説明

シートパッド成形型およびその成形型を用いたシートパッドの製造方法

【課題】成形したシートパッドの貫通部内に対向面間の隙間によって形成される膜状のバリを容易にきれいに除去できるようにするとともに、その膜状のバリを除去した後に取り残しがあってもシートパッドの正面側や上面側の貫通部の入口から見えにくくするシートパッド成形型を提供する。
【解決手段】軟質発泡樹脂によりシートパッドを成形する金型であって、下型と上型、もしくは下型と上型と中子型によってシートパッドを成形する成形型の、下型と、上型または中子型とが、互いに対向する対向面を先端に有して前記シートパッドの貫通部を形成する、対をなす凸部を具え、それら対をなす凸部の対向面同士の間に隙間が開いており、下型および上型の少なくとも一方の凸部の対向面は周縁部に突出部を持っており、下型の凸部の対向面の突出部は、その下型よりも、もう一方の凸部を具える上型または中子型寄りに位置しているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等のシートに使用される軟質発泡樹脂製のシートパッドを成形する成形型、およびその成形型を用いたシートパッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主に自動車に代表される乗り物等の座席シートは、背もたれ部分と着座部分に軟質発泡樹脂製のシートパッドを備えている。そして、例えば特許文献1には、シートパッドのサイド部の端部にポリウレタンプレポリマー等の樹脂を含浸硬化させて、表皮張りの見栄えを良くする技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、シートパッド成形型の、シートパッドのサイド部を形成する表面に発泡性のウレタン原料をスプレーで塗布し、その後にそのウレタン原料をパッド本体と一体に発泡成形することにより、サイド部が高硬度のシートパッドを得る技術が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、シートパッド成形型の、リアシートパッドのバックル格納部を形成する部分を他の部分から仕切って、そのバックル格納部を形成する部分に高硬度配合のウレタン原料を先に注入し、局部当たりを緩和する技術が開示されている。
【0005】
そして、特許文献4には、シートパッド成形型の、シートパッド側部のエアバッグ穴を形成する突部に対向させて突条を設けて、シートパッド側部のエアバッグ穴の部分の切り欠きをし易くする技術が開示されている。
【0006】
ところで、例えばシートバックパッドの上端部には通常、貫通部として、ヘッドレストの支柱を通すヘッドレスト穴を形成する。そしてこのヘッドレスト穴を形成する際には通常、シートパッド成形型に互いに対向する突部を設けて、それらの突部でシートバックパッドの内外からヘッドレスト穴を形成し、シートバックパッドの成形後にそのヘッドレスト穴内の、互いに対向する上記突部の隙間でできた膜状のバリを除去している。
【0007】
しかしながらこのヘッドレスト穴内の膜状のバリをきれいに除去するのは容易でなく、時間と手間がかかるという問題があり、上記特許文献1から4にも、かかる問題を解決する方法は開示されていなかった。
【0008】
また、ヘッドレスト穴の入口部は丸め半径(R)が小さいため、シートバックパッドに表皮を張る際に潰れ易いという問題があるが、従来のシートバックパッドではヘッドレスト穴の入口部も軟質発泡樹脂で形成しているため、潰れを防止することが容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平02−029285号公報
【特許文献2】特開平04−025415号公報
【特許文献3】特開2001−169866号公報
【特許文献4】特開2008−154839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたもので、軟質発泡樹脂製のシートパッドの貫通部を形成する成形型の構成を改良することで、その貫通部内の膜状のバリを容易にきれいに除去できるようにし、さらにはその貫通部の入口部を、シートパッドに表皮を張る際に潰れにくくする、シートパッド成形型およびその成形型を用いたシートパッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記した問題を解決するため、貫通部を形成するシートパッド成形型について鋭意検討した。その結果、成形型の、貫通部を形成する対をなす凸部の対向面同士の間の隙間に形成される膜状のバリが、その突部の対向面の周縁部で薄肉になれば、容易にきれいに除去でき、また例えバリの取り残しがあっても、シートパッドの正面側や上面側から見て貫通部の奥の方であれば目立つことがないということを見出した。そして貫通穴の入口部を潰れにくくするには、その貫通穴の少なくとも入口部を、シートパッド本体を形成する軟質発泡樹脂よりも硬い材料で形成すれば良いということを併せて知見した。
