シート保持方法、ディスク製造方法、シート保持装置、転写装置、スパッタ装置、スピンコート装置、2P転写装置及びディスク製造装置
【課題】形状安定性を損なうことなく可撓性を有するシートを保持する。
【解決手段】一側が第2加圧部材14により支持された可撓性のあるシート部材34に対し、他側から環状弾性部材12を圧接して、シート部材34を環状弾性部材12とシート部材34との間に生じる摩擦力によって、歪み等を発生させることなく拘束する。そして環状弾性部材12を環をたどる方向の中心線を中心に回転させることによりシート部材34に対し放射状の張力を作用させることによりシート部材34が例えば熱応力等により変形することを回避する。
【解決手段】一側が第2加圧部材14により支持された可撓性のあるシート部材34に対し、他側から環状弾性部材12を圧接して、シート部材34を環状弾性部材12とシート部材34との間に生じる摩擦力によって、歪み等を発生させることなく拘束する。そして環状弾性部材12を環をたどる方向の中心線を中心に回転させることによりシート部材34に対し放射状の張力を作用させることによりシート部材34が例えば熱応力等により変形することを回避する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート保持方法、ディスク製造方法、シート保持装置、転写装置、スパッタ装置、スピンコート装置及びディスク製造装置に係り、さらに詳しくは、可撓性を有するシート部材を保持するシート保持方法、該保持方法を用いたディスク製造方法、可撓性を有するシート部材を保持するシート保持装置、該シート保持装置を用いた転写装置、スパッタ装置及びスピンコート装置、2P転写装置並びに可撓性を有するシート部材に記録層を形成してディスクを製造するディスク製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送のデジタル化が開始されるなど、情報のデジタル化に伴い記録媒体としてのディスクへ記録される情報の高密度化に対する要求が高まっている。この要求に対する主な方策としては、情報の記録又は再生のために用いられるレーザ光のスポット径を小さくすることがあげられる。
【0003】
レーザ光のスポット径を小さくするには、レーザ光の波長を短くして対物レンズの開口数(NA)を大きくすることが有効であるが、レーザ光の波長を短くすると対物レンズを含む光学系の焦点深度の狭小化を招いてしまいフォーカスサーボ精度を向上させる必要が生じる。また、対物レンズのNAが増大すると、その対物レンズとディスクの記録面との距離を小さく設定する必要があるため、ディスクの面ぶれを抑制する必要がある。その理由は、始動時のフォーカスサーボを開始する直前に対物レンズを含むピックアップとディスクとが接触するなどの事態を回避する必要があるからである。
【0004】
このような背景から、可撓性を有するシート部材に記録層などが成膜されたディスク(以下、可撓性ディスクともいう)の開発がすすめられ、このディスクを安定化板上で回転させることにより、ディスクに生じる面ぶれを空気力学的に抑制する手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
従来から、可撓性ディスクに用いられるシート部材はその可撓性による取り扱いの困難性から、例えば記録層などの成膜時には、シート部材を所定の一方向に張力をかけた状態で成膜を行なう工法や(例えば、特許文献2参照)、円盤状のシート部材片に対し放射状に張力をかけた状態で成膜を行なう工法(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)が採用されてきた。
【0006】
特許文献2に記載の方式は、シート部材をロール状の反物として供給し、シート部材の一方向へ張力を与えることにより形成した面に成膜を行なう方式である。この方式では、可撓性のある部材をいわゆる剛体ライクに扱うことができ、成膜時にシート部材が受けるストレスを低減することができるが、張力が作用する方向にシート部材が引き伸ばされてしまうという不都合がある。特に、情報記録媒体の作成は、シート部材に形成する記録層の精度、例えば溝の真円度やシート部材自体の平坦性などの影響を最も受けやすいものの1つであるため、かかる不都合は新たな課題の1つとなってしまう。
【0007】
特許文献3に記載の方法は、外周を固定した円盤状のシート部材(以下、シート部材片という)に、熱収縮等により外周から中心に向かって張力を生じさせることにより面を形成し、この面上に成膜を行なう方式であり、特許文献4に記載の方法は、シート部材片の外周に固定したリング状の部材を介して、シート部材に放射状の張力を与えて面を形成し、この面上に成膜を行なう方式である。これらの方法では、シート部材片に適正な放射状の張力を付与することができるが、シート部材片の外周部近傍の平坦性が失われてしまい、大量生産が可能なロール工法への応用は困難と考えられる。
【0008】
今後は可撓性ディスクのみならず、例えば非特許文献1に記載されているように、硬い基板とシート部材を張り合わせることによりディスクを構成するタイプの情報記録媒体においても、シート部材側にグルーブ等の光ディスクに必要な機能を持たせ、基板側の機能層と合わせて多層化するような検討もすすめられており、製品の品質を維持しつつ大量生産が可能な工法の実現が期待されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第20020186636号明細書
【特許文献2】特開2002−322561号公報
【特許文献3】特開2004−319035号公報
【特許文献4】特開2005−11411
【非特許文献1】O PLSE E vol.20No2 P.188
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、形状安定性を損なうことなくシート部材を効果的に保持することが可能なシート保持方法及びシート保持装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、シート部材の形状安定性を損なうことなく、生産効率の向上を図ることが可能なディスク製造方法、転写装置、スパッタ装置、スピンコート装置及びディスク製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、可撓性を有するシート部材を保持するシート保持方法であって、環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に圧接させることにより、前記環状弾性部材を介して発生させた第1の加圧力と、該第1の加圧力に対向する第2の加圧力とにより、前記シート部材を保持する工程を含むシート保持方法である。
【0013】
これによればシート部材は、一方の面に作用する環状弾性部材がシート部材に対し圧接されることによる発生する第1の加圧力と、他方の面に作用する第1の加圧力に対向する第2の加圧力とにより保持される。これにより、保持されたシート部材に対し外力や熱応力等が作用したとしても、環状弾性部材とシート部材の一方の面との間に生じる摩擦力によってシート部材に生じる歪み等の発生が回避され、結果的に形状安定性を損なうことなくシート部材を効果的に保持することが可能となる。
【0014】
この場合において、請求項2に記載のシート保持方法の如く、前記環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に圧接させた状態で、前記環状弾性部材を環をたどる方向の中心線を中心に回転させて、前記シート部材に対し放射状の張力を作用させる工程を更に含むこととすることができる。
【0015】
請求項1及び2に記載の各シート保持方法において、請求項3に記載のシート保持方法の如く、前記シート部材は、長尺のシート部材であり、前記シート部材の一端側と他端側を、一対のローラ部材に巻きつけ、一方のローラを回転させることで前記シート部材に発生する張力を、前記第2の加圧力とすることとすることができる。
【0016】
請求項1〜3に記載の各シート保持方法において、請求項4に記載のシート保持方法の如く、前記第1の加圧力は、少なくとも前記環状弾性部材に接触する加圧面を有する第1の加圧部材により前記環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に押し付けることで発生させることとすることができる。
【0017】
この場合において、請求項5に記載のシート保持方法の如く、少なくとも前記シート部材を介して前記環状弾性部材と対向する加圧面を有する第2の加圧部材を、前記シート部材の前記他方の面側に配置することで、前記第2の加圧力を発生させることとすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、シート部材に所定の処理を施してディスクを製造するディスク製造方法であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて前記シート部材を保持し、その保持されたシート部材に対し所望の溝又はピットを形成する工程と;前記所望の溝又はピットが形成されたシート部材を、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて保持し、その保持されたシート部材に対し記録層を形成する工程と;前記記録層が形成されたシート部材を、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて保持し、その保持されたシート部材の記録層に対し保護層を形成する工程と;を含むディスク製造方法である。
【0019】
これによれば、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法によりシート部材が保持された状態で、シート部材の被保持領域に対し順次溝又はピットの形成、記録層の形成及び保護層の形成が行なわれる。したがって、上記各処理のためにシート部材を保持した際にシート部材が変形することがなく形状安定性が損なわれることがない。また、例えばシート部材をロール状にして供給するロール工法にも容易に適用することができ、シート部材片を使用する工法と比較して生産性の向上を図ることが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、可撓性を有するシート部材を保持するシート保持装置であって、前記シート部材の一方の面側に配置された環状弾性部材と;前記シート部材の面の法線方向に移動可能で、その移動により前記環状弾性部材を加圧して前記シート部材の一方の面に圧接させる第1の加圧部材と;前記シート部材の他方の面側に該他方の面から所定のクリアランスを介して配置され、前記環状弾性部材に対向する加圧面を有する第2加圧部材と;を備えるシート保持装置である。
【0021】
これによれば、シート部材は一方の面側に配置された第1加圧部材に加圧される環状弾性部材と、他方の面側に配置された第2の加圧部材とにより挟持されることにより保持される。これにより、保持されたシート部材に対し外力や熱応力等が作用したとしても、これらの力は環状弾性体との間に生じる摩擦力と環状弾性部材の弾性力により環状弾性部材の中心から外側に向かう放射状の張力によって打ち消される。したがって、シート部材の歪み等の発生が回避され、結果的に形状安定性を損なうことなくシート部材を効果的に保持することが可能となる。
【0022】
この場合において、請求項8に記載のシート保持装置の如く、前記第1の加圧部材の前記シート部材を加圧する加圧面は、その外周に沿った線が前記環状弾性部材の環をたどる方向の中心線よりも内側で、前記環状弾性部材の内周に沿った線よりも外側に位置する形状を有していることとすることができる。
【0023】
この場合において、請求項9に記載のシート保持装置の如く、前記第1の加圧部材は、前記加圧面から離れた位置に、その外周に沿った線が、前記環状弾性部材の環をたどる方向の中心線よりも外側に位置するフランジ部を有することとすることができる。
【0024】
請求項7に記載のシート保持装置において、請求項10に記載のシート保持装置の如く、前記第1の加圧部材の側面には、前記環状弾性部材に対向する側の面からその反対側に行くに従って、その外径が大きくなるテーパ部が形成されていることとすることができる。
【0025】
この場合において、請求項11に記載のシート保持装置の如く、前記テーパ部は、凹面状の湾曲面であることとすることができる。
【0026】
この場合において、請求項12に記載のシート保持装置の如く、前記テーパ部を円で近似したときの湾曲面の曲率半径は、前記環状弾性部材の断面を円に近似したときの曲率半径よりも大きいこととすることができる。
【0027】
請求項8〜12に記載の各シート保持装置において、請求項13に記載のシート保持装置の如く、前記第2加圧部材の前記シート部材に対向する面には、摩擦係数の小さい潤滑膜が形成されていることとすることができる。
【0028】
請求項7〜13に記載の各シート保持装置において、請求項14に記載のシート保持装置の如く、前記環状弾性部材には、前記加圧面の外周に対応した切欠部が形成されていることとすることができる。
【0029】
請求項7〜14に記載の各シート保持装置において、請求項15に記載のシート保持装置の如く、前記第1の加圧部材には、前記加圧面からその反対側の面まで貫通する中空部が形成されていることとすることができる。
【0030】
請求項7〜15に記載の各シート保持装置において、請求項16に記載のシート保持装置の如く、前記第2加圧部材は、前記シート部材に対向する側の面からその反対側の面まで貫通する中空部が形成されていることとすることができる。
【0031】
請求項17に記載の発明は、請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;前記シート保持装置に保持されたシート部材にエンボス処理を施す処理装置と;を備える転写装置である。
