説明

スイッチユニット

【課題】薄型化を実現しつつ、操作者による操作性に優れたスイッチユニットを提供すること。
【解決手段】上下動可能に設けられユニット表面から突出する突出形態とユニット内部に沈み込む沈下形態とに切り替えられる操作キー2と、操作キー2の下方領域に進入して操作キー2を突出形態とする一方、下方領域から退避して操作キー2を沈下形態とする可動子5と、可動子5に取り付けられ通電加熱により収縮し可動子5を所定方向に駆動するワイヤ6,7とを備え、制御部は、操作者による操作入力が受付可能であることを示す場合に可動子5で操作キー2を突出形態とすると共に、突出形態とした操作キー2から受け付けた操作入力を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチユニットに関し、特に、小型化及び薄型化が要求される精密機器等に好適なスイッチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の精密機器は多機能化が急速に進んでおり、このような多機能化がその操作性を複雑化する一因となっている。かかる操作性を簡略化する手法として、例えば、操作パネル上の一部を上下動可能とし、必要な部分のみを操作者側に突出させることが考えられる。特許文献1では、プッシュスイッチを固定した状態で、所望のプッシュスイッチに対応した操作部を上下動させることで、必要のないプッシュスイッチの操作部が突出することを回避するスイッチの操作構造が提案されている。
【特許文献1】特開2003−16869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来のスイッチの操作構造においては、操作パネルに対して上下動可能な操作部と、操作パネルの内側に固定されたプッシュスイッチとの間に駆動手段を介在させる構成を採ることからスイッチ自体を薄型化することが困難であるという問題がある。
【0004】
特に、携帯電話等の精密機器の小型化及び薄型化が常に要請される現在の状況下においては、このような精密機器の構成部品の薄型化を実現することは極めて重要な課題となる。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、薄型化を実現しつつ、操作者による操作性に優れたスイッチユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスイッチユニットは、上下動可能に設けられユニット表面から突出する突出形態とユニット内部に沈み込む沈下形態とに切り替えられる操作手段と、前記操作手段の下方領域に進入して当該操作手段を突出形態とする一方、下方領域から退避して当該操作手段を沈下形態とする可動手段と、前記可動手段に取り付けられ通電加熱により収縮し前記可動手段を所定方向に駆動する駆動手段と、操作者による操作入力が受付可能であることを示す場合に前記可動手段で前記操作手段を突出形態とすると共に、突出形態とした当該操作手段から受け付けた操作入力を検出する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、操作者による操作入力が受付可能であることを示す場合に可動手段で操作手段が突出形態とされ、その突出形態とされた操作手段から受け付けた操作入力が検出される。例えば、可動手段を駆動する駆動手段を形状記憶合金製のワイヤで構成することで、可動手段を駆動し操作手段を突出形態とする構造を薄型化することができる。また、このような構造を用いて操作手段を突出形態として操作者による操作入力が受付可能であることを示すことから、操作に必要な場合にのみ操作手段を突出形態とすることができるので、操作者による操作入力を補助することができる。これにより、薄型化を実現しつつ、操作者による操作性に優れたスイッチユニットを提供することが可能となる。
【0008】
本発明のスイッチユニットにおいては、前記操作手段を複数備えることが好ましい。この場合には、操作手段が増加して操作が複雑化する場合であっても、複数の操作手段の中から操作に必要な操作手段のみを突出形態とすることで操作者による操作入力を補助するので、操作者による操作性に優れたスイッチユニットを提供することが可能となる。
【0009】
本発明のスイッチユニットにおいては、前記駆動手段は、前記可動手段を前記操作手段の下方領域に進入させる方向に駆動する第1の駆動手段と、前記可動手段を前記操作手段の下方領域から退避させる方向に駆動する第2の駆動手段と、を具備することが好ましい。この構成によれば、可動手段を駆動する方向に応じて別個の駆動手段を備えたので、簡単な制御で可動手段を操作手段の下方領域に進入させる一方、操作手段の下方領域から退避させることが可能となる。
【0010】
本発明のスイッチユニットにおいては、前記操作手段に対する押下動作に応じて導通状態とされる接点を有するスイッチ手段を具備し、前記制御手段は、前記スイッチ手段から出力される信号に応じて操作入力を検出することが好ましい。この構成によれば、操作手段に対する押下動作に応じて操作入力を検出するので、突出形態とされた操作手段から操作者による操作入力を確実に検出することが可能となる。
【0011】
本発明のスイッチユニットにおいては、前記スイッチ手段は、前記操作手段の移動範囲を挟んで当該操作手段に対向する位置に配置され、前記操作手段の下方領域に進入した前記可動手段を介して接点が導通状態とされることが好ましい。この構成によれば、可動手段を介して操作手段に対する押下動作がスイッチ手段に伝達されるので、操作手段の移動範囲をユニット内に確保しつつ、確実に操作者の操作入力を検出することが可能となる。また、操作手段を上下動させる可動手段を操作入力の伝達手段として兼用することから、操作入力に要する構造を簡素化することができるので、スイッチユニットの更なる薄型化、小型化を実現することが可能となる。
【0012】
本発明のスイッチユニットにおいては、前記スイッチ手段を、前記操作手段と一体化させたことが好ましい。この構成によれば、操作入力に要する構造を簡素化することができるので、スイッチユニットの更なる薄型化、小型化を実現することが可能となる。
【0013】
本発明のスイッチユニットにおいては、前記複数の操作手段に対応する複数の可動手段を備え、前記可動手段には共通の複数の前記第1の駆動手段が当該可動手段の移動方向に並んで取り付けられ、それぞれの前記第1の駆動手段が相異なる前記可動手段を駆動することが好ましい。この構成によれば、共通の複数の第1の駆動手段が可動手段に取り付けられるので、例えば、第1の駆動手段を形状記憶合金製のワイヤで構成した場合に操作手段の上下動に必要となるワイヤ長を確保することができる。また、第1の駆動手段が可動手段の移動方向に並んで取り付けられることから、個別に第1の駆動手段が可動手段に取り付けられる場合に比べて操作手段の周囲の構造を簡素化することができるので、操作手段の間隔を狭く設定することができる。
