シート厚検知装置及び画像形成装置
【課題】シンプルな構成で安価であり、かつ経時的にも安定したシート厚検知精度を得ることができるシート厚検知装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】レジストローラ33と、該レジストローラ33に対して接触、離間方向に移動可能なレジストローラ34と、該レジストローラ34の変位に追従して変位部材43を介してシート材の厚みを検知するシート厚検知装置であり、レジストローラ34を設けたシート材搬送手段30のユニット筐体31に対して接触、離間する変位が直線方向で、変位部材43の移動方向もレジストローラ34の同方向であって、該変位部材43の変位量を測定する変位センサ50は変位部材43の移動方向を規制するユニット筐体31に取り付けられている。
【解決手段】レジストローラ33と、該レジストローラ33に対して接触、離間方向に移動可能なレジストローラ34と、該レジストローラ34の変位に追従して変位部材43を介してシート材の厚みを検知するシート厚検知装置であり、レジストローラ34を設けたシート材搬送手段30のユニット筐体31に対して接触、離間する変位が直線方向で、変位部材43の移動方向もレジストローラ34の同方向であって、該変位部材43の変位量を測定する変位センサ50は変位部材43の移動方向を規制するユニット筐体31に取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙部から給紙したシート材のシート厚を検知するシート厚検知装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置としては形成したトナー像をシート材に転写した後、定着手段によってトナー像をシート材に定着させる電子写真方式の装置が知られている。この種の画像形成装置では、シート材として普通紙と厚紙紙とを使用した場合、シート厚の違いによって転写条件や定着条件を変更する等の制御を行っている。このため、画像形成装置には給紙したシート材の厚さを検知するシート材厚さ検知装置を設け、該装置が検知したシート厚さをフィードバックさせて転写条件や定着条件を制御している。かかるシート材厚さ検知装置は、検知精度が高いだけでなく、安価にて提供することができることが要求されている。
【0003】
また、他の形式の画像形成装置においてもシート材の厚さに基づいて制御することは画像品質を高める上で有効であり、例えば、インクジェット記録装置ではシート厚によって異なる印字ヘッドからシート材上までの距離を一定にすることができる。
【0004】
このような観点から画像形成する用紙の厚さを検知することが知られており、かかる検知装置としては変位ローラに接触式変位センサのレバーを直接当接させて変位測定しようとするものであるが、この場合、レバー先端の磨耗によって経時的に検知精度が低下する。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献1には光学式の非接触式変位センサを用いて変位ローラの変位量を測定する装置が提案されている。また、特許文献2には透過光量を光学センサで測定し、透過光量の変化からシート厚を測定する装置が提案されている。さらにまた、特許文献3には変位ローラによって揺動するレバー部材の一端に設けたフラグが光学センサを遮るかで用紙の一定厚以上を検出している。
【0006】
しかしながら、光学式のセンサをシート厚検知に用いると、検知部に紙粉等が付着することによって、経時的に安定した検知精度を得ることが難しかった。さらに、特許文献1の装置では段落[0020]に「円筒形状のものの変位を計ろうとした場合、センサの取付け誤差が測定値に影響を及ぼす」と記載されるようにセンサの取付け精度が求められる。これについて、特許文献1では段落[0020]に「センサが発光素子と受光素子を持つ場合、発光素子と受光素子を軸方向に配置している」とあり、この場合においてもセンサを(光路)を回転体の法線上に置かなければ、回転体上で反射した光を受光部で検知できないおそれがある。いづれにしてもセンサの取付け精度、つまり、回転体の軸中心に対する位置と角度に対する取付け精度が求められる。さらにまた、特許文献1においては段落[0032]に「ローラの表面を研摩したローラーであると正反射してセンサの性能を発揮させる事ができない」また段落[0033]に「ローラを白色に塗装した」と記載されており、このように回転体の材質及び表面状態(色、光沢)の制約を受けている。このため、本来用紙を搬送するという機能を有する回転体に対して少なからず影響を与える。また、これらシート厚検知としての材質、表面加工を施すことによってコストアップになる。
【0007】
特許文献2の構成においては、透過型センサを用いるため、用紙をガイド板に押し付ける部材、アクチュエータ、センサ等の構成が必要となり、検知に必要な部材が多く構成の複雑化、コストアップとなる。
【0008】
特許文献3においては、被検知部材が支軸を中心に回動変位することにあり、シート厚と被検知部材の角度変位との差により検知誤差が生じることにある。
そこで、特許文献4には非接触式変位センサ(磁気式)を用いて変位ローラの変位量を測定する装置が提案されている。特許文献4の装置では、紙粉の影響を受けないので経時的に安定した検知精度を得られ易く、また光路を精度良く調整しなくてもすむ。
【0009】
しかしながら、特許文献4の構成においては段落[0076]に記載されるようにセンサに対する被検知部材の取付け精度が必要となり、センサの位置を調整しながら組み付ける必要がある。さらに、特許文献4は段落[0173]にあるように被検知体の部材は導電率が高いものである必要があるため、形状自由度が高く重量も軽い樹脂部品では構成できないまた、一般的にAl材やSUS材は一般鋼材(SECC)より値段が高いという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来の問題を解消し、シンプルな構成で安価であり、かつ経時的にも安定したシート厚検知精度を得ることができるシート厚検知装置及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、固定部材と、該固定部材に対して接触、離間方向に移動可能な変位ローラと、該変位ローラの変位に追従する変位部材を介してシート材の厚みを検知するシート厚検知装置において、前記変位ローラの前記固定部材に対して接触、離間する変位が直線方向で、前記変位部材の移動方向も該変位ローラと同じ方向であって、該変位部材には前記変位ローラの軸を回転自在に支持する軸受の少なくとも一方と一体であることを特徴とするシート厚検知装置を提供する。
【0012】
なお、本発明は、前記固定部材がローラであると効果的である。
さらに、本発明は、前記変位ローラの変位を直線方向に規制する部材を設け、該規制部材が変位部材の回動を規制すると効果的である。
【0013】
さらにまた、本発明は、前記変位部材の変位量を測定する変位センサは当該変位部材の移動方向を規制する部材に取り付けられていると効果的である。
さらにまた、本発明は、前記変位部材は前記変位ローラの軸受に嵌合されていると効果的である。
【0014】
さらにまた、本発明は、前記変位部材は前記変位センサが検知する面が前記変位ローラのローラ径よりも大きな曲率の面に形成されていると効果的である。
さらにまた、本発明は、前記変位部材は前記変位センサが検知する面が前記変位ローラの変位方向に対して垂直な面に形成されていると効果的である。
【0015】
さらにまた、本発明は、前記変位部材の前記変位ローラと対向する面に清掃部材を設けると効果的である。
上記の目的を達成するため、本発明は、請求項1ないし9の何れかに記載のシート厚検知装置がレジストローラ部に設けることを特徴とする画像形成装置を提案する。
【0016】
また、上記の目的を達成するため、本発明は、請求項1ないし9の何れかに記載のシート厚検知装置が給紙手段とレジストローラ部の間の搬送ローラ部に設けることを特徴とする画像形成装置を提案する。
【0017】
なお、本発明は、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に応じてトナー像を転写する転写装置内の転写手段の印加電流値を自動で制御すると効果的である。
【0018】
さらに、本発明は、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に応じて定着手段の定着温度を自動で制御すると効果的である。
さらにまた、本発明は、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に基づいて、両面印刷の可否を判定し、不可能な場合はシート材を両面搬送部に送らないよう制御すると効果的である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の構成によれば、変位ローラの固定部材に対して接触、離間する変位が直線方向で、変位部材の移動方向も該変位ローラと同じ方向であって、該変位部材には変位ローラの軸を回転自在に支持する軸受の少なくとも一方と一体であるので、変位ローラの移動方向に対して精度良く変位部材を配置するとともに、摩擦摺動部を減らし、変位ローラの移動に伴う変位部材の移動をスムーズに行うことが可能となる。
【0020】
請求項2の構成によれば、固定部材がローラであるので、変位ローラが磨耗変形を抑えることができる。
請求項3の構成によれば、変位ローラの変位を直線方向に規制する部材を設け、該規制部材が変位部材の回動を規制するので、部材の共通使用となり、低コスト、省スペースに寄与することができる。
【0021】
請求項4の構成によれば、変位部材の変位量を測定する変位センサは当該変位部材の移動方向を規制する部材に取り付けられているので、経時的にも安定した紙厚検知精度を得ることができる。