【0032】
これによれば、転写装置は請求項7〜16のいずれかに記載のシート保持装置を備えている。したがって、シート部材を形状安定性を損なうことなく保持することができる。また、例えばシート部材をロール状にして供給するロール工法に適用することで生産性の向上を図ることが可能となる。
【0033】
請求項18に記載の発明は、請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;前記保持装置に保持されたシート部材に対し成膜を行なう成膜装置と;を備えるスパッタ装置である。
【0034】
これによれば、スパッタ装置は請求項7〜16のいずれかに記載のシート保持装置を備えている。したがって、シート部材を形状安定性を損なうことなく保持することができる。また、例えばシート部材をロール状にして供給するロール工法に適用することで生産性の向上を図ることが可能となる。
【0035】
この場合において、請求項19に記載のスパッタ装置の如く、前記成膜装置は、前記シート保持装置に保持されたシート部材と、第1の加圧部材又は第2の加圧部材と、前記成膜装置のスパッタ源により所定の真空度に維持された空間を介して、前記成膜装置のスパッタターゲットを前記シート部材に射出して該シート部材に対し成膜を行なうこととすることができる。
【0036】
請求項20に記載の発明は、請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;前記シート部材に対し保護膜を形成するスピンコータと;を備えるスピンコート装置である。
【0037】
これによれば、スピンコート装置は請求項6〜15のいずれかに記載のシート保持装置を備えている。したがって、シート部材を形状安定性を損なうことなく保持することができる。また、例えばシート部材をロール状にして供給するロール工法に適用することで生産性の向上を図ることが可能となる。
【0038】
請求項21に記載の発明は、請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;前記保持装置に保持されたシート部材に対し所望の溝又はピットを形成するスピンコータと;を備える2P転写装置である。
【0039】
これによれば、2P転写装置は請求項6〜15のいずれかに記載のシート保持装置を備えている。したがって、シート部材を形状安定性を損なうことなく保持することができる。また、例えばシート部材をロール状にして供給するロール工法に適用することで生産性の向上を図ることが可能となる。
【0040】
請求項22に記載の発明は、シート部材に対し記録層を形成してディスクを製造するディスク製造装置であって、請求項17に記載の転写装置と;請求項18又は19に記載のスパッタ装置と;請求項20に記載のスピンコート装置と;を備えるディスク製造装置である。
【0041】
これによれば、ディスクの製造過程においてシート部材は形状安定性を損なうことなく保持される。また、請求項17に記載の転写装置と、請求項18又は19に記載のスパッタ装置と、請求項20に記載のスピンコート装置はロール工法に好適である。したがって、ロール工法に容易に適用することができ生産性の向上を図ることが可能となる。
【0042】
請求項23に記載の発明は、シート部材に対し記録層を形成してディスクを製造するディスク製造装置であって、請求項18又は19に記載のスパッタ装置と;請求項20に記載のスピンコート装置と;請求項21に記載の2P転写装置と;を備えるディスク製造装置である。
【0043】
これによれば、ディスクの製造過程においてシート部材は形状安定性を損なうことなく保持される。また、請求項18又は19に記載のスパッタ装置と、請求項20に記載のスピンコート装置と、請求項21に記載の2P転写装置はロール工法に好適である。したがって、ロール工法に容易に適用することができ生産性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1(A)及び図1(B)に基づいて説明する。図1には第1の実施形態に係る保持装置10の縦断面図が、該保持装置10に保持されるシート部材34とともに示されている。
【0045】
シート部材34としては、一例として厚さ100μmのポリカーボネイト樹脂からなるシートが用いられている。このシート部材34は、図1(A)に示されるように、X軸方向に所定間隔を隔てて配置され、ともに長手方向をY軸方向とする供給ローラ30及び巻取りローラ32相互間に所定の張力を付与された状態で架設されている。すなわち、シート部材34は、供給ローラ30に巻かれた状態からその一端が+X方向に引き出され、所定の張力を付与された状態で巻き取りローラ32に巻かれている。シート部材34は巻取りローラ32が図1(A)における時計回りに回転することにより、そのX軸方向の張力を維持した状態で巻取りローラ32により巻き取られるとともに供給ローラ30から順次送り出される。
【0046】
保持装置10は、図1(A)に示されるように、円環状の弾性体からなる環状弾性部材12、肉厚と軸方向の長さとがほぼ同程度の円筒状の部材(断面が矩形の円環状の部材)から成る第1加圧部材20及び該第1加圧部材20とほぼ同形状の円筒状の部材から成る第2加圧部材14を備えている。
【0047】
環状弾性部材12としては、一例として、内径149.5mm、断面が直径8.4mm程度の円形状のシリコンゴム製のOリングが用いられている。そして、この環状弾性部材12は、不図示の支持部材により、シート部材34の上方(+Z側)でZ軸方向に沿って昇降自在に支持されている。
【0048】
第1加圧部材20としては、一例として、ステンレス鋼を素材とし、内径150mm、外径170mmで高さが20mmの円筒状の部材が用いられている。この第1加圧部材20の−Z側の面には環状弾性部材12の形状に対応した深さ1mm、幅3mmで内径156mmの案内溝が形成されている。この第1加圧部材20は、環状弾性部材12の上方に配置され、不図示の駆動機構によりZ軸方向に沿って駆動可能となっている。
【0049】
第2加圧部材14は、上記第1加圧部材20と同様に構成され、シート部材34の下方に所定のクリアランス(例えば、1mm以下程度)を介して配置されている。そして、この第2加圧部材14のシート部材34に対向する面には、摩擦係数の小さい潤滑膜、例えばPTFEの撥水性粉末を分散させたニッケル複合メッキ膜が形成されている。
【0050】
上記のように構成された保持装置10では、まず駆動機構(不図示)により第1加圧部材20が下方に駆動されると、第1加圧部材20は環状弾性部材12に当接する。そして、駆動機構により第1加圧部材20がさらに下方に駆動されることで、第1加圧部材20は環状弾性部材12を押し下げつつ下降し、最終的には、図1(B)に示されるように、環状弾性部材12を介して第2加圧部材14とともにシート部材34を挟持する。この図1(B)の状態では、環状弾性部材12は、僅かに押しつぶされて、その断面が扁平な円形に変形している。これにより、シート部材34の環状弾性部材12に接した円形部分に囲まれた領域(以下、適宜「被保持領域」という)は、その外周縁部が隙間なく環状弾性部材12と第2加圧部材14とによって挟持され、シート部材34の上面と環状弾性部材12との間に生じる、第1加圧部材20による弾性環状部材12に対する押圧力を垂直抗力とする摩擦力の作用により平坦に保った状態で保持される。ここで、第2加圧部材14のシート部材34に対向する面には、摩擦係数の小さい潤滑膜が形成されているので、シート部材34と第2加圧部材14との間の摩擦抵抗が小さくなり、より効率的に環状弾性部材12により発生させる張力をシート部材34に付与できる。
【0051】
以上説明したように、本第1の実施形態に係る保持装置10によると、シート部材34の被保持領域は平坦に保たれたまま、環状弾性部材12と第2加圧部材14とによって保持される。したがって、例えば、シート部材34に温度変化による熱応力が生じたり、外力が加わったりした場合にもそのストレスを被保持領域内で均一に分散させることが可能となっている。
【0052】
また、シート部材34を環状弾性部材12と第2加圧部材14とにより保持する場合には、シート部材34を環状弾性部材12と第2加圧部材14とによって単に挟持する動作が行なわれるだけであるため、例えば特開2005−11411号公報に開示されている方法のように、被保持体であるシート部材34の被保持領域の周囲に変形が生じることがない。したがって、保持装置10は後述するロール工法を用いたディスクの製造に好適である。
【0053】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図2(A)〜図3(B)に基づいて説明する。ここで、重複説明を避ける観点から、前述した第1の実施形態と同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに説明を簡略し又は省略するものとする。
【0054】
図2(A)には本第2の実施形態に係る保持装置10Aの縦断面図が、該保持装置10Aによって保持されるシート部材34とともに示されている。また、図2(B)には図2(A)の平面図が示されている。これらの図2(A)、図2(B)と、図1(A)と比較すると分かるように、この保持装置10Aは、前述した第1加工部材20に代えて、第1加圧部材20Aが設けられている点が、前述した第1の実施形態に係る保持装置10と異なるのみで、その他の部分の構成は、保持装置10と同様になっている。
【0055】
第1加圧部材20Aとしては、一例として、ステンレス鋼を素材とし、内径135mm、外径150mmで高さが20mmの円筒状の部材が用いられている。この第1加圧部材は環状弾性部材12の上方に配置され、不図示の駆動機構によりZ軸方向に沿って駆動可能となっている。
【0056】
上記のように構成された保持装置10Aでは、まず駆動機構(不図示)により第1加圧部材20Aが下方に駆動されると、前述した第1の実施形態と同様にして、図3(A)に示されるように、第1加圧部材20Aに下方に付勢された環状弾性部材12が第2加圧部材14とともにシート部材34を挟持する状態となる。
【0057】
そして、この状態から第1加圧部材20Aが更に下降すると、図3(A)に示されるように、環状弾性部材12は、環をたどる方向の中心線を中心として矢印で示されるようにシート部材34に対し相対的に回転する。これにより、シート部材34の被保持領域は、図3(B)中に矢印で示されるように中心から外側に向う放射状の摩擦力(張力)が作用した状態で、環状弾性部材12と第2加圧部材14とにより挟持される。ここで、第2加圧部材14のシート部材34に対向する面には、摩擦係数の小さい潤滑膜が形成されているので、シート部材34と第2加圧部材14との間の摩擦抵抗が小さくなり、より効率的に環状弾性部材12により発生させる張力をシート部材34に付与できる。
【0058】
以上説明したように、本第2の実施形態に係る保持装置10Aによると、前述した第1の実施形態と同等の効果を得られる他、環状弾性部材12を図3(A)に示されるように回転させることができるので、図3(B)に示されるようにシート部材34の被保持領域を、その中心から外側に向かって放射状の張力が作用した状態で保持することが可能になる。
【0059】
また、本第2の実施形態に係る保持装置10Aによると、シート部材34を環状弾性部材12と第2加圧部材14とによって単に挟持する動作と、環状弾性部材14を回転させて被保持領域の中心から外側に向かって張力を作用させる動作が行なわれるだけであるため、例えば特開2005−11411号公報に開示されている方法のように、被保持体であるシート部材34の被保持領域の周囲に変形が生じることがない。したがって、保持装置10Aは後述するロール工法を用いたディスクの製造に好適である。
【0060】
ここで、本第2の実施形態では、第1加圧部材20Aは、一例として外径が環状弾性部材12の内径(149.5mm)よりも僅かに大きい外径(150mm)を有することとしたが、これに限らず、第1加圧部材20Aは、その外径をD1、弾性環状部材12の内径及び外径をそれぞれDi、Doとして、次式(1)に示される条件を満たすものであればよい。すなわち、第1加圧部材20Aの形状としては、次式(1)を満たす範囲内で環状弾性部材12の材質又は断面形状などに応じて最適な形状を選択することができる。
【0061】
Di<D1<(Di+Do)/2 … (1)
【0062】
《変形例1》
次に、第2の実施形態の変形例1について説明する。この変形例1に係る保持装置10Bは、上記第2の実施形態において、第1加圧部材20Aに代えて、例えば図4(A)に示されるように、筒状部20aと、この筒状部20aの上部外周に設けられたフランジ部20bとを有する段つき円筒状の部材から成る第1加圧部材20Bを用いたものである。
【0063】
筒状部20aは、一例として、外径及び内径がそれぞれ150mm及び135mmで、高さが20mmであり、フランジ部20bは、一例として外径が170mmで筒状部20aと同心の円筒状部から成り、上端面が筒状部20aの上端面から、その上端面の下方15mmの位置までの筒状部20aの外周部に一体的に形成されている。
【0064】
本変形例1の保持装置10Bによると、図4(B)に示されるように、弾性環状部材12をシート部材34に対し相対回転して被保持領域の中心から外側に向かって張力を作用させた後に、フランジ部20bの下面により環状弾性部材12をシート部材34に対して効果的に押圧することができ、これにより、前述の保持装置10Aに比べてよりシート部材の保持力を強めることができる。
【0065】
ここで、本変形例1では、第1加圧部材20Bとしては、筒状部の上端から15mm下方までの部分に設けられ、その外径が170mmであるフランジ部20bを有するものを用いたが、これに限らず、第1加圧部材20Bとしては、フランジ部20bの外径D2が、次式(2)に示される条件を満たすものであればよい。
