説明

スイッチトリラクタンスモータおよびこのスイッチトリラクタンスモータを用いたハイブリッド電気自動車

【課題】1つのモータでありながら2つの独立した回転軸を備えるSRモータを提供するとともに、このSRモータをハイブリッド4WDの動力源として用いることでハイブリッド4WDの小型、軽量化を図る。
【解決手段】U字に形成された第1のステータコアを備え、第1のステータコアがモータケースの内周面上に等ピッチで取り付けられた第1のステータ54と、U字に形成された第2のステータコアを備え、第2のステータコアがモータケースの内周面上に第1のステータコアの間に等ピッチで取り付けられた第2のステータ55とを備える。第1のステータにより回転させられ、第1の回転軸51に固定された第1のロータ56、および2のステータ55により回転させられ、第2の回転軸52に固定された第2のロータ58を備え、それらが一つのモータケース内に配置されたSRモータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2つの独立した回転軸を備えるスイッチトリラクタンスモータ、およびこのスイッチトリラクタンスモータを備え、左右の前輪を液体燃料エンジンで駆動し、左右の後輪をこのスイッチトリラクタンスモータで駆動する4輪駆動のハイブリッド電気自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車は、液体燃料エンジンの動力および電動モータの動力により車輪を回転させ走行するものであり、近年、液体燃料エンジンの動力により左右の前輪を駆動させ、電動モータの動力により左右の後輪を駆動させる4輪駆動のハイブリッド電気自動車(以下、「ハイブリッド4WD」という。)も提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1のハイブリッド4WDは、車両の後部にACモータ、クラッチおよびディファレンシャルギヤを備えている。そして、このACモータの回転軸はクラッチを介してディファレンシャルギヤに接続されおり、このACモータの回転軸の回転は、ディファレンシャルギヤにより左右の後輪に配分し左右の後輪を回転させるものである。
【0003】
特許文献1のハイブリッド4WDは、1つのACモータの回転軸の回転により、左右の後輪を回転させているため、左右の後輪の回転の速度やトルクを独立して制御することができない。また、後輪を駆動するためにACモータの他に、クラッチやディファレンシャルギヤが設けられており、車両の重量が増えてしまうという課題がある。
【0004】
そのような課題を解決するものとして、2つのスイッチトリラクタンスモータ(以下「SRモータ」という。)の動力により、左右の後輪を駆動させるハイブリッド4WDが提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2のハイブリッド4WDは、左右の後輪のホイールの内部にそれぞれにSRモータを配置し、これらのSRモータの回転軸の回転により、左右の後輪を回転させるものである。
【0005】
SRモータは、ロータに永久磁石を備えていないため、外部からロータの回転軸を回転させられたときの負荷が少ない。そのため、ロータの回転軸と後輪との常時接続が可能となり、クラッチが不要となる。また、左右の後輪のそれぞれに動力源として、SRモータを配置していることから、動力の分配のためのデリファレンスギヤが不要となる。したがって、特許文献2のハイブリッド4WDは、クラッチやデリファレンスギヤの重量分の軽量化が図られている。
【特許文献1】特開2006−288006号公報
【特許文献2】特開2004−328991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のハイブリッド4WDにあっては、クラッチやディファレンシャルギヤの重量分の軽量化が図られているが、左右の後輪の駆動源とし、左右の後輪のそれぞれにSRモータを用いているため、その分の重量増が懸念される。よって、このSRモータを小型、軽量化し、車両全体を軽量化する手段が求められる。
【0007】