【0022】
請求項5の構成によれば、変位部材は変位ローラの軸受に嵌合されているので、変位部材の回動規制部を新たに追加することなく、変位ローラの移動方向に対して、精度良く変位部材を配置し、かつ摩擦摺動部を減らし、変位ローラの移動に伴う変位部材の移動をスムーズに行とともに、特殊な形状の軸受けを使うことなく、汎用的な軸受けを用いて構成することが可能となる。
【0023】
請求項6の構成によれば、変位部材は変位センサが検知する面が変位ローラのローラ径よりも大きな曲率の面に形成されているので、変位センサを変位ローラに接触させた場合に比べ、検知誤差を低減させるとともに、変位部材長手方向の変形を抑えることが可能となる。
【0024】
請求項7の構成によれば、変位部材は変位センサが検知する面が変位ローラの変位方向に対して垂直な面に形成されているので、変位センサを変位ローラに接触させた際生じる検知誤差をなくすことを可能としている。
【0025】
請求項8の構成によれば、変位部材の変位ローラと対向する面に清掃部材を設けたので、変位ローラ表面に異物が付着することによって生じる検知誤差を低減させることが可能となる。
【0026】
請求項8の構成によれば、変位センサは変位ローラを支持する部材に固定されているので、変位ローラ移動方向に対して、精度良く変位センサを配置することが可能となる。
【0027】
請求項9ないし13の構成によれば、経時的にも安定した紙厚検知精度を得られるシート厚検知装置を搭載した画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】その画像形成装置のシート材搬送手段を示す斜視図である。
【図3】シート材搬送手段のレジストローラ支持部の説明図である。
【図4】レジストローラ支持部にレジストローラを装着した状態の説明図である。
【図5】変位部材の外観斜視図である。
【図6】変位部材を取り付けたレジストローラ軸部の拡大断面図である。
【図7】レジストローラの軸受の斜視図である。
【図8】変位センサの斜視図である。
【図9】(a),(b),(c)は変位ローラ保持部と変位部材の回動規制を示す説明図である。
【図10】変位センサを取り付けたシート材搬送手段を示す斜視図である。
【図11】変位ローラ、変位部材及び変位センサのは位置関係を示す説明図である。
【図12】別の変位部材の外観斜視図である。
【図13】図12の変位部材の規制部を示す説明図である。
【図14】図13のXV−XV線に従う断面図である。
【図15】変位部材の別の例を示す斜視図である。
【図16】変位部材の変位センサ当接面を示す説明図である。
【図17】レジストローラと変位センサの接触指との当接部を示す模式図である。
【図18】レジストローラの変位移動量と検知誤差の関係を示すグラフである。
【図19】変位部材の変位センサ当接面を示す説明図である。
【図20】画像形成装置の別の例を示す概略構成図である。
【図21】画像形成装置のさらに別の例を示す概略構成図である。
【図22】変位部材の変形例を示す断面図である。
【図23】変位部材のさらに別の変形例を示す断面図である。
【図24】変位ローラの清掃部材を設けた変位部材を示す説明図である。
【図25】変位ローラの清掃部材を設けた別の変位部材を示す説明図である。
【図26】変位センサの出力を示すグラフである。
【図27】シート厚検出方法の1つの方法を示す説明図である。
【図28】シート厚検出方法の別の方法を示す説明図である。
【図29】シート厚検出方法のさらに別の方法を示す説明図である。
【図30】本発明の制御部を示すブロック図である。
【図31】本発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
図1は、本発明に係るシート厚検知装置を備える画像形成装置の一形態であるカラー画像形成装置の概略構成を示す中央断面図である。ここに示したカラー画像形成装置1は、画像形成装置筐体のほぼ中央部に4つの作像ユニット6C、6M、6Y、6Kを並べており、作像ユニット6C、6M、6Y、6Kの上方には、作像ユニットの感光体ドラム11に潜像を形成するための露光手段5が配置されている。作像ユニット6C、6M、6Y、6Kの下方には、複数の支持ローラ7、8に巻き掛けられ、反時計方向に回転する中間転写手段としての中間転写ベルト3が設けられ、支持ローラ7に該中間転写ベルト3を介して第2転写手段9が配置されている。
【0030】
図1の作像ユニット6C、6M、6Y、6Kは、形成するトナー像の色がイエロー、マゼンタ、シアン、黒と相違しているが、トナー像を形成する構成や作用は全て同じであるので、作像ユニット6をC、M、Y、Kの添え字を外して説明する。作像ユニット6の下部には、中間転写ベルト3に対向するように像担持体である感光体ドラム11が設けられ、不図示の駆動手段によって時計方向に回転駆動される。感光体ドラム11の周りには、1次転写後の残トナーを掻き取るクリーニング手段12、感光体ドラム11に当接する帯電手段13、トナー像を形成する現像手段14が配置され、現像手段14の中央領域は未使用トナー室15であり、ここに微小着色粉体として所定色のトナーが充填されている。また、感光体ドラム11と中間転写ベルト3を挟んで対向する位置には第1転写手段16が設けられている。
【0031】
画像形成時には、作像ユニット6C、6M、6Y、6Kに各色に応じたトナー像が形成され、これらトナー像が順次中間転写ベルト3上に重ね転写される。他方、中間転写ベルト3の下方には清掃により発生した廃トナーを貯める廃トナータンク4と、用紙等のシート状の記録媒体であるシート材Pを給紙する給紙手段2とが配置され、その給紙手段2より給紙されたシート材Pが後述するシート材搬送手段30を介して上記重ねトナー像に同期するように2次転写手段9へ給送される。なお、2次転写手段9に印加される電流値は5〜39μA程度であり、画像形成装置の設置環境、シート材Pのサイズ、シート材Pの厚み、シート材Pの搬送速度等の条件に応じて手適切な値に制御されるものである。
【0032】
画像が転写されたシート材Pは定着ローラ21とそれに対向する加圧ローラ22を有する定着装置20へ送られ、該定着装置20において加えられる熱及び圧力の作用によってトナー像がシート材Pに定着される。なお、このときの定着ローラ21の表面温度は、150〜200℃程度であり、画像形成装置の設置環境、シートの厚み、シートの搬送速度等の条件に応じて適切な値に制御されるものである。
【0033】
上記したシート材搬送手段30は、図1及び図2に示すように、ユニットとして構成され、そのユニット筐体31には給紙されたシート材Pの先端を突き当てて一旦停止させ、その後2次転写部に向けて搬送するレジストローラ対33、34、該レジストローラ対33、34にシート材Pが到達したことを検知するレジスト前センサ32、上記2次転写手段9及び用紙搬送ガイド等が搭載されている。
【0034】
このように構成された画像形成装置には、シート材を給紙する給紙手段2から2次転写手段9までの間に、給紙したシート材厚を検知するためのシート厚検知装置が設けられている。本実施形態のシート厚検知装置は、レジストローラ対33、34を用いており、一方のレジストローラ33を固定部材として用い、他方のレジストローラ34をレジストローラ33に対して接触、離間方向に移動可能な変位ローラとして用いている。このため、レジストローラ33は図3及び図9(a)に示すように、丸孔に形成されたユニット筐体31に形成された位置固定のローラ保持部41に保持され、レジストローラ33は同じくユニット筐体31に形成された長孔溝状に形成された変位ローラ保持部42に保持されている。
【0035】
実際には、図4に示すように、ローラ保持部41にレジストローラ33の軸33Aが軸受35を介して嵌合され、変位ローラ保持部42にレジストローラ34の軸34Aが軸受36を介して移動可能に嵌合されている。このとき、変位ローラであるレジストローラ34の移動方向は、変位ローラ保持部42に長孔溝の延びる方向に規制され、その延びる方向がレジストローラ33の中心から一直線に延びるの方向であるため、レジストローラ34はその軸受36とユニット筐体31に形成された変位ローラ保持部42によって、レジストローラ33に対して一直線方向のみに変位可能となっている。
【0036】
レジストローラ34には、図4に示すように、軸受36を介してレジストローラ33に当接する方向に付勢力がスプリング37によって与えられており、該スプリング37によってレジストローラ対33、34のシート狭持圧が与えられている。さらに、レジストローラ33は軸方向端部に設けられた駆動ギヤ38が画像形成装置本体に配置された駆動源より駆動力が伝達され、駆動ギヤ38の回転によってレジストローラ対33、34が回転駆動されてシート材Pを搬送する。また、図示していないが、レジストローラ33、レジストローラ34のもう一方の端部にはそれぞれアイドラギヤが設けられ、レジストローラ33が受けた駆動力がアイドラギヤを介してレジストローラ34に伝達される。
【0037】
画像形成時に給紙されたシート材は、レジスト前センサ32に検知された後、停止しているレジストローラ対33、34のニップに突き当てられる。突き当て後、給紙手段2の給紙ローラ2Aにて所定量シート材が搬送したタイミングでその給紙ローラ2Aの駆動を停止させることでシート材Pにたわみを作ることができ、給紙手段2の送り出し等によって生じたシート材の斜行を矯正することができる。その後、レジストローラ対33、34は中間転写ベルト3上のトナー画像とシート材の位置が一致するように所定のタイミングで駆動開始し、シート材Pを2次転写装置9に搬送する。
【0038】
なお、本実施形態においてシート材搬送手段30のユニット筐体31はカラー画像形成装置1の内部を開放するカバー50に着脱自在に取付けられている。そして、シート材搬送手段30は該カバー50をカラー画像形成装置1に備えた回動支点51を中心に図1の時計方向に回動することにより現出し、該カバー50からの取り出しや、清掃もしくはジャム紙の除去等のメンテナンスを行うことができる。