【0066】
(Di+Do)/2≦D2…(2)
【0067】
《変形例2》
次に、第2の実施形態の変形例2について説明する。この変形例2に係る保持装置10Cは、上記第2の実施形態において、第1加圧部材20Aに代えて、例えば図5(A)に示されるように、その下端から上端に向かって行くにつれて外径が大きくなるようなテーパ部を有する第1加圧部材20Cを用いたものである。
【0068】
この第1加圧部材20Cは、その下端の外径が、環状弾性部材12の内径(149.5mm)よりも僅かに小さく、上端部の最大外径が環状弾性部材12の外径より僅かに大きく設定されている。
【0069】
この変形例2に係る保持装置10Cによると、前述した変形例1と同等の効果を得られる他、図5(B)からも明らかなように、テーパ部で環状弾性部材12を押圧することにより、テーパ部の加圧面と環状弾性部材12との接触面積を大きくし、前記回転力を効率的に発生させることができる。また、第1加圧部材20CのZ軸方向の位置を上下に変更することで、シート部材34の被保持領域に放射状に作用する張力の大きさを容易に調整することが可能となる。
【0070】
《変形例3》
次に、第2の実施形態の変形例3について説明する。この変形例3に係る保持装置10Dは、上記第2の実施形態において、第1加圧部材20Aに代えて、例えば図6(A)に示されるように、環状弾性部材12対して凹状に湾曲したテーパ部を有する第1加圧部材20Dを用いたものである。
【0071】
この第1加圧部材20Dは、その下端の外径が、環状弾性部材12の内径(149.5mm)よりも僅かに小さく、上端部の最大外径が環状弾性部材12の外径より僅かに大きく設定されている。また、この場合の加圧面(テーパ部)の曲率は、例えば円で近似したときの曲率半径をR1とし、環状弾性部材12の断面の曲率半径をR2とすると、R1>R2の関係が成立していることが望ましい。
【0072】
この変形例3に係る保持装置10Dによると、前述した変形例2と同等の効果を得られる他、変形例2よりもテーパ部の加圧面と環状弾性部材12との接触面積を大きくして、前記回転力を強めることができる。
【0073】
なお、上記各実施形態及び各変形例では、第1加圧部材20,20A,20B,20C,20D及び第2加圧部材14としては、無端環状部材(筒状部材)を用いたが、これに限らず、環状弾性部材12を加圧してシート部材34に押圧することができる面を有していればよい。例えば、第1加圧部材として、図7に代表的に示されるような、前述の第1加圧部材20Aにおいて−Z側端部が櫛歯状になった第1加圧部材20Eを用いることとしてもよい。
【0074】
また、環状弾性部材12の断面形状は、円形に限らず、図8(A)に示されるように、例えば第1加圧部材20の端部が嵌合する矩形状の切欠部が形成されていてもよい。かかる場合には、環状弾性部材12を第1加圧部材20に容易に固定することが可能になる。また、この構成では、環状弾性部材12をOリングとした場合に発生する可能性がある、加圧動作時の第1加圧部材とシート部材との接触を生じづらくする効果もある。この他、環状弾性部材12の断面形状は、図8(B)若しくは図8(C)に示されるように、円形以外の三角形状や四角形状であってもよい。
【0075】
また、環状弾性部材12はOリングなどのように必ずしも一体的に成形されている必要はなく、例えば円周上に断続的に配置された弾性体からなる部材を用いることも可能であるが、シート部材34に対し放射状に張力を作用させるためには連続した環状弾性体を環状弾性部材12として用いることが望ましい。また、例えば圧縮バネの一端と他端を接続し、環状弾性部材12を構成してもよい。
【0076】
また、環状弾性部材12は被保持領域の形状に合わせて例えば、楕円状等の円環状以外の形状のものを用いてもよい。この場合においても、シート部材34の被保持領域の外周部に変形が生じることを効果的に回避することが可能である。
【0077】
また、上記各実施形態及び各変形例では、環状弾性部材12と第1加圧部材20,20A,20B,20C,20Dとがシート部材34の上方に配置され、第2加圧部材14が下方に配置されている場合について説明したが、これに限らず、環状弾性部材12と第1加圧部材20,20A,20B,20C,20Dとがシート部材34の下方にあり、第2加圧部材14が上方に配置されていてもよい。また、シート部材34を上方又は下方の一方から他方へ移動させる場合などには、環状弾性部材12と第1加圧部材20,20A,20B,20C,20Dとがシート部材34の一側に配置され、第2加圧部材14が他側に配置されていればよい。
【0078】
また、上記実施形態では、シート部材34が供給ローラ30と巻取りローラ34により弾性環状部材12と第2加圧部材14の間に張り渡されている場合につて説明したが、供給ローラ30と巻取りローラ34とによりシート部材34に対し損傷や変形が生じない程度に張力を加えることで、第2加圧部材14の配置を省略することも可能である。また、上記1対のローラ30,32に加えて、テンションローラ等を別途配置して、シート部材34にX軸方向に作用する張力をさらに加えることとしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態ではシート部材34が供給ローラに巻回されている場合について説明したが、これに限らず、例えば被保持領域に少し余裕を持たせた大きさに裁断されたシート部材片34’を用いることも可能である。この場合には、図9(A)及び図9(B)を総合するとわかるように、保持装置10Aの第1加圧部材と第2加圧部材とにより、環状弾性部材12とシート部材片34’とを挟んで加圧し、前記環状弾性部材12と第2加圧部材14とにより、シート部材片34’の被保持領域(被保持面)に放射状に張力を作用させた状態で挟持している。また、断面U字状(コ字状)の固定部材16A,16B,16C,16Dにより第1加圧部材20Aを第2加圧部材14に対し4方向から固定し、固定部材16A,16B,16C,16Dによって加圧力を保持している。固定部材の形態、個数、配置などはこれに限られるものではなく、前記加圧状態を保持できる機構であれば良い。このようにすれば、シート部材片34’をあたかも剛体製のディスクのように取り扱うことが可能になる。
【0080】
《第3の実施形態》
次に、上述した保持装置のうち代表的に保持装置10Dを用いた、第3の実施形態に係るディスク製造装置について図10〜図13に基づいて説明する。なお、前述した各実施形態及び各変形例と同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに説明を簡略し又は省略するものとする。
【0081】
この第3の実施形態に係るディスク製造装置100は、図10に示されるように、転写装置110、スパッタ装置120、スピンコート装置130などから構成されている。
【0082】
転写装置110は、図11(A)に示されるように、保持装置10D、保持装置10Dの上方に配置される第1エンボス用加圧板50、保持装置10Dの下方に配置される第2エンボス用加圧板52、第2エンボス用加圧板52に固定されたスタンパ54及び不図示の加熱機構などを含んで構成されている。
【0083】
第1エンボス用加圧板50は、外径が保持装置10Dの第2加圧部材14の内径よりも小さい円柱状の部材からなり、不図示の駆動機構により第2加圧部材の中空部を介してZ軸方向へ移動可能となっている。
【0084】
第2エンボス用加圧部材52は、外径が保持装置10Dの第1加圧部材20Dの内径よりも小さい円柱状の部材からなり、第1エンボス用加圧板50と同様に不図示の駆動機構により第1加圧部材20Dの中空部を介してZ軸方向へ移動可能となっている。
【0085】
スタンパ54は、例えば溝幅0.16μm、溝深さ0.1μm、トラックピッチ0.32μmの溝部が形成され、第2エンボス用加圧部材52の+Z側の面に固定されている。
【0086】
上記のように構成された転写装置110では、まず保持装置10Dによりシート部材34を保持することにより被保持領域に放射状の張力を作用させた状態として、過熱機構(不図示)により保持面を加熱する。そして、図11(B)に示されるように、第1エンボス用加圧板50と第2エンボス用加圧板52とによりシート部材34の被保持領域を挟持して加圧することでスタンパ54の表面形状を被保持領域に転写する。このように、シート部材34の被保持領域に放射状に張力を作用させた状態で、上述したホットエンボス処理を行なうことにより、非常に優れた転写精度を得ることができる。また、ホットエンボス処理のストレスによるシート部材34の歪みも効果的に抑制することができる。
【0087】
前記スパッタ装置120は、図12に示されるように、保持装置10D、保持装置10Dの下方に配置されスパッタターゲット56をシート部材34の被保持領域に成膜させるスパッタ源55、不図示のガス供給装置及びガス排気装置、並びにこれらを収容するとともに内部環境を所定の真空度に維持する真空チャンバ60等を備えている。
【0088】
上記のように構成されたスパッタ装置120では、まず保持装置10Dによりシート部材34を保持することにより被保持領域に放射状の張力を作用させた状態とする。そして、ガス供給装置(不図示)により真空チャンバ60の内部空間に、例えばArガスを導入しつつイオン化させたArをスパッタターゲット56に衝突させて、スパッタ源55からスパッタターゲット56を第1加圧部材20Dの中空部を介してシート部材34の被保持領域に弾き飛ばすことにより被保持領域に対し、一例として厚さ120nmのAg反射層、厚さ7nmの(ZrO2−Y2O3)−SiO2層、厚さ10nmのAgInSbTeGe層、厚さ25nmのZnS−Si3N4層を順次成膜する。このように、シート部材34の被保持領域に放射状に張力を作用させた状態でスパッタ成膜を行なうことにより、成膜時のストレスによるシート部材34の歪みを効果的に抑制することができる。
【0089】
前記スピンコート装置130は、図13に示されるように、保持装置10D、UV光源59、スピンコータ57、スタンパ58等を備えている。
【0090】
スピンコータ57は、外径が第1加圧装置20Dの内径よりも小さい円筒状の部材からなり、不図示の駆動機構により第1加圧部材の中空部を介してZ軸方向へ移動可能となっている。また、スピンコータ57の+Z側の面には、シート部材34に対向する面が鏡面加工されたスタンパ58が固定され、このスタンパ58上には、不図示の供給装置により光硬化性樹脂が供給されることによる塗布層が形成されている。
【0091】
UV光源59は、保持装置10Dの上方に配置され、第2加圧部材14の中空部を介してシート部材34の被保持領域を紫外光により照明する。
【0092】
上記のように構成されたスピンコート装置130では、まず保持装置10Dによりシート部材34を保持することにより被保持領域に放射状の張力を作用させた状態とする。そして、スピンコータ57を上方(+Z方向)へ移動して、スタンパ58上に形成された塗布層をシート部材34の被保持領域に合わせ、シート部材34の上方からUV光源59により被保持領域を照明し光硬化性樹脂を硬化させることにより、例えば厚さ10μm程度の保護膜を形成する。このように、シート部材34の被保持領域に放射状に張力を作用させた状態で上述したスピンコートを行なうことにより、転写時のストレスによるシート部材34の歪みを効果的に抑制することができる。
【0093】
なお、スピンコート装置130では、スタンパ58に代えて、上記転写装置110に用いられるスタンパ54を使用することにより、上記転写装置110と同様に溝またはピットの転写を行なうことができる。
【0094】
ディスク製造装置100では、図10に示されるように、巻取りローラ32を回転させることによりシート部材34を、上述した転写装置110、スパッタ装置120及びスピンコート装置130に対し相対的に移動させて、シート部材34の被保持領域にホットエンボス処理、スパッタ成膜、スピンコートを順次行ない、被保持領域から外径120mmの部分を不図示のカットパンチ機により切り抜くことにより、可撓性を有するシート部材34をディスク基板とするディスクが製造される。
【0095】
なお、ディスク製造装置100においては、転写装置110によるホットエンボス処理を行わずに、スピンコート装置130により、溝又はピットが形成されたスタンパ54を用いた2P転写を行なうこととしてもよい。
【0096】
発明者が、上記ディスク製造装置100と同様の装置を用いて、上述と同様の方法で、ディスクを実際に製造し、そのディッスクの真円度及び最大反り高を計測した結果、そのディスクの真円度及び最大反り高はそれぞれ20μm及び0.5mmであった。ここで、反り高とはディスク中心を基準とする平坦面とディスクの所定位置との距離をいうものとし、最大反り高とは反り高の最大値をいうものとする。次表1には、従来のディスク装置によりそれぞれホットエンボス処理、スパッタ成膜及びスピンコートを行なった後にそれぞれ測定したときのディスクの真円度及び最大反り高が示されている。次表1に示されるように、従来のディスク製造装置では、ホットエンボス処理を行った段階でディスクの真円度及び最大反り高がそれぞれ35μm、2.5mm以上となり、スピンコートを行なった後にはディスクの真円度及び最大反り高がそれぞれ70μm、5.0mm以上となる。これに対し、ディスク装置100を用いた場合には各処理を経て完成した状態のディスクであっても真円度及び最大反り高は、それぞれ20μm及び0.5mmであったので、明らかに次表1に示される値を下回っていることがわかる。
【0097】
【表1】
【0098】