【0012】
本発明は、上記した知見に基づきなされたもので、その要旨構成は、以下の通りである。
(1)軟質発泡樹脂によりシートパッドを成形する金型であって、下型と上型、もしくは下型と上型と中子型によってシートパッドを成形する成形型において、
前記下型と、前記上型または前記中子型とが、互いに対向する対向面を先端に有して前記シートパッドの貫通部を形成する、対をなす凸部を具え、
前記対をなす凸部の前記対向面同士の間に隙間が開いており、
前記下型および前記上型の少なくとも一方の前記凸部の前記対向面は周縁部に突出部を持っており、
前記下型の前記凸部の前記対向面の突出部は、その下型よりも、もう一方の前記凸部を具える前記上型または前記中子型寄りに位置していることを特徴とする、シートパッド成形型。
【0013】
(2)前記シートパッドはシートバックパッドであり、
前記対をなす凸部は前記シートパッドの貫通部としてヘッドレスト穴を成形することを特徴とする、上記(1)記載のシートパッド成形型。
【0014】
(3)前記突出部は、前記対向面から1mm〜3mm突出していることを特徴とする、上記(1)または(2)記載のシートパッド成形型。
【0015】
(4)上記(1)から(3)までの何れか1記載のシートパッド成形型を用いたシートパッドの製造方法であって、
前記下型の前記凸部の根元から頂点までエラストマーを塗布して硬化させた後、
前記シートパッド成形型内で前記軟質発泡樹脂の原料を発泡および硬化させることで、前記エラストマーを前記軟質発泡樹脂と一体化させることを特徴とする、シートパッドの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシートパッド成形型によれば、シートパッドの貫通部を形成する、対をなす凸部の対向面同士の間に隙間が開いているので、型閉じの際に凸部間にクリアランスを確保でき、その成形型の、前記下型および前記上型の少なくとも一方の凸部の対向面が周縁部に突出部を持っているので、成形したシートパッドの貫通部内に上記対向面間の隙間によって形成される膜状のバリの周縁部の肉厚を中央部よりも薄くして、その周辺部に応力集中を生じ易くし、その膜状のバリを容易にきれいに除去できるようにすることができ、さらに、シートパッドの正面側や上面側を成形する下型の凸部の対向面の突出部が、その下型よりも、もう一方の凸部を具える上型または中子型寄りに位置しているので、その膜状のバリを除去した後の取り残しがあってもシートパッドの正面側や上面側の貫通部の入口から見えにくくして、シートの外観品質を向上させることができる。
【0017】
また、本発明のシートパッド成形型によれば、対をなす凸部がシートパッドの貫通部としてヘッドレスト穴を成形するので、自動車のシートバックパッドの上端部のヘッドレスト穴を成形する際に好適に用いることができる。
【0018】
さらに、本発明のシートパッド成形型によれば、突出部は、対向面から1mm〜3mm突出しているので、膜状のバリの周縁部の肉厚を中央部よりも充分に薄くして、その膜状のバリを充分容易に除去可能なものにすることができる。なお突出高さが1mm未満ではバリの中央部と周縁部との肉厚差が充分でなくなり、突出高さが3mmを超えると突出部自体の強度が充分でなくなる。
【0019】
一方、本発明のシートパッドの製造方法によれば、上記シートパッド成形型の下型の凸部の根元から頂点までエラストマーを塗布して硬化させた後、シートパッド成形型内で軟質発泡樹脂の原料を発泡および硬化させることで、そのエラストマーを軟質発泡樹脂と一体化させるので、下型の凸部が形成する、シートパッドの正面側や上面側の貫通部の入口から奥までの内周面および、対をなす凸部の対向面間の隙間に形成される膜状のバリを、硬化したエラストマーで形成し得て、その膜状のバリをより容易に除去可能なものにすることができるとともに、シートパッドの正面側や上面側の貫通穴の入口部を、シートパッド本体を形成する軟質発泡樹脂よりも硬くして、シートパッドに表皮を張る際に潰れにくくすることができ、この点でもシートの外観品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態のシートパッド成形型で成形するシートバックパッドを示す斜視図である。