そこで、本発明は、2つの独立した回転出力が得られるSRモータの小型、軽量化として、1つのモータでありながら2つの独立した回転軸を備えるSRモータを提供するとともに、このSRモータをハイブリッド4WDの動力源として用いることでハイブリッド4WDの小型、軽量化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のSRモータは、略円筒状に形成され、両端に第1および第2の孔部を有するモータケースと、磁性材料にて略U字形状に形成され、前記略U字形状の開口部を形成する第1および第2の開口端を有する複数の第1のステータコアを備え、前記複数の第1のステータコアが前記モータケースの内周面上に略等ピッチで取り付けられた第1のステータと、磁性体にて形成され、前記第1のステータの前記複数の第1のステータコアと略同一形状に形成され、前記複数の第1のステータコアの間に配置された複数の第2のステータコアを有し、前記第2のステータコアが前記モータケースの内周面上に略等ピッチで取り付けられた第2のステータと、前記第1のステータの前記複数の第1のステータコアのそれぞれに巻装された複数の第1のコイルを有する第1のコイル群と、前記第2のステータの前記複数の第2のステータコアのそれぞれに巻装された複数の第2のコイルを有する第2のコイル群と、前記モータケースに回転自在に固定され、前記モータケースの前記第1の孔部から前記モータケースの外側に突出した突出部を有する第1の回転軸と、前記モータケースに回転自在に固定され、前記モータケースの前記第2の孔部から前記モータケースの外側に突出した突出部を有する第2の回転軸と、円盤状に形成され、前記第1のステータのU字形状に形成された前記複数の第1のステータの前記第1および第2の開口端から所定の隙間を隔てた位置に配置された複数の第1のロータコアを有し、前記第1の回転軸に固定されたの第1のロータと、円盤状に形成され、前記第2のステータのU字形状に形成された前記複数の第2のステータの前記第1および第2の開口端から所定の隙間を隔てた位置に配置された複数の第2のロータコアを有し、前記第2の回転軸に固定されたの第2のロータとを備える。また、本発明のハイブリッド4WDは、後輪の駆動源として、このSRモータを備える。
【発明の効果】
【0009】
このように、2つの独立した回転出力を得る手段として、1つのモータケース内に第1および第2のステータ、および第1および第2のロータを備え、独立して回転する第1および第2の回転軸を備える構成のSRモータとすることで、2つの独立した回転出力を得る手段として、それぞれに出力軸を有するSRモータを2つ用いる場合の構成のSRモータに比べて、モータ本体の小型、軽量化を図ることができる。
【0010】
また、2つの独立した回転出力を出力する第1および第2の回転軸を備える構成で小型、軽量化が図られたSRモータをハイブリッド4WDの駆動源とすることで、それぞれに出力軸を有するSRモータを2つ用いる場合に比べて、ハイブリッド4WDの小型、軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態のSRモータについて、図1から図5に基づいて説明する。図1は、本実施の形態のSRモータの側面図であり、図2は、図1にてE方向から見た本実施の形態のSRモータの正面図である。また、図3は、図2にてA−Aにて示す本実施の形態のSRモータの縦断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態のSRモータ50は、モータケース53を備え、モータケース53は、円筒状のステータケース53aの一端(紙面右側)に円盤状の第1のブラケット53bが取り付けられ、他端(紙面右側)に円盤状の第2のブラケット53cが取り付けられ、第1および第2のブラケットにて両端が塞がれた円筒状の構造となっている。このように、第1および第2のブラケット53b、53cにて両端が塞がれた略円筒状のモータケース53の一端(紙面右側)からは、第1の出力軸51の突出部51aが突出し、他端(紙面左側)からは、第2の出力軸52の突出部52aが突出している。
【0013】
図3に示すように、本実施の形態のSRモータ50は、一端側(紙面右側)に第1のステータ54および第1のロータ56とを有し、第1の回転軸51を回転させる第1の駆動系80を備え、他端側(紙面左側)に第2のステータ55および第2のロータ58とを有し、第2の回転軸52を回転させる第2の駆動系90を備える。ここで、第1のステータ54と第2のステータ55は、それぞれ第1のステータコア(54aから54f)および第2のステータコア(55aから55f)から構成されており、第1のステータコア(54aから54f)と第2のステータコア(55aから55f)は、ともに同一構造であり、同一部品にて構成されている。
【0014】
そこで、まず、第1のステータコア(54aから54f)と第2のステータコア(55aから55f)の構造を、図4および図5に基づき説明する。ここで、図4は、第1のステータコア(54aから54f)および第2のステータコア(55aから55f)の正面図であり、図4は、図3にてD方向から見た第1のステータコア(54aから54f)および第2のステータコア(55aから55f)の側面図である。上述のように、第1のステータコア(54aから54f)と第2のステータコア(55aから55f)は、ともに同一構造であるため、以下、それらを代表して第1のステータコア54aの構造について説明する。
【0015】