以上説明したように、ディスク製造装置100によると、保持装置10Bによりシート部材34が保持された状態で、シート部材34の被保持領域に対しホットエンボス処理、スパッタ成膜及びスピンコートを行なうことにより、完成されたディスクの真円度及び最大反り高を従来に比較して小さく抑えることが可能となる。すなわち、各処理ごとにシート部材34が変形することがなく、被保持領域の形状安定性が良好に確保される。
【0099】
また、シート部材34の形状安定性が良好に確保されることからシート部材34を供給ローラ30に巻回した反物状にして供給することができるため、容易にロール工法によりディスクを製造することができ、結果的に生産効率の向上を図ることが可能となる。
【0100】
なお、ディスク製造装置100では、保持装置10Dを用いてシート部材34を保持した状態で被保持領域に対し各処理を行ったが、保持装置10Dに代えて保持装置10,10A,10C、10Dを用いてもよい。一例として、次表にそれぞれ保持装置10を用いてホットエンボス処理を行ったときの真円度及び最大反り高と、保持装置10Bを用いたホットエンボス処理を行った後の被保持領域を保持装置10Bを用いて保持しスパッタ成膜を行なったときの真円度及び最大反り高とが示されている。次表2に示されるように、保持装置10及び保持装置10Bを用いた場合にも真円度は35μm、最大反り高は2.5mmより小さくなっており、表1に示される従来の工法に比較して形状安定性に優れていることがわかる。
【0101】
【表2】
【0102】
また、ディスク製造装置100では供給ローラ30に巻回したシート部材34を用いたがこれに限らず、図9に示されるようにシート部材片34’を用いて被保持領域にそれぞれホットエンボス処理、スパッタ成膜及びスピンコートを行なってもよい。この場合にもディスクの真円度及び最大反り高はそれぞれ35μm及び0.5mmとなり真円度及び最大反り高が表1に示される値を大幅に下回ることとなった。
【0103】
また、スパッタ装置110は、例えば図14に代表的に示されるように、保持装置10Bと、保持装置10Bの第1加圧部材20Bの−Z側の面にOリング64を介して隙間なく固定されたスパッタ源62とから構成されていているものを用いて、第1加圧部材20Bとスパッタ源62により規定される所定の真空度が確保された空間内に、スパッタ源62の外部から内部に連通する不活性ガスの吸気孔62aを介して不活性ガスを導入しつつ、シート部材34の被保持領域に対し、一例としてAg反射層、(ZrO2−Y2O3)−SiO2層、AgInSbTeGe層、ZnS−Si3N4層を順次成膜してもよい。この場合には、円筒状の第2加圧部材14の内部に冷却ユニット66を配置して、成膜中にシート部材34を冷却することとしている。
【0104】
また、スピンコート装置130のスピンコータ57としては、図15に示されるように、紫外線に対し透過性を有する石英ガラスからなり、昇降装置58によりZ軸方向に沿って駆動されるスタンパ57aを備え、このスタンパ57aをシート部材34に当接した状態で内部に収容された光源59を用いてスピンコート等の処理を行なうものを用いてもよい。スピンコート装置130は石英ガラス57aの表面を鏡面にすれば、保護層を形成するスピンコート装置として、また、石英ガラス57aの表面に所望の溝あるいはピットを形成すれば、2P転写装置として機能する。
【0105】
また、供給ローラ30に巻回されたシート部材34には、一例として図16に黒丸で示されるように被保持領域を規定するマーカを予め刻印して、該マーカをセンサ等により検出して被保持領域を決定することで、ディスク製造装置100で高精度の位置決めをすることが可能となる。なお、マーカは最も上流の工程であるホットエンボス処理を行うときに、例えばレーザ等により刻印し次工程以降では該マーカに基づいて被保持領域を認識することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明のシート保持方法及びシート保持装置は可撓性のあるシートを保持するのに適しており、本発明のディスク製造方法、転写装置、スパッタ装置、スピンコート装置及びディスク製造装置は可撓性のあるディスクの製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1(A)は本発明の第1の実施形態に係る保持装置10の縦断面図であり、図1(B)は保持装置10の動作を説明するための図である。
【図2】図2(A)は本発明の第2の実施形態に係る保持装置10Aの縦断面図であり、図2(B)は保持装置10Aの平面図である。
【図3】図3(A)は保持装置10Aの動作を説明するための図であり、図3(B)はシート部材34に作用する張力を説明するための図である。
【図4】図4(A)は保持装置10Aの変形例である保持装置10Bを示す図であり、図4(B)は保持装置10Bの動作を説明するための図である。
【図5】図5(A)は保持装置10Aの変形例である保持装置10Cを示す図であり、図5(B)は保持装置10Cの動作を説明するための図である。
【図6】図6(A)は保持装置10Aの変形例である保持装置10Dを示す図であり、図6(B)は保持装置10Dの動作を説明するための図である。
【図7】図2(A)における保持装置10Aの第1加圧部材の変形例を示す図である。
【図8】図8(A)、図8(B)及び図8(C)は図2(A)における環状弾性部材12の変形例を示す図である。
【図9】図9(A)は図4(A)の保持装置10Aをシート部材片の保持に用いる場合について説明するための図であり、図9(B)はシート部材片に作用する張力を説明するための図である。
【図10】ディスク製造装置100の概略的な構成を示す図である。
【図11】図11(A)は、図10におけるディスク装置100の転写装置110の概略的な構成を示す図であり、図11(B)は転写装置110の動作を説明するための図である。
【図12】図12(A)は、図10におけるディスク装置100のスパッタ装置120の概略的な構成を示す図であり、図12(B)はスパッタ装置120の動作を説明するための図である。
【図13】図13(A)は、図10におけるディスク装置100のスピンコート装置130の概略的な構成を示す図であり、図13(B)はスピンコート装置120の動作を説明するための図である。
【図14】図12(A)におけるスパッタ装置120の変形例を説明するための図である。
【図15】図13におけるスピンコート装置130のスピンコータ57の変形例を示す図である。
【図16】シート部材34に刻印されたマーカを示す図である。
【符号の説明】
【0108】
34…シート部材、34’…シート部材片、30…供給ローラ、32…巻取りローラ、10,10A,10B,10C,10D…保持装置、20,20A,20B,20C,20D,20E…第1加圧部材、14…第2加圧部材、12…環状弾性部材、20a…筒上部、20b…フランジ部、16A,16B,16C,16D…固定部材、ディスク製造装置100、110…転写装置,120…スパッタ装置、130…スピンコート装置、50…第1エンボス用加圧板、52…第2エンボス用加圧板、54,58…スタンパ、55…スパッタ源、56…スパッタターゲット、57…スピンコータ、59…UV光源、60…真空チャンバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート保持方法、ディスク製造方法、シート保持装置、転写装置、スパッタ装置、スピンコート装置及びディスク製造装置に係り、さらに詳しくは、可撓性を有するシート部材を保持するシート保持方法、該保持方法を用いたディスク製造方法、可撓性を有するシート部材を保持するシート保持装置、該シート保持装置を用いた転写装置、スパッタ装置及びスピンコート装置、2P転写装置並びに可撓性を有するシート部材に記録層を形成してディスクを製造するディスク製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送のデジタル化が開始されるなど、情報のデジタル化に伴い記録媒体としてのディスクへ記録される情報の高密度化に対する要求が高まっている。この要求に対する主な方策としては、情報の記録又は再生のために用いられるレーザ光のスポット径を小さくすることがあげられる。
【0003】
レーザ光のスポット径を小さくするには、レーザ光の波長を短くして対物レンズの開口数(NA)を大きくすることが有効であるが、レーザ光の波長を短くすると対物レンズを含む光学系の焦点深度の狭小化を招いてしまいフォーカスサーボ精度を向上させる必要が生じる。また、対物レンズのNAが増大すると、その対物レンズとディスクの記録面との距離を小さく設定する必要があるため、ディスクの面ぶれを抑制する必要がある。その理由は、始動時のフォーカスサーボを開始する直前に対物レンズを含むピックアップとディスクとが接触するなどの事態を回避する必要があるからである。
【0004】
このような背景から、可撓性を有するシート部材に記録層などが成膜されたディスク(以下、可撓性ディスクともいう)の開発がすすめられ、このディスクを安定化板上で回転させることにより、ディスクに生じる面ぶれを空気力学的に抑制する手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
従来から、可撓性ディスクに用いられるシート部材はその可撓性による取り扱いの困難性から、例えば記録層などの成膜時には、シート部材を所定の一方向に張力をかけた状態で成膜を行なう工法や(例えば、特許文献2参照)、円盤状のシート部材片に対し放射状に張力をかけた状態で成膜を行なう工法(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)が採用されてきた。
【0006】
特許文献2に記載の方式は、シート部材をロール状の反物として供給し、シート部材の一方向へ張力を与えることにより形成した面に成膜を行なう方式である。この方式では、可撓性のある部材をいわゆる剛体ライクに扱うことができ、成膜時にシート部材が受けるストレスを低減することができるが、張力が作用する方向にシート部材が引き伸ばされてしまうという不都合がある。特に、情報記録媒体の作成は、シート部材に形成する記録層の精度、例えば溝の真円度やシート部材自体の平坦性などの影響を最も受けやすいものの1つであるため、かかる不都合は新たな課題の1つとなってしまう。
【0007】
特許文献3に記載の方法は、外周を固定した円盤状のシート部材(以下、シート部材片という)に、熱収縮等により外周から中心に向かって張力を生じさせることにより面を形成し、この面上に成膜を行なう方式であり、特許文献4に記載の方法は、シート部材片の外周に固定したリング状の部材を介して、シート部材に放射状の張力を与えて面を形成し、この面上に成膜を行なう方式である。これらの方法では、シート部材片に適正な放射状の張力を付与することができるが、シート部材片の外周部近傍の平坦性が失われてしまい、大量生産が可能なロール工法への応用は困難と考えられる。
【0008】
今後は可撓性ディスクのみならず、例えば非特許文献1に記載されているように、硬い基板とシート部材を張り合わせることによりディスクを構成するタイプの情報記録媒体においても、シート部材側にグルーブ等の光ディスクに必要な機能を持たせ、基板側の機能層と合わせて多層化するような検討もすすめられており、製品の品質を維持しつつ大量生産が可能な工法の実現が期待されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第20020186636号明細書
【特許文献2】特開2002−322561号公報
【特許文献3】特開2004−319035号公報
【特許文献4】特開2005−11411
【非特許文献1】O PLSE E vol.20No2 P.188
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、形状安定性を損なうことなくシート部材を効果的に保持することが可能なシート保持方法及びシート保持装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、シート部材の形状安定性を損なうことなく、生産効率の向上を図ることが可能なディスク製造方法、転写装置、スパッタ装置、スピンコート装置及びディスク製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、可撓性を有するシート部材を保持するシート保持方法であって、環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に圧接させることにより、前記環状弾性部材を介して発生させた第1の加圧力と、該第1の加圧力に対向する第2の加圧力とにより、前記シート部材を保持する工程を含むシート保持方法である。
【0013】
これによればシート部材は、一方の面に作用する環状弾性部材がシート部材に対し圧接されることによる発生する第1の加圧力と、他方の面に作用する第1の加圧力に対向する第2の加圧力とにより保持される。これにより、保持されたシート部材に対し外力や熱応力等が作用したとしても、環状弾性部材とシート部材の一方の面との間に生じる摩擦力によってシート部材に生じる歪み等の発生が回避され、結果的に形状安定性を損なうことなくシート部材を効果的に保持することが可能となる。
【0014】
この場合において、請求項2に記載のシート保持方法の如く、前記環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に圧接させた状態で、前記環状弾性部材を環をたどる方向の中心線を中心に回転させて、前記シート部材に対し放射状の張力を作用させる工程を更に含むこととすることができる。
【0015】
請求項1及び2に記載の各シート保持方法において、請求項3に記載のシート保持方法の如く、前記シート部材は、長尺のシート部材であり、前記シート部材の一端側と他端側を、一対のローラ部材に巻きつけ、一方のローラを回転させることで前記シート部材に発生する張力を、前記第2の加圧力とすることとすることができる。
