説明

ジャッキ装置および車輌

【課題】構造が比較的簡単で、重量を比較的軽量にすることのできるジャッキ装置を提供する。
【解決手段】シリンダチューブ21tの先端からシリンダロッド21rが出入りするシリンダ21と、シリンダチューブ21tの基端に取り付けられた接地部材30と、シリンダチューブ21tが摺動可能に挿入され、シリンダチューブ21tの先端から突出したシリンダロッド21rの先端が上端部に取付ピン26で取り付けられたアウタチューブ27とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体などの重量物を昇降させるジャッキ装置、および、このジャッキ装置を使用した車輌に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記した車輌は、傾斜地などでも安定した状態で作業が行えるように、ジャッキ装置を備えた複数のアウトリガが車体の両側部にそれぞれ設けられている。
このような車輌として、例えば、消防自動車などの高所作業車を挙げることができる。
【0003】
図2は消防自動車の概略構成を示す説明図である。
【0004】
図2において、消防自動車Fは、車体11と、この車体11の前後に設けられた前、後輪12F,12Rと、車体11の前方に設けられた運転台13と、車体11の後方上に設けられたターンテーブル14と、このターンテーブル14に下端が回動可能に取り付けられた、昇降装置である伸縮式の梯子15と、この梯子15の上端に取り付けられた作業バスケット16と、梯子15とターンテーブル14との間に設けられ、梯子15を起伏させる起伏シリンダ17と、車体11上に設けられ、梯子15を伸縮させる梯子伸縮機構(図示省略)と、車体11の前後左右に設けられ、車体11から突出させられたり、車体11内へ収納されるアウトリガ(図示省略)と、このアウトリガに取り付けら(固定さ)れたジャッキ装置20とで構成されている。
なお、作業バスケット16は、梯子15が起伏しても、水平状態を維持するように構成されている。
そして、消防自動車Fには図示を省略した放水のための放水機構、各部を駆動する油圧駆動機構などが設けられているが、それらの説明は省略する。
【0005】
次に、この消防自動車Fで消火活動、救命活動などの作業を行う場合の動作について説明する。
まず、図示を省略した操作部を操作することにより、アウトリガを車体11から両側へ突出させる。
そして、各アウトリガを車体11から突出させ終えたならば、図示を省略した操作部を操作することにより、各アウトリガに取り付けられたジャッキ装置20を作動させて伸長させ、前、後輪12F,12Rが地面から浮いた状態で車体11が水平状態となるようにし、梯子15を伸長させても消防自動車Fが転倒しないようにする。
【0006】
このようにして車体11を水平状態し、消防自動車Fが転倒しないようにした後、図示を省略した操作部を操作することにより、周囲の建物などに梯子15、作業バスケット16が衝突しないように、ターンテーブル14、起伏シリンダ17、図示省略した梯子伸縮機構を作動させ、作業バスケット16を目的の場所へと移動させる。
そして、目的の消火活動または救命活動などの作業を行う。
【0007】
このようにして目的の消火活動または救命活動などの作業が終了すると、図示を省略した操作部を操作することにより、周囲の建物などに梯子15、作業バスケット16が衝突しないように、ターンテーブル14、起伏シリンダ17、図示省略した梯子伸縮機構を作動させ、作業バスケット16を図2に示す状態へと戻す。
そして、図示を省略した操作部を操作することにより、各ジャッキ装置20を作動させて収縮させ、前、後輪12F,12Rを地面に接地させた後、各アウトリガを車体11内へ収容させる。
【0008】
図3は従来のジャッキ装置の一例を示す説明図であり、図2と同一または相当部分に同一符号を付してある。
【0009】
図3において、ジャッキ装置20は、シリンダチューブ21tの先端からシリンダロッド21rが出入りするシリンダ21と、シリンダロッド21rの先端に、例えば、ボールジョイントなどの自在継手29で揺動自在に取り付けられた接地部材30とで構成されている。
そして、ジャッキ装置20は、アウトリガ19の先端にシリンダチューブ21tが取付ブラケット31によって取り付けられることにより、アウトリガ19に取り付けられている。
