説明

シート状もしくはペースト状接着剤、電子部品装置の製造方法及び電子部品装置

【課題】 電子部品素子を支持部材等に接合する際に用いられ、側方への接着剤のはみ出しが生じ難く、信頼性に優れた電子部品装置を提供することを可能とするシート状もしくはペースト状接着剤、並びに該接着剤を用いた電子部品装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 電子部品素子3の一面3aを電子部品素子が搭載される支持部材としての基板2に接着するのに用いられるシート状接着剤4であって、電子部品素子3の一面3aの面積に比べ、圧接による接着剤の厚み減少割合に応じた該シート状接着剤4の面積の増大分に応じて面積が小さくされているシート状もしくはペースト状接着剤4。シート状もしくはペースト状接着剤4を電子部品素子3の一面3aと、支持部材としての基板2との間に介在させ、電子部品素子3を基板2に圧接させ、シート状もしくはペースト状接着剤4を硬化させる、電子部品装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体チップなどの電子部品素子を基板などの支持部材または他の電子部品素子に接合するためのシート状もしくはペースト状接着剤、該シート状もしくはペースト状接着剤を用いた電子部品装置及びその製造方法に関し、より詳細には、電子部品素子と支持部材もしくは他の電子部品素子との間において圧接された後に硬化されるシート状もしくはペースト状接着剤、該シート状もしくはペースト状接着剤を用いた電子部品装置の製造方法及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を基板に接合するに際しては、半導体素子を基板上に搭載した後、半導体素子の下面と基板との間の隙間に接着剤を注入し、硬化させる方法が広く用いられていた。このように、後で接着剤を注入して形成される接着剤層は、通常、アンダーフィルと称されている。アンダーフィルを形成することにより、半導体素子の接合強度が高められ、かつ半導体素子と基板上の電極との電気的接続部分の信頼性が高められている。
【0003】
ところで、半導体素子などの電子部品素子の小型化に伴って、隙間が狭くなったり、電極間隔が狭くなり接合後に接着剤を注入し、アンダーフィルを形成することが困難となってきている。またチップの高機能化に伴いチップサイズが大きくなり、後でアンダーフィルを均一に大面積に注入することが困難になってきた。そのため、近年、シート状もしくはペースト状接着剤を半導体素子の一面と基板との間に介在させた状態で、半導体素子を基板側に圧接し、しかる後シート状もしくはペースト状接着剤を硬化させる方法が用いられてきている。このようなシート状もしくはペースト状接着剤を用いた電子部品素子の製造方法は、例えば下記の特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0004】
図3(a)〜(c)は、従来のシート状接着剤を用いた電子部品装置の製造方法を説明するための各部分切欠正面断面図である。
【0005】
図3(a)に示すように、ステージ101上に基板102を配置する。他方、吸引治具104の下面に半導体素子105を吸引保持する。吸引治具104は、下面104aに開いた吸引孔104bを有する。吸引孔104bから吸引することにより、半導体素子105が下面104aに保持されている。半導体素子105の下面105aは、下方に突出するように金属バンプ106,107が設けられている。また、半導体素子105では、上面105b上に、図示しない電極等が形成されている。
【0006】
図3(b)に示すように、接合に際しては、吸引治具104を下方に移動させ、金属バンプ106,107を基板102の上面に圧接させる。この場合、金属バンプ106,107によりシート状接着剤103の一部が押し退けられ、金属バンプ106,107の先端が、基板102上の電極ランド(図示せず)に電気的に接続される。しかる後、加熱または光の照射等によりシート状接着剤103が硬化される。このようにして図3(c)に示すように、基板102上に、接着剤硬化物103Aにより半導体素子105が接着されている半導体装置108が得られる。
【特許文献1】特開平2−82633号公報