第1のステータコア54aは、軟磁性体の粉末を加圧成形したいわゆる圧粉成形により形成されている。また、第1のステータコア54aは、底部54B、第1の側部54Cおよび第2の側部54Dを備えている。底部54Bの一端(紙面上側)には第1の側部54Cが一体に形成され、底部54Bの他端(紙面下側)には第2の側部54が一体に形成されており、第1のステータコア54aは、底部54B、第1の側部54Cおよび第2の側部54Dにて略U字形状に形成されている。なお、第1のステータコア54aは、圧粉成形により形成されるものに限らず、薄板の鋼板を積層したものであってもよい。
【0016】
底部54B、第1の側部54Cおよび第2の側部54Dの幅は、幅L1にて全て等しく設定されており、底部54B、第1の側部54Cおよび第2の側部54Dの長さは、それぞれ長さL2,長さL3および長さL4に設定されている。ここで、第1の側部54Cの長さL3は、第2の側部54Dの長さL4よりも長さL5だけ長く設定されている(L3=L4+L5)。これにより、略U字形状の内周を形成する第1の側部54Cの端部から長さL5までの部分に、第1の開口端54Rが形成される。また、第2の側部54Dの長さL1の端部には、第2の開口端54Sが形成されており、これら第1の開口端54Rおよび第2の開口端54Sにより、開口部54Aが形成されている。
【0017】
次に、第1の駆動系80について、図3および図6に基づき説明する。ここで、図6は、図3においてB−Bにて示す本実施の形態のSRモータの横断面図であり、第1の駆動系80の第1のステータ54および第1のロータ56の詳細を示す。
【0018】
第1のステータ54は、6個の第1のステータコア(54aから54f)から構成される。第1のステータコア(54aから54f)には、それぞれ第1のコイル(60aから60f)が集中巻きにて巻装されており、これらの第1のコイル(60aから60f)にて第1のコイル群60が構成される。
【0019】
第1のコイル(60aから60f)が巻装された第1のステータコア(54aから54f)は、モータケース53を構成する円筒形状のステータケース53aの内周面上に等ピッチ(60度間隔)で取り付けされている。このとき、第1のステータコア(54aから54f)の第1の側部54Cが半径方向外側に、第2の側部54Dがステータ半径方向内側に、開口部54Aが第1ブラケット53b側に位置するように配置されている。
【0020】
図3に示すように、第1のブラケット53bの中央のステータケース53a側には、第1の凹部53fが設けられており、この第1の凹部53fの円筒状の内周面に第1の軸受62の外輪が圧入されることにより、第1の軸受62が第1のブラケット53bの第1の凹部53fに取り付けされている。また、ステータケース53aの中央の第1のブラケット53b側には、第2の凹部53gが設けられており、この第2の凹部53gの円筒状の内周面に第2の軸受63の外輪が圧入されることにより、第2の軸受63がステータケース53aの第2の凹部53gに取り付けされている。
【0021】
第1の回転軸51の一端(紙面右側)には、第1の縮径部51bが設けられており、また、他端(紙面左側)には、第2の縮径部51cが設けられている。そして、第1の縮径部51bが第1の軸受62の内輪に挿入され、第2の縮径部51cが第2の軸受63の内輪に挿入されることで、第1の回転軸51は、ステータケース53aと第1のブラケット53bにて回転自在に支持される。また、第1の回転軸51の突出部51aは、第1のブラケット53bの中央の第1の孔部53dからモータケース53の外部(紙面右側)に突出している。
【0022】
図6に示すように、第1のロータ56は、第1のロータ本体56aと第1のロータ本体56aに取り付けられた8個の第1のロータコア(57aから57h)により構成されている。第1のロータ本体56aは、樹脂にて略円盤形状に形成され、第1の回転軸51に取り付けるための孔が中央部に設けられている。また、第1のロータ本体56aの外周には第1のロータコア(57aから57h)を取り付けるための切り欠きが放射状に8箇所形成されている。
【0023】
第1のロータコア(57aから57h)は、軟磁性体の粉末を加圧成形したいわゆる圧粉成形により略直方体に形成されており、これらの第1のロータコア(57aから57h)は、上記切り欠きに接着により固定されることにより、第1のロータ本体56aに取り付けられている。そして、第1のロータ56は、上記の中央部に設けられた孔により第1の回転軸51に取り付けられ、ステータケース53aと第1のブラケット53bにて回転自在に支持される。なお、第1のロータコア(57aから57h)は、圧粉成形により形成されるものに限られず、薄板の鋼板を積層したものであってもよい。
【0024】
(ロータとステータの位置関係)
