説明

シート状部材の接合装置、接合シート状部材の製造装置及び製造方法

【課題】一対の接合ローラにより、シート状部材を構成する部材の変形や破損を防止しつつ、シート状部材の端部を均等に引き寄せて接合する。
【解決手段】接合するシート状部材70の対向する各端部71、72に、弾性体53、53’を介して回転自在に支持された一対の接合ローラ40、40’をそれぞれ当接させ、接合ローラ40、40’が当接する端部71、72の凹凸に応じて弾性体53、53’を弾性変形させる。このように弾性体53、53’を弾性変形させつつ、一対の接合ローラ40、40’を各端部71、72上で転動させ、その各分割接合ローラ42、43、44、42’、43’、44’を独立に変位させて端部71、72の表面に追従させる。この転動する接合ローラ40、40’により、両端部71、72を互いに引き寄せながら突き合わせて接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の接合ローラを接合するシート状部材の端部上で転動させ、両接合ローラの転動に伴いシート状部材の端部同士を接合するシート状部材の接合装置と、この接合装置によりシート状部材を接合して接合シート状部材を製造する製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造工程では、未加硫ゴム等により形成したシート状部材を切断し、その端部同士を突き合わせて接合して、接合シート状部材、例えばカーカスプライやベルト等のタイヤ構成部材を製造している。また、このようにシート状部材を接合する装置として、従来、成形ドラムに円筒状に巻き付けたシート状部材の端部を挟んで、一対のジョイントローラ(接合ローラ)を互いに逆方向に傾斜して配置し、それぞれ端部上を同期して転動させて、両端部を互いに引き寄せて接合する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、シート状部材の端部の接合時には、接合する端部の変形を確実に防止しつつ、端部同士の均一かつ強固な接合を安定して確保する観点から、一対の接合ローラにより、各端部を均等に引き寄せて接合することが要求される。これに対し、この従来の装置では、所定の曲率で湾曲するシート状部材に、円筒状の接合ローラの直線状の下面部を当接させるため、両外周同士の均等な当接が確保できないことがある。また、シート状部材の端部表面に僅かな起伏が生じたときには、接合ローラが場所毎に強く又は弱く当接する等、端部の凹凸に起因して、その表面と接合ローラとが均等に当接せず、接合ローラからシート状部材に作用する力も当接位置で変化することがある。その結果、この従来の装置では、端部の凹凸によっては、各当接位置のシート状部材に過剰な又は不足した面圧が作用し、各位置の移動量の均一性が低下して、接合する両端部の引き寄せが部分的に不均等になる虞があり、更なる改善が求められている。
【0004】
併せて、この従来の装置では、一対の接合ローラを対向する内側端部で互いに噛み合わせて回転させており、それらのシート状部材を引き寄せる力が、上記したシート状部材の湾曲や不均等な当接に起因して、噛み合わせ部から離れた側が弱く、噛み合わせ部に向けて次第に強くなる傾向がある。そのため、接合するシート状部材の端部が、噛み合わせ部に向かって過剰に引き寄せられて噛み込まれ、その付近に変形や切れ等の破損が発生する虞がある。また、シート状部材として、カーカスプライを接合するときには、カーカスプライ自体に加えて、その内部に配置されたコードが、同様に所定の配置形状から変形し、或いは、切断等して破損することも考えられる。
【0005】
その際、例えばトラック及びバス用ラジアルプライタイヤ(TBR)を製造する場合には、使用する成形ドラムの直径も大きく、カーカスプライと接合ローラの外周同士も比較的均等に当接する。これに対し、乗用車用ラジアルプライタイヤ(PSR)を製造する場合には、使用する成形ドラムの直径もより小さいため、カーカスプライと接合ローラが均等に当接し難くなり、上記した各問題が発生する虞も大きくなる。また、内部にスチールコードが配置されて、厚くかつ剛性が高いTBRのカーカスプライに比べて、PSRのカーカスプライ(特に、内部に有機繊維コードが配置されたカーカスプライ)は、より薄く剛性も低いため、接合時の力で、カーカスプライ自体やコードの変形や破損もより発生し易くなる。このように、接合ローラにより接合するときには、シート状部材を構成する部材(シート状部材自体を含む)に変形や破損が生じる虞もあり、それらを防止しつつ、シート状部材の端部同士を接合させる必要がある。
【0006】