【特許文献2】特開2004−140366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3(c)に示すように、上記製造方法では、圧接によりシート状接着剤の一部が横方向に染み出し、半導体素子105の側面から上面105bに至るように回り込むことがあった。他方、半導体素子105の上面105bには、図示しない電極等が配置されており、この電極が接着剤硬化物103Aにより被覆されると、該電極を他の電子部品素子や回路と電気的に接続することができなくなる。
【0008】
このような問題を解決するには、半導体素子105と基板102との間の隙間から接着剤103が側方にはみ出さないようにすることが求められる。しかしながら、硬化前には、上記金属バンプ106,107により、接着剤103を確実に押し退け、金属バンプ106,107の先端を基板103上の電極ランドに確実に接触させることが必要である。そのため、硬化前の接着剤103はある程度の流動性を有することが求められる。従って、流動性の低すぎる接着剤を用いることはできないので、接着剤103の側方へのはみ出しを確実に抑制することは困難であった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、電子部品素子を基板にシート状もしくはペースト状接着剤を介して圧接させ、かつ接合するのに用いられるシート状もしくはペースト状接着剤であって、該接着剤の側方へのはみ出しを効果的に制御することができ、余分なはみ出しによる不良品が生じ難い、シート状もしくはペースト状接着剤、並びに該シート状もしくはペースト状接着剤を用いた電子部品装置の製造方法及び電子部品装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、電子部品素子の一面を電子部品素子が搭載される支持部材または他の電子部品素子にシート状もしくはペースト状接着剤を介して圧接し、接着するためのシート状もしくはペースト状接着剤であって、前記電子部品素子の前記一面の面積に比べて、圧接によるシート状もしくはペースト状接着剤の厚み減少割合に応じた該シート状もしくはペースト状接着剤の面積の増大分に応じて面積が小さくされていることを特徴とする、シート状もしくはペースト状接着剤が提供される。
【0011】
好ましくは、上記支持部材及び電子部品素子上の電気的な接続を図るための電極上に接着剤が接触しないように前記シ−ト状もしくはペースト状接着剤が配置される。
【0012】
上記シート状もしくはペースト状接着剤の平面形状は特に限定されないが、本発明のある特定の局面では、n角形(nは3以上の整数)の平面形状を有し、コーナー部分を除いた辺の部分に切欠が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るシート状もしくはペースト状接着剤の他の特定の局面では上記切欠は、n個の辺のそれぞれに設けられる。
【0014】
本発明に係る電子部品装置の製造方法は、本発明に従って構成されたシート状もしくはペースト状接着剤を、電子部品素子の一面と該電子部品素子が搭載される支持部材または他の電子部品素子との間に介在させ、電子部品素子を支持部材または他の電子部品素子に圧接させる工程と、前記シート状もしくはペースト状接着剤を硬化させる工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電子部品装置は、本発明に従って構成されたシート状もしくはペースト状接着剤の硬化物により単数もしくは複数個の電子部品素子が支持部材または他の電子部品素子に接合されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る電子部品素子は、好ましくは、電子部品素子内を上下貫通した電気的な接
続電極端子もしくは電子部品素子側面をフレキシブル回路基板などの導電回路を介して上下に電気的な接続電極端子もつことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るシート状もしくはペースト状接着剤では、電子部品素子の上記一面の面積に比べ、圧接による接着剤の厚み減少割合に応じたシート状もしくはペースト状接着剤の面積の増大分に応じて面積が小さくされている。従って、圧接により、シート状もしくはペースト状接着剤の面積が増大したとしても、該増大による接着剤の電子部品素子の側方へのはみ出しを確実に抑制することができる。
【0018】
また、該支持部材及び電子部品素子上の電気的な接続をとる電極部位に接着剤が接触しないように、シ−ト状接着剤が配置されている場合には、樹脂の電極部位への噛み込みがない上、電子部品素子の上面の電極等が接着剤で被覆され難く、従って電子部品装置の不良率をより一層低減することが可能となる。