【図2】図1中のI−I線に沿う断面図である。
【図3】上記実施形態のシートパッド成形型の縦断面を示す模式図である。
【図4】(a)〜(c)は、上記シートパッド成形型内の凸部へのエラストマーの塗布方法を示す説明図である。
【図5】上記シートパッド成形型内での軟質発泡樹脂の発泡成形中の状態を拡大して示す断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、上記シートパッド成形型で成形したシートバックパッドのヘッドレスト穴内の膜状のバリの除去方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の一実施形態のシートパッド成形型で成形するシートバックパッドの斜視図であり、図2は、図1中のI−I線に沿う縦断面図である。図1中、符号1は、上記シートバックパッドを示す。なお、このシートバックパッド1は、自動車のシートに用いられるものである。符号2はシートバックパッド1の正面側、符号3はシートバックパッド1の背面側、符号4はシートバックパッド1の上端部を示す。
【0022】
図1に示すように、このシートバックパッド1は、上端部4からシートバックパッド1の背面側3に延設されてシートバックパッド1の上部を断面コ字状にする延設部5を有する。また図2に示すように、このシートバックパッド1は、背面側3および延設部5の内側の裏面に、軟質発泡樹脂製のシートパッド本体6と一体に成形されてそのシートパッド本体6を覆う補強布材7を有する。
【0023】
シートバックパッド1の上端部4には、貫通部として、ヘッドレストの二本の支柱を通す二つのヘッドレスト穴8が設けられており、シートバックパッド1の正面側2の、このヘッドレスト穴8の入口部および穴奥の内周面は、シートパッド本体6と一体になったエラストマー層9によって形成されている。
【0024】
このシートバックパッド1のシートパッド本体6を形成する軟質発泡樹脂としては、例えばポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂を用いることができ、本実施形態のシートパッド本体6を形成する軟質発泡樹脂としては、軟質ポリウレタンフォームを用いる。
【0025】
また補強布材7の材料としては、シートバックパッド1の裏面側の形状や中子型13の表面形状に沿うように立体成形できる柔軟な材料が好ましく、例えば、フェルト、不織布、布を用いることができ、さらに、シートバックパッド1の裏面側の形状や中子型13の表面形状に沿うように予め熱成形しておくためには、フェルトまたは不織布が好ましく、特にフェルトが好ましい。本実施形態における補強布材7は、フェルトで構成し、シートバックパッド1の裏面側および延設部内側の形状に沿うように、予め熱成形しておく。フェルトの熱成形方法は、特に制限されない。
【0026】
そしてエラストマー層9の材料としては、例えばポリウレタン系やポリエステル系、ポリアミド系等のエラストマーを用いることができ、シートパッド本体6との接着性を考慮すると、シートパッド本体6と同系等のエラストマーが好ましい。本実施形態におけるエラストマー層9には、ポリウレタンエラストマーを用いる。
【0027】
次に、上記シートバックパッド1を成形するシートパッド成形型について説明する。図3は、本発明の一実施形態である上記シートパッド成形型の縦断面を示す模式図である。図3中、符号11は上記シートパッド成形型を示す。なお、図3には、軟質発泡樹脂を発泡成形する際にシートパッド成形型11に配設する上記補強布材7を併せて図示した。
【0028】
シートパッド成形型11は3ツ割型であり、上型12、中子型13および下型14を有する。図3中、仮想線は、上型12と共に中子型13が型開きされた状態を示す。このシートパッド成形型11において、下型14は、シートバックパッド1の正面側2から上端部4までの形状を形成する。また中子型13は、シートバックパッド1の裏面側の形状および延設部5の内側の形状を形成する。そして上型12は、シートバックパッド1の延設部5の外側の形状を含む背面側3の形状を形成する。