【0039】
また、本実施形態のカラー画像形成装置1には給紙カセットを備えた給紙手段2のほかに手差し給紙手段52が設けられており、この手差し給紙手段52は手差し給紙トレイ53に積載されたシートPを給紙手段2と同様に2次転写手段9に向けて給送するものである。
【0040】
2次転写手段9においてトナー像を転写されるとシートPは定着手段10へ搬送されて熱と圧とによってトナー像がシートPに定着される。定着後のシートPは、排出ローラ54を介して装置上面の排紙トレイ55へ排出される。また、両面モードが選択されているときは、定着を終えたシートPの後端がシート搬送路の分岐点56を越えた後、排出ローラ54を反回転してシートPをスイッチバックさせて両面搬送部57へ送り込み、再びレジストローラ対33、34を経て画像形成を行う。
【0041】
次に本実施形態のシート厚検知装置について詳細を説明する。
レジストローラ対33、34に搭載されている本実施形態のシート厚検知装置は、レジストローラ34の変位に追従する図5及び図6に示す変位部材43がそのレジストローラ34の軸受36に取り付けられている。この変位部材43は、レジストローラ34の軸線方向の幅より長い長さを持つ帯状の細板状に形成され、その両端がローラの軸心方向に折り曲げらている。そして、折り曲げられた部分には軸受36に嵌合する嵌合孔44が形成されている。このとき、軸受36は図7及び図9(b)に示すように、汎用的に用いられる小判柄フランジつきすべり軸受、すなわち、周面に平行な平面が形成された小判型フランジを持つ軸受である。これに嵌合する嵌合孔44の形状も図9(c)に示すように、同形の小判型に形成され、嵌合孔44は軸受36に精度良く嵌合されるとともに、小判型形状の嵌合によって変位部材43の回動が規制されつつ、レジストローラ34の移動に伴って移動、すなわち変位することが可能となっている。
【0042】
本実施形態のシート厚検知装置が用いる変位センサ50は、図8に示すように、支点回動するレバー型の接触指51を備えたもので、センサ内部に有するエンコーダー(図示せず)により上記接触指51の角度変位から接触指押し込み方向の変位として検知するものである。この変位センサ50は6μm以上の検知分解能を具備し、シート材Pの紙厚を検知するには十分な精度である。
【0043】
このように構成されたシート厚検知装置は、変位センサ50が変位部材43と当接して移動を検知可能な位置に配置すれば、レジストローラ対33、34がシート材Pを狭持した際、シート材Pの厚みを検知可能となる。加えて、変位センサ50に当接する変位部材43は回転方向の移動を上記小判型で規制されているため、変位センサ50の接触指51を回動する前ジストローラ34表面に当接した場合に比べ、接触指51の磨耗を低減することができる。
【0044】
次に、変位センサ50及び変位部材43の好ましい配置について説明する。
図10及び図11において、変位センサ50は変位部材43と当接可能な位置で、シート材搬送手段30のユニット筐体31に一体または固定して設けたセンサ取り付け部39に接触指51が変位部材43と向い合うように固定している。このとき、変位センサ50への給電、及び信号伝達は、シート材搬送手段30のユニット筐体31と画像形成装置本体が近接する位置で接触離間可能な接点(図示せず)を用いて行うこととしている。
【0045】
このようにして配置する変位センサ50の接触指51の押し込み方向とレジストローラ34の移動方向が一致するすることが望ましく、また変位センサ51の接触指51の先端である接触点は図11に示すように、レジストローラ33とレジストローラ34の中心を通る直線の延長線上に配置することが望ましい。
【0046】
よって、シート材搬送手段30のユニット筐体31には固定部材であるレジストローラ33のローラ保持部41及び変位部材であるレジストローラ34の変位ローラ保持部42に加えてセンサ取り付け部39を設けることで、精度良く変位センサ50を配置することができる。
【0047】
次に、変位部材43の別の実施例について説明する。
図12ないし図14において、ここに示した変位部材43は折り曲げ部にレジストローラ34の軸34Aに嵌合する孔45が形成され、その手前、すなわち曲げ部側にピン状の回動規制部46を設けられている。この回動規制部46は、図14に示すように、長孔溝である変位ローラ保持部42の短方向の幅と同寸の直径を有し、小判型フランジを持つ軸受36と同様に変位ローラ保持部42に挿入されている。
【0048】
このように構成された変位部材43は変位ローラ保持部42の長孔溝方向であるレジストローラ34との変位に追従することができるとともに、変位ローラ保持部42に挿入された回動規制部46によってその回動が規制される。
【0049】
図15は、変位部材43のさらに別の実施例を示す斜視図であって、レジストローラ34の軸受36がシート材搬送手段30のユニット筐体31でなく、変位部材43に固着されている。そして、この軸受36が上記実施形態と同様の小判型フランジを持つことで変位部材43がレジストローラ34との変位に追従するとともに回動が規制される。
【0050】
次に、変位部材43における変位センサ50の当接面について説明する。
変位部材43における変位センサ50の当接面は、図16に示すように、少なくともレジストローラ34の径よりも大きな曲率を持つ曲面で構成されている。
【0051】
このように構成することにより、変位センサ50の接触指51を変位ローラ34の表面に当接した場合に比べ、レジストローラ33が変位し、変位部材43の移動で変位センサ50の接触指51の当接位置が動くことによって生じる誤差を低減することができる。また、変位部材43の当接面の変形も抑止できる。
【0052】
ここで、前述の変位センサ接触指の当接位置が移動することによって生じる誤差について説明する。
図17は、レジストローラ34と変位センサ50の接触指51との当接部を示す模式図である。
【0053】
図17において、破線で示すものが変位前のレジストローラ34と変位センサ50の接触指51の位置関係であり、実線で示すものが変位後のレジストローラ34と変位センサ50の接触指51の位置関係を示している。
【0054】
図示するようにレジストローラ34が移動すると、レジストローラ34表面における、変位センサ50の接触位置が移動し、レジストローラ34の移動量と、変位センサ50の接触指51の移動量において差が生じる。この差が変位センサ50の接触指51の当接位置が移動することによって生じる誤差である。
【0055】
上記誤差は図18に示すようにレジストローラ34の変位量が増すとともに増大し、また、変位部材43における変位センサ50の当接面の曲率が小さくなれば増大するものである。
【0056】
また、本図ではレジストローラ34の当初の状態において変位センサ50の接触指51がレジストローラ34の移動方向に対して該ローラの頂点に接触しているものを想定しているが、変位センサ50を配置して時点でその位置がずれていれば、上記誤差も増大するものである。
【0057】
よって、変位部材43における変位センサ50の当接面は少なくともレジストローラ34よりも大きな曲率を持つ曲面で構成することにより、変位センサ50の接触指51を直接レジストローラ34の表面に当接した場合に比べ、変位センサ50の接触指51の当接位置が移動することによって生じる誤差を低減することができる。このことから、変位部材43における変位センサ50の当接面は図19に示すように、少なくとも変位センサ接触指の可動範囲内が平面で構成されることが好ましいといえる。
【0058】
次に、本発明のシート厚検知装置を搭載した画像形成装置における画像形成動作について説明をする。
画像形成動作にかかわる画像形成部、及びシート搬送に関連する動作は上記のものと大きく変わることはなく、詳しい説明は省略する。
【0059】
給紙手段2から給紙されたシート材Pは、レジストローラ対33、34に突き当たり、たわみを作ることで給紙ローラ2Aの送り出しで生じたシート材Pの斜行を矯正したのち、中間転写ベルト3上のトナー画像とシートの位置が一致するように所定のタイミングで駆動開始してシートをレジストローラ対33、34で狭持し、2次転写手段9に搬送する。
【0060】
レジストローラ対33、34がシート材Pを狭持した際、変位センサ50の検知結果から各種画像形成条件を自動的に変更することによって、シート材Pの厚みに応じた適切な画像形成を行うことができる。
【0061】
上記画像形成条件について具体的には、定着手段10の定着温度、2次転写手段のローラ印加電流がある。
定着温度について具体的には、定着ローラの表面温度を制御して、シート材Pが厚み0.08mm程度の普通紙の場合は175℃程度、厚み0.1mm程度の中厚口紙の場合は180℃程度と設定され、シートの厚みが増せばシートの熱容量が増すためより高い温度に設定される。
【0062】
また、2次転写電流値について具体的には、シートが厚み0.08mm程度の普通紙の場合は14μA程度、厚み0.17mm程度の厚口紙の場合は8μA程度と設定され、シート材Pの厚みが増せばより低い電流値に設定される。これはシート材Pの厚みが増すとその抵抗値が増すことによる。トナー像を良好にシート材Pに転写するためには、厚みに係らずシート材Pにかかわる電位を一定に保つ必要があり、V=I*Rの関係から低い電流値を設定する必要がある。
【0063】
上記画像形成条件の設定は、従来では使用者によるシート種情報に基づいて画像形成装置本体に入力することで行っていたが、本構成を用いれば、画像形成の過程で自動的に設定が可能となるため、使用者によるシート種情報の入力を行わずとも良好な画像形成を行うことができる。
【0064】