以下、第1のステータ54と第1のロータ56の位置関係について説明する。第1のロータ56は、第1のステータ54に対し、第1のロータ56の外周面56Rが、第1のステータコア(54aから54f)の第1の開口端54Rと対向し、第1のロータ56の下面56Sが、第1のステータコア(54aから54f)の第2の開口端54Sと対向する位置に配置されている。このとき、外周面56Rと第1の開口端54Rとの間の距離、および下面56Sと第2の開口端54Sとの間の距離は、所定のエアギャップの分だけ離れるように設定されている。
【0025】
本実施の形態のSRモータ50は、第1のロータ56の回転を検出するための第1のレゾルバ66が設けられており、この第1のレゾルバ66は、レゾルバステータ66aとレゾルバロータ66bから構成されている。第1のブラケット53bのステータケース53aと反対側の面の中央には、凹部形状の第1の固定部53jが設けられており、この第1の固定部53jにレゾルバステータ66aが取り付けられている。また、レゾルバステータ66aの内側の位置にて、第1の回転軸51の突出部51aにレゾルバロータ66bが取り付けされている。そして、第1のレゾルバ66を外部から保護するための第1のレゾルバケース68が、第1のブラケット53bに取り付けられている。
【0026】
次に、第2の駆動系90について、図3および図7に基づき説明する。ここで、図7は、図3においてC−Cにて示す本実施の形態のSRモータの横断面図であり、第2の駆動系90の第2のステータ55および第2のロータ58の詳細を示す。
【0027】
第2のステータ55は、6個の第2のステータコア(55aから55f)から構成される。第2のステータコア(55aから55f)には、それぞれ第2のコイル(61aから61f)が集中巻きにて巻装されており、これらの第2のコイル(61aから61f)にて第2のコイル群61が構成される。
【0028】
第2のコイル(61aから61f)が巻装された第2のステータコア(55aから55f)は、モータケース53を構成する円筒形状のステータケース53aの内周面上に等ピッチ(60度間隔)で取り付けされている。このとき、第2のステータコア(55aから55f)の第1の側部55Cが半径方向外側に、第2の側部55Dがステータ半径方向内側に、開口部55Aが第2ブラケット53c側に位置するように配置されている。
【0029】
このとき、第2のステータ55の第2のステータコア(55aから55f)は、第1のステータ54の第1のステータコア(54aから54f)の間に配置されるよう設定されている。すなわち、ステータケース53a内にて、第1のステータ54の第1のステータコア(54aから54f)と第2のステータ55の第2のステータコア(55aから55f)とが、円周上に交互に配置されるようになっている。なお、本実施の形態では、第1のステータ54の基準位置L1に対し、第2のステータの基準位置L2は、30度ずれた位置となる設定になっている。
【0030】
図3に示すように、第2のブラケット53cの中央のステータケース53a側には、第3の凹部53hが設けられており、この第3の凹部53hの円筒状の内周面に第3の軸受64の外輪が圧入されることにより、第3の軸受64が第2のブラケット53cの第3の凹部53hに取り付けされている。また、ステータケース53aの中央の第2のブラケット53c側には、第4の凹部53iが設けられており、この第4の凹部53iの円筒状の内周面に第4の軸受65の外輪が圧入されることにより、第4の軸受65がステータケース53aの第4の凹部53iに取り付けされている。
【0031】
第2の回転軸52の一端(紙面左側)には、第1の縮径部52bが設けられており、また、他端(紙面右側)には、第2の縮径部52cが設けられている。そして、第1の縮径部52bが第の3軸受64の内輪に挿入され、第2の縮径部52cが第4の軸受65の内輪に挿入されることで、第2の回転軸52は、ステータケース53aと第2のブラケット53cにて回転自在に支持される。また、第2の回転軸52の突出部52aは、第2のブラケット53bの中央の第2の孔部53eからモータケース53の外部(紙面左側)に突出している。
【0032】
図7に示すように、第2のロータ58は、第2のロータ本体58aと第2のロータ本体58aに取り付けられた8個の第2のロータコア(59aから59h)により構成されている。第2のロータ本体58aは、樹脂にて略円盤形状に形成され、第2の回転軸52に取り付けるための孔が中央部に設けられている。また、第2のロータ本体58aの外周には第2のロータコア(59aから59h)を取り付けるための切り欠きが放射状に8箇所形成されている。
【0033】