【0019】
電子部品素子が、複数個3次元上に積層させる場合、電子部品素子内を上下貫通した電気的な接続電極端子もしくは電子部品素子側面をフレキシブル回路基板などの導電回路を介して上下に電気的な接続電極端子もつことになり、そのような構造を有する電子部品装置でも上層電子部品素子の電極への接着剤のはみ出し及び這い上がり起因の被覆がされ難く、従って本ケースにおいても電子部品装置の不良率を低減することが可能となる。
【0020】
シート状接着剤が、本発明のある電極位置に依っては、n角形(nは3以上の整数)の平面形状を有し、本発明に係るシートもしくはペースト状接着剤が電極を避けるため及びはみ出しを防止するために該電極部分の接着剤を除く目的の孔もしくは切欠もしくは孔と切欠けをシート接着材中に設けることで接着剤の電極部位への噛み込みをより確実に抑制することができる。
【0021】
本発明に係る電子部品装置の製造方法によれば、シート状接着剤を電子部品素子の一面と、支持部材または他の電子部品素子との間に介在させ、電子部品素子を支持部材または他の電子部品素子に圧接させ、しかる後硬化させるため、電子部品素子と支持部材または他の電子部品素子との間の空間から側方への接着剤のはみ出し及び電極への接着剤噛み込みに伴う電気導通不良を確実に抑制することができ、電子部品装置の良品率を高めることが可能となる。
【0022】
本発明に係る電子部品装置は、本発明に従って構成されたシート状接着剤の硬化物により電子部品素子が支持部材または他の電子部品素子に接合されているため、接着剤硬化物により、電子部品素子の上面が樹脂被覆され難いため、信頼性に優れた電子部品装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態及び実施例を説明することにより本発明の詳細を説明する。
【0024】
本発明に係るシート状もしくはペースト状接着剤は、硬化前にはある程度の柔軟性を有し、硬化後には電子部品素子を支持部材または他の電子部品素子に強固に接合する。このような作用を果たし得る限り、上記シート状もしくはペースト状接着剤を構成する接着性材料は特に限定されるものではない。好ましくは、上記接着剤としては、硬化後の接合強度に優れているため、エポキシ樹脂系接着剤が用いられる。このようなエポキシ樹脂系接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤、並びに必要に応じて添加される硬化促進剤、シリコンチップや基板との接着性を向上させるためのシランカップリング剤を含むエポキシ樹脂系接着剤組成物が用いられる。
【0025】
使用し得るエポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等のような芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、並びにこれらの水添化物などが用いられている。
【0026】
上記各種エポキシ基含有化合物にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂;等、従来公知の各種エポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0027】
上記エポキシ樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、エポキシ樹脂硬化剤についても特に限定されず、従来より周知のフェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、潜在性硬化剤(ジシアンジアミド等)、ジアミン系硬化剤、イミダゾール系、ホスフィン系などを用いることができる。
【0028】
また、必要に応じて添加される硬化促進剤についても、従来より公知のエポキシ樹脂系接着剤において用いられる2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、
1,2-ジメチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−アリール−4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジ
ン、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジンイソシアヌール酸付加物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどの硬化促進剤を用いることができる。