また、上記画像形成装置においては、両面搬送部57の搬送経路上にUターン部を構成しているため、シート材Pの厚みが増すとシート材Pの腰も強くなることから、Uターン部で搬送負荷が増し、シートを搬送できなくなる恐れがある。
よって、変位センサ50の検知結果から、裏面への画像形成が可能かを判断し、不可能なシートの場合は、両面搬送部57にシートを搬送せず、そのまま排紙トレイ55へ排出すれば、画像形成装置内での紙つまりを抑止できる。
【0065】
また、このとき3ページ以上の画像形成が入力された際は奇数ページのみ画像形成を行った後、偶数ページの印刷を行うため、使用者に排紙されたシートの再セットを促してもよい。
【0066】
以上のように、本発明のシート厚検知装置を画像形成装置に搭載することによって、使用者がシート種情報の入力を行わずとも良好な画像形成を行うことが可能となる。
【0067】
ところで、変位センサ50の設置箇所は上記画像形成装置において、図20に示すレジストローラ対33,34近傍の搬送ガイド部材60や図21に示す廃トナータンク4がある。
【0068】
図20の搬送ガイド部材60の設置では、搬送ガイド部材60が樹脂で構成される場合、長手方向の剛性を増すため箱型で形成される。そのため搬送ガイド部材60の裏面はデッドスペースとなっており、そのデッドスペースに変位センサ50を配置すれば限られた空間を有効利用することができる。
【0069】
図21の廃トナー収容部4については、その機能が流動体の収容であることから収容部自体の形状はその機能に影響しないように変更できるので、変位センサ50と直接取付けた場合または、近傍の部材に取付けられた場合でも、変位センサ50により占有されるスペースを容易に確保でき、限られた空間を有効利用することができる。
【0070】
また、上記変位部材43はレジストローラ34の軸線方向の幅より長い細板状に形成されているが、これを薄板金属で構成した場合、図22に示すように、その長手方向の一縁に沿って曲げ部43Aを設けると、前記変位部材当接面の変形を抑止できる。また、変位部材43を樹脂で構成した場合には図23に示すように、コの字型にすることで上記と同様変位部材43当接面の変形を抑止することができる。
【0071】
さらに、好ましい変位部材43としてレジストローラ34の対向面に、清掃部材として図24に示すようなレジストローラ34表面と摺接する樹脂シート材61や図25に示すようなスポンジ等の発泡材料からなる弾性部材62を設けることである。このような構成を追加することにより、変位ローラであるレジストローラ34表面に付着した異物(たとえば紙紛など)を除去することができるため、レジストローラ対33,34のニップ間に検知対象のシート材以外の物質が狭持されたことで生じるレジストローラ34の移動誤差を低減することができる。
【0072】
ところで、シート材Pの紙厚は変位センサ50の出力においてシート未達状態時とシート通過時での差分から検出しているが、変位センサ50の出力はレジストローラ34には偏芯ががあるため、図26に示すように、ローラ1周周期の波形が存在する。このため、変位センサ50の任意の出力からシートの厚みを検出しようとしてもローラ偏芯による検知誤差が生ずることが避けられない。
【0073】
そこで、図27に示す方法ではシート未達状態時とシート通過時においてそれぞれレジストローラ34の1周周期における出力の積分値を算出し、積分値の差からシート厚を検出している。
【0074】
また、図28に示す方法ではシート未達状態時とシート通過時においてそれぞれローラの1周分以上の所定幅の平均値を算出し、平均値の差からシート厚を検出している。
【0075】
さらにまた、図29に示す方法ではシート未達状態時とシート通過時における出力の最小値または最大値の差分でシート厚を検出している。このとき、最小値の差で検出することが好ましい。なぜならば、最大値であると、シート上またはローラ状に付着物が存在した場合、付着物の凸量分が最大値として検出される検知誤差が生ずるが、最小値であれば部分的の凹部があったとしてもそれが出力として検出されることがないからである。
【0076】
図30において、本実施形態のシート厚検知装置はレジストローラ34にシート材Pが進入する前の変位センサ50が出力した信号をCPU100にて記録する。次に、レジストローラ34にシート材Pが進入する後の変位センサ50の出力と進入する前の変位センサ50の出力との差分を演算することによってレジストローラ対33、34に進入したシート材Pの厚みを把握することができる。
【0077】
本実施形態の画像形成装置では、かくして得られたシート材Pの厚み情報からレジストローラ対33、34に進入したシート材Pが普通紙か、中厚口紙か、厚口紙かに分類する。また、本画像形成装置ではシート材Pが普通紙、中厚口紙及び厚口紙の何れかに属するかによって表1に示すように、2次転写手段9の転写電流値と定着手段10の定着温度が予め設定されている。したがって、シート材Pの紙種が把握されると、それに応じて2次転写手段9は2次転写電流値を制御する2次転写電流制御部101を介して予め設定された2次転写電流値を印加し、定着手段10は定着温度制御部102を介して予め設定された定着温度に温度制御され、かかる制御によってシート厚に応じた良好な画像品質が得られる。なお、図30では2次転写電流値、定着温度に加えて紙厚の影響を受ける両面時の制御のため、両面給紙制御部103を介してそれらに用いるステッピングモータやソレノイド等の両面給紙アクチュエータを制御している。
【0078】
【表1】
【0079】
本実施形態のシート厚検知装置は、レジストローラ33を固定部材、レジストローラ34をレジストローラ33に対して接触、離間方向に移動可能な変位ローラとして利用しているが、レジストローラ対以外に搭載することも可能である。このとき、画像形成装置はシート厚検知装置の検出によって2次転写電流値を制御するので、少なくとも2次転写手段9よりもシート材搬送方向の上流側にシート厚検知装置を設置する必要がある。なお、図31は給紙手段2とレジストローラ対33,34の間に設けた搬送ローラ対63,64に搭載している。また、かかる例において、搬送ローラ対64は変位ローラであるが、固定部材である搬送ローラ63はローラでなく、板状の部材等で構成すこともできる。
【符号の説明】
【0080】
2 給紙手段
9 2次転写手段
10 定着手段
33 レジストローラ(固定部材)
34 レジストローラ(変位ローラ)
43 変位部材
50 変位センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開平7−117890号公報
【特許文献2】特開2008−94600号公報
【特許文献3】特開平11−139621号公報
【特許文献4】特開2008−254855号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙部から給紙したシート材のシート厚を検知するシート厚検知装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置としては形成したトナー像をシート材に転写した後、定着手段によってトナー像をシート材に定着させる電子写真方式の装置が知られている。この種の画像形成装置では、シート材として普通紙と厚紙紙とを使用した場合、シート厚の違いによって転写条件や定着条件を変更する等の制御を行っている。このため、画像形成装置には給紙したシート材の厚さを検知するシート材厚さ検知装置を設け、該装置が検知したシート厚さをフィードバックさせて転写条件や定着条件を制御している。かかるシート材厚さ検知装置は、検知精度が高いだけでなく、安価にて提供することができることが要求されている。
【0003】
また、他の形式の画像形成装置においてもシート材の厚さに基づいて制御することは画像品質を高める上で有効であり、例えば、インクジェット記録装置ではシート厚によって異なる印字ヘッドからシート材上までの距離を一定にすることができる。
【0004】
このような観点から画像形成する用紙の厚さを検知することが知られており、かかる検知装置としては変位ローラに接触式変位センサのレバーを直接当接させて変位測定しようとするものであるが、この場合、レバー先端の磨耗によって経時的に検知精度が低下する。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献1には光学式の非接触式変位センサを用いて変位ローラの変位量を測定する装置が提案されている。また、特許文献2には透過光量を光学センサで測定し、透過光量の変化からシート厚を測定する装置が提案されている。さらにまた、特許文献3には変位ローラによって揺動するレバー部材の一端に設けたフラグが光学センサを遮るかで用紙の一定厚以上を検出している。
【0006】
しかしながら、光学式のセンサをシート厚検知に用いると、検知部に紙粉等が付着することによって、経時的に安定した検知精度を得ることが難しかった。さらに、特許文献1の装置では段落[0020]に「円筒形状のものの変位を計ろうとした場合、センサの取付け誤差が測定値に影響を及ぼす」と記載されるようにセンサの取付け精度が求められる。これについて、特許文献1では段落[0020]に「センサが発光素子と受光素子を持つ場合、発光素子と受光素子を軸方向に配置している」とあり、この場合においてもセンサを(光路)を回転体の法線上に置かなければ、回転体上で反射した光を受光部で検知できないおそれがある。いづれにしてもセンサの取付け精度、つまり、回転体の軸中心に対する位置と角度に対する取付け精度が求められる。さらにまた、特許文献1においては段落[0032]に「ローラの表面を研摩したローラーであると正反射してセンサの性能を発揮させる事ができない」また段落[0033]に「ローラを白色に塗装した」と記載されており、このように回転体の材質及び表面状態(色、光沢)の制約を受けている。このため、本来用紙を搬送するという機能を有する回転体に対して少なからず影響を与える。また、これらシート厚検知としての材質、表面加工を施すことによってコストアップになる。