【0029】
なお、符号PLは、上型12と中子型13とのパーティングラインを示す。このパーティングラインPLは、シートパッド成形型11の内部に軟質発泡樹脂原料液が注入され、シートパッド成形型11の内部に軟質発泡樹脂が充満する際に、シートパッド成形型11の内部のガスを抜く通路として機能する。
【0030】
このシートパッド成形型11の下型14および中子型13は、シートバックパッド1の上端部4に上述した二つのヘッドレスト穴8を形成するために、図5に拡大して示すように、互いに対向する対向面15a,16aを先端に有する二対の凸部15,16を具えており、それらの対向面15a,16a同士の間には、図4(c)に示すように、型閉じ状態で所定の隙間t1が開いている。この隙間t1は、好ましくは0.5mm〜1.0mmとする。このように隙間t1を開けることで、型閉じの際に凸部15,16間に、それらの凸部15,16同士の衝突を避けるためのクリアランスを確保することができる。
【0031】
上記凸部15,16の対向面15a,16aはそれぞれ、周縁部に環状の突出部15b,16bを持っており、それらの突出部15b,16bは、図4(c)に示すように、対向面15a,16aからそれぞれ高さh1,h2だけ突出している。この高さh1,h2は、好ましくはそれぞれ1mm〜3mmとする。このように環状の突出部15b,16bを設けることで、成形したシートバックパッド1のヘッドレスト穴8内に後述の如く対向面15a,16a間の隙間によって形成される膜状のゴミの周縁部の肉厚を中央部よりも薄くすることができる。そして突出部15b,16bの高さを1.0mm〜3.0mmとすることにより、その膜状のゴミの周縁部の肉厚を中央部よりも充分に薄くすることができる。なお、高さh1、h2が1mm未満では、後述のバリ9aの中央部と周縁部との肉厚差が充分でなくなり、高さh1、h2が3mmを超えると突出部15b,16b自体の強度が充分でなくなる。
【0032】
ここで、下型14の凸部15の対向面15aが持つ突出部15bの先端は、図3および図4(c)に示すように、下型14の内表面よりも、もう一方の凸部16を具える中子型13の内表面寄りに位置しており、好ましくは下型14の内表面から10mm以上突出させる。これにより、対向面15a,16a間の隙間によって形成される上記膜状のゴミの位置をシートバックパッド1のヘッドレスト穴8内で、シートバックパッド1の上面よりも裏面に近づけて、シートバックパッド1の上面の、ヘッドレスト穴8の入口から奥の方に位置させることができる。
【0033】
次に上記シートパッド成形型11を用いてシートバックパッド1を製造する方法について説明する。
【0034】
先ず、図3に仮想線で示すように、上型12と中子型13とを下型14に対し型開きした状態で、中子型13に補強布材7をセットする。次いでその型開き状態で、図4(a)に示すように、下型14の凸部15の基部から対向面15aおよび突出部15bまでの表面上並びに、凸部15の基部の周囲の下型14の内表面上に、スプレーガン17でポリウレタンプレポリマー18を吹き付けて塗布し、そのポリウレタンプレポリマー18を3〜5秒程度で硬化させて、図4(b)に示すように、ポリウレタンエラストマーからなる厚さt2のエラストマー層9を形成する。この厚さt2は、ポリウレタンプレポリマー18を3〜5秒程度で硬化させるためには、好ましくは1〜5mmとする。
【0035】
次いで上記型開き状態で、下型14内に軟質ポリウレタンフォームの発泡樹脂原料液を所定量注入した後、図3に実線で示すように、上型12および中子型13を下型14に対し型閉じして、シートパッド成形型11の内部にキャビティCを画成する。このとき、図4(c)に示すように、下型14の凸部15の対向面15aおよび突出部15bは、中子型13の凸部16の対向面16aおよび突出部16bに対し、間に前述のように0.5mm〜1.0mmの隙間t1を空けて対向し、これにより、先に凸部15の対向面15aおよび突出部15b上に形成されたエラストマー層9がそれら対向面15aおよび突出部15bと対向面16aおよび突出部16bとで圧縮されて、中央部に対し周縁部が厚さ0.5mm〜1.0mmの薄肉になった、膜状で円盤状のバリ9aが形成される。
【0036】