第2のロータコア(59aから59h)は、軟磁性体の粉末を加圧成形したいわゆる圧粉成形により略直方体に形成されており、これらの第2のロータコア(59aから59h)は、上記切り欠きに接着により固定されることにより、第2のロータ本体58aに取り付けられている。そして、第2のロータ58は、上記の中央部に設けられた孔により第2の回転軸52に取り付けられ、ステータケース53aと第2のブラケット53cにて回転自在に支持される。なお、第2のロータコア(59aから59h)は、圧粉成形により形成されるものに限られず、薄板の鋼板を積層したものであってもよい。
【0034】
以下、第2のステータ55と第2のロータ58の位置関係について説明する。第2のロータ58は、第2のステータ55に対し、第2のロータ58の外周面58Rが、第2のステータコア(55aから55f)の第1の開口端55Rと対向し、第2のロータ58の下面58Sが、第2のステータコア(55aから55f)の第2の開口端55Sと対向する位置に配置されている。このとき、外周面58Rと第1の開口端55Rとの間の距離、および下面58Sと第2の開口端55Sとの間の距離は、所定のエアギャップの分だけ離れるように設定されている。
【0035】
本実施の形態のSRモータ50は、第2のロータ58の回転を検出するための第2のレゾルバ67が設けられており、この第2のレゾルバ67は、レゾルバステータ67aとレゾルバロータ67bから構成されている。第2のブラケット53cのステータケース53aと反対側の面の中央には、凹部形状の第2の固定部53kが設けられており、この第2の固定部53kにレゾルバステータ67aが取り付けられている。また、レゾルバステータ67aの内側の位置にて、第2の回転軸52の突出部52aにレゾルバロータ67bが取り付けされている。そして、第2のレゾルバ67を外部から保護するための第2のレゾルバケース69が、第2のブラケット53cに取り付けられている。
【0036】
このように、2つの独立した回転出力を得る手段として、1つのモータケース53内に第1および第2の駆動系80、90を備え、第1および第2の駆動系80、90により独立して回転する第1および第2の回転軸51、52を備える構成のSRモータ50とすることで、それぞれに出力軸を有するSRモータを2つ用いる場合に比べて、SRモータの小型、軽量化を図ることができる。また、第1のステータコア(54aから54f)と第2のステータコア(55aから55f)を円周上交互に配置した構成としたことで、軸長の更なる小型化が図られる。
【0037】
次に、本実施の形態のSRモータ50を用いたハイブリッド4WDについて、図8に基づいて説明する。図8は、本発明のハイブリッド4WDを上方から見たときのシステム構成を示すシステムブロック図である。ハイブリッド4WD100の車両本体1の前部分には液体燃料エンジン2が配置されており、液体燃料エンジン2は、液体燃料の燃焼により回転されるエンジンシャフト30を有している。
【0038】
車両本体1の後部には、液体燃料タンク12が配置されており、液体燃料エンジン2に供給するガソリン等の液体燃料が収容されている。また、液体燃料タンク12と液体燃料エンジン2の間には、液体燃料タンク12に収容された液体燃料を液体燃料エンジン2に供給するための燃料ポンプ(燃料供給手段)13が設けられている。
【0039】
液体燃料エンジン2のエンジンシャフト3aには、変速機3が機械的に接続されており、エンジンシャフト3aの回転を加速または減速(変速)し、加速または減速(変速)されたエンジンシャフト3aの回転を出力するドライブシャフト4を有している。
【0040】
車両本体1の前部の左右には、第1の前輪(前方右側車輪)21および第2の前輪(前方左側車輪)22が回転自在に配置されている。上記の変速機3のドライブシャフト4は、右前輪ドライブシャフト4aと左前輪ドライブシャフト4bを備えており、第1の前輪21は、右前輪ドライブシャフト4aに、第2の前輪22は、左前輪ドライブシャフト4bに、それぞれ機械的に接続されており、変速機3を介し、液体燃料エンジン2のエンジンシャフト3aの回転により回転される。
【0041】
車両本体1の後部には、SRモータ50が配置されており、SRモータ50には、上述のようにそれぞれ独立して回転する第1および第2の出力軸51、52が備えられている。この第1および第2の出力軸51、52の回転から高トルクの回転出力を得るため、第1のドライブギヤ(第1の減速機構)51dおよび第1のドリブンギヤ(第1の減速機構)10、並びに第2のドライブギヤ(第2の減速機構)52dおよび第2のドリブンギヤ(第2の減速機構)11が用いられている。
【0042】