【0007】
特許文献2の構成においては、透過型センサを用いるため、用紙をガイド板に押し付ける部材、アクチュエータ、センサ等の構成が必要となり、検知に必要な部材が多く構成の複雑化、コストアップとなる。
【0008】
特許文献3においては、被検知部材が支軸を中心に回動変位することにあり、シート厚と被検知部材の角度変位との差により検知誤差が生じることにある。
そこで、特許文献4には非接触式変位センサ(磁気式)を用いて変位ローラの変位量を測定する装置が提案されている。特許文献4の装置では、紙粉の影響を受けないので経時的に安定した検知精度を得られ易く、また光路を精度良く調整しなくてもすむ。
【0009】
しかしながら、特許文献4の構成においては段落[0076]に記載されるようにセンサに対する被検知部材の取付け精度が必要となり、センサの位置を調整しながら組み付ける必要がある。さらに、特許文献4は段落[0173]にあるように被検知体の部材は導電率が高いものである必要があるため、形状自由度が高く重量も軽い樹脂部品では構成できないまた、一般的にAl材やSUS材は一般鋼材(SECC)より値段が高いという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来の問題を解消し、シンプルな構成で安価であり、かつ経時的にも安定したシート厚検知精度を得ることができるシート厚検知装置及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、固定部材と、該固定部材に対して接触、離間方向に移動可能な変位ローラと、該変位ローラの変位に追従する変位部材を介してシート材の厚みを検知するシート厚検知装置において、前記変位ローラの前記固定部材に対して接触、離間する変位が直線方向で、前記変位部材の移動方向も該変位ローラと同じ方向であって、該変位部材には前記変位ローラの軸を回転自在に支持する軸受の少なくとも一方と一体であることを特徴とするシート厚検知装置を提供する。
【0012】
なお、本発明は、前記固定部材がローラであると効果的である。
さらに、本発明は、前記変位ローラの変位を直線方向に規制する部材を設け、該規制部材が変位部材の回動を規制すると効果的である。
【0013】
さらにまた、本発明は、前記変位部材の変位量を測定する変位センサは当該変位部材の移動方向を規制する部材に取り付けられていると効果的である。
さらにまた、本発明は、前記変位部材は前記変位ローラの軸受に嵌合されていると効果的である。
【0014】
さらにまた、本発明は、前記変位部材は前記変位センサが検知する面が前記変位ローラのローラ径よりも大きな曲率の面に形成されていると効果的である。
さらにまた、本発明は、前記変位部材は前記変位センサが検知する面が前記変位ローラの変位方向に対して垂直な面に形成されていると効果的である。
【0015】
さらにまた、本発明は、前記変位部材の前記変位ローラと対向する面に清掃部材を設けると効果的である。
上記の目的を達成するため、本発明は、請求項1ないし9の何れかに記載のシート厚検知装置がレジストローラ部に設けることを特徴とする画像形成装置を提案する。
【0016】
また、上記の目的を達成するため、本発明は、請求項1ないし9の何れかに記載のシート厚検知装置が給紙手段とレジストローラ部の間の搬送ローラ部に設けることを特徴とする画像形成装置を提案する。
【0017】
なお、本発明は、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に応じてトナー像を転写する転写装置内の転写手段の印加電流値を自動で制御すると効果的である。
【0018】
さらに、本発明は、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に応じて定着手段の定着温度を自動で制御すると効果的である。
さらにまた、本発明は、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に基づいて、両面印刷の可否を判定し、不可能な場合はシート材を両面搬送部に送らないよう制御すると効果的である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の構成によれば、変位ローラの固定部材に対して接触、離間する変位が直線方向で、変位部材の移動方向も該変位ローラと同じ方向であって、該変位部材には変位ローラの軸を回転自在に支持する軸受の少なくとも一方と一体であるので、変位ローラの移動方向に対して精度良く変位部材を配置するとともに、摩擦摺動部を減らし、変位ローラの移動に伴う変位部材の移動をスムーズに行うことが可能となる。
【0020】
請求項2の構成によれば、固定部材がローラであるので、変位ローラが磨耗変形を抑えることができる。
請求項3の構成によれば、変位ローラの変位を直線方向に規制する部材を設け、該規制部材が変位部材の回動を規制するので、部材の共通使用となり、低コスト、省スペースに寄与することができる。
【0021】
請求項4の構成によれば、変位部材の変位量を測定する変位センサは当該変位部材の移動方向を規制する部材に取り付けられているので、経時的にも安定した紙厚検知精度を得ることができる。
【0022】
請求項5の構成によれば、変位部材は変位ローラの軸受に嵌合されているので、変位部材の回動規制部を新たに追加することなく、変位ローラの移動方向に対して、精度良く変位部材を配置し、かつ摩擦摺動部を減らし、変位ローラの移動に伴う変位部材の移動をスムーズに行とともに、特殊な形状の軸受けを使うことなく、汎用的な軸受けを用いて構成することが可能となる。
【0023】
請求項6の構成によれば、変位部材は変位センサが検知する面が変位ローラのローラ径よりも大きな曲率の面に形成されているので、変位センサを変位ローラに接触させた場合に比べ、検知誤差を低減させるとともに、変位部材長手方向の変形を抑えることが可能となる。
【0024】
請求項7の構成によれば、変位部材は変位センサが検知する面が変位ローラの変位方向に対して垂直な面に形成されているので、変位センサを変位ローラに接触させた際生じる検知誤差をなくすことを可能としている。
【0025】
請求項8の構成によれば、変位部材の変位ローラと対向する面に清掃部材を設けたので、変位ローラ表面に異物が付着することによって生じる検知誤差を低減させることが可能となる。
【0026】
請求項8の構成によれば、変位センサは変位ローラを支持する部材に固定されているので、変位ローラ移動方向に対して、精度良く変位センサを配置することが可能となる。
【0027】
請求項9ないし13の構成によれば、経時的にも安定した紙厚検知精度を得られるシート厚検知装置を搭載した画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】その画像形成装置のシート材搬送手段を示す斜視図である。
【図3】シート材搬送手段のレジストローラ支持部の説明図である。
【図4】レジストローラ支持部にレジストローラを装着した状態の説明図である。
【図5】変位部材の外観斜視図である。
【図6】変位部材を取り付けたレジストローラ軸部の拡大断面図である。
【図7】レジストローラの軸受の斜視図である。
【図8】変位センサの斜視図である。
【図9】(a),(b),(c)は変位ローラ保持部と変位部材の回動規制を示す説明図である。
【図10】変位センサを取り付けたシート材搬送手段を示す斜視図である。
【図11】変位ローラ、変位部材及び変位センサのは位置関係を示す説明図である。
【図12】別の変位部材の外観斜視図である。
【図13】図12の変位部材の規制部を示す説明図である。
【図14】図13のXV−XV線に従う断面図である。
【図15】変位部材の別の例を示す斜視図である。
【図16】変位部材の変位センサ当接面を示す説明図である。
【図17】レジストローラと変位センサの接触指との当接部を示す模式図である。
【図18】レジストローラの変位移動量と検知誤差の関係を示すグラフである。
【図19】変位部材の変位センサ当接面を示す説明図である。
【図20】画像形成装置の別の例を示す概略構成図である。
【図21】画像形成装置のさらに別の例を示す概略構成図である。
【図22】変位部材の変形例を示す断面図である。
【図23】変位部材のさらに別の変形例を示す断面図である。
【図24】変位ローラの清掃部材を設けた変位部材を示す説明図である。
【図25】変位ローラの清掃部材を設けた別の変位部材を示す説明図である。
【図26】変位センサの出力を示すグラフである。
【図27】シート厚検出方法の1つの方法を示す説明図である。
【図28】シート厚検出方法の別の方法を示す説明図である。
【図29】シート厚検出方法のさらに別の方法を示す説明図である。
【図30】本発明の制御部を示すブロック図である。
【図31】本発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
図1は、本発明に係るシート厚検知装置を備える画像形成装置の一形態であるカラー画像形成装置の概略構成を示す中央断面図である。ここに示したカラー画像形成装置1は、画像形成装置筐体のほぼ中央部に4つの作像ユニット6C、6M、6Y、6Kを並べており、作像ユニット6C、6M、6Y、6Kの上方には、作像ユニットの感光体ドラム11に潜像を形成するための露光手段5が配置されている。作像ユニット6C、6M、6Y、6Kの下方には、複数の支持ローラ7、8に巻き掛けられ、反時計方向に回転する中間転写手段としての中間転写ベルト3が設けられ、支持ローラ7に該中間転写ベルト3を介して第2転写手段9が配置されている。
【0030】
