説明

シール材

【課題】柔軟性、耐熱性に優れた低溶出のシール材を提供する。
【解決手段】以下の(a1)〜(a3)を満たすプロピレン重合体成分(A)30〜70重量%と、メタロセン触媒を用いて得られる、エチレン含有量が3〜25重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)70〜30重量%とを含むポリプロピレン樹脂材料からなることを特徴とするシール材による。
(a1)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が125〜155℃
(a2)エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンから選ばれるコモノマーの含有量が0〜5重量%
(a3)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材に関し、詳しくは、柔軟性、耐熱性に優れた低溶出なシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種容器等の蓋材等として用いられるシール材としては、シリコーンゴム、ブチルゴム、スチレン系エラストマー、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、あるいはこれらのブレンド材など使用されている。シール材は、密封性を保つ為、ある程度の柔軟性が必要であるが、ガスバリアー性や耐熱性、溶出性などが悪化する課題があった。
シール材の具体的な例としては、キャップのライナー材や容器の栓、シリンジのガスケットなどが挙げられるが、近年、これら食品用途、医療用途、衛生用途において、高レベルの安全衛生性が求められるようになり、また、これらの用途では高温滅菌処理される場合があり、また低溶出性なども要求される。そのため、柔軟で、耐熱性があり、かつ低溶出性のシール材が求められている。
【0003】
プロピレン系重合体は、その優れた安全衛生性や成形加工性、力学特性、バリヤー性の優れた特徴を生かし、各種用途に使用されているが、一方で、剛性の高さから、柔軟性が必要とされるシール材用途には殆ど使用されていなかった。
特許文献1では、プラスチックレンズ成形用ガスケットが提案され、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックおよび共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとを有するブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体を添加した材料をガスケットとして使用することが提案されている。また、特許文献2では、ポリプロピレン樹脂に、水素添加スチレン−共役ジエンブロック共重合体ゴムとポリブテンを混練した組成物をボトルの口部のキャップ用ライナーに使用することが提案されている。しかしながら、このような材料では、配合成分の溶出の懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226864号公報
【特許文献2】特開2010−222032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、シール材においては、柔軟性、耐熱性に優れた低溶出なシール材が要求されており、柔軟性、耐熱性、低溶出性に優れ、さらに適切な硬度、透明性等の要求性能全てを満たす必要があるが、既存のポリオレフィン系樹脂材料を用いる限り、これを達成することは非常に困難であった。
本発明の目的は、これらの性能をバランスよく向上させ、柔軟性、耐熱性に優れた低溶出なシール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のプロピレン系重合体材料を用いることで、柔軟性、耐熱性に優れた低溶出なシール材を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記成分(A)30〜70重量%と下記成分(B)70〜30重量%とを含むポリプロピレン樹脂材料からなることを特徴とするシール材が提供される。
成分(A):下記条件(a1)〜(a3)を満たすプロピレン重合体。
(a1)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が125〜155℃
(a2)エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンから選ばれるコモノマーの含有量が0〜5重量%
(a3)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4
成分(B):メタロセン触媒を用いて得られる、エチレン含有量が3〜25重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、成分(A)と成分(B)の組成物は、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することを特徴とするシール材が提供される。
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、ポリプロピレン樹脂材料は、メルトフローレート(MFR:230℃ 2.16kg)が0.5〜100g/10分、融解ピーク温度(Tm)が110〜155℃、分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4であることを特徴とするシール材が提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、成分(B)のエチレン含有量(重量%)は、成分(A)のコモノマーの含有量(重量%)よりも3〜20重量%大きいことを特徴とするシール材が提供される。
【0011】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、ポリプロピレン樹脂材料は、成分(A)と成分(B)とを溶融ブレンドすることによって得られるものであることを特徴とするシール材が提供される。
【0012】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、ポリプロピレン樹脂材料は、成分(A)と成分(B)とを逐次重合することによって得られるものであることを特徴とするシール材が提供される。
【0013】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、ポリプロピレン樹脂材料は、さらに成分(C)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体又はエチレン−α−オレフィンランダム共重合体を、成分(A)と成分(B)との合計量100重量部に対し、1〜100重量部を含むことを特徴とするシール材が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシール材は、柔軟性、耐熱性に優れ、かつ溶出成分の少ない低溶出なものであり、硬度や透明性にも優れており、日本薬局方試験にも合格可能なシール材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、下記成分(A)30〜70重量%と下記成分(B)70〜30重量%とを含むポリプロピレン樹脂材料からなることを特徴とする低溶出なシール材である。
成分(A):下記条件(a1)〜(a3)を満たすプロピレン重合体。
(a1)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が125〜155℃
(a2)エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンから選ばれるコモノマーの含有量が0〜5重量%
(a3)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4
成分(B):メタロセン触媒を用いて得られる、エチレン含有量が3〜25重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体。
以下、各成分、その製造法等につき、詳細に説明する。
【0016】
本発明のシール材に使用する成分(A)は、プロピレン重合体であって、以下(a1)〜(a3)を満たすことを必要とする。
(a1)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が125〜155℃