【0029】
本発明に係るシート状もしくはペースト状接着剤では、硬化前の面積が、接合面である電子部品素子の一面の面積に比べて小さくされていることを特徴とする。この小さくされている程度は、電子部品素子の上記一面の面積に比べ、圧接によるシート状もしくはペースト状接着剤の厚み減少具合に応じた該シート状もしくはペースト状接着剤の面積の増大分とされればよい。
【0030】
もっとも、上記小さくされている程度は幅を有していてもよい。すなわち、電子部品素子の上記一面の面積に比べ、圧接による接着剤の厚み減少具合に応じた接着剤の面積の増大分±(電子部品素子の上記一面の面積の20%)の範囲程度とされればよい。すなわち、シート状もしくはペースト状接着剤の圧接による厚み減少割合に応じた面積増大分をX、電子部品素子の接着される面である一面の面積をYとしたとき、接着剤の硬化前の面積Zは、〔Y−(X+0.2Y)〕〜〔Y−(X−0.2Y)〕、言い換えれば、Zは、Y−(X+0.2Y)からY−(X−0.2Y)の範囲とされていてもよい。
【0031】
本発明のシート状もしくはペースト状接着剤では、硬化前の面積Zが上記のように小さくされているため、圧接後においても、電子部品素子の上記一面と支持部材等との間の隙間の側方へのはみ出しが生じ難い。従って、電子部品素子の上記一面から側方へのはみ出
し、ひいては上面側への回り込みを確実に抑制することができる。これを、図1(a)〜(d)に示す実施形態を参照してより具体的に説明する。
【0032】
図1(a)に示すように、本実施形態の製造方法では、先ず、ステージ1上に、支持部材としての基板2を配置する。基板2には、半導体素子3が搭載される。図1(c)に略図的に示すように、基板2上には半導体素子3に電気的に接続される複数の電極ランド2aが形成されている。
【0033】
基板2上には、本実施形態のシート状接着剤4が配置される。シート状接着剤4の平面形状は図1(d)に示す通りである。すなわち、シート状接着剤4は、長方形のシート状接着剤の一対の長辺の中央部分に切欠4a,4bを、一対の短辺の中央部分に切欠4c,4dを形成した形状を有する。切欠4aと切欠4bとは対向しており、切欠4cと切欠4dとは対向している。切欠は半導体素子3の電極が、切欠4a、4b、4c、4dの内に置かれるように設計されている。
【0034】
本実施形態では、上記切欠4a〜4dは、上記のように半導体素子3の電極が配置される位置が切欠内に含まれるような台形形状とされている。この場合、シート状接着剤4の面積は、切欠4a〜切欠4dが形成されている分だけ、切欠が設けられていない場合の仮想長方形の面積に比べ、その面積が小さくされている。そして、この面積減少量が、前述した0.8X〜1.2Xの範囲であればよい。なお、上記Xの値、すなわち圧接による面積増大量は、予め上記シート状接着剤4と同じ接着性材料を、シート状接着剤4と同じ厚みに加工し、半導体素子3と基板2との間に介在させ、圧接させるパイロット試験を行うことにより求められる。すなわち、このパイロット試験において、シート状接着剤の厚み減少量と、厚み減少量に応じた面積増大量Xを求め、このようにして求められたXの値から、上記切欠4a〜4dの寸法を定めればよい。
【0035】
なお、本実施形態では、切欠4a〜4dは台形の形状を有しているが、使用する半導体素子3の電極位置に応じて切欠の平面形状は任意に変形することができる。
【0036】
図1(a)に示すように、半導体素子3は、下面3a側から基板2に圧接される。半導体素子3の下面3aには、下方に突出している複数の金属バンプ5,6が設けられている。また、半導体素子3は、上面3b側から吸引治具7に保持されている。吸引治具7は、下面7aに開いた複数の吸引孔7bを有する。吸引孔7bから吸引することによって、半導体素子3が下面7aに保持されている。
【0037】
接合に際しては、吸引治具7により保持された半導体素子3を下面3a側からシート状接着剤4上に圧接する。そして、図1(a)に示す状態から下方に移動させる。その結果、金属バンプ5,6が硬化前のシート状接着剤4を押し退け、金属バンプ5,6の先端が基板2の上面の電極ランド(図示せず)に当接され、電気的接続が果たされる。しかる後、加熱または光の照射等によりシート状接着剤4が硬化される。その結果、図1(b)に示すように、金属バンプ5,6が基板2の上面に接着された状態で、半導体素子3が基板2上に確実に接着剤硬化物4Aにより接合される。
【0038】