図1の作像ユニット6C、6M、6Y、6Kは、形成するトナー像の色がイエロー、マゼンタ、シアン、黒と相違しているが、トナー像を形成する構成や作用は全て同じであるので、作像ユニット6をC、M、Y、Kの添え字を外して説明する。作像ユニット6の下部には、中間転写ベルト3に対向するように像担持体である感光体ドラム11が設けられ、不図示の駆動手段によって時計方向に回転駆動される。感光体ドラム11の周りには、1次転写後の残トナーを掻き取るクリーニング手段12、感光体ドラム11に当接する帯電手段13、トナー像を形成する現像手段14が配置され、現像手段14の中央領域は未使用トナー室15であり、ここに微小着色粉体として所定色のトナーが充填されている。また、感光体ドラム11と中間転写ベルト3を挟んで対向する位置には第1転写手段16が設けられている。
【0031】
画像形成時には、作像ユニット6C、6M、6Y、6Kに各色に応じたトナー像が形成され、これらトナー像が順次中間転写ベルト3上に重ね転写される。他方、中間転写ベルト3の下方には清掃により発生した廃トナーを貯める廃トナータンク4と、用紙等のシート状の記録媒体であるシート材Pを給紙する給紙手段2とが配置され、その給紙手段2より給紙されたシート材Pが後述するシート材搬送手段30を介して上記重ねトナー像に同期するように2次転写手段9へ給送される。なお、2次転写手段9に印加される電流値は5〜39μA程度であり、画像形成装置の設置環境、シート材Pのサイズ、シート材Pの厚み、シート材Pの搬送速度等の条件に応じて手適切な値に制御されるものである。
【0032】
画像が転写されたシート材Pは定着ローラ21とそれに対向する加圧ローラ22を有する定着装置20へ送られ、該定着装置20において加えられる熱及び圧力の作用によってトナー像がシート材Pに定着される。なお、このときの定着ローラ21の表面温度は、150〜200℃程度であり、画像形成装置の設置環境、シートの厚み、シートの搬送速度等の条件に応じて適切な値に制御されるものである。
【0033】
上記したシート材搬送手段30は、図1及び図2に示すように、ユニットとして構成され、そのユニット筐体31には給紙されたシート材Pの先端を突き当てて一旦停止させ、その後2次転写部に向けて搬送するレジストローラ対33、34、該レジストローラ対33、34にシート材Pが到達したことを検知するレジスト前センサ32、上記2次転写手段9及び用紙搬送ガイド等が搭載されている。
【0034】
このように構成された画像形成装置には、シート材を給紙する給紙手段2から2次転写手段9までの間に、給紙したシート材厚を検知するためのシート厚検知装置が設けられている。本実施形態のシート厚検知装置は、レジストローラ対33、34を用いており、一方のレジストローラ33を固定部材として用い、他方のレジストローラ34をレジストローラ33に対して接触、離間方向に移動可能な変位ローラとして用いている。このため、レジストローラ33は図3及び図9(a)に示すように、丸孔に形成されたユニット筐体31に形成された位置固定のローラ保持部41に保持され、レジストローラ33は同じくユニット筐体31に形成された長孔溝状に形成された変位ローラ保持部42に保持されている。
【0035】
実際には、図4に示すように、ローラ保持部41にレジストローラ33の軸33Aが軸受35を介して嵌合され、変位ローラ保持部42にレジストローラ34の軸34Aが軸受36を介して移動可能に嵌合されている。このとき、変位ローラであるレジストローラ34の移動方向は、変位ローラ保持部42に長孔溝の延びる方向に規制され、その延びる方向がレジストローラ33の中心から一直線に延びるの方向であるため、レジストローラ34はその軸受36とユニット筐体31に形成された変位ローラ保持部42によって、レジストローラ33に対して一直線方向のみに変位可能となっている。
【0036】
レジストローラ34には、図4に示すように、軸受36を介してレジストローラ33に当接する方向に付勢力がスプリング37によって与えられており、該スプリング37によってレジストローラ対33、34のシート狭持圧が与えられている。さらに、レジストローラ33は軸方向端部に設けられた駆動ギヤ38が画像形成装置本体に配置された駆動源より駆動力が伝達され、駆動ギヤ38の回転によってレジストローラ対33、34が回転駆動されてシート材Pを搬送する。また、図示していないが、レジストローラ33、レジストローラ34のもう一方の端部にはそれぞれアイドラギヤが設けられ、レジストローラ33が受けた駆動力がアイドラギヤを介してレジストローラ34に伝達される。
【0037】
画像形成時に給紙されたシート材は、レジスト前センサ32に検知された後、停止しているレジストローラ対33、34のニップに突き当てられる。突き当て後、給紙手段2の給紙ローラ2Aにて所定量シート材が搬送したタイミングでその給紙ローラ2Aの駆動を停止させることでシート材Pにたわみを作ることができ、給紙手段2の送り出し等によって生じたシート材の斜行を矯正することができる。その後、レジストローラ対33、34は中間転写ベルト3上のトナー画像とシート材の位置が一致するように所定のタイミングで駆動開始し、シート材Pを2次転写装置9に搬送する。
【0038】
なお、本実施形態においてシート材搬送手段30のユニット筐体31はカラー画像形成装置1の内部を開放するカバー50に着脱自在に取付けられている。そして、シート材搬送手段30は該カバー50をカラー画像形成装置1に備えた回動支点51を中心に図1の時計方向に回動することにより現出し、該カバー50からの取り出しや、清掃もしくはジャム紙の除去等のメンテナンスを行うことができる。
【0039】
また、本実施形態のカラー画像形成装置1には給紙カセットを備えた給紙手段2のほかに手差し給紙手段52が設けられており、この手差し給紙手段52は手差し給紙トレイ53に積載されたシートPを給紙手段2と同様に2次転写手段9に向けて給送するものである。
【0040】
2次転写手段9においてトナー像を転写されるとシートPは定着手段10へ搬送されて熱と圧とによってトナー像がシートPに定着される。定着後のシートPは、排出ローラ54を介して装置上面の排紙トレイ55へ排出される。また、両面モードが選択されているときは、定着を終えたシートPの後端がシート搬送路の分岐点56を越えた後、排出ローラ54を反回転してシートPをスイッチバックさせて両面搬送部57へ送り込み、再びレジストローラ対33、34を経て画像形成を行う。
【0041】
次に本実施形態のシート厚検知装置について詳細を説明する。
レジストローラ対33、34に搭載されている本実施形態のシート厚検知装置は、レジストローラ34の変位に追従する図5及び図6に示す変位部材43がそのレジストローラ34の軸受36に取り付けられている。この変位部材43は、レジストローラ34の軸線方向の幅より長い長さを持つ帯状の細板状に形成され、その両端がローラの軸心方向に折り曲げらている。そして、折り曲げられた部分には軸受36に嵌合する嵌合孔44が形成されている。このとき、軸受36は図7及び図9(b)に示すように、汎用的に用いられる小判柄フランジつきすべり軸受、すなわち、周面に平行な平面が形成された小判型フランジを持つ軸受である。これに嵌合する嵌合孔44の形状も図9(c)に示すように、同形の小判型に形成され、嵌合孔44は軸受36に精度良く嵌合されるとともに、小判型形状の嵌合によって変位部材43の回動が規制されつつ、レジストローラ34の移動に伴って移動、すなわち変位することが可能となっている。
【0042】
本実施形態のシート厚検知装置が用いる変位センサ50は、図8に示すように、支点回動するレバー型の接触指51を備えたもので、センサ内部に有するエンコーダー(図示せず)により上記接触指51の角度変位から接触指押し込み方向の変位として検知するものである。この変位センサ50は6μm以上の検知分解能を具備し、シート材Pの紙厚を検知するには十分な精度である。
【0043】
このように構成されたシート厚検知装置は、変位センサ50が変位部材43と当接して移動を検知可能な位置に配置すれば、レジストローラ対33、34がシート材Pを狭持した際、シート材Pの厚みを検知可能となる。加えて、変位センサ50に当接する変位部材43は回転方向の移動を上記小判型で規制されているため、変位センサ50の接触指51を回動する前ジストローラ34表面に当接した場合に比べ、接触指51の磨耗を低減することができる。
【0044】
次に、変位センサ50及び変位部材43の好ましい配置について説明する。
図10及び図11において、変位センサ50は変位部材43と当接可能な位置で、シート材搬送手段30のユニット筐体31に一体または固定して設けたセンサ取り付け部39に接触指51が変位部材43と向い合うように固定している。このとき、変位センサ50への給電、及び信号伝達は、シート材搬送手段30のユニット筐体31と画像形成装置本体が近接する位置で接触離間可能な接点(図示せず)を用いて行うこととしている。
【0045】
このようにして配置する変位センサ50の接触指51の押し込み方向とレジストローラ34の移動方向が一致するすることが望ましく、また変位センサ51の接触指51の先端である接触点は図11に示すように、レジストローラ33とレジストローラ34の中心を通る直線の延長線上に配置することが望ましい。
【0046】
よって、シート材搬送手段30のユニット筐体31には固定部材であるレジストローラ33のローラ保持部41及び変位部材であるレジストローラ34の変位ローラ保持部42に加えてセンサ取り付け部39を設けることで、精度良く変位センサ50を配置することができる。
【0047】
次に、変位部材43の別の実施例について説明する。
図12ないし図14において、ここに示した変位部材43は折り曲げ部にレジストローラ34の軸34Aに嵌合する孔45が形成され、その手前、すなわち曲げ部側にピン状の回動規制部46を設けられている。この回動規制部46は、図14に示すように、長孔溝である変位ローラ保持部42の短方向の幅と同寸の直径を有し、小判型フランジを持つ軸受36と同様に変位ローラ保持部42に挿入されている。
【0048】