(a2)エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンから選ばれるコモノマーの含有量が0〜5重量%
(a3)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4
【0017】
以下、上記(a1)〜(a3)について、説明する。
(a1)融解ピーク温度(Tm)
プロピレン重合体(成分(A))の示差走査熱量計(DSC)により測定された融解ピーク温度(Tm)は、125〜155℃の範囲である必要があり、127〜150℃であるのが好ましく、より好ましくは130〜140℃である。Tmが125℃未満の場合には、耐熱性が悪くなり、155℃を超えると柔軟性性が悪くなる。なお、融解ピーク温度(Tm)を調整するには、重合反応系へ供給するエチレンの量を制御することにより容易に調整することができる。
ここで、Tmの具体的測定は、示差走査熱量計(DSC)を用い、サンプル量5mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線のピーク位置を、融解ピーク温度Tm(℃)とする。
【0018】
(a2)コモノマーの含有量
プロピレン重合体(成分(A))のエチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンから選ばれるコモノマーの含有量は、0〜5重量%である。
炭素数4以上のα−オレフィンとしては、炭素数4〜12のα−オレフィンが好ましく、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示することができる。共重合用のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。共重合体の例としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1−オクテン−1共重合体などのような、共単量体を任意に若干量組み合わせた二元または三元共重合体が例示できる。
【0019】
共重合用α−オレフィン(エチレンを含む。)の含有量は、0重量%、すなわちプロピレンホモポリマーであってもよく、多くても5重量%以下である。5重量%を超えると、溶出性が悪くなる。共重合用α−オレフィンの含有量は、好ましくは4重量%以下であり、より好ましくは3重量%未満以下、更には2重量%以下である。このような範囲にすることで、融解ピーク温度(Tm)が125〜155℃の範囲となり、耐熱性が良好となる。
【0020】
(a3)分子量分布(Mw/Mn)
プロピレン重合体(成分(A))のルパーミエーション(GPC)法により測定された分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜4の範囲である必要があり、1.8以上3以下であることが好ましい。Mw/Mnが1.5未満のものは現在の重合技術では得難く、4を超えるとシール材がべたつく恐れがある。
分子量分布を調整する方法は、狭くするには、後述のメタロセン系触媒を用いたり、プロピレン(共)重合体を重合後、有機過酸化物を使用し溶融混練したりすることにより調整することができる。広くするには、チーグラーナッタ触媒を用いたり、2種以上のメタロセン触媒成分を併用させた触媒系や2種以上のメタロセン錯体を併用した触媒系を用いて重合することにより調整することができる。
【0021】
ここで、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)で求められ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られるものとする。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380,F288,F128,F80,F40,F20,F10,F4,F1,A5000,A2500,A1000
各々が0.5mg/mlとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2ml注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する、粘度式の[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10−4 α=0.7
PP : K=1.03×10−4 α=0.78
【0022】
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:WATERS社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:
FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)を用いて1mg/mlの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
【0023】
本発明で用いられるプロピレン重合体(成分(A))を得るためには、チーグラーナッタ触媒でもメタロセン触媒でも構わないが、好ましくは低溶出性の点からメタロセン触媒が使用される。メタロセン触媒としては、特に制限はなく、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン触媒の好ましいものについては、後述する。
成分(A)を得るために用いられる重合プロセスは、特に限定されるものではなく、公知の重合プロセスが使用可能である。例えば、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等が使用できる。
【0024】
もう一方の成分である成分(B)は、メタロセン触媒を用いて得られる、エチレン含有量が3〜25重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体である。低溶出性があるが、柔軟性を保持する為、エチレン含有量は3〜25重量%とする。エチレン含有量が3重量%を下回ると、シール材の柔軟性が悪くなり、25重量%を超えると、溶出性が悪くなる。成分(B)の好ましいエチレン含有量の下限は、4重量%以上、より好ましくは5重量%超以上、特には7重量%以上であり、好ましい下限は、23重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特には18重量%以下である。
【0025】
成分(B)のエチレン含有量は、成分(A)との相溶性を上げるためには、プロピレン重合体(成分(A))のコモノマー含有量に近いほど好ましいが、あまりに高すぎると、成分(A)と成分(B)とが相分離してしまい、組成物全体が均一かつ微細な分散体とはならなくなってしまうため、柔軟性などの機械物性、透明性などが大幅に低下する恐れがある。
そのため、成分(B)のエチレン含有量の範囲は、成分(A)のコモノマー含有量より、3〜20重量%大きいことが好ましく、より好ましくは6〜18重量%、更に好ましくは8〜16重量%である。
3重量%未満しか多くない場合、成分(A)との相溶化効果が充分でなく好ましくない。また、20重量%を超えると成分(A)との相溶性が悪くなり、組成物全体が不均一な分散体となってしまう結果、柔軟性や引張伸びなどの機械物性が大幅に低下するとともに透明性も悪化する恐れがある。
【0026】
プロピレン−エチレンランダム共重合体を得るために用いられる触媒は、チーグラーナッタ触媒またはメタロセン触媒であり、好ましくはメタロセン触媒である。メタロセン触媒としては、特に制限はなく、前記と同様、公知のものが使用できる。メタロセン触媒の好ましいものについては、後述する。
成分(A)を得るために用いられる重合プロセスは、特に限定されるものではなく、公知の重合プロセスが使用可能である。例えば、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等が使用できる。
【0027】
本発明のシール材を構成するポリプロピレン樹脂材料は、成分(A)30〜70重量%と成分(B)70〜30重量%を含む材料である。
成分(B)は、柔軟性の観点から、30重量%以上であり、一方で、溶出性の観点から70重量%以下であることが必要である。好ましい組成としては、成分(A)35〜65重量%と成分(B)65〜35重量%、より好ましくは、成分(A)40〜60重量%と成分(B)60〜40重量%である。
【0028】
(溶融ブレンド)
本発明のシール材に用いるポリプロピレン樹脂材料は、成分(A)と成分(B)を溶融ブレンドすることによっても製造することができる。