【特許文献1】特公昭61−8770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、シート状部材の接合時や接合シート状部材の製造時に、一対の接合ローラにより、シート状部材を構成する部材の変形や破損を防止しつつ、シート状部材の端部を均等に引き寄せて均一かつ強固に接合することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シート状部材の端部同士を接合するシート状部材の接合装置であって、接合するシート状部材の対向する各端部上を転動し、両端部を互いに引き寄せながら端部同士を突き合わせて接合する一対の接合ローラと、接合ローラを弾性体を介して回転自在に支持する支持部材と、を備え、接合ローラがシート状部材の端部上を転動するとき、端部の凹凸に応じて弾性体が弾性変形することを特徴とする。
また、本発明は、シート状部材の端部同士を接合して接合シート状部材を製造する製造装置であって、接合するシート状部材を支持する支持体と、本シート状部材の接合装置と、接合装置の一対の接合ローラを、シート状部材の対向する各端部上を転動させる転動手段と、を備えたことを特徴とする。
更に、本発明は、シート状部材の端部同士を一対の接合ローラにより接合して接合シート状部材を製造する製造方法であって、接合するシート状部材の対向する各端部に、弾性体を介して回転自在に支持された一対の接合ローラをそれぞれ当接させる工程と、接合ローラが当接する端部の凹凸に応じて弾性体を弾性変形させる工程と、弾性体を弾性変形させつつ一対の接合ローラをシート状部材の対向する各端部上を転動させ、両端部を互いに引き寄せながら端部同士を突き合わせて接合する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シート状部材の接合時や接合シート状部材の製造時に、一対の接合ローラにより、シート状部材を構成する部材の変形や破損を防止しつつ、シート状部材の端部を均等に引き寄せて均一かつ強固に接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のシート状部材の接合装置と、接合シート状部材の製造装置及び製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のシート状部材の接合装置は、切断等して形成した1又は複数のシート状部材の端部同士を接合する装置であり、この端部を接合して接合シート状部材を製造する接合シート状部材の製造装置(以下、製造装置という)の一部を構成する。以下では、上記した従来の装置と同様に、タイヤ製造工程において、成形ドラム等の支持体にシート状部材を巻き付けて両端部(先後端部)を一対の接合ローラにより接合し、シート状部材を筒状に形成する、即ち、接合シート状部材として筒状シート状部材を製造する場合を例に採り説明する。
【0011】
図1は、この製造装置の概略構成を模式的に示す要部正面図である。
製造装置1は、図示のように、軸線が水平方向(図で左右方向)に保持された支持体2と、支持体2の外周面に沿って上方に配置されたシート状部材70の接合装置3とを備え、支持体2上でシート状部材70を接合等して所定形状及び構造の未加硫タイヤを成形する。
【0012】
支持体2は、未加硫タイヤの成形時に、接合するシート状部材70を支持する手段であり、例えば拡縮可能な円筒状の成形ドラムや、成形する未加硫タイヤの内面形状に応じた外面形状を有する剛体コア等からなる。ここでは、支持体2は、軸線周りに回転可能な成形ドラムからなり、その外周側の所定位置にシート状部材70が1周巻き付けられ、シート状部材70を円筒状の状態で同芯状に保持する。また、支持体2は、モータ等の駆動源や、その回転動力の伝達機構等からなる回転駆動手段(図示せず)により回転駆動され、シート状部材70を軸線周りに所定の回転速度で回転させて任意の回転角で停止させる。
【0013】
ここで、本実施形態のシート状部材70は、未加硫タイヤの成形時に支持体2に巻き付けられる、例えばカーカスプライやベルト等のタイヤ各部を構成するタイヤ構成部材であり、支持体2の外周側に順次巻き付けられて接合装置3により各々接合される。なお、シート状部材70は、接合前に、所定長さに形成されて支持体2に巻き付けられ、その際、巻き付けの先端部と後端部とが、互いに所定間隔を開けて隣接するように、平行な状態で対向して配置される。また、ここでは、シート状部材70として、有機繊維コードを未加硫ゴムで被覆した乗用車用ラジアルプライタイヤのカーカスプライの両端部同士を接合する例を説明する。即ち、このシート状部材70は、表面のゴム内に、複数の有機繊維コードが支持体2の軸線方向に沿って延びるように並列して配置されている。
【0014】