【0016】
請求項1〜3に記載の各シート保持方法において、請求項4に記載のシート保持方法の如く、前記第1の加圧力は、少なくとも前記環状弾性部材に接触する加圧面を有する第1の加圧部材により前記環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に押し付けることで発生させることとすることができる。
【0017】
この場合において、請求項5に記載のシート保持方法の如く、少なくとも前記シート部材を介して前記環状弾性部材と対向する加圧面を有する第2の加圧部材を、前記シート部材の前記他方の面側に配置することで、前記第2の加圧力を発生させることとすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、シート部材に所定の処理を施してディスクを製造するディスク製造方法であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて前記シート部材を保持し、その保持されたシート部材に対し所望の溝又はピットを形成する工程と;前記所望の溝又はピットが形成されたシート部材を、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて保持し、その保持されたシート部材に対し記録層を形成する工程と;前記記録層が形成されたシート部材を、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて保持し、その保持されたシート部材の記録層に対し保護層を形成する工程と;を含むディスク製造方法である。
【0019】
これによれば、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法によりシート部材が保持された状態で、シート部材の被保持領域に対し順次溝又はピットの形成、記録層の形成及び保護層の形成が行なわれる。したがって、上記各処理のためにシート部材を保持した際にシート部材が変形することがなく形状安定性が損なわれることがない。また、例えばシート部材をロール状にして供給するロール工法にも容易に適用することができ、シート部材片を使用する工法と比較して生産性の向上を図ることが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、可撓性を有するシート部材を保持するシート保持装置であって、前記シート部材の一方の面側に配置された環状弾性部材と;前記シート部材の面の法線方向に移動可能で、その移動により前記環状弾性部材を加圧して前記シート部材の一方の面に圧接させる第1の加圧部材と;前記シート部材の他方の面側に該他方の面から所定のクリアランスを介して配置され、前記環状弾性部材に対向する加圧面を有する第2加圧部材と;を備えるシート保持装置である。
【0021】
これによれば、シート部材は一方の面側に配置された第1加圧部材に加圧される環状弾性部材と、他方の面側に配置された第2の加圧部材とにより挟持されることにより保持される。これにより、保持されたシート部材に対し外力や熱応力等が作用したとしても、これらの力は環状弾性体との間に生じる摩擦力と環状弾性部材の弾性力により環状弾性部材の中心から外側に向かう放射状の張力によって打ち消される。したがって、シート部材の歪み等の発生が回避され、結果的に形状安定性を損なうことなくシート部材を効果的に保持することが可能となる。
【0022】
この場合において、請求項8に記載のシート保持装置の如く、前記第1の加圧部材の前記シート部材を加圧する加圧面は、その外周に沿った線が前記環状弾性部材の環をたどる方向の中心線よりも内側で、前記環状弾性部材の内周に沿った線よりも外側に位置する形状を有していることとすることができる。
【0023】
この場合において、請求項9に記載のシート保持装置の如く、前記第1の加圧部材は、前記加圧面から離れた位置に、その外周に沿った線が、前記環状弾性部材の環をたどる方向の中心線よりも外側に位置するフランジ部を有することとすることができる。
【0024】
請求項7に記載のシート保持装置において、請求項10に記載のシート保持装置の如く、前記第1の加圧部材の側面には、前記環状弾性部材に対向する側の面からその反対側に行くに従って、その外径が大きくなるテーパ部が形成されていることとすることができる。
【0025】
この場合において、請求項11に記載のシート保持装置の如く、前記テーパ部は、凹面状の湾曲面であることとすることができる。
【0026】
この場合において、請求項12に記載のシート保持装置の如く、前記テーパ部を円で近似したときの湾曲面の曲率半径は、前記環状弾性部材の断面を円に近似したときの曲率半径よりも大きいこととすることができる。
【0027】
請求項8〜12に記載の各シート保持装置において、請求項13に記載のシート保持装置の如く、前記第2加圧部材の前記シート部材に対向する面には、摩擦係数の小さい潤滑膜が形成されていることとすることができる。
【0028】
請求項7〜13に記載の各シート保持装置において、請求項14に記載のシート保持装置の如く、前記環状弾性部材には、前記加圧面の外周に対応した切欠部が形成されていることとすることができる。
【0029】
請求項7〜14に記載の各シート保持装置において、請求項15に記載のシート保持装置の如く、前記第1の加圧部材には、前記加圧面からその反対側の面まで貫通する中空部が形成されていることとすることができる。
【0030】
請求項7〜15に記載の各シート保持装置において、請求項16に記載のシート保持装置の如く、前記第2加圧部材は、前記シート部材に対向する側の面からその反対側の面まで貫通する中空部が形成されていることとすることができる。
【0031】
請求項17に記載の発明は、請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;前記シート保持装置に保持されたシート部材にエンボス処理を施す処理装置と;を備える転写装置である。
【0032】
これによれば、転写装置は請求項7〜16のいずれかに記載のシート保持装置を備えている。したがって、シート部材を形状安定性を損なうことなく保持することができる。また、例えばシート部材をロール状にして供給するロール工法に適用することで生産性の向上を図ることが可能となる。
【0033】
請求項18に記載の発明は、請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;前記保持装置に保持されたシート部材に対し成膜を行なう成膜装置と;を備えるスパッタ装置である。
【0034】
これによれば、スパッタ装置は請求項7〜16のいずれかに記載のシート保持装置を備えている。したがって、シート部材を形状安定性を損なうことなく保持することができる。また、例えばシート部材をロール状にして供給するロール工法に適用することで生産性の向上を図ることが可能となる。
【0035】
この場合において、請求項19に記載のスパッタ装置の如く、前記成膜装置は、前記シート保持装置に保持されたシート部材と、第1の加圧部材又は第2の加圧部材と、前記成膜装置のスパッタ源により所定の真空度に維持された空間を介して、前記成膜装置のスパッタターゲットを前記シート部材に射出して該シート部材に対し成膜を行なうこととすることができる。
【0036】
請求項20に記載の発明は、請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;前記シート部材に対し保護膜を形成するスピンコータと;を備えるスピンコート装置である。
【0037】
これによれば、スピンコート装置は請求項6〜15のいずれかに記載のシート保持装置を備えている。したがって、シート部材を形状安定性を損なうことなく保持することができる。また、例えばシート部材をロール状にして供給するロール工法に適用することで生産性の向上を図ることが可能となる。
【0038】
請求項21に記載の発明は、請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;前記保持装置に保持されたシート部材に対し所望の溝又はピットを形成するスピンコータと;を備える2P転写装置である。
【0039】
これによれば、2P転写装置は請求項6〜15のいずれかに記載のシート保持装置を備えている。したがって、シート部材を形状安定性を損なうことなく保持することができる。また、例えばシート部材をロール状にして供給するロール工法に適用することで生産性の向上を図ることが可能となる。
【0040】
請求項22に記載の発明は、シート部材に対し記録層を形成してディスクを製造するディスク製造装置であって、請求項17に記載の転写装置と;請求項18又は19に記載のスパッタ装置と;請求項20に記載のスピンコート装置と;を備えるディスク製造装置である。
【0041】
これによれば、ディスクの製造過程においてシート部材は形状安定性を損なうことなく保持される。また、請求項17に記載の転写装置と、請求項18又は19に記載のスパッタ装置と、請求項20に記載のスピンコート装置はロール工法に好適である。したがって、ロール工法に容易に適用することができ生産性の向上を図ることが可能となる。
【0042】
請求項23に記載の発明は、シート部材に対し記録層を形成してディスクを製造するディスク製造装置であって、請求項18又は19に記載のスパッタ装置と;請求項20に記載のスピンコート装置と;請求項21に記載の2P転写装置と;を備えるディスク製造装置である。
【0043】
これによれば、ディスクの製造過程においてシート部材は形状安定性を損なうことなく保持される。また、請求項18又は19に記載のスパッタ装置と、請求項20に記載のスピンコート装置と、請求項21に記載の2P転写装置はロール工法に好適である。したがって、ロール工法に容易に適用することができ生産性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1(A)及び図1(B)に基づいて説明する。図1には第1の実施形態に係る保持装置10の縦断面図が、該保持装置10に保持されるシート部材34とともに示されている。
【0045】
シート部材34としては、一例として厚さ100μmのポリカーボネイト樹脂からなるシートが用いられている。このシート部材34は、図1(A)に示されるように、X軸方向に所定間隔を隔てて配置され、ともに長手方向をY軸方向とする供給ローラ30及び巻取りローラ32相互間に所定の張力を付与された状態で架設されている。すなわち、シート部材34は、供給ローラ30に巻かれた状態からその一端が+X方向に引き出され、所定の張力を付与された状態で巻き取りローラ32に巻かれている。シート部材34は巻取りローラ32が図1(A)における時計回りに回転することにより、そのX軸方向の張力を維持した状態で巻取りローラ32により巻き取られるとともに供給ローラ30から順次送り出される。
【0046】
保持装置10は、図1(A)に示されるように、円環状の弾性体からなる環状弾性部材12、肉厚と軸方向の長さとがほぼ同程度の円筒状の部材(断面が矩形の円環状の部材)から成る第1加圧部材20及び該第1加圧部材20とほぼ同形状の円筒状の部材から成る第2加圧部材14を備えている。
【0047】
環状弾性部材12としては、一例として、内径149.5mm、断面が直径8.4mm程度の円形状のシリコンゴム製のOリングが用いられている。そして、この環状弾性部材12は、不図示の支持部材により、シート部材34の上方(+Z側)でZ軸方向に沿って昇降自在に支持されている。
【0048】
第1加圧部材20としては、一例として、ステンレス鋼を素材とし、内径150mm、外径170mmで高さが20mmの円筒状の部材が用いられている。この第1加圧部材20の−Z側の面には環状弾性部材12の形状に対応した深さ1mm、幅3mmで内径156mmの案内溝が形成されている。この第1加圧部材20は、環状弾性部材12の上方に配置され、不図示の駆動機構によりZ軸方向に沿って駆動可能となっている。
【0049】
第2加圧部材14は、上記第1加圧部材20と同様に構成され、シート部材34の下方に所定のクリアランス(例えば、1mm以下程度)を介して配置されている。そして、この第2加圧部材14のシート部材34に対向する面には、摩擦係数の小さい潤滑膜、例えばPTFEの撥水性粉末を分散させたニッケル複合メッキ膜が形成されている。
【0050】
上記のように構成された保持装置10では、まず駆動機構(不図示)により第1加圧部材20が下方に駆動されると、第1加圧部材20は環状弾性部材12に当接する。そして、駆動機構により第1加圧部材20がさらに下方に駆動されることで、第1加圧部材20は環状弾性部材12を押し下げつつ下降し、最終的には、図1(B)に示されるように、環状弾性部材12を介して第2加圧部材14とともにシート部材34を挟持する。この図1(B)の状態では、環状弾性部材12は、僅かに押しつぶされて、その断面が扁平な円形に変形している。これにより、シート部材34の環状弾性部材12に接した円形部分に囲まれた領域(以下、適宜「被保持領域」という)は、その外周縁部が隙間なく環状弾性部材12と第2加圧部材14とによって挟持され、シート部材34の上面と環状弾性部材12との間に生じる、第1加圧部材20による弾性環状部材12に対する押圧力を垂直抗力とする摩擦力の作用により平坦に保った状態で保持される。ここで、第2加圧部材14のシート部材34に対向する面には、摩擦係数の小さい潤滑膜が形成されているので、シート部材34と第2加圧部材14との間の摩擦抵抗が小さくなり、より効率的に環状弾性部材12により発生させる張力をシート部材34に付与できる。
【0051】
以上説明したように、本第1の実施形態に係る保持装置10によると、シート部材34の被保持領域は平坦に保たれたまま、環状弾性部材12と第2加圧部材14とによって保持される。したがって、例えば、シート部材34に温度変化による熱応力が生じたり、外力が加わったりした場合にもそのストレスを被保持領域内で均一に分散させることが可能となっている。