溶融ブレンドによる製造方法に制限はなく、公知の方法を広く採用できる。具体例を挙げると、本発明に係る成分(A)と成分(B)、並びに必要に応じて配合されるその他の成分を、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸又は二軸スクリュー押出機、コニーダー等を使用して溶融混練する方法等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂材料の製造方法は、上記溶融ブレンドでも構わないが、物性バランスの点から成分(A)と成分(B)とを逐次重合することによって得ることが好ましい。
逐次重合法は公知であり、具体的な方法としては特に制限はなく、第1工程で、成分(A)を30〜70重量%重合した後、第2工程で、成分(B)を70〜30重量%逐次重合することで得られる。以下に成分(A)のコモノマーとしてエチレンを使用した重合例を示す。
【0030】
(逐次重合)
本発明において、ポリプロピレン樹脂材料は、第1工程と第2工程でエチレン含有量が異なる成分を逐次重合した、当業界でいう、いわゆるブロック共重合体であることが、透明性と柔軟性・耐衝撃性、耐熱性全てをバランスさせるために極めて好適である。
また、本発明では、成分(B)として分子量が低く単独ではべたつきやすい共重合体を用いる場合があるので、反応器への付着等の問題を防止するために、成分(A)を重合した後で成分(B)を重合する逐次重合方法を用いることが好ましい。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
【0031】
バッチ法の場合には時間と共に重合条件を変化させることにより単一の反応器を用いて成分(A)と成分(B)を個別に重合することが可能である。本願発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いても良い。
連続法の場合には成分(A)と成分(B)を個別に重合する必要から、2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本願発明の効果を阻害しない限り成分(A)と成分(B)のそれぞれについて複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いても良い。
【0032】
(重合プロセス)
重合プロセスは、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
成分(B)は炭化水素等の有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、成分(B)の製造に際しては気相法を用いることが望ましい。成分(A)の製造に対してはどのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(A)を製造する場合には、付着等の問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
従って、連続法を用いて、まず成分(A)をバルク法もしくは気相法にて重合し、引き続き成分(B)を気相法にて重合することが最も望ましい。
【0033】
(重合条件)
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく適用することができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
【0034】
第1工程で成分(A)、第二工程で成分(B)の逐次重合を行う場合、第二工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。第二工程のプロピレン−エチレンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については各種技術検討がなされており、一例として特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号などを例示することができる。本発明にも当該手法を適用することが望ましい。
【0035】
(逐次重合における各構成要素の制御方法)
逐次重合による場合の成分(A)、成分(B)及びその各要素は以下のように制御され、本発明のポリプロピレン樹脂材料に必要とされる構成要件を満たすよう製造することができる。
【0036】
(成分(A))
成分(A)については、そのエチレン含有量(以下、[E]Aともいう。)と、融解ピーク温度(以下、Tm(A)ともいう。)を制御する必要がある。
[E]Aを所定の範囲に制御するためには、第1工程における重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含有量の関係は、用いるメタロセン触媒の種類によって異なるが、供給比率の調整により、必要とするエチレン含有量[E]Aを有する成分(A)を製造することができる。
[E]Aを5重量%以下に制御するには、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.3以下の範囲、好ましくは0.2以下の範囲とすればよい。
このとき、成分(A)は結晶性分布が狭く、Tm(A)は[E]Aの増加に伴い低下する。
そこで、Tm(A)が本発明の範囲を満たすようにするためには、[E]Aとこれらの関係を把握し、目標とする範囲を取るよう調整する。
また、成分(A)の分子量分布Mw/Mnの調整は、触媒の種類を選択するか、分布を広げるには、チーグラーナッタ触媒を用いたり、2種以上のメタロセン触媒成分の併用した触媒系を用いて重合する、または重合時に2段以上の多段重合を行うことにより制御することができる。
【0037】
(成分(B))
成分(B)については、そのエチレン含有量(以下、[E]Bともいう。)を制御する必要がある。
[E]Bを所定の範囲に制御するためには、[E]Aと同様に、第二工程におけるプロピレンに対するエチレンの供給量比を制御すればよい。[E]Bを3〜25重量%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.005〜6の範囲、好ましくは0.01〜3の範囲とすればよい。
なお、エチレン含有量の同定方法は公知であり、特開2010−121126号公報の段落[0045]以下に記載の方法に従う。
【0038】
(成分(A)の量と成分(B)の量)
成分(A)の量(以下、W(A)ともいう。)と成分(B)の量(以下、W(B)ともいう。)は、成分(A)を製造する第1工程の製造量と成分(B)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。例えば、W(A)を増やしてW(B)を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第二工程の製造量を減らせばよく、それは、第二工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより容易に制御することができる。その逆も又同様である。
実際に条件を設定する際には、活性減衰を考慮する必要がある。すなわち、エチレン含有量[E]A及び[E]Bの範囲によっては、一般にエチレン含有量を高くするためにプロピレンに対するエチレン供給量比を高くすると重合活性が高くなり、同時に活性減衰が大きくなる傾向にある。したがって、第二工程の活性を維持するために第1工程の重合活性を抑制する必要があり、具体的には、第1工程にてエチレン含有量[E]Aを下げ、生産量W(A)を下げ、必要に応じて、重合温度を下げる及び/又は重合時間(滞留時間)を短くする、あるいは第二工程にてエチレン含有量[E]Bを上げ、生産量W(B)を上げ、必要に応じて、重合温度を上げる及び/又は重合時間(滞留時間)を長くするような方法で条件を設定すればよい。
【0039】
(メタロセン系触媒)
上記成分(B)を製造する方法は、メタロセン系触媒の使用を必須とする。
プロピレン−エチレンランダム共重合体において分子量及び結晶性分布が広いとベタツキやブリードアウトが悪化することは当該業者に広く知られるところであるが、本願発明においても、ベタツキ及びブリードアウトを抑制するために、成分(B)において分子量及び結晶性分布が狭くなるメタロセン系触媒を用いて重合されることが必要である。
【0040】