接合装置3は、支持体2の軸線方向に並べて配置された、シート状部材70を接合する一対の接合ユニット30と、それらを支持体2の軸線方向及び半径方向(図では左右方向及び上下方向)に移動させる移動機構10とを備えている。また、この接合装置3は、支持体2の軸線方向の中央部CLを挟んで左右対称に構成されており、以下、その一方側(図の左側)について説明する。
【0015】
移動機構10は、支持体2の軸線と平行に架け渡されたガイドレール11と、その上方に平行に配置されたネジ軸12と、回転軸13Aがネジ軸12と平行になるように配置されたモータ13と、それらが取り付けられたフレーム(図示せず)とを有する。移動機構10は、このフレームによりネジ軸12を回転自在に支持するとともに、ネジ軸12に固定した従動プーリ14と、モータ13の回転軸13Aに固定した駆動プーリ15とに、無端状のベルト16を架け渡している。移動機構10は、これら駆動プーリ15、ベルト16及び従動プーリ14を介して、モータ13の回転動力をネジ軸12に伝達し、ネジ軸12を軸線周りの両方向に所定速度で回転させる。
【0016】
また、移動機構10は、ネジ軸12に螺合して取り付けられた取付ブラケット17と、その側面に下方向に向かって固定されたピストン・シリンダ機構18とを有する。取付ブラケット17は、ネジ軸12が貫通して螺合するネジ孔に加えて、ガイドレール11が摺動自在に貫通する案内孔を有し、ネジ軸12の上記した回転に伴い、ガイドレール11により案内されて、支持体2の軸線方向の両方向に所定速度(例えば、20〜200mm/秒間の速度)で移動する。ピストン・シリンダ機構18は、シリンダ18Sから進退するピストンロッド18Pが、支持体2の半径方向に沿って、その軸線に向けて配置され、ピストンロッド18Pを進退させて、その先端(下端)に取り付けられた接合ユニット30をシート状部材70に接近及び離間させる。これにより、移動機構10は、接合ユニット30を、接合するシート状部材70の端部に所定圧力で押し付けるとともに、モータ13によりネジ軸12を回転させて、接合ユニット30をシート状部材70の端部に沿って移動させて端部同士を接合する。
【0017】
図2は、この接合中の接合ユニット30を模式的に示す図1の上方から見た要部平面図であり、接合ユニット30付近のシート状部材70も模式的に示している。また、図では、接合前のシート状部材70の僅かに間隙Rを設けた両端部71、72を左方側に、接合ユニット30の接合方向(図の矢印S)への移動により接合された、接合後のシート状部材70の接合部73を右方側に示している。
【0018】
接合ユニット30は、図示のように、ピストンロッド18Pに取り付けられた矩形状の枠体31と、枠体31内に接合方向Sの前方側から後方側に向かって順に配置され、それぞれ回転自在に支持された押さえローラ32及び、少なくとも一対(ここでは二対)の接合ローラ40、40’とを有する。押さえローラ32は、外周面が支持体2の表面形状に合致した曲率の凹曲面状をなす鼓状に形成され、軸線方向を支持体2の軸線方向と直交する方向に向けて配置されている。その状態で、押さえローラ32は、接合前のシート状部材70の両端部71、72に押し付けられ、当接範囲の端部71、72を支持体2との間に挟んで押さえる。接合ユニット30は、この押さえローラ32により両端部71、72を押さえて、各一対の接合ローラ40、40’により、端部71、72同士を順次接合する。
【0019】
一対の接合ローラ40、40’は、それぞれ断面円形状(円筒状)に形成され、一端部が枠体31に固定された支持部材(軸部材)50、50’により、後述する弾性体(図示せず)を介して軸線周りに回転自在に支持されている。また、接合ローラ40、40’は、シート状部材70の接合部73を挟んで対称に、かつ、軸線が、接合部73側(内側)から外側に向かって、それぞれ接合方向Sの後方側(図では右側)に傾斜するように配置されている。ここでは、一対の接合ローラ40、40’は、接合部73と直交する方向に対する軸線の角度Xが、比較的小さい所定角度(例えば、5〜30°間の角度)をなし、かつ両軸線同士の交点が接合部73上に位置するように配置されている。更に、一対の接合ローラ40、40’は、互いの対向する縁部に沿って、それぞれ軸線方向に突出する複数の突起41、41’ が周方向に等間隔で同数形成され、接合部73側に、突起41、41’と、それらの間の凹みとが、周方向に交互に同一ピッチで設けられている。一対の接合ローラ40、40’は、これら突起41、41’と凹みとが周方向に沿って互い違いに配置され、突起41、41’の一部が他方側の突起41、41’間(凹み)に入り込んで互いに噛み合い、これにより同期して等速度で回転する。