このように構成された変位部材43は変位ローラ保持部42の長孔溝方向であるレジストローラ34との変位に追従することができるとともに、変位ローラ保持部42に挿入された回動規制部46によってその回動が規制される。
【0049】
図15は、変位部材43のさらに別の実施例を示す斜視図であって、レジストローラ34の軸受36がシート材搬送手段30のユニット筐体31でなく、変位部材43に固着されている。そして、この軸受36が上記実施形態と同様の小判型フランジを持つことで変位部材43がレジストローラ34との変位に追従するとともに回動が規制される。
【0050】
次に、変位部材43における変位センサ50の当接面について説明する。
変位部材43における変位センサ50の当接面は、図16に示すように、少なくともレジストローラ34の径よりも大きな曲率を持つ曲面で構成されている。
【0051】
このように構成することにより、変位センサ50の接触指51を変位ローラ34の表面に当接した場合に比べ、レジストローラ33が変位し、変位部材43の移動で変位センサ50の接触指51の当接位置が動くことによって生じる誤差を低減することができる。また、変位部材43の当接面の変形も抑止できる。
【0052】
ここで、前述の変位センサ接触指の当接位置が移動することによって生じる誤差について説明する。
図17は、レジストローラ34と変位センサ50の接触指51との当接部を示す模式図である。
【0053】
図17において、破線で示すものが変位前のレジストローラ34と変位センサ50の接触指51の位置関係であり、実線で示すものが変位後のレジストローラ34と変位センサ50の接触指51の位置関係を示している。
【0054】
図示するようにレジストローラ34が移動すると、レジストローラ34表面における、変位センサ50の接触位置が移動し、レジストローラ34の移動量と、変位センサ50の接触指51の移動量において差が生じる。この差が変位センサ50の接触指51の当接位置が移動することによって生じる誤差である。
【0055】
上記誤差は図18に示すようにレジストローラ34の変位量が増すとともに増大し、また、変位部材43における変位センサ50の当接面の曲率が小さくなれば増大するものである。
【0056】
また、本図ではレジストローラ34の当初の状態において変位センサ50の接触指51がレジストローラ34の移動方向に対して該ローラの頂点に接触しているものを想定しているが、変位センサ50を配置して時点でその位置がずれていれば、上記誤差も増大するものである。
【0057】
よって、変位部材43における変位センサ50の当接面は少なくともレジストローラ34よりも大きな曲率を持つ曲面で構成することにより、変位センサ50の接触指51を直接レジストローラ34の表面に当接した場合に比べ、変位センサ50の接触指51の当接位置が移動することによって生じる誤差を低減することができる。このことから、変位部材43における変位センサ50の当接面は図19に示すように、少なくとも変位センサ接触指の可動範囲内が平面で構成されることが好ましいといえる。
【0058】
次に、本発明のシート厚検知装置を搭載した画像形成装置における画像形成動作について説明をする。
画像形成動作にかかわる画像形成部、及びシート搬送に関連する動作は上記のものと大きく変わることはなく、詳しい説明は省略する。
【0059】
給紙手段2から給紙されたシート材Pは、レジストローラ対33、34に突き当たり、たわみを作ることで給紙ローラ2Aの送り出しで生じたシート材Pの斜行を矯正したのち、中間転写ベルト3上のトナー画像とシートの位置が一致するように所定のタイミングで駆動開始してシートをレジストローラ対33、34で狭持し、2次転写手段9に搬送する。
【0060】
レジストローラ対33、34がシート材Pを狭持した際、変位センサ50の検知結果から各種画像形成条件を自動的に変更することによって、シート材Pの厚みに応じた適切な画像形成を行うことができる。
【0061】
上記画像形成条件について具体的には、定着手段10の定着温度、2次転写手段のローラ印加電流がある。
定着温度について具体的には、定着ローラの表面温度を制御して、シート材Pが厚み0.08mm程度の普通紙の場合は175℃程度、厚み0.1mm程度の中厚口紙の場合は180℃程度と設定され、シートの厚みが増せばシートの熱容量が増すためより高い温度に設定される。
【0062】
また、2次転写電流値について具体的には、シートが厚み0.08mm程度の普通紙の場合は14μA程度、厚み0.17mm程度の厚口紙の場合は8μA程度と設定され、シート材Pの厚みが増せばより低い電流値に設定される。これはシート材Pの厚みが増すとその抵抗値が増すことによる。トナー像を良好にシート材Pに転写するためには、厚みに係らずシート材Pにかかわる電位を一定に保つ必要があり、V=I*Rの関係から低い電流値を設定する必要がある。
【0063】
上記画像形成条件の設定は、従来では使用者によるシート種情報に基づいて画像形成装置本体に入力することで行っていたが、本構成を用いれば、画像形成の過程で自動的に設定が可能となるため、使用者によるシート種情報の入力を行わずとも良好な画像形成を行うことができる。
【0064】
また、上記画像形成装置においては、両面搬送部57の搬送経路上にUターン部を構成しているため、シート材Pの厚みが増すとシート材Pの腰も強くなることから、Uターン部で搬送負荷が増し、シートを搬送できなくなる恐れがある。
よって、変位センサ50の検知結果から、裏面への画像形成が可能かを判断し、不可能なシートの場合は、両面搬送部57にシートを搬送せず、そのまま排紙トレイ55へ排出すれば、画像形成装置内での紙つまりを抑止できる。
【0065】
また、このとき3ページ以上の画像形成が入力された際は奇数ページのみ画像形成を行った後、偶数ページの印刷を行うため、使用者に排紙されたシートの再セットを促してもよい。
【0066】
以上のように、本発明のシート厚検知装置を画像形成装置に搭載することによって、使用者がシート種情報の入力を行わずとも良好な画像形成を行うことが可能となる。
【0067】
ところで、変位センサ50の設置箇所は上記画像形成装置において、図20に示すレジストローラ対33,34近傍の搬送ガイド部材60や図21に示す廃トナータンク4がある。
【0068】
図20の搬送ガイド部材60の設置では、搬送ガイド部材60が樹脂で構成される場合、長手方向の剛性を増すため箱型で形成される。そのため搬送ガイド部材60の裏面はデッドスペースとなっており、そのデッドスペースに変位センサ50を配置すれば限られた空間を有効利用することができる。
【0069】
図21の廃トナー収容部4については、その機能が流動体の収容であることから収容部自体の形状はその機能に影響しないように変更できるので、変位センサ50と直接取付けた場合または、近傍の部材に取付けられた場合でも、変位センサ50により占有されるスペースを容易に確保でき、限られた空間を有効利用することができる。
【0070】
また、上記変位部材43はレジストローラ34の軸線方向の幅より長い細板状に形成されているが、これを薄板金属で構成した場合、図22に示すように、その長手方向の一縁に沿って曲げ部43Aを設けると、前記変位部材当接面の変形を抑止できる。また、変位部材43を樹脂で構成した場合には図23に示すように、コの字型にすることで上記と同様変位部材43当接面の変形を抑止することができる。
【0071】
さらに、好ましい変位部材43としてレジストローラ34の対向面に、清掃部材として図24に示すようなレジストローラ34表面と摺接する樹脂シート材61や図25に示すようなスポンジ等の発泡材料からなる弾性部材62を設けることである。このような構成を追加することにより、変位ローラであるレジストローラ34表面に付着した異物(たとえば紙紛など)を除去することができるため、レジストローラ対33,34のニップ間に検知対象のシート材以外の物質が狭持されたことで生じるレジストローラ34の移動誤差を低減することができる。
【0072】
ところで、シート材Pの紙厚は変位センサ50の出力においてシート未達状態時とシート通過時での差分から検出しているが、変位センサ50の出力はレジストローラ34には偏芯ががあるため、図26に示すように、ローラ1周周期の波形が存在する。このため、変位センサ50の任意の出力からシートの厚みを検出しようとしてもローラ偏芯による検知誤差が生ずることが避けられない。
【0073】
そこで、図27に示す方法ではシート未達状態時とシート通過時においてそれぞれレジストローラ34の1周周期における出力の積分値を算出し、積分値の差からシート厚を検出している。
【0074】
また、図28に示す方法ではシート未達状態時とシート通過時においてそれぞれローラの1周分以上の所定幅の平均値を算出し、平均値の差からシート厚を検出している。
【0075】
さらにまた、図29に示す方法ではシート未達状態時とシート通過時における出力の最小値または最大値の差分でシート厚を検出している。このとき、最小値の差で検出することが好ましい。なぜならば、最大値であると、シート上またはローラ状に付着物が存在した場合、付着物の凸量分が最大値として検出される検知誤差が生ずるが、最小値であれば部分的の凹部があったとしてもそれが出力として検出されることがないからである。
【0076】
図30において、本実施形態のシート厚検知装置はレジストローラ34にシート材Pが進入する前の変位センサ50が出力した信号をCPU100にて記録する。次に、レジストローラ34にシート材Pが進入する後の変位センサ50の出力と進入する前の変位センサ50の出力との差分を演算することによってレジストローラ対33、34に進入したシート材Pの厚みを把握することができる。
【0077】