【0014】
本発明のスイッチユニットにおいては、前記第1の駆動手段を複数備え、前記第1の駆動手段は、前記操作手段の移動方向に並んで配設され、それぞれの前記第1の駆動手段が相異なる前記可動手段を駆動することが好ましい。この構成によれば、操作手段の移動方向に並んで配置された第1の駆動手段がそれぞれ相異なる可動手段を駆動するので、例えば、第1の駆動手段を形状記憶合金製のワイヤで構成した場合に可動手段を駆動する構造を薄型化することができる。また、第1の駆動手段が操作手段の移動方向に並んで配置されることから、個別に第1の駆動手段の駆動制御を行う場合に比べて操作手段の周囲の構造を簡素化することができるので、操作手段の間隔を狭く設定することができる。
【0015】
本発明のスイッチユニットにおいては、前記可動手段を前記駆動手段による駆動対象位置に移動させる補助駆動手段を備え、前記制御手段は、操作者による操作入力が受付可能であることを示す場合に前記補助駆動手段及び駆動手段により前記可動手段を段階的に駆動し、前記可動手段で前記操作手段を突出形態とすることが好ましい。この構成によれば、補助駆動手段及び駆動手段を段階的に駆動することで操作手段を突出形態とするので、例えば、駆動手段及び補助駆動手段を形状記憶合金製のワイヤで構成した場合に可動手段を駆動する構造を薄型化することができる。補助駆動手段で駆動した後に駆動手段で可動手段を可動させるので、これらの駆動制御を行うことで突出形態とされる操作手段のパターンを任意に設定することが可能となる。
【0016】
本発明のスイッチユニットにおいては、前記操作手段及び可動手段を伝熱部材で構成するようにしても良い。この場合には、駆動手段に対する通電加熱で生じた熱が、可動手段を介して突出形態とされた操作手段に伝達されるので、当該操作手段を認識し易くすることができる。これにより、操作者は、突出形態とされた操作手段を、その形態のみならずその温度でも認識することができるようになるので、本スイッチユニットの操作性を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るスイッチユニットによれば、薄型化を実現しつつ、良好な操作性を操作者に提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。例えば、本発明に係るスイッチユニットは、携帯電話、ノートパソコンや車載用ナビゲーション装置等の精密機器の操作パネルなどに好適に用いられる。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るスイッチユニット1の外観構成を示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係るスイッチユニット1は、複数の操作キー2を備えている。操作キー2は、スイッチユニット1の表面外側に突出した形態(以下、適宜「突出形態」という)と、スイッチユニット1の表面内側に沈み込んだ形態(以下、適宜「沈下形態」という)との間で上下動可能な構成となっている。
【0021】
操作キー2は、突出形態とされた場合には操作者による認識が可能となる結果、操作入力が行われる。一方、沈下形態とされた場合には操作者による認識が不能となる結果、操作入力が行われなくなる。なお、図1においては、最右列の操作キー2が突出形態とされた場合であり、それ以外の列の操作キー2が沈下形態とされた場合について示している。
【0022】
スイッチユニット1は、後述するように、所謂メンブレンスイッチを有する底面シート、スペーサ及び操作キー2が配列された表面シート3などが積層されて構成されている。図1に示すように、操作キー2は、表面シート3に対して下方に開閉可能に設けられたヒンジ部4に固定されている。ヒンジ部4は、表面シート3の表面から一定範囲で揺動可能に構成され、その揺動動作に応じて操作キー2の突出形態と沈下形態とが切り替えられる。すなわち、揺動動作による上限位置に移動した場合に操作キー2が突出形態となり、下限位置に移動した場合に操作キー2が沈下形態となる。
【0023】
表面シート3の下方において、ヒンジ部4の揺動領域に対応する部分の周囲には一定の空間Sが形成されている。以下、かかる空間Sに配設される構成について図2を用いて説明する。図2は、スイッチユニット1の内部構成を説明するための模式図である。図2(a)は、スイッチユニット1の側断面図を示し、図2(b)は、図2(a)に対応する上面図を示している。なお、図2においては、操作キー2が沈下形態とされた場合について示している。
【0024】
図2(a)に示すように、操作キー2は、ヒンジ部4の上面に取り付けられている。ヒンジ部4には無負荷状態で下限位置に戻ろうとする力(操作キー2を沈下形態に戻そうとする力)が作用している。例えば、ヒンジ部4が下限位置に戻ろうとする力は、ヒンジ部4の自重によるものでも良いし、別途設けた付勢手段で付与しても良い。ここではヒンジ部4の自重によるものとする。
【0025】
空間S内には、一定範囲で図2に示す左右方向に摺動可能な可動子5が配設されている。可動子5は、ヒンジ部4に対応する位置に配設され、摺動先の位置に応じてヒンジ部4を上昇又は下降させる。なお、可動子5は、例えば、設置面に設けられた不図示のガイドに沿って摺動可能に設けられ、かかるガイド又は設置面との摩擦により、摺動を停止するとその状態を維持するようになっている。
【0026】
可動子5の一端(図2に示す右端)には、可動子5を摺動させるワイヤ6及び7が通過する穴部が形成されている。ワイヤ6及び7は、各穴部を通過して一端が空間Sの側面に取り付けられ、他端が空間Sの側面に固定された弾性部材8及び9に取り付けられている。弾性部材8及び9は、後述するワイヤ6及び7における過度の収縮を吸収するものであり、例えば、ばね等で構成されるが他の構成を採用しても良い。
【0027】
ワイヤ6及び7は、それぞれ形状記憶合金(SMA:Shape Memory Alloys)で構成され、通電加熱により収縮する一方、通電が停止されることで収縮が解除される。図2(b)に示すように、空間Sの側面においてワイヤ6及び7が固定される位置は、可動子5に形成された穴部の間隔よりも広く設定されている。このため、ワイヤ6又は7が収縮することで、可動子5はいずれかの方向(図2に示す左方向又は右方向)に引き寄せられることとなる。