【0052】
また、シート部材34を環状弾性部材12と第2加圧部材14とにより保持する場合には、シート部材34を環状弾性部材12と第2加圧部材14とによって単に挟持する動作が行なわれるだけであるため、例えば特開2005−11411号公報に開示されている方法のように、被保持体であるシート部材34の被保持領域の周囲に変形が生じることがない。したがって、保持装置10は後述するロール工法を用いたディスクの製造に好適である。
【0053】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図2(A)〜図3(B)に基づいて説明する。ここで、重複説明を避ける観点から、前述した第1の実施形態と同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに説明を簡略し又は省略するものとする。
【0054】
図2(A)には本第2の実施形態に係る保持装置10Aの縦断面図が、該保持装置10Aによって保持されるシート部材34とともに示されている。また、図2(B)には図2(A)の平面図が示されている。これらの図2(A)、図2(B)と、図1(A)と比較すると分かるように、この保持装置10Aは、前述した第1加工部材20に代えて、第1加圧部材20Aが設けられている点が、前述した第1の実施形態に係る保持装置10と異なるのみで、その他の部分の構成は、保持装置10と同様になっている。
【0055】
第1加圧部材20Aとしては、一例として、ステンレス鋼を素材とし、内径135mm、外径150mmで高さが20mmの円筒状の部材が用いられている。この第1加圧部材は環状弾性部材12の上方に配置され、不図示の駆動機構によりZ軸方向に沿って駆動可能となっている。
【0056】
上記のように構成された保持装置10Aでは、まず駆動機構(不図示)により第1加圧部材20Aが下方に駆動されると、前述した第1の実施形態と同様にして、図3(A)に示されるように、第1加圧部材20Aに下方に付勢された環状弾性部材12が第2加圧部材14とともにシート部材34を挟持する状態となる。
【0057】
そして、この状態から第1加圧部材20Aが更に下降すると、図3(A)に示されるように、環状弾性部材12は、環をたどる方向の中心線を中心として矢印で示されるようにシート部材34に対し相対的に回転する。これにより、シート部材34の被保持領域は、図3(B)中に矢印で示されるように中心から外側に向う放射状の摩擦力(張力)が作用した状態で、環状弾性部材12と第2加圧部材14とにより挟持される。ここで、第2加圧部材14のシート部材34に対向する面には、摩擦係数の小さい潤滑膜が形成されているので、シート部材34と第2加圧部材14との間の摩擦抵抗が小さくなり、より効率的に環状弾性部材12により発生させる張力をシート部材34に付与できる。
【0058】
以上説明したように、本第2の実施形態に係る保持装置10Aによると、前述した第1の実施形態と同等の効果を得られる他、環状弾性部材12を図3(A)に示されるように回転させることができるので、図3(B)に示されるようにシート部材34の被保持領域を、その中心から外側に向かって放射状の張力が作用した状態で保持することが可能になる。
【0059】
また、本第2の実施形態に係る保持装置10Aによると、シート部材34を環状弾性部材12と第2加圧部材14とによって単に挟持する動作と、環状弾性部材14を回転させて被保持領域の中心から外側に向かって張力を作用させる動作が行なわれるだけであるため、例えば特開2005−11411号公報に開示されている方法のように、被保持体であるシート部材34の被保持領域の周囲に変形が生じることがない。したがって、保持装置10Aは後述するロール工法を用いたディスクの製造に好適である。
【0060】
ここで、本第2の実施形態では、第1加圧部材20Aは、一例として外径が環状弾性部材12の内径(149.5mm)よりも僅かに大きい外径(150mm)を有することとしたが、これに限らず、第1加圧部材20Aは、その外径をD1、弾性環状部材12の内径及び外径をそれぞれDi、Doとして、次式(1)に示される条件を満たすものであればよい。すなわち、第1加圧部材20Aの形状としては、次式(1)を満たす範囲内で環状弾性部材12の材質又は断面形状などに応じて最適な形状を選択することができる。
【0061】
Di<D1<(Di+Do)/2 … (1)
【0062】
《変形例1》
次に、第2の実施形態の変形例1について説明する。この変形例1に係る保持装置10Bは、上記第2の実施形態において、第1加圧部材20Aに代えて、例えば図4(A)に示されるように、筒状部20aと、この筒状部20aの上部外周に設けられたフランジ部20bとを有する段つき円筒状の部材から成る第1加圧部材20Bを用いたものである。
【0063】
筒状部20aは、一例として、外径及び内径がそれぞれ150mm及び135mmで、高さが20mmであり、フランジ部20bは、一例として外径が170mmで筒状部20aと同心の円筒状部から成り、上端面が筒状部20aの上端面から、その上端面の下方15mmの位置までの筒状部20aの外周部に一体的に形成されている。
【0064】
本変形例1の保持装置10Bによると、図4(B)に示されるように、弾性環状部材12をシート部材34に対し相対回転して被保持領域の中心から外側に向かって張力を作用させた後に、フランジ部20bの下面により環状弾性部材12をシート部材34に対して効果的に押圧することができ、これにより、前述の保持装置10Aに比べてよりシート部材の保持力を強めることができる。
【0065】
ここで、本変形例1では、第1加圧部材20Bとしては、筒状部の上端から15mm下方までの部分に設けられ、その外径が170mmであるフランジ部20bを有するものを用いたが、これに限らず、第1加圧部材20Bとしては、フランジ部20bの外径D2が、次式(2)に示される条件を満たすものであればよい。
【0066】
(Di+Do)/2≦D2…(2)
【0067】
《変形例2》
次に、第2の実施形態の変形例2について説明する。この変形例2に係る保持装置10Cは、上記第2の実施形態において、第1加圧部材20Aに代えて、例えば図5(A)に示されるように、その下端から上端に向かって行くにつれて外径が大きくなるようなテーパ部を有する第1加圧部材20Cを用いたものである。
【0068】
この第1加圧部材20Cは、その下端の外径が、環状弾性部材12の内径(149.5mm)よりも僅かに小さく、上端部の最大外径が環状弾性部材12の外径より僅かに大きく設定されている。
【0069】
この変形例2に係る保持装置10Cによると、前述した変形例1と同等の効果を得られる他、図5(B)からも明らかなように、テーパ部で環状弾性部材12を押圧することにより、テーパ部の加圧面と環状弾性部材12との接触面積を大きくし、前記回転力を効率的に発生させることができる。また、第1加圧部材20CのZ軸方向の位置を上下に変更することで、シート部材34の被保持領域に放射状に作用する張力の大きさを容易に調整することが可能となる。
【0070】
《変形例3》
次に、第2の実施形態の変形例3について説明する。この変形例3に係る保持装置10Dは、上記第2の実施形態において、第1加圧部材20Aに代えて、例えば図6(A)に示されるように、環状弾性部材12対して凹状に湾曲したテーパ部を有する第1加圧部材20Dを用いたものである。
【0071】
この第1加圧部材20Dは、その下端の外径が、環状弾性部材12の内径(149.5mm)よりも僅かに小さく、上端部の最大外径が環状弾性部材12の外径より僅かに大きく設定されている。また、この場合の加圧面(テーパ部)の曲率は、例えば円で近似したときの曲率半径をR1とし、環状弾性部材12の断面の曲率半径をR2とすると、R1>R2の関係が成立していることが望ましい。
【0072】
この変形例3に係る保持装置10Dによると、前述した変形例2と同等の効果を得られる他、変形例2よりもテーパ部の加圧面と環状弾性部材12との接触面積を大きくして、前記回転力を強めることができる。
【0073】
なお、上記各実施形態及び各変形例では、第1加圧部材20,20A,20B,20C,20D及び第2加圧部材14としては、無端環状部材(筒状部材)を用いたが、これに限らず、環状弾性部材12を加圧してシート部材34に押圧することができる面を有していればよい。例えば、第1加圧部材として、図7に代表的に示されるような、前述の第1加圧部材20Aにおいて−Z側端部が櫛歯状になった第1加圧部材20Eを用いることとしてもよい。
【0074】
また、環状弾性部材12の断面形状は、円形に限らず、図8(A)に示されるように、例えば第1加圧部材20の端部が嵌合する矩形状の切欠部が形成されていてもよい。かかる場合には、環状弾性部材12を第1加圧部材20に容易に固定することが可能になる。また、この構成では、環状弾性部材12をOリングとした場合に発生する可能性がある、加圧動作時の第1加圧部材とシート部材との接触を生じづらくする効果もある。この他、環状弾性部材12の断面形状は、図8(B)若しくは図8(C)に示されるように、円形以外の三角形状や四角形状であってもよい。
【0075】
また、環状弾性部材12はOリングなどのように必ずしも一体的に成形されている必要はなく、例えば円周上に断続的に配置された弾性体からなる部材を用いることも可能であるが、シート部材34に対し放射状に張力を作用させるためには連続した環状弾性体を環状弾性部材12として用いることが望ましい。また、例えば圧縮バネの一端と他端を接続し、環状弾性部材12を構成してもよい。
【0076】
また、環状弾性部材12は被保持領域の形状に合わせて例えば、楕円状等の円環状以外の形状のものを用いてもよい。この場合においても、シート部材34の被保持領域の外周部に変形が生じることを効果的に回避することが可能である。
【0077】
また、上記各実施形態及び各変形例では、環状弾性部材12と第1加圧部材20,20A,20B,20C,20Dとがシート部材34の上方に配置され、第2加圧部材14が下方に配置されている場合について説明したが、これに限らず、環状弾性部材12と第1加圧部材20,20A,20B,20C,20Dとがシート部材34の下方にあり、第2加圧部材14が上方に配置されていてもよい。また、シート部材34を上方又は下方の一方から他方へ移動させる場合などには、環状弾性部材12と第1加圧部材20,20A,20B,20C,20Dとがシート部材34の一側に配置され、第2加圧部材14が他側に配置されていればよい。
【0078】
また、上記実施形態では、シート部材34が供給ローラ30と巻取りローラ34により弾性環状部材12と第2加圧部材14の間に張り渡されている場合につて説明したが、供給ローラ30と巻取りローラ34とによりシート部材34に対し損傷や変形が生じない程度に張力を加えることで、第2加圧部材14の配置を省略することも可能である。また、上記1対のローラ30,32に加えて、テンションローラ等を別途配置して、シート部材34にX軸方向に作用する張力をさらに加えることとしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態ではシート部材34が供給ローラに巻回されている場合について説明したが、これに限らず、例えば被保持領域に少し余裕を持たせた大きさに裁断されたシート部材片34’を用いることも可能である。この場合には、図9(A)及び図9(B)を総合するとわかるように、保持装置10Aの第1加圧部材と第2加圧部材とにより、環状弾性部材12とシート部材片34’とを挟んで加圧し、前記環状弾性部材12と第2加圧部材14とにより、シート部材片34’の被保持領域(被保持面)に放射状に張力を作用させた状態で挟持している。また、断面U字状(コ字状)の固定部材16A,16B,16C,16Dにより第1加圧部材20Aを第2加圧部材14に対し4方向から固定し、固定部材16A,16B,16C,16Dによって加圧力を保持している。固定部材の形態、個数、配置などはこれに限られるものではなく、前記加圧状態を保持できる機構であれば良い。このようにすれば、シート部材片34’をあたかも剛体製のディスクのように取り扱うことが可能になる。
【0080】
《第3の実施形態》
次に、上述した保持装置のうち代表的に保持装置10Dを用いた、第3の実施形態に係るディスク製造装置について図10〜図13に基づいて説明する。なお、前述した各実施形態及び各変形例と同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに説明を簡略し又は省略するものとする。
【0081】
この第3の実施形態に係るディスク製造装置100は、図10に示されるように、転写装置110、スパッタ装置120、スピンコート装置130などから構成されている。
【0082】
転写装置110は、図11(A)に示されるように、保持装置10D、保持装置10Dの上方に配置される第1エンボス用加圧板50、保持装置10Dの下方に配置される第2エンボス用加圧板52、第2エンボス用加圧板52に固定されたスタンパ54及び不図示の加熱機構などを含んで構成されている。
【0083】
第1エンボス用加圧板50は、外径が保持装置10Dの第2加圧部材14の内径よりも小さい円柱状の部材からなり、不図示の駆動機構により第2加圧部材の中空部を介してZ軸方向へ移動可能となっている。
【0084】
第2エンボス用加圧部材52は、外径が保持装置10Dの第1加圧部材20Dの内径よりも小さい円柱状の部材からなり、第1エンボス用加圧板50と同様に不図示の駆動機構により第1加圧部材20Dの中空部を介してZ軸方向へ移動可能となっている。
【0085】
スタンパ54は、例えば溝幅0.16μm、溝深さ0.1μm、トラックピッチ0.32μmの溝部が形成され、第2エンボス用加圧部材52の+Z側の面に固定されている。