この場合、上記シート状接着剤4の硬化前の面積Zが上記のように選ばれているため、接着剤4の側方へのはみ出しが生じ難く、特に図1(b)に示されているように、硬化物4Aの半導体素子3の上面3bへの回り込みを確実に抑制することができる。よって、半導体素子3の上面3b上に、外部と電気的接続を行うための電極等が形成されていたとしても、該電極等が接着剤硬化物により被覆され難い。
【0039】
上記実施形態では、シート状接着剤4を用いたが、予めシート状にされている必要はな
く、支持部材または他の電子部品素子に接着剤を塗布することにより設けられたペースト状接着剤もしくはBステージ化されたペースト状接着剤であってもよい。もっとも、その場合においても、硬化前にある程度の保形性を有することが必要であり、すなわち面積Zが上記範囲となるようにその形状が保たれるペースト状接着剤であることが必要である。
【0040】
本発明において、シート状もしくはペースト状接着剤の平面形状は上記実施形態に限定されない。例えば、図2(a)に示すように、長方形状のシート状接着剤14において、一対の対向する長辺の中央にのみ切欠14a,14bを設け、それによってシート状接着剤14の面積Zを上記特定の範囲としてもよい。
【0041】
さらに、シート状もしくはペースト状接着剤は、図2(b)に示すように、各辺の中央に切欠24a〜24dが設けられた略正方形の形状を有するシート状もしくはペースト状接着剤24であってもよい。
【0042】
さらに、上記シート状もしくはペースト状接着剤は、長方形や正方形のような四角形の平面形状を有するものに限らず、三角形や五角形の平面形状を有するものであってもよい。すなわち、n角形(nは3以上の整数)の平面形状を有し、コーナー部分を除いた辺の部分に切欠が設けられている形状であればよい。この場合、n角形の平面形状の各辺に切欠が設けられていてもよく、少なくとも一部の辺に切欠が設けられていてもよい。
【0043】
なお、コーナー部分を除いた辺の部分に切欠を設けるのは、コーナー部分を除いた辺の部分が圧接に際し最も側方にはみ出し易い部分であるためである。従って、好ましくは、切欠は、辺の中央部分に設けられることが望ましい。
【0044】
また、上記切欠の形状は、台形に限定されず、上述した円弧と弦とで囲まれた形状または四角形や三角形等の直線を組み合わせてなる形状の切欠が設けられてもよい。
【0045】
上記実施形態の半導体装置の製造方法では、電子部品素子として半導体素子が用いられたが、本発明は、半導体素子以外の電子部品素子の製造方法にも用いることができ、それによって様々な電子部品装置を本発明により製造することができる。
【0046】
また、支持部材に代えて他の電子部品素子に電子部品素子がシート状もしくはペースト状接着剤により接合される用途にも本発明を適用することができる。
【0047】
次に、具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明をより明らかにする。
【0048】
(実施例1)
半導体素子として、下面の寸法が15mm×8mmの長方形であり、厚みが0.050mmの半導体素子を用意した。この半導体素子の下面から、複数の金属バンプが突出高さ0.025mmとなるように設けられている。
【0049】
他方、半導体素子が搭載される基板として、ガラス基板を別途用意した。このガラス基板上に、コーンプレート測定において50℃/分で昇温させた際の最小溶融粘度が20ps〜200psとなるエポキシ樹脂系接着シートを用い、切欠4a〜4dが図1(d)に示した台形形状となるように塗布し、半導体素子を圧接させ、フリップチップボンダー(澁谷工業株式会社製DB−100)によりチップに形成された複数の金属バンプが突出高さ0.030mmが0.025mmになるように加圧加熱硬化させた。
【0050】
切欠4a〜4d:下底の寸法は13mm、上底の寸法は10mm、高さ1.0mm、切欠4c,4d:下底の寸法は5mm、上底の寸法は3mm、高さ1.5mmからなる台形
とした。
【0051】
従って、上記シート状接着剤4の面積Sは、85.0mm2であり、半導体素子の下面
の面積である15×8=120mm2に比べて、29%だけ小さくされている。
【0052】
シート状接着剤4の高さは、隙間V=0.025×15×8=3mm3となるように設
定し、3/85=0.035mmとした。
【0053】
上記のようにして接合を行った得た半導体装置について、光学顕微鏡を用いて側方へのはみ出し、特に半導体素子の上面への回り込みの有無を観察したところ、上面への回り込みは認められなかった。
【0054】
(比較例1)