【0028】
以下においては、ワイヤ6が可動子5を左方側に移動させヒンジ部4を上昇させることから、これをリフトワイヤ6と呼び、ワイヤ7が上限位置に移動したヒンジ部4を下降させることからリセットワイヤ7と呼ぶものとする。このように、可動子5を駆動する方向に応じて別個のワイヤを備えたので、簡単な制御で可動子5を操作キー2の下方領域に進入させる一方、操作キー2の下方領域から退避させることが可能となる。
【0029】
図3は、本実施の形態に係るスイッチユニット1におけるリフトワイヤ6及びリセットワイヤ7が接続される回路構成例を説明するための図である。図3(a)に示すように、リフトワイヤ6は、抵抗器R1とトランジスタQ1との間に接続され、トランジスタQ1のベースに対して電圧を印加することで抵抗器R1に発生するジュール熱で収縮する一方、トランジスタQ1に対する電圧印加を停止することでリフトワイヤ6の収縮を解除するようになっている。
【0030】
一方、図3(b)に示すように、リセットワイヤ7における回路構成、並びに、その収縮及び収縮解除も同様である。すなわち、リセットワイヤ7は、トランジスタQ2のベースに対して電圧を印加することで抵抗器R2に発生するジュール熱で収縮する一方、トランジスタQ2に対する電圧印加を停止することでリセットワイヤ7の収縮を解除する。
【0031】
以下、トランジスタQ1及びQ2に対する電圧印加タイミングと、操作キー2の状態との関係について図2及び図5〜図7を参照しつつ、図4を用いて説明する。
【0032】
図4は、トランジスタQ1及びQ2に対する電圧印加タイミングと、操作キー2の状態との関係について説明するためのシーケンス図である。図5〜図7は、図4に示す各状態におけるスイッチユニット1の内部構成を説明するための模式図である。なお、かかるシーケンスを説明する前提として、リフトワイヤ6及びリセットワイヤ7の双方とも通電されていない状態(図2に示す状態)にあるものとし、対象となる操作キー2は沈下形態であるものとする。
【0033】
図4に示すように、時点t1において操作キー2の突出が指示されると、トランジスタQ1に電圧を印加することによりリフトワイヤ6を収縮させ(図5(b)参照)、ヒンジ部4が上限位置に達するまで可動子5を左方側に移動させる(図5(a)参照)。これにより、図5(a)に示すように、操作キー2の状態が沈下形態から突出形態に切り替えられる。
【0034】
そして、トランジスタQ1に対して一定時間電圧を印加した後、時点t2において電圧印加を停止することによりリフトワイヤ6の収縮を解除する(図6(b)参照)。なお、リフトワイヤ6の収縮を解除した場合においても、設置面との摩擦により可動子5が移動することはないので、操作キー2は、図6(a)に示すように、突出形態を維持する。
【0035】
一方、時点t3において突出させた操作キー2の突出解除が指示されると、トランジスタQ2に電圧を印加することによりリセットワイヤ7を収縮させ(図7(b)参照)、ヒンジ部4が下限位置に達するまで可動子5を右方側に移動させる(図7(a)参照)。これにより、図7(a)に示すように、操作キー2の状態が突出形態から沈下形態に切り替えられる。
【0036】
そして、トランジスタQ2に対して一定時間電圧を印加した後、時点t4において電圧印加を停止することによりリセットワイヤ7の収縮を解除する。これにより、図2(b)に示す状態となる。なお、リセットワイヤ7の収縮を解除した場合においても、設置面との摩擦により可動子5が移動することはないので、図2(a)に示すように、操作キー2は沈下形態を維持する。
【0037】
図8は、本実施の形態に係るスイッチユニット1における操作キー2近傍の側断面図である。図8(a)は、操作キー2が突出形態とされた場合について示し、図8(b)は、図8(a)に示す状態から操作キー2が操作者により押し下げられた場合について示している。なお、図8(c)は、本実施の形態に係るスイッチユニット1の変形例について示している。
【0038】
図8(a)に示すように、本実施の形態に係るスイッチユニット1は、メンブレンスイッチを有する底面シート10の上方に、スペーサ11を介して表面シート3が配置されている。
【0039】
底面シート10は、メンブレンスイッチを構成する上部接点シート12、下部接点シート13及びスペーサ14で構成される。上部接点シート12及び下部接点シート13には、操作キー2に対応する位置にそれぞれ上部接点15及び下部接点16が取り付けられている。上部接点15と下部接点16とは、スペーサ14で支持される所定のスペースを挟んで対向している。この場合、上部接点15と下部接点16との間は非導通状態となっている。
【0040】
図8(a)に示す状態から操作者が操作キー2を押し下げると(図8(b)参照)、表面シート3が撓むことにより可動子5が下方に移動する。これに応じて上部接点シート12が撓むことにより上部接点15が下方に移動し、下部接点16と接触する。これにより、上部接点15と下部接点16との間が導通状態となる。
【0041】
このように、可動子5を介して操作キー2に対する押下動作が底面シート10に設けられたメンブレンスイッチに伝達されるので、操作キー2の移動範囲をユニット内に確保しつつ、確実に操作者の操作入力を検出することが可能となる。また、操作キー2を上下動させる可動子5を操作入力の伝達手段として兼用することから、操作入力に要する構造を簡素化することができるので、スイッチユニット1の更なる薄型化、小型化を実現することが可能となる。
【0042】
なお、本実施の形態に係るスイッチユニット1においては、底面シート10にメンブレンスイッチを設ける場合について示しているが、メンブレンスイッチの設置場所については適宜変形が可能である。例えば、図8(c)に示すように、操作キー2の下方にメンブレンスイッチを設けるようにしても良い。図8(c)においては、操作キー2の下方にメンブレンスイッチを構成する上部接点15及び下部接点16のみを示している。このように操作キー2の下方にメンブレンスイッチを設置した場合には、メンブレンスイッチを有する底面シート10を配設する必要がなくなるので、操作入力に要する構造を簡素化すると共にスイッチユニット1の更なる薄型化を実現することが可能となる。
【0043】
図9は、本実施の形態に係るスイッチユニット1の動作制御を行う制御部20の機能ブロック図である。
【0044】