第1のドライブギヤ51dは、第1の回転軸51に取り付けられており、第2のドライブギヤ52dは、第2の回転軸52に取り付けられている。また、第1のドリブンギヤ10は、第1のドライブギヤ51dと噛み合うように車体1に配置されており、第2のドリブンギヤ11は、第2のドライブギヤと噛み合うように車体1に配置されている。ここで、第1および第2のドライブギヤ51d、52dのギヤ数Z1に対する、第1および第2のドライブギヤ10、11のギヤ数Z2とのギヤ比κは、約10から約50程度に設定されている(κ=Z2/Z1、約10<κ<約50)。すなわち、第1および第2の回転軸51、52の回転出力は、回転数として約50分の1から約10分の1に減速され、またトルクとして約10倍から約50倍に増加されて、第1および第2のドリブンギヤ10、11に伝達される。
【0043】
車両本体1の後部の左右には、第1の後輪(後方右側車輪)23および第2の後輪(後方左側車輪)24が回転自在に配置されている。第1の後輪23は、順に第1シャフト10a、第1継手10b、第2シャフト10c、第2継手10d、第3シャフト10eを介して、第1のドリブンギヤ10に機械的に連結されている。従って、第1の回転軸51の回転の減速された回転が、第1のドリブンギヤ10から、第1シャフト10a、第1継手10b、第2シャフト10c、第2継手10d、第3シャフト10eを順に伝達して、第1の後輪23に伝達される。
【0044】
第2の後輪24も同様に、順に第1シャフト11a、第1継手11b、第2シャフト11c、第2継手11d、第3シャフト11eを介して、第2のドリブンギヤ11に機械的に連結されている。従って、第2の回転軸52の回転の減速された回転が、第2のドリブンギヤ11から、第1シャフト11a、第1継手11b、第2シャフト11c、第2継手11d、第3シャフト11eを順に伝達して、第1の後輪23に伝達される。このように、1つのSRモータ50の2つの独立して回転する第1および第2の回転軸51、52の回転により、それぞれ第1および第2の後輪23、24は独立して回転させられる。
【0045】
車両本体1の後部には、第1のバッテリ(高圧バッテリ)6が配置されている。ここで、SRモータ50は、第1および第2のインバータ9a、9bを介して第1のバッテリ(高圧バッテリ)6に接続されており、第1のバッテリ6からの電力の供給により、SRモータ50の第1および第2の回転軸51、52は、回転させられる。なお、本実施形態の第1のバッテリ5は、蓄電電圧50V以上のリチウムイオン電池である
【0046】
第1のインバータ9あは、複数のスイッチ素子を有しており、SRモータ50の第1のコイル群60の第1のコイル(60aから60f)のそれぞれに接続されている。そして、第1のインバータは、第1のロータ56を駆動するための制御信号を第1のコイル(60aから60f)のそれぞれに供給する。第2のインバータも同様に、複数のスイッチ素子を有しており、SRモータ50の第2のコイル群61の第2のコイル(61aから61f)のそれぞれに接続されている。そして、第2のインバータ9bは、第2のロータ58を駆動するための制御信号を第2のコイル(61aから61f)のそれぞれに供給する。
【0047】
図8に示すように、車両本体1の左側側面部(紙面左側)には、交流100Vを供給する家庭用プラグ700との接続端子7a、7aを有するプラグイン装置7が配置されている。プラグイン装置7は、50Hzまたは60Hzの交流の家庭用電源の電力信号を直流に変換するAC/DCコンバータ8を介して、第1バッテリ6に接続されており、第1のバッテリ6は、家庭用プラグ60を通じて家庭用電源からも充電可能となっている。なお、本実施の形態では、家庭用電源からの充電方式についてのみ記載されているが、家庭用電源からの充電に限らず、インフラ整備にて各地に設けられた急速充電装置による充電も可能な構造としてもよいことはいうまでもない。
【0048】
第1および第2の前輪21、22の近傍には、第1および第2の前輪回転センサ14、15が設けられ、第1および第2の前輪回転センサ14、15により、第1および第2の前輪21、22の回転情報が検出される。また、第1および第2の後輪23、24の近傍には、第1および第2の後輪回転センサ16、17が設けられ、第1および第2の後輪回転センサ16、17により、第1および第2の後輪23、24の回転情報が検出される。回転信号処理手段18には、第1および第2の前輪回転センサ14、15、ならびに第1および第2の後輪回転センサ16、17がそれぞれ接続されており、回転信号処理手段18により、電気自動車100の速度信号が処理される。
【0049】
(第1および第2の制御手段)
次に、本実施形態の第1および第2の制御手段19、20について説明する。本実施形態に設けられている第1の制御手段19は、液体燃料エンジン2に接続され、液体燃料エンジン2を制御し、第2の制御手段20は、第1および第2のインバータ9a、9bに接続され、SRモータ50を制御する。
【0050】