次いで、シートパッド成形型11のキャビティC内を所定温度で所定時間維持して加熱することにより、軟質ポリウレタンフォームの発泡成形を行なう。図5は、発泡成形中のキャビティC内の状況を示す説明図であり、図示のように、軟質ポリウレタンフォームの発泡樹脂原料液が発泡してキャビティC内の空気や発泡ガスをパーティングラインPLからガス抜きしながらキャビティC内の各部に充満しシートパッド本体6を形成する。このとき、図5および図6(a)に示すように、シートパッド本体6と補強布材7とが一体になるとともにシートパッド本体6とエラストマー層9とが一体となって、シートバックパッド1が形成される。
【0037】
このようにしてシートバックパッド1を成形した後は、シートパッド成形型11の冷却を行なうとともに、上型12および中子型13を下型14に対し型開きして、成形したシートバックパッド1を抜型する。この段階では、シートバックパッド1の各ヘッドレスト穴8内に、図6(b)に示すように、バリ9aが残留している。このためその後、図6(c)に示すように、シートバックパッド1の各ヘッドレスト穴8内のバリ9aを例えば指Fの指先で押して除去し、各ヘッドレスト穴8を貫通させて、図1に示す如きシートバックパッド1を完成させる。この除去の際、バリ9aは、凸部15,16の突出部15b,16bによって周縁部の肉厚を中央部よりも薄くしてその周縁部に応力集中を生じ易くしているので、指先で押すだけで容易にきれいに除去することができる。
【0038】
上述の如くしてシートパッド成形型11によれば、上端部4に二つのヘッドレスト穴8が設けられたシートバックパッド1を形成することができ、特に、各ヘッドレスト穴8を形成する対をなす凸部15,16の対向面15a,16a同士の間に隙間が開いているので、型閉じの際に凸部15,16間にクリアランスを確保でき、その成形型11の下型14の凸部15の対向面15aと中子型13の凸部16の対向面16aとがそれぞれ周縁部に突出部15b,16bを持っているので、成形したシートバックパッド1のヘッドレスト穴8内に対向面15a,16a間の隙間によって形成される膜状のバリ9aの周縁部の肉厚を中央部よりも薄くして、その周辺部に応力集中を生じ易くし、その膜状のバリ9aを容易にきれいに除去できるようにすることができ、さらに、シートバックパッド1の正面側および上面側を成形する下型14の凸部15の対向面15aの突出部15bが、その下型14よりも、もう一方の凸部16を具える中子型13寄りに位置しているので、その膜状のバリ9aを除去した後の取り残しがあっても、その取り残しをシートバックパッド1の正面側や上面側の各ヘッドレスト穴8の入口から見えにくくして、シートの外観品質を向上させることができる。
【0039】
そしてシートパッド成形型11を用いた上述のシートバックパッド1の製造方法によれば、シートパッド成形型11の下型14の凸部15の根元から頂点までエラストマーを塗布して硬化させてエラストマー層9を形成した後、シートパッド成形型11内で軟質発泡樹脂の原料を発泡および硬化させることで、そのエラストマー層9を軟質発泡樹脂製のシートパッド本体6と一体化させるので、下型14の凸部15が形成する、シートバックパッド1の正面側や上面側のヘッドレスト穴8の入口から奥までの内周面および、対をなす凸部15,16の対向面15a,16a間の隙間に形成される膜状のバリ9aを、硬化したエラストマーで形成し得て、その膜状のバリ9aをより容易に除去可能なものにすることができるとともに、シートバックパッド1の正面側や上面側のヘッドレスト穴8の入口部を、シートパッド本体6を形成する軟質発泡樹脂よりも硬くして、シートバックパッド1に表皮を張る際に潰れにくくすることができ、この点でもシートの外観品質を向上させることができる。
【0040】
以上、図示の実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限られず、特許請求の範囲の記載範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、対をなす両凸部15,16の対向面15a,16aにそれぞれ突出部15b,16bを設けたが、下型14の凸部15の対向面15aまたは中子型13の凸部16の対向面16aだけに突出部を設けても良い。
【0041】