図9に示すように、本実施の形態に係るスイッチユニット1の制御部20は、操作キー2の配列パターンを記憶するパターン記憶部21、パターン記憶部21に記憶された配列パターンから特定の配列パターンを指定するパターン指定部22、パターン指定部22の指定した配列パターンの内容に応じて通電状態を制御することでリフトワイヤ6及びリセットワイヤ7を駆動するワイヤ駆動部23、メンブレンスイッチの出力信号に応じて操作者からの操作入力を検出する入力検出部24、並びに、パターン指定部22が指定した配列パターンの内容及び入力検出部24からの通知に応じて操作者による入力位置を判定する入力位置判定部25を有する。
【0045】
パターン記憶部21は、スイッチユニット1の状態に応じた操作キー2の配列パターンを記憶する。具体的には、スイッチユニット1の初期状態や本スイッチユニット1が搭載される機器(以下、単に「搭載機器」という)の動作モードに応じた操作キー2の配列パターンを記憶する。例えば、本スイッチユニット1がカメラ付き携帯電話に搭載された場合には、宛先指定や通話音量変更等を行う通話モード、フラッシュ機能やズーム機能の起動等を行うカメラモードに応じた操作キー2の配列パターンを記憶する。
【0046】
パターン指定部22は、搭載機器の制御部からの指示に従って、パターン記憶部21に記憶された複数の配列パターンの中から特定の配列パターンを指定する。そして、指定した操作キー2の配列パターンの内容をワイヤ駆動部23及び入力位置判定部25に通知する。
【0047】
ワイヤ駆動部23は、パターン指定部22から通知された配列パターンの内容に応じてリフトワイヤ6及びリセットワイヤ7に対する通電状態を制御する。具体的には、突出形態とすべき操作キー2に対応するリフトワイヤ6を通電加熱することで収縮させる一方、沈下形態とすべき操作キー2に対応するリセットワイヤ7に対する通電加熱を停止することで収縮を解除する。
【0048】
入力検出部24は、操作者による操作キー2の押下動作に応じて出力されるメンブレンスイッチから出力信号を検出することで、操作者からの操作入力の有無を検出する。そして、操作者からの操作入力を検出したならば、その旨を入力位置判定部25に通知する。
【0049】
入力位置判定部25は、入力検出部24から操作入力があった旨の通知を受けた場合に、パターン指定部22から通知された配列パターンの内容に基づいて操作者により操作入力が行われた操作キー2の位置を判定する。そして、その判定した操作キー2の位置を搭載機器の制御部に通知する。
【0050】
このような機能ブロックを有する制御部20により動作制御を行うことで、本スイッチユニット1は、所定の操作キー2のみを突出形態とすることで、操作者に触覚で所定の操作キー2の配列を認識させると共に、その認識された所定の操作キー2のみからの操作入力を受け付けることが可能となる。
【0051】
このように本実施の形態のスイッチユニット1によれば、操作者による操作入力が受付可能であることを示す場合に可動子5で操作キー2が突出形態とされ、その突出形態とされた操作キー2から受け付けた操作入力が検出される。そして、可動子5を駆動するセットワイヤ6及びリセットワイヤ7を形状記憶合金製のワイヤで構成しているので、可動子5を駆動し操作キー2を突出形態とする構造を薄型化することができる。また、このような構造を用いて操作キー2を突出形態として操作者による操作入力が受付可能であることを示すことから、操作に必要な場合にのみ操作キー2を突出形態とすることができるので、操作者による操作入力を補助することができる。これにより、薄型化を実現しつつ、操作者による操作性に優れたスイッチユニット1を提供することが可能となる。
【0052】
以上、本発明に係るスイッチユニット1の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、種々変形することが可能である。上記実施の形態においては、表面シート3の下方に配設した可動子5に1本のリフトワイヤ6を取り付け、このリフトワイヤ6の収縮を制御することで当該可動子5の摺動制御を行う場合について示しているが、可動子5の摺動制御を行う構成については、適宜変形することが可能である。例えば、同列上の複数の可動子5に複数本のリフトワイヤ6を取り付け、収縮させるリフトワイヤ6を制御することで各可動子5の摺動制御を行うようにしても良い。
【0053】
図10は、同列上の複数の可動子5に複数本のリフトワイヤ6を取り付け、収縮させるリフトワイヤ6を制御することで各可動子5の摺動制御を行う場合の構成例について説明するための模式図である。図10(a)はかかる構成例における各可動子5の側断面図を示し、同図(b)は上面図を示している。
【0054】
なお、図10においては、同列上に配置された3つの可動子5を示すものとし、これらを上方側から可動子5a、5b及び5cと呼ぶものとする。また、各可動子5に応じて操作キー2及びヒンジ部4も同様の文字を末尾に付与するものとする。さらに、可動子5には3本のリフトワイヤ6が取り付けられるものとし、これらを左方側からリフトワイヤ6a、6b及び6cと呼ぶものとする。さらに、図10においては、全てのリフトワイヤ6a〜6c及びリセットワイヤ7が収縮していない状態について示し、全ての操作キー2が沈下形態である場合について示している。
【0055】
複数本のリフトワイヤ6a〜6c及びリセットワイヤ7は、図10(b)に示すように、各可動子5に形成された穴部等を通過するように取り付けられている。リフトワイヤ6a〜6c及びリセットワイヤ7は、一定間隔を空けて横並びに配列されている。リフトワイヤ6a〜6c及びリセットワイヤ7の一端は、それぞれ弾性部材8a〜8c及び弾性部材9に取り付けられている。
【0056】
図10(a)に示すように、可動子5a、5b及び5cの側面には、それぞれの設置位置に応じて組み合わされた穴部31、長穴部32、溝部33及び長溝部34が形成されている。図10(a)に示すように、可動子5aには左端部及び右端部に穴部31が形成され、中央部に長穴部32が形成されている。可動子5bには左端部に溝部33が形成され、その右方側に、穴部31、長穴部32及び穴部31の順に形成されている。可動子5cには左端部に長溝部34が形成され、その右方側に、2つの穴部31が形成されている。
【0057】
このように構成される可動子5において、右端部に配置される穴部31にはリセットワイヤ7が取り付けられる(通過している)。この右端部の穴部31以外の穴部31等にリフトワイヤ6a〜6cが取り付けられる。具体的にいうと、可動子5aにおいては、リフトワイヤ6aが左端部の穴部31に取り付けられ、リフトワイヤ6b及び6cが長穴部32に取り付けられている。また、可動子5bにおいては、リフトワイヤ6aが左端部の溝部33に取り付けられ、リフトワイヤ6bが穴部31に取り付けられ、リフトワイヤ6cが長穴部32に取り付けられている。さらに、可動子5cにおいては、リフトワイヤ6a及び6bが左端部の長溝部34に取り付けられ、リフトワイヤ6cが穴部31に取り付けられている。