実施例1において、上記切欠を設けずに、すなわち半導体素子の下面と同じ寸法に接着剤を塗布し、同様にして圧接し、硬化させ、半導体装置を得た。このようにして得られた半導体装置を光学顕微鏡で観察したところ、接着剤硬化物が半導体素子の上面にまで回り込み、半導体素子の上面が接着剤硬化物で部分的に被覆されていた。
【0055】
なお、比較例1におけるシート状接着剤の硬化前の面積は、半導体素子の下面の面積と等しくしたが、圧接により、その厚みは減少した。その結果、シート状接着剤の面積の増大量Xは20mm2であった。
【0056】
(実施例1及び比較例1の評価)
実施例1及び比較例1から明らかなように、圧接により、切欠を有しない比較例1のシート状接着剤の厚み減少割合に応じたシート状接着剤の面積増大分Xは20mm2であり
、実施例1では面積Zが、120mm2よりも、上記面積増大分X±(Yの20%)の範
囲内の大きさである35mm2だけ小さくされているため、上記のように接着剤の半導体
素子の側方へのはみ出しが効果的に抑制された。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)〜(d)は、一実施形態に係る電子部品装置の製造方法を説明するための部分切欠正面断面図、該実施形態により得られた電子部品装置としての半導体装置を示す正面断面図、(c)は、該実施形態に用いられる基板の略図的平面図、(d)は該実施形態に用いられるシート状接着剤を示す平面断面図。
【図2】(a)及び(b)は、本発明で用いられるシート状接着剤の平面形状の他の例を示す各平面図。
【図3】(a)及び(b)は、従来の電子部品装置の製造方法の一例を示す部分切欠正面断面図であり、(c)は、従来の製造方法により得られた電子部品装置を示す正面断面図。
【符号の説明】
【0058】
1…ステージ
2…基板
2a…電極ランド
3…半導体素子
3a…下面
3b…上面
4…シート状接着剤
4a〜4d…切欠
4A…接着剤硬化物
5,6…金属バンプ
7…吸引治具
7a…下面
7b…吸引孔
14…シート状接着剤
14a〜14d…切欠
24…シート状接着剤
24a〜24d…切欠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品素子の一面を電子部品素子が搭載される支持部材または他の電子部品素子にシート状もしくはペースト状接着剤を介して圧接し、接着するためのシート状もしくはペースト状接着剤であって、前記電子部品素子の前記一面の面積に比べて、圧接によるシート状もしくはペースト状接着剤の厚み減少割合に応じた該シート状もしくはペースト状接着剤の面積の増大分に応じて面積が小さくされていることを特徴とする、シート状もしくはペースト状接着剤。
【請求項2】
前記支持部材及び電子部品素子状の電気的な接続を図るための電極部分に前記接着剤が接触しないように前記接着剤が配置されている、請求項1に記載のシ−ト状もしくはペースト状接着剤。
【請求項3】
前記シート状もしくはペースト状接着剤が、n角形(nは3以上の整数)の平面形状を有し、コーナー部分を除いた辺の部分に切欠が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のシート状もしくはペースト状接着剤。
【請求項4】
前記切欠が、n個の辺のそれぞれに設けられている、請求項3に記載のシート状もしくはペースト状接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状もしくはペースト状接着剤を、電子部品素子の一面と該電子部品素子が搭載される支持部材または他の電子部品素子との間に介在させ、電子部品素子を支持部材または他の電子部品素子に圧接させる工程と、
前記シート状もしくはペースト状接着剤を硬化させる工程とを備えることを特徴とする、電子部品装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状もしくはペースト状接着剤の硬化物により電子部品素子が支持部材または他の電子部品素子に接合されていることを特徴とする、電子部品装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−265411(P2006−265411A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86993(P2005−86993)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】