【0020】
図3は、一方の接合ローラ40を抜き出して半径方向外側から見た正面図であり、その一部(図の上方部)を断面で模式的に示している。
接合ローラ40の外周には、図示のように、周方向に延びる突条Tが、環状に、又は螺旋状に複数並列して形成され、その全体の断面形状が、複数の突出部が並んだ鋸歯状に形成されている。これら各突条Tは、突起41側の側面が接合ローラ40の軸線方向と直交し、これに対して他方側の側面が所定角度(ここでは45°)で傾斜する、断面三角形状に形成され、接合ローラ40の突起41を含む外周の全体に亘って配置されている。
【0021】
更に、接合ローラ40は、複数の突条Tが、シート状部材70の端部71の表面に均等に当接するように、突条Tが、突起41(接合部73)側から逆側に向かって次第に拡径して形成されている。これにより、接合ローラ40は、複数の突条Tの突端部を結んだ外周部(最外周位置)が、シート状部材70の湾曲した端部71に合わせて湾曲し、全体として、突起41側から次第に拡径する凹曲面状(断面鼓状)に形成されている。加えて、この接合ローラ40は、軸線方向に複数(ここでは3つ)に分割されて、互いに独立した環状の分割接合ローラ(セグメント)42、43、44からなる。
【0022】
図4は、一対の接合ローラ40、40’をシート状部材70に当接させた状態を模式的に示す図2のA方向矢視断面図である。
接合ローラ40、40’は、図示のように、突起41、41’を除いた円筒状部が、それぞれ軸線方向に略等間隔で、かつ、軸線方向と直行する平面で分割され、各分割接合ローラ42、43、44、42’、43’、44’の対向する側面同士が、互いに摺動自在に接触している。また、接合ローラ40、40’は、上記した外周部が、シート状部材70の所定の曲率で湾曲する端部71、72に沿って当接可能な、その曲率に合わせた曲率の曲面状に形成され、各突条Tが全体に亘って端部71、72に一致して当接する。
【0023】
加えて、この接合装置3では、支持部材50、50’が、円柱状の支持軸51、51’及び、その外周に取り付けられたボールベアリング等の回転自在な軸受52、52’からなり、この支持部材50、50’と各接合ローラ40、40’との間に、弾性体53、53’が配置されている。弾性体53、53’は、接合ローラ40、40’から受ける圧力により弾性変形可能なゴムやバネ等からなり、その圧力が作用する範囲が各圧力に応じて弾性変形し、圧力からの解放により元の形状に復帰する。ここでは、弾性体53、53’は、円筒状に形成されたゴムからなり、接合ローラ40、40’の内部の全体に亘って配置されて、各軸受52、52’の外周面に嵌め合わされ、接合ローラ40、40’とともに回転する。弾性体53、53’は、この回転(転動)する接合ローラ40、40’が当接するシート状部材70の端部71、72の凹凸に応じて順次弾性変形する。
【0024】
即ち、弾性体53、53’は、接合ローラ40、40’の外周部と端部71、72の表面とが一致し、接合ローラ40、40’から均等な圧力が作用するときには、全体が均等に弾性変形する。一方、端部71、72の湾曲や、その表面に存在する起伏等の凹凸に伴い、接合ローラ40、40’の各部に異なる圧力が作用するときには、弾性体53、53’は、対応する範囲が圧力に応じて各々弾性変形する。これにより、弾性体53、53’は、接合ローラ40、40’を、端部71、72の凹凸に沿うように傾斜や半径方向に変位させ、その表面形状に合わせて追従させる。また、この接合ローラ40、40’では、軸線方向に分割された複数の分割接合ローラ42、43、44、42’、43’、44’が、それぞれ弾性体53、53’を弾性変形させて互いに独立して半径方向に変位可能になっている。その結果、分割接合ローラ42、43、44、42’、43’、44’が、各当接位置の凹凸に独立して追従し、例えば凹部では小さく、凸部では大きく変位して、接合ローラ40、40’の全体を端部71、72の表面形状に適合させて、それぞれ均等に当接させる。
【0025】
接合装置3は、このように弾性体53、53’を弾性変形させつつ、接合ローラ40、40’をシート状部材70の各端部71、72に沿って転動させ、隣接するシート状部材70の端部71、72同士を接合する。具体的には、接合装置3は、移動機構10(図1参照)を作動させて接合ユニット30を移動させ、押さえローラ32(図2参照)をシート状部材70の両端部71、72に、各接合ローラ40、40’を、それぞれ端部71、72に間隙Rを挟んで対称に押し付けて当接させる。その状態で、接合ユニット30を端部71、72に沿って接合方向Sに移動させ、押さえローラ32で両端部71、72を順次押さえながら、互いに逆方向に傾斜した接合ローラ40、40’を同期して各端部71、72の表面上を転動させる。