【0086】
上記のように構成された転写装置110では、まず保持装置10Dによりシート部材34を保持することにより被保持領域に放射状の張力を作用させた状態として、過熱機構(不図示)により保持面を加熱する。そして、図11(B)に示されるように、第1エンボス用加圧板50と第2エンボス用加圧板52とによりシート部材34の被保持領域を挟持して加圧することでスタンパ54の表面形状を被保持領域に転写する。このように、シート部材34の被保持領域に放射状に張力を作用させた状態で、上述したホットエンボス処理を行なうことにより、非常に優れた転写精度を得ることができる。また、ホットエンボス処理のストレスによるシート部材34の歪みも効果的に抑制することができる。
【0087】
前記スパッタ装置120は、図12に示されるように、保持装置10D、保持装置10Dの下方に配置されスパッタターゲット56をシート部材34の被保持領域に成膜させるスパッタ源55、不図示のガス供給装置及びガス排気装置、並びにこれらを収容するとともに内部環境を所定の真空度に維持する真空チャンバ60等を備えている。
【0088】
上記のように構成されたスパッタ装置120では、まず保持装置10Dによりシート部材34を保持することにより被保持領域に放射状の張力を作用させた状態とする。そして、ガス供給装置(不図示)により真空チャンバ60の内部空間に、例えばArガスを導入しつつイオン化させたArをスパッタターゲット56に衝突させて、スパッタ源55からスパッタターゲット56を第1加圧部材20Dの中空部を介してシート部材34の被保持領域に弾き飛ばすことにより被保持領域に対し、一例として厚さ120nmのAg反射層、厚さ7nmの(ZrO2−Y2O3)−SiO2層、厚さ10nmのAgInSbTeGe層、厚さ25nmのZnS−Si3N4層を順次成膜する。このように、シート部材34の被保持領域に放射状に張力を作用させた状態でスパッタ成膜を行なうことにより、成膜時のストレスによるシート部材34の歪みを効果的に抑制することができる。
【0089】
前記スピンコート装置130は、図13に示されるように、保持装置10D、UV光源59、スピンコータ57、スタンパ58等を備えている。
【0090】
スピンコータ57は、外径が第1加圧装置20Dの内径よりも小さい円筒状の部材からなり、不図示の駆動機構により第1加圧部材の中空部を介してZ軸方向へ移動可能となっている。また、スピンコータ57の+Z側の面には、シート部材34に対向する面が鏡面加工されたスタンパ58が固定され、このスタンパ58上には、不図示の供給装置により光硬化性樹脂が供給されることによる塗布層が形成されている。
【0091】
UV光源59は、保持装置10Dの上方に配置され、第2加圧部材14の中空部を介してシート部材34の被保持領域を紫外光により照明する。
【0092】
上記のように構成されたスピンコート装置130では、まず保持装置10Dによりシート部材34を保持することにより被保持領域に放射状の張力を作用させた状態とする。そして、スピンコータ57を上方(+Z方向)へ移動して、スタンパ58上に形成された塗布層をシート部材34の被保持領域に合わせ、シート部材34の上方からUV光源59により被保持領域を照明し光硬化性樹脂を硬化させることにより、例えば厚さ10μm程度の保護膜を形成する。このように、シート部材34の被保持領域に放射状に張力を作用させた状態で上述したスピンコートを行なうことにより、転写時のストレスによるシート部材34の歪みを効果的に抑制することができる。
【0093】
なお、スピンコート装置130では、スタンパ58に代えて、上記転写装置110に用いられるスタンパ54を使用することにより、上記転写装置110と同様に溝またはピットの転写を行なうことができる。
【0094】
ディスク製造装置100では、図10に示されるように、巻取りローラ32を回転させることによりシート部材34を、上述した転写装置110、スパッタ装置120及びスピンコート装置130に対し相対的に移動させて、シート部材34の被保持領域にホットエンボス処理、スパッタ成膜、スピンコートを順次行ない、被保持領域から外径120mmの部分を不図示のカットパンチ機により切り抜くことにより、可撓性を有するシート部材34をディスク基板とするディスクが製造される。
【0095】
なお、ディスク製造装置100においては、転写装置110によるホットエンボス処理を行わずに、スピンコート装置130により、溝又はピットが形成されたスタンパ54を用いた2P転写を行なうこととしてもよい。
【0096】
発明者が、上記ディスク製造装置100と同様の装置を用いて、上述と同様の方法で、ディスクを実際に製造し、そのディッスクの真円度及び最大反り高を計測した結果、そのディスクの真円度及び最大反り高はそれぞれ20μm及び0.5mmであった。ここで、反り高とはディスク中心を基準とする平坦面とディスクの所定位置との距離をいうものとし、最大反り高とは反り高の最大値をいうものとする。次表1には、従来のディスク装置によりそれぞれホットエンボス処理、スパッタ成膜及びスピンコートを行なった後にそれぞれ測定したときのディスクの真円度及び最大反り高が示されている。次表1に示されるように、従来のディスク製造装置では、ホットエンボス処理を行った段階でディスクの真円度及び最大反り高がそれぞれ35μm、2.5mm以上となり、スピンコートを行なった後にはディスクの真円度及び最大反り高がそれぞれ70μm、5.0mm以上となる。これに対し、ディスク装置100を用いた場合には各処理を経て完成した状態のディスクであっても真円度及び最大反り高は、それぞれ20μm及び0.5mmであったので、明らかに次表1に示される値を下回っていることがわかる。
【0097】
【表1】
【0098】
以上説明したように、ディスク製造装置100によると、保持装置10Bによりシート部材34が保持された状態で、シート部材34の被保持領域に対しホットエンボス処理、スパッタ成膜及びスピンコートを行なうことにより、完成されたディスクの真円度及び最大反り高を従来に比較して小さく抑えることが可能となる。すなわち、各処理ごとにシート部材34が変形することがなく、被保持領域の形状安定性が良好に確保される。
【0099】
また、シート部材34の形状安定性が良好に確保されることからシート部材34を供給ローラ30に巻回した反物状にして供給することができるため、容易にロール工法によりディスクを製造することができ、結果的に生産効率の向上を図ることが可能となる。
【0100】
なお、ディスク製造装置100では、保持装置10Dを用いてシート部材34を保持した状態で被保持領域に対し各処理を行ったが、保持装置10Dに代えて保持装置10,10A,10C、10Dを用いてもよい。一例として、次表にそれぞれ保持装置10を用いてホットエンボス処理を行ったときの真円度及び最大反り高と、保持装置10Bを用いたホットエンボス処理を行った後の被保持領域を保持装置10Bを用いて保持しスパッタ成膜を行なったときの真円度及び最大反り高とが示されている。次表2に示されるように、保持装置10及び保持装置10Bを用いた場合にも真円度は35μm、最大反り高は2.5mmより小さくなっており、表1に示される従来の工法に比較して形状安定性に優れていることがわかる。
【0101】
【表2】
【0102】
また、ディスク製造装置100では供給ローラ30に巻回したシート部材34を用いたがこれに限らず、図9に示されるようにシート部材片34’を用いて被保持領域にそれぞれホットエンボス処理、スパッタ成膜及びスピンコートを行なってもよい。この場合にもディスクの真円度及び最大反り高はそれぞれ35μm及び0.5mmとなり真円度及び最大反り高が表1に示される値を大幅に下回ることとなった。
【0103】
また、スパッタ装置110は、例えば図14に代表的に示されるように、保持装置10Bと、保持装置10Bの第1加圧部材20Bの−Z側の面にOリング64を介して隙間なく固定されたスパッタ源62とから構成されていているものを用いて、第1加圧部材20Bとスパッタ源62により規定される所定の真空度が確保された空間内に、スパッタ源62の外部から内部に連通する不活性ガスの吸気孔62aを介して不活性ガスを導入しつつ、シート部材34の被保持領域に対し、一例としてAg反射層、(ZrO2−Y2O3)−SiO2層、AgInSbTeGe層、ZnS−Si3N4層を順次成膜してもよい。この場合には、円筒状の第2加圧部材14の内部に冷却ユニット66を配置して、成膜中にシート部材34を冷却することとしている。
【0104】
また、スピンコート装置130のスピンコータ57としては、図15に示されるように、紫外線に対し透過性を有する石英ガラスからなり、昇降装置58によりZ軸方向に沿って駆動されるスタンパ57aを備え、このスタンパ57aをシート部材34に当接した状態で内部に収容された光源59を用いてスピンコート等の処理を行なうものを用いてもよい。スピンコート装置130は石英ガラス57aの表面を鏡面にすれば、保護層を形成するスピンコート装置として、また、石英ガラス57aの表面に所望の溝あるいはピットを形成すれば、2P転写装置として機能する。
【0105】
また、供給ローラ30に巻回されたシート部材34には、一例として図16に黒丸で示されるように被保持領域を規定するマーカを予め刻印して、該マーカをセンサ等により検出して被保持領域を決定することで、ディスク製造装置100で高精度の位置決めをすることが可能となる。なお、マーカは最も上流の工程であるホットエンボス処理を行うときに、例えばレーザ等により刻印し次工程以降では該マーカに基づいて被保持領域を認識することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明のシート保持方法及びシート保持装置は可撓性のあるシートを保持するのに適しており、本発明のディスク製造方法、転写装置、スパッタ装置、スピンコート装置及びディスク製造装置は可撓性のあるディスクの製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1(A)は本発明の第1の実施形態に係る保持装置10の縦断面図であり、図1(B)は保持装置10の動作を説明するための図である。
【図2】図2(A)は本発明の第2の実施形態に係る保持装置10Aの縦断面図であり、図2(B)は保持装置10Aの平面図である。
【図3】図3(A)は保持装置10Aの動作を説明するための図であり、図3(B)はシート部材34に作用する張力を説明するための図である。
【図4】図4(A)は保持装置10Aの変形例である保持装置10Bを示す図であり、図4(B)は保持装置10Bの動作を説明するための図である。
【図5】図5(A)は保持装置10Aの変形例である保持装置10Cを示す図であり、図5(B)は保持装置10Cの動作を説明するための図である。
【図6】図6(A)は保持装置10Aの変形例である保持装置10Dを示す図であり、図6(B)は保持装置10Dの動作を説明するための図である。
【図7】図2(A)における保持装置10Aの第1加圧部材の変形例を示す図である。
【図8】図8(A)、図8(B)及び図8(C)は図2(A)における環状弾性部材12の変形例を示す図である。
【図9】図9(A)は図4(A)の保持装置10Aをシート部材片の保持に用いる場合について説明するための図であり、図9(B)はシート部材片に作用する張力を説明するための図である。
【図10】ディスク製造装置100の概略的な構成を示す図である。
【図11】図11(A)は、図10におけるディスク装置100の転写装置110の概略的な構成を示す図であり、図11(B)は転写装置110の動作を説明するための図である。
【図12】図12(A)は、図10におけるディスク装置100のスパッタ装置120の概略的な構成を示す図であり、図12(B)はスパッタ装置120の動作を説明するための図である。
【図13】図13(A)は、図10におけるディスク装置100のスピンコート装置130の概略的な構成を示す図であり、図13(B)はスピンコート装置120の動作を説明するための図である。
【図14】図12(A)におけるスパッタ装置120の変形例を説明するための図である。
【図15】図13におけるスピンコート装置130のスピンコータ57の変形例を示す図である。
【図16】シート部材34に刻印されたマーカを示す図である。
【符号の説明】
【0108】
34…シート部材、34’…シート部材片、30…供給ローラ、32…巻取りローラ、10,10A,10B,10C,10D…保持装置、20,20A,20B,20C,20D,20E…第1加圧部材、14…第2加圧部材、12…環状弾性部材、20a…筒上部、20b…フランジ部、16A,16B,16C,16D…固定部材、ディスク製造装置100、110…転写装置,120…スパッタ装置、130…スピンコート装置、50…第1エンボス用加圧板、52…第2エンボス用加圧板、54,58…スタンパ、55…スパッタ源、56…スパッタターゲット、57…スピンコータ、59…UV光源、60…真空チャンバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート部材を保持するシート保持方法であって、
環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に圧接させることにより、前記環状弾性部材を介して発生させた第1の加圧力と、該第1の加圧力に対向する第2の加圧力とにより、前記シート部材を保持する工程を含むシート保持方法。
【請求項2】
前記環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に圧接させた状態で、前記環状弾性部材を環をたどる方向の中心線を中心に回転させて、前記シート部材に対し放射状の張力を作用させる工程を更に含む請求項1に記載のシート保持方法。
【請求項3】
前記シート部材は、長尺のシート部材であり、
