図8に示すように、少数キャリア注入層の表面にオーミック金属層が形成されていない点で実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合とは異なる。
【0066】
このように、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102は、少数キャリア注入層の表面にオーミック金属層が形成されていない点で実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合とは異なるが、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合と同様に、ライフタイム向上剤としてのカーボンが、電流の流れに関与しない小数キャリア注入層の直下にのみ導入されているため、逆方向漏れ電流IRを増加させずに、順方向サージ耐圧と順方向降下電圧VFとのトレードオフ特性を改善することが可能となる。
【0067】
また、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102によれば、少数キャリア注入層の表面にオーミック金属層を形成する必要がないため、製造工程が簡略化され、製造工程が短く、製造コストの安価なショットキーバリアダイオードとなる。
【0068】
なお、実施形態2に係るショットキーバリアダイオード102は、少数キャリア注入層の表面にオーミック金属層が形成されていない点以外の点においては実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100の場合と同様の構成を有するため、実施形態1に係るショットキーバリアダイオード100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0069】
以上、本発明のショットキーバリアダイオードを上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0070】
(1)上記した各実施形態においては、カーボン導入層132の幅が小数キャリア注入層128の幅と同一であり、また、カーボン導入層132の上面と小数キャリア注入層128の下面とが一致しているが、本発明はこれに限定されるものではない。図9は、変形例1〜4に係るショットキーバリアダイオードを説明するために示す図である。図9(a)は変形例1に係るショットキーバリアダイオードにおける要部拡大図であり、図9(b)は変形例2に係るショットキーバリアダイオードにおける要部拡大図であり、図9(c)は変形例3に係るショットキーバリアダイオードにおける要部拡大図であり、図9(d)は変形例4に係るショットキーバリアダイオードにおける要部拡大図である。図9に示すように、例えば、カーボン導入層132の幅が小数キャリア注入層128の幅よりも広くてもよいし(図9(a)参照。)、カーボン導入層132の幅が小数キャリア注入層128の幅よりも狭くてもよいし(図9(b)参照。)、カーボン導入層132の上面が小数キャリア注入層128の下面よりも深い位置に位置していてもよいし(図9(c)参照。)、カーボン導入層132の上面が小数キャリア注入層128の下面よりも浅い位置に位置していてもよい(図9(d)参照。)。
【0071】
(2)上記各実施形態においては、少数キャリア注入層が、平面的に見てガードリング層に囲まれた領域に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、少数キャリア注入層が、平面的に見てガードリング層の内部に形成されてもよい。
【0072】
(3)上記した各実施形態においては、炭化珪素単結晶基板として結晶多形が4Hであるものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、炭化珪素単結晶基板として結晶多形が6H又は3Cであるものを用いることもできる。
【0073】
(4)上記した各実施形態においては、第1導電型をn型とし第2導電型をp型として、本発明の半導体装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1導電型をp型とし第2導電型をn型としてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100,102,900,902,904…ショットキーバリアダイオード、110,910…半導体基体、112,912…炭化珪素単結晶基板、114,914…エピタキシャル層(ドリフト層)、116,916…ガードリング層、118,918…バリアメタル層、120,920…表面電極、122,922…パッシベーション層、124…シリサイド層、126,926…裏面電極、128,928…少数キャリア注入層、130…オーミック金属層、132,932…カーボン導入層、140,142…犠牲酸化膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び当該第1主面の反対面である第2主面を有し、炭化珪素からなる第1導電型の半導体基体と、
前記半導体基体における前記第1主面上に形成されたバリアメタル層と、
前記半導体基体における前記第1主面側の表面に部分的に形成され、高濃度の第2導電型不純物を含有する小数キャリア注入層と、
前記小数キャリア注入層の直下にのみカーボンが導入されたカーボン導入層とを備えることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項2】
請求項1に記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記カーボン導入層は、前記少数キャリア注入層の最深部よりも深い領域に形成されていることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記カーボン導入層の最深部は、前記小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長と同じ長さだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、前記小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長を6倍して得られる長さだけ深い深さ位置よりも浅いことを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記カーボン導入層におけるカーボンの濃度は、1×1016〜1×1018cm−3の範囲内にあることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記カーボン導入層の最深部は、前記小数キャリア注入層の最深部から0.43μmだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、前記小数キャリア注入層の最深部から2.6μmだけ深い深さ位置よりも浅いことを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記少数キャリア注入層の表面には、前記バリアメタル層との間のコンタクト抵抗を低減するためのオーミック金属層が形成されていることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記半導体基体における前記第1主面側の表面には、前記バリアメタル層の端部に対応する領域にガードリング層が形成されていることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項1】
第1主面及び当該第1主面の反対面である第2主面を有し、炭化珪素からなる第1導電型の半導体基体と、
前記半導体基体における前記第1主面上に形成されたバリアメタル層と、
前記半導体基体における前記第1主面側の表面に部分的に形成され、高濃度の第2導電型不純物を含有する小数キャリア注入層と、
前記小数キャリア注入層の直下にのみカーボンが導入されたカーボン導入層とを備えることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項2】
請求項1に記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記カーボン導入層は、前記少数キャリア注入層の最深部よりも深い領域に形成されていることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記カーボン導入層の最深部は、前記小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長と同じ長さだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、前記小数キャリア注入層の最深部から少数キャリア拡散長を6倍して得られる長さだけ深い深さ位置よりも浅いことを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記カーボン導入層におけるカーボンの濃度は、1×1016〜1×1018cm−3の範囲内にあることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記カーボン導入層の最深部は、前記小数キャリア注入層の最深部から0.43μmだけ深い深さ位置よりも深く、かつ、前記小数キャリア注入層の最深部から2.6μmだけ深い深さ位置よりも浅いことを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記少数キャリア注入層の表面には、前記バリアメタル層との間のコンタクト抵抗を低減するためのオーミック金属層が形成されていることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のショットキーバリアダイオードにおいて、
前記半導体基体における前記第1主面側の表面には、前記バリアメタル層の端部に対応する領域にガードリング層が形成されていることを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【公開番号】特開2011−210935(P2011−210935A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76948(P2010−76948)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】
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