メタロセン系触媒の種類は、本願発明の性能を有する重合体を生成できる限りは、特に限定はされるものではないが、本願発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(a)、(b)、及び必要に応じて使用する成分(c)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
・成分(a):下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
・成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
・成分(c):有機アルミニウム化合物
【0041】
(成分(a))
成分(a)としては、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C−aR)(C−bR)MeXY ・・・(1)
[(1)式中、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meはチタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示す。
、Rは水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を示す。a及びbは置換基の数である。]
【0042】
詳しくは、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基あるいはオリゴシリレン基、又は炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいのは、2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
【0043】
また、RとRは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが好ましく例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。
これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したRとRは、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
【0044】
以上において記載した成分(a)の中で、ポリプロピレン樹脂材料に含有される成分(A)、成分(B)を製造するのに好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基あるいはアルキレン基で架橋された、置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基または置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基またはゲルミレン基で架橋された、2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
【0045】
このような好ましい遷移金属化合物の非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−イソプロピル−4−(3,5−ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル−4−フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロビフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどがあげられる。これらの具体例において、シリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。なお、触媒成分は本願発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本願発明の有効範囲が制限されることがないのは自明のことである。
【0046】
(成分(b))
前記成分(b)としては、前記成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。
成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
【0047】
また、成分(b)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウムなどを、成分(b−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(b)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
【0048】
(成分(c))
必要に応じて、前記成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、下記一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物である。
一般式 AlR3−a ・・・(2)
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Pは水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0049】
(触媒の形成)
上記成分(a)と成分(b)および必要に応じて成分(c)は、接触させて触媒とされる。その接触方法は特に限定されないが、以下の1)〜5)にあるような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
1)成分(a)と成分(b)を接触させる
2)成分(a)と成分(b)を接触させた後に成分(c)を添加する
3)成分(a)と成分(c)を接触させた後に成分(b)を添加する
4)成分(b)と成分(c)を接触させた後に成分(a)を添加する
5)三成分を同時に接触させる
【0050】
成分(a)と(b)及び(c)の使用量は任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。したがって、成分(a)に対する成分(c)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは10−5〜50、特に好ましくは10−4〜5の範囲内である。
【0051】
触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合される、いわゆる予備重合処理に付すことが好ましい。予備重合に使用するオレフィンは、特に制限はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(b)に対し、重量比で、好ましくは0.01〜100倍、さらに好ましくは0.1〜50倍である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0052】
(ポリプロピレン樹脂材料のtanδ曲線ピーク)
本発明のシール材に使用するポリプロピレン樹脂材料は、相溶性を良好に保ち、良好な柔軟性に維持するために、成分(A)と成分(B)とが相分離していないことが好ましい。相分離の条件は、エチレン含有量のみならず、分子量や組成によっても影響を受けるため、前記したエチレン、α−オレフィン含有量に関する規定に加えて、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、特定のtanδ曲線のピークを有することが好ましい。
成分(A)と成分(B)が相分離構造を取る場合には、成分(A)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(B)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。逆に相溶性である場合には、両成分は分子のオーダーで混合しており、両成分のガラス転移温度の中間的な温度に単一のピークを有する。すなわち、相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定における温度−tanδ曲線において判別可能であり、柔軟性を良好にするためには、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが好ましい。
【0053】