前記シート部材の一端側と他端側を、一対のローラ部材に巻きつけ、一方のローラを回転させることで前記シート部材に発生する張力を、前記第2の加圧力とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート保持方法。
【請求項4】
前記第1の加圧力は、少なくとも前記環状弾性部材に接触する加圧面を有する第1の加圧部材により前記環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に押し付けることで発生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート保持方法。
【請求項5】
少なくとも前記シート部材を介して前記環状弾性部材と対向する加圧面を有する第2の加圧部材を、前記シート部材の前記他方の面側に配置することで、前記第2の加圧力を発生させることを特徴とする請求項4に記載のシート保持方法。
【請求項6】
シート部材に所定の処理を施してディスクを製造するディスク製造方法であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて前記シート部材を保持し、その保持されたシート部材に対し所望の溝又はピットを形成する工程と;
前記所望の溝又はピットが形成されたシート部材を、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて保持し、その保持されたシート部材に対し記録層を形成する工程と;
前記記録層が形成されたシート部材を、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて保持し、その保持されたシート部材の記録層に対し保護層を形成する工程と;を含むディスク製造方法。
【請求項7】
可撓性を有するシート部材を保持するシート保持装置であって、
前記シート部材の一方の面側に配置された環状弾性部材と;
前記シート部材の面の法線方向に移動可能で、その移動により前記環状弾性部材を加圧して前記シート部材の一方の面に圧接させる第1の加圧部材と;
前記シート部材の他方の面側に該他方の面から所定のクリアランスを介して配置され、前記環状弾性部材に対向する加圧面を有する第2加圧部材と;を備えるシート保持装置。
【請求項8】
前記第1の加圧部材の前記シート部材を加圧する加圧面は、その外周に沿った線が前記環状弾性部材の環をたどる方向の中心線よりも内側で、前記環状弾性部材の内周に沿った線よりも外側に位置する形状を有していることを特徴とする請求項7に記載のシート保持装置。
【請求項9】
前記第1の加圧部材は、前記加圧面から離れた位置に、その外周に沿った線が、前記環状弾性部材の環をたどる方向の中心線よりも外側に位置するフランジ部を有することを特徴とする請求項8に記載のシート保持装置。
【請求項10】
前記第1の加圧部材の側面には、前記環状弾性部材に対向する側の面からその反対側に行くに従って、その外径が大きくなるテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のシート保持装置。
【請求項11】
前記テーパ部は、凹面状の湾曲面であることを特徴とする請求項10に記載のシート保持装置。
【請求項12】
前記テーパ部を円で近似したときの湾曲面の曲率半径は、前記環状弾性部材の断面を円に近似したときの曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項11に記載のシート保持装置。
【請求項13】
前記第2加圧部材の前記シート部材に対向する面には、摩擦係数の小さい潤滑膜が形成されていること特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載のシート保持装置。
【請求項14】
前記環状弾性部材には、前記加圧面の外周に対応した切欠部が形成されていることを特徴とする請求項7〜13のいずれか一項に記載のシート保持装置。
【請求項15】
前記第1の加圧部材には、前記加圧面からその反対側の面まで貫通する中空部が形成されていることを特徴とする請求項7〜14のいずれか一項に記載のシート保持装置。
【請求項16】
前記第2加圧部材は、前記シート部材に対向する側の面からその反対側の面まで貫通する中空部が形成されていることを特徴とする請求項7〜15のいずれか一項に記載のシート保持装置。
【請求項17】
請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;
前記保持装置に保持されたシート部材にエンボス処理を施す処理装置と;を備える転写装置。
【請求項18】
請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;
前記保持装置に保持されたシート部材に対し成膜を行なう成膜装置と;を備えるスパッタ装置。
【請求項19】
前記成膜装置は、前記シート保持装置に保持されたシート部材と、第1の加圧部材又は第2の加圧部材と、前記成膜装置のスパッタ源により所定の真空度に維持された空間を介して、前記成膜装置のスパッタターゲットを前記シート部材に射出して該シート部材に対し成膜を行なうことを特徴とする請求項18に記載のスパッタ装置。
【請求項20】
請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;
前記保持装置に保持されたシート部材に対し保護膜を形成するスピンコータと;を備えるスピンコート装置。
【請求項21】
請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;
前記保持装置に保持されたシート部材に対し所望の溝又はピットを形成するスピンコータと;を備える2P転写装置。
【請求項22】
シート部材に対し記録層を形成してディスクを製造するディスク製造装置であって、
請求項17に記載の転写装置と;
請求項18又は19に記載のスパッタ装置と;
請求項20に記載のスピンコート装置と;を備えるディスク製造装置。
【請求項23】
シート部材に対し記録層を形成してディスクを製造するディスク製造装置であって、
請求項18又は19に記載のスパッタ装置と;
請求項20に記載のスピンコート装置と;
請求項21に記載の2P転写装置と;を備えるディスク製造装置。
【請求項1】
可撓性を有するシート部材を保持するシート保持方法であって、
環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に圧接させることにより、前記環状弾性部材を介して発生させた第1の加圧力と、該第1の加圧力に対向する第2の加圧力とにより、前記シート部材を保持する工程を含むシート保持方法。
【請求項2】
前記環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に圧接させた状態で、前記環状弾性部材を環をたどる方向の中心線を中心に回転させて、前記シート部材に対し放射状の張力を作用させる工程を更に含む請求項1に記載のシート保持方法。
【請求項3】
前記シート部材は、長尺のシート部材であり、
前記シート部材の一端側と他端側を、一対のローラ部材に巻きつけ、一方のローラを回転させることで前記シート部材に発生する張力を、前記第2の加圧力とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート保持方法。
【請求項4】
前記第1の加圧力は、少なくとも前記環状弾性部材に接触する加圧面を有する第1の加圧部材により前記環状弾性部材を前記シート部材の一方の面に押し付けることで発生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート保持方法。
【請求項5】
少なくとも前記シート部材を介して前記環状弾性部材と対向する加圧面を有する第2の加圧部材を、前記シート部材の前記他方の面側に配置することで、前記第2の加圧力を発生させることを特徴とする請求項4に記載のシート保持方法。
【請求項6】
シート部材に所定の処理を施してディスクを製造するディスク製造方法であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて前記シート部材を保持し、その保持されたシート部材に対し所望の溝又はピットを形成する工程と;
前記所望の溝又はピットが形成されたシート部材を、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて保持し、その保持されたシート部材に対し記録層を形成する工程と;
前記記録層が形成されたシート部材を、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート保持方法を用いて保持し、その保持されたシート部材の記録層に対し保護層を形成する工程と;を含むディスク製造方法。
【請求項7】
可撓性を有するシート部材を保持するシート保持装置であって、
前記シート部材の一方の面側に配置された環状弾性部材と;
前記シート部材の面の法線方向に移動可能で、その移動により前記環状弾性部材を加圧して前記シート部材の一方の面に圧接させる第1の加圧部材と;
前記シート部材の他方の面側に該他方の面から所定のクリアランスを介して配置され、前記環状弾性部材に対向する加圧面を有する第2加圧部材と;を備えるシート保持装置。
【請求項8】
前記第1の加圧部材の前記シート部材を加圧する加圧面は、その外周に沿った線が前記環状弾性部材の環をたどる方向の中心線よりも内側で、前記環状弾性部材の内周に沿った線よりも外側に位置する形状を有していることを特徴とする請求項7に記載のシート保持装置。
【請求項9】
前記第1の加圧部材は、前記加圧面から離れた位置に、その外周に沿った線が、前記環状弾性部材の環をたどる方向の中心線よりも外側に位置するフランジ部を有することを特徴とする請求項8に記載のシート保持装置。
【請求項10】
前記第1の加圧部材の側面には、前記環状弾性部材に対向する側の面からその反対側に行くに従って、その外径が大きくなるテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のシート保持装置。
【請求項11】
前記テーパ部は、凹面状の湾曲面であることを特徴とする請求項10に記載のシート保持装置。
【請求項12】
前記テーパ部を円で近似したときの湾曲面の曲率半径は、前記環状弾性部材の断面を円に近似したときの曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項11に記載のシート保持装置。
【請求項13】
前記第2加圧部材の前記シート部材に対向する面には、摩擦係数の小さい潤滑膜が形成されていること特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載のシート保持装置。
【請求項14】
前記環状弾性部材には、前記加圧面の外周に対応した切欠部が形成されていることを特徴とする請求項7〜13のいずれか一項に記載のシート保持装置。
【請求項15】
前記第1の加圧部材には、前記加圧面からその反対側の面まで貫通する中空部が形成されていることを特徴とする請求項7〜14のいずれか一項に記載のシート保持装置。
【請求項16】
前記第2加圧部材は、前記シート部材に対向する側の面からその反対側の面まで貫通する中空部が形成されていることを特徴とする請求項7〜15のいずれか一項に記載のシート保持装置。
【請求項17】
請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;
前記保持装置に保持されたシート部材にエンボス処理を施す処理装置と;を備える転写装置。
【請求項18】
請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;
前記保持装置に保持されたシート部材に対し成膜を行なう成膜装置と;を備えるスパッタ装置。
【請求項19】
前記成膜装置は、前記シート保持装置に保持されたシート部材と、第1の加圧部材又は第2の加圧部材と、前記成膜装置のスパッタ源により所定の真空度に維持された空間を介して、前記成膜装置のスパッタターゲットを前記シート部材に射出して該シート部材に対し成膜を行なうことを特徴とする請求項18に記載のスパッタ装置。
【請求項20】
請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;
前記保持装置に保持されたシート部材に対し保護膜を形成するスピンコータと;を備えるスピンコート装置。
【請求項21】
請求項7〜16のいずれか一項に記載のシート保持装置と;
前記保持装置に保持されたシート部材に対し所望の溝又はピットを形成するスピンコータと;を備える2P転写装置。
【請求項22】
シート部材に対し記録層を形成してディスクを製造するディスク製造装置であって、
請求項17に記載の転写装置と;
請求項18又は19に記載のスパッタ装置と;
請求項20に記載のスピンコート装置と;を備えるディスク製造装置。
【請求項23】
シート部材に対し記録層を形成してディスクを製造するディスク製造装置であって、
請求項18又は19に記載のスパッタ装置と;
請求項20に記載のスピンコート装置と;
請求項21に記載の2P転写装置と;を備えるディスク製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−122761(P2007−122761A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309202(P2005−309202)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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