【0026】
この傾斜した接合ローラ40、40’の転動に伴い、各端部71、72に、接合ローラ40、40’の突条Tから軸線方向と直交する方向の力が加えられる等して、互いに接近する方向の力が作用する。これにより、両端部71、72が互いに引き寄せられて、間隙Rを消滅させながら突き合わされ、接合ローラ40、40’からの圧力で端面同士が圧着する。同時に、接合ローラ40、40’の互いに噛み合う突起41、41’から端部71、72に交互に力が作用し、端部71、72の表面が交互に他方側に向かって弾性変形して継ぎ合わされ、端部71、72同士が接合される。
【0027】
図5は、接合後のシート状部材70の接合部73付近を示す模式図であり、図5Aは斜視図、図5Bは図5AのY−Y線矢視断面図である。
図示のように、内部に複数の有機繊維コードCを有するシート状部材70は、接合により、端部71、72の表面側(図では上側)のゴム73Wが、突起41、41’により交互に他方側の端部71、72の表面まで部分的に引き伸ばされる。その結果、接合部73は、内側(図では下側)の直線的に圧着された部分に対し、表面側の端部71、72が、交互に他方側の表面に重なり合い、波状をなすように接合される。
【0028】
このように、接合装置3は、一対の接合ローラ40、40’を、接合するシート状部材70の対向する端部71、72を挟んで各端部71、72に当接させ、それぞれ各端部71、72上を転動させる。この転動する接合ローラ40、40’により、両端部71、72を互いに引き寄せながら端部71、72同士(両端面)を突き合わせ、シート状部材70を連続して接合して、シート状部材70を筒状に形成する。その際、接合装置3は、移動機構10を転動手段として、前後二対の接合ローラ40、40’を連動して上記のように転動させ、それらにより連続して同様の接合動作を実行させて、端部71、72を確実かつ強固に接合する。
【0029】
次に、この製造装置1により、シート状部材70の端部を接合して未加硫タイヤを成形し、タイヤを製造する手順や動作について説明する。以下の手順等は、制御装置(図示せず)により制御され、装置各部を予め設定されたタイミングや条件で関連動作させて実行される。この制御装置は、例えばマイクロプロセッサ(MPU)、各種プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、及びMPUが直接アクセスするデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータから構成され、接続手段を介して装置各部が接続されている。これにより、制御装置は、装置各部と制御信号や各種データを送受信し、タイヤ成形に関する各動作を各々実行させる。
【0030】
製造装置1(図1参照)は、まず、支持体2を回転させて、その外周にシート状部材70を1周巻き付け、その巻き付けの先後端部71、72を、接合装置3による接合ユニット30の押し付け位置に配置する。次に、移動機構10により、一方(図1では左方)の接合ユニット30を、支持体2の中央部CLに移動させて支持体2に向かって下降させ、接合するシート状部材70の対向する各端部71、72(図2参照)に、押さえローラ32及び各接合ローラ40、40’を所定圧力で押し付ける。これにより、端部71、72に、弾性体53、53’(図4参照)を介して回転自在に支持された一対の接合ローラ40、40’をそれぞれ当接させ、各弾性体53、53’を、接合ローラ40、40’が当接する端部71、72の凹凸に応じて弾性変形させる。
【0031】
その際、この接合装置3では、接合ローラ40、40’の曲面状の外周部(突条Tの突端部)を、シート状部材70の湾曲した端部71、72に沿って当接させる。また、接合ローラ40、40’の各分割接合ローラ42、43、44、42’、43’、44’を、それぞれ弾性体53、53’を弾性変形させて当接する端部71、72の凹凸に応じて変位させる。次に、接合装置3(図2参照)は、接合ユニット30を支持体2の軸線方向外側に移動させ、弾性体53、53’を弾性変形させつつ、一対の接合ローラ40、40’を、シート状部材70の対向する各端部71、72上を同期して接合方向Sに転動させる。これにより、上記のように、両端部71、72を互いに引き寄せながら端部71、72同士を突き合わせて接合する。
【0032】