上述のように、回転信号処理手段18には、第1および第2の前輪回転センサ14、15、ならびに第1および第2の後輪回転センサ16、17がそれぞれ接続されており、回転信号処理手段18により、電気自動車100の速度信号が処理される。本実施の形態では、車両100の速度に応じて、SRモータ50の駆動と液体燃料エンジン2による駆動を切り換える制御を行う。以下、液体燃料エンジン2による駆動とSRモータ50による駆動の切り換えについて用いて説明する。
【0051】
第2の制御手段20は、回転信号処理手段18、第1および第2のインバータ9a、9bに接続されている。本実施の形態では、回転信号処理手段18から第2の制御手段20に供給される速度信号が、0km/hから100km/hの場合(第2の速度域)、第2の制御手段20は、第1および第2のインバータ9a、9bに対し、第1および第2のロータ56、58を駆動するための制御信号を第1および第2のコイル(60aから60f、61aから61f)のそれぞれに供給するよう指令する。
【0052】
第1の制御装置19は、回転信号処理手段18、液体燃料エンジン2に接続されている。本実施の形態では、回転信号処理手段18から第1の制御手段19に供給される速度信号が、50km/hを超える場合(第1の速度域)、第1の制御装置19は、液体燃料エンジン5により第1および第2の前輪21、22を駆動するエンジン駆動制御信号を発生し、液体燃料エンジン5にエンジン駆動制御信号を供給する。また、第1の制御装置19は、燃料ポンプ(燃料供給手段13)にも接続されており、燃料タンク12から液体燃料エンジン5への燃料の供給も制御する。
【0053】
車速が予め定められた第1の値(50[km/h])に達するまでのいわゆる低速から中速状態では、液体燃料エンジン2の走行距離辺り燃料消費量は、中速から高速状態に比べて多くなり、低速から中速状態はいわゆる燃費の悪い状態である。そこで、このような低速から中速状態はでは、第2の制御装置により、SRモータ50のみを駆動させる。
【0054】
次に、車速が第1の値(50[km/h])から第2の値(100[km/h])までの中速から高速状態では、比較的燃費が良くなるので第2の制御装置20によりSRモータ50を駆動させるとともに、第1の制御装置19により、液体燃料エンジン5を併用し駆動させる。
【0055】
さらに、車速が第2の値(100[km/h])を超える高速状態では、液体燃料エンジン2の燃費が一層向上するので、第2の制御装置20によるSRモータ50の駆動は停止させ、第1の制御装置19により、液体燃料エンジン2のみを駆動させる。このような駆動の切り替えを行うことにより、車両100の燃費の向上が図られる。また、第1のバッテリ5に、家庭用電源からの充電も可能とすることで、さらなる燃費の向上が可能となる。
【0056】
なお、本実施の形態では、第1の値と第2の値は異なる値に設定されており、中速から高速状態において、液体燃料エンジン2による車両100の駆動と、第1および第2のSRモータ8、9による車両100の駆動が同時になされる設定となっている。しかし、第1の値と第2の値を略同じ値にし、液体燃料エンジン2による車両100の駆動と、第1および第2のSRモータ8、9による車両100の駆動が同時になされる速度帯域を設けず、第1の値(第2の値)にて、第1および第2のSRモータ8、9による車両100の駆動から液体燃料エンジン2による車両100の駆動に切り換える設定としてもよい。
【0057】
このように、2つの独立した回転出力を出力する第1および第2の回転軸51、52を備える構成で小型、軽量化が図られたSRモータ50をハイブリッド4WDの駆動源とすることで、それぞれに出力軸を有するSRモータを2つ用いる場合に比べて、ハイブリッド4WDの小型、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態におけるSRモータの側面図である。
【図2】本実施の形態におけるSRモータの正面図である。
【図3】図2にてA−Aにて指示したSRモータの縦断面図である。
【図4】本実施の形態のステータコアの側面図である。
【図5】本実施の形態のステータコアの正面図である。
【図6】図3にてB−Bにて指示したSRモータの横断面図である。
【図7】図3にてC−Cにて指示したSRモータの横断面図である。
【図8】本実施の形態のハイブリッド4WDの構成を示すシステムブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
1 車両本体
2 液体燃料エンジン
6 第1のバッテリ
9a 第1のインバータ
9b 第2のインバータ
12 燃料タンク
18 回転処理手段
19 第1の制御装置
20 第2の制御装置
21 第1の後輪
22 第2の後輪
23 第1の前輪
24 第2の前輪
50 SRモータ
51 第1の出力軸
51a 突出部
52 第2の出力軸
52a 突出部
53 モータケース
54 第1のステータ
54aから54f 第1のステータコア
55 第2のステータ
55aから55f 第2のステータコア