相分離構造の判定のための固体粘弾性の測定は、具体的には、成分(A)と成分(B)の同じ組成物からなる短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。ここでは、周波数は1Hzを用い測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは非晶部のガラス転移を観測するものであり、ここでは本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
【0054】
(メルトフローレート(MFR))
本発明で使用されるポリプロピレン樹脂材料のメルトフローレート(MFR)は、0.5〜100g/10分であることが好ましく、より好ましくは1〜50g/10分、更に好ましくは2〜30g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では成形が困難になりやすく、100g/10分を超えると柔軟性が悪くなりやすい。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、加熱温度230℃、荷重21.2Nで測定される値である。
【0055】
(融解ピーク温度(Tm))
また、本発明で使用されるポリプロピレン樹脂材料の示差走査熱量計(DSC)により測定された融解ピーク温度(Tm)は、110〜155℃の範囲であることが好ましく、120〜150℃であるのがより好ましい。Tmが110℃未満のものは耐熱性を損ないやすく、溶融されたポリプロピレン樹脂材料の冷却固化速度が遅く、成形性を悪化させる恐れがあるため好ましくなく、155℃を超えると柔軟性が悪くなる恐れがあるため好ましくない。なお、Tmを調整するには重合反応系へ供給するα−オレフィンの量を制御することにより容易に調整することができる。
Tmの具体的測定は、前述したとおりである。
【0056】
(分子量分布(Mw/Mn))
また、本発明で使用されるポリプロピレン樹脂材料のゲルパーミエーション(GPC)法により測定された分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜4の範囲であることが好ましく、1.8以上、3未満であるのがより好ましい。Mw/Mnが1.5未満のものは現在の重合技術では得難く、4を超えると溶出性が悪くなり製品(ペレット)がべたつく恐れがあるため好ましくない。
なお、プロピレン系樹脂の分子量分布を調整する方法は、好ましくは2種以上のメタロセン触媒成分の併用した触媒系を用いて重合する、または重合時に2段以上の多段重合を行うことにより制御することができる。逆に分子量分布を狭く調整するためには、プロピレン系重合体を重合後、有機過酸化物を使用し溶融混練することにより調整することができる。
なお、分子量分布の測定は、前述した通りである。
【0057】
(ガラス転移温度Tg)
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂材料は、前述したように、固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において求められるtanδ曲線がピークを示す温度であるガラス転移温度Tgが、0℃以下で単一のピークを持つことが好ましいが、このTgが単一のピークを持つためには、成分(A)中のエチレン含有量[E]Aと成分(B)中のエチレン含有量[E]Bの差(以下、[E]gapともいい、[E]gap=[E]B−[E]Aである。)を、好ましくは20重量%以下、より好ましくは16重量%以下にし、実際の測定においてTgが単一のピークとなる範囲まで[E]gapを小さくすればよい。
逐次重合においては、成分(A)中のエチレン含有量[E]Aに応じて、成分(B)中のエチレン含有量[E]Bが適正範囲に入るように、成分(B)の重合時のプロピレンに対するエチレンの供給重量比を設定することで、所定の[E]gapを有するポリプロピレン樹脂材料を得ることができる。
【0058】
また、本発明に用いられるような相分離構造を取らないポリプロピレン樹脂材料のTgは、成分(A)中のエチレン含有量[E]Aと成分(B)中のエチレン含有量[E]B、及び両成分の量比の影響を受ける。本発明においては、成分(B)の量は30〜70重量%であるが、この範囲においてTgは成分(B)中のエチレン含有量[E]Bの影響をより強く受ける。
すなわち、Tgは非晶部のガラス転移を反映するものであるが、本願発明に用いられるポリプロピレン樹脂材料において、成分(A)は結晶性を持ち比較的非晶部が少ないのに対し、成分(B)は低結晶性あるいは非晶性であり、そのほとんどが非晶部であるためである。したがって、Tgの値は、ほぼ[E]Bによって制御され、[E]Bの制御法は前述したとおりである。
【0059】
(他のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(成分(C))
本発明のシール材用のポリプロピレン樹脂材料には、必要に応じて、上記成分(A)、成分(B)以外の、(C)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(C−1)またはエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(C−2)を、成分(A)と成分(B)との合計量100重量部に対し、好ましくは1〜100重量部、より好ましく2〜45重量部、さらに好ましくは3〜30重量部の範囲で含むことができる。
【0060】
(プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(C−1))
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(C−1)としては、DSC法で測定した融点が135℃以下のものが好ましい。融点が135℃を極端に超えると、柔軟性が低下し、また融点が120℃未満のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体は、製造が困難であるため、120℃〜135℃であることが好ましい。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(C−1)は、プロピレン単位を85〜99.9重量%の範囲で含むことが好ましく、さらに好ましくは90〜99.9重量%の範囲で含むことが望ましい。
【0061】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(C−1)におけるα−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1等を用いることができる。中でもプロピレンとエチレンとのランダム共重合体が好ましい。プロピレンとエチレンとのランダム共重合体では、エチレン含量は、0.1〜10重量%が好ましく、0.2〜5重量%がさらに好ましく、0.4〜3.5重量%が特に好ましい。エチレン含量が0.1重量%を下回ると製品の衝撃強度が損なわれ、一方、エチレン含量が10重量%を上回るとシール材の溶出性が低下しやすい。
【0062】
また、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(C−1)は、高立体規則性重合触媒を用いることによって得ることができ、高立体規則性重合触媒としては、塩化チタン、アルコキシチタン等を出発材料として調製されたチタン化合物を用いた、いわゆる担持型チーグラーナッタ触媒、あるいは、メタロセン触媒を使用することができるが、メタロセン触媒により製造されたものが好ましい。
【0063】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(C−1)は、常法によって得られるもののほか、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、チーグラー系触媒を使用した製品例として日本ポリプロ社製「ノバテックPP」(商品名)シリーズ、メタロセン系触媒を使用した製品例として日本ポリプロ社製「ウィンテック」(商品名)シリーズ、ダウ・ケミカル日本(株)製「バーシファイ」(商品名)シリーズや、エクソンモービル社製「ビスタマックス」シリーズや三井化学(株)製「ノティオ」(商品名)シリーズ等のなかから、適合するものを使用することができる。
【0064】
(エチレン−α−オレフィン共重合体(C−2))
エチレン−α−オレフィン共重合体(C−2)としては、エチレンと好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られる共重合体であって、α−オレフィンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン等を好ましく例示できる。