なお、シリンダ21を収縮させ、シリンダロッド21rをシリンダチューブ21t内へ収納させると、接地部材30は二点鎖線の位置へと上昇する。
【0010】
このように、シリンダ21自体でジャッキ装置20を構成すると、ジャッキ装置20の構造(構成)が簡単になる。
しかしながら、垂直方向および水平方向の力(荷重)をシリンダ21で支えるため、垂直方向および水平方向の力(荷重)に耐えるようにシリンダ21の強度を確保するためにはシリンダロッド21rを太くする必要があるので、シリンダロッド21rが太くなるとともに、シリンダチューブ21tも太くなり、ジャッキ装置20が大形化し、重量が増加する。
【0011】
図4は従来のジャッキ装置の他の例を示す説明図であり、図2または図3と同一または相当部分に同一符号を付してある。
この図4に示したジャッキ装置は、図3に示したジャッキ装置の不都合を解消するために開発されたものである。
【0012】
図4において、ジャッキ装置20は、シリンダチューブ21tの先端からシリンダロッド21rが出入りするシリンダ21と、シリンダチューブ21tの先端側が上側から摺動(摺動とは、接触してすり動くことである。)自在に挿入され、シリンダロッド21rの先端が支持取付部材としての取付ピン22で下側の内側に取り付けられた下端が有底のインナチューブ23と、このインナチューブ23が上側から摺動自在に挿入されるとともに、シリンダチューブ21tが上側から挿入され、シリンダチューブ21tの基端が支持取付部材としての取付ピン24で上側の内側に取り付けられたアウタチューブ25と、インナチューブ23の下端に、例えば、ボールジョイントなどの自在継手29で揺動自在に取り付けられた接地部材30とで構成されている。
そして、ジャッキ装置20は、アウトリガ19の先端にアウタチューブ25が取付ブラケット31によって取り付けられることにより、アウトリガ19に取り付けられている。
なお、インナチューブ23の上端外周には、アウタチューブ25の内周に摺接(摺接とは、滑る状態で接することである。)する太径の肉盛り部であるガイド部23gが設けられている。
また、アウタチューブ25の下端内周には、インナチューブ23の外周に摺接する細径の肉盛り部であるガイド部25gが設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0013】
【特許文献1】特開2001−213592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図4に示すように、シリンダ21の他、インナ、アウタチューブ23,25を使用してジャッキ装置20を構成すると、インナ、アウタチューブ23,25が水平方向の力(荷重)を支えるので、シリンダ21は垂直方向の力(荷重)のみを支えればよく、シリンダ21の外径を細くすることができる。
しかしながら、インナ、アウタチューブ23,25を使用するので、構造が複雑になるとともに、重量が増加する。
【0015】
この発明は、上記したような不都合を解消するためになされたもので、構造が比較的簡単で、重量を比較的軽量にすることのできるジャッキ装置、および、このジャッキ装置を使用した車輌を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、以下のような発明である。
(1)シリンダチューブの先端からシリンダロッドが出入りするシリンダと、前記シリンダチューブの基端に取り付けられた接地部材と、前記シリンダチューブが摺動可能に挿入され、前記シリンダチューブの先端から突出した前記シリンダロッドの先端が上端部に支持取付部材で取り付けられたアウタチューブと、を備えていることを特徴とするジャッキ装置。
(2)複数のジャッキ装置が車体の両側部にそれぞれ設けられた車輌において、前記ジャッキ装置を、シリンダチューブの先端からシリンダロッドが出入りするシリンダと、前記シリンダチューブの基端に取り付けられた接地部材と、前記シリンダチューブが摺動可能に挿入され、前記シリンダチューブの先端から突出した前記シリンダロッドの先端が上端部に支持取付部材で取り付けられるとともに、前記車体に固定されたアウタチューブと、で構成したことを特徴とする。