56 第1のロータ
57aから57h 第1のロータコア
58 第2のロータ
59aから59h 第2のロータコア
60 第1のコイル群
60aから60f 第1のコイル
61 第2のコイル群
61aから61f 第2のコイル
80 第1の駆動系
90 第2の駆動系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状に形成され、両端に第1および第2の孔部を有するモータケースと、
磁性材料にて略U字形状に形成され、前記略U字形状の開口部を形成する第1および第2の開口端を有する複数の第1のステータコアを備え、前記複数の第1のステータコアが前記モータケースの内周面上に略等ピッチで取り付けられた第1のステータと、
磁性体にて形成され、前記第1のステータの前記複数の第1のステータコアと略同一形状に形成され、前記複数の第1のステータコアの間に配置された複数の第2のステータコアを有し、前記第2のステータコアが前記モータケースの内周面上に略等ピッチで取り付けられた第2のステータと、
前記第1のステータの前記複数の第1のステータコアのそれぞれに巻装された複数の第1のコイルを有する第1のコイル群と、
前記第2のステータの前記複数の第2のステータコアのそれぞれに巻装された複数の第2のコイルを有する第2のコイル群と、
前記モータケースに回転自在に固定され、前記モータケースの前記第1の孔部から前記モータケースの外側に突出した突出部を有する第1の回転軸と、
前記モータケースに回転自在に固定され、前記モータケースの前記第2の孔部から前記モータケースの外側に突出した突出部を有する第2の回転軸と、
円盤状に形成され、前記第1のステータのU字形状に形成された前記複数の第1のステータの前記第1および第2の開口端から所定の隙間を隔てた位置に配置された複数の第1のロータコアを有し、前記第1の回転軸に固定されたの第1のロータと、
円盤状に形成され、前記第2のステータのU字形状に形成された前記複数の第2のステータの前記第1および第2の開口端から所定の隙間を隔てた位置に配置された複数の第2のロータコアを有し、前記第2の回転軸に固定されたの第2のロータとを備えるスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチトリラクタンスモータを備えるハイブリッド電気自動車において、
車両の車両本体と、
前記車両本体の前部に配置され、液体燃料の燃焼により回転されるエンジンシャフトを有する液体燃料エンジンと、
前記車両本体の前部の左右に回転自在に配置され、前記液体燃料エンジンの前記エンジンシャフトの回転により回転される第1および第2の前輪と、
前記車両本体の後部に配置される第1のバッテリと、
前記車両本体の後部の配置され、前記第1のバッテリからの電力の供給により前記第1および第2の回転軸が回転する前記スイッチトリラクタンスモータと、
前記車両本体の後部の左右に回転自在に配置され、それぞれ前記スイッチトリラクタンスモータの前記第1および第の回転軸に第1および第2の減速機構を介して機械的に接続され、前記スイッチトリラクタンスモータの前記第1および第2の回転軸の回転により回転させられる第1および第2の後輪と、
前記スイッチトリラクタンスモータの前記第1のコイル群のそれぞれの第1のコイル、および前記第1のバッテリに接続され、前記第1のコイルのそれぞれに制御信号を供給する第1のインバータと、
前記スイッチトリラクタンスモータの前記第2のコイル群のそれぞれの第2のコイル、および前記第1のバッテリに接続され、前記第2のコイルのそれぞれに制御信号を供給する第2のインバータと、
前記第1および第2の前輪センサ、ならびに前記第1および第2の後輪センサに接続され、前記第1および第2の前輪、ならびに前記第1および第2の後輪の回転情報を処理し、前記車両の速度信号を出力する回転信号処理手段と、
前記回転信号処理手段に接続され、前記回転信号処理手段から供給される前記速度信号が予め定められた第1の速度域の場合には、前記液体燃料エンジンにエンジン駆動制御信号を供給する第1の制御装置と、
前記回転処理手段および前記第1および第2のインバータに接続され、前記回転処理手段から供給される前記速度信号が予め定められた第2の速度域の場合には、前記第1および第2のインバータに前記制御信号を発生するよう指令する第2の制御装置とを備えたことを特徴とするハイブリッド電気自動車。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−247075(P2009−247075A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88967(P2008−88967)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】