続いて、接合装置3は、一方の接合ユニット30が移動して接合部73が所定長さに達したときに、他方(図1では右方)の接合ユニット30を、支持体2の中央部CLでシート状部材70に向かって下降させ、その接合ローラ40、40’を既に接合された接合部73に押し付ける。次に、接合装置3は、左右の両接合ユニット30を、支持体2の軸線方向外側に向かって、互いに逆方向に同じ速度で移動させ、各接合ローラ40、40’を端部71、72に沿って転動させて順次接合し、端部71、72同士を全体に亘って接合する。製造装置1は、1又は複数のシート状部材70を、所定の順序で支持体2に配置して接合装置3により接合し、他のタイヤ構成部材と組み合わせる等して未加硫タイヤを成形する。その後、成形した未加硫タイヤを加硫成型して製品タイヤが製造される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、弾性体53、53’を介して支持した接合ローラ40、40’をシート状部材70の端部71、72に当接させ、弾性体53、53’を弾性変形させつつ、接合ローラ40、40’を転動させて端部71、72同士を接合する。この接合ローラ40、40’が端部71、72上を転動するときに、その表面に存在する湾曲や起伏等の凹凸に応じて、上記のように弾性体53、53’が弾性変形し、接合ローラ40、40’が、端部71、72の凹凸に合わせて追従して変位等し、その表面に沿うように当接する。
【0034】
その結果、接合ローラ40、40’が全体に亘って端部71、72に均等に当接するため、各当接位置に過剰な又は不足した面圧が作用するのを防止でき、接合ローラ40、40’から端部71、72に均等に力を作用させることができる。これに伴い、シート状部材70の接合する端部71、72を全体に亘って均等に引き寄せて各位置の移動量も均一にでき、端部71、72に発生する不均等な接合による変形を確実に防止しつつ、端部71、72同士を均一かつ強固に接合することができる。また、両端部71、72が、接合ローラ40、40’の噛み合わされた突起41、41’に過剰に引き寄せられることもなく、それらに噛み込まれるのを防止して、端部71、72や内部のコードに変形や切れ等の破損が発生するのを防止することができる。このように、この接合装置3では、シート状部材70を精度良く確実に接合して品質を向上でき、かつ、支持体2の直径が小さく、又はシート状部材70の剛性が低いときであっても、接合ローラ40、40’を端部71、72に均等に当接した状態で転動させて、上記各効果を得ることができる。
【0035】
従って、本実施形態によれば、シート状部材70の接合時や接合シート状部材の製造時に、一対の接合ローラ40、40’により、シート状部材70を構成する部材の変形や破損を防止しつつ、その端部71、72を均等に引き寄せて均一かつ強固に接合することができる。また、この接合装置3では、接合ローラ40、40’の外周部を、湾曲した端部71、72に合わせて湾曲させて形成したため、弾性体53、53’の過剰な変形を抑制しながら、接合ローラ40、40’と端部71、72とを、より均等に当接させることができる。併せて、接合ローラ40、40’の各分割接合ローラ42、43、44、42’、43’、44’を、当接する端部71、72の凹凸に応じて独立して変位させるため、接合ローラ40、40’を表面の凹凸に確実かつ正確に追従させて、適切に当接させることができる。その結果、接合ローラ40、40’を端部71、72に一層均等に当接させることができ、上記した各効果を更に高めることができる。
【0036】
なお、この接合装置3は、各種コードが配置されたカーカスプライ等、様々なシート状部材70を接合できるが、特に、剛性が低く、変形等が生じ易い有機繊維コードが配置されたカーカスプライの接合に適用するのが好適である。また、本実施形態では、支持体2の軸線方向に直線状に延びるシート状部材70の端部71、72を接合したが、端部71、72が支持体2の軸線方向に対して傾斜等するシート状部材70であっても、端部71、72に接合ローラ40、40’を当接させて転動させることで同様に接合することができる。
【0037】
以上、シート状部材70の支持体2として、円筒状の成形ドラムを例に採り説明したが、シート状部材70は、上記した剛体コアやトロイダル状に変形させた成形ドラム、又は、各状態の成形ドラムや剛体コア等にタイヤ構成部材が配置された仕掛かりの生タイヤや中間成形体等、他の支持体2上に配置して接合してもよい。また、支持体2は、平面状の上面に複数のシート状部材70を並べて配置した状態で支持する等、本実施形態と異なる状態でシート状部材70を支持する手段であってもよい。この場合には、製造装置1は、接合装置3の一対の接合ローラ40、40’により、例えば複数のシート状部材70の端部同士を順次接合して、帯状をなす所定長さの接合シート状部材を製造等する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態の接合シート状部材の製造装置の概略構成を模式的に示す要部正面図である。