(3)ジャッキ装置を備えた複数のアウトリガが車体の両側部にそれぞれ設けられた車輌において、前記ジャッキ装置を、シリンダチューブの先端からシリンダロッドが出入りするシリンダと、前記シリンダチューブの基端に取り付けられた接地部材と、前記シリンダチューブが摺動可能に挿入され、前記シリンダチューブの先端から突出した前記シリンダロッドの先端が上端部に支持取付部材で取り付けられるとともに、前記アウトリガに固定されたアウタチューブと、で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明のジャッキ装置によれば、シリンダチューブの先端からシリンダロッドが出入りするシリンダと、シリンダチューブの基端に取り付けられた接地部材と、シリンダチューブが摺動可能に挿入され、シリンダチューブの先端から突出したシリンダロッドの先端が上端部に支持取付部材で取り付けられたアウタチューブとで構成したので、すなわち、シリンダとアウタチューブとで構成したので、構造が比較的簡単になるとともに、重量を比較的軽量にすることができる。
そして、シリンダチューブおよびアウタチューブで水平方向の力(荷重)を支えるため、シリンダロッドで垂直方向の力(荷重)のみを支えればよく、シリンダの外径を細くすることができる。
また、この発明の車輌によれば、この発明のジャッキ装置を使用しているので、構造が比較的簡単で、車輌を比較的軽量にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1(a),(b)はこの発明の一実施例であるジャッキ装置の構成を示す説明図であり、図3または図4と同一または相当部分に同一符号を付してある。
なお、図1(a)はジャッキ装置の収縮状態を示し、図1(b)ジャッキ装置の伸長状態を示している。
【0019】
図1において、ジャッキ装置20は、シリンダチューブ21tの先端からシリンダロッド21rが出入りするシリンダ21と、シリンダチューブ21tが上側から摺動自在に挿入され、シリンダロッド21rの先端が支持取付部材としての取付ピン26で上端部の内側に取り付けられたアウタチューブ27と、このアウタチューブ27の下側の内周に上下に取り付けられ、シリンダチューブ21tの外周に摺接するスペーサリング28A,28Bと、シリンダチューブ21tの基端に、例えば、ボールジョイントなどの自在継手29で揺動自在に取り付けられた接地部材30とで構成されている。
そして、ジャッキ装置20は、アウトリガ19の先端にアウタチューブ27の上側が取付ブラケット31によって取り付けられることにより、アウトリガ19に取り付けられている。
【0020】
次に、ジャッキ装置20の動作について説明する。
このように構成されたジャッキ装置20は、図1(a)の状態において、図示を省略した油圧機構からシリンダ20内へ圧力油が供給され、シリンダ21が伸長すると、スペーサリング28A,28Bでガイドされながらシリンダチューブ21tが下降し、接地部材30が地面に当接して図1(b)の状態となることにより、前、後輪が地面から浮き、車体が水平状態となるように消防自動車(車輌)を支持することができる。
そして、図1(b)の状態において、図示を省略した油圧機構からシリンダ20内へ圧力油が供給され、シリンダ21が収縮すると、スペーサリング28A,28Bでガイドされながらシリンダチューブ21tが上昇して図1(a)の状態となることにより、前、後輪が地面に接地する。
【0021】
上述したように、この発明の一実施例によれば、シリンダチューブ21tの先端からシリンダロッド21rが出入りするシリンダ21と、シリンダチューブ21tの基端に取り付けられた接地部材30と、シリンダチューブ21tが摺動可能に挿入され、シリンダチューブ21tの先端から突出したシリンダロッド21rの先端が上端部に取付ピン26で取り付けられたアウタチューブ27とでジャッキ装置20を構成したので、すなわち、シリンダ21とアウタチューブ27とでジャッキ装置20を構成したので、構造が比較的簡単になるとともに、重量を比較的軽量にすることができる。
そして、シリンダチューブ21tおよびアウタチューブ27で水平方向の力(荷重)を支えるため、シリンダロッド21rで垂直方向の力(荷重)のみを支えればよく、シリンダ20の外径を細くすることができる。
また、この発明のジャッキ装置を消防自動車(車輌)に使用すると、消防自動車(車輌)は、構造が比較的簡単で、重量を比較的軽量にすることができる。
【0022】