本実施形態の画像形成装置では、かくして得られたシート材Pの厚み情報からレジストローラ対33、34に進入したシート材Pが普通紙か、中厚口紙か、厚口紙かに分類する。また、本画像形成装置ではシート材Pが普通紙、中厚口紙及び厚口紙の何れかに属するかによって表1に示すように、2次転写手段9の転写電流値と定着手段10の定着温度が予め設定されている。したがって、シート材Pの紙種が把握されると、それに応じて2次転写手段9は2次転写電流値を制御する2次転写電流制御部101を介して予め設定された2次転写電流値を印加し、定着手段10は定着温度制御部102を介して予め設定された定着温度に温度制御され、かかる制御によってシート厚に応じた良好な画像品質が得られる。なお、図30では2次転写電流値、定着温度に加えて紙厚の影響を受ける両面時の制御のため、両面給紙制御部103を介してそれらに用いるステッピングモータやソレノイド等の両面給紙アクチュエータを制御している。
【0078】
【表1】
【0079】
本実施形態のシート厚検知装置は、レジストローラ33を固定部材、レジストローラ34をレジストローラ33に対して接触、離間方向に移動可能な変位ローラとして利用しているが、レジストローラ対以外に搭載することも可能である。このとき、画像形成装置はシート厚検知装置の検出によって2次転写電流値を制御するので、少なくとも2次転写手段9よりもシート材搬送方向の上流側にシート厚検知装置を設置する必要がある。なお、図31は給紙手段2とレジストローラ対33,34の間に設けた搬送ローラ対63,64に搭載している。また、かかる例において、搬送ローラ対64は変位ローラであるが、固定部材である搬送ローラ63はローラでなく、板状の部材等で構成すこともできる。
【符号の説明】
【0080】
2 給紙手段
9 2次転写手段
10 定着手段
33 レジストローラ(固定部材)
34 レジストローラ(変位ローラ)
43 変位部材
50 変位センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開平7−117890号公報
【特許文献2】特開2008−94600号公報
【特許文献3】特開平11−139621号公報
【特許文献4】特開2008−254855号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、該固定部材に対して接触、離間方向に移動可能な変位ローラと、該変位ローラの変位に追従する変位部材を介してシート材の厚みを検知するシート厚検知装置において、
前記変位ローラの前記固定部材に対して接触、離間する変位が直線方向で、前記変位部材の移動方向も該変位ローラと同じ方向であって、該変位部材には前記変位ローラの軸を回転自在に支持する軸受の少なくとも一方と一体であることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート厚検知装置において、前記固定部材がローラであることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート厚検知装置において、前記変位ローラの変位を直線方向に規制する部材を設け、該規制部材が変位部材の回動を規制することを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載のシート厚検知装置において、前記変位部材の変位量を測定する変位センサは当該変位部材の移動方向を規制する部材に取り付けられていることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項5】
請求項1ないし3の何れかに記載のシート厚検知装置において、前記変位部材は前記変位ローラの軸受に嵌合されていることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかに記載のシート厚検知装置において、前記変位部材は前記変位センサが検知する面が前記変位ローラのローラ径よりも大きな曲率の面に形成されていることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れかに記載のシート厚検知装置において、前記変位部材は前記変位センサが検知する面が前記変位ローラの変位方向に対して垂直な面に形成されていることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れかに記載のシート厚検知装置において、前記変位部材の前記変位ローラと対向する面に清掃部材を設けたことを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載のシート厚検知装置がレジストローラ部に設けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れかに記載のシート厚検知装置が給紙手段とレジストローラ部の間の搬送ローラ部に設けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の画像形成装置において、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に応じてトナー像を転写する転写装置内の転写手段の印加電流値を自動で制御することを可能とした画像形成装置。
【請求項12】
請求項9または10に記載の画像形成装置において、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に応じて定着手段の定着温度を自動で制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項9または10に記載の画像形成装置において、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に基づいて、両面印刷の可否を判定し、不可能な場合はシート材を両面搬送部に送らないよう制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
固定部材と、該固定部材に対して接触、離間方向に移動可能な変位ローラと、該変位ローラの変位に追従する変位部材を介してシート材の厚みを検知するシート厚検知装置において、
前記変位ローラの前記固定部材に対して接触、離間する変位が直線方向で、前記変位部材の移動方向も該変位ローラと同じ方向であって、該変位部材には前記変位ローラの軸を回転自在に支持する軸受の少なくとも一方と一体であることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート厚検知装置において、前記固定部材がローラであることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシート厚検知装置において、前記変位ローラの変位を直線方向に規制する部材を設け、該規制部材が変位部材の回動を規制することを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載のシート厚検知装置において、前記変位部材の変位量を測定する変位センサは当該変位部材の移動方向を規制する部材に取り付けられていることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項5】
請求項1ないし3の何れかに記載のシート厚検知装置において、前記変位部材は前記変位ローラの軸受に嵌合されていることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかに記載のシート厚検知装置において、前記変位部材は前記変位センサが検知する面が前記変位ローラのローラ径よりも大きな曲率の面に形成されていることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れかに記載のシート厚検知装置において、前記変位部材は前記変位センサが検知する面が前記変位ローラの変位方向に対して垂直な面に形成されていることを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れかに記載のシート厚検知装置において、前記変位部材の前記変位ローラと対向する面に清掃部材を設けたことを特徴とするシート厚検知装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載のシート厚検知装置がレジストローラ部に設けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れかに記載のシート厚検知装置が給紙手段とレジストローラ部の間の搬送ローラ部に設けることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の画像形成装置において、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に応じてトナー像を転写する転写装置内の転写手段の印加電流値を自動で制御することを可能とした画像形成装置。
【請求項12】
請求項9または10に記載の画像形成装置において、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に応じて定着手段の定着温度を自動で制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項9または10に記載の画像形成装置において、前記シート厚検知装置によるシート材の検知結果に基づいて、両面印刷の可否を判定し、不可能な場合はシート材を両面搬送部に送らないよう制御することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2011−79665(P2011−79665A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124182(P2010−124182)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]