そして本発明におけるシートパッドは、シートバックパッド以外でも良く、またシートパッドの貫通部は、ヘッドレスト穴以外の部位でも良く、シートパッドにおける貫通部の位置によっては、対をなす凸部を上型と下型とに設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のシートパッド成形型によれば、シートパッドの貫通部を形成する、対をなす凸部の対向面同士の間に隙間が開いているので、型閉じの際に凸部間にクリアランスを確保でき、その成形型の、前記下型および前記上型の少なくとも一方の凸部の対向面が周縁部に突出部を持っているので、成形したシートパッドの貫通部内に上記対向面間の隙間によって形成される膜状のバリの周縁部の肉厚を中央部よりも薄くして、その周辺部に応力集中を生じ易くし、その膜状のバリを容易にきれいに除去できるようにすることができ、さらに、シートパッドの正面側や上面側を成形する下型の凸部の対向面の突出部が、その下型よりも、もう一方の凸部を具える上型または中子型寄りに位置しているので、その膜状のバリを除去した後の取り残しがあってもシートパッドの正面側や上面側の貫通部の入口から見えにくくして、シートの外観品質を向上させることができる。
【0043】
また、本発明のシートパッドの製造方法によれば、上記シートパッド成形型の下型の凸部の根元から頂点までエラストマーを塗布して硬化させた後、シートパッド成形型内で軟質発泡樹脂の原料を発泡および硬化させることで、そのエラストマーを軟質発泡樹脂と一体化させるので、下型の凸部が形成する、シートパッドの正面側や上面側の貫通部の入口から奥までの内周面および、対をなす凸部の対向面間の隙間に形成される膜状のバリを、硬化したエラストマーで形成し得て、その膜状のバリをより容易に除去可能なものにすることができるとともに、シートパッドの正面側や上面側の貫通穴の入口部を、シートパッド本体を形成する軟質発泡樹脂よりも硬くして、シートパッドに表皮を張る際に潰れにくくすることができ、この点でもシートの外観品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 シートバックパッド
2 正面側
3 背面側
4 上端部
5 延設部
6 シートパッド本体
7 補強布材
8 ヘッドレスト穴
9 エラストマー層
9a バリ
11 シートパッド成形型
12 上型
13 中子型
14 下型
15,16 凸部
15a,16a 対向面
15b,16b 突出部
17 スプレーガン
18 ポリウレタンプレポリマー
C キャビティ
F 指
h1,h2 高さ
PL パーティングライン
t1 隙間
t2 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質発泡樹脂によりシートパッドを成形する金型であって、下型と上型、もしくは下型と上型と中子型によってシートパッドを成形する成形型において、
前記下型と、前記上型または前記中子型とが、互いに対向する対向面を先端に有して前記シートパッドの貫通部を形成する、対をなす凸部を具え、
前記対をなす凸部の前記対向面同士の間に隙間が開いており、
前記下型および前記上型の少なくとも一方の前記凸部の前記対向面は周縁部に突出部を持っており、
前記下型の前記凸部の前記対向面の突出部は、その下型よりも、もう一方の前記凸部を具える前記上型または前記中子型寄りに位置していることを特徴とする、シートパッド成形型。
【請求項2】
前記シートパッドはシートバックパッドであり、
前記対をなす凸部は前記シートパッドの貫通部としてヘッドレスト穴を成形することを特徴とする、請求項1記載のシートパッド成形型。
【請求項3】
前記突出部は、前記対向面から1mm〜3mm突出していることを特徴とする、請求項1または2記載のシートパッド成形型。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか1項記載のシートパッド成形型を用いたシートパッドの製造方法であって、
前記下型の前記凸部の根元から頂点までエラストマーを塗布して硬化させた後、
前記シートパッド成形型内で前記軟質発泡樹脂の原料を発泡および硬化させることで、前記エラストマーを前記軟質発泡樹脂と一体化させることを特徴とする、シートパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−201726(P2010−201726A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48468(P2009−48468)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】