上記した実施例では、車輌を高所作業車である消防自動車とした例を示したが、消防車以外の高所作業車、クレーン車などの特殊車、または、複数のジャッキ装置を車体の両側部にそれぞれ備えている車輌であってもよい。
そして、ジャッキ装置20をアウトリガ19の先端に取り付けた例を示したが、ジャッキ装置を車体の両側部に直接取り付けてもよい。
さらに、スペーサリング28A,28Bをアウタチューブ27に取り付けた例を示したが、スペーサリング28A,28Bをシリンダチューブ21tの外周に取り付けたり、または、スペーサリング28Aをシリンダチューブ21tの上側の外周に取り付け、スペーサリング28Bをアウタチューブ27のに下端の内周に取り付けてもよい。
また、スペーサリング28A,28Bをアウタチューブ27に取り付けた例を示したが、シリンダチューブ全体を同一外径とし、アウタチューブの内周をシリンダチューブの外周が摺接する構成としてもよい。
そして、アウタチューブ27の上端を開放させた例を示したが、ごみなどが入り込んで動作不良を起こさないように、アウタチューブの上端を閉塞するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a),(b)はこの発明の一実施例であるジャッキ装置の構成を示す説明図である。
【図2】消防自動車の概略構成を示す説明図である。
【図3】従来のジャッキ装置の一例を示す説明図である。
【図4】従来のジャッキ装置の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
F 消防自動車(高所作業車、車輌)
11 車体
12F 前輪
12R 後輪
13 運転台
14 ターンテーブル
15 梯子(昇降装置)
16 作業バスケット
17 起伏シリンダ
19 アウトリガ
20 ジャッキ装置
21 シリンダ
21t シリンダチューブ
21r シリンダロッド
22 取付ピン(支持取付部材)
23 インナチューブ
23g ガイド部
24 取付ピン(支持取付部材)
25 アウタチューブ
25g ガイド部
26 取付ピン(支持取付部材)
27 アウタチューブ
28A スペーサリング
28B スペーサリング
29 自在継手
30 接地部材
31 取付ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブの先端からシリンダロッドが出入りするシリンダと、
前記シリンダチューブの基端に取り付けられた接地部材と、
前記シリンダチューブが摺動可能に挿入され、前記シリンダチューブの先端から突出した前記シリンダロッドの先端が上端部に支持取付部材で取り付けられたアウタチューブと、
を備えていることを特徴とするジャッキ装置。
【請求項2】
複数のジャッキ装置が車体の両側部にそれぞれ設けられた車輌において、
前記ジャッキ装置を、
シリンダチューブの先端からシリンダロッドが出入りするシリンダと、
前記シリンダチューブの基端に取り付けられた接地部材と、
前記シリンダチューブが摺動可能に挿入され、前記シリンダチューブの先端から突出した前記シリンダロッドの先端が上端部に支持取付部材で取り付けられるとともに、前記車体に固定されたアウタチューブと、
で構成した、
ことを特徴とする車輌。
【請求項3】
ジャッキ装置を備えた複数のアウトリガが車体の両側部にそれぞれ設けられた車輌において、
前記ジャッキ装置を、
シリンダチューブの先端からシリンダロッドが出入りするシリンダと、
前記シリンダチューブの基端に取り付けられた接地部材と、
前記シリンダチューブが摺動可能に挿入され、前記シリンダチューブの先端から突出した前記シリンダロッドの先端が上端部に支持取付部材で取り付けられるとともに、前記アウトリガに固定されたアウタチューブと、
で構成した、
ことを特徴とする車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−197193(P2007−197193A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20310(P2006−20310)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(391043240)日本機械工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】