【0058】
図10に示す状態から操作キー2aの突出が指示されると、図11(a)に示すように、リフトワイヤ6aを通電加熱により収縮させ、ヒンジ部4aが上限位置に達するまで可動子5aを左方側に移動させる。このとき、リフトワイヤ6aは可動子5aにおいて穴部31に取り付けられているため、可動子5aを移動させるが、可動子5b及び5cにおいては溝部33及び長溝部34に取り付けられているため、溝部33等から退避するのみであり、可動子5b及び5cを移動させることはない。このため、リフトワイヤ6aを収縮させると、操作キー2aのみを沈下形態から突出形態に切り替えることができる。
【0059】
なお、図11(b)に示すように、可動子5aの移動によりリフトワイヤ6b、6c及びリセットワイヤ7も左方側に引き付けられることとなるが、不図示のワイヤ保持支点によりリフトワイヤ6b、6c及びリセットワイヤ7は図10に示す位置を維持するため、可動子5b及び5cに影響を与えることはない。なお、本スイッチユニット1においては、操作キー2aを突出形態に切り替えた後、一定時間経過後にリフトワイヤ6aへの通電加熱は解除される。
【0060】
そして、図11に示す状態から操作キー2aの突出解除が指示されると、図12に示すように、リセットワイヤ7を通電加熱により収縮させ、ヒンジ部4aが下限位置に達するまで可動子5aを右方側に移動させる。このとき、可動子5aは、左方側に移動していたため、リセットワイヤ7の収縮により右方側に移動するが、可動子5b及び5cは左方側に移動していないため、現在の位置を維持することとなる。このため、図11に示す状態からリセットワイヤ7を収縮させると、操作キー2aのみを突出形態から沈下形態に切り替えることができる。
【0061】
このように、同列上の複数の可動子5に複数本のリフトワイヤ6を取り付け、収縮させるリフトワイヤ6を制御することで各可動子5の摺動制御を行う場合には、これらのワイヤが架設される長さを長く設定することが可能となるので、操作キー2の突出操作に必要となるワイヤの長さを確保することが可能となる。また、複数の操作キー2の突出操作に共通のリフトワイヤ6及びリセットワイヤ7を使用することから、個別に取り付けたリフトワイヤ6で操作キー2の突出操作を行う場合に比べて操作キー2の周囲の構造を簡素化することができるので、操作キー2が配置されるピッチを狭く設定することが可能となる。
【0062】
また、同列上の複数の可動子5に複数本のリフトワイヤ6を取り付け、収縮させるリフトワイヤ6を制御することで各可動子5の摺動制御を行う場合においては、複数本のリフトワイヤ6を絶縁断熱しながら、可動子5の移動方向と直交する方向に積層するように配置しても良い。
【0063】
図13は、同列上の複数の可動子5に複数本のリフトワイヤ6を取り付け、収縮させるリフトワイヤ6を制御することで各可動子5の摺動制御を行う場合の構成例について説明するための模式図である。図13(a)はかかる構成例における各可動子5の側断面図を示し、同図(b)は上面図を示している。
【0064】
なお、図13においては、同列上に配置された3つの可動子5を示すものとし、これらを上方側から可動子5a、5b及び5cと呼ぶものとする。また、各可動子5に応じて操作キー2及びヒンジ部4も同様の文字を末尾に付与するものとする。さらに、可動子5には3本のリフトワイヤ6が取り付けられるものとし、これらを左方側からリフトワイヤ6a、6b及び6cと呼ぶものとする。さらに、図13においては、全てのリフトワイヤ6a〜6c及びリセットワイヤ7が収縮していない状態について示し、全ての操作キー2が沈下形態である場合について示している。
【0065】
かかる構成例において、図13(a)に示すように、可動子5には上述した本実施の形態と同様の穴部、すなわち、リフトワイヤ6が取り付けられる穴部とリセットワイヤ7が取り付けられる穴部が1つずつ形成されている。
【0066】
各可動子5の間及び端部に配置された可動子5a、5cの外側には支柱31〜34が立設されている。具体的には、可動子5aの図13(b)に示す上側に支柱31が立設され、可動子5aと5bとの間に支柱32が立設され、可動子5bと5cとの間に支柱33が立設され、可動子5cの同図(b)に示す下側に支柱34が立設されている。
【0067】
支柱31〜34は、可動子5にリフトワイヤ6a〜6c及びリセットワイヤ7を導く役割を果たすと共に、いずれかのリフトワイヤ6が通電加熱により収縮した場合に特定の可動子5にのみ移動させ、他の可動子5に影響を与えるのを防止する役割を果たすものである。
【0068】
図13(b)に示すように、複数本のリフトワイヤ6a〜6c及びリセットワイヤ7の一端は、それぞれ弾性部材8a〜8c及び弾性部材9に取り付けられている。リフトワイヤ6aは、可動子5cに形成された穴部を通過し、リフトワイヤ6bは、可動子5bに形成された穴部を通過し、リフトワイヤ6cは、可動子5aに形成された穴部を通過する。
【0069】
各リフトワイヤ6は、取り付けられる可動子5に隣接する支柱31〜34の図13(b)に示す左端部に引っ掛けられると共に、必要に応じて可動子5の外側に配置される支柱31、34に引っ掛けられる。具体的には、リフトワイヤ6aは、支柱31に引っ掛けられる一方、支柱33及び支柱34の左端部により可動子5cに導かれる。リフトワイヤ6bは、支柱31に引っ掛けられる一方、支柱32及び支柱33の左端部により可動子5bに導かれる。リフトワイヤ6cは、支柱31及び支柱32の左端部により可動子5aに導かれる一方、支柱34の左端部に引っ掛けられる。
【0070】
図14は、上述の支柱と可動子との関係について説明するための拡大図である。図14(a)は、支柱31及び支柱32と可動子5aとの関係について示す上面図であり、図14(b)は、図14(a)に対応する部分の側断面図である。なお、図14(a)においては、ヒンジ部4及び操作キー2を省略している。
【0071】
図14に示すように、支柱31と支柱32との間には、可動子5aを一定範囲で案内するスライドガイド部35が配設されている。リフトワイヤ6cが収縮されると、スライドカイド部35により案内されることで可動子5aが一定範囲で摺動することとなる。なお、他の可動子5b、5cの近傍においても、同様にスライドガイド部35が配設されている。
【0072】
リフトワイヤ6a〜6cは、支柱31及び32の図14に示す左方側に配設されたワイヤ絶縁部36に収容されている。ワイヤ絶縁部36は、通電加熱した場合における各リフトワイヤ6間を絶縁すると共に、各リフトワイヤ6で発生した熱による影響を他のリフトワイヤ6に与えないように断熱する役割を果たす。