エチレン−α−オレフィン共重合体(C−2)としては、ベタツキやブリードアウトを抑制するためには結晶性及び分子量分布が狭いことが望ましく、結晶性及び分子量分布の狭くできるメタロセン系触媒により重合されたものを用いることが望ましい。
【0065】
エチレン−α−オレフィン共重合体(C−2)は、常法によって得られるもののほか、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製商品名アフィニティー(AFFINITY)及びエンゲージ(ENGAGE)、日本ポリエチレン社製商品名カーネル(KERNEL)、エクソンモービル社製商品名エグザクト(EXACT)などが挙げられ、これらから適切なものを選定してもよい。
【0066】
(添加剤)
本発明のポリプロピレン樹脂材料においては、造核剤、中和剤、滑剤を配合することも望ましい。
【0067】
(造核剤)
本発明のポリプロピレン樹脂材料には、造核剤を、本発明の効果を大きく阻害しない範囲で、添加することは構わない。造核剤の好ましい具体例としては、市販のもので、メリケン(株)社製商品名ハイパフォームHPN68L(下記構造式で示される二環式ジカルボキシレートの金属塩)などのほか、ソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤および芳香族燐酸エステル類、タルクなど既知の造核剤が挙げられる。
造核剤の配合量は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(a)に対し、0.005〜0.15重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.1重量部の範囲がより好ましい。0.005重量部未満では効果が得られず、0.15重量部を超える範囲は、日本薬局方試験に不合格になる場合がある。
【0068】
【化1】

【0069】
(中和剤)
本発明のポリプロピレン樹脂材料には、中和剤を配合することも望ましい。中和剤の好ましい具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト(商品名:協和化学工業(株)製、下記一般式(3)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩)、ミズカラック(商品名:水澤化学工業(株)製、下記一般式(4)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩)などが挙げられる。
【0070】
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO ・・・(3)
(式(3)中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。)
[AlLi(OH)X・mHO ・・・(4)
(式(4)中、Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下である。)
【0071】
(滑剤)
本発明のポリプロピレン樹脂材料には、滑剤を配合することも望ましい。滑剤としては、既知の滑剤が挙げられるが、ステアリン酸ブチルやシリコーンオイルが好ましく、特にシリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイルの好ましいものとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヒドロジエンポリシロキサン、α,ωビス(3−ヒドロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン(C〜C)ジメチルポリシロキサン、ポリオルガノ(C〜Cのアルキル基および/またはフェニル基)シロキサンとポリアルキレン(C〜C)グリコールの縮合物などが挙げられる。この中でもジメチルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサンが好ましい。滑剤は単独で又は複数併用しても構わない。
ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンを添加した場合、成形時に発生する傷を防止するだけでなく、シリンダー内やホットランナー内で発生する焼けを防止することができる。
【0072】
滑剤を使用する場合の配合量は、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.15重量部がより好ましく、0.03〜0.1重量部が特に好ましい。0.001重量部未満では効果が期待できず、0.5重量部を超えると更なる効果が期待できないばかりか経済的に好ましくない。
【0073】
(その他の添加剤)
ポリプロピレン樹脂材料においては、上述した各添加剤成分に加えて、プロピレン系重合体の安定剤などとして使用されている各種酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を配合することができる。
【0074】
具体的には、酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ−ステアリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ラウリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が、好ましく挙げられる。
【0075】
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が好ましく挙げられる。
【0076】
光安定剤としては、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等の光安定剤を、好ましく挙げることができる。
【0077】
さらに、放射線処理で変色がなく耐NOxガス変色性が良好な下記構造式(5)や下記一般式(6)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジ−メチル−フェニル)−3H−ベンゾフラン−2−ワン等のラクトン系酸化防止剤、下記構造式(7)で示されるビタミンE系当の酸化防止剤を、好ましく挙げることができる。
【0078】
【化2】

【0079】
【化3】

(式(6)中、RとRは炭素数14〜22のアルキル基を示す。)
【0080】
【化4】

【0081】
さらに、その他に、帯電防止剤、スリップ剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、染料、顔料、ポリエチレン、オレフィン系エラストマー等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することもできる。
【0082】
(シール材の製造方法)
本発明のシール材用の組成物は、上記した成分(A)、成分(B)あるいはその両者からなる逐次重合品を、必要により、上記成分(C)を、更に酸化防止剤、中和剤、滑剤などを、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合した後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で190〜260℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
【0083】
(シール材)
本発明のシール材は、上記の樹脂組成物を、公知の方法である射出成形法、押出成形法、ブロー成形法など各種成形法によって成形することにより得られる。
また、本発明のシール材は、容器の栓、マスキング用ゴム、パッキン、Oリング、ジョイントシート、ゴムシート、ウェザーストリップ、シリンジのガスケット、キャップのライナー材、コーヒー粉末やクリーム粉末など食品容器の口部を密閉するインナーシール材のなどが挙げられる。
なお、食品用、および医療用シール材は、オートクレーブ滅菌、放射線滅菌、EOG滅菌、紫外線滅菌、マイクロ波、煮沸水、スチームなど公知の滅菌処理を行っても良い。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により限定されて解釈されるものではない。
なお、各実施例及び比較例において、用いた物性測定は以下の方法で行い、プロピレン系重合体、ブレンド材及び他の添加剤としては以下のものを使用した。
【0085】
1.測定法
(1)固体粘弾性測定