【図2】接合ユニットを模式的に示す図1の上方から見た要部平面図である。
【図3】一方の接合ローラを抜き出して半径方向外側から見た正面図である。
【図4】一対の接合ローラをシート状部材に当接させた状態を模式的に示す図2のA方向矢視断面図である。
【図5】接合後のシート状部材の接合部付近を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・・接合シート状部材の製造装置、2・・・支持体、3・・・接合装置、10・・・移動機構、11・・・ガイドレール、12・・・ネジ軸、13・・・モータ、14・・・従動プーリ、15・・・駆動プーリ、16・・・ベルト、17・・・取付ブラケット、18・・・ピストン・シリンダ機構、30・・・接合ユニット、31・・・枠体、32・・・押さえローラ、40、40’・・・接合ローラ、41、41’・・・突起、42、43、44、42’、43’、44’・・・分割接合ローラ、50、50’・・・支持部材、51、51’・・・支持軸、52、52’・・・軸受、53、53’・・・弾性体、70・・・シート状部材、71、72・・・端部、73・・・接合部、T・・・突条。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材の端部同士を接合するシート状部材の接合装置であって、
接合するシート状部材の対向する各端部上を転動し、両端部を互いに引き寄せながら端部同士を突き合わせて接合する一対の接合ローラと、
接合ローラを弾性体を介して回転自在に支持する支持部材と、を備え、
接合ローラがシート状部材の端部上を転動するとき、端部の凹凸に応じて弾性体が弾性変形することを特徴とするシート状部材の接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたシート状部材の接合装置において、
接合ローラが、軸線方向に分割され、それぞれ弾性体を弾性変形させて互いに独立して変位可能な複数の分割接合ローラからなることを特徴とするシート状部材の接合装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたシート状部材の接合装置において、
接合ローラが、シート状部材の湾曲した端部に合わせて湾曲する外周部を有することを特徴とするシート状部材の接合装置。
【請求項4】
シート状部材の端部同士を接合して接合シート状部材を製造する製造装置であって、
接合するシート状部材を支持する支持体と、
請求項1ないし3のいずれかに記載されたシート状部材の接合装置と、
接合装置の一対の接合ローラを、シート状部材の対向する各端部上を転動させる転動手段と、
を備えたことを特徴とする接合シート状部材の製造装置。
【請求項5】
シート状部材の端部同士を一対の接合ローラにより接合して接合シート状部材を製造する製造方法であって、
接合するシート状部材の対向する各端部に、弾性体を介して回転自在に支持された一対の接合ローラをそれぞれ当接させる工程と、
接合ローラが当接する端部の凹凸に応じて弾性体を弾性変形させる工程と、
弾性体を弾性変形させつつ一対の接合ローラをシート状部材の対向する各端部上を転動させ、両端部を互いに引き寄せながら端部同士を突き合わせて接合する工程と、
を有することを特徴とする接合シート状部材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載された接合シート状部材の製造方法において、
接合ローラが、軸線方向に分割され、それぞれ弾性体を弾性変形させて互いに独立して変位可能な複数の分割接合ローラからなり、
前記弾性変形させる工程が、各分割接合ローラを、それぞれ弾性体を弾性変形させて当接する端部の凹凸に応じて変位させる工程を有することを特徴とする接合シート状部材の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載された接合シート状部材の製造方法において、
前記当接させる工程が、シート状部材の湾曲した端部に合わせて湾曲する接合ローラの外周部を、シート状部材の湾曲した端部に沿って当接させる工程を有することを特徴とする接合シート状部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−149398(P2010−149398A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330528(P2008−330528)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】