【0073】
ワイヤ絶縁部36は、図14(b)に示すように、絶縁フィルムIFで階層的に分けられ、各層にそれぞれのリフトワイヤ6が収容されている。すなわち、図14(b)に示すように、ワイヤ絶縁部36においては、リフトワイヤ6a、6b及び6cがそれぞれ最上層、中間層及び最下層に収容されている。
【0074】
例えば、最下層に収容されたリフトワイヤ6cは、図14(b)に示すように、可動子5aに形成された穴部を通過する際、ワイヤ絶縁部36から当該穴部に向かって緩やかに上昇する架設経路を採る。同様に、各階層に収容されたリフトワイヤ6は、独自の架設経路で対応する可動子5に形成された穴部を通過するようになっている。
【0075】
図13に示す状態から操作キー2aの突出が指示されると、図15(a)に示すように、リフトワイヤ6cを通電加熱により収縮させ、ヒンジ部4aが上限位置に達するまで可動子5aを左方側に移動させる。このとき、ワイヤ絶縁部36で異なる階層に収容されていることから、他のリフトワイヤ6a、6bには影響を与えず、可動子5b及び5cが移動することはない。このため、リフトワイヤ6aを収縮させると、操作キー2aのみを沈下形態から突出形態に切り替えることができる。
【0076】
このように、複数本のリフトワイヤ6を可動子5の移動方向と直交する方向(操作キー2の移動方向)に積層するように配置した場合には、リフトワイヤ6及びリセットワイヤ7が架設される長さを長く設定することが可能となるので、操作キー2の突出操作に必要となるワイヤの長さを確保することが可能となる。また、複数の操作キー2の突出操作に使用するリフトワイヤ6及びリセットワイヤ7が操作キー2の移動方向に積層されることから、個別に取り付けたリフトワイヤ6で操作キー2の突出操作を行う場合に比べて操作キー2の周囲の構造を簡素化することができるので、操作キー2が配置されるピッチを狭く設定することが可能となる。
【0077】
また、上記実施の形態においては、リフトワイヤ6及びリセットワイヤ7の一組で可動子5を一方向に摺動させ、ヒンジ部4の昇降制御を行う場合について示しているが、可動子5の摺動によりヒンジ部4の昇降制御を行う構成については、適宜変形することが可能である。例えば、リフトワイヤ及びリセットワイヤの組を複数利用して可動子を複数方向に摺動させ、ヒンジ部の昇降制御を行うようにしても良い。
【0078】
図16は、リフトワイヤ及びリセットワイヤの組を複数利用して可動子を複数方向に摺動させ、ヒンジ部の昇降制御を行う場合の構成例について説明するための模式図である。図16(a)は、かかる構成例の操作キー2近傍の側断面図を示し、同図(b)は、上面図を示している。なお、図16においては、リフトワイヤ及びリセットワイヤの組を2つ利用して可動子を2方向に摺動させる場合について示している。
【0079】
図16に示す構成例においては、同図(b)に示すように、ヒンジ部4の昇降動作を行う可動子41にワイヤ42(以下、「リフトワイヤ42」という)及びワイヤ43(以下、「リセットワイヤ43」という)が取り付けられると共に、ワイヤ44(以下、「リフトワイヤ44」という)及びワイヤ45(以下、「リセットワイヤ45」という)が取り付けられている。
【0080】
リフトワイヤ42及びリセットワイヤ43は、図16(b)に示す可動子41の右端部に上下方向に沿って形成された穴部に取り付けられ、リフトワイヤ44及びリセットワイヤ45は、図16(b)に示す可動子41の下端部に左右方向に沿って形成された穴部に取り付けられている。図16においては、上記実施の形態と異なり、単一の穴部にリフトワイヤ42(44)及びリセットワイヤ43(45)が取り付けられた場合について示している。
【0081】
なお、リフトワイヤ42、44及びリセットワイヤ43、45の構造及び動作(収縮動作)は、それぞれリフトワイヤ6及びリセットワイヤ7と同様であるため、その詳細な説明は省略する。図16においては、全てのワイヤにおいて通電加熱されておらず、収縮していない状態を示している。
【0082】
リフトワイヤ42及びリセットワイヤ43は、それぞれ図16(b)に示す左方向及び右方向に可動子41を摺動させる一方、リフトワイヤ44及びリセットワイヤ45は、それぞれ図16(b)に示す上方向及び下方向に可動子41を摺動させる。リフトワイヤ44が可動子41を上方向に摺動させた後、リフトワイヤ42が可動子41を左方向に摺動させることで、ヒンジ部4を上限位置まで移動させるようになっている。
【0083】
可動子41の周囲には、鉤形状を有する案内溝46が形成されている。可動子41は、リフトワイヤ42やリセットワイヤ43等の収縮動作に応じて、この案内溝46に沿って摺動するようになっている。このように案内溝46に沿って摺動することで、可動子41が安定して摺動可能になっている。
【0084】
図16に示す状態から操作キー2aの突出が指示されると、図17(b)に示すように、リフトワイヤ44を通電加熱により収縮させ、案内溝46の上端部に達するまで可動子41を上方側に移動させる。このとき、可動子41は、図17(a)に示すように、ヒンジ部4の右下方側に配置されるため、ヒンジ部4を上昇させることはなく、操作キー2も沈下形態の状態で維持されている。なお、可動子41を上方側に移動させた後は、リフトワイヤ42の通電加熱は解除される。
【0085】
そして、図17に示す状態から、図18(b)に示すように、リフトワイヤ42を通電加熱により収縮させ、案内溝46の左端部に達するまで可動子41を左方側に移動させる。このとき、可動子41は、図18(a)に示すように、ヒンジ部4の下方領域に入り込むため、ヒンジ部4を上昇させ、操作キー2が沈下形態から突出形態に切り替えられる。なお、可動子41を左方側に移動させた後は、リフトワイヤ44の通電加熱は解除される。
【0086】
一方、図18に示す状態から操作キー2aの突出解除が指示されると、今までとは逆に可動子41が移動するように、リセットワイヤ43を通電加熱により収縮させ、案内溝46の右端部に達するまで可動子41を右方側に移動させる。その後、リセットワイヤ45を通電加熱により収縮させ、案内溝46の下端部に達するまで可動子41を下方側に移動させる。これにより、図16に示す状態に戻る。
【0087】
このように、リフトワイヤ及びリセットワイヤの組を複数利用して可動子41を複数方向に摺動させ、ヒンジ部4の昇降制御を行う場合には、操作キー2を沈下形態から突出形態に切り替える際に二段階の動作制御を必要とすることから、本スイッチユニット1が複数の操作キー2を備える場合に柔軟に操作キー2の突出操作を行うことが可能となる。