試料は下記条件により射出成形した厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
(試験片の作成)
規格番号:JIS−7152(ISO294−1)
成形機:東洋機械金属社製TU−15射出成形機
成形機設定温度:ホッパ下から 80,80,160,200,200,200℃
金型温度:40℃
射出速度:200mm/秒(金型キャビティー内の速度)
射出圧力:800kgf/cm
保持圧力:800kgf/cm
保圧時間:40秒
金型形状:平板(厚さ2mm 幅30mm 長さ90mm)
【0086】
(2)各成分量の算出
TREF(温度昇温溶離分別法)を用いて、下記条件・方法によって算出した。
[装置]
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm
窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
[測定条件]
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度 :5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速 :1mL/分
【0087】
(3)エチレン含有量の算出
13C−NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として733cm−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含有量を測定した。ペレットをプレス成形により約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いた。
【0088】
(4)tanδ曲線のピーク
前述した固有粘弾性測定に従って、成分(A)と成分(B)の組成物について、測定を行った。
【0089】
(5)MFR:JIS K7210に準じて加熱温度230℃、荷重21.2Nにて測定した。なお、エチレン系重合体は、190℃の温度で測定した。
【0090】
(6)融解ピーク温度:セイコー社製DSCを用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
【0091】
(7)分子量分布:前述の方法で測定した。
【0092】
(8)ヘイズ値:厚さ2mmのシート片を用いて、JIS K7105に準拠して値を測定した。
【0093】
(9)第15改正 日本薬局方試験:45.プラスチック製薬品容器試験法(プラスチック製水性注射剤容器)の1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の項の試験法に従って、透明性、重金属、鉛、カドミウム、強熱残分、泡立ち、PH、過マンガン酸カリウム還元性物質、紫外吸収スペクトル、蒸発残留分を測定した。但し、試料調製は、0.5ミリ厚で表面積1200cmに相当する重量のペレットを秤量し、220℃でプレスしてシート片として、長さ約5センチ、幅約0.5センチの大きさに細断し、水で洗った後、室温で乾燥した。これを内容積約300mlの硬質ガラス製容器に入れ、水200mlを正確に加え、適当な栓で密封した後、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で1時間加熱した後、室温になるまで放置し、この内溶液を試験液とし、別に水につき、同様の方法で空試験液を調製した。
【0094】
(10)デュロメーター硬度D:JIS K7215に準拠して測定した。
(11)熱変形温度(HDT):JIS K7207に準拠して荷重0.45MPaにて測定した。
(12)表面のブリード:厚さ2mmのシート片を100℃で1時間ほど加熱処理した後のシート表面を目視で確認し、ブリード性を評価した。
◎:ブリードは認められない。
○:ブリードは殆ど認められない。
△:ブリードが認められる。
×:ブリードが著しい。
【0095】
2.使用材料
(1)ポリプロピレン樹脂材料
(プロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−1))
下記の逐次重合法による製造例により、プロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−1)を得た。
【0096】
〔製造例PP−1〕
予備重合触媒の調製(イオン交換性層状珪酸塩の化学処理)
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm 粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
【0097】
(イオン交換性層状珪酸塩の乾燥)
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様、乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉)
かき上げ翼付き回転数:2rpm
傾斜角:20/520
珪酸塩の供給速度:2.5g/分
ガス流速:窒素 96リットル/時間
向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
【0098】
(触媒の調製)
撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。ここに、該珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1,160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71ML)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、(r)−ジクロロ[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調製した。
【0099】
(予備重合/洗浄)
続いて、槽内温度を40℃昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71ML)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5600ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mモル/リットル、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71ML)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造を行った。
【0100】
(第一工程)
第一工程では、内容積0.4mの攪拌装置付き液相重合層を用いてプロピレン−エチレンランダム共重合を実施した。液化プロピレンと液化エチレン、トリイソブチルアルミニウムをそれぞれ90kg/時、2.2kg/時、21.2g/時で連続的に供給した。水素供給量は第一工程のMFRが目標の値となるように調節した。さらに、上記の予備重合触媒を、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)、5.4g/時となるように供給した。また、重合温度が65℃となるように重合槽を冷却した。
第一工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合を分析したところ、融点Tm138℃、Mw/Mn2.8、BD(嵩密度)は0.46g/cc、MFRは2.0g/10分、エチレン含有量は1.5重量%であった。
【0101】
(第二工程)
第二工程では、内容積0.5m3の攪拌式気相重合槽を用いてプロピレン−エチレンランダム共重合を実施した。第一工程の液相重合槽より重合体粒子を含んだスラリーを連続的に抜き出し、液化プロピレンをフラッシングした後、窒素で昇圧して気相重合槽へ連続的に供給した。重合槽は温度が80℃、プロピレンとエチレンと水素の分圧の合計が1.5MPaとなるように制御した。その際にプロピレンとエチレンと水素の分圧の合計に占めるプロピレンとエチレン及び水素の濃度は、それぞれ73.99vol%、26.00vol%、150volppmとなるように制御した。さらに、活性抑制剤としてエタノールを気相重合槽に供給した。エタノールの供給量は、気相重合槽に供給される重合体粒子に随伴して供給されるトリイソブチルアルミニウム中のアルミニウムに対して、0.3mol/molとなるようにした。
【0102】