【0088】
以下、図16〜図18に示した構成例を用いてスイッチユニット1において、複数の操作キー2の突出操作を行う場合について説明する。図19は、3列3行に配列した9つの操作キー2を有するスイッチユニット1の構成を示す上面図である。
【0089】
図19においては、説明の便宜上、左方側の列における可動子41の摺動を制御するリフトワイヤ及びリセットワイヤを、それぞれ「X1」及び「X1R」と呼び、中央の列における可動子41の摺動を制御するリフトワイヤ及びリセットワイヤを、それぞれ「X2」及び「X2R」と呼び、右方側の列における可動子41の摺動を制御するリフトワイヤ及びリセットワイヤを、それぞれ「X3」及び「X3R」と呼ぶものとする。
【0090】
同様に、上段の行における可動子41の摺動を制御するリフトワイヤ及びリセットワイヤを、それぞれ「Y1」及び「Y1R」と呼び、中段の行における可動子41の摺動を制御するリフトワイヤ及びリセットワイヤを、それぞれ「Y2」及び「Y2R」と呼び、下段の列における可動子41の摺動を制御するリフトワイヤ及びリセットワイヤを、それぞれ「Y3」及び「Y3R」と呼ぶものとする。また、「X1」、「X2」及び「X3」、並びに、「Y1」、「Y2」及び「Y3」は、適宜、操作キー2の座標を示す場合にも用いるものとする。
【0091】
X1〜X3、X1R〜X3R、Y1〜Y3及びY1R〜Y3Rは、それぞれ一端がスイッチユニット1の筐体に取り付けられる一方、他端が筐体に固定されたばね等の弾性部材に取り付けられている。また、各列及び各行における可動子41間にはワイヤ保持支点Hが配設され、各ワイヤにおける収縮動作が他の可動子41に影響するのを回避している。それぞれの可動子41における摺動動作は、上述の図16〜図18の説明によるものとする。
【0092】
このような構成を有するスイッチユニット1において、例えば、上段の行の左方側の列(座標X1,Y1)、中段の行の中央の列(座標X2,Y2)、下段の行の左方側の列(座標X3,Y3)に配置された操作キー2を突出形態とする場合には、図20(a)に示すように、まず全ての操作キー2の状態をリセットした後、対応するリフトワイヤ及びリセットワイヤを所定の順序に従って通電加熱により収縮させる。
【0093】
すなわち、まず全てのリセットワイヤX1R〜X3R及びY1R〜Y3Rを通電加熱により収縮させることで、全ての操作キー2の状態をリセットする。その後、上段の行の左方側の列(座標X1,Y1)に配置された操作キー2を突出させるためにY1を通電加熱により収縮させ、さらにX1を通電加熱により収縮させた後、Y1Rを通電加熱により収縮させる。そして、中段の行の中央の列(座標X2,Y2)の操作キー2を突出させるためにY2を収縮させ、さらにX2を収縮させた後、Y2Rを収縮させる。最後に、下段の行の左方側の列(座標X3,Y3)の操作キー2を突出させるためにY3を収縮させ、さらにX3を収縮させた後、Y3Rを収縮させる。
【0094】
このような順序に従ってリフトワイヤ及びリセットワイヤを収縮させることで、図20(a)に示すように、(座標X1,Y1)、(座標X2,Y2)、(座標X3,Y3)に配置された操作キー2が突出形態となる。なお、例えば、(座標X1,Y1)に配置された操作キー2を突出させる場合にY1、X1を収縮させた後、Y1Rを収縮させるのは可動子41が案内溝において右方側に退避するのを防止するためである。
【0095】
一方、上段の行の中央の列(座標X2,Y1)、中段の行の全ての列(座標X1〜3,Y2)、下段の行の中央の列(座標X2,Y3)に配置された操作キー2を突出形態とする場合には、図20(b)に示すように、まず全ての操作キー2の状態をリセットした後、対応するリフトワイヤ及びリセットワイヤを所定の順序に従って通電加熱により収縮させる。
【0096】
すなわち、まず全てのリセットワイヤX1R〜X3R及びY1R〜Y3Rを通電加熱により収縮させることで、全ての操作キー2の状態をリセットする。その後、上段の行の中央の列(座標X2,Y1)の操作キー2を突出させるためにY1を通電加熱により収縮させ、さらにX2を通電加熱により収縮させた後、Y1Rを通電加熱により収縮させる。そして、中段の行の全ての列(座標X1〜3,Y2)の操作キー2を突出させるためにY2を収縮させ、さらにX1、X2及びX2を収縮させた後、Y2Rを収縮させる。最後に、下段の行の中央の列(座標X2,Y3)の操作キー2を突出させるためにY3を収縮させ、さらにX2を収縮させた後、Y3Rを収縮させる。
【0097】
このような順序に従ってリフトワイヤ及びリセットワイヤを収縮させることで、図20(b)に示すように、(座標X2,Y1)、(座標X1〜3,Y2)、(座標X2,Y3)に配置された操作キー2が突出形態となる。
【0098】
このように、リフトワイヤ及びリセットワイヤの組を複数利用して可動子41を複数方向に摺動させ、ヒンジ部4の昇降制御を行う場合には、段階的に可動子41を駆動することが可能となるから、これらの駆動制御を行うことで、本スイッチユニット1に配列された複数の操作キー2を任意の配列パターンに突出させることが可能となる。
【0099】
同列上の複数の可動子41に複数本のリフトワイヤ6を取り付け、収縮させるリフトワイヤ6を制御することで各可動子41の摺動制御を行うことから、これらのワイヤが架設される長さを長く設定することが可能となるので、操作キー2の突出操作に必要となるワイヤの長さを確保することが可能となる。また、複数の操作キー2の突出操作に共通のリフトワイヤ6及びリセットワイヤ7を使用することから、個別に取り付けたリフトワイヤ6で操作キー2の突出操作を行う場合に比べて操作キー2の周囲の構造を簡素化することができるので、操作キー2が配置されるピッチを狭く設定することが可能となる。さらに、操作キー2の突出操作に使用するワイヤの本数を低減することが可能となる。
【0100】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0101】
例えば、操作キー2及び可動子5を、伝熱部材で構成するようにしても良い。この場合には、リフトワイヤ6に対する通電加熱で生じた熱が、可動子5を介して突出形態とされた操作キー2に伝達されるので、当該操作キー2を認識し易くすることができる。これにより、操作者は、突出形態とされた操作キー2を、その形態のみならずその温度でも認識することができるようになるので、本スイッチユニット1の操作性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施の形態に係るスイッチユニットの外観構成を示す斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係るスイッチユニットの内部構成を説明するための模式図である。