こうして得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−1)を分析したところ、活性は11.2kg/g−触媒、BDは0.41g/cc、MFRは4.0g/10分、エチレン含有量は6.2重量%、融点Tm138℃、Mw/Mn2.8のPP−1を得た。
また、PP−1は、成分(A)のエチレン含有量1.3重量%、組成比50重量%、成分(B)のエチレン含有量11.0重量%、組成比50重量%、tanδ曲線が−12.3℃に単一のピークを有するものであった。
製造条件、結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
(プロピレン重合体(成分(A))
〔WFW4〕
日本ポリプロ社製のプロピレン−エチレンランダム共重合体:
商品名「ウィンテック WFW4」、メタロセン触媒使用、エチレン1.9重量%、
プロピレン98.1重量%、MFR7g/10分
融点(Tm)135℃、Mw/Mn=2.7
【0105】
(プロピレン重合体(成分(B))
〔VM3000〕
エクソンモービル社製のプロピレン−エチレンランダム共重合体:
商品名「ビスタマックス3000」、メタロセン触媒使用、エチレン11重量%、プロピレン89重量%、MFR8g/10分、融点(Tm)129℃、Mw/Mn:1.8
【0106】
(エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(C−2))
メタロセン系エチレン−ヘキセン共重合体:
日本ポリエチ(株)社製、商品名「カーネルKS571」
密度(JIS K7112)0.907g/cm、MFR(JIS K7210、190℃、2.16kg荷重)12g/10分
【0107】
(滑剤)
シリコーンオイル:
東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「Dowcorning360Medical Fluid−1000(M360−1000)」
(酸化防止剤)
(i)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:
イルガノックス1010(IR1010;チバ社製、商品名)
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン
(ii)リン系酸化防止剤:
イルガフォス168(IF168;チバ社製、商品名)
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)フォスファイト
【0108】
(実施例1、3〜5、比較例1〜2)
上記各樹脂成分を表2に記載の配合割合(重量部)で準備し、上記したヒンダードフェノール系酸化防止剤0.05重量部及びリン系酸化防止剤0.05重量部とともにスーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度230℃でダイから押し出しペレット化した。得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度230℃、射出圧力600kg/cm及び金型温度40℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片を用い、物性を測定した。その結果を表2に示す。
【0109】
(実施例2)
上記各樹脂成分を表2に記載の配合割合(重量部)で準備し、上記したシリコーンオイル0.10重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.05重量部及びリン系酸化防止剤0.05重量部とともにスーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度230℃でダイから押し出しペレット化した。得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度230℃、射出圧力600kg/cm及び金型温度40℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片を用い、物性を測定した。その結果を表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
表2より、実施例1は、本発明の成分(A)および成分(B)を構成成分とするブロック共重合体で、実施例2は両成分のブレンド品であるが、比較例1と比べ、耐熱性があり、硬度Dがシール材として使用できるレベルである材料であることが分かる。比較例2は、耐熱性はあるが、実施例1、2のような柔軟性がない事が判る。また、実施例1、2は、溶出性も良く、ブリード物がなく、第15改正日本薬局方試験に合格(適合)している事が判る。
また、実施例3〜5は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(C−2)であるKS571をブレンドしたもので、添加量を増やす事で硬度Dを低下させ柔軟性を出す事が出来るが、50重量%の実施例5においては、耐熱性が低下する傾向があることが判る。
【0112】
(実施例6)
実施例2によって得られたペレットを用いて、射出成形機により、樹脂温度240℃及び金型温度35℃で射出成形し、外径2cm、高さ1cmの容器用シール材を成形した。シール材として柔軟性があり、容器の密閉性が保たれる事が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明のシール材は、柔軟性、耐熱性に優れた低溶出であり、各種容器等の蓋材等として用いられるシール材として、広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)30〜70重量%と下記成分(B)70〜30重量%とを含むポリプロピレン樹脂材料からなることを特徴とするシール材。
成分(A):下記条件(a1)〜(a3)を満たすプロピレン重合体。
(a1)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が125〜155℃
(a2)エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンから選ばれるコモノマーの含有量が0〜5重量%
(a3)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4
成分(B):メタロセン触媒を用いて得られる、エチレン含有量が3〜25重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の組成物は、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することを特徴とする請求項1に記載のシール材。
【請求項3】
ポリプロピレン樹脂材料は、メルトフローレート(MFR:230℃ 2.16kg)が0.5〜100g/10分、融解ピーク温度(Tm)が110〜155℃、分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール材。
【請求項4】
成分(B)のエチレン含有量(重量%)は、成分(A)のコモノマーの含有量(重量%)よりも3〜20重量%大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシール材。
【請求項5】
ポリプロピレン樹脂材料は、成分(A)と成分(B)とを溶融ブレンドすることによって得られるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシール材。
【請求項6】
ポリプロピレン樹脂材料は、成分(A)と成分(B)とを逐次重合することによって得られるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシール材。
【請求項7】
ポリプロピレン樹脂材料は、さらに成分(C)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体又はエチレン−α−オレフィンランダム共重合体を、成分(A)と成分(B)との合計量100重量部に対し、1〜100重量部を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシール材。

【公開番号】特開2012−184332(P2012−184332A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48504(P2011−48504)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】