【図3】上記実施の形態に係るスイッチユニットにおけるリフトワイヤ及びリセットワイヤが接続される回路構成例を説明するための図である。
【図4】上記実施の形態に係るトランジスタQ1及びQ2に対する電圧印加タイミングと、操作キーの状態との関係について説明するためのシーケンス図である。
【図5】図4に示す各状態におけるスイッチユニットの内部構成を説明するための模式図である。
【図6】図4に示す各状態におけるスイッチユニットの内部構成を説明するための模式図である。
【図7】図4に示す各状態におけるスイッチユニットの内部構成を説明するための模式図である。
【図8】上記実施の形態に係るスイッチユニットにおける操作キー近傍の側断面図である。
【図9】上記実施の形態に係るスイッチユニットの動作制御を行う制御部の機能ブロック図である。
【図10】上記実施の形態の変形例に係る同列上の複数の可動子に取り付けた複数本のリフトワイヤを制御する場合の模式図である。
【図11】上記実施の形態の変形例に係る同列上の複数の可動子に取り付けた複数本のリフトワイヤを制御する場合の模式図である。
【図12】上記実施の形態の変形例に係る同列上の複数の可動子に取り付けた複数本のリフトワイヤを制御する場合の模式図である。
【図13】上記実施の形態の変形例に係る同列上の複数の可動子に取り付けた複数本のリフトワイヤを制御する場合の模式図である。
【図14】図13に示す支柱及びリフトワイヤと可動子との関係について説明するための拡大図である。
【図15】上記実施の形態の変形例に係る同列上の複数の可動子に取り付けた複数本のリフトワイヤを制御する場合の模式図である。
【図16】上記実施の形態の変形例に係るリフトワイヤ及びリセットワイヤの組を複数利用して可動子を複数方向に摺動させる場合の模式図である。
【図17】上記実施の形態の変形例に係るリフトワイヤ及びリセットワイヤの組を複数利用して可動子を複数方向に摺動させる場合の模式図である。
【図18】上記実施の形態の変形例に係るリフトワイヤ及びリセットワイヤの組を複数利用して可動子を複数方向に摺動させる場合の模式図である。
【図19】図16に示す構成例の具体例であり、3列3行に配列した9つの操作キーを有するスイッチユニットの構成を示す上面図である。
【図20】図19に示すスイッチユニットにおいて、操作キーの特定の配列パターンを突出させるための順序を説明するための図である。
【符号の説明】
【0103】
1 スイッチユニット
2 操作キー
3 表面シート
4 ヒンジ部
5,41 可動子
6,42,44 リフトワイヤ
7,43,45 リセットワイヤ
10 底面シート
15 上部接点
16 下部接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動可能に設けられユニット表面から突出する突出形態とユニット内部に沈み込む沈下形態とに切り替えられる操作手段と、前記操作手段の下方領域に進入して当該操作手段を突出形態とする一方、下方領域から退避して当該操作手段を沈下形態とする可動手段と、前記可動手段に取り付けられ通電加熱により収縮し前記可動手段を所定方向に駆動する駆動手段と、操作者による操作入力が受付可能であることを示す場合に前記可動手段で前記操作手段を突出形態とすると共に、突出形態とした当該操作手段から受け付けた操作入力を検出する制御手段と、を具備することを特徴とするスイッチユニット。
【請求項2】
前記操作手段を複数備えることを特徴とする請求項1記載のスイッチユニット。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記可動手段を前記操作手段の下方領域に進入させる方向に駆動する第1の駆動手段と、前記可動手段を前記操作手段の下方領域から退避させる方向に駆動する第2の駆動手段と、を具備することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスイッチユニット。
【請求項4】
前記操作手段に対する押下動作に応じて導通状態とされる接点を有するスイッチ手段を具備し、前記制御手段は、前記スイッチ手段から出力される信号に応じて操作入力を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のスイッチユニット。
【請求項5】
前記スイッチ手段は、前記操作手段の移動範囲を挟んで当該操作手段に対向する位置に配置され、前記操作手段の下方領域に進入した前記可動手段を介して接点が導通状態とされることを特徴とする請求項4記載のスイッチユニット。
【請求項6】
前記スイッチ手段を、前記操作手段と一体化させたことを特徴とする請求項4記載のスイッチユニット。
【請求項7】
前記複数の操作手段に対応する複数の可動手段を備え、前記可動手段には共通の複数の前記第1の駆動手段が当該可動手段の移動方向に並んで取り付けられ、それぞれの前記第1の駆動手段が相異なる前記可動手段を駆動することを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載のスイッチユニット。
【請求項8】
前記第1の駆動手段を複数備え、前記第1の駆動手段は、前記操作手段の移動方向に並んで配設され、それぞれの前記第1の駆動手段が相異なる前記可動手段を駆動することを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載のスイッチユニット。
【請求項9】
前記可動手段を前記駆動手段による駆動対象位置に移動させる補助駆動手段を備え、前記制御手段は、操作者による操作入力が受付可能であることを示す場合に前記補助駆動手段及び駆動手段により前記可動手段を段階的に駆動し、前記可動手段で前記操作手段を突出形態とすることを特徴とする請求項1記載のスイッチユニット。
【請求項10】
前記操作手段及び可動手段を伝熱部材で構成したことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のスイッチユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−318732(P2006−318732A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139461(P2005−139461)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】